2024年09月29日

シビル・ウォー アメリカ最後の日  原題:CIVIL WAR

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(C)2023 Miller Avenue Rights LLC; IPR.VC Fund II KY. All Rights Reserved.


監督/脚本:アレックス・ガーランド
出演:キルステン・ダンスト、ワグネル・モウラ、スティーヴン・マッキンリー・ヘンダーソン、ケイリー・スピーニ―

「お前は、どの種類のアメリカ人だ?」
連邦政府から19もの州が離脱したアメリカ。テキサスとカリフォルニアの同盟からなる“西部勢力”と政府軍の間で内戦が勃発し、各地で激しい武力衝突が繰り広げられていた。「国民の皆さん、我々は歴史的勝利に近づいている——」。就任 “3期目”に突入した権威主義的な大統領はテレビ演説で力強く訴えるが、ワシントンD.C.の陥落は目前に迫っていた。ニューヨークに滞在していた4人のジャーナリストは、14ヶ月一度も取材を受けていないという大統領に単独インタビューを行うため、ホワイトハウスへと向かう。だが戦場と化した旅路を行く中で、内戦の恐怖と狂気に呑み込まれていくー

次々と話題作を放っているA24が史上最高の製作費を投じた作品。
アメリカの連邦政府から、西部の19州が離脱し内戦が勃発。南北戦争ならぬ東西戦争。何が問題で、19州が離脱したかについては詳しく語られないのですが、大統領が14か月もの間、取材を受けないという事態は、確かに異常。
今の大統領選で、民主党と共和党が、まったく相いれないことを見せつけていて、ちょっとしたことで紛争が起こりかねないと思うと、本作で描かれる物語は、まさにリアル。実際、世界では戦争が絶えません。その現実を突きつけてはくれるけれど、どうすれば戦争を終わらせることができるのかの答えは、残念ながら得られませんでした。というか、もう世界は破滅に向かっているということでしょうか・・・(咲)

2024年/アメリカ・イギリス/109分/PG12
配給:ハピネットファントム・スタジオ
公式サイト:https://happinet-phantom.com/a24/civilwar/
★2024年10月4日 (金) TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開
posted by sakiko at 20:42| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ビートルジュース ビートルジュース(原題:Beetlejuice Beetlejuice)

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監督:ティム・バートン
脚本:アルフレッド・ガフ マイルズ・ミラー
撮影:ハリス・ザンバーラウコス
出演:マイケル・キートン(ビートルジュース)、ウィノナ・ライダー(リディア)、モニカ・ベルッチ(ドロレス)、キャサリン・オハラ(デリア)、ジェナ・オルテガ(アストリッド)。ジャスティン・セロー(ローリー)、ウィレム・デフォー(ウルフ)、アーサー・コンティ(ジェレミー)、シュリンカー(ボブ)

ビートルジュースはお調子者の「人間怖がらせ屋(バイオ・エクソシスト)」。600歳になった今も死後の世界から人間世界へ移住することを夢見ている。そのためには、人間と結婚しなくてはならない。彼の姿が見えていた人間のリディアとなんとか結婚したい。しかし当時ハイティーンだったリディアはすっかり大人、高校生の娘アストリッドもいた。都合の良いことにアストリッドが死後の世界に間違って飛ばされてしまい、リディアは一縷の望みをかけてビートルジュースの名を呼ぶ。娘を助け出す代わりに、まんまと結婚を承諾させるビートルジュース。しかし、彼の元妻ドロレスが封印から復活、リディアと再婚したいローリーも加わって、死後の世界と現世は大騒動が巻き起こる。

前作『ビートルジュース』は1988年。その35年後を描いた作品。ビートルジュース!と3回呼ぶと、死後の世界から登場する主演のマイケル・キートン。彼がいまだ当時のテンションのまま、ビートルジュースを演じているのに驚きます。メイクをしているので、年取った感ゼロ。ウィノナ・ライダーも体型維持して若々しいです。続編の話が浮かんでは消えまた浮かび、と、これまでに紆余曲折あったようですが、35年もたって同じキャストで続編ができるとは珍しいし、めでたい!と言ってよいのではないでしょうか?今回初参加のモニカ・ベルッチの登場シーンは、なかなかショッキング。「イタリアの至宝」と呼ばれた美女がこんな姿になるとは…。
そして、ここにもいましたウィレム・デフォー、どんな役にもハマります。『ナイトメア・ビフォー・クリスマス』を思い出させますねぇ。ハロウィンにぴったりの“バートン印のダークファンタジー”をお楽しみください。(白)


2024年/アメリカ/カラー/105分
配給:ワーナー・ブラザース映画
(C)2024 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved
https://wwws.warnerbros.co.jp/beetlejuice/
★2024年9月27日(金)ほか全国ロードショー
posted by shiraishi at 13:36| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

犯罪都市 PUNISHMENT(原題:범죄도시4)

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監督:ホ・ミョンヘン 『バッドランド・ハンターズ』
出演:マ・ドンソク(マ・ソクト)、キム・ムヨル(ペク・チャンギ)、イ・ドンフィ(チャン・ドンチョル)、パク・ジファン(チャン・イス)

新種合成麻薬事件から3年後。ヤクザも恐れる怪物刑事マ・ソクト(マ・ドンソク)とソウル広域捜査隊は、デリバリーアプリを悪用した麻薬密売事件を捜査していた。捜査を進めるうち、手配中のアプリ開発者が謎の死を遂げた事件の背後に、フィリピンに拠点を置く国際IT犯罪組織の存在を突き止める。組織のリーダーは、拉致、監禁、暴行、殺人をいとわず、韓国の違法オンラインカジノ市場を掌握した、特殊部隊出身の“元傭兵”ペク・チャンギ(キム・ムヨル)。一方、組織オーナーで“ITの天才”CEOチャン・ドンチョル(イ・ドンフィ)は、韓国でさらに大きな犯罪計画を練っていた。マ刑事は、史上最大規模のIT犯罪計画を殲滅するため、オンラインカジノ事業の経験を持つチャン・イス(パク・ジファン)に捜査協力を依頼し、広域捜査隊、サイバー捜査隊と新たなチームを結成し捜査を始めるのだが……。

マブリーことマ・ドンソクは『エターナルズ』『新感染 ファイナル・エクスプレス』と出演のたびにファンが増え、この『犯罪都市』シリーズでは自らが企画、脚本にも協力。マブリー色が十二分に発揮されたかと思います。
マブリーが恐れられる刑事として活躍するシリーズ第4弾。今年2月23日に第3弾『犯罪都市 NO WAY OUT』が公開されています(今になって紹介し忘れたのに気づきました。確かに試写を拝見したのにすみません)。
今回の最大の敵は元傭兵ペク・チャンギ役のキム・ムヨル。マブリーがヤクザ役だった『悪人伝』で、刑事役だったのが立場逆転、それも過度に残虐な殺傷でクビになったという冷酷な役です。悪人役でもどこか愛嬌がにじみ出るマブリーと違って、あくまでクール。ニコリともしません。あまたいる助演の俳優さんの中でひときわ目をひくのが、グッチブランドで身を固めたチャン・イスを演じたパク・ジファンです。おだてに乗りやすく、最初は疑いながらもついついマ・ソクト刑事に巻き込まれていきます。お笑い担当でほっとさせてくれます。
ホ・ミョンヘン監督はこれまでのシリーズ3作でアクション監督を担っていたのですが、今回は監督に!全体に目を配りつつ、もちろんアクションに力を入れたはずです。マ・ドンソクとの息もぴったり。観るたびに身体が大きくなっている感じがするマブリー、ワンパンチで吹っ飛ばされる相手には申し訳ないですが、なにかと閉塞感のあるこのごろ、溜飲さがること請け合います。(白)


2024年/韓国/カラー/シネマスコープ/5.1ch/原題:범죄도시4/英題:The Roundup: Punishment/109分/PG-12/字幕翻訳:根本理恵
(C) 2024 ABO Entertainment Co.,Ltd. & BIGPUNCH PICTURES & HONG FILM & B.A.ENTERTAINMENT CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED.
配給:ハピネットファントム・スタジオ
公式サイト: https://happinet-phantom.com/hanzaitoshi4
X:@hanzaitoshi4 #犯罪都市 #マ・ドンソク #マブリー

posted by shiraishi at 10:37| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

私は憎まない  原題:I Shall Not Hate

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監督:タル・バルダ
脚本:タル・バルダ、ジェフ・クライン、サスキア・デ・ボア
プロデューサー:ポール・カデュー、マリーズ・ルイヤー、イザベル・グリッポン、タル・バルダ
製作総指揮:マヤ・カデュー=ルイヤー、マルタン・カデュー=ルイヤー、マリーズ・ルイヤー
映画撮影:ハンナ・アブ・アサド 
編集: ジェフ・クライン
音楽:ロベール・マルセル=ルパージュ 
サウンドデザイン:マルタン・カデュー=ルイヤー
登場人物:イゼルディン・アブラエーシュ、クリスティアン・アマンプール、シュロミ・エルダー 他

医療でイスラエルとパレスチナの分断に橋を架ける

3人の愛娘を殺されてもなお共存の可能性を信じ、ヒューマニティに基づき行動するガザ地区出身の医師、アブラエーシュ博士に迫るドキュメンタリー

ガザ地区の貧困地域、ジャバリア難民キャンプ出身の医師で、パレスチナ人としてイスラエルの病院で働く初の医師となったイゼルディン・アブラエーシュ博士は産婦人科でイスラエル人とパレスチナ人両方の赤ちゃんの誕生に携わってきた。「ユダヤ教徒、イスラム教徒、キリスト教徒の赤ちゃんの違いは? みんな同じく生まれたての赤ちゃんだ」と、共存が可能であることを自らの医療で体現してきた。彼は、ガザからイスラエルの病院に通いながら、病院で命が平等なように、外の世界でも同じく人々は平等であるべきだと、分断に医療で橋を架けようとする。しかし、両者の共存を誰よりも望んできた彼の赦しと和解の精神が、究極の試練にさらされる。

「暴力に暴力で対処しても問題は解決しない」

2009年1月、アブラエーシュ博士の自宅がイスラエル軍の戦車の砲撃を受け、3人の娘と姪が殺害されてしまうという悲劇が彼を襲う。砲撃直後、博士の涙の叫びの肉声はイスラエルのテレビ局が生放送され、イスラエル中に衝撃と共に伝わった。翌日、テレビカメラの前で、博士は突然憎しみではなく、共存について語りだす。その後、正義を求めてイスラエル政府を訴え、娘の死の責任を追求するも、決して復讐心や憎しみを持たない彼の赦しと和解の精神は、世界中の人々に感動を与え、数え切れないほどの賞を受賞し、“中東のガンジー、マンデラ、キング牧師"とも呼ばれる存在となる。自伝『それでも、私は憎まない』は世界的ベストセラーとなった。しかし、2023年10月7日のハマスのイスラエルへの攻撃、それ以降のガザへの攻撃を経て、彼の信念は再び試されることになる。

今は、カナダのトロントで暮らすアブラエーシュ医師。娘に息子が生まれ、パレスチナのルーツは忘れさせないと語ります。両親は、南パレスチナのフージ村の名高い一族。すぐに戻るつもりで村を離れた後、村は破壊されてしまいました。家、土地、財産を奪われた両親の苦しみをアブラエーシュ医師は受け継ぎました。ジャバリア難民キャンプで生まれ、悲惨な生活から抜けるには教育しかないと悟ります。11歳の時に入院し、いつか医者になると決意し、意思を貫いたのです。検問所を行き来しイスラエル側の病院に通った彼は、ガザに住み続け、あげく、イスラエルの砲撃で多くの家族を失いました。謝罪を求めて訴訟を起こしますが、イスラエルは攻撃したのはハマスの兵器が置かれていたからなどとし、決して謝罪しません。昨年10月7日に始めたイスラエルのガザ攻撃も、ハマスのテロ行為への報復と正当化しています。ホロコーストの恨みを向ける矛先はパレスチナの人々ではないはず。そも、1948年のイスラエル建国時に、パレスチナの人たちを追い出したことに端を発するのに・・と部外者の私も憤るのに、当事者のアブラエーシュ医師は「私は憎まない」と冷静でいらっしゃることに頭がさがります。(咲)


10月7日のせいで今の状況があるのではない!

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「私は憎まない」の公開(10月4日アップリンク吉祥寺)にあわせ、カナダからガザ地区の難民キャンプ出身のアブラエーシュ博士が来日。
10月4日(金)日本記者クラブ 10階ホールにて、記者会見が行われました。

昨年の10月7日、イスラム組織ハマスの急襲を機に、イスラエルの容赦ないガザ攻撃が始まって、ちょうど1年。
アブラエーシュ博士は、「昨年10月7日、なぜあのようなことが起こったのか。10月7日のせいで今の状況があるのではない。1948年イスラエル建国からの継続した問題。10月7日は、我々にとって人生の中の一日でしかない」と強調されました。
「私は医師として、患者の病歴を聞きます。今の事態がなぜあるのかを知るためです。それは戦争にもいえます。戦争は避けることができるもの。原因を解明しないと解決しません」


2024年/カナダ・フランス/92分/ドキュメンタリー
制作: Filmoption 配給:ユナイテッドピープル
公式サイト:http://www.unitedpeople.jp/ishall
★2024年10月4日(金)アップリンク吉祥寺 他にて全国順次ロードショー



posted by sakiko at 04:52| Comment(0) | パレスチナ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

忘れない、パレスチナの子どもたちを  原題:ELEVEN DAYS IN MAY

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(C)Revolution Films 2022

監督:ムハンマド・サウワーフ&マイケル・ウィンターボトム
撮影監督:サラ・アルハウ
音楽: マックス・リヒター(『戦場でワルツを』『サラの鍵』『少女は自転車にのって』『めぐり逢わせのお弁当』)
ナレーション:ゾーイ・ウェイツ(英語版)、坂本美雨(日本語版)

2021年5月の11日間。少なくとも67人のガザの子供たちがイスラエルの空爆により亡くなりました。
当時、ニュースを見たイギリス人映画監督のマイケル・ウィンターボトムは、パレスチナ人映画監督のムハンマド・サウワーフと協力し、若い犠牲者を追悼する映画を作ろうと決意しました。そしてその攻撃からわずか1か月後、撮影を開始しました。
サウワーフは約100時間分の映像をウィンターボトムに送り、ウィンターボトムはロンドンの編集室でマックス・リヒターの音楽、ゾーイ・ウェイツのナレーションを加え映画を完成させました。

冒頭、ラマダン月の最終金曜日にエルサレムの神殿の丘にある岩のドームとアル・アクサー・モスクに集まる数万人の人々をスマホで撮ったらしい映像。圧巻です。
続いて、モスクに落とされる爆弾。集団礼拝に集った人々を狙うイスラエル・・・
2021年5月の空爆はこうして始まったことを知りました。

亡くなった子どもたちの家族たちが悲しみをこらえながら語る子どもたちのこと・・・
薬学を目指していた少女
真実を伝えるためジャーナリストになりたかった少女
レアルマドリードが好きだった少年
それぞれに夢がありました。
ロケット弾が落ちてきて、兄弟や友だちが目の前で亡くなる姿を目撃した少年。
亡くなった子が夢に出てくるのを待つ母。
「安全なところに行きたい」という少女。
一人一人の言葉が胸にささります。
そして、昨年10月7日に、ハマスのテロ行為に対する報復という口実で始まったイスラエルの攻撃は激しさを増すばかりで停戦の兆しも見えません。壁で包囲されて逃げ場もないガザの人たち。犠牲者は増えるばかりです。その半数近くは、子どもたち。イスラエルは、パレスチナの人たちを根絶やしにしたいのだとしか思えません。
どうしたら、世界はイスラエル政府の暴挙を止めることができるのでしょウ・・・ (咲)


2022年/イギリス/英語・アラビア語/84分/DCP/カラー
日本語字幕翻訳:M.Nakamura 幕監修:師岡カリーマ・エルサムニー
配給・宣伝:アップリンク
公式サイト:https://www.uplink.co.jp/palestine/
★2024年10月4日(金)アップリンク吉祥寺・アップリンク京都ほか全国順次公開
☆映画料金のうち100円をガザの子どもたちに寄付されます。



posted by sakiko at 03:31| Comment(0) | パレスチナ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする