2025年5月2日より 角川シネマ有楽町、池袋シネマ・ロサ、渋谷シネクイント、アップリンク吉祥寺ほか、全国順次公開
監督:婁 燁 ロウ・イエ( LOU Ye )
製作:マー・インリー、フィリップ・ボベール
脚本:ロウ・イエ マー・インリー
撮影:ツォン・ジエン
出演
ジャン・チェン:秦昊(チン・ハオ)
マオ・シャオルイ:毛暁瑞(マオ・シャオルイ)
サン・チー:斉渓(チー・シー)
イエ・シャオ:ホアン・シュエン
未完成の映画をコロナ禍で完成させようとするドキュドラマ。
時は2019年。10年電源を入れてなかったパソコンが起動され、そこに入っていた未完の映画を完成させたいと(婁燁監督と思われる)シャオルイ監督は思い、この映画の主演俳優ジャン(秦昊)を呼び出し「この映画を完成しよう」と説得。本人っぽく演じているので、そこもクスっと笑える。しかし「クイア映画」で、ジャンは10年前だったらよかったけど、今は妻子がいるので出演したくないと渋る。しかも公開されるあてもない。しかし、結局、撮影は開始される。
撮影もあと少しという頃、武漢からコロナによるパンデミックに。程なくしてホテルはロックダウンされ、主演俳優とクルーはホテルのそれぞれの部屋に閉じ込められる。部屋に閉込められた人達は身動きが取れず、コミュニケーション手段はスマホだけ。劇中ではコロナ禍で撮影されたスマホの動画が次々とスクリーンに映し出される。スマホでニュースを追いかけたり、オンライン会議や通信手段などなど。混沌とした画面が続く。コロナ禍、世界中の人々が体験したことがここに。そして映画はまた中断?
東京フィルメックスで上映され、「観客賞」受賞。
カンヌ映画祭でも特別上映作品として上映された。
これまでコロナ禍の映画をいくつか観てきたが、これほど、その状況をうまく活用した作品はなかったかも。現実とフィクションが入り交り、混乱ぶりがすごく出ていて、今となっては防護服など、あのコロナ禍の過度の服装が、笑い話にも思える。でもあの頃は真剣だった(暁)。
公式HP https://www.uplink.co.jp/mikansei/
シンガポール、ドイツ / 2024 / 107分
配給:アップリンク
2025年04月30日
2025年04月27日
わたのまち、応答セヨ
監督・撮影・編集:岩間玄
企画・プロデュース:土屋敏男
語り:岸井ゆきの
トンネルを抜けるとそこには「わたのまち」がある…
そう思い込んでいた。
「街の繊維産業に光を当てる映画を作ってほしい」と市の依頼を受け、三河・蒲郡市を訪れた監督は途方に暮れた。1200年前、日本に初めて綿花がもたらされた街。戦後、衣類が不足する中、織れば飛ぶように売れた空前の好景気で朝から晩まで街のあちこちで「ガチャン、ガチャン」と音が鳴り響いていた。しかし、かつての活気は失われ、織機の音も聞こえてこない。そこにあるのは、街の構造的な問題と人々の諦めムードだった。ここに描くべき希望があるのか?映画制作は難航を極める。そんな中、わたを種から育て紡ぐ80歳の職人と出会い、映画作りがその職人の背中を押し、街を揺さぶり、人々の眠っていた情熱が燃え上がっていく。そして、舞台は蒲郡からロンドンへ怒涛の如く展開し、日本のモノ作りの本気が、海を越えて人々の心を掴み、「繊維の街」に奇跡をもたらす。
歴史ある繊維産業がすっかり廃れてしまった蒲郡の町で、日本で初めて綿花がもたらされた地として、伝統を再興しようとする人たちの思いが、ほっこりと伝わってくる素敵なドキュメンタリー。ふんわりと青空に綿のように広がる雲のもと、わたを種から育てる方、かつての柄を再現しようとする職人さん、ふわふわとした衣装でロンドンの町を再現した織物を披露しながら舞う若い女性たち・・・ 岸井ゆきのさんのナレーションが、とても雰囲気があって、とても不思議なドキュメンタリーでした。
昨年10月に公開された『BISHU ~世界でいちばん優しい服』は、毛織物(ウール)の産地「尾州」を舞台にした親子の物語でした。
尾州(愛知県一宮市を中心に、津島市、稲沢市、江南市、岐阜県羽島市など、愛知県尾張西部エリアから岐阜県西濃エリア)が、世界三大毛織物(ウール)の産地だと知ったのですが、三河は、綿織物の伝統ある産地だったと知りました。
本作の中で、かつての綿織物の見本帳が、大事に保管されていて、それが外国の方の手にも渡っていて、伝統の素晴らしさが今に伝わっていることも知りました。(咲)
2024/日本映画/99分/ビスタ/DCP/5.1ch
Sponsored by 映画『わたのまち、応答セヨ』プロジェクト委員会
配給・宣伝:鈴正 JAYMEN TOKYO ©ゴンテンツ
公式サイト:https://watanomachi.com
公式X(旧Twitter):@watanomachi
★2025年5月2日(金)新宿シネマカリテ ほか全国ロードショー
政党大会 陰謀のタイムループ 原題:Maanaadu
監督:ヴェンカト・プラブ
脚本:ヴェンカト・プラブほか 製作:スレーシュ・カーマーッチ
撮影:リチャード・M・ナーダン 音楽:ユヴァン・シャンカル・ラージャー
出演:シランバラサン、S・J・スーリヤー、カリヤーニ・プリヤダルシャン
S・A・チャンドラシェ―カル、Y・G・マヘーンドラン、アラヴィンド・アーカーシュ、カルナーカラン、プレームジ・アマラン
ドバイから友人の結婚式に参列するためにインドに帰ってきた青年・カーリク。飛行機で隣り合わせた女性シータも、同じウーティ(南インド・タミル・ナードゥ州の避暑地)での結婚式に参列するという。カーリクは花嫁ザリーナ側の招待客だが、シータは花婿イルファンの同僚だという。女性たち数人にブルカを被らせて、花婿に花嫁を当てさせるゲームをする為、シータは花嫁にブルカを渡すよう頼まれる。シータは目印にブルカに黄色い粉をつけて渡す。ところが、このブルカを被った花嫁ザリーナをカーリクたちが連れ去る場面を見てしまう。実は、ザリーナをほかの男性と駆け落ちさせる作戦だった。車で逃走中に、カーリクの車がラフィークという男性を轢いてしまう。警察官・ダヌシュコディに拘束されたカーリクはラフィークの身代わりにプレスのIDカードを持たされ、政党大会の会場に連れていかれる。演説中の首相を撃てと命じられ、テロリスト犯に仕立てられたカーリクはその場で射殺される。が、気がつくと、朝のフライトの中だった・・・
死ぬたびにタイムループすることを悟ったカーリクは、暗殺テロをなんとかふせごうと、我が身を危険に投じて奔走します。警察官・ダヌシュコディは、州首相の座を狙っている政治家とグルになって、州首相を政党大会の場で暗殺し、宗教的対立から暴動を起こそうと企んでいたのです。
冒頭の飛行機の中の場面で、カーリクとシータの会話から、カーリクはイスラーム教徒で、シータはヒンドゥー教徒とわかります。シータはムスリムの友人も多いと、好意的です。
カーリクは、インド中央部のヒンドゥーの聖地ウッジャイン生まれ。母親が産気づいた時、モスクが破壊され暴動が起こり、ヒンドゥー教徒に助けられ、ヒンドゥー寺院で生まれたとシータに語ります。何度もタイムループするカーリクの話を聞いて、シータは、「アッラーとシヴァ神が組んで、あなたを通じてなんとかしようとしている。タイムループには目的があるはず」と語ります。無実のムスリムに罪をきせようとしているとも。
「アメリカで100人殺せばサイコ、イスラーム教徒が殺せばテロ」という言葉も出てきました。
山形国際ドキュメンタリー映画祭で上映されたインドの『わが理想の国』は、2019年に可決されたインド市民権改正法に基づく国民登録簿からイスラーム教徒が外されたことに抗議する女性たちを描いた映画でした。ノウシーン・ハーン監督、「今、インドではほんとにイスラーム教徒が虐げられているの」と語っていました。
去年2月からムンバイで仕事している私の友人も、パキスタンにも知り合いがいるしイスラームに関心があるのですが、とてもそのことを同僚に話せない雰囲気だと言っています。宗教に基づく印パ分離独立が、ヒンドゥー至上主義のモディ首相のもと、さらに対立を深めている様相で、平和共存できないものかと憂います。
この映画、インドのヒンドゥー教徒の観客にどのように受け止められたのかが気になります。(咲)
2021年/インド/タミル語/147分/R15+
配給:SPACEBOX
公式サイト:https://spaceboxjapan.jp/seitotaikai/
★2025年5月2日(金)より新宿ピカデリーほか全国順次公開
ミステリアス・スキン(原題:Mysterious Skin)
監督・脚本:グレッグ・アラキ
原作:スコット・ハイム「謎めいた肌」 (ハーパーBOOKS)
出演:ジョセフ・ゴードン=レヴィット(ニール・マコーミック)、ブラディ・コーベット(ブライアン・ラッキー)、ミシェル・トラクテンバーグ(ウェンディ)、ジェフリー・リコン(エリック)、ビル・セイジ(コーチ)、メアリー・リン・ライスカブ’(アヴァリン・フリーセン)、エリザベス・シュー(エレン・マコーミック)
カンザスの田舎町、1981年の夏。少年野球チームのブライアンとニールは、8歳のときコーチによって性加害を受けた。ブライアンはショックから、宇宙人にさらわれたので記憶をなくしたと思いこんでいた。一方、ニールはコーチに愛されていたと信じ、彼を追うように年上の男を相手に身体を売るようになっていた。
10年経ってブライアンは失われた記憶を取り戻そうとする。記憶のかけらを探すうち、知らず知らずニールに近づいていく。
原作はスコット・ハイムが自らの体験を元に書いた小説(95/邦訳は2016年発行)。日本では映画祭の上映だけで、一般公開されたのは初。子供のころの体験が人生に影を落とした2人の少年の痛ましいストーリーです。
子役からデビューしてまだブレイク前のジョセフ・ゴードン=レヴィットの初主演作。ブライアンを演じているのが、やはり子役からデビューしていたブラディ・コーベット。のちに監督となって、長編第3作目の『ブルータリスト』(24)はベネチア国際映画祭銀獅子賞(最優秀監督賞)、アカデミー賞にも多数ノミネート、エイドリアン・ブロディに2度目の主演男優賞をもたらしました。ほかに撮影賞、作曲賞を受賞しています。20年を経ての日本公開となったのは、このおかげもあるのでしょうか。
ニールの親友ウェンディ役のミシェル・トラクテンバーグが今年2月に亡くなっています。合掌(白)
2004年/アメリカ/カラー/105分/R15+
配給:SUNDAE
(C)MMIV Mysterious Films, LLC
https://sundae-films.com/mysterious-skin/
★2025年4月25日(金)より全国ロードショー
JOIKA 美と狂気のバレリーナ(原題:Joika)
監督・脚本:ジェームズ・ネイピア・ロバートソン
撮影:トマシュ・ナウミュク
振付:ジョイ・ウーマック
出演:タリア・ライダー(ジョイ・ウーマック)、ダイアン・クルーガー(ヴォルコワ)、オレグ・イヴェンコ(ニコライ)、ナタリア・オシポワ(本人)
15歳のジョイの夢は、ボリショイ・バレエ段のプリマ・バレリーナになること。一人ロシアに渡り、アカデミーの練習生になった。教師のヴォルコワのレッスンは厳しく、取り残されないように必死で頑張るジョイへの風当たりは強い。全員がライバルの研修生同士の足の引っ張り合いも激しい。もっと上達しなければ、とジョイ本人の要求も増すばかりだ。
2012年にアメリカ人女性で初めて「ボリショイ・バレエ団」とソリスト契約を結んだジョイ・ウーマックの実話を元にしたストーリー。『不思議の国のリリアン』で女子高生リリアンを演じたタリア・ライダーが、ジョイ役。夢を抱いて単身ロシアに学びに来た少女がアメリカ人であるという理由で、ほかの研修生の何倍もの苦労を味わいます。小さなときから一心に打ち込んできたジョイのこだわりは、はたからは狂気じみて見えますがどうしても諦めることはできません。どん底のジョイに手を差し伸べたのは厳しかったヴォルコワでした。
演じるダイアン・クルーガーはドイツ人。やはりプリマを志してイギリスのロイヤルバレエスクールに進みましたが、こちらは怪我で断念しました。ドイツに戻ってモデルに、パリで演技を学んで女優になって今に至っていますから、彼女の道は一つではなかったですね。ジョイのパートナー、ニコライ役のオレグ・イヴェンコはウクライナ出身。現役ダンサーのときに『ホワイト・クロウ』(2018/レイフ・ファインズ監督)ではルドルフ・ヌレエフ役に抜擢されています。久しぶりの映画出演。バレエファンはぜひ。(白)
2023年/イギリス 、ニュージーランド/カラー/111分
配給:ショウゲート
(C)Joika NZ Limited / Madants Sp. z o.o. 2023 ALL RIGHTS RESERVED.
https://joika-movie.jp/
★2025年4月25日(金)より絶賛公開中
2025年04月26日
王兵(ワン・ビン)監督最新作『青春 -苦ー 第2部』『青春 -帰ー 第3部』2作品同時公開
2025年4月26日(土)シアター・イメージフォーラムほか全国順次(2作同時公開) 一部の公開劇場では『青春 -春-』(第1部)のアンコール上映も 上映情報
© 2023 Gladys Glover – House on Fire – CS Production – ARTE France Cinéma – Les Films Fauves – Volya Films – WANG bing
『青春 -苦-』(第2部)監督:王兵(ワン・ビン)
原題:青春 苦 英題:YOUTH (HARD TIMES) 2024 年
フランス=ルクセンブルク=オランダ 226 分(3 時間46 分)字幕:磯尚太郎
© 2023 Gladys Glover - House on Fire - CS Production - ARTE France Cinéma - Les Films Fauves - Volya Films – WANG bing
『青春 -帰-』(第3部) 監督:王兵(ワン・ビン)
原題:青春 帰 英題:YOUTH (HOMECOMING) 2024 年
フランス=ルクセンブルク=オランダ 152 分(2 時間32 分)字幕:磯尚太郎
『青春 -春-』第 1 部 青春 春 はこちら
2023年 フランス=ルクセンブルク=オランダ 215分
第1部は昨年4月に日本公開
『鉄西区』『三姉妹 雲南の子』『死霊魂』などで知られる中国のドキュメンタリー作家、王兵(ワン・ビン)の最新作『青春』。3部作のうちの第2部『青春 -苦-』と第3部『青春 -帰-』が公開される。
第1部は2023年カンヌ国際映画祭で初上映され、翌年に日本公開。第2部『青春-苦-』は2024年8月のロカルノ映画祭、第3部『青春-帰-』は2024年9月のヴェネチア国際映画祭で世界初上映。今回、1,2,3ブ同時公開される映画館もあり、3本一緒に上映されるのは日本が初めてとのこと。
2部、3部は、1部同様、長江デルタ地域の「子供服の製造」で有名な、織里(しょくり)という町の縫製工場で働く若者たちの労働と日常が描かれる。農民工と呼ばれる、出稼ぎの若者たちを通して、中国の若者たちの姿、出稼ぎの街の姿、農民工たちの故郷の姿を通し、てこの時代の中国の姿が浮かびあがってくる3部作。
『青春』-苦-(第2部)
第2部タイトルは「苦」。中国、織里。ある縫製工場で繰り広げられる若者たちの姿。1部と同じく、ものすごいスピードでミシンで子供服を縫製するシーンが繰り返し映し出される。子供服製造の速度を競い合ったり、歌を流しながら、おしゃべりをしながら、ミシンに向かう若者たち。笑い合ったり、ふざけ合ったり、喧嘩したり、そんな光景が続く。ミスばかりする者もいて仲間に呆れられ、働きたくない者も。帳簿をなくして、社長に賃金は払えないと言われたり、賃上げ交渉のシーンも。交渉決裂で、なかなか妥結しない。そういうのが延々映し出される。別の工場では、社長が全財産を持ち逃げしてしまい、賃金が支払われなかったり、生々しい状況が続く。気楽に働いているようだけど、そういうリスクもいろいろ出てくる。そして、春節を祝うため、故郷へ帰る人々。そして、故郷までカメラは追いかける。
『青春』-帰-(第3部)
春節の休暇が近づき、職工たちは故郷で春節を祝うため郷里に順次戻り、織里の縫製工場は閑散としている。わずかに残った労働者たち。カメラは彼らの故郷まで追いかける。故郷で春節を祝う人々。休暇中に結婚式を挙げる人もがいる。それぞれの故郷での出来事を追う。でも、故郷には仕事がない。春節の休暇が終わり、労働者たちはまた織里の縫製工場に戻る。働き場所がなくなって、職場が変わった人もいる。そして、新たに若い世代の出稼ぎが工場にやってきた。変わらない生活、変わっていく生活。でも同じように、ミシンの音は続く。
予告編
公式HPはこちら
ムヴィオラ創立25周年記念作品
配給:ムヴィオラ
シアター・イメージフォーラム
●1週目4/26(土)〜5/2(金)&3週目5/10(土)〜5/16(金)
1部『青春-春-』(3時間35分)11:00-14:40
2部『青春-苦-』(3時間46分)14:55-18:56(休憩あり)
3部『青春-帰-』(2時間32分) 19:10-21:47
●2週目5/3(土)〜5/9(金)&4週目5/17(土)〜5/23(金)
2部『青春-苦-』11:00-15:01(休憩あり)
3部『青春-帰-』15:30-18:07
1部『青春-春-』18:20-22:00
●4/29(火・祝)、5/10(土)は特別上映『鉄西区』(9時間5分)11:30-20:55(休憩2回あり)
●5/5(月・祝)は特別上映『死霊魂』(8時間28分)12:00-20:48(休憩2回あり)
※上記3日は『青春』は休映となります。
© 2023 Gladys Glover – House on Fire – CS Production – ARTE France Cinéma – Les Films Fauves – Volya Films – WANG bing
『青春 -苦-』(第2部)監督:王兵(ワン・ビン)
原題:青春 苦 英題:YOUTH (HARD TIMES) 2024 年
フランス=ルクセンブルク=オランダ 226 分(3 時間46 分)字幕:磯尚太郎
© 2023 Gladys Glover - House on Fire - CS Production - ARTE France Cinéma - Les Films Fauves - Volya Films – WANG bing
『青春 -帰-』(第3部) 監督:王兵(ワン・ビン)
原題:青春 帰 英題:YOUTH (HOMECOMING) 2024 年
フランス=ルクセンブルク=オランダ 152 分(2 時間32 分)字幕:磯尚太郎
『青春 -春-』第 1 部 青春 春 はこちら
2023年 フランス=ルクセンブルク=オランダ 215分
第1部は昨年4月に日本公開
『鉄西区』『三姉妹 雲南の子』『死霊魂』などで知られる中国のドキュメンタリー作家、王兵(ワン・ビン)の最新作『青春』。3部作のうちの第2部『青春 -苦-』と第3部『青春 -帰-』が公開される。
第1部は2023年カンヌ国際映画祭で初上映され、翌年に日本公開。第2部『青春-苦-』は2024年8月のロカルノ映画祭、第3部『青春-帰-』は2024年9月のヴェネチア国際映画祭で世界初上映。今回、1,2,3ブ同時公開される映画館もあり、3本一緒に上映されるのは日本が初めてとのこと。
2部、3部は、1部同様、長江デルタ地域の「子供服の製造」で有名な、織里(しょくり)という町の縫製工場で働く若者たちの労働と日常が描かれる。農民工と呼ばれる、出稼ぎの若者たちを通して、中国の若者たちの姿、出稼ぎの街の姿、農民工たちの故郷の姿を通し、てこの時代の中国の姿が浮かびあがってくる3部作。
『青春』-苦-(第2部)
第2部タイトルは「苦」。中国、織里。ある縫製工場で繰り広げられる若者たちの姿。1部と同じく、ものすごいスピードでミシンで子供服を縫製するシーンが繰り返し映し出される。子供服製造の速度を競い合ったり、歌を流しながら、おしゃべりをしながら、ミシンに向かう若者たち。笑い合ったり、ふざけ合ったり、喧嘩したり、そんな光景が続く。ミスばかりする者もいて仲間に呆れられ、働きたくない者も。帳簿をなくして、社長に賃金は払えないと言われたり、賃上げ交渉のシーンも。交渉決裂で、なかなか妥結しない。そういうのが延々映し出される。別の工場では、社長が全財産を持ち逃げしてしまい、賃金が支払われなかったり、生々しい状況が続く。気楽に働いているようだけど、そういうリスクもいろいろ出てくる。そして、春節を祝うため、故郷へ帰る人々。そして、故郷までカメラは追いかける。
『青春』-帰-(第3部)
春節の休暇が近づき、職工たちは故郷で春節を祝うため郷里に順次戻り、織里の縫製工場は閑散としている。わずかに残った労働者たち。カメラは彼らの故郷まで追いかける。故郷で春節を祝う人々。休暇中に結婚式を挙げる人もがいる。それぞれの故郷での出来事を追う。でも、故郷には仕事がない。春節の休暇が終わり、労働者たちはまた織里の縫製工場に戻る。働き場所がなくなって、職場が変わった人もいる。そして、新たに若い世代の出稼ぎが工場にやってきた。変わらない生活、変わっていく生活。でも同じように、ミシンの音は続く。
予告編
公式HPはこちら
ムヴィオラ創立25周年記念作品
配給:ムヴィオラ
シアター・イメージフォーラム
●1週目4/26(土)〜5/2(金)&3週目5/10(土)〜5/16(金)
1部『青春-春-』(3時間35分)11:00-14:40
2部『青春-苦-』(3時間46分)14:55-18:56(休憩あり)
3部『青春-帰-』(2時間32分) 19:10-21:47
●2週目5/3(土)〜5/9(金)&4週目5/17(土)〜5/23(金)
2部『青春-苦-』11:00-15:01(休憩あり)
3部『青春-帰-』15:30-18:07
1部『青春-春-』18:20-22:00
●4/29(火・祝)、5/10(土)は特別上映『鉄西区』(9時間5分)11:30-20:55(休憩2回あり)
●5/5(月・祝)は特別上映『死霊魂』(8時間28分)12:00-20:48(休憩2回あり)
※上記3日は『青春』は休映となります。
2025年04月20日
30年後 -ふたりのボリビア兵- 原題:Los Viejos Soldados
監督:ホルヘ・サンヒネス
音楽:セルヒオ・プルデンシオ
出演:クリスティアン・メルカード、ロベルト・チョケワンカ
隣国パラグアイとのチャコ戦争(1932年~1935年)の時代。
アイマラ人のセバスティアンは、結婚祝いの最中に白人兵によって暴力的にボリビア軍に徴兵される。足を撃たれ負傷したセバスティアンは、白人兵のギレェルモに助けられる。彼は先住民の文化に興味を持ち、先住民を尊敬していた。ふたりの間に友情が育まれるが、上官の人種差別的な振る舞いに反抗したギレェルモは、軍事裁判で死刑判決を言い渡される。ギレェルモは脱走を図り、セバスティアンも同行するが、やがて二人は再会を誓いながらも別々の道をたどっていく。
ギレェルモは、アイマラ人で教師のベネディクタと恋に落ち、アイマラ人の村で自給自足の生活を始める。一方、セバスティアンは錫鉱山で働き始め、労働争議の先鋒に立つが、やがて国営企業の要職に就く。果たして二人は再会できるのか・・・
スペインの植民地支配から独立を果たしたボリビア。16世紀のスペイン人侵略者の子孫である白人と、先住民、そして混血の人たち。それぞれの文化、価値観が違う中で、本作では、先住民の文化に関心を持ち、自ら先住民の村で暮らし始める白人のギレェルモの存在がなんといっても光ります。貧しいながら、自然と共に暮らしてきた先住民のセバスティアンは、無理矢理徴兵されたことをきっかけに、労働者の権利のために闘うことになります。
かなり強引な植民地支配をした白人に対する理不尽な思いは、おそらく先住民の子孫何代にもわたって拭い去ることはできないでしょう。混血ともなれば、さらに思いは複雑。
世界のどこであっても、多種多様なルーツを持つ人たちが、互いを思いやりながら暮らせる社会であってほしいと願います。(咲)
2022年/カラー/105分
製作:ウカマウ集団
配給:シネマテーク・インディアス
配給協力:スタンス・カンパニー/ムヴィオラ 宣伝:スリーピン
公式サイト:https://www.jca.apc.org/gendai/ukamau/
★2025年4月26日(土)~ 5月23日(金)K's cinema
ウカマウ集団60年の全軌跡
(『女性ゲリラ、フアナの闘い ボリビア独立秘史』『30年後 -ふたりのボリビア兵』-他 全14作品)
http://cinejour2019ikoufilm.seesaa.net/article/514322506.html
女性ゲリラ、フアナの闘い -ボリビア独立秘史- 原題:Guerrillera de la Patria Grande, Juana Azurduy
監督:ホルヘ・サンヒネス
音楽:セルヒオ・プルデンシオ
出演:メルセデス・ピティ・カンポス、クリスティアン・メルカード、フェルナンド・アルセ
スペイン植民地支配から、祖国を独立に導いた女性戦士フアナ
彼女はなぜ独立の美酒に酔おうとしなかったのか・・・
1825年、司令官ランサの案内で、解放者シモン・ボリーバルと、ボリビアの初代大統領となるアントニオ・ホセ・デ・スクレが、独立の英雄フアナ・アスルドゥイの家を訪ねる
スペイン支配からようやく独立宣言をした記念式典に、フアナが頑なに出席を拒んでいたからだ。
ボリーバルとスクレに、フアナは自らが経験したことを語り始める。
16年に渡ったスペイン植民地主義者に対する激しい戦いの中で、フアナはゲリラ司令官だった夫を亡くし、4人の子どもも失っていた・・・
フアナ・アスルドゥイ(1780~1862)
チュキサカ(現在のボリビア、スクレ)出身の女性独立運動家。紙幣にもなっている。
父はバスク系白人の農園経営者、母は先住民。スペイン語だけでなく、先住民のケチュア語とアイマラ語も堪能だったといわれる。
1805年、マヌエル・アサンシオ・バディジャと結婚。ふたりは革命家仲間で、スペインからの独立のため、共に武器をとって戦った。夫マヌエルは、もっとも尊敬されたゲリラ司令官だった。夫や子どもを失う不幸に見舞われながらも、ボリビアの陸軍大佐とアルゼンチンの陸軍中佐に任瑛され、6000人に及ぶ軍隊を指揮したと言われている。
1825年にボリビアが独立を果たすと、故郷スクレに帰還。その後、フアナは存在を忘れられ、独立政府から与えられた軍人年金も取り消され、1862年、貧困の中、82歳で亡くなった。
1世紀を経て、独立の英雄として再評価され、遺体はスクレ市がフアナに敬意を表して建立した霊廟に移された。
スペインの植民地支配からの独立を求めて、果敢に闘った女性がいたことを知ることができました。100人を超える独立活動家たちは、闘いの中で多くが命を落とし、独立を果たした祖国を見ることができたのは、ほんのわずかだったそうです。
フアナは独立を見届けましたが、独立しても、まだ平穏な時代にはならないと感じていたようです。
フアナの闘いは、植民地支配からの独立だけでなく、女性として、母親としての権利獲得のためのものでした。サンヒネス監督は、「多くの女性たちに、とりわけ観てほしい」と語っています。 (咲)
2016年/カラー/103分
製作:ウカマウ集団
配給:シネマテーク・インディアス
配給協力:スタンス・カンパニー/ムヴィオラ 宣伝:スリーピン
公式サイト:https://www.jca.apc.org/gendai/ukamau/
★2025年4月26日(土)~ 5月23日(金)K's cinema

ウカマウ集団60年の全軌跡
(『女性ゲリラ、フアナの闘い ボリビア独立秘史』『30年後 -ふたりのボリビア兵』-他 全14作品)
http://cinejour2019ikoufilm.seesaa.net/article/514322506.html
ウカマウ集団60年の全軌跡 (『女性ゲリラ、フアナの闘い ボリビア独立秘史』『30年後 -ふたりのボリビア兵-』他 全14作品)
2025年はボリビア独立200周年の記念年
そして、日本との協働50周年
ウカマウの60年の軌跡の全てを一挙上映!
配給:シネマテーク・インディアス
配給協力:スタンス・カンパニー/ムヴィオラ 宣伝:スリーピン
公式サイト:https://www.jca.apc.org/gendai/ukamau/
★2025年4月26日(土)~ 5月23日(金)K's cinema(新宿)にて開催
南米ボリビアの映画集団ウカマウ
世界をひっくり返した新しい映画運動と時を同じく
60年代から先住民の視点に立った映画づくりを続ける
ウカマウ映画の五原則
〔ホルヘ・サンヒネス監督〕
第一:アンデス世界に固有の円環的な時間概念に基づいた語りの仕組みとしての「長回し」を活用すること
第二:社会的な調和を重んじるアンデス的な概念に照応させて、個人的な主人公ではなく集団的な主人公を重視すること
第三:西洋映画に典型的な方法である、観客を脅しつけ驚愕させることで画面に一体化させてしまう「スペクタクル」を排し、内省的なふり返りを促す方法を生み出すこと
第四:「クローズアップ」の使用をできる限り避けること
第五:他ならぬ歴史的な現実を生き抜いた人びと自身が演技者となるような場で協働すること
南米ボリビアの映画製作集団ウカマウ。世界に新しい映画の波をもたらしたヌーヴェルヴァーグと時を同じく、白人層に力が集中していたボリビアで、住民の半数以上を占める先住民(アイマラ人やケチュア人ら)に無関係な映画を作ることはできないと考えたホルヘ・サンヒネスらを中心に、1962年に活動を開始。今もなお世界に訴えかける映画製作を続けている。その影響力は、中南米、欧米にとどまらずアジアの映画作家に及んでいる。今回の特集では、初上映となる新作2本を含む全14作品を一挙上映。
◆上映作品◆
各作品の内容につきましては、こちらで!
https://www.ks-cinema.com/movie/ukamau60/
女性ゲリラ、フアナの闘い -ボリビア独立秘史-
Guerrillera de la Patria Grande, Juana Azurduy
2016年/カラー/103分
監督:ホルヘ・サンヒネス
シネジャ作品紹介
30年後 -ふたりのボリビア兵-
Los Viejos Soldados
2022年/カラー/105分
監督:ホルヘ・サンヒネス
シネジャ作品紹介
革命
Revolución
64年ライプチッヒ映画祭ヨリス・イヴェンス賞 ほか
1962年/白黒/10分
落盤
Derrumbamiento
¡Aysa!(ケチュア語原題)
1965年/白黒/20分
ウカマウ
Así es
Ukamau(アイマラ語原題)
‘66年カンヌ映画祭青年監督賞
1966年/白黒/75分
コンドルの血
Sangre de Cóndor
Yawar Mallku(ケチュア語原題)
‘70年仏ジョルジュ・サドゥール賞 ほか
1969年/75分/白黒
人民の勇気
El Coraje del Pueblo
‘71年ベルリン映画祭 OCIC(国際カトリック教会)賞
'71ペサロ映画祭最優秀映画賞
1971年/白黒/93分
第一の敵
El Enemigo Principal
Jatun Auk'a(ケチュア語原題)
‘75年カルロヴィヴァリ映画祭グランプリ ほか
1974年/白黒/98分
ここから出ていけ!
Fuera de Aquí!
Lloksy Kaymanta(ケチュア語原題)
‘77年カンヌ映画祭監督週間正式出品 ほか
1977年/白黒/102分
ただひとつの拳のごとく
Las Banderas del Amanecer
‘83年ハバナ新ラテンアメリカ映画祭ドキュメンタリー部門グランプリ
1983年/カラー/92分
地下の民
La Nación Clandestina
‘89年サンセバスチャン映画祭グランプリ
‘89年ハバナ新ラテンアメリカ映画祭 外国紙グラウベル・ローシャ賞
1989年/カラー/125分
鳥の歌
Para Recibir el Canto de los Pájaros
‘95年ロカルノ映画祭「質と刷新」賞
‘95年ボリビア映画祭 銀撫子賞
1995年/カラー/100分
最後の庭の息子たち
Los Hijos del Ultimo Jardín
2003年/カラー/97分
叛乱者たち
Insurgentes
‘13国際政治映画祭第一位(ブエノスアイレス) ほか
2012年/カラー/83分
パリピ孔明 THE MOVIE
監督:渋江修平
原作:四葉タト 小川亮
脚本:根本ノンジ
撮影:新出一真
音楽:近谷直之
出演:向井理(諸葛孔明)、上白石萌歌(月見英子)、小林(森山未來)、ディーン・フジオカ(劉備)、神尾楓珠(司馬潤)、詩羽(shin)
三国時代の天才軍師・諸葛孔明がなぜか現代の渋谷に転生してしまった。たまたま耳にしたアマチュアシンガー月見英子の歌声に心奪われた孔明は、英子の軍師となろうと決心する。目指すは音楽での天下泰平。
日本を代表する3大音楽レーベル、KEY TIME、SSSミュージック、V-EXが頂点を競う、史上最大の音楽バトルフェス<MUSIC BATTLE AWARDS 2025>の開催が決定。絶好の機会!と孔明は英子を励まして参戦する。そこにはかつての宿敵の末裔もいた。
テレビ番組を毎週楽しみに観ていた皆様、お待たせしました。劇場版はパワーアップして登場です。メンバーが勢ぞろいしていつものやりとりで笑わせます。英子の一番のライバルとされるのが、司馬懿(しばい)の末裔・司馬潤とその妹でシンガーのshin。負けず嫌いの兄と天真爛漫な妹は苦労してここまで這い上がってきたのです。
何といってもラストの音楽バトルフェスは、必見!これまでのメンバーたちに加え、たくさんのゲストが登場し、熱のこもったパフォーマンスで魅了します。映画を観に来て、ライブも観られてラッキー!!音響の良い劇場の大画面で観るのをおすすめ。スクリーンの6000人以上の観客と一体になってお楽しみください。(白)
2025年/日本/カラー/118分
配給:松竹
(C)四葉夕ト・小川亮/講談社 (C)2025 フジテレビジョン 松竹 講談社 FNS27社
https://movies.shochiku.co.jp/paripikoumei-movie/
★2025年4月25日(金)より全国ロードショー
2025年04月19日
花まんま
監督:前田哲
原作:朱川湊人
脚本:北敬太
撮影:山本英夫
出演:鈴木亮平(加藤俊樹)、有村架純(加藤フミ子)、鈴鹿王士(中沢太郎)、ファーストサマーウイカ(三好駒子)、安藤玉恵(加藤ゆうこ)、板橋駿谷(加藤恭平)、オール阪神(三好貞夫)、オール巨人(山田社長)、六角精児(繁田宏一)、キムラ緑子(繁田房枝)、酒向芳(繁田仁)
俊樹とフミ子は両親が交通事故で亡くなってから、2人きりで暮らしている。兄の俊樹は亡き父との約束「妹を守る」を忘れずに、親代わりとして今まで頑張ってきた。中沢太郎とフミ子の結婚が決まり、肩の荷を下ろしたような心持だ。式が近づいたある日、フミ子は俊樹に黙ってある家を訪ねる。子どものころ、俊樹は様子のおかしいフミ子に気づいて理由を聞いたことがあった。封印していた思い出が蘇ってくる。
兄と妹の心温まるストーリーに、不思議なエピソードが加わっています。ネタバレすると興をそぐので書けませんが、ないとは言い切れません。こんなことあったらいいな、とさえ思います。
俳優陣がこの物語を支えてリアルな感情を呼び起こしてくれるのですが、中でも印象に残ったのが酒向芳さんでした。凄みのある悪役、奇怪な役でも存在感を発揮する方で、最初に見たとき「この人は誰!?」と検索しましたっけ。今回の悲しみが服を着ているようなこういう役もハマります。鈴木亮平お兄ちゃんの祝辞もよかったですが、酒向さんの表情に涙腺刺激されました。「花まんま」は子どものころ、野の花を摘んでお弁当箱に詰め、花をごはんに見立てた遊び。キーアイテムになっています。(白)
2025年/日本/カラー/118分
配給:東映
(C)2025「花まんま」製作委員会
https://hanamanma.com/
★2025年4月25日(金)より全国ロードショー
2025年04月16日
太陽(ティダ)の運命
3月22日(土)より沖縄 桜坂劇場 先行公開、
4月19日(土)より 東京 ユーロスペースほか全国順次公開
上映情報
大田昌秀(おおたまさひで)と翁長雄志(おながたけし)
政治的立場は正反対ながら、国と激しく対峙した二人の沖縄県知事
二人の沖縄県知事が歩んだ人生
監督:佐古忠彦 撮影:福田安美 音声:町田英史 編集:庄子尚慶 語り:山根基
音楽:兼松衆 阿部玲子 澤田佳歩 佐久間奏 栗原真葉 三木 深
選曲・サウンドデザイン:御園雅也 音楽制作プロデューサー:水田大介
音響効果:田久保貴昭
プロデューサー:小濱裕 嘉陽順 嘉手納央揮 米田浩一郎 松田崇裕 津村有紀
テーマ曲:「艦砲ぬ喰ぇー残さー」 作詞・作曲:比嘉恒敏
劇中歌歌唱:でいご娘/ エンディングテーマ演奏:辺土名直子
政治的立場は正反対で、激しく対立しながら、結局は、国と激しく対峙した二人の沖縄県知事。1972年の本土復帰後、第4代目知事の大田昌秀(任期1990~1998年)と第7代目知事の翁長雄志(任期2014~2018年)。大田は、軍用地強制使用の代理署名拒否をし(1995)、国と対立した時には翁長氏は議会で激しく太田知事を攻撃していた。しかし、後に翁長氏が県知事になった時には、辺野古埋め立て承認の取り消しによって国と法廷で争った(2015)。二人の知事は、保革の立場を越えて、沖縄の立場を守るため、国と対峙した。
国との対立は、民主主義や地方自治のあり方、この国の矛盾を浮き彫りにした。二人は知事として何を目指し、何と闘かったのか。
沖縄では昔、リーダーのことを「ティダ」(太陽)と言っていた。それで知事のことを「太陽(ティダ)」ととらえたタイトルにしたという。
沖縄戦後史を描いた『米軍が最も恐れた男 その名は、カメジロー』2部作(2017/19)、戦中史を描いた『生きろ 島田叡―戦中最後の沖縄県知事』(2021)に続く佐古忠彦監督の最新作は、それぞれの信念に基づき生きた二人の知事の不屈の闘いを通じて、沖縄が抱える問題や民主主義の危機も浮き彫りにした。
二人の人間的な魅力に光を当て、彼らの人生に関わった多くの人々の証言を盛り込み、二人の生き様を通して沖縄現代史に切り込んだ。
日本にあるアメリカ軍の基地の70%あまりが沖縄にあるという。基地があることは、メリットだけでなくデメリットもある。基地があることで起こる事故や事件。罪を犯した米兵たちは、治外法権で、罪を負わずに済んでしまうこともあり、基地があることの是非が問われてきた。
そんな沖縄では、常に「保守か革新か」「基地か経済か」という選択が迫られてきた。大田知事と翁長知事は、かつて深く激しく対立していた政敵でした。その二人が、いつのまにか同じ道を歩み、重なっていく姿が見えてくる。そこに至る人間のドラマが描かれます。
私は、70年安保の世代ですが、ずっと「左翼」の人と「右翼」の人が対立関係のように言われていたけど、それにはいつも違和感がありました。彼らは真逆のように言われているけど、「日本をなんとかしなければいけない」という部分では同じだと思ってきました。この二人の知事の場合も、結局「沖縄を思う心」でつうじていたのだと思います。(暁)
公式HP: https://tida-unmei.com
【2025年/日本/日本語 カラー(一部モノクロ)ビスタ/5.1ch/129分】
琉球放送創立70周年記念作品 制作:琉球放送 TBSテレビ
配給:インターフィルム
4月19日(土)より 東京 ユーロスペースほか全国順次公開
上映情報
大田昌秀(おおたまさひで)と翁長雄志(おながたけし)
政治的立場は正反対ながら、国と激しく対峙した二人の沖縄県知事
二人の沖縄県知事が歩んだ人生
監督:佐古忠彦 撮影:福田安美 音声:町田英史 編集:庄子尚慶 語り:山根基
音楽:兼松衆 阿部玲子 澤田佳歩 佐久間奏 栗原真葉 三木 深
選曲・サウンドデザイン:御園雅也 音楽制作プロデューサー:水田大介
音響効果:田久保貴昭
プロデューサー:小濱裕 嘉陽順 嘉手納央揮 米田浩一郎 松田崇裕 津村有紀
テーマ曲:「艦砲ぬ喰ぇー残さー」 作詞・作曲:比嘉恒敏
劇中歌歌唱:でいご娘/ エンディングテーマ演奏:辺土名直子
政治的立場は正反対で、激しく対立しながら、結局は、国と激しく対峙した二人の沖縄県知事。1972年の本土復帰後、第4代目知事の大田昌秀(任期1990~1998年)と第7代目知事の翁長雄志(任期2014~2018年)。大田は、軍用地強制使用の代理署名拒否をし(1995)、国と対立した時には翁長氏は議会で激しく太田知事を攻撃していた。しかし、後に翁長氏が県知事になった時には、辺野古埋め立て承認の取り消しによって国と法廷で争った(2015)。二人の知事は、保革の立場を越えて、沖縄の立場を守るため、国と対峙した。
国との対立は、民主主義や地方自治のあり方、この国の矛盾を浮き彫りにした。二人は知事として何を目指し、何と闘かったのか。
沖縄では昔、リーダーのことを「ティダ」(太陽)と言っていた。それで知事のことを「太陽(ティダ)」ととらえたタイトルにしたという。
沖縄戦後史を描いた『米軍が最も恐れた男 その名は、カメジロー』2部作(2017/19)、戦中史を描いた『生きろ 島田叡―戦中最後の沖縄県知事』(2021)に続く佐古忠彦監督の最新作は、それぞれの信念に基づき生きた二人の知事の不屈の闘いを通じて、沖縄が抱える問題や民主主義の危機も浮き彫りにした。
二人の人間的な魅力に光を当て、彼らの人生に関わった多くの人々の証言を盛り込み、二人の生き様を通して沖縄現代史に切り込んだ。
日本にあるアメリカ軍の基地の70%あまりが沖縄にあるという。基地があることは、メリットだけでなくデメリットもある。基地があることで起こる事故や事件。罪を犯した米兵たちは、治外法権で、罪を負わずに済んでしまうこともあり、基地があることの是非が問われてきた。
そんな沖縄では、常に「保守か革新か」「基地か経済か」という選択が迫られてきた。大田知事と翁長知事は、かつて深く激しく対立していた政敵でした。その二人が、いつのまにか同じ道を歩み、重なっていく姿が見えてくる。そこに至る人間のドラマが描かれます。
私は、70年安保の世代ですが、ずっと「左翼」の人と「右翼」の人が対立関係のように言われていたけど、それにはいつも違和感がありました。彼らは真逆のように言われているけど、「日本をなんとかしなければいけない」という部分では同じだと思ってきました。この二人の知事の場合も、結局「沖縄を思う心」でつうじていたのだと思います。(暁)
公式HP: https://tida-unmei.com
【2025年/日本/日本語 カラー(一部モノクロ)ビスタ/5.1ch/129分】
琉球放送創立70周年記念作品 制作:琉球放送 TBSテレビ
配給:インターフィルム
2025年04月13日
私の親愛なるフーバオ(英題:My Dearest Fu Bao)
監督:シム・ヒョンジュン、トーマス・コー
フーバオ一家:フーバオ、ルイバオ&フイバオ(フーバオの双子の妹)、アイバオ(母)、ローバオ(父)
飼育員:カン・チョルウォン、ソン・ヨングァン、オ・スンヒ
2016年に韓国にやってきたつがいのジャイアントパンダ、アイバオとローバオの間に2020年待望の赤ちゃんが生まれました。
フーバオ(福宝)と名付けられた男の子は、たくさんの注目と愛情を受けすくすくと成長。双子の妹たちも生まれ、可愛いしぐさで動物園にやってくる人々を魅了しました。野生のパンダは中国の一部の地域にしか生息していない保護動物。飼育や繁殖の研究のために「貸与」という形になっています。生まれた子どもパンダは一定の期間育てた後中国へ返還する決まり。フーバオは4歳になり、別れの日が迫っています。
生まれたときから、大切に見守り育ててきたパンダの子、フーバオ。誕生のそのときから返すことがわかっています。ファンはいなくなるのが寂しいし、悲しいと言うことができますが、飼育員は普段と変わりないように仕事をしています。それでも期日が近づくと心が揺れてきます。愛くるしいパンダの様子と飼育にあたる人たちの仕事を丁寧に見せています。特に中国までフーバオに付き添う飼育員のカン・チョルウォンは預かっていた宝物を無事に届ける責務を全うすることと、孫を手放すような寂しさと両方だったかもしれません。
日本では上野動物園と、和歌山県のアドベンチャーワールドの2ヵ所に4頭ずつのパンダがいます。昨年それぞれ返還もされています。この映画と同じように別れを惜しんだのでしょうね。まだ当分可愛い姿を観ていられそうです。(白)
韓国でもパンダフィーバーがあった! 日本でも何度かパンダフィーバーがあったけど、韓国でもパンダフィーバーがあったんですね。飼育員たちの奮闘記でもあります。かいがしくフーバオに接する飼育員カン・チョルウォンさんの姿を観て、とても胸が熱くなりました。檻の中で暮らしているパンダを見て可哀そうだなと思いつつ、マイペースのフーバオや他のパンダたちに心癒されます。パンダは中国語では熊猫と書きますが、熊の仲間なのに怖さではなく愛くるしさが感じられます。でも怒ったら怖いのかな。いろいろ想像がわいてきます。
私は日本のパンダは見たことがなくて、香港の海洋公園にいるパンダを見たのが唯一の生パンダです。パンダにはとても興味があるのだけど、上野動物園で、たくさん人が並んで見に行くのを見ると行く気になれません。でも、この映画を観たら、1回は日本の動物園でパンダを見てみたいと思いました。和歌山のアドベンチャーワールドに行ってみようかな~。(暁)
なんて素敵な映画なのでしょう! 飼育員の方たちの思いが丁寧に描かれていて、やさしい雰囲気の歌がしっとりと心に響きました。
折しも、4/26、和歌山のアドベンチャーワールドのパンダ4頭、すべて6月に返還のニュース。日本のパンダは上野だけになるようです。
私は、上野に初めてパンダが来た時、福岡から友達がパンダを観るためだけに上京。1時間位並んで、ほんの数分のパンダとの対面でした。友達が、もう一度並ぶと言って、付き合ったのを思い出します。
成都の動物園に行ったことがあって、狭い檻の中に十数頭のパンダがいて、さすが本場と思いながらも、ぎゅうぎゅう詰めで可哀そうでした。それに、あれだけ集団でいると、ありがたみもなくなる?
飼育員カン・チョルウォンさんが成都にフーバオを送り届けましたが、自然に囲まれた広い敷地が新しい住処と知って、ほっとしました。(咲)
2024年/韓国/カラー/94分
配給:ファインフィルムズ
(C)2024 ACOMMZ and EVERLAND RESORT. All rights reserved
https://fubao-movie.com/
★2025年4月18日(金)新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー
104歳、哲代さんのひとり暮らし
監督:山本和宏
撮影:的場泰平 筒井俊行
ナレーション:リリー・フランキー
尾道市の山間の村に住む石井哲代さんは104歳。元小学校の教師だった。同僚の良英さんと結婚。退職してからは畑仕事を楽しみ、民生委員を続けて地域に貢献した。近所の人たちは今も「先生」と呼ぶ。子どもはいないが、すぐそばに姪っ子が住んでいる。2003年に夫を見送ってからは、近所の人や親類に助けられ、一人暮らしを続けている。自分でできることは自分でする。できなくなったことを悲観したりしない。工夫すればいい。まだまだできることがある、と感謝し、自分を励ましながら上手に年を取っていく。
よく食べ、良く寝て、よくしゃべる哲代さん。福々しい丸顔の可愛いおばあちゃんです。誰とでも仲良く、明るく、大きな声で歌い、よく笑います。毎日ごきげんで暮らしていくことのヒント、上手に老いるコツが哲代さんの言葉のはしばしから見つかります。無理せず、調子が悪ければ病院に行き、必要なら入院もして家に戻ってきます。そしてまた元気な一日が始まります。こんな風に年を取れたらどんなにいいでしょう。良いお手本です。
1月31日より広島先行公開、次々と哲代さんファンが増えて行きそうです。(白)
家の前の坂道を後ろ向きにくだりながら、草を抜く哲代さん。本家の嫁として、「子どもが出来なかったのは今でも申し訳ない」という哲代さんですが、草のない綺麗な状態を保つことも本家の嫁の務めと心しているのです。
小学校の先生をしていた哲代さんは、しゃべり方もしっかりしています。初めて教えた子どもたちが米寿を迎えた同窓会で、80年ぶりの再会。受け持ったのは、1941年のことで、12月8日に戦争が始まったと言われた時にはピンとこなかったそうです。その後、「この子らを戦争に参加させちゃいけん。早く戦争を終わらせないと、と思った」という哲代さんの言葉にじ~んとさせられました。
この小学校のある広島県上下町にユースホステルがあって、20代の頃に2回泊まりに行ったことがあります。山あいの静かな町を懐かしく思い出しました。やはり20代の時に父と一緒に、上下町を通る鉄路で三次に行き、さらに山を越えて島根県の祖父の故郷を訪れたことがあります。父は、90代後半になっても、哲代さんと同じく、すこぶる元気で、百歳は間違いなく迎えられると思っていたのですが、あと1か月で百歳という時に、あっけなく逝ってしまいました。母が亡くなってからは私が同居していましたが、朝食の準備も自分でして、毎朝、家回りを綺麗に掃いていました。
「自分のことはできるだけ自分でしたい」というのも長生きの秘訣かなと哲代さんや父をみて、つくづく思います。(咲)
広島県尾道の自然豊かな山あいの町で100歳を超えてひとり暮らしを続けている石井哲代さん。83歳で夫が亡くなってからは、姪や近所の人たちの助けを借りながら一人暮らしを続け、年をとってできないことが増えても、友達と話ができるし、花も摘めるし、生きとるからこそできることがいっぱいですよと哲代さんは自分を励まし、ユーモアあふれる自由な心で笑いの多い暮らしをしています。
いりこ入りの味噌汁を作り、食事もしっかり食べ、誰とでも楽しくご機嫌に。ありがたい人生です。「でした」言うたらいけん。「ING」でいきましょう。そして、家の周りの草も抜き、農業まで続け、自分でできることは自分でやっています。
体調を崩した時には病院に入院、一人暮らしに不安があれば施設へ入所など、臨機応変に様々な支援を活用しています。老後の不安が希望に変わる! 人生100年時代の手引きになるような生き方です。かつて哲代さんが地域の女性たちのために始めた活動「仲よしクラブ」では、「発足当時にいた人が誰もいなくなったのに、自分だけが残っている」といいつつ、しっかり大正琴を弾いているシーンも出てきます。
家の入口にはかなり急な坂があり、足元が弱くなった哲代さんの、下る時に後ろ向きに歩いていく姿が何度も映し出されます。これは一つの知恵。車いすも急坂では後ろ向きに降ります。そのほうが危険が少ないのです。健康長寿の秘訣がちりばめられている映画です。(暁)
☆シネスイッチ銀座の予定 他劇場はHPでお確かめください
●【来場者プレゼント】4/18(金)ご来場の方に「桐葉菓(とうようか)」プレゼント(先着順/なくなり次第終了)[提供:やまだ屋]
●【イベント①】4月19日(土)山本和宏監督、岡本幸統括プロデューサーによる舞台挨拶
●【イベント②】4月20日(日)おばあちゃんさん(芸人)と新井康通さん(慶應義塾大学看護医療学部教授 兼担 医学部百寿総合研究センター 教授)によるトークイベント 「人生 100 年時代を笑って生きるコツ」開催
☆書籍もあります
「102歳、一人暮らし。哲代おばあちゃんの心も体もさびない生き方」
石井 哲代、 中国新聞社 1540円
「103歳、名言だらけ。なーんちゃって 哲代おばあちゃんの長う生きてきたからわかること」
石井 哲代、 中国新聞社 1430円
2024年/日本/カラー/94分
配給:リガード
(C)「104歳、哲代さんのひとり暮らし」製作委員会
https://rcc.jp/104-hitori/
★2025年4月18日(金)シネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー
2025年04月06日
ベテラン 凶悪犯罪捜査班 原題:베테랑2(ベテラン2) 英題:I,THE EXECUTIONER
監督:リュ・スンワン(『ベルリンファイル』『ベテラン』『モガディシュ 脱出までの14日間』『密輸 1970 』
脚本:リュ・スンワン、イ・ウォンジェ、カン・ヘジョン
出演:ファン・ジョンミン、チョン・へイン、アン・ボヒョン、オ・ダルス、チャン・ユンジュ、オ・デファン、キム・シフ、シン・スンファン
家族のことを気遣う暇もなく昼夜を問わず犯罪と戦うベテラン刑事ソ・ドチョル(ファン・ジョンミン) と強力犯罪捜査隊の刑事たち。
ある日、ある教授が殺される。以前に起こった殺人事件と同様、法では裁かれなかった悪人。不条理な司法制度に憤っていた世論は、私刑を下す犯人を善と悪を裁く伝説上の生き物“ヘチ”と呼び、正義のヒーローともてはやすようになる。
新人刑事パク・ソヌが加わり、追跡を始める捜査陣。だが、殺人犯は、あざわらうように次の殺人対象を指定する予告をインターネットに公開する・・・
スピード感溢れる映像と、あっと驚く物語の展開にくらくら。最後の最後まで、え~ どういうこと?と、頭の中が整理つかないほどでした。
「徹子の部屋」に登場したチョン・ヘインが、これまでに観たドラマ「よくおごってくれる綺麗なお姉さん」や「スノードロップ」と違って、前髪をおろしていて、実に可愛かったのですが、その前髪をおろした姿で登場しているのが本作『ベテラン 凶悪犯罪捜査班』。
前髪をあげたチョン・ヘインには惹かれなかったのですが、前髪おろした可愛い彼が、末っ子刑事ながら沈着冷静で、知性も感じさせてくれて、こんなに魅力的だったの?と驚きました。そして、こんな展開の物語を描いたリュ・スンワン監督の手腕、凄いです。
ファン・ジョンミンはじめ、オ・ダルス、オ・デファン等々、それこそベテラン俳優の活躍にも目を惹かれました。ホ・ジュノの友情出演も嬉しかったです。 (咲)
法では裁かれなかった悪人を標的にした連続殺人事件が発生。そんな司法制度に不満がある人々は、犯人のことを善と悪を裁く「正義のヒーロー」ともてはやす。それにしても目まぐるしく事件や犯罪が起こり、激しいアクションシーンが続く。ファン・ジョンミン演じる熱血ベテラン刑事ソ・ドチョルと凶悪犯罪捜査班に、さらにチョン・ヘイン演じるドチョルに心酔する新人刑事パク・ソヌも捜査に加わり、強力な体制ができ、事件は解決に近づくように見えたんだけど、あっという展開に。リュ・スンワン監督は興味深い物語を作るストーリーテラーだ!(暁)。
2024年/韓国/韓国語/118分/カラー/シネマスコープ/5.1ch
字幕翻訳 根本理恵
提供:KADOKAWA Kプラス MOVIE WALKER PRESS KOREA
配給:KADOKAWA、KADOKAWA Kプラス
公式サイト:https://veteran-movie.com/
★2025年4月11日(金)新宿ピカデリーほか全国ロードショー
ゲッベルス ヒトラーをプロデュースした男 原題:Führer und Verführer 英題:Goebbels and the Führer
監督・脚本:ヨアヒム・A・ラング
撮影:クラウス・フックスイェーガー
出演:ロベルト・シュタットローバー、フリッツ・カール、フランツィスカ・ワイズ
なぜ多くのドイツ人が犯罪的な 政権に従って戦争と大量殺戮に走ったのか
1945年4月、ソ連軍がベルリンに迫る中、写真や資料を暖炉の火で燃やすゲッベルス。「 私は民衆の扇動方法を公表してこなかった」「 私が総統を伝説にした」と豪語する。
4月30日、ヒトラーの自殺を見届け、遺言で新首相に任命されるも、翌5月1日、ゲッベルス夫妻は6人の子供たちとともに 自殺した。
1933年のヒトラー首相就任から1945年にヒトラーが亡くなるまでの間、プロパガンダを主導する宣伝大臣として、国民を扇動してきたヨーゼフ・ゲッベルス。
本作は、ゲッベルスが、いかにユダヤ人の一掃と侵略戦争へと突き進むヒトラーの先鋒を担ぐようになったかを、加害者からの目線で時系列で追った物語。
1938年、戦争を更に拡大しようとするヒトラーに、平和的な併合を主張するゲッ ベルス。ライバルたちは、宣伝大臣は宣伝より女に夢中だとヒトラーに告げ口する。ヒトラーの信頼を失ったゲッベルスは、愛人との関係も断ち切られ、自身の地位を回復させるため、ヒトラーが望む反ユダヤ映画を製作し、大衆を扇動する演説や戦勝パレードを次々と企画する・・・。
絶大的な権力を握った人物が、その取り巻きによって、さらに権力を行使していく様を見せつけてくれました。彼らの行ったようなフェイクニュースやプロパガンダが、今も繰り返されて世界にはびこっていることを憂います。それでも、ヒトラーやゲッベルスの末路が自死という悲劇であったように、握った権力は永遠ではないことを、世の独裁者は思い知ってほしいと思います。本作が反面教師になることを願ってやみません。でも、肝心の権力者が本作を観てくれるでしょうか・・・ (咲)
2024年/128分/ドイツ・スロバキア/ドイツ語
日本語字幕:廣川芙由美
配給:アットエンタテインメント
公式サイト:https://www.goebbelsmovie.com/
★2025年4月11日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国公開
プロフェッショナル(原題:In the Land of Saints and Sinners)
監督:ロバート・ロレンツ
脚本:テリー・ロー、マーク・マイケル・マクナリー
撮影:トム・スターン
出演:リーアム・ニーソン(フィンバー・マーフィー)、ケリー・コンドン(デラン・マッキャン)、ジャック・グリーソン(ケビン)、キアランハインズ(ビンセント)、コルム・ミーニイ(ロバート・マキュー)
1970年代の北アイルランド。長年裏稼業として殺し屋を続けて来たフィンバー・マーフィは、引退すると決めた。静かに暮らしていたところへ、首都で爆破事件を起こしたアイルランド共和軍(IRA)の過激派テログループが村に逃げてくる。そのうちの一人が、隠れ家にしていた遠戚の少女を虐待していたのを知った。怒りにかられて制裁したフィンバーを、今度はテロ仲間(男の姉)が狙う。
物書きと称してひっそりと暮らしているフィンバーは、その村の人々と顔見知り。現職警官の友人までいます。正義と信じて爆破テロを実行するデランは、紛争で親を亡くし、姉弟2人で活動に身を投じているうちに冷酷になっていったようです。ケリー・コンドン迫力倍増していて怖い。フィンバーは、依頼された殺しからは手を引きましたが、幼い少女はじめコミュニティの人々を傷つけたくありません。静かな老後は遠ざかりました。
クリント・イーストウッドと長年仕事をしてきたロバート・ロレンツ監督、『マークスマン』に続いて2度目のリーアム・ニーソンとのタッグです。前作はメキシコ人の少年、今回は近所の少女、命がけで弱者を守る渋い役が似合います。パターンといえばそうですが、期待どおりにアクションを展開してくれるリーアム・ニーソン。出身地アイルランドを舞台に、テロも辞さない過激派グループと、殺し屋稼業の男の「正義」がぶつかりました。まだまだ活躍してくれそうです。(白)
2024年製作/アイルランド/106分/G
原題または英題:In the Land of Saints and Sinners
配給:AMGエンタテインメント
(C)FEGLOBAL LLC ALL RIGHTS RESERVED劇場公開日:2025年4月11日
https://professional-movie.jp
strong>★2025年4月11日(金)より全国ロードショー
バーラ先生の特別授業 原題:Vaathi
監督・脚本:ヴェンキー・アトゥルーリ
製作:スーリヤデーヴァラ・ナーガほか
撮影:J・ユヴァラージ
音楽:G・V・プラカーシュ・クマール
出演:ダヌシュ(『クローゼットに閉じ込められた僕の奇想天外な旅』『グレイ・マン』『無職の大卒』)、サムユクタ、サムドラカニ(『RRR』)、タニケッラ・バラニ(『バーフバリ』シリーズ)、サーイ・クマール(『リシの旅路』)、ラージェーンドラン、ハリーシュ・ペーラディ(『囚人ディリ』)、スマント、(特別出演)バーラティラージャー
南インド、テルグ語とタミル語の両方を話す州境の村。
高校生のアビラームは、祖父が開いた村で最初で最後のビデオ店を父が学習塾代の為に売るというので、友人たちと片づけに行く。棚の奥に木箱に大事に収められたビデオを見つけ、もしかしたらポルノ?と観てみると、そこに映っていたのは、一人の青年が数学の授業をしている姿だった。一緒に収められていた貸出票の名前と住所を頼りに、40キロ離れた町にA.M.クマールを訪ねると、今は、県の行政長官だと聞かされる。県庁に訪ねていくと、A.M.クマールは部屋に掲げた写真を眺めながら、「ビデオの授業は私の恩師バーラ先生」と話し始める。
1993年、チョーラワラム村の公立校に赴任した数学のバーラ先生。美人のミーナクシ先生の存在に、一緒に赴任した二人の男性教師と共に心浮きたつが、生徒たちがいたのは初日だけ。皆、家計のため日銭を稼いでいるのがわかり、バーラ先生は学校に来られるように働きかける。生徒たちは戻ったものの、新任の男性教師二人が去り、バーラ先生は2クラス一緒に教えようとするが、カーストが違うから一緒に授業を受けられないという。必要であればカーストが違うことは問題にならないことを教えるが、さらに、大手私立教育機関の経営者ティルパティが妨害してくる。バーラ先生は受け持ちの生徒全員が共通試験で上位成績を上げることを目指す・・・
1990年代の経済自由化と1993年の教育制度の改革によって、インドに多くの私立教育機関や予備校が生まれ、高い授業料に応じた質の高い授業が提供されるようになったことが背景になっています。私学経営者ティルパティが、公立学校での授業を妨害し、さらに共通試験に向かう生徒たちも足止めさせてしまうという、これでもかという悪どさ。今は行政長官となったA.M.クマールが明かすバーラ先生の奮闘する姿に拍手喝采です。
バーラ先生の恩師も素晴らしくて、新任教師となったバーラ先生に「教師は仕事じゃない。使命」「自分の給料より、生徒の将来」とアドバイスしています。
さて、ビデオに映っていたバーラ先生の授業風景、どこで授業していたのかは、ぜひ劇場でご確認ください。(咲)
憎まれ役のティルパティが滔々と「教育は金になる」論をぶちあげます。庶民が食うや食わずで子供の幸せを願って工面したお金を吸い上げ、自分は高級車を乗り回しさらに儲けようとしています。そのわかりやすさったらないのですが、日本だとて似たようなものではありませんか。良い学校に入るため良い仕事につくため、子どものうちから塾通い、子どもらしく遊ぶ時間もないほど忙しい。授業料の安い国立大学に入れるのは、そうやって教育費をつぎ込んでこられた富裕層。奨学金という名前の借金を背負うのは、庶民です。
汚職にまみれた警察やパルパティの追従者に苦い思いを抱いて観ていました。救われるのは、バーラ先生の教えを素直に吸収して生徒たちが成長していく姿です。親のいうまま結婚するのではなく、学び続けて外国へ行くという女子、カーストに縛られずに生きる道を求める男子、そんな生徒たちが大人になって世界を変えていくはず。大人になってしまっても遅くはないですよ。目をつぶらないようにしましょう。(白)
2023年/インド/タミル語/134分
字幕:中島可愛・字幕監修:小尾淳
配給:SPACEBOX
公式サイト:https://spaceboxjapan.jp/balasensei/
★2025年4月11日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開.
ファレル・ウィリアムス:ピース・バイ・ピース(原題:Piece by Piece)
監督・脚本・編集:モーガン・ネヴィル
出演:ファレル・ウィリアムス、スヌープ・ドッグ、ケンドリック・ラマー、ジャスティン・ティンバーレイク、グウェン・ステファニー
ファレル・ウィリアムスは73年にヴァージニアビーチに生まれ、一歩ずつ音楽の道に進んで行く。10代から音楽プロデューサーとして活動開始、シンガーソングライター、デザイナーなどマルチに活躍する彼の半生をレゴブロックアニメーションで作成した。家族や音楽業界の友人知人たちが彼の人となりや業績について語る。
そんなに活躍していた人だったとは、守備範囲外でまったく知りませんでした。全てがレゴでできているのですが、体型も顔(表情も豊か)も作りこまれています。ファレルは音が色で見えるのだそうで、とてもカラフル。背景の海もグラデーションのレゴで、寄せてくる波もちゃんと動いています。レゴのピースの情報をインプットし、実写で撮影してからレゴアニメーションとしてコンピューターが計算して作りだすのでしょうか?詳しいことを説明されてもきっと意味不明。ただただ、すごーい!と見とれてしまいました。レゴ好きな方必見。
モーガン・ネヴィル監督はカルチャー系のドキュメンタリーを作ってきていて『ヨーヨー・マと旅するシルクロード』も監督しています。ファレル本人のノリノリの歌もたくさん流れます。試写では思わず身体を揺らしてしまう方もいました。HPトップでは挿入歌が試聴できます。(白)
2023年/アメリカ/カラー/93分
配給:パルコ
(C)2024 FOCUS FEATURES LLC
https://pharrell-piecebypiece.jp/
★2025年4月4日(金)より全国ロードショー
シンシン/SING SING 原題:SING SING
監督:グレッグ・クウェダー
出演:コールマン・ドミンゴ、クラレンス・マクリン、ショーン・サン・ホセ、ポール・レイシー
ニューヨークにある最重警備のセキュリティを誇る「シンシン刑務所」。
ディヴァインGは、無実の罪で収監されたことを訴え続けている。刑務所内の収監者更生プログラムである<舞台演劇>グループに所属して、仲間たちと積極的に演劇に取り組み、自分を励ましている。ある日、刑務所いちの悪として知られるクラレンス・マクリン、通称“ディヴァイン・アイ“が演劇グループに参加することになる。新たな演目に向けての準備が始まるが、ディヴァイン・アイは何かと突っかかってくる・・・
収監されている男たちが、舞台演劇を通じて知り合い、胸の内を語り合い、友情をはぐくんでいく姿に、彼らが「そこ」にいる様々な事情を思いました。数人の俳優以外は、かつて収監中に舞台演劇グループに所属していた男たちが本人役を演じています。
ディヴァインGは、減刑聴聞の時に、積極的に構成プログラムとしての舞台演劇の取り組んだことを語るのですが、最後に、「今日のも演技?」と言われてしまいます。さて、ディヴァインGは減刑になるのでしょうか?
舞台の始まる前に、皆で手を高くあげて「RTA」と叫びますが、これは「Rehabilitation Through the Arts(芸術を通した更生プログラム)」の略。
演劇を通じた収監者たちのセラピーを描いた映画として、イスラーム映画祭6で上映された『シェヘラザードの日記』(監督:ゼイナ・ダッカーシュ、2013年、レバノン)を思い出しました。レバノンのバアブダ女性刑務所で演劇を通じたドラマセラピーに参加する女性囚たちを描いたドキュメンタリーでした。出所した女性がかつて演劇を通じて友情をはぐくんだ仲間たちに会いに来る場面もありました。
『シンシン/SING SING』も、収監された人たちの更正に、集団で行う演劇が効果あるプログラムであることを見せてくれました。(咲)
2023年/アメリカ/カラー/ビスタ/5.1ch/107分
字幕翻訳:風間綾平
配給:ギャガ
公式サイト:https://gaga.ne.jp/singsing/
★2025年4月11日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国順次公開