2024年12月07日

お坊さまと鉄砲   英題:The Monk and the Gun

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(C)2023 Dangphu Dingphu: A 3 Pigs Production & Journey to the East Films Ltd. All rights reservedZ

監督・脚本:パオ・チョニン・ドルジ(『ブータン 山の教室』
出演:タンディン・ワンチュック、ケルサン・チョジェ、タンディン・ソナム
製作:ステファニー・ライ(頼梵耘)
撮影:ジグメ・テンジン
出演:タンディン・ワンチュック、ケルサン・チョジェ、タンディン・ソナム

ブータンで行われる初めての選挙。村の徳の高いお坊さまは言いました。
「次の満月までに銃を二丁用意せよ」
若いお坊さまは銃を探しに山を下りるのですが・・・。

2006年、ブータン。国民に愛されている国王陛下が退位を表明され、民主主義体制へと移行することになる。総選挙で新しいリーダーを選ばなければならないが、ブータンでは選挙を実施したことがない。政府は模擬選挙を実施して、国民の理解を深めてもらうことにする。
周囲を山に囲まれたウラ村。山で瞑想修行中の高僧は模擬選挙の報を聞き、若い僧侶のタシに「次の満月までに銃を二丁手に入れてほしい」と指示する。戸惑うタシに、高僧は「物事を正さねばならん」と話す。
時を同じくして、アメリカから銃コレクターのロンがブータンにやって来る。ウラ村に住むペンジョーのところに昔の貴重な銃があると知ってのことだった・・・

世界の多くの国では、国民が命をかけて闘って、民主化を勝ち取ってきたのに、ブータンでは国王陛下が自主的に国民に民主主義を与えました。ところが、それまで平穏に暮らしてきたのに、選挙のせいで争いが起こるという本末転倒。
時同じくして、2006年には、テレビとインターネットがようやく導入されました。国民の幸福度ランキングで上位を占め、「世界一幸せな国」と知られていたブータンですが、ネット等で入ってくる情報のせいで他国と比較するようになり、幸福度ランキングが下落したそうです。
それでも、本作には、ブータンの人たちがお金よりも心を大事にするエピソードが描かれていて、ほっとさせられます。
さて、高僧は、銃二丁をなぜ求めたのでしょうか・・・
模擬選挙の結果にも、国王陛下を愛するブータンの人たちの思いを知って、微笑ましく思いました。 雑多な外の世界の情報に惑わされずにいてほしいと願いますが、もう遅い?(咲)


バンクーバー国際映画祭 観客賞
ローマ国際映画祭 審査員特別賞
ムンバイ映画祭 観客賞
トロムソ国際映画祭 平和映画賞
フリブール国際映画祭 観客賞
イルミネート映画祭ディレクターズチョイス 他

2023年/ブータン・フランス・アメリカ・台湾/ゾンカ語、英語/112分/カラー/2.39:1/5.1ch
字幕翻訳:川喜多綾子、 字幕監修:西田文信
配給:ザジフィルムズ、マクザム
後援:在東京ブータン王国名誉総領事館
公式サイト:https://www.maxam.jp/obousama/
★2024年12月13日よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、 シネ・リーブル池袋ほか全国順次公開
posted by sakiko at 21:38| Comment(0) | ブータン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

不思議の国のシドニ   原題:Sidonie au Japon 英題:Sidonie in Japan

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(C)2023 10:15! PRODUCTIONS / LUPA FILM / BOX PRODUCTIONS / FILM IN EVOLUTION / FOURIER FILMS / MIKINO / LES FILMS DU CAMELIA

監督:エリーズ・ジラール
出演:イザベル・ユペール 伊原剛志 アウグスト・ディール

パリで暮らすフランスの女性作家シドニ。日本で、デビュー小説「影」の翻訳本が再販されることになり、出版社から招聘される。見知らぬ国へ行くことに不安を覚えながら、大阪に降り立つ。空港で編集者の溝口が迎える。フランスに3年留学し、フランス文学を学んだ溝口は、寡黙ながらフランス語で話してくれる。
ホテルの部屋に入り、窓を開けようとするが開かない。フロントに電話すると、「事故防止で開かない」と言われる。取材を受けて部屋に戻るとなぜか窓が開いている。眠れなくて、ホテルのバーに下りるとき、エレベーターに亡き夫の姿をみる。京都、奈良へと、読者とのサイン会をしながら、日本の桜の季節を愛でるシドニ。夫も、移動先の宿に現れる・・・

取材を受ける中で、シドニが小説を書くきっかけになったのが、交通事故で両親と弟を一機に亡くしたことだったとわかります。そして、夫も車の事故で亡くし、同乗していた自分が無傷だったことに傷心のシドニ。日本に来ても、心ここにあらずのシドニが、溝口と話すことで、溝口もまた、自分が生きていることの奇跡を抱えていることを知って、次第に生きる希望を取り戻していきます。身近な人を突然失ったことから立ち直るのは容易なことではありません。でも、残された者は、生きていくことが、亡くなった人への恩だとつくづく思います。
東京国際映画祭の特別招待作品として上映され、来日したエリーズ・ジラール監督は、長編デビュー作『ベルヴィル・トーキョー』のプロモーションで来日した時に、日本に恋したことが、この作品を生んだと語っていました。
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東京国際映画祭上映後Q&A報告
桜が満開の美しい季節の京都、しっとりと落ち着いた奈良、モダンアートで脚光を浴びている直島・・・ そして、ホテルや旅館、料亭などにも、日本の奥ゆかしい魅力が溢れています。谷崎潤一郎夫妻のお墓に刻まれた「寂」の文字もまた、日本の美。フランスの女性監督が捉えた日本の情緒に浸ることができました。(咲)


2023年/フランス・ドイツ・スイス・日本/96分/カラー/ビスタ/5.1ch
配給:ギャガ
公式サイト:https://gaga.ne.jp/sidonie/
★2024年12月13日(金)よりシネスイッチ銀座ほか全国にて順次公開
posted by sakiko at 20:38| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする