2025年02月16日
コメント部隊(英語題:Troll Factory)
監督・脚本:アン・グクジン
原作:チャン・ガンミョン
出演:ソン・ソック(イム・サンジン)、キム・ソンチョル(チンポッキン)、キム・ドンフィ(チャッタッカッ)、ホン・ギョン(ペプテク)、キム・ギュベク(提報者X)、キム・ハンソル(シン・ヒョンシク)
チャンギョン日報 社会部記者のイム・サンジンは、大企業マンジョンの不正に関する特ダネ記事を出した。直後、誤報だとして停職処分を受ける。悶々としたいたところにある情報提供者が現れた。自分を「コメント部隊 チームアルレフのメンバー」と主張、いまやネットを駆使してお金さえかければ「真実を嘘に、嘘を真実にすることも可能」と豪語する。復職したいサンジンは、さらに調査を進めるが藪の中を歩いているようだ。どこまでが真実なのか、はたまた嘘いつわりなのか。
世論操作事件を題材にした同名小説が原作。大企業はテレビ、新聞などメディアにとって大きな広告主でもあります。アンタッチャブルな相手なので、報道に忖度があっても不思議はありません。サンジンは功名心にかられる記者ですが、それでも責任をとるといってくれた上司がいつのまにか大企業にとりこまれていては怒りたくもなります。真実を追求する記者たちのストーリーの映画はこれまでも観てきました。今やジャーナリストでなくても、一石を投じることはできる時代です。小さな詐欺にはかからない、騙されないと思う人もジャーナリストが発信するなら、新聞やテレビがいうなら信じてしまうかもしれません。そして簡単に丸め込まれることもあります。
われわれ一般ピープルは、大企業がらみの報道(あ、政界も)を、どこまでホントかウソか疑ってかかっています。自分の生活に直接かかわるのでなければ、観客として面白く観てしまいます。そんな報道の内側をちょっと覗いてみるのはいかがですか。(白)
2024年/韓国/カラー/ビスタ/109分
配給:クロックワークス
©2024 ACEMAKER MOVIEWORKS & KC VENTURES & CINEMATIC MOMENT All Rights Reserved.
https://klockworx.com/movies/comment/
★2025年2月14日(金)全国公開中
死に損なった男
監督・脚本:田中征爾
撮影:ふじもと光明(JSC)
音楽:Moshimoss
出演:水川かたまり(関谷一平) 唐田えりか(森口綾)、喜矢武豊(若松克敏)、堀未央奈(竹下希)/正名僕蔵(森口友宏)、森岡龍(沢本五郎)
構成作家・関谷一平は、お笑いの道に憧れ、夢が叶った半ば、殺伐とした社会と報われない日々が続いていた。疲弊のあまり駅のホームに飛び込もうとするが、電車が来ない。隣の駅で人身事故がおきていた。
決心した出鼻をくじかれて死に損なった一平は、興味本位から亡くなった男性の葬式に参列する。いぶかし気な家族の視線をくぐりぬけ、帰ろうとした一平の前に、この世に未練を残している男の幽霊が現れた。「娘につきまとうストーカー男を殺してくれ」「それが終わるまでとりついてやる」と、とんでもない羽目に陥ってしまった。
お笑いコンビ[空気階段]の水川かたまりさん主演。「2021年のキングオブコント」の方だったそうですが、この作品を観るまで全く知らずにいました。田中征爾監督のオリジナル脚本で主演デビュー、すぐ隣にいそうな親近感ありありの一平を演じています。人身事故で先に逝ってしまった幽霊につきまとわれるという理不尽な設定。しかし正名僕蔵さん演じる幽霊の押しの強さに翻弄されて逃げられません。なんでそうなるの?とつっこみたくなる展開ですが、生前国語教師だった幽霊にネタをもらったりダメ出しされたりで、仕事が上手くまわるようになります。闘う訓練を強いられても殺人だけは避けたい一平。
この妙なコンビの行く末やいかに?劇中には本物のお笑いの方々が何人も登場しますので、そちらもお楽しみに。(白)
2024年/日本/カラー/シネスコ/109分
配給:クロックワークス
©2024 映画「死に損なった男」製作委員会
公式サイト:shinizokomovie.com
公式SNS:@shinizokomovie
★2025年2月21日(金)ほか全国公開
ノー・アザー・ランド 故郷は他にない 英題:No Other Land
監督:バゼル・エイドラ、ユーバール・アブラハム、ハムダーン・バラール、ラケル・ゾール
ヨルダン川西岸地区のマサーフェル・ヤッタで生まれ育ったパレスチナ人の青年バーセルは、イスラエル軍の占領が進み、村人たちの家々が壊されていく故郷の様子を幼い頃からカメラに記録し、世界に発信していた。そんな彼のもとにイスラエル人ジャーナリスト、ユヴァルが訪れる。非人道的で暴力的な自国政府の行いに心を痛めていた彼は、バーセルの活動に協力しようと、危険を冒してこの村にやってきたのだった。
同じ想いで行動を共にし、少しずつ互いの境遇や気持ちを語り合ううちに、同じ年齢である2人の間には思いがけず友情が芽生えていく。しかしその間にも、軍の破壊行為は過激さを増し、彼らがカメラに収める映像にも、徐々に痛ましい犠牲者の姿が増えていく・・・
容赦なくイスラエル軍に取り壊されるパレスチナ人の家や学校・・・ 先祖代々、農作業しながら暮らしてきた「故郷」が、奪われていくのをただただ見ているしかない虚しさが、ずっしりと伝わってきます。
ヨルダン川西岸地区で、パレスチナ人の土地を軍事的に占領するための手段として、約2割の土地を、イスラエルは「軍事射撃区域」として指定したとのこと。それは、イスラエル人入植者のために確保された土地でもあるという国家機密文書が暴露されているそうです。入植者によるパレスチナ人への暴力も後を絶ちません。パレスチナ人が告訴しても、大半が不起訴で処理される理不尽。
本作は、マサーフェル・ヤッタでの出来事を2023年10月までの4年間に渡り記録したドキュメンタリー。つまり、2023年10月7日に始まったガザでの大規模の武力衝突の前の出来事。あれ以降、ガザのことばかりが大きく報道されていますが、ヨルダン川西岸でも、ずっとイスラエルによるパレスチナ人の人権蹂躙が続いていることを忘れてはならないことを突き付けられます。
監督は、パレスチナ人二人(バゼルとハムダーン)と、ユダヤ人二人(ユーバールとラケル)。
私から見て、誰がパレスチナ人かユダヤ人か区別はつきません。
これまでにも、『プロミス』(2002年)、『壊された5つのカメラ-パレスチナ・ビリンの叫び』(2012年)で、パレスチナ人とユダヤ人が共同監督を務めた映画の監督を取材したことがあります。
国家が対立していても、民族や宗教の違いを越えて歩み寄ろうとする人たちがわずかでもいる限り、いつか分かち合える日が来ると信じたいです。(咲)
ベルリン映画祭最優秀ドキュメンタリー賞&観客賞W受賞
2024年/ノルウェー・パレスチナ/95分
配給:トランスフォーマー
公式サイト:https://transformer.co.jp/m/nootherland/
★2025年2月21日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ、シネ・リーブル池袋ほか全国公開