2025年03月13日
映画おしりたんてい スター・アンド・ムーン
監督:芝田浩樹
脚本:米村正二
原作:トロル
撮影:千葉秀樹
音楽:高木洋
主題歌:FRUITS ZIPPER
出演:三瓶由布子(おしりたんてい)、齋藤彩夏(ブラウン)、櫻井孝宏(かいとうU)、志村知幸(かいとうK)、大久保瑠美(かいとうB)、吉田有里(かいとうI)、渡辺久美子(かいとうQ)、高橋伸也(かいとうT)、間宮康弘(かいとうH)、柿原徹也(かいとうZ)、小林大紀(かいとうN)、子安武人
IQ1104の頭脳で数々の難事件を解決してきたおしりたんてい。コアラちゃんから「親戚がアイドルコンテストに行ったまま戻ってこない。探してほしい」と頼まれた。コンテスト会場のスターダスト島には、国際的犯罪組織のかいとうアカデミーの本部がある。そこでは「ダークエイジ計画」が進められているワンコロけいさつのマルチーズしょちょうからも捜査協力の依頼がきた。
一方かいとうUは、ボスのかいとうGにとられた月光石を取り戻すために、本部に近づいていた。おしりたんていと、かいとうUはかいとうアカデミーを倒すために協力することにした。
初めて拝見しました。大ヒットの児童書&アニメだったんですね。劇場版は3作目です。お顔はおしりに似ていますが、おしりじゃありません。色つやよくすべすべです。たたずまいも言葉遣いも上品で紳士なたんてい。おまけに頭も腕も良い。
今回は潜入捜査のために、仲間とアイドルグループを作り、歌って踊ります。小さなファンたちがふり真似しそうです。かいとうUは凄腕の泥棒ですが、キザなほどカッコつけの怪盗。悪だくみをするボスをやっつけるために、手を組みます。おしりたんていの必殺技は、想像力豊かな人は見当がつくでしょう。
子どもたちは下ネタ好きですが、大人たちがダメというと余計面白がりますよね。いつまでも続くわけではないので、ママたちも安心して一緒にご覧ください。(白)
2025年/日本/カラー/77分
配給:東映
(C)トロル・ポプラ社/2025「映画おしりたんてい」製作委員会
https://oshiri-movie.com/
★2025年3月20日(木)全国ロードショー
悪い夏
監督:城定秀夫
脚本:向井康介
原作:染井為人
撮影:渡邊雅紀
音楽:遠藤浩二
出演:北村匠海(佐々木守)、河合優実(林野愛美)、伊藤万理華(宮田有子)、毎熊克哉(高野洋司)、箭内夢菜(莉華)、竹原ピストル(山田吉男)、木南晴夏(古田佳澄)、窪田正孝(金本龍也)
佐々木守は市役所の生活福祉課に勤めている。生活保護の受給を決定し、その後自立できるように見守るのも仕事だ。ことに暑い夏の日、汗だくで受給者を訪問して、のらりくらりとかわされることもある。ある日「同僚が受給者のシングルマザーに肉体関係を迫っているらしい」と相談を受けた。真相を確かめるために、くだんの林野の家を訪ねる佐々木だったが。
「ワルとクズばかり」という惹句にえ~?? 佐々木役の北村匠海さんの何も見ていないうつろな目のポスターに、「どうした!何があった?」と驚く人は多いはず。初めはごく真面目で、熱心に仕事に取り組む公務員でした。ストレスが貯まったうえに暑さが加わり・・・。異常な暑さは人も異常にしてしまうのか??
窪田正孝さん演じる金本龍也はプロのワル。ニコニコしながら、自分の理屈を並べたて、従わない者に制裁をします。ネグレクト寸前のシングルマザーの愛美は、佐々木を陥れるために金本に利用されます。佐々木の闇落ちのとばっちりをくう生活保護の申請にきた母子。お金に困った母の行く末は? 妻子ありながらゲスな先輩、熱心すぎる同期の宮田はどうなる?
出てくる人みなうまくて、説得力も存在感もあり、混沌のラストまで目が離せません。闇に引き込まれないようご用心。(白)
2025年/日本/カラー/114分
配給:クロックワークス
(C)2025映画「悪い夏」製作委員会
https://waruinatsumovie.com/
★2025年3月20日(木)全国ロードショー
ネムルバカ
監督:阪元裕吾
脚本:皐月彩、阪元裕吾
原作:石黒正数
撮影:渡邊雅紀
音楽:立山秋航
主題歌:平祐奈 as 鯨井ルカ
出演:久保史緒里(入巣柚実)、平祐奈(鯨井ルカ)、綱啓永(田口)、樋口幸平(伊藤)、兎(仲崎)
入巣柚実は大学の女子寮で、先輩の鯨井ルカと同室。インディーズバンド”ピートモス”のギター&ヴォーカルとしてバンド活動にうちこむルカと違って、柚実にはこれというものがない。古本屋でのアルバイトもなんとなく続けている。気楽につるんでいた同級生の田口がルカに惹かれていて、自分はただのつなぎ役だったのに傷つく。けれどもいつか羽ばたく日を夢見るルカはやっぱりまぶしい。そんな日々の中、大手のレコード会社からルカに連絡が入る。期待いっぱいで楽器を持って出かけたメンバーだったが、必要とされていたのはルカ一人だった。
青春コミックの原作を『ベイビーわるきゅーれ』シリーズの阪元裕吾監督で映画化。柚実とルカの2人は「わるきゅーれのちさととまひろ」にどこか似ていました。原作の石黒正数さんが『ベイビーわるきゅーれ』を観て「ネムルバカをこういう風にしたかったんだよ」と思ったそうです。実写版が完成して、どんなに喜ばれたでしょう。ルカの歌う「ネムルバカ」の作詞は石黒正数さん。
平祐奈さんは歌とギターに挑戦、特訓の成果は十分です。
モラトリアムから踏み出せそうな柚実役の久保史緒里さんと、田口役の綱啓永さんは、昨年10月の夜ドラ「未来の私にブッかまされる」では恋人同士。今回はブッとばされています。(白)
2025年/日本/カラー/105分
配給:ポニーキャニオン
https://nemurubaka-movie.com/
★2025年3月20日(木)全国ロードショー
ジェリーの災難(原題:Starring Jerry as Himself)
監督:ロー・チェン
脚本:ジェリー・シュー ロー・チェン
撮影:ロー・チェン、ティンクス・チャン
出演:ジェリー・シュー、キャシー・シュー、ジョシュア・シュー、ジェシー・シュー
台湾からアメリカに渡り、長く生活してきたジェリー・シューは定年を迎えた。妻とは離婚したが、息子たちとは行き来している。真面目に働いて貯めたお金もある。老後はのんびり過ごすつもりだった。ところが一本の電話で、そんな未来が崩れてしまう。
中国警察と名乗る男は、ジェシーの銀行口座がマネーロンダリングのために使われ、資金洗浄と詐欺の疑いで逮捕状が出ていると告げた。身に覚えのないことと必死に説明するが、このままでは強制送還しなければならないと言う。慌てるジェリーに相手は、警察の捜査を手伝うことを提案する。ジェシーは言われるままに”おとり”となって銀行の窓口に行ったり、あやしい男の動向を監視したりする。
これは実話です。驚くのは、ジェリー・シュー本人が脚本&主演で、自分に起こった詐欺事件を映画化したということ。出てくる家族もご本人たちです。「災難」としか言いようのないできごとで、思わず「それは違う、やめとけ、うわあぁ!」とか言いたくなってきます。
世間で詐欺被害が頻発しようとも、自分は大丈夫と思うものです。しかしながらこの顛末を見ていると敵は百戦錬磨の騙しのプロ、こちらの弱みを握り、脅したりなだめたりして操ってきます。いかに簡単に人は騙されるのか、よくわかります。翻弄されて痛い目に遭ったジェシーは家族にうちあけ、この映画が作られることになりました。(白)
2023年/アメリカ/カラー/75分
配給:ナカチカピクチャーズ
(C)2023 Forces Unseen, LLC.
https://jerry-movie.com/
★2025年3月20日(木)全国ロードショー
教皇選挙(原題:Conclave)
監督:エドワード・ベルガー
脚本:ピーター・ストローハン
原作:ロバート・ハリス
撮影:ステファーヌ・フォンテーヌ
音楽:フォルカー・バーテルマン
出演:レイフ・ファインズ(ローレンス枢機卿)、スタンリー・トゥッチ(ベリーニ枢機卿)、ジョン・リスゴー(トランブレ枢機卿)、カルロク・ディエス(ベニデス枢機卿)、イザベラ・ロッセリーニ(シスター・アグネス)
キリスト教最大の教派、カトリック教会の最高指導者であり、バチカン市国の元首であるローマ教皇が、死去した。すぐに世界中に知らされ、残された枢機卿たちは、新教皇を決める教皇選挙”コンクラーベ’を行わなければならない。ローレンス枢機卿が任に当たることになった。世界各国から100人を超える強力な候補者たちが集まり、外部と遮断された。投票はシスティーナ礼拝堂で教皇が決定するまで極秘で繰り返される。
聖書のお話は子どものころから読んでいました。クリスマスや讃美歌、観光地の教会は好きでも、中身のことはよく知りません。カトリック教会の世界中の信者は13億人もいるというカトリック。日本では43万人余りだそうです。大きな大きな組織で、そのトップがローマ教皇、その空席を埋める選挙がこういうものだったとは初めて知りました。
なりたい人があまたいる中で、ローレンスは身を引いて静かに暮らしたいと思っていました。が、対抗者を減らそうと陰で暗躍する人、ゴシップを流す人、浮動票を集めようとする人などが出て来て、静観しているわけにいきません。二転三転する選挙結果に観客もどんな結果が出るのか、目が離せなくなります。高位の聖職者の集まりなのに、このどろどろ加減は何??
ベテラン俳優が演じるお爺ちゃんばかりの枢機卿の中に、紛争地帯からやってきたやや若手の枢機卿と、「いないものと思われている」と蜂の針のような一言を放ったシスターの存在が光りました。俯瞰で撮影した黒い傘、赤い衣装、ラスト近くの白い傘、わずかに登場する青い空、色彩も目に残ります。(白)
教皇選挙(コンクラーベ)というタイトルから、まず思い出したのが、ナンニ・モレッティ監督の『ローマ法王の休日』(2011年)でした。法王(教皇)が亡くなり、バチカンに集まった各国の枢機卿が密室の中で選挙を行い、はからずも新法王に選ばれてしまったダークホースのメルヴィルが、緊張のあまりローマの街に逃げ出してしまうというお話。その映画でも、選挙に使用した紙を燃やして白い煙を出し、新しい教皇が決まったことを知らせる様子が描かれていました。
世界各地から集まった100人余りの枢機卿の投票で、72票を得る者が出るまで繰り返される選挙。その枢機卿の中で異彩を放ったのが、アフガニスタンのカーブル教区の枢機卿でメキシコ人のベニテスでした。「アフガニスタンにカトリック教徒がいるのか?」との声も飛ぶのですが、亡くなった教皇が秘密裏に赴任させたという経緯もありました。
折しも、ローマで自爆テロが頻発し、「宗教戦争だ!」と声を荒げる枢機卿たちがいる中、ベニテスが「戦争とは何かをご存じでしょうか? 私は戦争で多くの死を見てきました」と静かに語ります。コンゴやアフガニスタンなど紛争地域を歴任してきたのです。
ローマ教皇の影響力は、キリスト教世界だけでなく、全世界におよぶ大きなものです。
ジャンフランコ・ロージ監督の『旅するローマ教皇』(2022年)では、第266代ローマ教皇フランシスコが世界各地を旅して、他宗教との対話を積極的にはかる姿が描かれていました。
重要な役目を果たすローマ教皇を、100人余りの投票で決めるのですから、各国の枢機卿の人格が問われることにもなるでしょう。本作では、内輪もめも見せながら、ローマ教皇のあるべき姿も見せてくれました。(咲)
2025年/アメリカ、イギリス/カラー/120分
配給:キノフィルムズ
(C)2024 Conclave Distribution, LLC.
https://cclv-movie.jp/
https://x.com/CCLV_movie
★2025年3月20日(木)全国ロードショー
Flow(原題:Straume)
監督・脚本・音楽:ギンツ・ジルバロディス
世界が大洪水に見舞われ、人間の住んだ街が沈みつつあった。一匹の黒猫が水を避けながら逃げ、流れてきた船に飛び乗った。先客の動物たち、後から仲間に入る動物たちと、さまざまな目に遭いながら漂っていく。
昨年のTIFF(東京国際映画祭)でひとあし早く上映されました。
魔女の宅急便に登場するジジのような黒猫が、人間のいなくなった世界で生き残った動物たちと、どこへたどり着くのかわからない船で流されていきます。動物たちのセリフはなく、私たちに身近な猫や犬の動きはとてもリアル。どれだけ観察したのかと感心してしまいます。カピバラやワオキツネザルのシーンでは、笑い声があがっていました。
これまでいくつもの短編を一人で作ってきた監督は、今回は小さなチーム(なんと50人!)で長編を作り、変更、追加などが意思の疎通がスムーズだったそうです。監督担当のカメラは実写版のカメラのように、主人公の猫の目線になって動きます。よく描きこまれた背景や。様々な表情を見せる水も美しく、何度見ても楽しめる作品です。(白)
2024年アヌシー国際アニメーション映画祭はじめ、各映画祭において受賞多数。
つい先日アカデミー賞において長編アニメーション賞を受賞。
『Flow』本編には、水が押し寄せるシーンや濁流、波や水中での揺れ等の描写が含まれております。
お客様によっては、体調などに影響を及ぼす可能性がございます。ご注意ください。ご鑑賞の皆様におかれましては、予めご了承いただけますようお願い申し上げます。
2023年/ラトビア・フランス・ベルギー合作/カラー/85分
配給:ファインフィルムズ
(C)Dream Well Studio, Sacrebleu Productions & Take Five.
https://flow-movie.com/
★2025年3月14日(金)大ヒット上映中
風たちの学校
監督・撮影:田中健太
編集:田中健太、秦岳志
愛知県奥三河の黄柳野(つげの)高校 —
豊かな自然に囲まれ、四季の移り変わりを感じながら生徒たちは全寮制のこの学校で学ぶ。ここでは、不登校などいろいろなバックグラウンドの子どもたちも受け入れてくれる。様々な葛藤を抱えながらも精一杯、生きる生徒たちの姿。
最後の学園祭をクラスみんなで成功させたいと願うみのきくんは、血の繋がらない父の家業を継ぐか世界を旅する夢を追うかで悩み、音楽が大好きなことみさんは、ときどき落ち込むけど、ちょっとずつ自分の思いを歌にしていく。そして3年間の学校生活の終わりは、近づいてくるのだった—。
学校やそこでの生活をとらえた映画は多いです。成長期にある生徒たちと先生、家族たちの悲喜こもごものドラマが潜んでいるところが、作り手の意欲を掻き立てるからでしょうか。この作品は高校を舞台に、男女2人の生徒にフォーカスしたドキュメンタリーです。毎日のように心も身体も成長していく年頃は、脱皮中の虫たちのように柔らかく無防備です。自分とほかの子を比べて自信喪失しがちでもあります。
田中健太監督は自らも不登校を経験し、この黄柳野(つげの)高校で学びました。大阪芸術大学映像学科に進み、原一男監督の制作指導を受けて監督した卒業制作『ぼくと駄菓子のいえ』は映画祭で好評を得た後公開されています。母校とその生徒たちにカメラを向けた本作は、監督のまなざしと対象の彼らからの親しみも感じられる暖かい作品となりました。大人になって忘れてしまったり、記憶の奥にしまい込んだりしたあの頃を思い出す映画です。(白)
黄柳野(つげの)高校HP https://tsugeno.ac.jp/
2023年/日本/カラー/77分
配給:合同会社ななし
(C)合同会社ななし
https://kazetachi-gakko.com/
★2025年3月15日(土)新宿K’sシネマほか全国順次公開