2024年11月22日

盗月者 トウゲツシャ(原題:盜月者 The Moon Thieves)

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監督:ユエン・キムワイ
脚本:ロナルド・チャン、ライアイン・リン
音楽:波多野裕介
出演:アンソン・ロー(ヤウ)、イーダン・ルイ(マー)、ルイス・チョン(タイツァー)、マイケル・ニン(マリオ)、ギョン・トゥ(ロイ)、田邊和也(加藤)

時計修理工のマーは、アンティーク時計の修理の能力を生かして密かにレプリカを作って流している。老舗時計店の二代目ロイに偽造販売がばれてしまった。ロイは裏では盗難時計の売買をしており、マーに画家ピカソが遺した3つの時計を手に入れろと脅す。銀座の高級時計店に保管されている本物をレプリカと入れ替えるため、チームが作られた。リーダーのタイツァー、爆薬の専門家マリオ、鍵師のヤウ、そしてマー。4人はオークションが開催される東京へと飛び下調べをする。マーとヤウは銀座の時計店に顧客として入り込むことに成功した。
マーはピカソの時計が保管された金庫の中に、最初に月に到達した時計・ムーンウォッチを発見して息を飲む。値段のつけられない、アメリカの国宝とも言える時計がここにあった!やくざと繋がる日本の大富豪・加藤も乗り出しムーンウォッチを追う。

ボーイズグループMIRRORの3人アンソン・ロー、イーダン・ルイ、ギョン・トゥが中心メンバーです。アンティークの時計に魅せられているマー、母親の手術費用がほしいヤウ、裏社会で生き延びるため、躊躇なく古い手下を始末するロイ。いつのまにこんなに若手が育っていたの? 香港の芸能界の事情にすっかり疎くなっていました。
フレッシュな3人のほかに『星くずの片隅で』のヒロインを気遣う清掃業者役だったルイス・チョン、林雪を思い出すマイケル・ニンが、裏社会に関わることになってしまったマーとヤウを支えます。母親思いのヤウがたくましくなり、メガネ男子のマーは腕っぷしはさっぱりですが、ラストで見せるちゃっかり加減で笑わせます。タイトルにある「月」はマーと加藤が執心する「ムーンウォッチ」のこと。
銀座でも撮影が行われ、日本の俳優も多数出演しています。ロケに遭遇したかったなぁ。
エンドロールに流れる羅文の「心裡有個謎 」が懐かしいです。音楽を担った波多野裕介氏のアレンジで作中のシーンでも流れます。元歌は日本の歌手ザ・ピーナッツの「情熱の花」(1959)で、さらにこの原曲が「エリーゼのために」(1810/ベートーベン)なので、懐かしいのも道理。(白)


東京国際映画祭の合間の11月3日に恵比寿ガーデンシネマでやっている香港映画祭『バイタル・サイン』を観に行った時、チケットを取ってくれたKさんが、この『盗月者トウゲツシャ』の配給をしているサロンジャパンのMさんを紹介してくれて、「この映画の舞台挨拶が11月23日にあるので来ませんか?」と誘われたのですが、あいにく東京フィルメックスと重なっていて行けないので、白さんにお願いしました。映画だけ観させていただいたのですが、観てびっくり。今年の大阪アジアン映画祭で観ていました。タイトルも内容もすっかり忘れていたのです。なんてこったです。忘れっぽくなりました。
そして『盗月者トウゲツシャ』ですが、観ているうちに内容を思い出しました。「ボーイズグループMIRROR」のメンバーのうち3人が出ているとのことですが、大阪ではそのことは全然知りませんでした。今回、そのように書いてあったので、大阪アジアンのカタログを見たけど、こちらには「ボーイズグループMIRROR」のことは一言も触れていませんでした。今回、最近の香港の音楽シーンのことを、少し知りました。香港四天王が活躍した1990年代後半~2010年くらいまでは香港の音楽シーンについてもけっこう詳しかったのですが、最近はCDも買わなくなりました。このところ香港映画がけっこう日本で公開されていますが、映画界の新しい流れの中で出てきた新人たちの名前が覚えられません。
ちなみにこの映画、大阪で観て覚えていたのは、爆薬の専門家マリオ役の白只(マイケル・ニン)。顔が印象的でした。最後のどんでん返しが、いかにも香港の映画という感じ。騙し、騙されの構図は、ジョニー・トー作品を彷彿とさせます。大阪アジアン映画祭では、袁劍偉(ユエン・キムワイ)監督と日本の富豪役の田邊和也さんがQ&Aに登場。詳細は下記をごらんください(暁)。

大阪アジアン映画祭での『盗月者』トーク

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ユエン・キムワイ監督

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田邊和也さん


☆MIRRORが大人気と本作をきっかけに知りました。MVがたくさんありました。
公式youtubeチャンネルはこちら

2024年/香港/カラー/107分
配給:サロンジャパン、ポレポレ東中野
(C)Emperor Film Production Company Limited MakerVille Company Limited All Rights Reserved
https://pole2.work/tougetsusha/
★2024年11月22日(金)より池袋HUMAXシネマズほか全国ロードショー

こちらに23日の舞台挨拶記事がちょっとだけ
☆舞台挨拶ほぼ書き起こしはこちら


posted by shiraishi at 13:41| Comment(0) | 香港 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師

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監督:上田慎一郎
原作:ハン・ジョンフン「Squad38 (38 사기동대)」
(邦題「元カレは天才詐欺師 〜38 師機動隊〜」)
脚本:上田慎一郎、岩下悠子
出演:内野聖陽(熊沢二郎)、岡田将生(氷室マコト)、川栄李奈(望月さくら)、森川葵(白石美来)、後藤剛範(村井竜也)、上川周作(丸健太郎)、鈴木聖奈(五十嵐薫)、真矢ミキ(五十嵐ルリ子)、皆川猿時(八木晋平)、神野三鈴(酒井恵美子)、吹越満(安西元義)、小澤征悦(橘大和)

熊沢二郎は生真面目で小心者、おまけに恐妻家である。税務署では波風立てないように穏便に勤めて来た。部下の望月さくらは、大きな脱税を暴こうとやる気満々で突進していく。そんなときに刑務所を出たばかりの天才詐欺師、氷室にまんまと大金をだまし取られてしまう。家族にも打ち明けられず、親友の警察官・八木の協力を得て氷室をつきとめると「脱税しているヤツから徴収してやるから許して」と持ち掛けられる。
犯罪に与することはできないと断りかける熊沢だったが、脱税王の橘には個人的な遺恨があった。
氷室が集めたくせ者ぞろいの詐欺チーム「アングリースクワッド」は熊沢を一員に加え、あの手この手でしかけていく。橘との騙しあいはどちらに軍配があがるのか?

韓国で大ヒットしたテレビドラマのリメイク。『カメラを止めるな!』の上田監督が直後から映画化のオファーを受けて取り組んでいた企画。『相棒』や『科捜研の女』などの脚本家・岩下悠子さんと練りに練った脚本は原作を短~くして2時間におさめ、無駄なく面白さ減らさず加えています。
内野さんは「家族思いの優しい税務署員」が勇気を振り絞って巨悪に向かう覚悟をして変わっていく様を、岡田さんは笑顔を絶やさず頭をフル回転させる「ワケあり詐欺師」を演じてさわやかです。あっさり氷室の詐欺にひっかかってしまう人の良い熊沢ですが、これは誰しも騙されそう。しかも人を傷つけません。脱税王相手の丁々発止はスリル満点で、手品のタネをあかすように見せてくれるラストは笑いながらも感心してしまいます。韓国ドラマでは税務署員はマ・ドンソク、天才詐欺師ソ・イングク、これも見たいですね。(白)


2024年/日本/カラー/120分
配給:NAKACHIKA PICTURES、JR西日本コミュニケーションズ
(C)2024アングリースクワッド製作委員会
https://angrysquad.jp/
★2024年11月22日(金)ほか全国ロードショー
posted by shiraishi at 13:19| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

雨の中の慾情

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(C)2024 「雨の中の慾情」製作委員会

監督・脚本:片山慎三(『さがす』)
原作:つげ義春「雨の中の慾情」
出演:成田凌
中村映里子 森田剛
足立智充 中西柚貴 松浦祐也 梁秩誠 李沐薰 伊島空
李杏 / 竹中直人

土砂降りのバス停。雨宿りする女に、「金物をつけていると雷に打たれる」と注意して、一枚、また一枚と服を脱ぎ、下着姿で泥まみれになって絡み合う・・・
奇妙な夢から覚めた売れない漫画家の義男は、夢を漫画に起こそうと机に向かう。そこへ大家の尾弥次から、引っ越しの手伝いに駆り出される。小説家志望の伊守と3人で向かうと、その家の寝室には、一糸まとわぬ姿で寝ている美しい未亡人の福子がいた。思わず見とれてスケッチを始める義男。目覚めた福子は、「触るんじゃなく描くのですね」と声をかける。
町の喫茶ランボウで働き始めた福子のもとには、老いも若きも男たちが通い詰める。義男もべた惚れ状態で、伊守にからかわれるが、ある日、伊守から「福子と付き合っている」と打ち明けられる。やがて伊守と福子が義男の家に転がり込んできて、3人の奇妙な共同生活が始まる・・・

漫画家・つげ義春の短編「雨の中の慾情」をもとに、片山慎三監督が作り上げた独創性あふれる数奇なラブストーリー。
義男の住む貧しい北町から、南北検閲所を抜けて豊かな南町に行くという場面があって、いつの時代の、どこの国なのかも明かされないのですが、とても不思議なシチュエーションでした。ほぼ全編を台湾で撮影していて、南町にある白亜の豪邸は、実際にある建物なのだそうです。
戦時中の野戦病院のような場面もあって、どこまでが現実なのか、夢なのか、くらくら。
竹中直人さんの、怪しげな大家ぶりが可笑しかったです。
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東京国際映画祭のコンペティション部門に選ばれ、2024年10月30日10時からのジャパンプレミアの上映後、舞台挨拶とQ&Aが行われました。
成田凌さんび「朝早くから観る映画じゃないですね」「台湾での撮影が大変というより、片山監督の現場だから大変。でも楽しんだから大丈夫」という言葉が印象に残りました。(咲)



2024年製作/132分/R15+/日本・台湾合作
製作:映画『雨の中の慾情』製作委員会
配給:カルチュア・パブリッシャーズ
公式サイト:https://www.culture-pub.jp/amenonakanoyokujo/
★2024年11月29日(金) TOHOシネマズ日比谷ほかにて公開




posted by sakiko at 11:38| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする