2025年01月31日

ドリーミン・ワイルド 名もなき家族のうた(原題:Dreamin' Wild)

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監督・脚本:ビル・ポーラッド
撮影:アルノー・ポーティエ
音楽:ドニー・エマーソン
出演:ケイシー・アフレック(ドニー)、ノア・ジュプ(青年期のドニー)、ゾーイ・デシャネル(ナンシー)、ウォルトン・ゴギンズ(ジョー)、ボー・ブリッジス(父 ドン)

1979年、ワシントン州の田舎町でレコーディングされた1枚のアルバム「Dreamin’ Wild」。10代だったドニーと兄ジョーはデュオを結成し、両親の全面的な応援を得て、農場に父が作ったスタジオでオリジナルの曲を生み出した。家族の期待と2人の夢をこめたアルバムを自主製作したが、名もないデュオのアルバムは世間からは見向きもされなかった。
それから約30年後のある日、レコード会社からの突然の連絡がある。コレクターに発見されたアルバムがブログで拡散、絶賛されていることを知った。思いがけず脚光を浴びて家族は手放しで喜ぶが、これまで負い目を感じて来たドニーは過去と向き合うことになる。

兄弟デュオ”Donnie & Joe Emerson”の実話を元にした作品。都会へ一人打って出るドニーでしたが音楽業界へのなんのつてもなく、夢破れ故郷へ舞い戻りました。2人のために父は広かった農場を抵当に入れ、次々と手放してしまいました。兄のジョーはすっかり小さくなってしまった父の農場のあとを継いでいます。ドニーは結婚して家庭を持ち、仕事の傍ら妻ナンシーや友人と細々とバンド活動を続けてきました。降ってわいたデビューアルバムの再評価に、揺れるドニーの心情を丁寧に描いています。
若いころがフラッシュバックで挿入されて、多くの若者たちも辿っただろう道が見えてきます。ただただ、息子たちの夢を後押しする父や母の信頼と愛情があるばかり。ドニーは音楽に打ち込むあまり、周りが見えず視界が狭くなっていた自分、挫折した今も好きな音楽にこだわっている自分にいまさらながら気づきます。
ドニーを『マンチェスター・バイ・ザ・シー』(2016)で主演男優賞に輝いたケイシー・アフレック。兄のベン・アフレックと同じように監督にも進出しています。青年期を『ハニー・ボーイ』(2019)のノア・ジュプ。クルクル髪の子役でしたが、可愛いまま大きくなってこの25日に20歳になります。
アリエル・ピンクがカバーし、ユニクロがジーンズのCMに”Baby”を使って世界中に広まったそうです。再発売されたアルバムは今日本では品切れのようですが、検索すると聞くことができます。(白)


息子たちを信じて、土地まで手放して投資したお父さん。レコードを作った当初にはまったく売れなかったのに、30年後に突然発掘されるという奇跡! 映画の最後に実在のドニーとジョーや、ドニーの奥さまナンシーが演奏する姿が出てきます。そして、それを見守る両親も! 嬉しそうな笑顔に、これは家族の物語と、ほっこりさせられました。(咲)

2022年/アメリカ/カラー/111分
配給:SANDAE
(C)2022 Fruitland, LLC. All rights reserved.
https://sundae-films.com/dreamin-wild/
★2025年1月31日(金)よりTOHOシネマズシャンテ、kino cinema新宿ほか全国順次公開中
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2025年01月26日

Brotherブラザー 富都(プドゥ)のふたり 原題:富都青年/Abang Adik

1.31(金)〜ヒューマントラストシネマ有楽町 03-6259-8608、シネ・リーブル池袋 03-3590-2126、kino cinema 立川高島屋SC館 042-512-5162他、公開
上映館情報
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©2023 COPYRIGHT. ALL RIGHTS RESERVED BY MORE ENTERTAINMENT SDN BHD / ReallyLikeFilms

マレーシア・クアラルンプールのスラム地区[富都](プドゥ)
荒廃したその街でIDも与えられず、過酷な人生を強いられた兄弟がいた


監督・脚本:王礼霖 (ジン・オング)
製作:李心潔(リー・シンジエ、アンジェリカ・リー)、アレックス・C・ロー
撮影:カルティク・ビジャイ
美術:スーン・ヨン・チョウ、ペニー・ツァイ
音楽:片山涼太 ウェン・フン 主題歌:片山涼太
挿入歌:千言萬語 雲鎂鑫(ユン・メイシン)
出演
アバン:吳慷仁(ウー・カンレン)
アディ:陳澤耀(ジャック・タン)
マニー:鄧金煌(タン・キムワン)
ジアエン:林宣妤(セレーン・リム)
シャオスー:周雪婷(エイプリル・チャン)
犯罪集団のボス ブロント・バララエ

スラム街で支え合いながら生きている兄弟の物語

マレーシアの首都クアラルンプールのスラム地区「富都(プドゥ)」。荒廃したその街で、支え合って生きる兄弟の過酷な人生を描き、世界各国の映画祭で賞を受賞しているマレーシア・台湾合作映画。この地域には不法滞在者やその二世、様々な国籍、背景を持つ貧困層の人々が多く暮らしている。
その場所で、身分証明書(ID)を持たない兄アバンと弟アディは暮らしている。アバンは聾唖(ろうあ)というハンディを抱えつつ、市場の日雇いで堅実に生計を立てているが、アディは簡単に現金が手に入る裏社会の仕事をしていて常に危険と隣り合わせ。
そんなある日、実父の所在が判明したアディにはID発行の可能性が出てきた。
しかし、事件に巻き込まれ、IDを得るのに困った状況が出てきて、二人の未来に重く暗い影が忍び寄る。父も母もいないが、こんな暮らしの中、見守ってくれ、助けてくれる近所の人たちがいて、貧しいながらも二人は生きてこられた。
原題の『ABANG ADIK』(アバン アディ)はマレーシアの母国語バハサ・マレー語から来ていて、「アバン」は「兄」、「アディ」は「弟」という意味で、「兄弟」ということになるそうです。
台湾の俳優ウー・カンレンが兄アバンを熱演し、マレーシアの俳優ジャック・タンが弟アディを演じている。ウー・カンレンは、台湾の第60回金馬奨(2023)で最優秀主演男優賞を受賞。ジン・オング監督は、これまで社会派作品をプロデュースしてきたが、この作品で長編初監督・脚本を手がけた。文化的アイデンティティや、社会的不平等、政治腐敗などの問題を浮き彫りにし、マレーシア社会の複雑さを捉える視点を盛り込んだ作品。


公式HPはこちら
2023年製作/115分/PG12/マレーシア・台湾合作
配給:リアリーライクフィルムズ
posted by akemi at 20:37| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

映画を愛する君へ   原題:Spectateurs!

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(C)2024 CG Cinema / Scala Films / Arte France Cinema / Hill Valle

監督・脚本:アルノー・デプレシャン
出演:ルイ・バーマン、クレマン・エルヴュー=レジェ、フランソワーズ・ルブラン、ミロ・マシャド・グラネール(『落下の解剖学』)、サム・シェムール、ミシャ・レスコー、ショシャナ・フェルマン、ケント・ジョーンズ、サリフ・シセ、マチュー・アマルリック(『フレンチ・ディスパッチ』)

映画と映画館がもたらす魔法を語るシネマ・エッセイ

デプレシャンの日本初公開作『そして僕は恋をする』(96)でマチュー・アマルリックが演じた役ポール・デダリュスの一代記の形をとり、デプレシャンの分身ともいえるポールの映画人生を描く。
祖母に連れられて初めて映画館を訪れた6歳の時。14歳の時に16歳と偽って映画館に潜りこんだこと。
学生時代の映画部での上映会。22歳の時、大学で映画を学んだ記憶。
30歳になり人生の岐路に立つポールは、映画館でトリュフォーの『大人は判ってくれない』(59)を観て、評論家から映画監督に転身しようと決意した。
デプレシャンの自伝的な作品でありながら、誰もが共感し楽しめる物語。これは映画と映画館へのラブレター。

19世紀末に誕生してから現在に至るまでの映画50本以上が登場して、きっと誰しも思い出の場面に出会えることでしょう。人生の一部になっている映画があることに気づかされます。
映画館への愛もたっぷり。配信で観ることが多くなってしまいましたが、映画館という空間で観る高揚感は格別です。
デプレシャン監督の映画愛をたっぷり感じさせてくれる一作です。(咲)


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フランス映画祭2010で『クリスマス・ストーリー』が上映された時に来日したマチュー・アマルリック(左)とアルノー・デプレシャン監督(右)

2024年/88分/フランス
配給:アンプラグド
公式サイト:https://unpfilm.com/filmlovers/
★2025年1月31日(金) 新宿シネマカリテほか全国順次公開



posted by sakiko at 20:08| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ザ・ルーム・ネクスト・ドア  原題:The Room Next Door

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©2024 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved. ©El Deseo. Photo by Iglesias Más.

監督・脚本:ペドロ・アルモドバル
原作:シーグリッド・ヌーネス「What Are You Going Through」
出演:ティルダ・スウィントン、ジュリアン・ムーア、ジョン・タトゥーロ、アレッサンドロ・ニボラ

巨匠ペドロ・アルモドバル監督の初の長編英語作品
第81回ベネチア国際映画祭 金獅子賞受賞


安楽死を望む女性と寄り添う親友の最期の数日間

小説家のイングリッド(ジュリアン・ムーア)は、久しぶりに帰ってきたニューヨークでのサイン会で、若い頃、同じ雑誌社で一緒に働いていた親友のマーサ(ティルダ・スウィントン)が末期ガンだと共通の友人から聞かされる。戦場ジャーナリストとなったマーサとは、長い間音信不通だった。イングリッドはマーサと再会し、会ってなかった時間を埋めるように語らう日々を過ごす。そんなある日、マーサから、「もう治療はせず、自らの意志で最期を迎えたい、ついては、その日を迎えるのを見届けてほしい」と頼まれる。悩んだ末、マーサが借りた森の中の一軒家で一緒に暮らし始める。マーサは「ドアを開けて寝るけれど もしドアが閉まっていたら、私はもうこの世にはいない」と告げる・・・

戦場ジャーナリストだったマーサは、死を間近にみてきて、自身がガンで余命わずかと知った時、治療で苦しい思いをするよりも、静かに最期を迎えたいと決意します。かつての同僚で胸のうちを明かせるイングリッドに一緒にいてほしいと願い、イングリッドもまた自分にできることは寄り添って話を聞くことだと悟ります。マーサにとって、心残りは若い時に産んだ娘のミシェルとそりが合わず、何年も会ってないことでした。イングリッドがマーサのためにミシェルにしてあげたことに、涙。
死は誰にでも訪れるもの。それでも、潔く死を受け入れることはなかなかできません。死を迎えることを決意したマーサのそばで、イングリッドのほうが戸惑うのもわかります。さて、私なら?  (咲)


2024 年/スペイン
配給:ワーナー ブラザース映画
公式サイト:https://warnerbros.co.jp/movies/detail.php?title_id=59643&c=1
★2025年1月31日(金)より全国公開
posted by sakiko at 20:05| Comment(0) | スペイン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年01月25日

リアル・ペイン 心の旅(原題:A Real Pain)

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監督・脚本:ジェシー・アイゼンバーグ
撮影:ミハウ・ディメク
出演:ジェシー・アイゼンバーグ(デヴィッド)、キーラン・カルキン(ベンジー)、ウィル・シャープ(ジェームズ)、ジェニファー・グレイ(マーシャ)

ニューヨークに住むユダヤ人のデヴィッドとベンジー。兄弟同然に育った従兄弟同士だったが、最近は疎遠になっていた。最愛の祖母が亡くなり、彼女の遺言で2人はポーランド行きのツアーに参加する。結婚して妻子がいるデヴィッドはまじめで几帳面、ベンジーは独身で自由奔放、正反対な性格の2人。無事ツアーのグループに合流した。それぞれの理由で集まった参加者たちとベンジーはすぐに打ち解ける。子どものような無邪気さで失礼な物言いをするベンジーに、みんな初めは反発するがいつのまに彼に魅了されてしまう。ベンジーに振り回されて辟易するデヴィッドだがこの従兄弟が大好きなのも確か。ポーランドの地を巡りながら、デヴィッドとベンジーはかつてここで生きた祖母と戦争に想いを馳せる。

ジェシー・アイゼンバーグの監督2作目。NYで生まれ育っていますが、ルーツはポーランド系ユダヤ人。ポーランドの村にはホロコーストで迫害を受けた叔母の家が現存。この映画では祖母が住んだ家として登場しています。自分自身のルーツも織り込みながら、人と人が違いを越えて理解しようとする姿を描いています。初監督作の『僕らの世界が交わるまで』(2022)はすれ違う母と息子のストーリーでした。今回は凸凹コンビのユーモラスなシーン(ほとんどベンジーが火種)に笑い、デヴィッドに同情し、ベンジーの率直さに泣けました。
この純粋で繊細で厄介なベンジーがキーラン・カルキンの好演で血の通った人物となり、物語をけん引していました。カルキンの姓で気づかれたように、カルキン兄弟の一人。『ホーム・アローン』(1990)で一躍有名子役となったマコーレー・カルキンの2歳違いの弟です(キーランも弟役でちゃんと出ていました。毎年クリスマスの時期になると観なおしたくなります)。
ポーランドに史跡として残るマイダネク収容所で胸痛む見学をし祖母が育った家を訪ね、ツアーの人々と別れますが、デヴィッドとベンジーの旅はまだ残っています。(白)


2024年/アメリカ/カラー/ヴィスタサイズ/90分
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
(C)2024 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.
https://www.searchlightpictures.jp/movies/realpain
★2025年1月31日(金)より全国ロードショー

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嗤う蟲

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監督:城定秀夫
脚本:内藤瑛亮、城定秀夫
撮影:渡邊雅紀
音楽:ゲイリー芦尾
出演:深川麻衣(長浜杏奈)、若葉竜也(上杉輝道)、田口トモロヲ(田久保)、松浦祐也(三橋剛)、片岡礼子(三橋椿)、杉田かおる(田久保よしこ)、中山功太(古谷巡査)

イラストレーターの杏奈は夫の輝道が脱サラしたのを機に、憧れのスローライフを実現するべく、麻宮村に移住した。近隣への挨拶回りで自治会賞の田久保家を訪れ、過剰なまでの歓待をうける。初めての村社会の距離感に戸惑う夫婦だったが良い方に解釈して、小さな自給自足も始めてみた。杏奈の妊娠を親のように喜び、身体をいたわる自治会長たちに感謝しつつも違和感を覚える二人。田久保夫婦は夫婦別姓の杏奈と輝道にもなにかと干渉してくる。ふたりは村の中で、自治会長の田久保が大きな権力を握っているのに気づく。

村に生まれ、そこに住んでいる方々には申し訳ないような暗部の羅列。これはフィクションですからね。
ただし、これまで日本各地で起こった村八分事件から材をとったともあります。古い話ではなく、21世紀の今でも大小の村八分は存在し、事件は起きていました。それは村社会に限らず都会の暮らしでも、子どもの社会でも同じような問題が火種となって燻っています。人を差別化し、同じ行動をとることをよしとすれば、管理するほうは便利でしょう。敵を作っておけば人心は掌握しやすいのです。自由と民主主義など蹴り飛ばされたようなものです。
杏奈は自分なりに闘い、輝道は家族のためにと取り込まれてしまいましたが、必至で妻と子を守ろうとします。小さな世界は大きな世界の縮図でした。城定秀夫監督が『ミスミソウ』の内藤瑛亮監督と仕掛けたこわーい狂宴から、あなたなら抜け出すことができるでしょうか?(白)


2024年/日本/カラー/99分
配給:ショウゲート
(C)2024映画「嗤う蟲」製作委員会
https://waraumushi.jp/
★2025年1月24日(金)より全国ロードショー

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ミッシング・チャイルド・ビデオテープ

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監督・原案・編集:近藤亮太
脚本:金子鈴幸
撮影:松田恒太
出演:杉田雷麟(兒玉敬太)、平井亜門(天野司)、森田想(久住美琴)、藤井隆(塚本哲也)

兒玉敬太は失踪した人間を探すボランティアに参加している。子どもは無事保護されて安堵したが、敬太の弟・日向(ひなた)は見つからないままだ。幼いころ一緒に山で遊んでいて、日向の行方がわからなくなった。以来いつも日向のことを思い出している。
ある日、突然母親から古いビデオテープが送られてきた。再生してみると日向がいなくなる瞬間が映っていた。敬太の友人の司は強い霊感を持ちそこからまがまがしいものを感じ取る。深入りするなと忠告するが、敬太は過去を清算する気持ちが募り、あの山へ出かける。

近藤亮太監督が、第2回日本ホラー大賞を受賞した短編を自ら長編とした作品です。『リング』をはじめとしたジャパニーズホラーの特徴の、じわじわと怖くなるタイプの作りです。いかにもな劇伴も、いきなりの大音響もありません。
何か怖いかつきつめて、ほんとうに怖いものを作ろうと思った、という近藤監督は映画美学校で高橋洋監督に師事したそうです。そこかしこに、怖い種が仕込んであるのはそういうことでしたか。
コロンボばりのコート姿で見えないものを見る司役の平井亜門さん、物おじせず取材に突き進む久住記者の森田想さん、笑顔を封印した上司の藤井隆さん。定番でない顔を見せてもらいました。ずっと子役の杉田雷麟くんのイメージでしたが、すっかり大人の俳優さんになりました。その止まらない時間の流れが、私には一番恐怖かも。(白)


2025年/日本/カラー/104分
配給:KADOKAWA
(C)2025 「ミッシング・チャイルド・ビデオテープ」製作委員会
https://mcv-movie.jp/
★2025年1月24日(金)より全国公開中

posted by shiraishi at 10:22| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

おんどりの鳴く前に(原題:Oameni de treaba)

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監督:パウル・ネゴエスク
出演:ユリアン・ポステルニク(イリエ)、ヴァシレ・ムラル(村長)、アンゲル・ダミアン(ヴァリ)、ダニエル・ブスイオク(司祭)

ルーマニア・モルドヴァ地方。静かな村の中年警察官イリエは、かつての野心も失い日々の仕事をこなしている。退職後は、小さな果樹園を営んでひっそりと暮らしたい。田舎ゆえのしがらみは多いけれど、さしたる事件も起きないこの村では、一番の実力者は村長だ。
何も起きないはずだったこの村で、村の男のむごたらしい死体が見つかった。イリエは捜査を始めなければならない。

村民はみな顔見知りの狭い村で、犯人はすぐ判明しそうなものです。着任したばかりの若くて正義感あふれる部下はやる気満々。イリエはちょっと苦々しく思ったりしています。外から捜査の手が入るのも面倒です。そう簡単に解決とはいきません。平和そうな村の内側では、あれやこれやと入り組んだ人間関係や利害関係があり、ふだんは蓋をしていたことがあかるみに出てきます。
人が集まれば、その集まりの大きさに関わらずもめごとが起きるのが常。ほんとにまあ、自分も含め人間って醜悪、けれどもそれもまた真実なのでした。(白)

ルーマニア・アカデミー賞(GOPO賞)6冠

2024年/ルーマニア、ブルガリア/カラー/106分
配給:カルチュアルライフ
(C)2022 Papillon Film / Tangaj Production / Screening Emotions / Avanpost Production
https://culturallife.co.jp/ondori-movie
★2025年1月24日(金)新宿シネマカリテほか全国順次公開中
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TOUCH/タッチ(英題:Touch)

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監督:バルタザール・コルマウクル
原作:オラフ・オラフソン「Snerting(※原題)」
脚本:オラフ・オラフソン、バルタザール・コルマウクル
撮影:ベルグステイン・ビョルゴルフソン
出演:エギル・オラフソン(2020年 クリストファー)、Kōki,(1969年 ミコ)、パルミ・コルマウクル(1969年 クリストファー)、本木雅弘(1969年 高橋)、中村雅俊(2020年 久多良木)、メグ・クボ(1969年 ヒトミ)

2020年 アイスランド。クリストファーは認知症の診断を受けた。まだ初期段階だが、医師から「やり残したことはないか」と尋ねられる。脳裏に浮かんだのは、50年前に出逢って愛した女性の面影だった。
ロンドンで学生だったとき、食事に入った日本料理店の娘ミコがその人だ。高橋店長に見込まれて、料理を覚えた。ミコと恋に落ち、楽しく充実した日々を送っていた。しかし、突然店はたたまれ呆然とする。ミコや父親の行き先はようとして知れなかった。
クリストファーは、今出かけなければ記憶がなくなってしまうと恐れ、レストランを閉めてロンドンへ旅立つ。かつて一緒に高橋の店で働いていたヒトミから、日本の住所を手に入れることができた。

2020年はコロナが世界中に蔓延し始めた年。人々は家にこもり、出入国も制限されました。クリストファーは認知症とコロナに追われるように、急いで旅立ちます。50年前、青年だったクリストファーとミコの出逢いや恋の進展が、この旅の中にフラッシュバックします。
日本料理店の娘・ミコ役のKōki,さんは、木村拓哉さんの次女で、10代からモデル、ハイブランドのアンバサダーとして活躍してきた方です。長編映画出演は『牛首村』についで2作目。ホラーから一転ラブロマンスです。彼女が着こなす50年前のファッションも見どころ。若きクリストファーは監督と同姓?実の息子さんでした!二人を見守る父親役は、Kōki,さんが子供の頃からずっと知っています、という本木雅弘さん。笑顔と包容力で場を和ませます。
二人が突然姿を消してしまった背景がわかるにつれ、戦争の落とした影があきらかになります。原作は未見ですが、アイスランドの作家の方がこの小説を書き、日本人俳優を起用して映画化もされたというのが感慨深いです。(白)


2024年/アイスランド、イギリス合作/カラー/122分
配給:パルコ
(C)2024 RVK Studios
https://touch-movie.com/
★2025年1月24日(金)よりTOHO シネマズ シャンテほかにて公開中

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2025年01月21日

港に灯がともる(みなとにひがともる) 英題:The Harbor Lights

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©Minato Studio 2025
 
監督・脚本:安達もじり
脚本:川島天見
音楽:世武裕子
出演:富田望生、伊藤万理華、青木柚、山之内すず、中川わさ美、MC NAM、田村健太郎、土村芳、渡辺真起子、山中崇、麻生祐未、甲本雅裕

1995年の震災で多くの家屋が焼失し、一面焼け野原となった神戸・長田。かつてそこに暮らしていた在日コリアン家族の下に生まれた金子灯(富田望生)。在日の自覚は薄く、被災の記憶もない灯は、父(甲本雅裕)や母(麻生祐未)からこぼれる家族の歴史や震災当時の話が遠いものに感じられ、どこか孤独と苛立ちを募らせている。一方、父は家族との衝突が絶えず、家にはいつも冷たい空気が流れていた。ある日、親戚の集まりで起きた口論によって、気持ちが昂り「全部しんどい」と吐き出す灯。そして、姉・美悠(伊藤万理華)が持ち出した日本への帰化をめぐり、家族はさらに傾いていく──。なぜこの家族のもとに生まれてきたのか。家族とわたし、国籍とわたし。わたしはいったいどうしたいのだろう──。

始まりは、2015年1月。震災の年に生まれた人たちの成人式。灯(あかり)は、震災から20年といわれても実感がありません。お母さんからは、震災で家がなくなり避難生活の中で大変な思いをして育てたと聞かされてはいるのですが・・・。 
姉が結婚するのに、帰化手続きをしたいといいます。今のままでは国際結婚になるので、手続きが大変だという次第。日本で生まれた灯には、在日コリアンという意識もないのですが、父からは「お祖父さんがどうやって日本に来たか知ってるのか? お祖母さんがなんで字が書けへんのか知ってるのか?」と、帰化することに反対されます。
造船所で男性たちの中で働く灯ですが、いろいろなことがあって死にたいと思うほど落ち込みます。診療所に通い、心に傷を抱えた人たちと話す日々。その中には在日の男性もいて、「ずっと嘘ついて暮らしてる感じ」と言います。
私が「在日」の人たちの存在を知ったのは、たぶん10歳頃のことでした。神戸で生まれ15歳まで育ったのですが、「にあんちゃん 十歳の少女の日記」を書いた在日である安本末子さん(1943年生まれ)が、父が教鞭をとっていた県立兵庫高校の卒業生だったのです。 兵庫高校は、長田区にあって、まわりには在日の人が多く暮らしていて、生徒には在日の方も結構いたようです。優秀な在日の教え子に、将来、差別されない医師を目指せと進路指導したこともあると父が話していたのを思い出します。
1995年1月17日の阪神淡路大震災では、断層の走っているところが大きな被害を受けましたが、この映画の金子家がゴム工場を営んでいた長田区界隈は、広い範囲で火災が起こったところでした。
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©Minato Studio 2025
チマチョゴリ姿のお祖母さんが赤ちゃん(灯のお姉さんでしょうか)を抱いた姿の映った写真1枚だけを、お母さんが見つけたと語っています。
灯は、やっと前向きに生きる元気を取り戻し、設計事務所に就職します。「それぞれの暮らしに寄り添う」というコンセプトに共感したのが志望動機でした。空襲も震災も乗り越えた丸五市場再建の話に取り組むのですが、コロナ禍で挫折。そんな中で開く「丸五写真展」。 震災前のにぎやかだったころの写真もたくさん。紙焼きの写真って、やっぱりいいなぁ~と。
灯の20歳から9年間の成長を追った本作。震災から30年となる2025年1月17日に公開が始まりました。 今や震災を経験していない人が、人口の3割ほどになったと聞きます。 私も東京にいて、実際には経験していないのですが、あの日の朝、テレビをつけた時に生田神社がつぶれている姿が目に飛び込んできて、びっくりしたのを思い出します。同級生の中には、両親や兄弟、お子さんを亡くした人も多くて、10年目の時に、「10年の節目と言われてもなぁ」とつぶやいていた同級生の言葉に、肉親を亡くした人にとっては、いつも心に思いを抱えていて、何周年などということは関係ないと思ったのでした。 

灯を演じた富田望生さんは、福島県いわき市出身。東日本大震災の経験者です。灯の抱える思いを細やかに演じています。 生き辛さを感じている方たちにも、ぜひご覧いただきたい1作です。(咲)


2025年/119分/DCP/日本
製作:ミナトスタジオ 
配給:太秦
公式サイト:https://minatomo117.jp/
★2025年1月17日(金)より新宿ピカデリー、ユーロスペース他全国順次公開




posted by sakiko at 22:46| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年01月19日

ゴールドフィンガー 巨大金融詐欺事件  原題:金手指 英題:The Goldfinger

2025年1月24日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開 上映館情報

©2023 Emperor Film Production Company Limited All Rights Reserved

アンディ・ラウとトニー・レオンが『インファナル・アフェア』シリーズ以来20年ぶりの共演を果たしたエンタメ超大作!

監督・脚本:莊文強(フェリックス・チョン)
製作:ロナルド・ウォン
製作総指揮:アルバート・ヤン ジェン・ジーハオ アレックス・ヤン
撮影:アンソニー・プン
美術:エリック・ラム
編集:ウィリアム・チャン カーレン・パン
音楽:デイ・タイ
字幕翻訳:神部明世

キャスト
梁朝偉(トニー・レオン) 程一言(チン・ヤッイン)役
劉徳華(アンディ・ラウ) 劉啓源(ラウ・カイユン)役
蔡卓妍(シャーリーン・チョイ)
袁詠儀(アニタ・ユン)
任達華(サイモン・ヤム)
錢嘉樂(チン・ガーロッ)
姜皓文(キョン・ヒウマン)
陳家樂 (カルロス・チャン)
白只 (フィリップ・ユッグ)
岑珈其(カーキ・サム)
柯煒林(ウィル・オー)

総製作費70億円以上を投じて、香港黄金時代を豪華絢爛に再現

イギリスによる植民地支配の終焉(1997年)が近づく1980年代の香港。狂乱の香港バブル経済時代を舞台に、熾烈な陰謀うずまく巨額の金融詐欺事件を描く。無一文から100億香港ドルを稼ぎ出した<凄腕詐欺師>程一言(チン・ヤッイン)役をトニー・レオンが、それを追う<執念の捜査官>劉啓源(ラウ・カイユン)役をアンディ・ラウが務める。『インファナル・アフェア』とは立場が逆転した役どころ。監督と脚本は、『インファナル・アフェア』3部作の脚本を手掛けたフェリックス・チョン。
香港で興行ランキング5週連続1位となる大ヒット、第42回香港電影金像奨で12部門にノミネートされ、トニー・レオンが主演男優賞を受賞するなど6部門を受賞した。


海外でビジネスに失敗し、身ひとつで香港に入国した野心家の男チン・ヤッイン(トニー・レオン)は、悪質な違法取引を通じて徐々に香港に足場を築いていく。80年代株式市場ブームの波に乗り、資産100億ドルの嘉文世紀集団を立ち上げ、時代のレジェンドに。一方、汚職対策独立委員会(ICAC)のエリート捜査官ラウ・カイユン(アンディ・ラウ)は、チンの違法取引に目を付け捜査を始めた。幾度となく捜査の網を逃れられながらも15年間にも及ぶ粘り強い捜査を続けた。嘉文集団が引き起こした巨額の詐欺、汚職、殺人事件など、人命さえも失いながら大金が動く。1980年代の狂乱の香港経済を作り出したチン・ヤッインを追い詰めるラウ・カイユン。チンとラウの駆け引きが描かれる。実話を元に作られた。

公式HPより

狂乱のバブル経済時代を完全再現
金塊、札束、酒にパーティ…香港黄金時代を再現した綿密なプロダクション・デザインは、第17回アジア・フィルム・アワードで美術賞を受賞。そしてトニー・レオンやシャーリーン・チョイらが鮮やかに着こなす80年代ファッションも高く評価され、同賞衣装賞が送られた。物語の舞台は60年代から90年代にわたり、その時代の変化を表現するために、VFXにも大きく力が注がれた。さらにロケ地にはザ・ペニンシュラ香港、尖沙咀の1881ヘリテージなど香港名所がずらりと並ぶ。

フェリックス・チョン 監督・脚本
1968年、香港生まれ。『失業皇帝』(99)で脚本家デビュー。トニー・レオン主演、ケリー・チャン、仲村トオル、阿部寛らが出演の『東京攻略』(00)脚本や、『インファナル・アフェア』3部作でアラン・マックと共同脚本を務める。その他『ジェネックス・コップ2』(00)、『頭文字D THE MOVIE』(05)、『傷だらけの男たち』(06)などの脚本を手掛けた後、ドニー・イェン主演の『三国志英傑伝 関羽』(11)でアラン・マックと共同という形で監督デビュー。
その他の監督作に、アラン・マックとタッグを組んだラウ・チンワン主演『盗聴犯』シリーズ(09、11、14)、トニー・レオン主演『サイレント・ウォー』(12)、チョウ・ユンファとアーロン・クォックがダブル主演を務めた『プロジェクト・グーテンベルク 贋札王』(18)など。



公式HP https://www.culture-pub.jp/goldfinger/
2023年/香港・中国/カラー/シネマスコープ/5.1ch/原題:金手指/126分/G/
製作国:香港、中国
配給:カルチュア・パブリッシャーズ
posted by akemi at 20:56| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

Retake リテイク

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監督・脚本・編集:中野晃太
撮影:中野晃太、柳田修平
音楽:れんぴ (チョーキューメイ)
主題歌:チョーキューメイ「また、夏になる」
出演:麗(うらら)(水口遊)、武藤優汰(関野景)、タカノアレイナ(小川アリサ)、大原奈子(橋本海)、千葉龍青(相原二郎)

高校3年男子の関野景、写真撮影が好きだがいまいち「これ」というものが撮れずにいた。まぶしい存在だった同級生の遊から映画作りに誘われる。彼女は「絵描きの男の子と落ち着きのない女の子が、”時間の流れない世界”を旅する映画を撮りたい、と言う。キャスティングやロケハンも進んでいく。景は撮影を担当し、遊や新しい仲間と一緒に作品を作る時間が楽しくなる。

高校生活の最後の夏休み。こんな協同作業ができたなら、一生の思い出になるに違いありません。みんなでの侃々諤々のやりとりも、行き違いもみな作品として結晶します。
映画を作る過程には何度もやり直し=リテイクがあります。そのたびに流れを観直したり、脚本を変えたりしてより良いものを目指していきます。そのリテイクがそのまま作品に落とし込まれ、ああなるほどと思いました。この撮り方って今までなかった気がします。一緒にいる時間が長くなると変わっていく、人との関係もうまく入っています。
中野晃太監督は映像制作のワークショップで、高校生だった麗さんと出会ったそうです。講師と受講生だった二人が、今回監督と俳優として1本の映画を作りました。ほかのキャストも麗さんと映画製作をした経験があったり映画を学んでいたり。ちょっと控えめな主役・景役の武藤優汰さんだけは、唯一公募だったとか。行動的な遊への、景の淡い恋心はどうなるのかーにもご注目ください。(白)


受賞歴
第 45 回ぴあフィルムフェスティバル PFF アワード 2023 グランプリ受賞
第 17 回ニューヨーク ジャパンカッツ 大林賞受賞
第 24 回ハンブルク日本映画祭最優秀独立作品審査員賞受賞

2023年/年/日本/カラー/110分
配給:ミカタ・エンタテインメント
(C)湘南市民メディアネットワーク
https://retake-movie.com/
★2025年1月18日(土)より日(土)より新宿 K’s cinemaほか全国順次公開中

posted by shiraishi at 12:53| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

蝶の渡り  原題:პეპლების იძულებითი მიგრაცია 英題:Forced Migration of Butterflies

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(C)STUDIO-99

監督:ナナ・ジョルジャゼ
出演:ラティ・エラゼ、タマル・タバタゼ、ナティア・ニコライシヴィリ

ジョージア。1991年。ソ連からの独立が近づき、希望に満ちた<どんちゃん騒ぎ>で新年を迎える若者たち。
しかし、ソ連崩壊後、ジョージアは独立を宣言するものの、ロシアとの戦争で領土の一部を喪失。アブハジアと南オセチアは今もロシア占領下にある・・・

27年後。
画家コスタは祖父母の代からの古びた家の半地下に暮らしている。そこに集まるのは、かつての芸術家仲間たち。才能があってもうまくいかない。仕事がない。コスタは明日の電気代にも困るほどだ。
新年を迎えようとしている日、音楽家のミシャとムラ、衣装や帽子を作っているロラ、今は修道院にいるナタも集まっている。そこにコスタの昔の恋人ニナが戻ってくる。
そんな時、音楽家のミシャと付き合っているタソが、コスタの絵を買いたいというアメリカ人コレクターを連れてくる。なんと彼がニナに一目惚れ! その場でプロポーズ。さて、どうなる・・・?!

コスタの部屋にある絵をすべて買いたいというコレクターに、コスタは「蝶の渡り」の絵だけは手放しません。原語の意味は「蝶の強制移住」。ジョージョアでは様々な理由で移住せざるをえない人たちがいることも意味しているようです。
芸術家たちが、食べていけない状況の中でも、仲間たちと集い、冗談を飛ばしている姿に切なくなります。より良い生活を求めて、女たちは条件のいい男になびくのも、わかるような気がします。
仲間たちの姿を、若い時からヴィデオカメラに収めているナタは、アブハジアの戦争で夫ズラを亡くし、今は見習い修道女。
歴史に翻弄されながら、皆で寄り添い、生き抜こうとする人たちの味わい深い群像劇。(咲)



監督・脚本 ナナ・ジョルジャゼ
Nana Jorjadze
1948年、トビリシに生まれる。1968年から1974年まで建築家として働いた後、現在のショタ・ルスタヴェリ演劇映画ジョージア国立大学に入学。以降、女優業のほか衣装や美術などで様々な映画に関わるが、監督を志す。1986年、長編第一作『ロビンソナーダ 私の英国人の祖父』でジョージア初のカンヌ国際映画祭カメラ・ドール(新人監督賞)受賞。1996年の『シェフ・イン・ラブ』はアカデミー外国語映画賞にノミネートされた最初のジョージア映画となり、2000年の『シビラの悪戯』も数々の国際映画祭で受賞。2019年にはジョージアワインについてのユニークなドキュメンタリー『Prime Meridian of Wine』を発表。1992年のカンヌ国際映画祭審査員、1997年のヴェネツィア国際映画祭審査員はじめ、これまで100以上の国際映画祭で審査員を務め、名実ともにジョージアを代表する女性監督。本作はジョージアの首都で開催された2023年トビリシ国際映画祭のオープニングを飾り、ジョルジャゼ監督は映画への貢献に対して金のプロメテウス賞を受賞。
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(C)3003 film production, 2019
★ラナ・ゴゴベリゼ監督『金の糸』(2019)で主演を務めている。


トビリシ国際映画祭(ジョージア)オープニング作品
金のプロメテウス賞(映画への貢献に対して)受賞


2023年/ジョージア/89分/カラー/ジョージア語
配給:ムヴィオラ
https://moviola.jp/butterfly/
★2025年1月24日(金)より新宿武蔵野館、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開


posted by sakiko at 01:08| Comment(0) | ジョージア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年01月17日

室町無頼

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監督・脚本:入江 悠
原作:垣根涼介「室町無頼」(新潮文庫刊)
撮影:大塚亮
音楽:池頼広
アクション監督:川澄朋章
出演:大泉洋(蓮田兵衛)、長尾謙杜(才蔵)、松本若菜(芳王子)、遠藤雄弥(赤間誠四郎)、前野朋哉(七尾ノ源三)、阿見201(馬切衛門太郎)、般若(小吉)、武田梨奈(超煕)、水澤紳吾(伝助)、岩永丞威(斬ノ助)、吉本実憂(お千)、ドンペイ(孫八)、川床明日香(小萩)、稲荷卓央(彦次郎)、芹澤興人(蔵人)、中村 蒼(足利義政)、矢島健一(伊勢貞親)、三宅弘城(法妙坊暁信)、柄本明(唐崎の老人)、北村一輝(名和好臣)、堤真一(骨皮道賢)

1461年、応仁の乱前夜の京。大飢饉と疫病に襲われ、賀茂川ベリには8万を超える死体が積まれた。荒れにあれた世の中、権力者は無能でなすすべもない。自由人の蓮田兵衛は、各地を放浪しながらこの暗黒の時代の立て直しを画策していた。天涯孤独で絶望の淵にあった才蔵は骨皮道賢に拾われ、兵衛に引き取られた。厳しく鍛えられ、眠っていた武術の才能が花開く。才蔵は六尺棒を手にし、兵衛のもとで兵法者としての道を歩み始める。
兵衛は様々な能力に秀でた無頼たちを束ね、世直しのための一揆を企てる。無謀ともいえる彼らの前に洛中の警備にあたる骨皮道賢が“髑髏の刀”を手に立ちはだかった。

書ききれないほどの出演者です。兵衛は才蔵を筆頭に、抜刀術の達人、槍使い、金棒の怪力男、洋弓の朝鮮娘らを集めました。飄々と世の中を渡り歩く自由人の兵衛と、はみ出し者たちアウトローの軍団に失うものはありません。
企画から8年たって公開となったこのアクション大作、室町時代の最大のできごとであった「応仁の乱」が勃発する前夜を描いています。足利将軍家のお世継ぎ問題と幕府官僚の家督相続に端を発した戦乱は、民衆の苦境などほったらかしで11年も続きました。それが諸国の戦乱へと伝播し、戦国時代へと繋がっていきます。
本格的な殺陣を特訓した出演陣、棒術の達人となる長尾謙杜さんの成長ぶり、大泉洋さんと堤真一さんの一騎打ちを刮目して観よ!

東京・有楽町の丸の内TOEIは7月27日に閉館予定です。65年の歴史のある劇場で封切られる最後の時代劇となりました。試写もぜひこのスクリーンで観ていただきたいということで、大きな画面での戦国アクションを堪能してきました。
子どものころから時代劇といえば東映、特にオールスターで繰り広げられる華やかなお正月映画が大好きでした。波が岩にあたって砕け散るオープニングを幾度観たことでしょう。閉館に向け、これまでの東映の名作が次々と上映される予定です。『室町無頼』とともにお楽しみください。(白)


2024年/日本/カラー/135分
配給:東映
(C)2025「室町無頼」製作委員会
https://muromachi-outsiders.jp/
★2025年1月17日(金)丸の内東映ほか全国ロードショー中
posted by shiraishi at 18:11| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

サンセット・サンライズ

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監督:岸善幸
脚本:宮藤官九郎
原作:楡周平「サンセット・サンライズ」(講談社文庫)
撮影:今村圭佑
音楽:網守将平
インスパイアソング:GRe4N BOYZ「シオン」
出演:菅田将暉(西尾晋作)、井上真央(関野百香)、中村雅俊(関野章男)、三宅健(高森武)、池脇千鶴(町田仁美)、竹原ピストル(倉部健介)、山本浩司(山城進一郎)、好井まさお(平畑耕作)、小日向文世(大津誠一郎)

2020年。新型コロナウイルスのパンデミックで世界中がロックダウンに追い込まれた。東京の大企業に勤める釣り好きの晋作は、リモートワークを機に地方への移住を画策する。釣り好きの晋作の条件は海が近いこと。
ちょうど三陸の町で空き家対策に頭を悩ませていた関野百花が、4LDKを家賃6万円でネットにアップした。まさかの神物件に一目惚れした晋作はアポも取らずに現地へ飛んでいく。契約が成立し、晋作は希望通りの海沿いの町で気楽な“お試し移住”、仕事の合間には釣り三昧の日々を過ごし始めた。

『あゝ、荒野』(17)の岸監督、7年ぶりのタッグとなった菅田将暉さんが主演。脚本はクドカンこと宮藤官九郎さん。コロナや東日本大震災のエピソードもそっと盛り込みながら、東京から来た〈よそ者〉の晋作と、町の人たちのドラマができました。面白くないわけがない!井上真央さん演じる百香をマドンナとあおぎ、見まもる会を結成したフラれ組の4人。〈よそ者〉の晋作に警戒感まる出し。このぎこちなくも濃密なやりとりに笑います。
百香の事情がわかるにつれ、しんみりしますが「それもあり、これもあり」とばかりに百香が食卓に並べる三陸の海の幸山の幸。美味しそうー。じゃんじゃんかかる魚に晋作の「半端ね~!」の歓喜の声が響きます。漁師姿が板についている中村雅俊さん、目つきの悪さに誰かわからなかった三宅健さん、キャスト・スタッフの誰もがこの東北の町での撮影を存分に存分に楽しんだらしい空気感も「半端ね~!」(白)


2024年/日本/カラー/139分
配給:ワーナー・ブラザース
(C)楡周平/講談社 (C)2024「サンセット・サンライズ」製作委員会
https://wwws.warnerbros.co.jp/sunsetsunrise/
★2025年1月17日(金)より絶賛上映中

posted by shiraishi at 18:01| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

teki.jpg

監督・脚本:吉田大八
原作:筒井康隆
撮影:四宮秀俊
出演:長塚京三(渡辺儀助)、瀧内公美(鷹司靖子)、河井優美(菅井歩美)、黒沢あすか(渡辺信子)、中島歩、カトウシンスケ、高畑遊

渡辺儀助77歳。フランス近代演劇史を専門とする元大学教授。大学を辞したのは10年前。20年前に妻・信子に先立たれてからは一人暮らしを続けている。講演や執筆で僅かな収入を得ているが、預貯金が後何年持つか、自身が後何年生きられるかを計算しながらの慎ましい生活である。子どもはいないが、教え子がときおり訪ねてくれ、とりとめない会話をして食事をするのを楽しみにしている。

モノクロの画面に昭和の映画のようなたたずまいの家での一人の清貧な生活。儀助を演じる長塚京三さんの雰囲気が、時折湧いてくる煩悩や妄想も下品に陥らずに見せています。現実世界と妄想世界のシーンがかわるがわる出てくるので、これはどっち?と疑問に思います。亡くなった奥さんが登場するシーンは思い出の中の一コマなのでしょう。
教え子の靖子は大胆なシーンも辞さない瀧内公美さん、バーで出逢う歩美は出演作が目白押しの河井優美さん。お二人とも男性を惑わせる色香がこぼれていて、元教授だろうが煩悩にまみれるよねと、儀助に同情するものです。
そういえばヴィム・ヴェンダース監督の『PERFECT DAYS』(23)には男性の欲望など登場しませんでした。監督が理想とした暮らしだったのかも。儀助のようにどんなに細かく計算して予定を立てようが、病気や老いはさけられず忍び寄ってきます。それこそが「敵」?(白)


東京国際映画祭で、東京グランプリ/東京都知事賞、最優秀監督賞、最優秀男優賞の3冠。受賞者記者会見で吉田大八監督は、「映画は俳優を観にいくもの。だから僕の映画も俳優を観に来てほしい。ですので、男優賞が取れたのは嬉しい。監督賞は自信がない。作品賞は関わった皆のもの」と謙虚でした。
パリ、ソルボンヌ大学在学中に、フランス映画『パリの中国人』(74)で俳優デビューした長塚京三さん。『敵』では、かつて大学でフランス文学を教えていた元教授という役どころ。吉田監督は、長塚さんのキャリアからキャスティングしたわけではなく、偶然と語りました。
長塚京三さんは、ほぼ出ずっぱり。「ロケ現場の家が自宅からすごく遠くて、朝早くに出て、帰り着くのが夜遅く。妻のサポートがあって、食べるものを食べて、寝る時間を確保してもらいました。肉体労働を終えて、華やかな映画祭で賞までいただくとは思いませんでした」と感慨深く語りました。
モノクロで撮ったことについて、吉田監督は、これまで古い家が舞台の映画を観ていたら、モノクロが多くて、自分の映画もモノクロがふさわしいと思ったとのこと。あとから観て、観た方がより強く想像力を働かせてくれると感じたそうです。
舞台になった趣のある家は、縁側があって、庭に降りるところには大きな踏み石がありました。祖父が昭和の初めに神戸に建てた私の生まれた家を思い出しました。風情ある日本家屋が今は少なくなったと感じます。(咲)


2023年/日本/カラー/108分
配給:ハピネットファントム・スタジオ、ギークピクチュアズ
(C)1998 筒井康隆/新潮社 (C)2023 TEKINOMIKATA
https://happinet-phantom.com/teki/
★2025年1月17日(金)テアトル新宿ほか全国ロードショー

posted by shiraishi at 17:56| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

君の忘れ方

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監督・脚本:作道雄
共同脚本:伊藤基晴
撮影:橋ヶ谷典生
音楽:平井真美子
出演:坂東龍汰(森下昴)、西野七瀬(柏原美紀)、円井わん(吉田翠)、小久保寿人(牧田兼)、津田寛治(牛丸清太郎)、岡田義徳(池内武彦)、風間杜夫(澤田義男)、南果歩(森下洋子)

ラジオ構成作家の森下昴とフードコーディネイターの恋人・美紀とは付き合って3年になる。結婚を間近に控えていたある日、美紀は交通事故で亡くなってしまう 。突然の美紀の死を受け入れられず、呆然自失の日々を過ごす昴に、故郷の岐阜で一人暮らす母・洋子は帰っておいでと声をかける。洋子も20年前突然夫を亡くし、その傷は今も癒えていない。
昴は母の元に帰り、親しい人を亡くした人々が胸のうちを語り合う「グリーフケア」の会に参加してみた。そこにはあらゆる事情で最愛の人を亡くした老若男女がいた。中でも妻を亡くしたという池内の話に心惹かれる。

昴と美紀はすでに一緒に暮らし、結婚式の準備に余念のない日々を過ごしていました。冒頭の演出に美紀がいなくなったことを強く感じました。昴が泣くシーンもありません。これからも二人の日々が続くはずだったのに、いきなり身体の半分を失ったような感覚なんでしょうか。仕事で会ったカウンセラーの言葉も納得できません。
昴は美紀の姿をそこここに見ます。変人と思われている池内には、彼にしか見えない亡き妻がそばにいます。それはそれで幸せではないかと思ってしまいました。母の洋子は夫を死なせた男をずっと探し続けています。理不尽この上なく、洋子が痛ましいです。
病気で夫を送った何人かの友人が、少しずつ日常を取り戻してくるのを見てきました。残った者は、折にふれ不在を感じる寂しさとこれから先もずっと付き合っていきます。生まれてきたなら年をとるのも病も死ぬまでついてまわります。それでも生まれてきて良かった、会えて良かったと思える人生でありますように。(白)


長年一緒に暮らしてきた人に先立たれるのも寂しいけれど、これから人生を共に歩むはずだったパートナーが突然この世からいなくなるというのは、あまりに悲しすぎます。忘れようにも忘れられない・・・、いえ、忘れなくてもいいのだと教えてくれたような気がします。
主人公の昴の故郷は、飛騨古川。高山の隣町で、やはり古い町並みの風情ある素敵な街です。本作のプロデューサーの一人、益田 祐美子さん(平成プロジェクト代表)は、飛騨高山の出身。映画の中に、一瞬ですが写真で登場! 笑顔が素敵です。2年前から岐阜県人会副会長を務めているとのことで、この映画もしっかり岐阜県のPRになっています。(咲)



2024年/日本/カラー/107分
配給:ラビットハウス
(C)「君の忘れ方」製作委員会 2024
https://kiminowasurekata.com/
★2025年1月17日(金)新宿ピカデリーほか全国公開中

posted by shiraishi at 17:55| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

アーサーズ・ウィスキー(原題:Arthur's Whisky)

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監督:スティーブン・クックソン
脚本:アレクシス・ゼガーマン、
撮影:デビッド・マッキースティーブン・クックソン
音楽:デビッド・ニューマン
出演:ダイアン・キートン(リンダ)、パトリシア・ホッジ(ジョーン)、ルル(スーザン)、デヴィッド・ヘアウッド(ハル)、アディル・レイ(ジェームズ)、ローレンス・チェイニー、ボーイ・ジョージ

イギリス郊外、嵐の夜。アマチュア発明家アーサーは画期的な発明を完成させた途端、落雷で亡くなってしまう。彼の葬儀後、妻のジョーンは友人リンダとスーザンの手を借りて、アーサーの小屋の大掃除を始めた。ウイスキーのボトルを発見した3人は、リビングで老いた体を嘆きながらアーサーに向けて献杯しそのまま寝入ってしまう。翌朝目覚めてお互いを見て絶叫!!なんと若返っていた!アーサーが発明したのは、若返りのウイスキーだったのだ。
20代に戻った3人は、若くなった体でやりたいことリスト(バケットリスト)を作成する。しかし、効果には時間のリミットがあるのに気づいた。次はメイクやファッションも今風にきめて、クラブへ乗り込んだ。3人の“ガール”たちは久しぶりにダンスやお酒を楽しんだものの、飲み過ぎて大失敗。DJと強いお酒を飲み重ねたスーザンはソファで寝てしまい、翌朝元に戻ったスーザンの姿を見たDJは仰天。そそくさと逃げ出すスーザンだった。残り少なくなるウイスキーに3人はもっと有意義に使わなくてはと思う。

古今東西、長寿や若返りを望む人は多いもの。この映画では、70代の女性3人が棚ボタのように若返りウイスキーを手に入れてしまいました。初めのうち3人は大はしゃぎで、かつてやりたかったことを次々と試してみます。効き目の続く時間が限られていることに気づいてからは、使い方に慎重になります。この一連の3人の様子がとても面白いです。
自分だったら何をしよう?老体をだましだまし日々暮らしていると3人のセリフにいたく共感します。実際にはありえないでしょうが、楽しい妄想が拡がります。世の中なかなか落ち着かず、値上げラッシュでやりくりも厳しいこのごろですが、心をときほぐしてくれるこんな映画に出逢うとホッとします。(白)


2024年/イギリス/カラー/分
配給:AMGエンタテインメント
(C)AW Movie Production Ltd 2024
https://arthurswhisky.jp/
★2025年1月17日(金)新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開中
posted by shiraishi at 17:53| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年01月12日

トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦  原題:九龍城寨之圍城 英題:Twilight of the Warriors: Walled In

2025年01月17日(金)新宿バルト9ほか全国劇場にて公開 上映情報 

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©2024 Media Asia Film Production Limited Entertaining Power Co. Limited One Cool Film Production Limited Lian Ray Pictures Co., Ltd All Rights Reserved.

Staff
監督:鄭保瑞(ソイ・チェン)『リンボ』など
アクション監督:谷垣健治 
音楽:川井憲次
美術監督:マック・コッキョン
製作:ジョン・チョン、ウィルソン・イップ
Cast
古天楽(ルイス・クー)、林峯(レイモンド・ラム)、劉俊謙(テレンス・ラウ)、伍允龍(フィリップ・ン)、胡子彤(トニー・ウー)、ジャーマン・チョン、任賢齊(リッチー・レン)、黄徳斌(ケニー・ウォン)、洪金寶(サモ・ハン)、郭富城(アーロン・クォック)

九龍城砦がスクリーンに蘇る!

舞台は、かつて黒社会が野望を燃やし覇権を争っていた伝説の九龍城砦。東洋の魔窟と呼ばれ、無法地帯として知られていたが、今は取り壊されてなくなっているその場所が、圧倒的なスケールでスクリーンに蘇る。ルイス・クー、サモ・ハン、リッチー・レン、アーロン・クォックといった香港映画界ではお馴染みの俳優たちから、若手実力派まで集結し、壮絶な闘いを繰り広げる。高額を投じて精密に再現されという九龍城砦のセットが圧巻。スケールの大きさと細部へのこだわりが、あの時代の九龍城砦へと思いを馳せる。

80年代。香港へ密入国した若者、陳洛軍(チャン・ロッグワン)は、黒社会からの無理強いを断ったことで組織に追われ、治外法権の九龍城砦へ逃げ込んだ。最初は、ここでも追われ、用心棒たちと闘うが、次第に受け入れられ、ここで働くようになり、仲間と出会い絆を深めながら、九龍城砦の用心棒的な仲間と4人の友情を育んでいく。チャンはここで過ごすうち、生まれて初めて居場所を見つけたが、自分の出自のため、九龍城砦を巡る激しい争いに巻き込まれてゆく。復讐、下剋上の地位争いの中、4人はそれぞれの信念を胸に、九龍城砦を守るため、命を懸けた最後の戦いに挑む。度肝を抜くアクションの連続。死闘は続き、最後を制したのは…。

製作費の1/6とも言われる5000万香港ドルをかけて制作された九龍城砦のセット。その再現度の高さも大きな話題を呼び、公開を迎えると評判になり、広東語映画として動員数歴代1位となった。第97回アカデミー賞 国際長編映画賞の香港代表に選出され、第77回カンヌ国際映画祭での初上映では熱狂的な拍手を浴びた。また、2025年3月16日(日)に香港にて開催される、アジア全域版アカデミー賞「第18回アジア・フィルム・アワード」(AFA)では9部門でノミネートされている。

九龍城砦が取り壊される前に香港に行っていますが、さすがに足を踏み入れたことはありません。重慶マンションに入ってみるのが精いっぱいでした。プレステのアドベンチャーゲーム「KOWLOON'S GATE クーロンズ・ゲート-九龍風水傳-」(97年発売)でも迷って完遂できず諦めました。それが実景となって観られただけで感激です。そんな九龍城砦を舞台に起こる権力争い、過酷な運命の中で育まれる友情、家族への愛、仲間の絆をいっぱいに詰め込んだ熱い映画が本作。
谷垣健治アクション監督渾身のアクションは、俳優一人ずつの個性を際立たせて武闘派もちろんそうでない方も必見の仕上がりです。九龍城砦は、無法地帯をいいことに建て増し継ぎ足された建物です。電線や水道管が天井や壁を走る、魔訶不思議なこの建物を縦横無尽に動き回ったアクションは、ご苦労しつつもさぞやりがいがあったことでしょう。
すっかり渋いベテランとなったルイス・クーが吸っていた煙草を上に飛ばし、落ちてくるまでに見せるアクションは見逃せません。うーむ、カッコ良すぎる!!
実は親友の捲風(ルイス)と殺人王(アーロン)との死闘、運命的なロッグワンとの邂逅、貧しい中でも助け合う住民たちの人情などみどころはたっぷりです。1980年代を背景に、香港アクション界のレジェンド、サモハンが大ボスとして戦うところがみられるなんて感涙ものです。若手がいつのまにか成長して、それぞれの代表作となるようなこの作品に出演しているのも嬉しいです。お見逃しなく!(白)


九龍城砦を舞台にした映画で思い出すのは、ドニー・イェンとアンディ・ラウ共演の『追龍』(2020年7月24日公開)です。今回の『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』も、負けず劣らずの香港のレジェンドたちの競演! 溜息が出ます。香港映画全盛時代を思い出させてくれました。
そして、九龍城砦といえば、頭上すれすれに飛ぶ飛行機。本作でも出てきました。
1992年だったと思うのですが、香港電影通信の電影旅団で訪れた時、帰りの啓徳空港でジェイコブ・チャン監督とお会いしたのですが、九龍城砦の異様な姿を一緒に眺めたことを懐かしく思い出しました。
1993年に九龍城砦が取り壊されてからは、あの一角はなかなか楽しい下町で、帰国する日、空港にスーツケースを預けたあとは、トンネルをくぐって散策に繰り出したものです。ショッピングモール「九龍城廣場」の屋上駐車場にあがって、飛行機のお腹もよく眺めました。啓徳空港がなくなって、早や四半世紀。今はどんな街になっているのでしょう・・・ (咲)


去年の「第37回東京国際映画祭」と「2024香港映画の新しい力」で上映され、チケットはすぐに売り切れてしまったが、香港でそんなに評判になっていたというのは知らなかった。東京国際映画祭でのチケットは友人が取ってくれて観ることができたが、豪華な俳優陣と、目まぐるしく進む物語の中で、誰と誰がどういう関係というのを把握するのが難しかった。何回か観ないと、争っている人の関係を理解できないかも。私は2回観たけど、まだ理解できてない。たとえばルイス・クーとアーロン・クォックの関係。敵対していて、「どちらかが死ぬまで戦わないと」みたいに言っていたのに、どちらか死んではいないよう。後でアーロンはルイスがやっている理容室に髭を剃りに来るし、この関係、今一つわからず、もう一度観て確認しなくては(笑)。それともこれは回想シーンだったのか…。
この九龍城砦でのシーンで思い出したのが、1992年に東京国際映画祭で上映された張之亮(ジェイコブ・C・L・チャン)監督の『籠民』(ロウミン)。この映画と同じように九龍城砦で鳥籠のような部屋で暮らす人々の絆と、開発でここを追われることになる人々の闘いが描かれていた。
『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』では、九龍城砦のセットの再現度の高さが話題になっていたけど、東京国際映画祭での上映後のトークで、「これには日本の写真集などの資料が大いに役立った」と語られ、びっくりした。私も九龍城砦の写真展は何度か行ったことがあるし、詳細な写真集を見たことがある。そうか、日本人写真家による記録が役だったんだと、ちょっとうれしかった。それと、最後、4人と死闘を繰り広げる悪の権化のような役を演じていたフィリップ・ンさんですが、映画の中ではサングラスをつけているし、素顔がほとんどわかりませんでしたが、とても笑顔が素敵なイケメンでした。東京国際映画祭での上映後のトークに、プロデューサーのアンガス・チャンさん、アクション監督の谷垣健治さんと共に参加していました(暁)。
その模様はこちら
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左からプロデューサーのアンガス・チャンさん、アクション監督 谷垣健治さん、出演者 フィリップ・ンさん 第37回東京国際映画祭にて

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映画の中のフィリップ・ンさん
©2024 Media Asia Film Production Limited Entertaining Power Co. Limited One Cool Film Production Limited Lian Ray Pictures Co., Ltd All Rights Reserved.

魔窟と呼ばれた「九龍城砦」ですが、1993年に取り壊され、現在は「九龍寨城公園」になっています。九龍城砦の面影はどこにもないけど、記録が壁に残されています。

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2018.6 九龍寨城公園にて 写真撮影:宮﨑 暁美


2024年/香港/125分/カラー/シネマスコープ/5.1ch/ 
配給:クロックワークス
公式HP https://klockworx.com/movies/twilightwarriors/

メイキング映像はこちら
アクション編
城砦への思い編
posted by akemi at 20:51| Comment(0) | 香港 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

満ち足りた家族   原題:보통의 가족  英題:A NORMAL FAMILY

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(C)2024 HIVE MEDIA CORP & MINDMARK ALL RIGHTS RESERVED

監督:ホ・ジノ(『八月のクリスマス』)
出演:ソル・ギョング、チャン・ドンゴン、キム・ヒエ、クローディア・キム

ひとつの事件をきっかけに、完璧な家族の崩壊が始まる・・・

兄ジェワン(ソル・ギョング)は、道徳よりも物質的な利益を優先して生きてきた弁護士だ。仕事のためなら、殺人犯の弁護でさえも厭わない。年下の2人目の妻ジス(クローディア・キム)や10代の娘らと共に豪華マンションに住み、家事は家政婦がこなす誰もがうらやむ暮らしだ。
一方、小児科医として働くジェギュ(チャン・ドンゴン)は、どんな時にも道徳的で良心的であることを信念に生きてきた。年長の妻ヨンギョン(キム・ヒエ)と10代息子と共に住む彼は、老いて痴呆気味になった母の介護にも献身的に当たり、品行方正な日々を送る。
まったく相容れない信念に基づいて生きてきた兄弟。しかし2人は、それぞれの妻を伴って月に1回、高級レストランの個室に集い、ディナーを共にする。レストランではお得意様であるジェワン夫妻が常に優先され、兄弟家族同士の会話はどこかぎこちない。
ディナーが行われた夜、時を同じくある事件が起こり、満ち足りた日々を送る家族が想像だにしなかった衝撃の結末を招き寄せる――。

利益優先のいかにも計算高い弁護士を演じたソル・ギョング。いつになく冷血な雰囲気がみなぎっていて凄みがあります。
一方、人情味豊かな小児科医を演じたチャン・ドンゴンは、常に人道的な判断をしていたのに、あることから違う顔を見せ始める弟ジェギュを静かに体現。
ソル・ギョング、チャン・ドンゴン共に、確かな演技で唸らせてくれました。
わが子のこととなると、親はどう動く? 人間の本質を突き付けられた思いです。(咲)


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ジャパンプレミア チャン・ドンゴン&ホ・ジノ監督登壇
http://cineja-film-report.seesaa.net/article/508760172.html

2024年/韓国/109分/シネスコサイズ/5.1ch
字幕翻訳:福留友子
提供:KDDI 配給:日活/KDDI
公式サイト:https://michitaritakazoku.jp/
★2025年1月17日(金) 全国ロードショー
posted by sakiko at 20:14| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年01月11日

繕い合う・こと

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監督・脚本・編集:長屋和彰
プロデューサー・助監督・スチール:大沢真一郎
撮影・照明・編集協力:磯辺康広
出演:長屋和彰(倉木護)、黒住尚生(倉木幹)、菊池豪(稲田勝也)、山本由貴(霞亜希)、ふくだみゆき(稲田弥枝)、篠原篤(石森)、大沢真一郎(枝)

長男の護は、亡き父の[金継ぎ師]の後を継いだ。父とは違うやり方で顧客の求めに応じている。独り身の護は、仕事が終わると友人の稲田の店で一杯飲んで帰る。親が亡くなっても年末に家族そろって大掃除をする習慣は変えていない。ふだん連絡もよこさない弟の幹だが、ちゃんと帰ってきた。護は仕事に戻り、掃除を始めた幹は、父の部屋が空になっているのに気づいて護にくってかかる。取っ組み合いのあげく怒りの収まらない幹はどこかへ出て行ってしまった。

定位置にあるカメラが、護の朝のルーティンを映しています。一人での食事でも「いただきます」と言い、部屋もよく片付いています。几帳面で真面目な性格が見えます。護は急に来店した女性の茶碗をいったんは断わりますが、理由を聞いて修復することにします。幹も帰宅したらまっすぐに仏壇に向かい、手を合わせます。いろいろな説明は省略されているのですが、観客が想像できるヒントがそこかしこにありました。
金継ぎの作業を初めてよく見ました。護が父の言葉「なかったことにしないで綺麗に修繕した跡を残す。そこが金継ぎのいいところ」と言うのをほおぉと深く納得して聞きました。金継ぎは金繕いともいいます。護は言葉をじっくり選んで話しますが、幹は短気で、お終いまで話を聞きません。護と幹の共通の友人たちが登場して、この二人の潤滑油となります。稲田夫妻のやりとりはこの静かな作品のハイライトでした。主役より目立った稲田夫人は『カメラを止めるな!』の上田監督の奥様ふくだみゆきさん。監督デビューはなさっていますが、女優として初出演です。監督・主演の長屋和彰さん、プロデューサー・助監督・出演の大沢真一郎さんもカメ止めに出演していましたよ。
日本の伝統文化の金継ぎの仕事にフォーカスしながら、不器用な兄弟や周りの人々が繕いあいながら生きていく様が描かれています。(白)


2023年/日本/カラー/89分
(C)2023 Mending Cracks
https://yellow315327.studio.site/
★2025年1月11日(土)新宿K's cinemaにて公開中
posted by shiraishi at 11:34| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年01月10日

劇映画 孤独のグルメ

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監督:松重豊
原作:久住昌之(作)谷口ジロー(画)
脚本:松重豊、田口佳宏
撮影監督:赤松比呂志
撮影:金子圭太郎
主題歌:ザ・クロマニヨンズ「空腹と俺」(HAPPY SONG RECORDS/Sony Music Labels Inc.)
出演:松重豊(井之頭五郎)、内田有紀(志穂)、磯村勇斗(中川)、杏(松尾千秋)、オダギリジョー(店主)、塩見三省(松尾一郎)、村田雄浩(滝山)/ユ・ジェミョン(係官)

輸入雑貨の貿易商の井之頭五郎は、仕事でパリに来ている。元恋人の小雪の娘・千秋が頼み事があるという。祖父の松尾一郎が子供の頃に母親の作ってくれたスープを探すことになった。手がかりが少ない中あちらこちらと尋ね歩き、船に乗り遅れた五郎はとんでもない方法で海に出る。嵐に遭って気づくと、どこともしれない小島に流れ着いていた。そこで暮らすコミュニティの人々と交流するうちにあるヒントを見つけた。思い出の幻のスープは、ほんとうに再現できるのだろうか?

実は昨年の東京国際映画祭でいちはやく拝見しました。
ポスターの「腹が…減った」とつぶやく五郎さん、なんでこんな姿に!?
と思うでしょ?これまでにない大冒険に飛び込んでしまった五郎さんなのです。
元はといえば30年前に連載が始まった人気コミックです。テレビ東京の深夜枠ドラマとなったのは2012年。松重豊さんが主役になった決め手は「ロケ弁をものすごくうまそうに食べる」からだったそう。どの回を観ても本当に美味しそうですもんね。しかも量が多い!健啖家でないと務まりません。
満を持して劇映画化、松重豊さんが監督・脚本・主演と大活躍。ロケ地も共演の俳優陣も豪華です。スープ探しに加え、家族や夫婦の問題も取り入れて見ごたえのある作品になりました。おなかがすくこと請け合い。鑑賞後に駆け込むお店を探しておきましょう。(白)


2025年/日本/カラー/110分
配給:東宝
(C)2025「劇映画 孤独のグルメ」製作委員会
https://gekieiga-kodokunogurume.jp/
★2025年1月10日(金)より大ヒット上映中

posted by shiraishi at 13:24| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年01月09日

エマニュエル 原題:EMMANUELLE

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(C)2024 CHANTELOUVE - RECTANGLE PRODUCTIONS – GOODFELLAS – PATHÉ FILMS

監督:オードレイ・ディヴァン(『あのこと』
脚本:オードレイ・ディヴァン、レベッカ・ズロトヴスキ
原案:エマニエル・アルサン著「エマニエル夫人」
出演:ノエミ・メルラン(『燃ゆる女の肖像』『TAR/ター』)、ウィル・シャープ、ジェイミー・キャンベル・バウアー、チャチャ・ホアン、アンソニー・ウォン、ナオミ・ワッツ

1974年、シルヴィア・クリステルのエロティックな姿が一大センセーショナルを巻き起こした『エマニエル夫人』から、50年。
官能小説「エマニエル夫人」を大胆に解釈し、現代に蘇らせた物語。


エマニュエルは仕事で香港の高級ホテルの査察依頼を受ける。香港に向かうフライトの中で、男をトイレに誘い込む。その様子を見ていた男、ケイ・シノハラは、エマニュエルが査察する為に滞在するホテルの同じ階の部屋が定宿だった、ダムのエンジニアだという。思わせぶりに彼を誘ってみるが、部屋には来ない。ホテルのCCTV室の監視者から、「ケイ・シノハラにはお決まりの行動がなく、部屋では寝ない」と聞かされる。ある夜、ケイから貰ったライターに書かれた名前を頼りに雑居ビルの奥深くにある会員制倶楽部に赴く・・・

外交官夫人が赴任先のタイを舞台に繰り広げた官能的な『エマニエル夫人』が、香港を舞台にキャリアウーマンの心からの性の目覚めを描いた物語に。
『あのこと』で女性の痛みを描いたオードレイ・ディヴァン監督。「痛みを描けるなら、悦びも描けるかもしれない」と、本作に取り組んだとのこと。
エマニュエルは、確かに魅力ある美人だけど、「金融業?」と言い当てられるように、賢くて、近寄りがたいところも感じます。それでも男なら誘いに乗ってくるはずと思っている節もあって、あまり好感が持てなかったのですが、監督インタビューに、「女性キャラクターは必ずしも好人物でなくてもよいと考えています」とあって、監督の思惑にまんまとはめられたのでした。
香港が舞台であることにそそられたのですが、なによりアンソニー・ウォン(秋生ちゃん!)の出演が気になりました。濡れ場があったら・・・と想像までしてしまったのですが、彼の役どころは「The Eye」。CCTV室の監視者でした。
ホテルの位置は、窓の眼下に見えるヴィクトリア湾の風景から、香港島の湾仔あたりと推測。「Rosefield Palace Hotel」と出てきますが、実在しません。エンドロールにGrand Hyatt Hong Kongとありましたので、推測通り、湾仔のホテルでした。ここには、2度程しか行ったことがないので、ロビーの雰囲気に記憶がありませんでした。
そして、怪しげな会員制倶楽部のある雑居ビルは、かの有名な重慶大厦(チョンキンマンション)。この会員制倶楽部の正体がまた香港らしくて笑いました。(咲)



2024/フランス/カラー/シネスコ/5.1ch デジタル/105 分/R15+
字幕翻訳:牧野琴子
配給:ギャガ ギャガロゴ
公式サイト:https://gaga.ne.jp/emmanuelle/
★2025 年 1 月 10 日(金) TOHOシネマズ 日比谷他全国公開

posted by sakiko at 16:44| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

FPU ~若き勇者たち~ 原題:維和防暴隊 英題:Formed Police Unit

2025年1月10日~ TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
劇場情報

© 2024 Zhongzhong (Huoerguosi) Films Co., Ltd. & Wanda Pictures (Huoerguosi) Co., Ltd. All Rights Reserved

監督:李達超(リー・タッチウ)
製作総指揮:劉偉強(アンドリュー・ラウ)
撮影:ファン・ユェンマン(H.K.S.C.)
美術:チュン・イーフン
アクション指導:シャ・シアロン、チェン・ジュンジー、フー・シャオガン
出演
分隊長 ユー・ウェイトン役 黄景瑜(ホアン・ジンユー)
狙撃手 ヤン・ジェン役 王一博(ワン・イーボー)
通訳/連絡係 ディン・フイ役 鐘楚曦(チョン・チューシー)
小隊長 ジョウ・ジアシュエン 欧豪(オウ・ハオ)
国連警察 作戦部長 ファビオ・トーマス:トーマス・フィケ

命を懸けて挑む、中国の国際平和維持警察隊FPUを描く

反政府武装集団と政府軍の武力紛争が続くアフリカの国へ、国連の要請を受けた中国の国連平和維持警察隊「FPU」(Formed Police Unit)が派遣された。チームワークを重んじる分隊長ユー(ホアン・ジンユー)や、正義感が強い狙撃手ヤン(ワン・イーボー)らは、一触即発で武力衝突が起こりうる最も危険なエリアで勤務することになる。内戦状態が続く中、大量虐殺、テロ攻撃、暗殺、暴動、人質事件などが頻発するこの地で、幾度となく命の危機に直面する彼らだったが、命がけの任務に邁進する。しかし、ユーとヤンの間には、ヤンの父を巡って因縁があり、ユーに対して不信感を持っていた。
そんな中、拘束されていた、大量虐殺を指揮していた人物が裁判にかけられることになり、証言者たちを出廷させるため、「FPU」のメンバーは彼らを守りながら裁判所に向かうが…。台風が接近する中、その証言者たちを奪取しようとする者たちが襲ってくる。暴風雨の中、死闘が続くが、なんとかそこを脱することができた。しかし、通訳だったディン・フイ隊員が命を落としてしまう。そんな彼らの活動を描く中国製ミリタリーアクション。

中国の若手俳優ホアン・ジンユー&ワン・イーボーが夢の競演!

モデル出身で、高校生の青春BLドラマ「ハイロイン」の主役で鮮烈デビューしたホアン・ジンユーがリーダー役を好演。『オペレーション:レッド・シー』からさらに進化したミリタリーアクションを演じ、若手トップ俳優の実力を発揮
中韓ボーイズグループUNIQのダンサー&ラッパーとしてデビューし、TV時代劇ドラマ「陳情令」でブレイクし、2024年には3本の主演映画『無名』『ボーン・トゥ・フライ』『熱烈』が日本で立て続けに公開されたワン・イーボーが、人命救助に情熱を燃やす青年を熱演。複雑な役どころを繊細に演じ、ハイスペックな身体能力を披露し、過酷なアクションをこなしている。『インファナル・アフェア』シリーズのアンドリュー・ラウ監督が製作総指揮に名を連ね、武術監督出身のリー・タッチウが監督を務めた。


公式HP https://hark3.com/FPU/
2024年製作/101分/PG12/中国
配給:ハーク
posted by akemi at 00:00| Comment(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年01月05日

#彼女が死んだ  原題: 그녀가 죽었다(彼女が死んだ)英題:FOLLOWING

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© 2024 NGENE FILM ALL RIGHTS RESERVED

監督:キム・セフィ
出演:ピョン・ヨハン、シン・ヘソン、イエル、ユン・ビョンヒ、パク・イェニ、シム・ダルギ、パク・ミョンフン

不動産公認仲介士のク·ジョンテ(ピョン・ヨハン)は、顧客が預けた鍵でその家に入り、他人の人生を盗み見るのが楽しみだ。ソーセージを食べながらビーガンサラダの写真を投稿するSNSインフルエンサーのハン·ソラ(シン・ヘソン)から部屋の借り手を探してほしいと鍵を預かり、彼女の不在の時を待つ。ある日、ハン·ソラの家に入ることに成功したク·ジョンテは、彼女がソファーで死んでいる姿を発見する。その後、彼がソラの家に出入りしたことを知る何者かが脅迫を始め、事件を担当する強力班刑事オ·ヨンジュ(イエル)の捜査網が彼に向かって迫ってくる。濡れ衣を晴らすべく自ら犯人を探さなければならないク·ジョンテは、ハン·ソラのSNSを通じて周辺の人物をあたりながら真犯人を探しに出るが…。

ピョン・ヨハンが、好奇心旺盛なク·ジョンテを、いたずらっぽい感じで演じていてキュート! 食べる姿が豪快なSNSインフルエンサーのハン·ソラを演じているシン・ヘソン、どこかで見た顔と思ったら、ドラマ「哲仁王后(チョルインワンフ) 俺がクイーン!?」で、現代では男性だったのに、タイムスリップしたら王宮で暮らす女性だったという役が絶妙だった女優さんでした。
部屋に何度か忍び込んでいたのですが、よりによって部屋を借りたいというカップルを案内して入ったら、ソファに血まみれで死んでいるハン・ソラが・・・。 それなのに、次に行って部屋は何事もなかったよう! いったいどうして? と戸惑うク·ジョンテが可愛いです。事件を追う女性刑事オ·ヨンジュ役のイエルは、落ち着いた大人の魅力。(咲)


2024年/韓国/103分/DCP5.1ch/シネマスコープ
配給:クロックワークス
公式サイト:https://klockworx.com/movies/following/
★2025年1月10日(金)シネマート新宿ほか公開
posted by sakiko at 20:46| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

サラリーマン金太郎【暁】編

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(C)本宮ひろ志/集英社 (C)2025映画「サラリーマン金太郎」製作委員会

監督:下山天
脚本:田中眞一
原作:「サラリーマン金太郎」 本宮ひろ志(集英社刊)
出演:鈴木伸之, 城田優, 石田ニコル, 文音, 影山優佳, 竹島由夏, 米倉れいあ, 山口大地, 斎藤さらら, 前田瑞貴, 川合智己, 佳久創, 橋本じゅん, 尾美としのり, 浅野温子, 榎木孝明

青森県大間町でマグロ漁師をしていた矢島金太郎(鈴木伸之)は、海で遭難していた老人、大和守之助(榎木孝明)を助けたことから、大和が会長を務めるヤマト建設に入社。生まれて初めてのサラリーマン生活に戸惑いながらも、持ち前の誠実さと常識やルールに囚われない大胆な行動力で仲間を増やし、大和会長や黒川専務(尾美としのり)の信頼を勝ち取っていく。しかしヤマト建設は、天下りしてきた元官僚の大島社長(橋本じゅん)に牛耳られようとしていた。金太郎は大島社長の子飼いの事業部長、鷹司(城田優)の計略にはまり、大和会長らを窮地に追い込んでしまう。金太郎らは形勢逆転のため、大島社長の不正の証拠を掴もうと奔走する・・・

人気マンガ家本宮ひろ志が22年にわたって描き続けた「サラリーマン金太郎」。
これまで高橋克典、永井大の主演でテレビドラマ化や映画化がされてきて、連載開始から30年を経て、三代目金太郎に鈴木伸之が抜擢されました。
原作も、これまでのドラマや映画も見たことがありませんでしたが、昭和から平成にかけて会社勤めをした私には、社内の勢力争いや、銀座のクラブ(よく連れていってもらいました!)など、なんとも懐かしいものでした。
榎木孝明さんが出演しているのも、見たい!と思った動機なのですが、「海難で救われる老人」か・・・と、ちょっとショックも。正体は建設会社の会長というお偉いさんだったので、それはぴったりの役と! 釣りの場に、金太郎を呼んで本音を語る場面は、『釣りバカ日誌』のようで、微笑ましかったです。なにより、会社の利益よりも、社員の幸せを第一に考えるという経営者なのが素敵です。
可憐なクラブのママの石田ニコルさんや、乞食ばばぁと呼ばれて疎まれ役の浅野温子さん、犯罪グループを率いるカッコいい女・李秀麗を演じる文音さんなど、女性たちが光ってました。 【暁】編は、とりあえず一件落着ですが、後編【魁】編が楽しみです。(咲)

2025年/日本/101分
企画・製作:TIME 制作:楽映舎
配給:ライツキューブ、ティ・ジョイ
https://salaryman-kintaro.com/
★2025年1月10日(金)より新宿バルト9他にて全国公開

★後編:『サラリーマン金太郎【魁】編』 ★2025年2月7日公開



posted by sakiko at 20:06| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ブラックバード、ブラックベリー、私は私。(原題:Shashvi shashvi maq'vali’)

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監督:エレネ・ナヴェリアニ
原作:タムタ・メラシュヴィリ
撮影:アグネス・パコズディ
出演:エカ・チャヴレイシュヴィリ(エテロ)、テミコ・チチナゼ(ムルマン)

エテロは48歳で独身。ジョージアの小さな村で育ち、母親が病気でなくなってからは父と兄の世話を続けてきた。今は一人になって雑貨店を営んでいる。ブラックベリーを摘んでいたエテロは、ブラックバード(クロツグミ)の声に気をとられて崖から足を滑らせてしまう。なんとか自力で這い上がると、村人たちが自分の遺体を囲んでいる臨死体験をする。店に戻った彼女は、いつものように商品の配達に来たムルマンを思わず見つめてしまう。性衝動にかられ、48歳にして初体験をした彼女はムルマンが自分に好意を持っていたことを知る。噂好きの村人たちに知られないように、ムルマンとの約束を心待ちにするようになった。

エテロを演じたエカ・チャヴレイシュヴィリは、主に舞台で活躍する女優さん。太い眉に鋭い目、どっしりとした存在感のある体型は、ゆるぎない意思と生活力を感じさせます。
ジョージアは戦前の日本のような家父長制が残っていて、独り身の女性には風あたりが強いようです。口さがない女たちは、エテロが結婚せずにいることや体型を揶揄しますが、独り身の自由を謳歌しているエテロは、取り合いません。失礼な物言いにはきっちりと反論もし、全く正論で溜飲が下がります。エテロは街に出かけて、好きなケーキを食べ、女性カップルの店で話に花を咲かせ、と自分一人の楽しみもちゃんと持っています。友人の娘とは年の離れた友達付き合いができます。既婚者のムルマンと親しくなって、乙女のようにときめきますが独り占めにしようなどとは思いません。
こんな「お一人様」人生もいいなぁと思っていると、想定外のラストが!これは吉なのか?(白)


2023年/ジョージア、スイス/カラー/ジョージア語/110分
配給:パンドラ
(C)- 2023 - ALVA FILM PRODUCTION SARL - TAKES FILM LLC
http://www.pan-dora.co.jp/blackbird/

★2025年1月3日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、アップリンク吉祥寺にて公開中
posted by shiraishi at 15:03| Comment(0) | ジョージア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする