2024年11月07日

ネネ -エトワールに憧れて-  原題:Neneh Superstar

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(C)2023 GAUMONT - FRANCE 2 CINEMA - GAUMONT ANIMATION

監督・脚本:ラムジ・ベン・スリマン
出演:オウミ・ブルーニ・ギャレル、マイウェン、アイサ・マイガ、スティーヴ・ティアンチュー、セドリック・カーン、レオノール・ポラック

パリ郊外の団地で暮らす12歳の黒人の女の子ネネ。
ラップにあわせて踊りながら駅に向かったと思ったら、ホームでは片足をすっとあげてバレエのポーズ。父に付き添ってもらってパリ・オペラ座バレエ学校の入学試験に向かう。白人ばかりの受験生の中で、最終試験に残り、憧れのパリ・オペラ座の最高位“エトワール”だった校長マリアンヌの前で見事な踊りをみせる。バレエ団の総監督が最高点合格と言う中、マリアンヌは「バレエは白人のもの」と懸念を示す。それでもネネは入学を許され、厳しい練習の日々が始まる。公開授業で白雪姫を上演することになるが、「上手いけど白雪姫は黒人じゃない」とネネは同級生たちからいじめられる。そんなある日、ネネは憧れのマリアンヌの隠された出自を知る・・・

2024年3月 横浜・フランス映画祭に正式出品され、その折に、ラムジ・ベン・スリマンという監督のお名前と、黒人の少女がパリオペラ座のバレエ学校に挑戦するという話に興味を持ち、監督にインタビューのお時間もいただいていたのですが、体調を崩され来日できず、取材は叶いませんでした。監督はフランス生まれですが、お名前からして、ルーツは北アフリカとお見受けし、そのことがこの映画にも反映されていると思った次第です。 
黒人の少女が、白人世界と思われていたバレエに挑戦する物語がメインと思っていたら、かつてエトワールに上り詰め、校長をしているマリアンヌにも誰にも言えない秘密があって、この映画の核になる話でした。
ネネが通う郊外の学校で、同級生たちに「団地を出れば、黒人やアラブ系が、どれほどひどい扱いをされるかわかる」という場面がありました。 世界は、多様な人たちが共存するどころか、人種や宗教、貧富の差などによって、ますます分断しているのを感じます。 
この映画が多様な人たちの共存に繋がるヒントになってほしいと願います。(咲)


2024年3月 横浜・フランス映画祭正式出品

2022年/フランス/97分
字幕翻訳:星加久実
配給:イオンエンターテイメント
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ/ユニフランス
公式サイト:https://neneh-cinema.com/
★2024年11月8日(金)より全国公開

posted by sakiko at 22:05| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

動物界  原題:LE RÈGNE ANIMAL 英題:THE ANIMAL KINGDOM

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(C)2023 NORD-OUEST FILMS - STUDIOCANAL - FRANCE 2 CINEMA - ARTEMIS PRODUCTIONS

監督・脚本:トマ・カイエ
出演:ロマン・デュリス、ポール・キルシェ、アデル・エグザルコプロス

人間が様々な動物に変異する奇病が蔓延している近未来。“新生物”となった者たちは、凶暴性ゆえに施設で隔離されている。フランソワの妻ラナもその一人だ。ある日、移送中に事故が起こり、輸送車から新生物たちが野に放たれたことを知る。フランソワは16歳の息子エミールとともにラナの行方を必死に探す。やがて、エミールの身体に変化が出始める…。人間と新生物の分断が激化するなかで、親子が下した最後の決断とは——?

奇病に侵され何に変異するかは人さまざま。徐々に変異するので、まだ人の心を忘れてない場合もあるのです。なんとも不思議な世界。何に変異するのか自分で選べればいいけれど、そういうわけでもないのがつらいところ。ロマン・デュリス演じるフランソワが家族を思う気持ちがとても優しくて、おぞましい世界を描いた映画なのに、少しほっとさせられました。さて、フランソワたちが、どんな姿のラナと出会えたのかは、ぜひ劇場で!(咲)

2023年/フランス・ベルギー/フランス語/128分/カラー/スコープサイズ/DCP
字幕翻訳:東郷佑衣
配給:キノフィルムズ 提供:木下グループ
公式サイト:https://animal-kingdom.jp
★2024年11月8日(金)より新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷他にて公開
posted by sakiko at 22:04| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

イル・ポスティーノ 4Kデジタル・リマスター版  原題:Il postino

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(C)R.T.I. S.p.A.–Rome, Italy, Licensed by Variety Distribution S.r.l–Rome, Italy, All Rights reserved.

監督:マイケル・ラドフォード
音楽:ルイス・エンリケス・バカロフ
原作:アントニオ・スカルメタ
出演:マッシモ・トロイージ、フィリップ・ノワレ、マリア・グラツィア・クチノッタ

イタリア、ナポリの沖合いに浮かぶ小さな緑溢れる島。貧しい漁師の父親と二人暮らしのマリオ(マッシモ・トロイージ)。漁師が好きじゃないマリオに、父は何か仕事を見つけろという。そんなある日、「郵便配達人募集。要自転車」の貼紙を見つけて応募し採用される。チリから亡命してきて島のはずれに滞在することになった高名な詩人パブロ・ネルーダ(フィリップ・ノワレ)に手紙を届ける専任の配達人の仕事だ。サインが欲しくて、彼の詩集を購入し、読んでみる。毎日、郵便物を届けて話すうちに、次第に詩人と心を通わせるようになる。自分も詩人になれたらと話すと、海に向かって歩いていくといいといわれる。そんなある日、マリオは港のバーで働くベアトリーチェ(マリア・グラツィア・クチノッタ)に一目惚れする。恋をしたと話すと、詩人は「ベアトリーチェに会いに行こう!」と、彼の恋を応援してくれる。パブロを立会人に二人の結婚式が行われている最中、チリ当局の逮捕命令が取り消されたとの手紙が届き、パブロは国に帰ることになる・・・

パブロ・ネルーダ
チリを代表する国民的な詩人であり、外交官、政治家。2024年はネルーダ生誕120周年にあたる。
ネルーダは、16歳でパブロ・ネルーダというペンネームで詩を書き始め、24年官能的な愛の詩集「二十の愛の詩とひとつの絶望の歌」を出版。
20代から外交官としてアジア各地を遍歴し、34年スペインに赴任、スペイン内戦を目の当たりにし共産主義に接近。45年にチリ共産党に入党するが、48年に議員資格をはく奪され、国外逃亡を余儀なくされる。このころのイタリア亡命時代を題材に『イル・ポスティーノ』が作られている。50年には詩集「大いなる歌」を刊行。
52年、逮捕令が解けてチリに帰国。70年には共産党から大統領候補に推されるが辞退し、チリは世界で初めて民主的な選挙によって社会主義政権が誕生。駐仏大使中の71年にノーベル文学賞を受賞するが、病気のため大使を辞任し72年にチリに帰国。
しかし翌73年9月11日、ピノチェト将軍率いる国軍クーデターが起こり、兵士らに家を破壊される。その12日後、危篤状態に陥り死亡。
死因は長い間病死とされてきたが、軍部による毒殺だったという疑惑があり、2013 年チリ司法当局は死因確認のため、遺体を掘り起こし調査したが、遺体から毒物は検出されなかったと発表した。(公式サイトより抜粋)

製作から30年、ロングラン大ヒットした名作が、ネルーダ生誕120周年記念で、4Kデジタル・リマスター版が公開されることになりました。
日本初公開は、1996年5月18日。当時観て、味わい深い作品に感動したものですが、その時には、詩人の故国チリの政情については疎くて、詩人が遠く離れたイタリアの島で暮らさなければならなかった事情のことなど何も考えなかったような気がします。
『チリの闘い』『光のノスタルジア』『真珠のボタン』などで、チリの辿った悲しい歴史を知った今、『イル・ポスティーノ』は違った意味で胸に迫りました。詩人の影響を受けたマリオは、イタリア共産党の集会に赴きます。それがまた「運命」を生むのです。
マリオを演じたマッシモ・トロイージが心臓病のためクランクアップ12時間後に41歳という若さでこの世を去ったことも、この度の公開を機に知りました。映画の余韻がいつまでも心に沁みます。(咲)


第68回アカデミー賞® 作曲賞(ドラマ)受賞!

1994年/イタリア・フランス/109分
配給:セテラ・インターナショナル
公式サイト:https://www.ilpostino4k.jp/
★2024年11月8日(金)より角川シネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMA3週間限定公開




posted by sakiko at 21:19| Comment(0) | イタリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ベルナデット 最強のファーストレディ(原題:Bernadette)

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監督:レア・ドムナック
脚本:レア・ドムナック、クレマンス・ダルジャン
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ(ベルナデット・シラク)、ドゥニ・ポダリデス(ベルナール・ニケ)、ミシェル・ヴュイエルモーズ(ジャック・シラク)、サラ・ジロドー (クロード・シラク)

ベルナデット・シラクは、夫ジャック・シラクを大統領にするため、常に影で働いてきた。ようやく大統領府であるエリゼ宮に到着し、自分の働きに見合う場所を得られると思っていたが、夫やその側近、そして夫の広報アシスタントを務める娘からも「時代遅れ」「メディアに向いていない」と突き放されてしまう。だが、このままでは終われない。参謀の”ミッケー”ことベルナール・ニケと共に、「メディアの最重要人物になる」という、華麗にして唯一無二の”復讐計画”をスタートさせる!

政界の内側をとくと観られる作品です。ジャック・シラク氏は1977年から1995年までパリ市長、1995年から2007年まで第22代フランス大統領。ミッテラン大統領に次いで長い在任期間です。大統領になる前には首相や重要ポストの大臣もつとめているので、妻としての苦労や気遣いも並大抵ではなかったでしょう。自分も県会議員ですし。
実在の政治家たちのエピソードのどこまでが真実か不明ですが、コメディ仕立てになっていることでとても入り込みやすく楽しめます。
若いとき細身で可憐だったカトリーヌ・ドヌーヴは二回りほど大きくなって、政界トップの夫人だけに収まらない、パワフルな女性にふさわしい貫禄がありました。娘や側近に仲間外れにされても腐らず、良き相棒を得て自分の道を切り開いてゆきます。頑張れ~!と応援したくなりました。ベルナデッドが着こなす衣装も見どころです。
フィガロ誌の記者のロングインタビューを元にした「私はただあるがままに」(1995年)がシラク夫妻の2005年の来日記念に翻訳出版されました。ご本人の生い立ちから詳しく書かれていますので、映画鑑賞後にどうぞ。(白)


実在の人物をもとに描いた映画では、映画の最後に本物の姿が紹介されることが多いのですが、本作では、冒頭で本物のベルナデットの写真や動画が映し出されます。
1933年生まれ。ベルナデットとジャック・シラクのパリ政治学院学生証が続けて出てきて、同級生だったことがわかります。そして、「貴族令嬢と教師の孫息子結婚」の大きな写真入り新聞記事。女性初のコレーズ県議となったことも紹介され、女性が夫の添え物のように扱われた時代に、単にパリ市長夫人、大統領夫人に収まらなかったことも冒頭の数分でわかります。
それでも本作は「あくまでフィクション」の断り書き。
そうして始まるカトリーヌ・ドヌーヴ演じるベルナデットの物語。
本作が初長編監督デビューとなるレア・ドムナックが、女性らしい細やかな目線で、ベルナデットを公私の両面から捉えています。ユーモアのセンスも抜群。なんとか選挙で勝ちたい政治家たちが水面下で繰り広げる丁丁発止も見事に描いています。(咲)



2023年/フランス/カラー/93分
字幕:横井和子
配給:ファインフィルムズ
公式サイト:https://bernadette-movie.com/
© 2023 Karé Productions - France 3 Cinéma - Marvelous Productions - Umedia
★2024年11月8日(金)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー

2024 年 セザール賞 新人作品賞ノミネート
2024 年 リュミエール賞 新人作品賞・主演女優賞ノミネート
2023 年 シネマニア・フィルム・フェスティバル出品
2023 年 紅海国際映画祭(RSFF) INTERNATIONAL SPECTACULAR 部門出品

posted by shiraishi at 19:47| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ロボット・ドリームズ(原題:Robot Dreams)

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監督・脚本:パブロ・ベルヘル
原作:サラ・バロン

1980年代のニューヨーク。大都会のアパートで一人暮らしのドックは、食事も一人、テレビを見るのも一人の孤独な毎日。窓の向こうも、終える家族だんらんがちょっとうらやましい。テレビで友達ロボットのコマーシャルを見つけてさっそく申し込んでみた。後日、大きな箱が届いてドックはワクワク。説明書にしたがって部品を組み立てると、パチリと目が開き、ロボットが誕生した。その日から二人暮らし、なんでも一緒に楽しめる!
ある日ビーチに出かけて遊んでいるうちに、ロボットが海水のためにさびて動けなくなった。ドックは修理しようと奔走するが、シーズンオフに入ったビーチは閉鎖されてしまった。

パブロ・ベルヘル監督(代表作『ブランカニエベズ』)の初のアニメーション。昨年の第36回東京国際映画祭で上映されています。セリフはなくどこの国でも楽しめる作品です。アメリカのグラフィックノベルが原作で、擬人化された動物たちの暮らしを描いています。友達ロボットはプラモデルのように簡単に作れて高性能。もしも将来実現できたなら爆売れでしょう。
ロボットがビーチで砂に埋もれてしまうので心配になりますが、自分で起き上がれないだけで生きて(?)います。子どもと一緒に観ても大丈夫。離れている間にもいろいろありますが、信頼しあう二人の友情は変わりません。観終わって胸がほっこりします。
ドックになんだか懐かしさを感じましたが、大人向けの漫画やテレビ番組「お笑い漫画道場」で人気を博した富永一朗さんのキャラと体型が似ているんです。親近感があるのはそのせいでした。60年~90年代に活躍した人なので若い方にはなじみがないですね。昭和は遠くなりにけり。(白)


2023年/スペイン・フランス/カラー/102分
配給:クロックワークス
(C)2023 Arcadia Motion Pictures S.L., Lokiz Films A.I.E., Noodles Production SARL, Les Films du Worso SARL
https://klockworx-v.com/robotdreams/
★2024年11月8日(金)より全国ロードショー


posted by shiraishi at 00:50| Comment(0) | スペイン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

本心

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監督・脚本:石井裕也
原作:平野啓一郎
出演:池松壮亮(石川朔也)、三吉彩花(三好彩花)、水上恒司(岸谷)、仲野太賀(イフィー)、田中泯(若松)、綾野剛(中尾)、妻夫木聡(野崎)、田中裕子(石川秋子)

朔也の母 秋子が「大事な話があるの」と言ったまま、その話を聞かないうちに急逝してしまった。「自由死」を選んでいた、と知った朔也は母の本心が知りたいと、VF(ヴァーチャル・フィギュア)を開発している野崎を訪ねる。「母」を作るにはデータが多ければ多いほど、本物に近づくという。母の親友だった三好彩花を訪ねて話を聞くと、朔也の知らない母がいるようだった。完成したあかつきには、VFゴーグルを装着するだけで「母」に会うことができる。

現代よりさらにAIが発達し、現実との境目があいまいになっている近未来の話。
母役の田中裕子さんは、生きている自分と「AIで生成された自分」の不思議な二役を演じたことになります。どんな感覚だったのか、伺ってみたいですね。池松壮亮さんはボロボロとよく泣く朔也役ですが、泣かずにいられない設定です。母を救いたかったのに、意識不明になり気がついたときには母は亡くなったあと。AIだろうが母を再生してもう一度話したい。逡巡したはずですが、母の死を受け入れられないところから抜け出して進みたかったのでしょう。後から登場する三好彩花が、救いになるのか混迷を増してしまうのか?
リアルとヴァーチャルの間をさまよう朔也は、ごく近い未来の私たちかもしれません。(白)


2024年/日本/カラー/122分
配給:ハピネットファントム・スタジオ
(C)2024 映画「本心」製作委員会
https://happinet-phantom.com/honshin/

★2024年11月8日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー


posted by shiraishi at 00:44| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする