2025年04月06日

ベテラン 凶悪犯罪捜査班  原題:베테랑2(ベテラン2) 英題:I,THE EXECUTIONER

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(C)2024 CJ ENM Co., Ltd., Filmmakers R&K ALL RIGHTS RESERVED

監督:リュ・スンワン(『ベルリンファイル』『ベテラン』『モガディシュ 脱出までの14日間』『密輸 1970 』
脚本:リュ・スンワン、イ・ウォンジェ、カン・ヘジョン
出演:ファン・ジョンミン、チョン・へイン、アン・ボヒョン、オ・ダルス、チャン・ユンジュ、オ・デファン、キム・シフ、シン・スンファン

家族のことを気遣う暇もなく昼夜を問わず犯罪と戦うベテラン刑事ソ・ドチョル(ファン・ジョンミン) と強力犯罪捜査隊の刑事たち。
ある日、ある教授が殺される。以前に起こった殺人事件と同様、法では裁かれなかった悪人。不条理な司法制度に憤っていた世論は、私刑を下す犯人を善と悪を裁く伝説上の生き物“ヘチ”と呼び、正義のヒーローともてはやすようになる。
新人刑事パク・ソヌが加わり、追跡を始める捜査陣。だが、殺人犯は、あざわらうように次の殺人対象を指定する予告をインターネットに公開する・・・

スピード感溢れる映像と、あっと驚く物語の展開にくらくら。最後の最後まで、え~ どういうこと?と、頭の中が整理つかないほどでした。
「徹子の部屋」に登場したチョン・ヘインが、これまでに観たドラマ「よくおごってくれる綺麗なお姉さん」や「スノードロップ」と違って、前髪をおろしていて、実に可愛かったのですが、その前髪をおろした姿で登場しているのが本作『ベテラン 凶悪犯罪捜査班』。
前髪をあげたチョン・ヘインには惹かれなかったのですが、前髪おろした可愛い彼が、末っ子刑事ながら沈着冷静で、知性も感じさせてくれて、こんなに魅力的だったの?と驚きました。そして、こんな展開の物語を描いたリュ・スンワン監督の手腕、凄いです。
ファン・ジョンミンはじめ、オ・ダルス、オ・デファン等々、それこそベテラン俳優の活躍にも目を惹かれました。ホ・ジュノの友情出演も嬉しかったです。 (咲)


法では裁かれなかった悪人を標的にした連続殺人事件が発生。そんな司法制度に不満がある人々は、犯人のことを善と悪を裁く「正義のヒーロー」ともてはやす。それにしても目まぐるしく事件や犯罪が起こり、激しいアクションシーンが続く。ファン・ジョンミン演じる熱血ベテラン刑事ソ・ドチョルと凶悪犯罪捜査班に、さらにチョン・ヘイン演じるドチョルに心酔する新人刑事パク・ソヌも捜査に加わり、強力な体制ができ、事件は解決に近づくように見えたんだけど、あっという展開に。リュ・スンワン監督は興味深い物語を作るストーリーテラーだ!(暁)。

2024年/韓国/韓国語/118分/カラー/シネマスコープ/5.1ch
字幕翻訳 根本理恵
提供:KADOKAWA Kプラス MOVIE WALKER PRESS KOREA 
配給:KADOKAWA、KADOKAWA Kプラス 
公式サイト:https://veteran-movie.com/
★2025年4月11日(金)新宿ピカデリーほか全国ロードショー

posted by sakiko at 21:05| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ゲッベルス ヒトラーをプロデュースした男 原題:Führer und Verführer  英題:Goebbels and the Führer

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© 2023 Zeitsprung Pictures GmbH

監督・脚本:ヨアヒム・A・ラング
撮影:クラウス・フックスイェーガー
出演:ロベルト・シュタットローバー、フリッツ・カール、フランツィスカ・ワイズ

なぜ多くのドイツ人が犯罪的な 政権に従って戦争と大量殺戮に走ったのか

1945年4月、ソ連軍がベルリンに迫る中、写真や資料を暖炉の火で燃やすゲッベルス。「 私は民衆の扇動方法を公表してこなかった」「 私が総統を伝説にした」と豪語する。
4月30日、ヒトラーの自殺を見届け、遺言で新首相に任命されるも、翌5月1日、ゲッベルス夫妻は6人の子供たちとともに 自殺した。

1933年のヒトラー首相就任から1945年にヒトラーが亡くなるまでの間、プロパガンダを主導する宣伝大臣として、国民を扇動してきたヨーゼフ・ゲッベルス。
本作は、ゲッベルスが、いかにユダヤ人の一掃と侵略戦争へと突き進むヒトラーの先鋒を担ぐようになったかを、加害者からの目線で時系列で追った物語。

1938年、戦争を更に拡大しようとするヒトラーに、平和的な併合を主張するゲッ ベルス。ライバルたちは、宣伝大臣は宣伝より女に夢中だとヒトラーに告げ口する。ヒトラーの信頼を失ったゲッベルスは、愛人との関係も断ち切られ、自身の地位を回復させるため、ヒトラーが望む反ユダヤ映画を製作し、大衆を扇動する演説や戦勝パレードを次々と企画する・・・。

絶大的な権力を握った人物が、その取り巻きによって、さらに権力を行使していく様を見せつけてくれました。彼らの行ったようなフェイクニュースやプロパガンダが、今も繰り返されて世界にはびこっていることを憂います。それでも、ヒトラーやゲッベルスの末路が自死という悲劇であったように、握った権力は永遠ではないことを、世の独裁者は思い知ってほしいと思います。本作が反面教師になることを願ってやみません。でも、肝心の権力者が本作を観てくれるでしょうか・・・ (咲)

2024年/128分/ドイツ・スロバキア/ドイツ語
日本語字幕:廣川芙由美
配給:アットエンタテインメント
公式サイト:https://www.goebbelsmovie.com/
★2025年4月11日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国公開


posted by sakiko at 19:52| Comment(0) | ドイツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

プロフェッショナル(原題:In the Land of Saints and Sinners)

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監督:ロバート・ロレンツ
脚本:テリー・ロー、マーク・マイケル・マクナリー
撮影:トム・スターン
出演:リーアム・ニーソン(フィンバー・マーフィー)、ケリー・コンドン(デラン・マッキャン)、ジャック・グリーソン(ケビン)、キアランハインズ(ビンセント)、コルム・ミーニイ(ロバート・マキュー)

1970年代の北アイルランド。長年裏稼業として殺し屋を続けて来たフィンバー・マーフィは、引退すると決めた。静かに暮らしていたところへ、首都で爆破事件を起こしたアイルランド共和軍(IRA)の過激派テログループが村に逃げてくる。そのうちの一人が、隠れ家にしていた遠戚の少女を虐待していたのを知った。怒りにかられて制裁したフィンバーを、今度はテロ仲間(男の姉)が狙う。

物書きと称してひっそりと暮らしているフィンバーは、その村の人々と顔見知り。現職警官の友人までいます。正義と信じて爆破テロを実行するデランは、紛争で親を亡くし、姉弟2人で活動に身を投じているうちに冷酷になっていったようです。ケリー・コンドン迫力倍増していて怖い。フィンバーは、依頼された殺しからは手を引きましたが、幼い少女はじめコミュニティの人々を傷つけたくありません。静かな老後は遠ざかりました。
クリント・イーストウッドと長年仕事をしてきたロバート・ロレンツ監督、『マークスマン』に続いて2度目のリーアム・ニーソンとのタッグです。前作はメキシコ人の少年、今回は近所の少女、命がけで弱者を守る渋い役が似合います。パターンといえばそうですが、期待どおりにアクションを展開してくれるリーアム・ニーソン。出身地アイルランドを舞台に、テロも辞さない過激派グループと、殺し屋稼業の男の「正義」がぶつかりました。まだまだ活躍してくれそうです。(白)


2024年製作/アイルランド/106分/G
原題または英題:In the Land of Saints and Sinners
配給:AMGエンタテインメント
(C)FEGLOBAL LLC ALL RIGHTS RESERVED劇場公開日:2025年4月11日
https://professional-movie.jp
strong>★2025年4月11日(金)より全国ロードショー

posted by shiraishi at 18:30| Comment(0) | アイルランド | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

バーラ先生の特別授業  原題:Vaathi

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©Fortune Four Cinemas ©Sithara Entertainments ©Srikara Studios

監督・脚本:ヴェンキー・アトゥルーリ
製作:スーリヤデーヴァラ・ナーガほか
撮影:J・ユヴァラージ
音楽:G・V・プラカーシュ・クマール
出演:ダヌシュ(『クローゼットに閉じ込められた僕の奇想天外な旅』『グレイ・マン』『無職の大卒』)、サムユクタ、サムドラカニ(『RRR』)、タニケッラ・バラニ(『バーフバリ』シリーズ)、サーイ・クマール(『リシの旅路』)、ラージェーンドラン、ハリーシュ・ペーラディ(『囚人ディリ』)、スマント、(特別出演)バーラティラージャー

南インド、テルグ語とタミル語の両方を話す州境の村。
高校生のアビラームは、祖父が開いた村で最初で最後のビデオ店を父が学習塾代の為に売るというので、友人たちと片づけに行く。棚の奥に木箱に大事に収められたビデオを見つけ、もしかしたらポルノ?と観てみると、そこに映っていたのは、一人の青年が数学の授業をしている姿だった。一緒に収められていた貸出票の名前と住所を頼りに、40キロ離れた町にA.M.クマールを訪ねると、今は、県の行政長官だと聞かされる。県庁に訪ねていくと、A.M.クマールは部屋に掲げた写真を眺めながら、「ビデオの授業は私の恩師バーラ先生」と話し始める。
1993年、チョーラワラム村の公立校に赴任した数学のバーラ先生。美人のミーナクシ先生の存在に、一緒に赴任した二人の男性教師と共に心浮きたつが、生徒たちがいたのは初日だけ。皆、家計のため日銭を稼いでいるのがわかり、バーラ先生は学校に来られるように働きかける。生徒たちは戻ったものの、新任の男性教師二人が去り、バーラ先生は2クラス一緒に教えようとするが、カーストが違うから一緒に授業を受けられないという。必要であればカーストが違うことは問題にならないことを教えるが、さらに、大手私立教育機関の経営者ティルパティが妨害してくる。バーラ先生は受け持ちの生徒全員が共通試験で上位成績を上げることを目指す・・・

1990年代の経済自由化と1993年の教育制度の改革によって、インドに多くの私立教育機関や予備校が生まれ、高い授業料に応じた質の高い授業が提供されるようになったことが背景になっています。私学経営者ティルパティが、公立学校での授業を妨害し、さらに共通試験に向かう生徒たちも足止めさせてしまうという、これでもかという悪どさ。今は行政長官となったA.M.クマールが明かすバーラ先生の奮闘する姿に拍手喝采です。
バーラ先生の恩師も素晴らしくて、新任教師となったバーラ先生に「教師は仕事じゃない。使命」「自分の給料より、生徒の将来」とアドバイスしています。
さて、ビデオに映っていたバーラ先生の授業風景、どこで授業していたのかは、ぜひ劇場でご確認ください。(咲)


憎まれ役のティルパティが滔々と「教育は金になる」論をぶちあげます。庶民が食うや食わずで子供の幸せを願って工面したお金を吸い上げ、自分は高級車を乗り回しさらに儲けようとしています。そのわかりやすさったらないのですが、日本だとて似たようなものではありませんか。良い学校に入るため良い仕事につくため、子どものうちから塾通い、子どもらしく遊ぶ時間もないほど忙しい。授業料の安い国立大学に入れるのは、そうやって教育費をつぎ込んでこられた富裕層。奨学金という名前の借金を背負うのは、庶民です。
汚職にまみれた警察やパルパティの追従者に苦い思いを抱いて観ていました。救われるのは、バーラ先生の教えを素直に吸収して生徒たちが成長していく姿です。親のいうまま結婚するのではなく、学び続けて外国へ行くという女子、カーストに縛られずに生きる道を求める男子、そんな生徒たちが大人になって世界を変えていくはず。大人になってしまっても遅くはないですよ。目をつぶらないようにしましょう。(白)


2023年/インド/タミル語/134分
字幕:中島可愛・字幕監修:小尾淳
配給:SPACEBOX
公式サイト:https://spaceboxjapan.jp/balasensei/
★2025年4月11日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開.

posted by sakiko at 16:33| Comment(0) | インド | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ファレル・ウィリアムス:ピース・バイ・ピース(原題:Piece by Piece)

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監督・脚本・編集:モーガン・ネヴィル
出演:ファレル・ウィリアムス、スヌープ・ドッグ、ケンドリック・ラマー、ジャスティン・ティンバーレイク、グウェン・ステファニー

ファレル・ウィリアムスは73年にヴァージニアビーチに生まれ、一歩ずつ音楽の道に進んで行く。10代から音楽プロデューサーとして活動開始、シンガーソングライター、デザイナーなどマルチに活躍する彼の半生をレゴブロックアニメーションで作成した。家族や音楽業界の友人知人たちが彼の人となりや業績について語る。

そんなに活躍していた人だったとは、守備範囲外でまったく知りませんでした。全てがレゴでできているのですが、体型も顔(表情も豊か)も作りこまれています。ファレルは音が色で見えるのだそうで、とてもカラフル。背景の海もグラデーションのレゴで、寄せてくる波もちゃんと動いています。レゴのピースの情報をインプットし、実写で撮影してからレゴアニメーションとしてコンピューターが計算して作りだすのでしょうか?詳しいことを説明されてもきっと意味不明。ただただ、すごーい!と見とれてしまいました。レゴ好きな方必見。
モーガン・ネヴィル監督はカルチャー系のドキュメンタリーを作ってきていて『ヨーヨー・マと旅するシルクロード』も監督しています。ファレル本人のノリノリの歌もたくさん流れます。試写では思わず身体を揺らしてしまう方もいました。HPトップでは挿入歌が試聴できます。(白)


2023年/アメリカ/カラー/93分
配給:パルコ
(C)2024 FOCUS FEATURES LLC
https://pharrell-piecebypiece.jp/
★2025年4月4日(金)より全国ロードショー
posted by shiraishi at 12:05| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

シンシン/SING SING   原題:SING SING

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(C)2023 DIVINE FILM, LLC. All rights reserved.

監督:グレッグ・クウェダー
出演:コールマン・ドミンゴ、クラレンス・マクリン、ショーン・サン・ホセ、ポール・レイシー

ニューヨークにある最重警備のセキュリティを誇る「シンシン刑務所」。
ディヴァインGは、無実の罪で収監されたことを訴え続けている。刑務所内の収監者更生プログラムである<舞台演劇>グループに所属して、仲間たちと積極的に演劇に取り組み、自分を励ましている。ある日、刑務所いちの悪として知られるクラレンス・マクリン、通称“ディヴァイン・アイ“が演劇グループに参加することになる。新たな演目に向けての準備が始まるが、ディヴァイン・アイは何かと突っかかってくる・・・

収監されている男たちが、舞台演劇を通じて知り合い、胸の内を語り合い、友情をはぐくんでいく姿に、彼らが「そこ」にいる様々な事情を思いました。数人の俳優以外は、かつて収監中に舞台演劇グループに所属していた男たちが本人役を演じています。
ディヴァインGは、減刑聴聞の時に、積極的に構成プログラムとしての舞台演劇の取り組んだことを語るのですが、最後に、「今日のも演技?」と言われてしまいます。さて、ディヴァインGは減刑になるのでしょうか? 

舞台の始まる前に、皆で手を高くあげて「RTA」と叫びますが、これは「Rehabilitation Through the Arts(芸術を通した更生プログラム)」の略。
演劇を通じた収監者たちのセラピーを描いた映画として、イスラーム映画祭6で上映された『シェヘラザードの日記』(監督:ゼイナ・ダッカーシュ、2013年、レバノン)を思い出しました。レバノンのバアブダ女性刑務所で演劇を通じたドラマセラピーに参加する女性囚たちを描いたドキュメンタリーでした。出所した女性がかつて演劇を通じて友情をはぐくんだ仲間たちに会いに来る場面もありました。
『シンシン/SING SING』も、収監された人たちの更正に、集団で行う演劇が効果あるプログラムであることを見せてくれました。(咲)


2023年/アメリカ/カラー/ビスタ/5.1ch/107分
字幕翻訳:風間綾平
配給:ギャガ
公式サイト:https://gaga.ne.jp/singsing/
★2025年4月11日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国順次公開



posted by sakiko at 11:36| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする