2025年03月06日
35年目のラブレター
監督・脚本:塚本連平
撮影:清久素延
音楽:岩代太郎
出演:笑福亭鶴瓶(西畑保)、原田知世(西畑皎子)、重岡大毅(若き日の保)、上白石萌音(若き日の皎子)、安田剣顕(谷山学)、笹野高史(逸美)、徳永えり(浩美)、ぎぃ子(美紀)、辻本祐樹(信介)、本多力(一秀)、江口のりこ(佐和子)、くわばたりえ(光江)
西畑保は貧しい家に生まれて子供の頃から労働力を期待され、学校へ通えずに大人になった。辛い思いもしたが、皎子(きょうこ)と出会い、幸せな結婚生活を続けてきた。読み書きができないことを愛妻にはどうしても打ち明けられない。ついにばれてしまい身の縮む思いの保に、皎子は「私があなたの手になる」と言う。定年退職を機に保は夜間中学に通い始めた。一字ずつ文字を覚え、いつか必ず妻へラブレターを渡したい。その一心で通学して5年。手紙はあともうすこしというときに、皎子は病気になってしまった。
若き日、熟年、二組の夫婦のキャスティングがよくて、仲の良さ、どんなときも支えあう睦まじさに胸がじーんとしました。もっと早く打ち明ければいいのに、とか、勉強するならもっと早くに、とか思ってしまいますが、思い通りにならないのが人生。あれこれあったこその「今」なのです。熱心な先生たち、いろいろ事情をかかえた同級生に囲まれて、保は一歩一歩進むことができました。いくつになっても、学ぶことができる、新しいことに挑戦できる、となんだか元気になります。実話なので、本当にこういうご夫婦がいらしたんです。笑福亭鶴瓶さん、役柄にぴったりですが『あまろっく』では中条あやみさん、今作では原田知世さんが奥様役とは!
☆夜間中学には義務教育を終了できなかった方ーー戦後の混乱期に育った方、不登校や病気などで通学できなかった方、外国籍の方ーーなど年齢も理由も様々な方々が入学し、学んでいます(政府広報はこちら)。つい最近の夜ドラマ『宙わたる教室』もヒットでしたね。山田洋次監督『学校』も夜間中学が舞台で、西田敏行さんが教師役でした。1993年~2000年に4作作られています。(白)
2025年/日本/カラー/120分
配給:東映
(C)2025「35年目のラブレター」製作委員会
https://35th-loveletter.com/
★2025年3月7日(金)ほか全国ロードショー
いきもののきろく
監督・脚本:井上淳一
原案:永瀬正敏
撮影:鍋島淳裕
美術:永澤こうじ
主題歌:PANTA「時代はサーカスの象にのって」
出演:永瀬正敏、ミズモトカナコ
人の気配のない工場の並ぶ運河。男がよどんだ水に浮かぶゴミを拾っている。いくらかたまると廃工場にひきずっていく。うずたかく積まれたがらくたで男は筏を作る。女が男の様子を見ていて寄ってくる。「あたしのも作って」男は取り合わない。隅っこにあるねぐらにもやってくる女を邪険に追い払うが、寄る辺ない女は少し離れたところに居ついてしまった。
日本中が一変してしまった東日本大震災。その影響がまだ色濃く残っていたころ、人の当たり前の暮らしがなくなってしまった街に男と女が一人。男は家族をなくし、看護士だった女は患者をなくしました。あったはずの欠片を探して男は筏を作り、女はすがるようについて行きます。これは創世記か、アダムとイブなのか?
水面を進む筏を、運河の堤から人々がじっと見つめています。いろいろな生活の道具といっしょに流されてしまった人たちかもしれません。理不尽にも彼岸へ送られる人が絶えない今、いつでも、どこに住む人が観ても無関係だとは思えないでしょう。
シネマスコーレ支配人の木全純治さんが名古屋の中川運河を舞台に企画、プロデュース。ちょうど井上監督とシネマスコーレを訪れていた永瀬正敏さんに監督を、と打診があったそうです。それはできないが出演はします、井上監督でとの回答。被災地を訪ねたことが深く刻まれていた永瀬さんが一気に書き上げたプロットからこの作品が生まれました。(白)
2014年/日本/カラー/47分
配給:ドッグシュガー
http://www.dogsugar.co.jp/ikimononokiroku/
★2025年3月7日(金)テアトル新宿ほか全国順次ロードショー