2024年11月24日

カオルの葬式

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監督:湯浅典子
脚本:西貴人、湯浅典子
撮影:ビクター・カタラ
音楽:ジョアン・ピラ
出演:関幸治(横谷)、一木香乃(鷲津カオル)、新津ちせ(鷲津薫)、黒沢あすか(向島貴子)、原田大二郎(住職)

カオルという名の脚本家が死んだ。
彼女が残した遺言には、10年前に離婚した元夫・横谷がカオルの葬式の喪主になるようにと、記されていた。
横谷が東京からカオルの故郷・岡山に到着すると、そこに居たのはカオルが遺した9才の一人娘・薫。カオルの通夜、葬儀に集まる様々な人々。脚本家であった彼女のマネージャー、ドラマプロデューサーや先輩や親友や、葬儀を取り仕切る婦人会、地主一家など腹にイチモツありそうな故郷の人々――

一人の女性の葬儀に集まった人々の姿を通して「死ぬことは、生きること」を問うています。岡山県北・苫田郡鏡野町にある宝樹寺を葬儀のメイン舞台に、ほかの撮影地は、蒜山高原(真庭市)、美作河井駅(津山市)、笠岡諸島・瀬戸内海(笠岡市)、岡山市、茨城県水戸市、笠間市、そして東京。
この作品では、離婚した夫が喪主になります。これまで行き来がなかったのに疑問に思いながら、元妻の故郷へ向かいます。監督の知人のエピソードを元にしたそうですが、そういうとき断わらずに引き受けるものなんでしょうか。その地方によって葬儀のやり方が少しずつ違うのも興味深いです。
カオルと様々な形で関わった人たちは、もう答えのもらえない問いをしてみたり、胸の中にあった想いがこぼれて出たりします。葬儀にありがちなちょっとした騒動もはさみ、弔問客はまた日常に戻って、自分たちも終わりが来るまで生き続けます。
葬儀は人生最後の一大イベント、もう不在の主役について生前より活発に語られます。「生前葬」を行う方がいるのは、その顛末を見てみたいのと、きちんと別れを言いたいからでしょうか。ちょっとわかる気がします。後に残る人に任せるしかありませんが、自分事として葬儀を考えてしまいました。(白)


☆第19回大阪アジアン映画祭にてJAPAN CUTS Awardを受賞

2023年/日本・スペイン・シンガポール共同制作/カラー/100分
配給・宣伝:ムービー・アクト・プロジェクト
(C)PKFP PARTNERS
https://yuasan1203.wixsite.com/pkfppartners
★2024年11月29日(金)ほか全国ロードショー中

posted by shiraishi at 20:13| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

Back to Black エイミーのすべて(原題:Back to Black)

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監督:サム・テイラー=ジョンソン
脚本:マット・グリーンハルシュ
製作:アリソン・オーウェン、デブラ・ヘイワード、ニッキー・ケンティッシュ・バーンズ
出演:マリサ・アベラ、ジャック・オコンネル(ブレイク)、エディ・マーサン(父ミッチ)、ジュリエット・コーワン(母ジャニス)、サム・ブキャナン、レスリー・マンヴィル(祖母シンシア)

10代のエイミーは、元ジャズ歌手だった祖母シンシアの血をひいたのか、幼いころから歌の才能を発揮していた。両親は別居中だったが、エイミーへの愛情は変わらず、歌手になりたいエイミーを応援している。
念願のデビューアルバム「フランク」は好評を得たものの、全米進出はまだ遠かった。パブで出会ったブレイクと恋に落ちるが、彼にはすでに恋人がいた。甘い日々は続かず、ブレイクは元カノのところへ戻ってしまう。エイミーは別れの辛さから薬物と飲酒を繰り返し、自分の失恋をアルバム「バック・トゥ・ブラック」で歌い上げ、世界的な大ヒットとなった。これを機にブレイクとよりを戻しひそかに結婚するが、スーパースターとなったエイミーは朝から晩までパパラッチにつきまとわれる。ブレイクとの関係も悪化し、摂食障害や依存症のためにリハビリ施設に入所する。その体験を歌ったアルバムもヒット、グラミー賞主要4部門を含む6部門にノミネートされるが・・・。

自分の喜びや悲しみを歌にして独特のハスキーな歌声で多くの人の心に届けたエイミー。名声を得ても、恋人を失ったエイミーは、薬物やアルコールに依存していきます。一途なために傷は深く、周囲の心配も助言も受け付けられません。
本作は俳優が演じていますが、過酷な日々を送ったエイミーの半生はドキュメンタリー『AMY エイミー』(2015)の映像にも残されています。才能がありながら若くして亡くなったミュージシャンはほかに何人もいます。エイミーは何年も前から「自分も彼らと同じ27歳で死ぬのではないか」と恐れていたそうです。有名人で、自分と同じシンガーだから余計記憶に刻まれたのでしょうが何の根拠もないようです。エイミーが常に抱いている不安がそう思わせたのでしょう。
私生活まで追い回すパパラッチの仕業もひどいですが、知りたがるほうもひどい。もう少しリハビリを続けていれば、酒におぼれなければと他人が思ってもせんないことです。ただただ、もったいない痛ましいとしか言いようがありません。(白)


2024 年/イギリス・フランス・アメリカ/英語/123 分/ビスタサイズ//PG12
配給:パルコ ユニバーサル映画/ 宣伝:若壮房
Ⓒ2024 Focus Features, LLC. All Rights Reserved.
https://btb-movie.com/
★2024年11月22日(金)より、TOHO シネマズ シャンテ、渋谷シネクイントほか全国ロードショー中

posted by shiraishi at 12:30| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

JAWAN ジャワーン  原題: JAWAN.

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(C)2023 All rights reserved with Red Chillies Entertainments Pvt Lt

監督:アトリー
出演:シャー・ルク・カーン(『PATHAAN/パターン』)、ナヤンターラ(『ダルバール 復讐人』)、ディーピカー・パードゥコーン(『PATHAAN/パターン』)、ヴィジャイ・セードゥパティ(『マスター 先生が来る!』)

国境のチベット系の人たちが暮らす村。川に流れてきた瀕死の男(シャー・ルク・カーン)を助けた母と少年。手厚く介護し、数か月後、目覚めるが男は記憶を失っていた。「あなたが誰か、僕が大人になったら必ず調べる」と約束する少年。そんな折、村を隣国の兵士が襲う。

30年後。ムンバイ。朝6時半。メトロに次々に乗り込む人たち。お腹の大きな女性もいる。
突然、顔を包帯でぐるぐる巻きにした謎の男(シャー・ルク・カーン)と、6人の女性たちが乗客を人質に取り、ハイジャックする。メトロに乗っていた武器商人カリの娘に、父親に4千憶ルピーの身代金を出すようにと迫る。入金したその金は、すぐに全国の借金を抱えた農民たち70万人に送金された。
ナルマダ隊長が率いるテロ対策部隊が駅で犯人逮捕をしようと待ち構えるが、謎の男と6人の女性たちは混乱に乗じて逃げてしまう。彼らが向かったのは、女子刑務所だった。
包帯だらけの男は実はこの刑務所の所長アーザード。そして、6人の女性たちは受刑者。
農民を救った彼らは悪なのか正義なのか? そして、真の目的は?

しばらく作品に恵まれなかったシャー・ルク・カーンですが、『PATHAAN パターン』で久しぶりにカッコいい姿を見せてくれました。本作は、さらにパワーアップ! しかも、二役です。シャールクファンには、もう、たまりません。
冒頭に出てくる記憶を失った男は、実は、メトロジャックした包帯だらけの男の父親でした。父親は息子が生まれたことも知らず、息子もまた、父親のことを知りませんでした。その出生の謎が次第に明かされていく面白さ。
一緒にメトロジャックした6人の女性受刑者たちにも、それぞれの物語があって、もう、詰込み過ぎ!
アーザードは養母から、さかんにお見合いを勧められるのですが、ある時、見合いの場にやってきたのは、本人ではなく、その娘。「父親がほしくて見定めにきたの」と言う可愛い少女に、アーザードも結婚を決めます。なんと、母親は、テロ対策部隊のナルマダ隊長!
え? それって、どうなるの? と、わくわくさせられます。
物語には、借金苦で自殺する農民が多いというインドの実態や、1984年のボーパール化学工場事故の悲劇の二の舞にしないようにと、化学工場の弊害に立ち向かう姿も盛り込んでいます。
とにもかくにも、シャー・ルク・カーンの魅力をたっぷり味わえます。女性たちも、それぞれが素敵です。
なお、タイトルの「JAWAN」は、「若い」という意味かなと思っていたら、ここでは「兵士」の意味のようです。(咲)


2023年/インド/ヒンディー語/171分/シネスコ/5.1ch
字幕翻訳:藤井美佳
配給:ツイン
公式サイト:https://jawan-movie.com/
★2024年11月29日(金)新宿ピカデリーほか全国ロードショー


posted by sakiko at 05:08| Comment(0) | インド | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする