2024年08月03日

コンセント/同意(原題:Le consentement)

doui.jpg

監督・脚本:バネッサ・フィロ
脚本協力・原作:ヴァネッサ・スプリンゴラ
(『同意』内山奈緒美:訳/中央公論新社刊)
撮影:ギヨーム・シフマン
出演:キム・イジュラン(ヴァネッサ)、ジャン=ポール・ルーブ(ガブリエル・マツネフ)、レティシア・カスタ、エロディ・ブシェーズ

文学を愛する13 歳の少女ヴァネッサは、50歳の有名作家ガブリエル・マツネフと出会った。マツネフは自分が「小児性愛嗜好」であることを公表しており、その赤裸々な体験を文学作品として発表し高い評価を得ている著名人だった。ヴァネッサはマツネフの巧みな言葉や行動に支配されるが、それは愛されているからと思い込む。ヴァネッサが14 歳になるのを待ったマツネフは「同意」のうえ、性的関係を結ぶ。

新人のキム・イジュランがヴァネッサを演じています。老獪な小説家の手のひらの上で転がされるのを痛々しい思いで観つつ、だんだん腹がたってきます。周りの大人たちが彼の性癖を知りながら何もしないのは何なんだ?!やっていることは未成年者への性虐待ではないですか。なぜ逮捕されないのか不思議。マツネフが有名人だからか?その母親も娘をしっかり守ろうとはしません。
13か14の少女がたちうちできる相手ではなく、すっかり洗脳されているヴァネッサが目を覚ますのはすっと後です。ヴァネッサが成長するとマツネフの興味は薄れ、次の少女へと向かいます。
ヴァネッサ・スプリンゴラが、自分の体験を書いて発表するのに30数年かかっていますが、それだけ受けた傷は深かったのでしょう。演じたキムは20歳を過ぎていますが、それでも撮影中はダメージが大きかったようです。マツネフ役ジャン=ポール・ルーブはレクター博士をイメージしたとか。腹が立つのは俳優さんが上手かったということですね。
2020年1月にヴァネッサ・スプリンゴラ著「同意」が出版され、フランス文学界に激震が走ります。「寵児」ともてはやされ、芸術文化勲章を得ていたマツネフが文学で反撃されたのです。出版社がマツネフの書籍の販売を中止し、彼は行方をくらましました。
この映画はフランスの若い世代にヒットしたそうです。
日本でも「特別な世界だからと見ないふりでいたこと」が明るみに出ました。どんな世界だろうと、人を傷つけるのは”なし!”です。抗えない子どもならなおのこと。大人は子どもを、そして自分も守りましょう。(白)


2023年/フランス・ベルギー合作/カラー/118分/R15+
配給:クロックワークス
© 2023 MOANA FILMS – WINDY PRODUCTION - PANACHE PRODUCTIONS - LA COMPAGNIE CINEMATOGRAPHIQUE - FRANCE 2 CINEMA - LES FILMS DU MONSIEUR
https://klockworx.com/movies/consent/
★2024年8月2日(金)全国ロードショー
posted by shiraishi at 23:59| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

うんこと死体の復権

2024年8月3日(土)より ポレポレ東中野ほかにてロードショー ほか全国順次公開 
劇場情報 
[unkotoshitai]Mainvisual_RGB_R_R.jpg
(C)2024「うんこと死体の復権」製作委員会

探検界のレジェンド・関野吉晴 初の監督作品
うんこと死体が地球を救う?

学生時代、アマゾン奥地の狩猟採集民マチゲンガ族を訪ねたのを皮切りに探検生活を始め、探検活動のために医師の免許まで取ったりという具合に、自然とヒトとの関係について考え続けてきた関野吉晴さん。
長年にわたる探検「グレートジャーニー」のTV放映で、有名になりましたが、その後もインドネシアから手作りの舟で沖縄まで航海したりと、今も探検を続けている。その「自然とヒトとの関係」から、この作品が作られた。

監督:関野吉晴 
ロデューサー:前田亜紀/大島新
撮影:松井孝行/船木光/前田亜紀 
編集:斉藤淳
出演:伊沢正名、高槻成紀、舘野鴻、宮崎学

アフリカで誕生した人類が南米最南端まで至った5万キロの足跡を動力を使わずに逆ルートで辿る「グレートジャーニー」を40代で始め、足掛け10年で踏破した関野吉晴(75)。アマゾン奥地で自然と共に生きる狩猟採集民族・マチゲンガ族と半世紀以上の親交を続ける関野さんは、自身を含め現代人が自然とどう共存していくべきかを常に考えていた。
「生きものと自然の循環」からヒトだけが外れ、さらに一方的な自然環境の破壊を繰り返していることに対し、「この地球で私たちが生き続けていくためにはどうしたらいいか」を考える場として、2015年から「地球永住計画」というプロジェクトを始めた。
そこで3人の賢人に出会った。自ら「糞土師」と名乗り、野糞をすることに頑なにこだわり、半世紀に渡る野糞人生を送っている写真家の伊沢正名さん。うんこから生き物と自然のリンクを考察する生態学者の高槻成紀さん。そして、死体喰いの生き物たちを執拗に観察する絵本作家の舘野鴻さん。3人の活動を通して、現代生活において不潔なものとされるうんこ、無きモノにされがちな死体を見つめると、無数の生き物たちが命を紡ぎ、循環の輪を繋いでいた。彼らの織りなす世界には、世の中の常識を覆す「持続可能な未来」のヒントが隠されていた…。 これは「いのちの循環をたどる旅」。

【関野吉晴監督からのメッセージ】 HPより
うんことか死体を食べるムシたちがいる。うんこ虫や死出虫(しでむし)、蝿、蛆虫(うじむし)など、嫌われ者、鼻つまみ者のチャンピオンだ。
多くの人は目を背けるが、この映画の主人公3人は、絶滅危惧種や頭がいいかわいい生き物にはとんと興味がなく、嫌われ者、鼻つまみ者の虫たちに金メダルを与えようと獅子奮迅の努力をしている。
この映画では、不潔だ、気持ち悪いと嫌われ、疎まれている存在に信じ難いほどに関心を抱き、執拗に観察し、絵を描き、論文を書く。或いは 50年間野糞をし続けるおじさんたちを追いかけていきます。
是非この映画を観て下さい。きっと、あなたの常識を覆します。
sekino_9_RGB_R_R.jpg
関野吉晴監督 (C)2024「うんこと死体の復権」製作委員会


プロデューサーは、関野監督を敬愛する『なぜ君は総理大臣になれないのか』『国葬の日』『NO 選挙, NO LIFE』などを制作しているネツゲンの前田亜紀、大島新。地球を救う? 鼻つまみ者たちをめぐる循環の旅は果たしてどこにたどり着くのか。

この映画を観て、小学生の頃読んだ「ファーブル昆虫記」を思いだした。この本の中に「糞ころがし」と呼ばれる昆虫が出てきて、初めてこれを読んだときにはびっくりした。ファーブル昆虫記を調べてみたら、この「糞ころがし」の中に「センチコガネ」というのもいたらしい。まさにこの映画にも出ていた。60年近く前に見た本だけど、その頃も今も、自然の中では「SDGs」=「持続可能な社会を実現するための仕組み」が続いている。そのことに目を向けた映画を作った関野吉晴さん。
ちなみに、「糞ころがし」はエジプトのピラミッドなどに描かれた絵の中にも出てくる。古代エジプトでは「スカラベ」と言われ、古代エジプト人はスカラベを「聖なる甲虫」とあがめていたらしい。
そもそも小学校の頃からアマゾン流域に興味があり、中高生時代には「アマゾンに移住したい」と思っていた私は、関野さんが1970年代初めからアマゾンに通い、その写真集を出版したり、TV番組で放映されたりしたのを、いつも関心を持って見ていたし、写真展にはいつも通っていた。写真展で関野さんと話した時の印象は、朴訥とした話し方をする方で、決して雄弁ではない話し方に誠実さを感じた。
そうそう玉川上水が出て来たけど、小平市で生まれ育った私にとっては、玉川上水横の道は、小学校、中学校とも通学の時に通っていたし、とても懐かしかった。たぶんあのあたりは中学校の頃、クラブ活動の時に、練習の前に走っていたところだと思う。
私にとっては、この枠で宮崎学さんが出てきてびっくり。山岳写真をやっていた私にとっては、宮崎学さんと言えば、自分でカメラ改造し、山の中の獣道にカメラを設置し、それまで誰も撮っていなかったような動物の写真を撮ってきた人。山の中での撮影は、たくさんの動物たちの亡骸も見てきただろうから、そういう写真も撮っていたのでしょうね。
関野さんの冒険や、やってきたことは、毎回、とても興味深い。そして、この作品は、いつも「自然とともに暮らす人々の生活」を追い続けてきた探検家である関野さんの思いが詰まった作品。タイトルで避けてしまう人もいるかと思うけど(私はそうだった)、面白いのでぜひ観てほしい(暁)。


公式サイト
(2024年|日本|105分)
製作:ネツゲン/クリエイト21 配給:きろくびと

『うんこと死体の復権』ポレポレ東中野公開記念トークイベント
▶︎8/3(土)初日
12:00の回上映後: 関野吉晴監督、前田亜紀・大島新プロデューサー
14:30の回上映後: 伊沢正名さん(糞土師/本作出演)、関野吉晴監督

▶︎8/4(日)
12:00の回上映後:高槻成紀さん(保全生態学者/本作出演)、関野吉晴監督
14:30の回上映後:舘野鴻さん(絵本作家/本作出演)、関野吉晴監督

▶︎8/5(月)
17:50の回上映後:池田香代子さん(翻訳家)、大島新プロデューサー

▶︎8/6(火)
17:50の回上映後:湯澤規子さん(法政大学人間環境学部教授)、前田亜紀プロデューサー

▶︎8/7(水)
17:50の回上映後:鈴木おさむさん(元放送作家)、関野吉晴監督、大島新プロデューサー

▶︎8/8(木)
17:50の回上映後: 新井英樹さん(漫画家)、関野吉晴監督

▶︎8/9(金)
17:50の回上映後:プチ鹿島さん(時事芸人)、大島新プロデューサー
posted by akemi at 21:12| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする