2024年08月29日

セッションマン:ニッキー・ホプキンズ ローリング・ストーンズに愛された男  原題:The Session Man

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(C)THE SESSION MAN LIMITED 2024

監督・脚本・製作:マイケル・トゥーリン
製作総指揮:フランク・トルチア
共同プロデューサー:マイク・シャーマン、ジョン・ウッド
撮影監督:ルーク・パーマー
編集:アシュリー・スコット
ナレーター:ボブ・ハリス
出演:ミック・ジャガー、キース・リチャーズ、ビル・ワイマン(ザ・ローリング・ストーンズ)、ピーター・フランプトン、ピート・タウンゼント(声/ザ・フー)、デイヴ・デイヴィス(ザ・キンクス)、ニルス・ロフグレン、ベンモント・テンチ(トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ)、チャック・リーヴェル、テリー・リード、グレアム・パーカー、P.P.アーノルド、ハリー・シアラー、モイラ・ホプキンズ
(アーカイブ映像)ニッキー・ホプキンズ、ジョン・レノン、オノ・ヨーコ、アート・ガーファンクル

ローリング・ストーンズ、ビートルズ、ジェフ・ベックに愛された男

伝説のセッション・ピアニスト、ニッキー・ホプキンズの軌跡を、時代とともに振り返る音楽ドキュメンタリー。
1960年初頭、16歳のときにロンドンの名門・王立音楽アカデミーを自主退学し、サヴェージズのピアニストとしてキャリアをスタート。
ザ・ローリング・ストーンズ、ザ・フー、ザ・キンクス、ジェフ・ベックをはじめとする60年代~70年代に数多くのアーティストのレコーディングにセッション・ピアニストとして参加。ザ・ビートルズのメンバー全員のソロアルバムにも参加した稀有な存在である。
素晴らしいピアノリフと音楽センスで多くのミュージャンを魅了し、50歳の若さで逝去するまで250枚を超えるアルバムと膨大な数のシングル・リリースに貢献した。
この若き天才ピアニストの活躍は病との闘いでもあった。1963年、病院に緊急搬送されたニッキーはクローン病と診断される。闘病生活を送りながらも、30年以上にわたるロック人生において数々のミュージャンと共演し愛された“最高のセッション・マン”の物語を、彼を知る仲間たちが語る。

ピアノ界の生きる伝説
どんなジャンルも弾ける
目立ちすぎないけれど存在感がある
曲が一変する・・・


ニッキー・ホプキンズを知るミュージシャンたちが語る言葉の数々から、いかに素晴らしいセッション・マンだったかが伺えます。自身がバンドを組んで活動していたら、どんな曲を残していたでしょう・・・。クローン病でいつ倒れるかわからない身だった故、セッション・マンに徹した彼の胸の内は? ニッキー・ホプキンズ自身のインタビュー映像も出てきて、温厚な方だったことを知ることができました。
「ショパンの生まれ変わり」との言葉が出てきて、王立音楽アカデミーでしっかりクラシックの基礎を身に着けたニッキーらしいと思いました。ゴスペルもブルースも、あらゆるジャンルが弾けた天才的ピアニスト。 60年代~70年代に、洋楽をよく聴いていたので、きっと彼のピアノも耳にしたことがあるのだと思いました。(咲)


2023年/イギリス/英語/87分/カラー/16:9/5.1ch
字幕監修:ピーター・バラカン、朝日順子
配給:NEGA
公式サイト:https://sessionman.jp/
★2024年9月6日(金)より池袋シネマ・ロサ、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開




posted by sakiko at 21:48| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

威風堂々~奨学金って言い方やめてもらっていいですか~

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監督・脚本:なるせゆうせい
撮影監督・編集:小鷹裕
出演:池田朱那(唯野空)、吉田凜音(九頭竜レイ)、簡秀吉(蛭間拓人)、田淵累生(水江聡太)、小野匠(唯野ユウ)、光徳瞬(唯野鉄男)、遠山景織子(唯野仁美)

唯野空(ただのそら)は高3の受験生。特にやりたいこともなく、将来の保険に大学進学を選んだ。奨学金をあてにしていたが、成績が良いほど有利な条件で空には国立大なみに難しい。名前は奨学金だが、内実は卒業後何年もかかって返済する学生ローン。空は大きな借金を背負った。親と諍いを起こして彼氏と同棲生活を始めてみたが、さらに出費がかさんだ。同じゼミのレイは裏バイトで稼いでいると聞き、行き詰った空は恐る恐るやってみるが・・・。

遅まきながら奨学金の存在を知った空が問い合わせる場面がありました。両親もお兄さんもいるのに、もっと早く調べなくちゃ!と思わずつっこみ。特に困ったこともなく育ってきたせいか、なにごとにも甘い&ゆるい空です。彼氏の拓人も気はいいものの、能天気で空に甘えている節があります。異色の存在のレイは、空よりずいぶんと大人でものごとを割り切って考え、どんな背景があるのか知りたくなりました。演じている吉田凜音さんは歌手でバンドのボーカルのほか、ソロでも活躍中。レイの紹介で挑戦してみたバイトは、たぶんみなさまのご想像通り。その顛末と、タイトルに「威風堂々」とあるわけは劇場でご覧ください。今の世相を取り入れ、楽ではない大学生活を描いています。
大学の入学から卒業までいったいいくらかかるのか、ちょっと検索してみるといくつもの銀行が試算してくれています。貯蓄や教育ローンなど、おすすめできて業務につながりますからね。検索語句に「子供の大学費用がない」という切実なのもありました。出生率が下がり続けているのは、子どもがほしくても育て上げるまでにほんっとにお金がかかるのも大きいからでしょう。特に教育費は天井知らずです。もっと公的補助が増えるといいですね。(白)


2024年/日本/カラー/86分
配給:トリプルアップ
(C)映画「威風堂々」製作委員会
https://www.ifudodo.com/
https://twitter.com/ifudodo_movie
https://www.facebook.com/profile.php?id=6155811355376

★2024年8月30日(金)ヒューマントラストシネマ渋谷、池袋HUMAXシネマズほか全国順次公開


posted by shiraishi at 20:27| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

香港、裏切られた約束(原題:因為愛所以革命/英語題:Love in the Time of Revolution)

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監督・撮影:トウィンクル・ンアン(顔志昇)

1997年7月1日、香港はイギリスから中国に返還された。その後50年間(2047年まで)は「一国二制度」のもと、香港市民の自由は保護されるはずだった。しかし、じわじわと中国の姿勢は変わり、2019年6月「逃亡犯条例」改正をきっかけに、民主化を求める香港市民の抗議活動が始まる。
2019年天安門事件の追悼集会の日、トウィンクル・ンアン監督は初めてビデオカメラを手にする。以来、香港の自由と民主主義を守ろうと行動する最前線の若者たち、デモ隊を応援する人々、それぞれの物語を挟みながら貴重な記録を残した。ンアン監督はイギリスに亡命し、映像を編集して作品は完成した。

返還前から香港へ何度も出かけて街歩きや映画、コンサートを楽しんできました。中国返還の日はテレビのニュース映像を見つめ、以来どんな風に変わるのかと期待と不安がありました。その後のニュースやドキュメンタリーで観る香港の現状に胸が痛みました。
この映像は催涙弾を浴びるほど近距離から撮影されています。初めはドキュメンタリーを作るつもりでカメラを構えたのではありませんが、撮り続けるうちに残して知らせなくてはと思われた監督の覚悟が伝わってきます。自分のふるさとが変容し、住みづらくなっていくのは辛い。デモに参加した自分の子供のような年代の若者が警官たちに暴力をふるわれ、「あんたたちも香港人でしょ」と大人が猛烈に抗議しています。声をあげ、身体をはった香港の人々の姿に、沖縄の基地前で機動隊に排除されていく人たちが重なります。
観ていて泣けてきました。日本のデモや抗議運動に向ける取り締まりが厳しくなってきた感じがするこのごろ、決して他人事ではありません。世界中でさまざまな形での闘いがあります。渦中にある人たちのことばで共通しているのは、「関心を持って。忘れないで」ということ。

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ンアン監督

「アップリンク吉祥寺」での劇場試写後にロンドンのンアン監督が画面に登場しました。京都のアップリンクとも繋がって、観客とのQ&Aが行われました。通訳さんの声が聞き取れなくて、書き起こしができていません。本編の冒頭にも監督の挨拶映像がありますので、遅刻しないようにかけつけてください。ンアン監督の最初の挨拶は「この映画に関心を持って見に来てくださってありがとうございます」。(白)


香港の民主化運動で、道路での座り込みが起こったのは2014年9月~12月、この3ヶ月に及ぶ道路占拠行動は、「香港特別区行政長官選挙に親中派のみが立候補できる」という「選挙制度」の通達が2014年8月に中国共産党から出され、これに反発する人たちが行動を起こしたのです。これは単に選挙の問題だけでなく、香港人としてのアイデンティティを取り戻す闘いでもありました。この時、香港の人たちがこんなに長期間道路を占拠する行動に出たことに驚きました。これが雨傘運動の始まりでした。
この時、デモに参加する人たちの数が、あんなに膨れ上がるとは、まったく予想していませんでした。大体、香港の人たちというのはビジネス、お金をメインに考える人が多くて、こういう政治的なことにはあまり関心を持たないというのが、それまで一般的でした。でも2014年の雨傘運動で変わりました。
2019年の「逃亡犯条例」改正案は、香港を中国の権威主義的支配下に置き、香港人の自由を制約するものと、この時にも香港の人々はこの逃亡犯条例改正案に反対して立ち上がり大規模デモが起きました。
いくつかの民主化運動関連のドキュメンタリーやドラマが作られましたが、今では香港で観ることができなくなっているようです。下記に、日本で公開された香港の民主化運動関係の映画を紹介していますが、その作者は皆さん、「このことを自分は撮っておかなくてはいけない。それは未来のために歴史的事実を残すということです」と語っています。
そして、この『香港、裏切られた約束』のトウィンクル・ンアン(顔志昇)監督も、その思いで撮影していました。今は英国に逃れ、難民の形になっているようです。いつの日か本国でも上映される日が来ることを願っています(暁)


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アップリック吉祥寺のロビー

2022年/香港/カラー/116分
配給:アップリンク
c 2024 Dawn Workshop Ltd
https://www.uplink.co.jp/liberate_hong_kong/
★2024年8月30日(金)よりアップリンク吉祥寺、アップリンク京都にて公開中

返還後の香港関連作品、監督インタビュー記事はこちらです。

●作品紹介
『乱世備忘 僕らの雨傘運動』
(原題:乱世備忘)2018年公開
http://cinemajournal-review.seesaa.net/article/460532836.html

『デニス・ホー ビカミング・ザ・ソング』2021年公開
(原題:Denise Ho: Becoming the Song)
http://cinejour2019ikoufilm.seesaa.net/article/481745772.html

『時代革命』2022年公開
(原題:時代革命 /英語題:Revolution of Our Times)
http://cinejour2019ikoufilm.seesaa.net/article/490705719.html

『Blue Island 憂鬱之島』2022年公開
http://cinejour2019ikoufilm.seesaa.net/article/489656264.html

『少年たちの時代革命』2022年公開
 (原題:少年/英語題:May You Stay Forever Young)
http://cinejour2019ikoufilm.seesaa.net/article/494357506.html

『理大囲城』2022年公開
(原題:理大圍城/英語題:Inside the Red Brick Wall)
http://cinejour2019ikoufilm.seesaa.net/article/494714604.html

●監督インタビュー

『革命まで』2015年 
郭達俊(クォック・タッチュン)監督&江瓊珠(コン・キンチュー)監督インタビュー
山形国際ドキュメンタリー映画祭2015にて
http://www.cinemajournal.net/special/2016/kakumeimade/index.html

『乱世備忘 僕らの雨傘運動』 2017年10月11日
陳梓桓(チャン・ジーウン)監督インタビュー
山形国際ドキュメンタリー映画祭2017にて
http://www.cinemajournal.net/special/2017/yellowing/index.html

陳梓桓(チャン・ジーウン)監督インタビュー(公開時) 2018年07月22日
http://cineja-film-report.seesaa.net/article/460641864.html

『時代革命』 キウィ・チョウ監督インタビュー2022年7月22日
http://cineja-film-report.seesaa.net/article/490683730.html


2022年/香港/カラー/116分
配給:アップリンク
(C)2024 Dawn Workshop Ltd
https://www.uplink.co.jp/liberate_hong_kong/

★2024年8月30日(金)よりアップリンク吉祥寺、アップリンク京都にて公開中

posted by shiraishi at 20:26| Comment(0) | 香港 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

チャイコフスキーの妻   原題:Tchaikovsky's Wife

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(C)HYPE FILM - KINOPRIME - LOGICAL PICTURES – CHARADES PRODUCTIONS – BORD CADRE FILMS – ARTE FRANCE CINEMA

監督・脚本:キリル・セレブレンニコフ(『LETO -レト-』『インフル病みのペトロフ家』)
出演:アリョーナ・ミハイロワ、オーディン・ランド・ビロン、フィリップ・アヴデエフ、ユリア・アウグ

旋律から戦慄へ
天才作曲家チャイコフスキーを盲目的に愛した“世紀の悪妻”アントニーナ
その知られざる実像に迫る


ロシアの天才作曲家、ピョートル・チャイコフスキー。かねてから同性愛者だという噂が絶えなかった彼は、恋文で熱烈求愛する地方貴族の娘アントニーナと、世間体から結婚する。しかし女性への愛情を抱いたことがないチャイコフスキーの結婚生活はすぐに破綻し、夫から拒絶されるアントニーナは、孤独な日々の中で狂気の淵へと堕ちていく…。

チャイコフスキーというと、「白鳥の湖」や「くるみ割り人形」の旋律がすぐに思い浮かびますが、彼の妻がどんな人だったのか、はたまた彼が同性愛者だったことなど、彼の私生活については全く知らなかったので、驚きの一作でした。
同性愛者であることは、当時の帝政ロシアではタブー。そんな中で、チャイコフスキーがカモフラージュのために、執拗に言い寄る女性と結婚した気持ちはわかりますが、ほとんど一緒に暮らさなかったというのは、あまりにアントニーナに気の毒。歴史上まれに見る悪妻という汚名まで着せられているとは! 
女性の権利が著しく制限されていた19世紀後半の帝政ロシア。旅券は、夫のものとして名前が付されただけ。参政権もありませんでした。夫に見向きもされなかったアントニーナの暮らしぶりはどうだったのか、心が痛みます。
『LETO -レト-』『インフル病みのペトロフ家』で、キリル・セレブレンニコフ監督の鬼才ぶりは存分に味わっていましたが、本作も監督が二人の数少ない手紙や手記などを丁寧に検証し、大胆な解釈を織り交ぜて描いたもの。特に、偉大なロシアの作曲家のイメージを守るために、チャイコフスキーの手紙や日記はソ連時代、当局によって厳密に保管され検閲されたとのこと。ロシアになってからも、高貴なイメージは守り継がれていますが、他の国では、限定的ながらチャイコフスキーは同性愛者の作曲家ということが浸透しているのだとか。曲が素晴らしければ、どんな人物が作ったのかは、どうでもいいことだと思うのですが、そんな人物の妻が精神に異常をきたすほどだったことは憂うばかりです。(咲)



2022年/ロシア、フランス、スイス/ロシア語、フランス語/143分/カラー/2.39:1/5.1ch
字幕:加藤富美
配給:ミモザフィルムズ
公式サイト:https://mimosafilms.com/tchaikovsky/
★2024年9月6日(金)より新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開





posted by sakiko at 10:19| Comment(0) | ロシア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

パドレ・プロジェクト/父の影を追って   英題:Padre Project

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(C)ぶらっくかんぱにー All rights reserved.

監督・プロデュース・編集:武内剛
撮影監督:成富紀之
脚本・構成:吾妻蓮
MA:藤木かずひと
カラリスト:星子駿光
楽曲提供:青木晋太郎
現地コーディネーター:Compangnone Francesca

日本とカメルーンの“ハーフ”の芸人・ぶらっくさむらいこと武内剛
コロナ禍の真っ只中 情熱と勢いだけでイタリアの地へ降り立った
結末のわからない 生き別れた父親探しの旅の記録


日本人の母は、32歳の時、イタリアの学校で23歳のカメルーン人の父と恋に落ち、35歳で剛を産む。名古屋で証券会社で働きながら女手一つで育ててくれた母。父とは、2歳の時に母がイタリアに連れていってくれて、一度だけ会っていて写真があるが、記憶にない。
2020年、コロナ禍でイタリアでも多くの死者が出ているとの報に、生きているうちに父に会いたいとの思いが募る。父親探しの旅「パドレ・プロジェクト」を立ち上げ、その旅の記録を映画にすることにし、クラウドファンディングを募る。
コロナに阻まれ、なかなか旅立てないが、ようやく、2022年5月、ミラノに降り立つ。認知症の母から聞き出せた父の情報は驚くほど少ない。手がかりは、2歳の時の父との写真と、40年前の手紙の住所だけ。10日間という限られた滞在期間で、果たして父は見つかるのか・・・

「パドレ」とはイタリア語で「父親」の意。
肌の色から、小さいときから、「日本人に見えない」「ガイジンみたい」と言われ、コンプレックスを持ち、記憶にない父の存在を遠ざけたい思いがある一方で、逆に、意識せざるを得なかったのではないかと思います。
武内剛さんは、24歳の時、日本を飛び出しアメリカへ。人種のるつぼニューヨークで7年暮らし、アイデンティティの悩みは消えたといいます。
かつてに比べれば、日本でも様々な肌の人が暮らしていて、ミックスルーツの人も珍しくなくなりましたが、異質なものに好奇の目を向けがちなのが日本人かもしれません。
さて、手がかりの少ない中での父親捜しの旅。NHKのファミリーヒストリーなみのリサーチをすれば、事前に父の行方を突き止めることができたのかもしれませんが、敢えて、ぶっつけ本番。父と会えるのか?と、ドキドキわくわくでした。(咲)

2023年/日本/日本語・英語・イタリア語/80分/カラー/16:9/ステレオ
字幕協力:三浦アーク、Elly
配給:ミカタ・エンタテインメント
宣伝協力:Xhora
公式サイト:https://padreproject.jp/
★2024年 8月31日 (土) より新宿 K’s Cinema 他 にて全国順次公開

posted by sakiko at 02:45| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年08月25日

顔さんの仕事

8月31日(土)より新宿K’s cinemaほか全国順次公開   上映情報

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©映画「顔さんの仕事」製作委員会

映画館の手書き大型看板から「グッチ」の巨大アートウォール、
ロックバンド「コールドプレイ」の宣伝壁画まで手がける
台湾最後の“国宝級絵師”


企画/制作/監督:今関あきよし
出演:顔振発(イェン・ヂェンファ)、三留まゆみ、柏豪
撮影:三本木久城
録音・音楽:種子田博邦
制作:太田則子 / 杉山亮一
編集:鈴木理 編集助手:三宅優里奈
台湾地図挿絵・題字:ヤマサキタツヤ
協力︓全美戯院 / ⽇本台灣新聞社 / 台湾師範⼤学 / Chingwen Hsueh / 国⽴⾳楽⼤学/ ⼭本周史

台湾、台南の映画館で上映される作品の絵看板を50年以上描き続け、本年(2024)の台北映画祭(台北電影節 / Taipei Film Festival)で貢献賞を受賞した顔振発(イェン・ヂェンファ)さんのドキュメンタリー。
台南市下営区に生まれ、幼い頃から絵を描くのが好きだったイェンさん。絵に対する才能を感じた家族が、看板職人陳峰永の弟子に送り出した。1970年代、台湾映画界は盛り上がり、イェンさんは台南の映画館「全美戯院」の看板を1ヶ月に100から200枚もの手描き映画看板を描き、制作から設置まで一手に引き受けた。しかし長年に渡る看板作りは、視力に大きな負担をかけ、医師が彼の網膜がひどく傷ついていることに気付き、右目はほぼ見えない状態になった。でも、イェンさんは今も描き続けている。彼の⽣涯に渡る制作と、奇跡を⽣み出す「仕事」に迫る貴重な記録。
インタビュアー&ナビゲーターとして本映画に登場するのは、数々の映画作のイラストを描いて来たイラストレイターで、今関監督とは8mm映画時代からの盟友でもある三留まゆみさん。そして通訳として、台湾の俳優・柏豪も参加している。
監督はウクライナ、ロシア、岩⼿、⿅児島など様々な国・地域を背景に、美しい映像と優しい眼差しでそこに⽣きる⼈々を描き続ける、今関あきよし。『恋恋⾖花』に続き、台湾にスポットを当てた作品を作り上げた。

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©映画「顔さんの仕事」製作委員会


以下プレス資料・HPより

監督:今関あきよし
高校生の頃から8mm 映画の自主制作を始め、1979 年に制作した『ORANGING’79』がオフシアター・フィルムフェスティバル’79(のちのPFF)で入賞を果たす。その後も自主制作で青春時代を過ごす少女の甘酸っぱさを繊細に描く作品を次々と送り出し、インディーズ界の雄のひとりとして注目を集め、1983 年に『アイコ十六歳』でメジャーデビューを果たす。プロとなってからも少女の心を描いた作品を多数世に送り出している。その他の監督作に『グリーン・レクイエム』(88 年)、『すももももも』(95 年)、『タイム・リープ』(98 年)、『十七歳』(02年)、『カリーナの林檎~チェルノブイリの森~』(11 年)、『クレヴァニ、愛のトンネル』(14 年)、『LIKA/ライカ』(16 年)、『恋恋豆花』(19 年)、『釜石ラーメン物語』(23 年)、『青すぎる、青』(23 年)などがある。

comment
台湾にハマり何度も通ううちに、多くの⼈に台湾の魅⼒を伝えたくて『恋恋⾖花』という台湾の《⾷の魅⼒》にスポットを当てた映画を撮り、今度は⼈間《顔振発》の存在と技を伝えたくてこの映画を作った。そして誰よりも僕⾃⾝が顔(イェン)さんのことを知りたかったし、仲良くなりたかった。⾔い換えると「顔さんの仕事」は僕の今のアイドル映画だったりもする(笑)。

*参照記事 シネマジャーナルHP 特別記事
『恋恋豆花』今関あきよし監督インタビュー
台湾にハマっていった話をしています。

ナビゲーター︓三留まゆみ
映画評論家・イラストレーター・漫画家。
東京都新宿区出身、血液型B 型、和光大学人文学部芸術学科中退。 映画の名場面、みどころをびっしりとイラストで書き込んだ手法の映画紹介で知られる。 得意とするジャンルはSF とホラー。

comment
その映画館=全美戯院は地続きの映画館、すなわち地⾯を歩いてそのまま⼊れるむかしながらの劇場で、道を挟んだ向かいの歩道が顔さんのアトリエだ。私たちはそこで⼀枚の巨⼤な看板絵が出来上がるまでを⾒た。
それはなんて素晴らしい時間だったろう。たくさんの奇跡の瞬間(顔さんの筆はまるで「魔法の杖」だった)を焼きつけた映画『顔(イェン)さんの仕事』はさらなる奇跡を起こした。6⽉末、舞台になった全美戯院でプレミア上映が決まり、顔さんは⾃分の映画の看板絵を描いたのだ。そして、私はこの映画を満員の映画館で顔さんの隣で観た。⼦どもみたいな笑顔でスクリーンを⾒上げる顔さんの横顔を決して忘れないだろう。そう、映画はいつも看板絵と共にあったんだ。

撮影︓三本⽊久城(JSC)
1970 年生まれ 主な撮影作品(一部、兼編集)は、「カリーナの林檎~チェルノブイリの森~」(2004 監督:今関あきよし)、「memo」(2008 監督:佐藤二朗)、「野のなななのか」(2014 監督:大林宣彦)、「花筐/HANAGATAMI」(2017 監督:大林宣彦)、「海辺の映画館 ーキネマの玉手箱」(2020 監督:大林宣彦)、「釜石ラーメン物語」(2022 監督:今関あきよし)、「沖縄狂想曲」(2023 監督:太田隆文)、「青すぎる、青」(2024 監督:今関あきよし)、「しまねこ」(2024 監督:今関あきよし)、「顔さんの仕事」(2024 監督:今関あきよし)など。

全美戯院
1950 年に、当時としては珍しいバロック風建築の映画館「第一全成戯院」として開業。69 年に現在も経営を続ける呉家の所有となり、全面改修の上、館名を「全美戯院」に改める。当初は新作映画を上映していたが、71 年以降、地域の映画館の急増に伴う経営不振から、洋画を中心に、メイン館での上映が終了した作品を安価に上映する、いわゆる二番館に業態転換。
世界的に有名な映画監督李安(アン・リー)が青春時代幾度となく通い、映画に対する夢を育んだ映画館としても知られる。顔さんが描く手書き看板が観光スポットになっている。2024 年の藤井道人監督の映画『青春18×2 君へと続く道』ではロケ地となった。

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©映画「顔さんの仕事」製作委員会


顔(イェン)さんが、映画の看板を描くところをずっと追った、とても幸せな気分と感動を、そしてなによりも映画愛を伝えてくれる作品だった。映画のイラストで知られる三留まゆみさんをナビゲーターにしたのもとても良かった。下書きを書き、色を付け、どんどん絵がが出来上がってゆく様子が描かれ、その合間に三留さんが絵や映画に対する思いや質問をしてゆく。その看板の絵はペンキで描かれている。そして看板を描いている場所は、映画館と道路を挟んだ向かいの道路脇。実際に設置する場所の大きさやスペースなどを見ながら描ける、これ以上ないロケーション。しかし、外での仕事は台南では、夏は相当暑いに違いない。それを50年以上続けてきたという。冷房がないと仕事ができない私としてはとても考えられない。
イェンさんは絵を描きながら、「看板の絵は明、暗、線の組み合わせ。色を積み重ねて立体感を出す」と語っていたが、『スパイダーマン』の絵の上に、白墨で次に描く『スラムダンク』の下書きをささっと書き、すぐに色塗りを始めていた。
私はまだ台湾は台北近辺しか行ってないけど、このイェンさんの絵を観るために、この台南の「全美戯院」に行ってみたい(暁)。


「満足した作品は?」と問うと、「全部」と答える顔さん。 今は、携帯で簡単に写真に撮って残せるけれど、どんなに気に入った作品も、次の興業の看板を描くために、その絵の上に描いていくので消えてしまいます。
顔さんの実家を訪ねる場面がありました。近くには顔氏家廟があって、そこには一族の人たちにも読めない漢字4文字が正面に掲げられていて、専門家に読み解いてもらったら、「山東省から来た人たち」の意味とのこと。そばには地図もあって、顔家の人たちが山東省から台南まで、どういう経路で来たのかも記されています。
「顔」と大きく書かれた大きな提灯がぶら下がっていて、そこには「四科第一」という文字も。祖先が、顔回(イェン・フェ)という孔子の72人いる弟子のトップで、言語・政治・文学・道徳の全てに優れた人物だと判明したのは、2年前とのこと。今、99代目なのだとか。映画のポスターを見て、さっと大きな看板を描いてしまう才能も、ご先祖さまから連綿と受け継がれた血なのだと思いました。(咲)



公式HP ︓https://mikata-ent.com/movie/1858
配給:ムービー・アクト・プロジェクト
配給協⼒︓ミカタ・エンタテインメント
製作︓映画「顔さんの仕事」製作委員会
2024/⽇本/カラー/64分/16:9
posted by akemi at 21:04| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

オキナワより愛を込めて 英題:FROM OKINAWA WITH LOVE

8月24日(土)より沖縄・桜坂劇場での先行上映を皮切りに、8月31日(土)から東京・シアター・イメージフォーラム、ほか全国ロードショー
上映劇場 
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沖縄を拠点として活動する写真家、石川真生を追ったドキュメンタリー

監督・カメラ・サウンド・編集:砂入博史
出演:石川真生 
プロデュース: 砂入博史 + イドレ・バッバイヤー
オーディオ・ミックス :アダム・スコット 
サウンド:吉濱翔
字幕:酒見南帆
音楽:アダム・スコット、吉濱翔、米田哲也、北崎幹大、大城修一
オリジナルサウンドトラック:「琉球ハイブリット」 北崎幹大
2019/「オキナワより愛をこめて」 北崎幹大 + 吉濱翔 2019

醜くも美しい人の一生、私は人間が好きだ

1971年11月10日、米軍基地を残したままの日本復帰を取り決めた沖縄返還協定をめぐり、沖縄の世論は過熱していた。ゼネストが起こり、労働者と機動隊の衝突は警察官一人が亡くなる事件に発展した。当時10代だった石川真生は、この現場を間近で目撃。「なんで沖縄にはこんなに基地がいっぱいあり、こんなにいろいろな事件や事故が多いんだろう」。この沖縄県人間同士の衝突で浮かんだ疑問が、彼女を写真家の道に進ませた。
長崎や沖縄などの写真を撮っていた東松照明のワークショップで写真を学び、1975年、米兵を撮るために石川は友人を頼り、コザ・照屋の黒人向けのバーで働き始めた。バーで働く女性たちや、黒人たちと共に時間を過ごしながら、日記をつけるようにカメラを首にさげ写真を撮り続けた。
当時の生活を収めた3冊の写真集「熱き日々 in キャンプハンセン!!」(1982)、「熱き日々 in オキナワ」(2013)、「赤花 アカバナー 沖縄の女」(2017)を手に、およそ半世紀が経った今、当時の記憶を回想する。

写真家としての石川真生のルーツを辿りながら、ファインダーを通して語られた「愛」、そして作品の背景となった歴史、政治、人種差別、それらを乗り越えるパワーを写真とともに映し出していく。
半世紀に渡り沖縄を拠点に制作活動を続け、沖縄に関係する人物を中心に、人々と時間を共にしながら写真を撮り続けている。

以下、プレス情報、HPから

石川真生プロフィール
1953年、沖縄県大宜味村生まれ。1971年、11.10ゼネストを機に、写真家になることを決意する。1974年、WORKSHOP写真学校「東松照明教室」で写真を学ぶ。1975年、黒人兵向けのバーで働きながら、黒人兵とバーで働く女性たちを撮り始める。半世紀に渡り、沖縄を拠点に制作活動を続け、沖縄に関係する人物を中心に、人々と時間を共にしながら写真を撮り続けている。2011年、『FENCES, OKINAWA』で、さがみはら写真賞を受賞。2014年から沖縄の歴史を再現した創作写真シリーズ「大琉球写真絵巻」を開催。2019年に日本写真協会賞作家賞、2024年には土門拳賞、文科大臣賞を受賞。

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写真集 (全ての写真は石川真生が撮影したもの)
「熱き日々 in キャンプハンセン」石川真生・比嘉豊光 (あ〜まん出版 1982)
「熱き日々 in オキナワ」石川真生 (FOIL 2013)
「赤花 アカバナー 沖縄の女」石川真生 (Session Press 2017)
© MaoIshikawa

砂入博史監督プロフィール
1972年広島で生まれ、ニューヨークを拠点に活動する。1990年に渡米し、ニューヨーク州立大学現代美術科卒業。ニューヨークを拠点に活動する。欧米、日本の美術館、ギャラリーにてパフォーマンス、写真、彫刻、インスタレーションの展示を行う。
近年は、チベットや福島、広島の原爆等をテーマにした実験ドキュメンタリーを制作。2018年、袴田巌をインタビューした『48 years – 沈黙の独裁者』で同年熱海国際映画祭長編コンペで特別賞受賞。2001年からニューヨーク大学芸術学科で教鞭も執る。現在は日本在住。

監督コメント
オキナワの写真家石川真生は、体当たりで写真を撮る、作品にオキナワの複雑な歴史、政治、アイデンティティを反映させ、進化させ、体現する。石川の実証的でありながら詩的な言葉は、写真と同じくらい印象的だ。写真と言葉は影響し合い、互いをより力強いものにする。私が気をつけたかったことは、被写体を植民地化しないこと、日本人としてオキナワを語らないこと、女性をオブジェクティファイしないこと、石川真生を説明しないこと。彼女の言葉を、映像やリサーチでイシュー順に構成し、オキナワ人であり、女性であり、写真家である石川真生が、可能な限り透明で複雑なオーガニズム、スーパー真生として生成する。

私は石川真生さんより1歳上。同じ時代を生きて来た。1969年、高校3年の頃、ベトナム戦争は激化し、日本でもべ平連(ベトナムに平和を!市民連合)の活動が活発に行われていて、私も何度かデモに参加した。そして、ベトナム戦争の前線に行き写真を送ってきていた報道写真家の活動にも注目していた。それらの写真を見て、私も「報道写真家になりたい」と思うようになり、写真に興味を持つようになりました。
そして米軍は、沖縄からベトナムに飛び立っているということを知り、沖縄の米軍や米兵を撮った写真にも興味を持ちました。その中でも石川真生さんの黒人米兵を撮った写真は衝撃でした。1977年、ミノルタフォトスペース/東京都で開催された写真展「金武の女たち」にも行きました。その後も石川真生さんの写真展に行きましたが、いつしか写真展にも行かなくなり、石川真生さんの活動も知らずに50年近くたちました。その間も真生さんは沖縄の写真を撮っていたのですね。
辺野古での舟の上での撮影風景を観てびっくり。ペンタックス6×7で撮っていました。中型のフィルムカメラで1.5㎏くらいはある。私もこのカメラを使っていたので、重さがずしりと来るのはわかります。よくこんな重いカメラで動くものを追っているなと感心しました。しかも動く舟の上で。
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このドキュメンタリーを観たことで、去年(2023.10.13~12.24)、東京オペラシティで「私に何ができるか」という写真展を行っていたことを知りました。今までの集大成の写真展のようでしたが、全然知りませんでした。そんな石川真生さんの話と沖縄のことを、ぜひ、この映画を観て知ってください(暁)。


公式ホームページ:https://okinawayoriaiwokomete.com/
予告編: https://youtu.be/cu_ot-S-GiE 
2023年/日本・アメリカ/日本語・英語/101分
協力:吉濱翔、仲里効、大橋弘基、大野亨恭、大琉球写真絵巻実行委員会メンバー

*砂入博史監督にインタビューしています。

写真家石川真生を追ったドキュメンタリー
『オキナワより愛を込めて』砂入博史監督インタビュー
http://cineja-film-report.seesaa.net/article/504602011.html
posted by akemi at 19:46| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年08月23日

ボストン1947  原題:1947 보스톤(1947 ボストン) 英題:Road to Boston

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(C)2023 LOTTE ENTERTAINMENT & CONTENT ZIO Inc. & B.A. ENTERTAINMENT & BIG PICTURE All Rights Reserved

監督・脚本:カン・ジェギュ
共同脚本:イ・ジョンファ
出演:ハ・ジョンウ、イム・シワン、ペ・ソンウ、キム・サンホ、パク・ウンビン

「私たちが望むのは、祖国の国旗をつけて走ることです」

1936 年、ベルリンオリンピック。マラソン競技に日本代表として日本名で出場したソン・ギジョン(ハ・ジョ ンウ)は、金メダルに輝く。銅メダルを獲得したナム・スンニョン(ペ・ソンウ)と表彰台に上がったソンは、日本国歌が流れる間、月桂樹の鉢植えで胸元の国旗を隠したことが問題視され引退を強いられる。
1945 年、終戦と共に日本から解放されるが、米ソによる軍政が始まる。
1946 年、ソウル。荒れた生活を送っていたソンの前にナムが現れ、一緒にボスト ンマラソンに参加して、「若い子には本名で走らせてやろう」と持ち掛ける。最初は嫌がるソンだったが、 「立ち直るためには走るのが一番じゃないか」と言われて心が動く。
米軍政庁から国際大会の参加歴がないと出場は難しいと言われるが、ツテを頼って、ようやく招請状を手に入れる。「ソン・ギジョン世界制覇 10 周年記念マラソン」で優勝したソ・ユンボク(イム・シワン)を抜擢して、3人はボストンに赴く・・・・

飛行機をいくつも乗り継いでボストンにたどり着いた一行ですが、事務局が用意していたユニフォームは、独立国ではなく難民国としての参加だからと、星条旗のついたものでした。「太極旗をつけて走りたい」と奔走します。 
そうして迎えたボストンマラソン本番。手に汗握るレース。上り坂で、どんどん抜いて、昨年の優勝者に迫るユンボクですが、犬が飛び出てきて転倒してしまいます。ゴールまで、7キロ。さて、どうなる・・・と、最後の最後まで、冷や冷やしながら見守りました。
1936年のベルリンオリンピックでのメダルの記録は、日本のままというのは、ソン・ギジョンたちにとって、ほんとに悔しいことでしょう。 
「日本の奴らが去ったら、アメリカがのさばってる。いつまでいるんだ」と愚痴る場面がありました。南北分断という問題は解決していませんが、今は立派な独立国になった大韓民国。紆余曲折を経て、今があることをつくづく思いました。
ハ・ジョンウ、イム・シワン、ペ・ソンウの3人が、激動の時代を生きた実在のマラソンランナーを体現している感動作です。アメリカで彼らを迎える在米韓国人を演じたキム・サンホも、いい味出してます。(咲)


2023 年/韓国/108 分/スコープ/5.1ch
日本語字幕:根本理恵
配給:ショウゲート
公式サイト:https://1947boston.jp/
★2024年8月30日(金) より、新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー



posted by sakiko at 21:15| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

愛に乱暴

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(C)2013 吉田修一/新潮社 (C)2024 「愛に乱暴」製作委員会

監督・脚本:森ガキ侑大
原作:吉田修一『愛に乱暴』(新潮文庫刊)
脚本:山﨑佐保子、鈴木史子
音楽:岩代太郎
出演:江口のりこ、小泉孝太郎、馬場ふみか、水間ロン、青木柚、斉藤陽一郎、梅沢昌代、西本竜樹、堀井新太、岩瀬亮、風吹ジュン

桃子は、41歳の専業主婦。結婚して8年になる夫・真守の実家の敷地に建つ“はなれ”で暮らしている。時折干渉してくる母屋の義母に、逆に何を言っても生返事の夫。そんな中でも、桃子は手の込んだ献立や、狙っていた高級食器を購入したりして、毎日を充実させている。
そんな桃子の周囲で不穏な出来事が起こり始める。近隣のゴミ捨て場で相次ぐ不審火、愛猫の失踪、不気味な不倫アカウント…。平穏だったはずの日常は少しずつ乱れ始め、やがて追い詰められた桃子は、いつしか床下への異常な執着を募らせていく・・・。

江口のりこさんは、今年に入ってからの公開作品でも『お母さんが一緒』『あまろっく』で、不思議な存在感を発していますが、本作も怪演が光ります。 子どもがいなくても順風満帆な夫婦と思っていたのに、夫は自分のいうことに無関心。なんだか一人相撲している感が、どんどん桃子を追い込んでいきます。小泉孝太郎さんは、心ここにあらずの夫ぶりが絶品です。
若い時から知っている風吹ジュンさんが、小泉孝太郎さんの母親役か・・・と、複雑な思いですが、今も変わらず可愛い方です。
原作は読んでいないのですが、映像化は難しいと思われていたとのこと。いやはや、思い詰めた女の行動・・・凄いです。(咲)


2024年/日本/G
配給・制作:東京テアトル
公式サイト:https://www.ainiranbou.com/
★2024年8月30日(金)全国ロードショー



posted by sakiko at 19:22| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

モンキーマン (原題:MONKEY MAN)

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監督・原案:デヴ・パテル
脚本 デヴ・パテル、ポール・アングナウェラ、ジョン・コリー
出演:デヴ・パテル(キッド)、シャルト・コプリー(タイガー)、ピトバッシュ(アルフォンソ)、ビピン・シャルマ(アルファ)、シカンダル・ケール(ラナ)

闇のファイトクラブで夜な夜な戦う悪役モンキーマン。筋書きはオーナーに指示されて、初めは優勢でも結局痛めつけられ負けることになっている。猿のマスクをかぶっているのは、天涯孤独のキッド。幼いころに村ごと焼き払われ最愛の母を失った壮絶な過去がある。母はキッドを隠し、けっして声をたてないよう言い聞かせて自分は殺されてしまった。そのときの悪徳警官ラナの顔は忘れたことがない。
死んだように生きて来たキッドだったが、ラナに近づくチャンスがあった。しかし圧倒的な力の差で倒されてしまう。虐げられた人々からの手厚い介護を受け、キッドは再び復讐のために立ち上がる。

『スラムドッグ$ミリオネア』(2008/ダニー・ボイル監督)のデブ・パテルが構想8年をかけ初監督、主演を務めました。しっかり身体を作り上げ、アクションをこなしています。アクション映画の大ファンとのことで、ずっとこれがやりたかったのでしょう。スタッフにも恵まれたのか、映像もアクションも、わー!という仕上がり。
復讐劇にやりすぎじゃないですか、とは私の感想です。そこがいい!!というファンも多々いるはず。もともとは全世界に配信の予定だったのが、ジョーダン・ピールが気に入って買い取りプロデュース、劇場公開することになったそうです。
母親がキッドにお猿の神様のお話を語り聞かせていました。インドの叙事詩「ラーマーヤナ」に登場するハヌマーンという神様のようです。なんだか孫悟空みたいと思いましたら、孫悟空はこのお話から生まれていたとも言われています。力と勇気の象徴だそうで、キッドは神がいないなら自分が、と敵を追っていきます。高い高いビルの最上階でのアクションは太陽を取りに空へ上ったハヌマーンを表しているのかもしれません。(白)


★福音館から出ている絵本「おひさまを ほしがった ハヌマン」を読むとキッドのお母さんの話の続きがわかります。
☆第31回サウス・バイ・サウスウエスト映画祭で観客賞受賞

2024年/アメリカ・カナダ・シンガポール・インド/カラー/シネスコ/ 121分/R15+
配給:パルコ、ユニバーサル映画
(C)Universal Studios. All Rights Reserved.
https://monkeyman.jp/
★2024年8月23日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか、全国公開中

posted by shiraishi at 00:31| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年08月22日

サユリ

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監督:白石晃士
脚本:安里麻里、白石晃士
原作:押切蓮介「サユリ」(幻冬舎コミックス刊)
撮影:伊藤麻樹
出演:南出凌嘉(神木則雄)、近藤華(住田)、梶原善(章雄)、占部房子(正子)、きたろう(章造)、森田想(径子)、猪股怜生(俊)、根岸季衣(春枝)

神木家は父が買った丘の上の一軒家に引っ越してきた。古いけれど眺めが良く、広くなったので祖父母も同居した。父は親孝行ができて嬉しい。ただ小学生の俊はこの家がなんだか怖い。認知症の祖母・春枝は笑い声が聞こえる、と一点を見つめていた。自分一人の部屋ができ喜んでいた長女の径子の様子が少しずつおかしくなる。長男の則雄は学校で住田という女子に「気をつけて」と忠告された。まもなく父親が突然亡くなってしまう。そして一人、また一人と家族が減っていくのだった。

映画の冒頭に最初の住民の不穏なエピソードが入ります。ホラー映画と覚悟して観始めても、怖いの苦手で思わず目をつぶってしまう体たらく…。原作の押切蓮介氏の漫画は『ミスミソウ』(2018年)が公開されたときに、少し拝見しました。あどけない主人公が壮絶ないじめに遭い、復讐心をたぎらせていく変化と暴力描写が怖かったです。
あちこちで姿を見せる不気味な「アレ」の正体はすぐに以前の住人のサユリと(観客には)見当がつくのですが、それほど強い怨念の理由がなかなかわかりません。後半怒涛のように話が進んでいきますが、陰惨なだけでなく笑いもちりばめてありますので安心して。ここで大貢献するのが根岸さん演じる「覚醒した春枝ばあちゃん」。見た目もすっかりロックかパンクか??に変貌します。
人が死ぬのですから、警察は来るもののなんの解決にもなりません。春枝ばあちゃんは孫の則雄を叱咤激励し「アレ=サユリ」と真っ向勝負の大活躍です。しかし中学生男子に、酔っ払い親父のようなセリフを言わせるのはいかがなものか?(原作どおりなんでしょうか?)マイホームは生涯に一度あるかないかの高い買い物です。よっく近所の評判などリサーチしてから、サユリつきじゃないのを買いましょう。(白)


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映画『サユリ』公開記念初日舞台挨拶@バルト9
左から押切蓮介(原作)、近藤華、南出凌嘉、根岸季衣、白石晃士(監督)

2024年/日本/カラー/ビスタ/108分/R15+
配給:ショウゲート
(C)2024「サユリ」製作委員会/押切蓮介/幻冬舎コミックス
公式サイト https://sayuri-movie.jp/
公式X @sayurimovie2024
公式TikTok @sayurimovie2024 #映画サユリ
★2024年8月23日(金)全国ロードショー


posted by shiraishi at 20:51| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年08月18日

ソウルの春  原題:서울의 봄ソウルの春  英題:12.12: The Day

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(C)2023 PLUS M ENTERTAINMENT & HIVE MEDIA CORP, ALL RIGHTS RESERVED.

監督:キム・ソンス
脚本:ホン・ウォンチャン、イ・ヨンジュン、キム・ソンス
出演:ファン・ジョンミン、チョン・ウソン、イ・ソンミン、パク・ヘジュン、キム・ソンギュン、チョン・マンシク、チョン・ヘイン、イ・ジュニョク


ソウルに銃声が響き渡った日――あの夜の戦いで、本当は何が起きていたのか?
1979年10月26日、独裁者とも言われた大韓民国大統領・朴正煕(パク・チョンヒ)が、自らの側近に暗殺された。国中に衝撃が走るとともに、民主化を期待する国民の声は日に日に高まってゆく。
しかし、暗殺事件の合同捜査本部長に就任したチョン・ドゥグァン保安司令官(ファン・ジョンミン)は、陸軍内の秘密組織“ハナ会”の将校たちを率い、新たな独裁者として君臨すべく、同年12月12日にクーデターを決行する。一方、高潔な軍人として知られる首都警備司令官イ・テシン(チョン・ウソン)は、部下の中にハナ会のメンバーが潜む圧倒的不利な状況の中、自らの軍人としての信念に基づき“反逆者”チョン・ドゥグァンの暴走を食い止めるべく立ち上がる・・・

ファン・ジョンミンが登場したとたん、顔は確かにファン・ジョンミンなのに、頭がよく知る実際のモデルの全斗煥(チョン・ドゥファン)で、まずは大笑い。(すみません!) 全斗煥がその後、大統領になったことを知っているので、この12月12日の夜の出来事の結末は想像がついたのですが、訛りの強い言葉でまくしたてるファン・ジョンミン演じるチョン・ドゥグァンの横暴さに、いやはや権力に固執する男だなぁ~と辟易しました。
実在した秘密組織“ハナ会”は、朴正煕大統領時代に、全斗煥が同期の盧泰愚(本作ではノ・テゴンという役でパク・ヘジュンが演じています)と共に陸士卒業生のうち主として嶺南(慶尚北道と慶尚南道を合わせた地域)出身の優秀な将校を集めて結成した組織。
全斗煥は、慶尚南道陜川出身。ファン・ジョンミンは、慶尚南道昌原出身。方言もおそらく似ているのでしょう。独特の抑揚です。
憎々しく見えるファン・ジョンミン演じるチョン・ドゥグァンと違って、チョン・ウソン演じるイ・テシンは、参謀総長チョン・サンホ(演じるイ・ソンミンが、これまたいいです)から、「君のように無欲な人に首都警備司令官を任せたい」と言われるだけあって、とても誠実で、人を思いやれる人物に見えます。そんな彼も、チョン・ドゥグァンの横暴なふるまいに、思わず「射殺してしまえ!」と命じます。末路は悲しいかな・・・ なのですが。
参謀総長チョン・サンホをすでに拉致したチョン・ドゥグァンが、執拗に大統領に参謀総長逮捕の決済を求めます。 朴正煕が暗殺された後の第10代大統領の崔圭夏(チェ・ギュハ)は、任期が1年と短かったこともあって印象に残っていません。本作では、チョン・ドンファン(「冬のソナタ」のサンヒョクの父役など多くのドラマでお馴染みの方)が、穏やかな大統領を演じています。

さて、その後、権力を確固なものにした全斗煥は、光州での民主化運動を武力で押さえつけます。そして、大統領へと昇り詰めるのですが、自ら起こしたクーデターや光州事件の責任を問われ、大統領を辞めた後に逮捕、無期懲役刑を受けています。そのあとに大統領になった盧泰愚も、同じくクーデターの罪で有罪判決を受けています。そのことも知った上で、本作を見ているので、いずれあなたたちも・・・と思うのですが、あそこでなぜ食い止められなかったのかと、韓国国民ならば悔しく思うのではないでしょうか。
あと、チョン・ヘイン演じる特戦司令部 オ・ジノ少領の活躍もお見逃しなく! (咲)


2023年/韓国/韓国語/142分/シネマスコープ/5.1ch
字幕翻訳:福留友子/字幕監修:秋月望
配給:クロックワークス
https://klockworx-asia.com/seoul/
★2024年8月23日(金) 新宿バルト9ほか全国ロードショー



posted by sakiko at 20:10| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ジェーン B.とアニエスV. 〜 二人の時間、二人の映画。『アニエス V.によるジェーン B.』『カンフーマスター!』

ジェーン B.とアニエスV. 〜 二人の時間、二人の映画。
jane b. et agnès v.  Temps pour deux, film pour deux.
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2023年7月16日に急逝したジェーン・バーキンの一周忌を追悼して、ジェーンとヌーヴェルヴァーグの母アニエス・ヴァルダのコラボレーションにより実現した1987年の作品『アニエス V.によるジェーン B.』と『カンフーマスター!』がデジタルレストレーション版で再映されます。日本語字幕も新訳での上映です。

配給: リアリーライクフィルムズ
公式サイト:https://www.reallylikefilms.com/janeetagne
★2024年8月23日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町 / テアトル梅田 他で全国順次ロードショー


『アニエス V.によるジェーン B.』デジタルレストア版 原題:Jane b. par agnes v. 
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監督・脚本:アニエス・ヴァルダ
出演:ジェーン・バーキン 、ジャン=ピエール・レオー、ラウラ・ベティ、フィリップ・レオタール、アラン・スーション、セルジュ・ゲンズブール、シャルロット・ゲンズブール、マチュー・ドゥミー、フレッド・ショペル
1988年/フランス/フランス語//99分

「ジェーン、いつもカメラのレンズを直視することを躊躇うのはなぜ?」

ジェーンが40歳の誕生日に、自身の30歳の誕生日を回想する間、アニエス・ヴァルダの伝説の女性への尽きることのないイメージがヴィヴィッドに展開する。その空想は、犯罪映画の妖婦、サイレントシネマの凸凹コンビ、モンローのような男たちのファンタジーの対象、よくあるメロドラマの恋人たち、西部劇のカラミティ・ジェーン、ターザンとジェーン、そしてジャンヌ・ダルクへと、ジェーンのイメージを自由自在に拡張させていく。一方で綴られるジェーンの日常のスケッチ。そこにはセルジュ・ゲンズブールや娘たちとの時間も織り込まれる。そのどれもが、シャイで大胆で逞しくて危うくて儚くて美しい、ジェーン・バーキンの魅力が余す事なく詰まっている。

舞台をイメージした衣装で、40歳を迎えるジェーンが幼少期からこれまでのことを語ります。(女性が3人並んでいる真ん中がジェーンなのですが、なんとも奇妙な雰囲気)
成人するまでイギリスで育ったジェーン。愛着のある実家を自分のために買い戻しています。家族がいてこその家。3階まで続く螺旋階段の脇には、アルバム25冊分の写真が貼られています。映画でパリに行き、セルジュ・・ゲンズブールと出会い、結婚。彼に似たスラブ系の子が欲しかったと願って生まれてきたのがシャルロット・ゲンズブール。(でも顔立ちはセルジュに似なくてよかった!) 
「セルジュは巨乳が苦手で、私は彼の美の基準を満たした女だった」と、コンプレックスが消えたことを語るジェーン。確かに、とてもボーイッシュなジェーンですが、フランス語でささやくように語るジェーンは、とても魅力的です。
カフェでアニエス・ヴァルダと語るうちに、映画の物語のアイディアをジェーンが話し出します。娘の同級生と恋をする話。年下の相手役は、アニエス・ヴァルダの15歳の息子に決定! こうして、『カンフーマスター!』が生まれました。息子を差し出したアニエス・ヴァルダも、すごい! (咲)



『カンフーマスター!』デジタルレストア版  原題:Kung-fu Master
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監督・脚本:アニエス・ヴァルダ
出演:ジェーン・バーキン、マチュー・ドゥミ、シャルロット・ゲンズブール、ルー・ドワイヨン、デヴィッド・バーキン、ジュディ・キャンプベル、アンドリュー・バーキン
1988年/フランス/フランス語/88分

ジェーン・バーキンの発案にア二エス・ヴァルダが応じる形で映画化が実現した作品。この作品の制作の延長線上で、『アニエスV.によるジェーンB.』が撮影されている。

娘(シャルロット・ゲンズブール)が自宅の庭で開いたパーティーで、泥酔した同級生の少年ジュリアン(マチュー・ドゥミ)を介抱したマリー・ジェーン(ジェーン・バーキン)は、あろうことか15歳の少年に不思議な感情を抱く。ジュリアンもまた、40歳のマリー・ジェーンに恋愛感情を抱くようになる。微妙な力関係の中、人目を盗んで密会を重ねる二人。そんなある日、二人がキスを交わしているところを、ルシーに目撃されてしまう。パリとロンドンのジェーンの自宅と実家で撮影。シャルロットの他、ルー・ドワイヨン、アンドリュー・バーキン、ジェーンの実の両親などファミリーが総出演している。


え? 中国を舞台にした映画? と思ったら、「カンフーマスター」は、少年ジュリアンが夢中になっているゲームの名前でした。
そしてジュリアンを演じているのは、なんと、アニエス・ヴァルダ監督の実の息子。
まだ大人になりきってない、可愛い少年。そんな可愛い子と恋をしてしまうジェーン・バーキン。素敵です。 
デートする時には、幼い娘のルーも連れていってカモフラージュ。 
夏休み、ジュリアンも連れてイギリスの実家に行くのですが、ジェーンの実際の両親や親戚たちも一堂に会します。 ジェーンのお母さんが、ジュリアンとの関係を見抜いて、「無人島に遊びにいってきなさい」と、送り出します。もちろんルーも一緒ですが、なかなか大胆。 ひと夏の恋が終わって、少し大人になったジュリアンですが、友達には強がりを言って、笑わせてくれます。(咲)


posted by sakiko at 19:26| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

至福のレストラン 三つ星トロワグロ 原題:Menus Plaisirs - Les Troisgros

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(C)2023 3 Star LLC – All Rights Reserved

監督・製作・編集:フレデリック・ワイズマン
出演:ミッシェル・トロワグロ、セザール・トロワグロ、レオ・トロワグロ、マリー=ピエール・トロワグロ、トロワグロで働くスタッフ、ほか

親子3代に渡って55年間ミシュランの三つ星を持ちつづけ、
グリーンスターに輝く最高峰のフレンチレストラン<トロワグロ>。
94歳の巨匠フレデリック・ワイズマン監督が、その驚異の秘密に迫る―


朝、ロアンヌ駅前のマルシェで念入りに野菜を選ぶ4代目シェフのセザールと、別のレストランを営む弟のレオ。
トロワグロ家のブラッスリー「ル・サントラル」では、セザールとレオが考案したメニューを口頭で聞いて、3代目シェフである父ミッシェルがあれこれとアドバイスする。

樹々と湖に囲まれたフランス中部の村ウーシュにあるレストラン<トロワグロ>。
建築家パトリック・ブシャンが建てた、自然と解け合うモダンな新しいレストランだ。
開店前、下ごしらえするシェフを夢見る若き料理人たち。
ホールでは、担当スタッフたちがテーブルセッティングに余念がない。
ソムリエにワインの仕入れ状況と在庫を確認するミッシェル。
厨房では、魚と肉の仕入れをシェフと料理人たちが確認する。
ホール長からスタッフにメニューの変更や、予約客のアレルギーや苦手な食材が詳細に伝えられる。
味見をして、盛り付けにも厳しいチェックを入れるミッシェル。

いよいよランチタイム開店。テーブルについた客に、前衛的なメニューをわかりやすく説明するホール係。
厨房では、セザールの指揮のもと、着々と料理が仕上がる。ミッシェルが細かく確認する。その合間にも客席を回り、客に話しかけるミッシェル。

トロワグロがこだわる食材の数々が紹介される。
山羊のチーズ、有機栽培の野菜・・・

そして、ディナータイム。
ランチよりさらに多種多様なメニューとワイン。次々と入るオーダーを、堂々と采配するセザールと、綿密にサポートするミッシェル・・・


家族で始めたレストランが創業以来94年間、なぜ変わらず愛され続けてきたのかの秘密に迫る4時間。あっという間でした。
3代目ミッシェルは、70年代末、祖母マリー=ピエールとともに料理の世界を巡る旅に出て、その中でも気に入ったのが日本。会話の中に、「醤油」「しそ」といった単語も飛び出します。客との会話の中でも日本での思い出話を披露しています。2006年、東京にキュイジーヌ・ミッシェル・トロワグロをオープンさせ、日本への愛着を現実にしています。
思えば、かつて小田急百貨店新宿店8階に「カフェ トロワグロ」がありました。ミッシェル・トロワグロ監修のカフェでした。お高くて入ったことはありませんが、地下の食品売り場にあった「ブティック・トロワグロ」のパンコーナーには時々行きました。それこそ、亡き父は、ここの食パンがお気に入りで、冷凍庫にはいつも在庫を欠かすことはありませんでした。6枚切りがない時には、新着のものをわざわざ切ってもらうほど。有料になってからも、父は手提げの紙袋とプラスチック袋を必ず頼んでいたので、今も家にはトロワグロの紙袋が山のように残っています。お店の名前がTroisgroとしか書いてなくて、どう読んでいいのかと悩んだのも懐かしい思い出です。
ブティック・トロワグロは、小田急百貨店新宿店の閉店・ハルクへの移転に伴い、2022年10月2日に閉店。新しく出来る小田急百貨店に復帰してほしいものです。(咲)



第58回全米映画批評家協会賞 ノンフィクション映画賞 受賞
第89回ニューヨーク映画批評家協会賞 ノンフィクション映画賞受賞
第49回ロサンゼルス映画批評家協会賞 ドキュメンタリー映画賞受賞 他

2023年/アメリカ/フランス語・英語/240分/ビスタ/モノラル
日本語字幕:丸山垂穂
配給・宣伝:セテラ・インターナショナル
公式サイト:https://www.shifuku-troisgros.com/
★2024年8月23日(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開.



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ポライト・ソサエティ(原題:Polite Society)

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監督・脚本:ニダ・マンズール
出演:プリヤ・カンサラ(リア)、リトゥ・アリヤ(リーナ)、アクシャイ・カンナ(サリナ)、セラフィーナ・ベー(クララ)、アラ・ブロッコレリ(アルバ)

ロンドンで暮らす女子高校生リアはアクション映画が大好き、夢はスタントウーマンになること。学校では変わり者扱いで、両親も将来を心配している。唯一理解してくれるのは、姉のリーナだけ。リアのYouTubeチャンネルのビデオ制作にも協力を惜しまない。
リーナは芸術家を目指していたが、両親のすすめでお見合いに出かけた。相手は大富豪の息子でプレイボーイ、まさかあの姉が恋に落ちるとは!憤懣やるかたないリアだったが、愛する姉が幸せになるならと自分を納得させる。しかし、一族に不審な点を見つけて独自に調査を開始すると、とんでもない陰謀が隠されていた!リアは友人たちと結婚式を阻止するべく立ち上がる!!

パキスタン系イギリス人(3世代目)であるマンズール監督は、脚本も担当して自分が一番見たかった「南アジア系の10代の女の子がアクションヒーローになる」映画を作り上げました。リアも友人たちもユニークでクール、これまで脇役に甘んじていた彼女たちが物語の中心になって溜飲がさがること請け合いです。姉のお見合い相手の富豪一家はひとくせもふたくせもある人たち。リアが彼らに果敢に挑む攻防がみものです。家族の愛情、シスターフッドのほか、高校でのヒエラルキー、家父長制など社会のしがらみももりこんだ脚本は、英国インディペンデント映画賞最優秀新人脚本家賞を受賞しました。音楽がまた絶妙のチョイスで(HPで出だしが聞けます)、浅川マキさんの「ちっちゃな時から」がかかったときはびっくり&内心で拍手。
衣装がご覧のとおり、すばらしくゴージャス!カンフー服でなく、このビーズや刺繍いっぱいの重そうな民族衣装で戦う姉妹たちの雄姿を見よ!(白)


2023年/イギリス/カラー/104分
配給:トランスフォーマー
(C)2022 Focus Features LLC. All rights reserved.
https://www.transformer.co.jp/m/politesociety/
★2024年8月日(金)新宿ピカデリー、グランドシネマサンシャイン池袋、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開

posted by shiraishi at 10:43| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

壁越しの彼女  原題:빈틈없는 사이(隙間のない関係) 英題:My Worst Neighbour

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監督:イ・ウチョル
出演:イ・ジフン(スンジン)、ハン・スンヨン(ラニ)、コ・ギュピル(ジウ)、キム・ユンソン(ユンソン)、イ・ユジュン(ジェヨン)

スンジンは歌手になる夢のためオーディションを控えている。幼馴染たちと探して見つけた家賃格安の部屋に引っ越してきた。夜になってどこからか聞こえてくる女性の泣き声・・・。強がりながらも怖くてたまらないスンジン。
これは壁が薄くて物音がつつぬけの家のせいで悩んだ隣室のラニが考えた苦肉の策。これまでさまざまな方法で隣人を追い出してきたのだった。しかしスンジンは簡単に追い出されない。奇想天外な騒音バトルの末に、両方が飲める条件を考え出す。音を出すときは4時間ずつ交代制にすることにした。ラニは名前も顔も明かさない。スンジンは壁越しに聞こえる音でラニを想像するのが楽しくなってきた。

スンジン役のイ・ジフンは5月公開の『アンダー・ユア・ベッド』に孤独な男性役で主演していました。ラニ役のスンヨンさんはガールズグループKARAのメンバー。かつての日々も今の女優として活躍する今につながっています。
2人の攻防がちょっと長い気がしましたが、これがあったからこその和解の嬉しさがあるといえば、あるわけです。スンジンの幼馴染たち、ラニの姉や因縁の上司も面白い配役で、別建てのドラマにもできそうです。(白)


ラニはフィギュアのデザイナーで、様々な工具を駆使して、自分の思い描くフィギュアを作り上げるのですが、その腕前はたいしたもの。そして、その工具の大音量でスンジンに対抗するのです。 このフィギュアが、重要な役どころで登場して笑わせてくれます。
壁一つで繋がっている建物なのですが、スンジンが実際に会ってみようと、入口を探すのですが、見つかりません。上空から見た風景が映し出されるのですが、とてもとても行きつけない構造。ほんとに、こんな建物あるのかしら? (咲)



2023年/韓国/カラー/112分
配給:クロックワークス
(C)2023 Galleon Entertainment Co., Ltd All rights reserved
https://klockworx.com/movies/neighbor/
★2024年8月23日(金)ほか全国ロードショー

posted by shiraishi at 10:02| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年08月16日

エターナルメモリー(原題:LA MEMORIA INFINITA)

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監督:マイテ・アルベルディ(『83歳のやさしいスパイ』)
プロデューサー:パブロ・ラライン(『スペンサー ダイアナの決意』)
出演:パウリナ・ウルティア、アウグスト・ゴンゴラ
 
夫のアウグスト・ゴンゴラは著名なジャーナリスト。妻のパウリナ・ウルティアは国民的女優であり、チリで最初の文化大臣をつとめた女性。2人は結婚して20年以上になった。古い家を自分たちでリフォームして心地よく蘇らせ、自然の中で日々を丁寧に幸せに過ごしてきた。ところが、アウグストがアルツハイマーを患い、少しずつ記憶を失っていく。最愛の妻パウリナとの思い出さえも消えはじめる――。

最愛の人から「あなたは誰?」と言われたときの衝撃。経験はないけれど、大きいでしょうね。長寿社会の今、アルツハイマーになる方、そう診断される方が増えていくでしょう。このドキュメンタリーでは、当事者と伴侶がそれに対処していくのかが見られます。本人は記憶が失われていくこと、できないことが増えているのに気がつくことがあります。そのときに優しく受け止めてもらえたらどんなにか安心できるでしょう。パウリナの葛藤や寂しさもあるはずですが、深い愛情で支え続けます。経済状態や気持ちの余裕のあるなしが影響しますので、同じにはできなくとも、とてもいいヒントになります。
マイテ・アルベルディ監督が4年間にわたって2人に同行して撮影したものに、2人が撮影していたプライベート映像を交えて心温まるドキュメンタリーに仕上げました。(白)


サンダンス映画祭ワールド・シネマ・ドキュメンタリー部門審査員大賞受賞
第73回ベルリン国際映画祭のパノラマ部門出品
アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞ノミネート


映画を観る前に、アウグスト・ゴンゴラが、1973年から1990年までのピノチェト独裁政権を生き抜いた人物であることに、まず興味を持ちました。ところが観終わってみると、優しく見つめあい微笑む二人のことしか記憶に残らなくて、そんなはずは・・・と、もう一度、見直してみました。ちゃんとピノチェト独裁政権に苦しい思いをしたことが描かれていました。それを吹き飛ばすくらい、二人の微笑みに癒されたのだと思いました。
アウグストが経験したピノチェト独裁政権時代のこと・・・
親友の大学教授が誘拐され銃殺されたことをアルゼンチンの新聞で知った時の心を引き裂かれる思い・・・  あの時代、姿を消した人たちは、その死さえ表に出されなかったのです。アウグスト・ゴンゴラは、独裁政権時代、主要メディアが事実を報じなかった中、国内の出来事を内密で扱うニュース報道「テレアナリシス(Teleanalisis)」の一員として、仲間のジャーナリストと街に出て、起きていることすべてを記録して、テープを秘密裏に全国に配布していたのです。
アウグストは記憶が薄れていく中で、「6年がかりで書いた大切な本」を大事に抱えています。1973年6月から1983年5月までに起こった出来事を記録した本。抵抗した市民たちの多くが殺され、子どもたちもが犠牲になった時代。「ピノチェト、軍部よ、覚えてるよ」とアウグスト。
1984年の若い時のアウグストの映像が出てきて、幼い子どもたちに「ピノチェトをどう思う?」と聞いていて、子どもたちはどう答えたのかしらと。
そして、妻のパウリナ・ウルティアは国民的女優ですが、チリ初の女性大統領を務めたミシェル・バチェレのもと、2006年から2010年にかけて、チリ人女性初となるチリ国家文化・芸術審議会議長に就任しています。1983年生まれの彼女は、ピノチェト独裁政権時代にはまだ幼かったので、それこそ、「ピノチェトをどう思う?」と聞かれたら、どう答えたでしょう・・・
1952年1月2日生まれのアウグスト・ゴンゴラは、2023年5月19日ご逝去。
私とあまり変わらない年代のアウグストがアルツハイマー型認知症になり、亡くなられてしまったことに、ちょっと複雑な思いです。(咲)



2023年/チリ/スペイン語/85分
後援:インスティトゥト・セルバンテス東京  
提供:シンカ、シャ・ラ・ラ・カンパニー  
配給:シンカ
©2023 Viacom International Inc. All Rights Reserved.
https://synca.jp/eternalmemory/
★2024年8月23日(金)新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国公開
posted by shiraishi at 01:10| Comment(0) | チリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

心平、

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監督:山城達郎
脚本:竹浪春花
撮影:藤田朋則
音楽:宇波拓
出演:奥野瑛太(大村心平)、芦原優愛(大村いちご)、下元史朗(大村一平)、河屋秀俊(田中春男)、小林リュージュ(田中満)、川瀬陽太(田口省吾)、影山祐子(渡辺由香)

2014年夏、福島県のとある村。心平は自転車でぐるぐる回っている。兼業農家だった父を手伝って暮らしていたが、2011年の東日本大震災で、農業ができなくなってしまい、ほかの仕事についても長続きしない。妹のいちごは子供の頃から兄と通っている天文台に勤め、兄の仕事を探している。父は軽度の知的障害のある心平は家にいればいいという。母が出て行って酒に逃げる父と、働かない兄のために家事を担うのにもううんざりしている。
そんなときに、近所の住民が避難中の空き家で頻発している空き巣は心平の仕業らしい、と聞いて驚く。

山城達郎監督がロケハンのために福島中を橋まわり、地元の協力を得て実在の空き家などでオールロケをしました。そんな背景でくりひろげられる原発事故を境に、いきづまってしまった一家族のお話です。もっと深刻にもなりそうですが、のほほんとしている心平の好きなものがちりばめられているせいか、息がつけます。
心平演じる奥野瑛太さんは『SR サイタマノラッパー』で映画デビューして以来、あちこちで見かけます。長身ではっきりした目鼻立ちのせいか、印象に残るんです。『死体の人』ではこだわりの役者役での主演。今回の何も考えていないような心平を、やはり慎重にこだわりぬいて演じたようです。2014年の設定ですが、10年たった今あの家族が福島で暮らしていそうな気がする作品。心平くんいちごさん、元気でしょうか。(白)


2023年/日本/カラー/シネスコ/105分
配給:インターフィルム
©冒険王/山城達郎
公式サイト:https://shinpei.jp/
X:@shinpei_movie
ハシュタグ:#心平
★2024年8月17日(土)新宿K’s cinemaほか全国順次ロードショー

posted by shiraishi at 00:57| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年08月15日

助産師たちの夜が明ける  原題:Sages-femmes 英題:MIDWIVES

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監督:レア・フェネール(『愛について、ある土曜日の面会室』)
出演:エロイーズ・ジャンジョー/ミリエム・アケディウ

あるフランスの産科病棟。
5年間の修学を終えたルイーズとソフィアは、念願の助産師として働き始める。
そこは想像を超える壮絶な仕事場だった。何人もの担当を抱え走り回る助産師たち。ケアされるための十分な時間がないなか運ばれてくる緊急の産婦たち。患者の前で感傷的になるな、とルイーズがベテラン助産師ベネに厳しく叱責される一方、ソフィアは無事に出産を介助し周囲の信頼を勝ち得ていく。
そんなある日、心拍数モニターの故障から、ソフィアが担当した産婦が緊急帝王切開となり、赤ん坊は命の危険にさらされる。さらには産後行くあてのない移民母、未成年の出産、死産したカップル…
生と死が隣り合わせの現場で、二人は一人前になれるのだろうか・・・

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SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2023の折に来日したレア・フェネール監督(撮影:景山咲子)

日々奔走する助産師たちの姿をフィクションで描きながら、実際の出産シーンを何人もの方から承諾いただいて入れ込み、ドキュメンタリーかと見まごう作品。
ぎりぎりの人数で、無事出産できるよう的確に対応する切迫感溢れる姿を映し出していました。最後に重労働に見合わない低賃金に抗議する助産師たちの姿が出てきて、人の命を預かる重要な仕事に、適切な賃金を支払ってほしいものだと思いました。
また、助産師にも出産する母親にも、肌の色の様々な人たちがいて、現代のフランス社会が描き出されていました。
思えば、監督の初監督作『愛について、ある土曜日の面会室』(2009年、日本公開2012年)も、刑務所の面会日に訪れる様々な人々を描いた群像劇で、やはり移民や移民をルーツに持つ人たちが普通にフランス社会に溶け込んで暮らしているのが見てとれました。(咲)



SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2023『助産師たち』レア・フェネール監督 Q&A


第73回ベルリン国際映画祭パノラマ部門 審査員特別賞
SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2023 観客賞受賞


2023年/フランス/100分/カラー
日本版字幕:松岡葉子
医学用語字幕翻訳協力:田辺けい子
配給:パンドラ
公式サイト:https://pan-dora.co.jp/josanshitachi/
★2024年8月16日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開




posted by sakiko at 09:10| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年08月11日

侍タイムスリッパー

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(c)2024未来映画社

監督・脚本・撮影・編集:安田淳一 殺陣:清家一斗
出演:山口馬木也 冨家ノリマサ 沙倉ゆうの

幕末の侍が時代劇撮影所にタイムスリップして「斬られ役」に!?

時は幕末、京の夜。会津藩士・高坂新左衛門は、密命のターゲットである長州藩士と刃を交えた刹那、落雷により気を失う。眼を覚ますと、そこは現代の時代劇撮影所。行く先々で騒ぎを起こしながら、江戸幕府が140年前に滅んだと知り愕然となる新左衛門。一度は死を覚悟したものの、やがて「我が身を立てられるのはこれのみ」と、磨き上げた剣の腕だけを頼りに撮影所の門を叩く。「斬られ役」として生きていくために…。

本物の侍がタイムスリップした先は、よりによって時代劇の撮影現場。よもや劇であるとも最初は気が付かず、帰来の侍魂で自然に刀を抜く新左衛門。そこへ監督からNGの声がかかって、初めて、見慣れぬ服装の人たちに気付き、ここはどこ?とうろたえる姿が、とても自然。タイムスリップなんて有り得ないと思いながら、こんなことも有りかもと!
お寺に身を寄せ、気のいい住職夫婦と暮らし始める新左衛門。演じる山口馬木也さんが朴訥として和ませてくれます。何かと彼を気遣う助監督の山本優子役の沙倉ゆうのさんも素敵です。
今、ほんとに少なくなった時代劇。本作には昔ながらのチャンバラ場面も満載。
安田淳一監督の「自主映画で時代劇を撮る」という無謀な試みに「脚本がオモロいから」と東映京都撮影所が特別協力。コロナ禍に、わずか10名足らずのロケ隊で完成させた本作。いや~面白かったです。(咲)


2024年ファンタジア国際映画祭(カナダ・トロント)
オフィシャルセレクション選出 英題:『A SAMURAI IN TIME(時をかける侍)』

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全国拡大公開記念舞台挨拶 9月14日(オフィシャル画像)


2023年/日本/131分/カラー/1.85:1/ステレオ/DCP
撮影協力:東映京都撮影所
製作・配給:未来映画社
宣伝協力:プレイタイム
公式サイト https://www.samutai.net/
★2024年8月17日(土)より池袋シネマ・ロサにて公開

posted by sakiko at 11:56| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ぼくの家族と祖国の戦争(原題:Befrielsen)

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監督・脚本:アンダース・ウォルター
撮影:ラスムス・ハイゼ
出演:ピルウ・アスベック(ヤコブ)、カトリーヌ・グライス=ローゼンタール(リス)、モルテン・ヒー・アンデルセン(ビルク)、ラッセ・ピーター・ラーセン​(セアン)、ペーター・クルト(ハインリヒ)、ウルリッヒ・トムセン

第二次世界大戦末期のデンマーク。北欧の小さな国に、敗色濃厚となった隣国ドイツから20万人以上の難民が押し寄せてきた。占領下にあったので、従うしかなかった。フュン島リュスリンゲ市民大学の学長ヤコブがドイツ司令官から200人の難民を受け入れるよう命令が下る。ところが到着したのは子どもを含む500人以上で体育館を開放してもすし詰め状態となった。そのうえ現地のドイツ兵はひきあげてしまい、食料や薬品の供給もなかった。劣悪な環境でジフテリアが発生、窮状を見かねたヤコブの妻のリスは、子どもたちに手を差しのべるが、ドイツ占領下の人々には自国民を裏切る行為と写った。12歳の息子セアンは、ドイツを敵と信じて疑わず、危険なレジスタンス運動に関わろうとする。

日本と似た島国のデンマーク。唯一陸上で国境を接しているのが、ドイツです。大戦末期にはドイツの敵国であるソ連軍が南下してきたため、多くの難民が国境を越えて逃げてきました。地続きのヨーロッパ各国の戦争中の混乱はどうにも想像がつきません(こんなことを言うと沖縄の人に申し訳ない思いでいっぱいになります)。
ここでは戦地の闘いではなく、戦時下の人々がどんな風に暮らしていたのか、そこでたち現れる対立を描いています。実際にあったことを調査、収集し、この作品がフィクションとして生まれました。体験した人がいまも残っていること、今も戦火に追われる国があることもあってか、本国で多くの観客を集めたそうです。
国同士、人と人との間だけでなく、一人の中でも葛藤があり、ヤコブやリス、少年のセアンの心も揺れ動きます。人間として正しいことの規範となるのは主に宗教なのでしょうが、その宗教でさえ愛や許しではなく対立の元となったり、さらに憎悪をあおったりします。戦争は博愛の精神も道徳も倫理も蹴散らし、敵を憎むあまり報復として同じ所業に及びます。白か黒かの間には限りなくグレーが続くのに、どちらか選べと強要されます。
人は反省したことを忘れて同じことを繰り返します。何度も間違えてはまた悔やみます。どうしたらいいのか、正しいとは何なのかそれぞれが考えるしかないのでしょう。多数が正しいとは限りません。この映画は、観た人の心に小さな石つぶてを投げ込み大きな波を起こすはずです。広島、長崎の原爆忌、終戦の日を思いつつ、観ていただきたい作品。(白)


2023年/デンマーク/カラー/101分
配給:スターキャット
(C)2023 NORDISK FILM PRODUCTION A/S
★2024年8月16日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、YEBIS GARDEN CINEMAほか全国ロードショー
posted by shiraishi at 10:37| Comment(0) | 北欧 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

エア・ロック 海底緊急避難所(原題:No Way Up)

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監督:
監督:クラウディオ・ファエ
脚本:アンディ・メイソン
撮影:アンドリュー・ロジャー
出演:ソフィー・マッキントッシュ(エヴァ)、ウィル・アッテンボロー(カイル)、ジェレミアス・アムーア(ジェド)、マヌエル・パシフィック(ダニーロ)、グレース・ネトル(ローザ)、ジェームズ・キャロル・ジョーダン(ハンク)、フィリス・ローガン(マーディ)、コルム・ミーニイ(ブランドン)

大型旅客機は南国メキシコのリゾート地・カボへと向かっている。州知事の娘・エヴァは恋人ジェドと友人カイルとの卒業旅行、お目付け役のブランドンもついてきたが彼がいると安心できる。10歳のローザは大好きな祖父ハンクと祖母マーディとの3人旅行、お気に入りのテディベアも一緒だ。CAのダニーロの夢は彼氏との同性婚、いじってきた乗客のカイルに一矢報いてやった。
それぞれの夢を乗せての飛行中、エンジンに鳥が激突して機体は高度2万フィートから、海へと墜落する。機体は大破したが、海底の岩場にとどまった。生き残ったのはエヴァとローザを含む僅か7名のみ。生き延びられる場所は機内のエア・ロックただ一カ所、この空間で救助を待つことしかできない。

鳥が原因の航空機事故だけでもパニックを起こすには十分なのに、海中に墜落してしまいます。そこにはサメがうようよ。生き残った人間たちは、今は呼吸のできる空間にいますがそのうち酸素がつきてしまうでしょう。壊れて浸水した機内にいつまでも電気がつくのはなぜ?と素朴な疑問がわきますが、明るくないと見えないので無視しましょう。
事故の信号が届いて捜索が始まりますが、沈没した機体を探すのは容易ではありません。機内と外の状態を交互に観せられる観客は休む暇などなく、ハラハラと気をもむことになります。航空機と鳥の事故は実際多いようで、大半は目的地まで無事に飛行できるようですが、まれに大事故につながることも。こればかりは当たることのないように願っています。
これまでの映画と違って、女性の役割が多いんです。ここぞというときに大切なセリフを言ったり、率先して行動したり。それなりの背景は持っているものの、ちょっと嬉しいストーリーでした。(白)


2023年/イギリス/カラー/91分
配給:ギャガ
(C)NWUP Limited 2023
https://gaga.ne.jp/airlock/
★2024年8月16日(金)新宿ピカデリーほか全国ロードショー

posted by shiraishi at 10:35| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ねこのガーフィールド(原題:The Garfield Movie)

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監督:マーク・ディンダル
原作:ジム・デイビス
声の出演:クリス・プラッツ/山里亮太(ガーフィールド)、ハンナ・ワディンガム/MEGUMI (ジンクス)、ニコラス・ホルト/山路和弘(ジョン)、サミュエル・L・ジャクソン/山路和弘(ヴィック)、ヴィング・レイムス/磯部勉(オットー)、ブレット・ゴールドスタイン/立木文彦(ローランド)、ボウエン・ヤン/関智一(ノーラン)、スヌープ・ドッグ/木村昴(モーリス)

飼主のジョンに溺愛されて、“幸せ太り”な家ねこのガーフィールド。食べることが大好きで、月曜日とお風呂は大嫌い!冷蔵庫が空になったら、ジョンのカードでネットショッピング。お取り寄せしたものがすぐ届くなんて便利な時代だ。しかし、そんな平和な日々が乱された!生き別れた父さんねこのヴィックが突然現れて「悪いねこに追われている!助けて!」と言うのだ。ガーフィールドは親友の犬オーディと一緒に居心地のいい家から飛び出すことになってしまった。

原作は1978年から新聞に連載されて今も継続中の漫画です。ジム・デイビス氏は1945年生まれで79歳です。いまだ現役連載中とはシニアの星ですね。原作は日本でも出版されていたようですが、書店で探せず図書館にはなくて見ていません。今回のアニメのガーフィールドの対象はお子様中心らしいので、全体に可愛らしくなっています。飼い主のジョンはカードで爆買いされても怒りません。甘々です。ちゃんと叱ってもらいたいです。
ガーフィールドは子ねこのころから父さんには会っていないので、2匹の間には溝が横たわっています。悪いねこの登場は2匹とどう関係していくのか、2匹の溝は狭まっていくんでしょうか?どたばた追っかけっこもあり、親子のしんみりもあり、初めてガーフィールドに会う子どもたちも満足するのではないかしら。(白)


2024年/アメリカ・イギリス・香港合作/カラー/101分
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

https://www.garfield-movie.jp/
★2024年8月16日(金)ほか全国ロードショー

posted by shiraishi at 09:59| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年08月10日

ニューノーマル(原題:英語題:NEW NORMAL)

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監督・脚本:チョン・ボムシク
撮影:キム・ヨンミン
音楽:ユンサン
出演:チェ・ジウ(ヒョンジョン)、イ・ユミ(ヒョンス)、チェ・ミンホ(SHINee)(フン)、ピョ・ジフン(Block B)(ギジン)、ハ・ダイン(ヨンジン)、チョン・ドンウォン(スンジン)

マンションで一人住まいのヒョンジュンの部屋に、火災報知器の点検だと男がやってくる。ずかずかと入り込み、なめ回すようにヒョンジュンを見てなかなか帰らない。デートアプリで待ち合わせをしているヒョンス。顔を知らないままやりとりをしていると、現れたのは思いがけない相手だった。

テイストの違う6話からなるオムニバス。韓国ホラーには血みどろのシーンや、いきなりの音や叫び声に驚かされてきましたが、これはありえない非日常ではなく、自分がその中にいても違和感のない日常。だから余計にじんわり怖いです。
オムニバスのトップバッターはなんとお久しぶりのチェ・ジウ。2002年のテレビドラマ「冬のソナタ」にヨン様ことペ・ヨンジュンと主演。日本に韓国ドラマブームを巻き起こしました。あの笑顔や涙目が記憶にある人には、とても意外に見えるかもしれません。
お年寄りに親切な言葉をかけた高校生、マッチングアプリで彼や彼女を探す、縁を信じてみる、隣人にほれ込みすぎてストーカー化、ストレス満タンのコンビニ店員、登場人物が少しずつ関わりあっているのがわかる編集です。音楽がまた絶妙です。
ラストに登場人物が一人で食事をしている「一人飯」シーンがあります。コロナ禍でそうせざるを得なかった日を思い出します。いまやマスクも一人飯も普通になってしまいました。どうかストレスをため過ぎないように。(白)


2023年/日本/カラー/113分
配給:AMGエンタテインメント
(C)2023 UNPA STUDIOS.ALL RIGHTS RESERVED.
https://newnormal-movie.jp/
★2024年8月16日(金)より全国ロードショー

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2024年08月07日

デビルクイーン   原題:A RAINHA DIABA

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監督・脚本:アントニオ・カルロス・ダ・フォントウラ
出演:ミルトン・ゴンサルヴェス、オデッチ・ララ、ステパン・ネルセシアン、ネルソン・シャヴィエル ほか

1973年ブラジル、軍事独裁政権下に誕生した伝説のクィア・ギャング映画

リオデジャネイロの裏社会を牛耳るデビルクイーン。ピンクのバスローブを羽織り、ヴィヴィッドな色のアイシャドウで彩った目で売春宿の奥の部屋から部下のギャングたちを監視し、裏切り者は容赦なく切り裂き、恐怖を植え付けている。ある日ハンサムなお気に入りが警察に追われていることを知ると、右腕であるカチトゥに、キャバレーシンガーのイザのヒモで、世間知らずのべレコをスケープゴートとして警察に差し出すよう指示する。一方で、オカマのデビルクイーンがボスとして君臨するのを良しとしない者たちが手を組んでデビルの恐怖政治を終わらせようとしていた・・・

デビルクイーンを演じたブラジルの伝説的俳優ミルトン・ゴンサルヴェスの迫力が半端ないです。まさに裏社会に君臨する悪魔のような女王。一方で、ブラジルにおける黒人解放運動の活動家でもあった方。2022年にご逝去されています。
歌手のヒモでデビルクイーンを密かに倒そうとするベレコを演じたステパン・ネルセシアンはとても美男。『オルフェ』(1998 年、カルロス・ディエギス監督)にも出ていたそうです。
そして、ベレコを愛するキャバレーシンガーのイザを演じたオデッチ・ララは、映画製作当時、フォントウラ監督の奥様だった方。
1964 年にクーデタで政権を握った軍部が、文化活動にも介入し、厳しい検閲を行なった中で、ギャング、同性愛者、ドラァグクイーン、娼婦など、軍事独裁政権下のブラジルで最も阻害された人々を扱った本作が、よく検閲を潜り抜けたと驚きます。強烈なサウンドやサイケデリックな色が、物語をさらにぶっ飛んだものにしていて、しばらく忘れられそうにないです。(咲)


リオデジャネイロの裏社会を描いた50年前(1973)の作品のデジタルリマスター版とのこと。クィア・ギャング映画なるジャンル名まで。ここはリオデジャネイロのファベーラの一角なのだろうか。混沌とした社会が出てくるけど、最後はこうなるの?みたいな終わり方だった。救いのある世界ではない。
私がブラジルのノワール映画を初めて観たのは20年くらい前だったが、あまりに暴力的で冷酷な仕打ちの連続でびっくりした記憶がある。その後、いくつかのブラジルのノワール映画を観てもそういう印象を受けたけど、50年も前のこの映画ですでにそういう要素があったんだ。ブラジルの現実社会が反映されているのだろう。それにしても同性愛者や、ドラァグクイーンが、このように出てくる映画が50年も前にブラジルに存在していたとは。ブラジルでは1964年から1985年まで軍事政権下、その間に作られた映画で、しかも公開されてヒット作だったというのに、もっとびっくり。今のブラジルは、このころよりは暴力に支配されない社会になっているのだろうか。かつてブラジルに移住したいと思っていた私としては、とても気になる(暁)。

◆製作から50年の節目となる2023年に制作された4Kレストア版で日本初公開

1973年/ブラジル/100分/カラー
字幕翻訳:原田りえ
配給:ALFAZBET
公式サイト:https://alfazbetmovie.com/devilqueen
★2024年8月10日(土)より渋谷シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開





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2024年08月04日

夜の外側 イタリアを震撼させた55日間   原題:Esterno note 英題:Exterior, Night

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(C)2022 The Apartment - Kavac Film - Arte France. All Rights Reserved.

監督・原案・脚本:マルコ・ベロッキオ
原案:ジョヴァンニ・ビアンコーニ、ニコラ・ルズアルディ
原案・脚本:ステファノ・ビセス
脚本:ルドヴィカ・ランポルディ、ダヴィデ・セリーノ
出演:ファブリツィオ・ジフーニ、マルゲリータ・ブイ、トニ・セルヴィッロ、ファウスト・ルッソ・アレジ、ダニエーラ・マッラ

赤い旅団によるアルド・モーロ元首相誘拐事件を6つの視点で描いた55日間

相次ぐテロリズムにより、イタリアが社会的、政治的混乱にあった「鉛の時代」。
1978年3月のある朝、戦後30年間にわたってイタリアの政権を握ってきたキリスト教民主党の党首で、元首相のアルド・モーロが、極左武装グループ「赤い旅団」に襲撃、誘拐される。
世界が注目し、イタリア中が恐怖に包まれたその日から、55日間の事件の真相を、アルド・モーロ自身、救出の陣頭指揮を執った内務大臣フランチェスコ・コッシーガ、モーロと旧知の仲である教皇パウロ6世、赤い旅団のメンバーであるアドリアーナ・ファランダ、そして妻であるエレオノーラ・モーロの視点から描く。

『夜よ、こんにちは』(03)で同事件を「赤い旅団」側から描いたマルコ・ベロッキオ監督が、「すでに語られた物語には戻らない」という自身のルールを破り、外側〈政府、法王、神父、警察、教授、妻、子供たち…、様々な立場で事件に関与した人々〉の視点を交えて、6エピソードで描いた一大巨編。

赤い旅団の視点で描いた『夜よ、こんにちは』では、ほとんどの場面が監禁された室内でした。 外側から描いた本作では、様々な場所で、様々な人たちが、アルド・モーロ元首相救出に動いたことが描かれます。前編(Ⅰ~Ⅲ)と後編(Ⅳ~Ⅵ)、各170分、休憩を挟みましたが、息を殺して一気に見入りました。
事件が結末を迎えるまでの55日間、イタリア全土がニュースを見守ったのを同じような思いで映画に入り込みました。当時の家族のお気持ちを思うとやるせないです。(咲)


2022年/イタリア/イタリア語・英語/340分(前編:170分/後編:170分/カラー/1.85:1/5.1ch  
字幕翻訳:岡本太郎
配給:ザジフィルムズ
公式サイト:https://www.zaziefilms.com/yorusoto/
★2024年8月9日(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国順次ロードショー


posted by sakiko at 18:50| Comment(0) | イタリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年08月03日

コンセント/同意(原題:Le consentement)

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監督・脚本:バネッサ・フィロ
脚本協力・原作:ヴァネッサ・スプリンゴラ
(『同意』内山奈緒美:訳/中央公論新社刊)
撮影:ギヨーム・シフマン
出演:キム・イジュラン(ヴァネッサ)、ジャン=ポール・ルーブ(ガブリエル・マツネフ)、レティシア・カスタ、エロディ・ブシェーズ

文学を愛する13 歳の少女ヴァネッサは、50歳の有名作家ガブリエル・マツネフと出会った。マツネフは自分が「小児性愛嗜好」であることを公表しており、その赤裸々な体験を文学作品として発表し高い評価を得ている著名人だった。ヴァネッサはマツネフの巧みな言葉や行動に支配されるが、それは愛されているからと思い込む。ヴァネッサが14 歳になるのを待ったマツネフは「同意」のうえ、性的関係を結ぶ。

新人のキム・イジュランがヴァネッサを演じています。老獪な小説家の手のひらの上で転がされるのを痛々しい思いで観つつ、だんだん腹がたってきます。周りの大人たちが彼の性癖を知りながら何もしないのは何なんだ?!やっていることは未成年者への性虐待ではないですか。なぜ逮捕されないのか不思議。マツネフが有名人だからか?その母親も娘をしっかり守ろうとはしません。
13か14の少女がたちうちできる相手ではなく、すっかり洗脳されているヴァネッサが目を覚ますのはすっと後です。ヴァネッサが成長するとマツネフの興味は薄れ、次の少女へと向かいます。
ヴァネッサ・スプリンゴラが、自分の体験を書いて発表するのに30数年かかっていますが、それだけ受けた傷は深かったのでしょう。演じたキムは20歳を過ぎていますが、それでも撮影中はダメージが大きかったようです。マツネフ役ジャン=ポール・ルーブはレクター博士をイメージしたとか。腹が立つのは俳優さんが上手かったということですね。
2020年1月にヴァネッサ・スプリンゴラ著「同意」が出版され、フランス文学界に激震が走ります。「寵児」ともてはやされ、芸術文化勲章を得ていたマツネフが文学で反撃されたのです。出版社がマツネフの書籍の販売を中止し、彼は行方をくらましました。
この映画はフランスの若い世代にヒットしたそうです。
日本でも「特別な世界だからと見ないふりでいたこと」が明るみに出ました。どんな世界だろうと、人を傷つけるのは”なし!”です。抗えない子どもならなおのこと。大人は子どもを、そして自分も守りましょう。(白)


2023年/フランス・ベルギー合作/カラー/118分/R15+
配給:クロックワークス
© 2023 MOANA FILMS – WINDY PRODUCTION - PANACHE PRODUCTIONS - LA COMPAGNIE CINEMATOGRAPHIQUE - FRANCE 2 CINEMA - LES FILMS DU MONSIEUR
https://klockworx.com/movies/consent/
★2024年8月2日(金)全国ロードショー
posted by shiraishi at 23:59| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

うんこと死体の復権

2024年8月3日(土)より ポレポレ東中野ほかにてロードショー ほか全国順次公開 
劇場情報 
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(C)2024「うんこと死体の復権」製作委員会

探検界のレジェンド・関野吉晴 初の監督作品
うんこと死体が地球を救う?

学生時代、アマゾン奥地の狩猟採集民マチゲンガ族を訪ねたのを皮切りに探検生活を始め、探検活動のために医師の免許まで取ったりという具合に、自然とヒトとの関係について考え続けてきた関野吉晴さん。
長年にわたる探検「グレートジャーニー」のTV放映で、有名になりましたが、その後もインドネシアから手作りの舟で沖縄まで航海したりと、今も探検を続けている。その「自然とヒトとの関係」から、この作品が作られた。

監督:関野吉晴 
ロデューサー:前田亜紀/大島新
撮影:松井孝行/船木光/前田亜紀 
編集:斉藤淳
出演:伊沢正名、高槻成紀、舘野鴻、宮崎学

アフリカで誕生した人類が南米最南端まで至った5万キロの足跡を動力を使わずに逆ルートで辿る「グレートジャーニー」を40代で始め、足掛け10年で踏破した関野吉晴(75)。アマゾン奥地で自然と共に生きる狩猟採集民族・マチゲンガ族と半世紀以上の親交を続ける関野さんは、自身を含め現代人が自然とどう共存していくべきかを常に考えていた。
「生きものと自然の循環」からヒトだけが外れ、さらに一方的な自然環境の破壊を繰り返していることに対し、「この地球で私たちが生き続けていくためにはどうしたらいいか」を考える場として、2015年から「地球永住計画」というプロジェクトを始めた。
そこで3人の賢人に出会った。自ら「糞土師」と名乗り、野糞をすることに頑なにこだわり、半世紀に渡る野糞人生を送っている写真家の伊沢正名さん。うんこから生き物と自然のリンクを考察する生態学者の高槻成紀さん。そして、死体喰いの生き物たちを執拗に観察する絵本作家の舘野鴻さん。3人の活動を通して、現代生活において不潔なものとされるうんこ、無きモノにされがちな死体を見つめると、無数の生き物たちが命を紡ぎ、循環の輪を繋いでいた。彼らの織りなす世界には、世の中の常識を覆す「持続可能な未来」のヒントが隠されていた…。 これは「いのちの循環をたどる旅」。

【関野吉晴監督からのメッセージ】 HPより
うんことか死体を食べるムシたちがいる。うんこ虫や死出虫(しでむし)、蝿、蛆虫(うじむし)など、嫌われ者、鼻つまみ者のチャンピオンだ。
多くの人は目を背けるが、この映画の主人公3人は、絶滅危惧種や頭がいいかわいい生き物にはとんと興味がなく、嫌われ者、鼻つまみ者の虫たちに金メダルを与えようと獅子奮迅の努力をしている。
この映画では、不潔だ、気持ち悪いと嫌われ、疎まれている存在に信じ難いほどに関心を抱き、執拗に観察し、絵を描き、論文を書く。或いは 50年間野糞をし続けるおじさんたちを追いかけていきます。
是非この映画を観て下さい。きっと、あなたの常識を覆します。
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関野吉晴監督 (C)2024「うんこと死体の復権」製作委員会


プロデューサーは、関野監督を敬愛する『なぜ君は総理大臣になれないのか』『国葬の日』『NO 選挙, NO LIFE』などを制作しているネツゲンの前田亜紀、大島新。地球を救う? 鼻つまみ者たちをめぐる循環の旅は果たしてどこにたどり着くのか。

この映画を観て、小学生の頃読んだ「ファーブル昆虫記」を思いだした。この本の中に「糞ころがし」と呼ばれる昆虫が出てきて、初めてこれを読んだときにはびっくりした。ファーブル昆虫記を調べてみたら、この「糞ころがし」の中に「センチコガネ」というのもいたらしい。まさにこの映画にも出ていた。60年近く前に見た本だけど、その頃も今も、自然の中では「SDGs」=「持続可能な社会を実現するための仕組み」が続いている。そのことに目を向けた映画を作った関野吉晴さん。
ちなみに、「糞ころがし」はエジプトのピラミッドなどに描かれた絵の中にも出てくる。古代エジプトでは「スカラベ」と言われ、古代エジプト人はスカラベを「聖なる甲虫」とあがめていたらしい。
そもそも小学校の頃からアマゾン流域に興味があり、中高生時代には「アマゾンに移住したい」と思っていた私は、関野さんが1970年代初めからアマゾンに通い、その写真集を出版したり、TV番組で放映されたりしたのを、いつも関心を持って見ていたし、写真展にはいつも通っていた。写真展で関野さんと話した時の印象は、朴訥とした話し方をする方で、決して雄弁ではない話し方に誠実さを感じた。
そうそう玉川上水が出て来たけど、小平市で生まれ育った私にとっては、玉川上水横の道は、小学校、中学校とも通学の時に通っていたし、とても懐かしかった。たぶんあのあたりは中学校の頃、クラブ活動の時に、練習の前に走っていたところだと思う。
私にとっては、この枠で宮崎学さんが出てきてびっくり。山岳写真をやっていた私にとっては、宮崎学さんと言えば、自分でカメラ改造し、山の中の獣道にカメラを設置し、それまで誰も撮っていなかったような動物の写真を撮ってきた人。山の中での撮影は、たくさんの動物たちの亡骸も見てきただろうから、そういう写真も撮っていたのでしょうね。
関野さんの冒険や、やってきたことは、毎回、とても興味深い。そして、この作品は、いつも「自然とともに暮らす人々の生活」を追い続けてきた探検家である関野さんの思いが詰まった作品。タイトルで避けてしまう人もいるかと思うけど(私はそうだった)、面白いのでぜひ観てほしい(暁)。


公式サイト
(2024年|日本|105分)
製作:ネツゲン/クリエイト21 配給:きろくびと

『うんこと死体の復権』ポレポレ東中野公開記念トークイベント
▶︎8/3(土)初日
12:00の回上映後: 関野吉晴監督、前田亜紀・大島新プロデューサー
14:30の回上映後: 伊沢正名さん(糞土師/本作出演)、関野吉晴監督

▶︎8/4(日)
12:00の回上映後:高槻成紀さん(保全生態学者/本作出演)、関野吉晴監督
14:30の回上映後:舘野鴻さん(絵本作家/本作出演)、関野吉晴監督

▶︎8/5(月)
17:50の回上映後:池田香代子さん(翻訳家)、大島新プロデューサー

▶︎8/6(火)
17:50の回上映後:湯澤規子さん(法政大学人間環境学部教授)、前田亜紀プロデューサー

▶︎8/7(水)
17:50の回上映後:鈴木おさむさん(元放送作家)、関野吉晴監督、大島新プロデューサー

▶︎8/8(木)
17:50の回上映後: 新井英樹さん(漫画家)、関野吉晴監督

▶︎8/9(金)
17:50の回上映後:プチ鹿島さん(時事芸人)、大島新プロデューサー
posted by akemi at 21:12| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする