2024年07月28日
ロイヤルホテル(原題:The Royal Hotel)
監督・脚本:キティ・グリーン
撮影:マイケル・レイサム
出演:ジュリア・ガーナー(ハンナ)、ジェシカ・ヘンウィック(リブ)、ヒューゴ・ウィーヴィング(ビリー)、トビー・ウォレス(マティ)
ハンナとリブの親友2人。旅行で訪れたオーストラリアで所持金が底をつき、ワーキング・ホリデーで紹介された田舎のパブで働くことになった。迎えの車で行っててみると、炭鉱以外なにもない田舎の荒れた土地。古いパブだけがポツンと建っていた。ちょうど彼女たちと入れ違いに出て行く従業員たちが乱痴気騒ぎ中で2人は仰天。お客は近くの炭鉱作業員の男たち。多少想像はしていたものの、パワハラ、セクハラものともしない荒くれ男たちばかりだった。集客のため、女の子は6~8週間で入れ替わる。それまでやっていけるのだろうか?
楽観的なリブは次第に店に溶け込んでいくが、ハンナは耐えられなくなる。
『アシスタント』(19)での監督・主演女優コンビが、再び職場におけるハラスメント問題を描きました。モデルとなった店は実際にあるそうですが、結末はフィクションで物議をかもしたそうです。そりゃそうでしょ。
おばちゃん目線で見ると、女の子2人でそんなところに行く方が間違ってる、と言いたくなります。行ってしまったから映画になったんですが。
オーナーは祖父や父が経営した店を継いだ三代目で、今やアル中。しっかり者のベテラン従業員で持っているような店です。やってくる様々なお客たちは描き分けられていると思うものの、ハラスメントの見本のようです。けれどもそこを変えたいとか、長く留まりたいとか思うほど魅力のある仕事でもありません。ぎりぎりまで頑張った2人を観る作品なのかしらん。
『アシスタント』は面白く観ましたが、これはなんだかモヤモヤしてしまいました。(白)
2023年/オーストラリア/カラー/91分
配給:アンプラグド
(C)2022 Hanna and Liv Holdings Pty. Ltd., Screen Australia, and Create NSW
https://unpfilm.com/royalhotel/
★2024年7月26日(金)より全国ロードショー
風が吹くとき 原題:When the Wind Blows
監督:ジミー・T・ムラカミ
原作・脚本:レイモンド・ブリッグズ
音楽:ロジャー・ウォーターズ
主題歌:デヴィッド・ボウイ「When The Wind Blows」
日本語版監督:大島渚
製作:ジョン・コーツ
製作総指揮:イエイン・ハーヴェイ
アニメーション:リチャード・フォードリー
美術・レイアウトデザイン:エロル・ブライアント
技術:ピーター・ターナー
プロダクション・コーディネーター:アン・ゴドール
特殊効果:スティーブン・ウェストン
声の出演: ジム:森繁久彌 ヒルダ:加藤治子
★日本語(吹替)版 リバイバル公開★
日本初公開:1987年7月25日
イギリスの田舎町で暮らすジムとヒルダの夫婦。2度の世界大戦を経験し、子供を育てあげ今は老境に差し掛かった二人。仕事をリタイアしたジムの楽しみは図書館で新聞を読むことだ。新たな世界戦争が起こると知ったジムは、政府のパンフレットに従って核シェルターを作り始める。ヒルダはそんなジムをちょっと冷ややかな目でみている。だが、その時はやってきた。爆弾が炸裂し、凄まじい熱と風が吹きすさぶ。すべてが瓦礫と化した中で、生き延びた二人は政府の教えにしたがってシェルターでの生活を始めるが…。
「スノーマン」や「さむがりやのサンタ」で知られる作家・イラストレーターのレイモンド・ブリッグズが、マンガのようなコマ割りスタイルで描いた同名の原作「風が吹くとき」(あすなろ書房刊)を、長崎に住む親戚を原爆で亡くした日系アメリカ人のジミー・T・ムラカミ(『スノーマン』)が監督。音楽を元ピンク・フロイドのロジャー・ウォーターズが手掛け、主題歌「When the Wind Blows」をデヴィッド・ボウイが歌っている。さらに『戦場のメリークリスマス』(1983)で生まれたボウイとの友情から、日本語(吹替)版を大島渚監督が担当。
今は天国にいらっしゃる森繁久彌さんと加藤治子さんが、吹替を担当されていて、お声が懐かしいです。 今も世界のあちこちで戦火が絶えませんが、日本もいつ巻き込まれるかわからない世の中です。 核戦争が起これば、地球は消滅の危機。 牧歌的な田園風景の広がる中にある一軒家で、一生懸命核シェルターの準備をするジムの姿を見ながら、虚しくなりました。生き延びても、大変な世界が待っていることも見せつけられました。戦争のない世界はいつ実現するのでしょう・・・ 今こそ観てほしい映画です。(咲)
1986年/イギリス/カラー/85分/1.33:1(スタンダード)/ステレオ/映倫G
提供:コンテンツ・ポテンシャル
後援:ブリティッシュ・カウンシル
配給:チャイルド・フィルム
配給協力・宣伝:プレイタイム
公式サイト:https://child-film.com/kazega_fukutoki/
★2024年8⽉2⽇(⾦)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開
2024年07月27日
ヴァタ ~箱あるいは体~
監督・脚本・編集:亀井岳
撮影:小野里昌哉 音楽:高橋琢哉
録音:ライヨ トキ
出演:フィ、ラドゥ、アルバン、オンジェニ、レマニンジ、サミー
マダガスカルの音楽と死生観に魅せられた日本人監督が、全編マダガスカルで撮影したロードムービー
マダガスカル南東部の小さな村。
この地では、亡くなった故人の遺骨を、故郷の村人が生まれ育った場所に持ち帰らなくてはいけない。長老が男たちを集め、出稼ぎの地で亡くなった少女ニリナの遺骨を持ち帰って来るよう伝える。その命を受け、ニリナの弟タンテリとザカ、スル、そして離れ小屋の親父の4人は、楽器を片手に片道2、3日かかる村へ旅に出る。
4人は途中、出稼ぎに行ったまま行方知れずの家族の消息を求めて旅するルカンガの名手・レマニンジに遭遇。
果たして4人は、無事ニリナの遺骨を故郷に持ち帰り、ニリナは“祖先”となれるのか。レマニンジは、家族を見つけ、長い旅を終えられるのか。
楽器は箱 その中には記憶がある
高校時代からマダガスカルの音楽に魅せられてきた亀井岳。旅と音楽をテーマに、ドキュメンタリーとドラマを融合させるスタイルで映画を監督してきた亀井は、2014年、2作目の『ギターマダガスカル』を完成させるも、撮影時にマダガスカルの南部で偶然出会った、遺骨を入れた箱を長距離に渡り徒歩で運ぶ人々のことが忘れられず、初の全編劇映画となる監督3作目もマダガスカルで製作することを決意。
音楽によって祖先と交わってきたマダガスカルの死生観を元に、家族を失った人々がその悲しみをどう乗り越えていくかという普遍的なテーマの映画を全編マダガスカルロケで、マダガスカル人のキャストのみで製作した。
村の長老に遺骨を運ぶよう命じられるタンテリとザカとスルの三人組は、『ギターマダガスカル』の出演者・トミノの一族の3人が演じた他、3人と旅をする離れ小屋の親父役は、監督が20歳位の時にすごく好きで聞いていたバンド「タリカ・サミー」のサミー、途中から合流するレマニンジ役は、マダガスカルの各地方を代表するミュージシャンを集めて結成されたNy Maragasy ORKESTRAのメンバーに選出され、一躍その存在を知らしめたアンタンルイ族のレマニンジが演じた。
SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2022で、国内コンペティション作品なのに、全編マダガスカルで撮影したとの解説に、俄然興味を持って観たのを思い出します。 手作りの、箱のような形の弦楽器が素朴で味わい深いです。故郷から離れた地で亡くなった肉親の遺骨を、故郷に埋葬したいという思いは、日本人にも通じるもの。いえ、全世界、同じでしょう。
自炊と野営の準備をして、徒歩の旅。途中で出会うユニークな音楽家。そして最後には亡き少女たちの霊と過ごす特別な夜。
素朴な音楽と共に遠いアフリカの島国マダガスカルに誘ってくれました。(咲)
亀井岳監督インタビュー 撮影:宮崎暁美
マダガスカルでの撮影のこと、音楽や食文化のことなど、未知の国マダガスカルのことをお伺いしました。
http://cineja-film-report.seesaa.net/article/504175272.html
★劇場公開記念イベント★大阪・東京開催!
【大阪】前作『ギターマダガスカル』上映&トーク
日時:7月28日(日)16時オープン 17時上映
料金:¥1,000円(1ドリンク込み)
上映:『ギターマダガスカル』(2014)
トーク:亀井岳(監督)×吉本秀純(音楽ライター)
場所:シェ・ドゥーブル
大阪府大阪市西区阿波座1丁目9−12
https://chef-doeuvre.jp/
【東京】ミュージシャン来日ライブ&トーク
日時:7月31日(水)19時オープン 20時開演
料金:¥1,000円+投げ銭
演奏:ジュスタン・バリ(マダガスカル)&マルク・シュミリエ(フランス)
DJ:AMA UU
トーク:亀井岳(監督)
場所:ワールドキッチン バオバブ
東京都武蔵野市吉祥寺南町2-4-6 B1F
TEL:0422-76-2430
https://wk-baobab.com/
SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2022 観客賞(長編部門)受賞
2022/日本、マダガスカル/85分/カラー/アメリカン・ビスタ/ステレオ
製作:亀井岳 櫻井文 スアスア
配給:FLYING IMAGE
公式サイト:https://vata-movie.com/
公式X: https://www.twitter.com/vatamovie
公式Facebook: https://www.facebook.com/VataMadagascar
公式Instagram:https://www.instagram.com/vata_movie
★2024年8月3日(土)より渋谷ユーロスペース、8月24日(土)より大阪・第七藝術劇場ほか、全国順次公開
2024年07月26日
このろくでもない世界で 原題:ファラン(オランダ) 화란 英題:Hopeless
監督・脚本:キム・チャンフン(初長編監督作品)
出演:ホン・サビン、ソン・ジュンギ、キム・ヒョンソ(BIBI)
ある地方の暴力がはびこる町。18歳のヨンギュ(ホン・サビン)は、継父からの暴力と貧乏にあえぐ日々。お金を貯め、いつか母とオランダに移住したいとかすかな希望を抱いている。ある日、継父のDVから義理の妹ハヤン(キム・ヒョンソ)を守るためヨンギュは暴力沙汰を起こして高校を停学、その上、示談金を求められる。助けてくれたのは、地元の犯罪組織のリーダー、チゴン(ソン・ジュンギ)だった。バイト先もクビになったヨンギュは、チゴンのもとで仕事という名の“盗み”を働き、チゴンの信頼も得るが、組織で生き残るためにますます危険な状況に陥っていく・・・
ソン・ジュンギが脚本に惚れ込み、チゴン役を熱望したことから、本作の企画が本格的に動き出したとのこと。いい人のイメージがどうしてもぬぐえないソン・ジュンギですが、生まれ育った環境から、世の中は地獄だと悟って自分なりの方式で生きているという設定を理解すれば、根はいい奴なのだと納得です。穏やかなのに、ソン・ジュンギの存在感は圧倒的です。こんなろくでもない世界に生まれ育ってしまったら、そんな処世術で生き抜くしかないのでしょうか・・・ ヨンギュは、皆が平等に暮らす国だと憧れてオランダに移住したいと思っているのですが、「そんな国があるかよ」と一括されます。確かに・・・ (咲)
第76回 カンヌ国際映画祭 「ある視点」部門正式出品
2023年/韓国/カラー/シネマスコープ/5.1ch
字幕翻訳:本田恵子
配給:ハピネットファントム・スタジオ
公式サイト:https://happinet-phantom.com/hopeless/
★2024年7月26日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほかにて全国公開
2024年07月25日
台北アフタースクール 原題:成功補習班 英題:After School
7月26日(金)よりシネマート新宿他、全国順次公開!
(C)2023 Drama Draft Dragon Film Production Co., Ltd.
監督が亡き恩師をモデルに描いた青春回顧録
監督:藍正龍(ラン・ジェンロン)
出演:詹懷雲(ジャン・ファイユン)、邱以太(チウ・イータイ)、巫建和(ウー・ジエンハー)、林奕嵐(シャーリーズ・ラム)、侯彥西(ホウ・イエンシー)
字幕:小木曽三希子/字幕協力: 東京国際映画祭
大人になって忘れていた、大切な“何か”を思い出す
監督は、台湾のドラマ「アウトサイダー〜闘魚〜」でブレイクした人気俳優ラン・ジェンロン。亡き恩師陳俊志(ミッキー・チェン)と監督との実話をもとに、懐かしい青春の日々を描いた。数々の映画やドラマへの出演で注目を浴びたラン監督が、初監督作『ぼくの人魚姫』に続き、メガホンを取った青春回想録。
1994年、台北の予備校「成功補習班」に通っていた3人組、チャン・ジェンハン、チェン・シャン、ワン・シャンハー。高校3年、大学入試まであと約1か月。成功補習班に代理講師が着任してくる。それが、彼らの人生を大きく変えることになるシャオジー先生との出会いだった。受験勉強という枠にとらわれない授業で、生徒たちに寄り添い、彼らの心を掴む。自分の信じる道を進み、自分らしく生きる先生と過ごすうちに、3人は自分自身と向き合い、自分を見つめ直していく。
イタズラ好きな彼らは予備校で「成功三剣士」と呼ばれた問題児。卒業後それぞれの道を歩んでいた3人は、入院中の恩師、シャオジー先生のお見舞いを機に久しぶりの再会を果たした。先生の言葉をきっかけにかつての予備校へ足を踏み入れると、そこに残された自らの青春に触れ、懐かしい日々が次々と蘇ってきた。
新進気鋭の俳優から実力派俳優まで多彩な俳優陣が集結。第36回東京国際映画祭(2023)ワールド・フォーカス部門に選出され(「成功補習班」というタイトル)、第25回台北映画祭クロージング作品として上映された。
公式HP
2023年/台湾/シネスコ/5.1ch/118分/中国語
ワールド・フォーカス台湾電影ルネッサンス2023
共催:台北駐日経済文化代表処 台湾文化センター
字幕協力: 東京国際映画祭/配給:ライツキューブ
(C)2023 Drama Draft Dragon Film Production Co., Ltd.
監督が亡き恩師をモデルに描いた青春回顧録
監督:藍正龍(ラン・ジェンロン)
出演:詹懷雲(ジャン・ファイユン)、邱以太(チウ・イータイ)、巫建和(ウー・ジエンハー)、林奕嵐(シャーリーズ・ラム)、侯彥西(ホウ・イエンシー)
字幕:小木曽三希子/字幕協力: 東京国際映画祭
大人になって忘れていた、大切な“何か”を思い出す
監督は、台湾のドラマ「アウトサイダー〜闘魚〜」でブレイクした人気俳優ラン・ジェンロン。亡き恩師陳俊志(ミッキー・チェン)と監督との実話をもとに、懐かしい青春の日々を描いた。数々の映画やドラマへの出演で注目を浴びたラン監督が、初監督作『ぼくの人魚姫』に続き、メガホンを取った青春回想録。
1994年、台北の予備校「成功補習班」に通っていた3人組、チャン・ジェンハン、チェン・シャン、ワン・シャンハー。高校3年、大学入試まであと約1か月。成功補習班に代理講師が着任してくる。それが、彼らの人生を大きく変えることになるシャオジー先生との出会いだった。受験勉強という枠にとらわれない授業で、生徒たちに寄り添い、彼らの心を掴む。自分の信じる道を進み、自分らしく生きる先生と過ごすうちに、3人は自分自身と向き合い、自分を見つめ直していく。
イタズラ好きな彼らは予備校で「成功三剣士」と呼ばれた問題児。卒業後それぞれの道を歩んでいた3人は、入院中の恩師、シャオジー先生のお見舞いを機に久しぶりの再会を果たした。先生の言葉をきっかけにかつての予備校へ足を踏み入れると、そこに残された自らの青春に触れ、懐かしい日々が次々と蘇ってきた。
新進気鋭の俳優から実力派俳優まで多彩な俳優陣が集結。第36回東京国際映画祭(2023)ワールド・フォーカス部門に選出され(「成功補習班」というタイトル)、第25回台北映画祭クロージング作品として上映された。
公式HP
2023年/台湾/シネスコ/5.1ch/118分/中国語
ワールド・フォーカス台湾電影ルネッサンス2023
共催:台北駐日経済文化代表処 台湾文化センター
字幕協力: 東京国際映画祭/配給:ライツキューブ
2024年07月23日
めくらやなぎと、眠る女
監督・脚本:ピエール・フォルデス
原作:村上春樹(「かえるくん、東京を救う」、「バースデイ・ガール」、「かいつぶり」、「ねじまき鳥と火曜日の女たち」、「UFOが釧路に降りる」、「めくらやなぎと、眠る女」)
声の出演 オリジナル版:ライアン・ボンマリート、ショシャーナ・ビルダー、マルセロ・アロヨ、スコット・ハンフリー、アーサー・ホールデン、ピエール・フォルデス
【日本語版】
声の出演:磯村勇斗、玄理、塚本晋也、古舘寛治、木竜麻生、川島鈴遥、梅谷祐成、岩瀬亮、内田慈、戸井勝海、平田満/柄本明
演出:深田晃司
翻訳協力:柴田元幸
音響監督:臼井勝
監修:ピエール・フォルデス
2011年の東京。東日本大震災から5日後、刻々と被害を伝えるテレビのニュースを見続けたキョウコは、置き手紙をのこして小村の元から姿を消した。妻の突然の失踪に呆然とする小村は、図らずも中身の知れない小箱を女性に届けるために北海道へと向かうことになる。
同じ頃のある晩、小村の同僚の片桐が家に帰ると、そこには2メートルもの巨大な「かえるくん」が彼を待ち受けていた。かえるくんは迫りくる次の地震から東京を救うため、こともあろうに控えめで臆病な片桐に助けを求めるのだった――。
めくらやなぎ、巨大なミミズ、謎の小箱、どこまでも続く暗い廊下――大地震の余波は遠い記憶や夢へと姿を変えて、小村とキョウコ、そして片桐の心に忍び込む。人生に行き詰まった彼らは本当の自分を取り戻すことができるのだろうか…。(公式サイトより)
海外にもファンの多い村上春樹氏。それなのに、私はなんだか苦手でちょっと読んでは進まず、ベストセラーさえ読了できていません。アニメーションになったこの作品が新潟の映画祭で上映されて拝見。初めてちゃんと最後まで観ました。
これはピエール・フォルデス監督が独立した短編を選んで、ゆるやかにつなげてできた作品です。たくさん読み込んでいないとできない作業です。日本のアニメを見慣れた目には、顔のしわやほうれい線などくっきり描かれているせいか、みんな中年以上に見えて、片桐など定年間近の人かと思っていました。後で年齢設定を見てあらまぁとびっくり。
出演者の中では「かえるくん」がお気に入りです。実際あの大きさで目の前に現れたら怪獣なみに驚くかと思いますが、なんだか知的で上品だし、不思議な力はあるしで実は王子様だったり?と妄想が拡がります。気にかけているだけで応援になって、東京を救ってくれたとは。これからもよろしくと三拝九拝したいくらい。妻に去られる小村は、呆然としながらも据え膳には手を出すし、片桐には少し明るい先がありそうだし、全然理解できてないのかもしれませんが気持ちよく見終えました。(白)
2022/フランス、ルクセンブルク、カナダ、オランダ合作/カラー/109分/
配給:ユーロスペース、インターフィルム、ニューディアー、レプロエンタテインメント
(C)2022 Cinema Defacto - Miyu Prodcutions - Doghouse Films - 9402-9238 Quebec inc. (micro_scope - Prodcutions l’unite centrale) - An Origianl Pictures - Studio Ma - Arte France Cinema - Auvergne-Rhone-Alpes Cinema
公式サイト: http://www.eurospace.co.jp/BWSW
公式SNS: X:@eurospace_d Instagram:@eurospace_distributio
★2024年7月26日(金)より全国ロードショー
2024年07月21日
幸せのイタリアーノ 原題:Corro da te
監督:リッカルド・ミラー二
出演:ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ、ミリアム・レオーネ、ピエトロ・セルモンティ、ヴァネッサ・スカレーラ、ピラール・フォリアティ、アンドレア・ペンナッキ、カルロ・デ・ルッジエーリ、ジュリオ・バーゼ、ピエラ・デッリ・エスポスティ(友情出演)、ミケーレ・プラチド(特別出演)
よこしまな“恋”は“嘘”のはじまり…
成功したスポーツシューズメーカーの経営者ジャンニは、独身で女たらしの49歳。ある日、亡き母のアパートで母の車椅子に座っていると、若く美しいアレッシアが引越しの挨拶にやってくる。彼を車椅子が必要な人だと勘違いした彼女から、実家での食事に招かれる。いそいそと出かけていくと、事故で車椅子が必要になった姉キアラを紹介される。アレッシアにはめられたと思いつつ、美しいヴァイオリニストのキアラと一夜を共にできるか仲間と賭けをする。健常者であることを隠して、車椅子でデートするジャンニ。やがて、障がいを受け入れ前向きに生きる彼女に本当に恋をしてしまう…。
「魅力的な女性をみたら、とにかく声をかける」がイタリア男性のイメージ。本作の主人公ジャンニは、まさにそんな男。ひょんなことから車椅子が必要な人と勘違いされてしまったジャンニが、今さら違うとも言えず、車椅子生活を装う姿が笑いを誘います。障がい者に対して、憐みの気持ちを持っていた彼が、障がいを持つ人も心は健常者と同じと気づく姿に、私も学ばされました。
フランス映画『パリ 嘘つきな恋』(18)のリメイクの本作。イタリアの風情もたっぷり描かれています。ジャンニのランニングコースに、ローマ南部のデヴェレ川沿いやサンタンジェロ城。キアラがヴァイオリンのソリストとしてオーケストラと共演するのは、トリノの古いオペラハウスの一つレッジョ劇場。
奇跡を求めてフランスのルルドに行く場面は、コロナ禍で本場での撮影は叶わず、トリノに作ったセットで撮ったとのこと。
原題のCorro da teは、「あなたのもとに駆けつける」という愛する人が自分を必要としていたら誰もが口にする言葉なのだとか。(咲)
★イタリア映画祭2023上映作品
★ナストロ・ダルジェント賞(イタリア映画記者組合賞)コメディ女優賞受賞
2022年/イタリア/イタリア語/113分/カラー/1:2.35/5.1ch
字幕:関口英子
配給:オンリー・ハーツ
後援:イタリア大使館/イタリア文化会館
公式サイト:http://cdt.onlyhearts.co.jp/
★2024年7月26日(金)よりシネスイッチ銀座他にて全国順次公開
帰って来たドラゴン 2Kリマスター版(原題:神龍小虎闖江湖 英題:CALL ME DRAGON)
製作・監督:ウー・シーユエン
(『死亡の塔』監督、『ドランクモンキー/酔拳』製作)
アクション監督:ブルース・リャン
主演:ブルース・リャン、倉田保昭、マン・ホイ、ウォン・ワンシー、ハン・クォツァイ、ディーン・セキ
清朝末期。麻薬や人身売買など、あらゆる犯罪と暴力が渦巻く悪の魔窟、金沙村(ゴールド・サンド・シティ)。悪辣なボス、イム・クンホーが支配するその街を目指す男がいた。巷にはびこる悪を懲らしめながら流浪の旅を続ける正義の好漢、その名もドラゴン。彼にはある目的があった。
旅の途中、ドラゴンは2人組の盗賊リトル・マウスとブラック・キャットに襲われる。鮮やかな機転と華麗なクンフー技でそれを退け、逆に2人の盗賊はドラゴンに弟子入りして旅を共にしていた。3人が金沙村に到着したころ、女格闘家イーグルと、非情な殺人空手の使い手ブラック・ジャガーもやってくる。チベットの寺院から盗まれた秘宝”シルバー・パール”を巡る争いが始まった。
倉田保昭さんが香港映画界に飛び込んで、お得意の空手で大活躍した50年前の作品。ブルース・リャンとの一騎打ちに香港の観客も驚愕したはずです。マスターネガの損傷により再上映やHD化が不可能といわれ、長らく幻の作品となっていましたが、監督のウー・シーユエンが「倉田保昭日本凱旋50周年」のため、現存する最良の99分完全版マスターから2K化して復活!!このたび劇場で公開することになりました。50年前ですから俳優さんみな若い!かっこいい!!
CGもワイヤーもなしのハードなアクションに刮目せよ!!
倉田保昭さんには12年前に取材させていただきました。出演作がちょうど100本になったときです。浦川留さんと一緒に倉田プロへお邪魔してお話を伺いました。2012年夏の85号本誌に3pの記事があります。取材後、いち香港映画ファンに戻ってサインをいただきました(いつもはしません)。今も現役で、新作を送り出すほどお元気なのが嬉しいです。
可愛いリトル・マウス役のマン・ホイ(孟海)は2023年に、今回出演シーンが復元されたディーン・セキ(石天)は2021年にそれぞれ病気で亡くなられていました(合掌)。映画館で若い彼らに再会してくださいませ。(白)
なんとも懐かしい!
2Kで復活した本作を観て、50年前に観ていたわけじゃないのに、真っ先にそう思いました。1980年代半ばあたりから観るようになった香港のカンフー映画。倉田保昭さんのお名前は、香港で活躍する日本人として轟いていました。今もお元気なのが嬉しいです。
チベットに近い金沙村での、秘宝の大きな真珠を巡る争奪戦。大勢の男たちの中で、女格闘家イーグルの活躍が光ります。ハチャメチャな中にユーモアもあって、あ~これぞかつての香港映画! 堪能しました。(咲)
1974年/香港/カラー/ビスタサイズ/DCP/99分
協賛:アートポートインベスト
提供:倉田プロモーション
配給:エデン
(c)1974SEASONAL FILM CORPORATION All Rights Reser
https://kuratadragon50.jp/
☆舞台挨拶をほぼ書き起こしました。こちらです。
☆最新作の短編も週替わりで併映します
『夢物語』(2023年・15分)
主演・製作総指揮:倉田保昭
出演・監督:中村浩二
田中平蔵は定年退職した元公務員。妻は数年前に旅立ち独り暮らし。最近、平蔵は自分が経験した事のない不思議な夢を見るようになる。ある日、平蔵は夢で大勢の忍者に襲われ・・・間一髪のところで目を覚ます。
『夢物語その2』(2024年・15分)
主演・製作総指揮:倉田保昭
昼寝をしていた老人が夢を見る。老人は孫と庭で遊んでいたが、孫は老人がトイレに行っている間に、何者かに連れ去られてしまう。老人は孫を助けるべく、命がけでアジトを捜し出し、格闘の末、孫を救い出す。
★2024年7月26日(金)新宿武蔵野館ほか全国順次公開
お隣さんはヒトラー? 原題:My Neighbor Adolf
監督:レオン・プルドフスキー
音楽:ウカシュ・タルゴシュ
出演:デヴィッド・ヘイマン、ウド・キア、オリヴィア・シルハヴィ
1960年、南米・コロンビア。人里離れた地に建つ2軒の古びた家。そのうちの1軒で暮らすポーランド系ユダヤ人のポルスキー。ホロコーストで家族を失い、ただ一人生き延びた彼にとって、妻が好きだった黒薔薇を育てるのが唯一の慰めだった。そんなある日、隣家にドイツ人のヘルツォークが越してくる。彼の飼い犬に黒薔薇をへし折られ、怒り心頭のポルスキーは文句を言いにいくが、間近で見た隣人は56歳で死んだはずのアドルフ・ヒトラーに酷似していた。ユダヤ人団体に出向いて隣人はヒトラーだと訴えるが信じてもらえない。カメラを購入し、証拠を掴もうと監視を始める。庭で絵を描く姿をみて、正体を暴こうと筆跡を手に入れようとしたことから、二人はチェスを指す仲になる。二人の距離が縮まったころ、ポルスキーはヘルツォークがヒトラーだと確信する場面を目撃してしまう…。
アルゼンチンで逃亡生活を続けていたアドルフ・アイヒマンが拘束されたという新聞記事が映し出されて、ヒトラーの南米逃亡説もほんとうかも?と思わせる導入部分が出色です。
敷地の境界線が間違っていて黒薔薇が植えてあるのは、隣家の敷地だといわれ、塀の位置が変えられてしまって、黒薔薇に水をやるには塀を越えなければならなくなるというあたりから、思わず笑わせられます。さらに、チェスを指したり、肖像画を描いてもらったりの仲になって、恨むべきヒトラーではと疑う人とそんな関係に?と。
ブラックユーモア満載ですが、戦争に翻弄された人たちの人生にほろりとさせられました。(咲)
2022年/イスラエル・ポーランド/英語・独語・スペイン語・ヘブライ語/96分/シネマスコープ/カラー/5.1ch
字幕翻訳:長澤達也.
配給:STAR CHANNEL MOVIES
公式サイト:https://hitler-movie.com/
★2024年7月26日(金)より新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座ほか全国公開
2024年07月20日
流麻溝十五号 原題:流麻溝十五號
2024年7月26日金)~ヒューマントラストシネマ有楽町・MOVIX昭島、シネマート新宿、アップリンク吉祥寺、ほか全国順次公開 他の上映館情報
民主化の道を歩み始めて37年―
女性政治犯を初めて扱った台湾映画
監督:周美玲(ゼロ・チョウ)
原作「流麻溝十五號:綠島女生分隊及其他」:曹欽榮(ツァオ・シンロン)
出演:余佩真(ユー・ペイチェン)、連俞涵(リエン・ユーハン)、徐麗雯(シュー・リーウェン)、徐韜(シュー・タオ)、莊岳(ジャン・ユエ)
脚本:周美玲、吳旻炫(ウー・ミンシュアン)
製作総指揮:姚文智(ヤオ・ウェンチー)
製作:張永昌(チャン・ヨンチャン)
主題歌:曹雅雯(ツァオ・ヤーウェン)
二二八事件、白色テロの時代を描いた
太平洋戦争後、日本統治が終わった台湾に、1949年、中国での共産党との戦いに敗れた蒋介石とともに台湾にやってきた国民党政府。やがて、二二八事件が起こり、恐怖政治下、戒厳令が敷かれ「白色テロ」の時代に。この時代、台湾南東岸の自然豊かな島・緑島には30年以上もの間、政治犯収容を目的とした教育施設と監獄が置かれていた。
1953年、自由を口にするもの、あるいはそうみなされた人たちが政治犯として逮捕される時代になっていった。政治的弾圧が続く中、罪を課せられた者は、思想改造および教育・更生のためということで緑島に収監されていた。
連行された者たちは名前ではなく番号で管理され、囚人として「新生訓導處」に監禁、重労働を課せられる日々を余儀なくされた。この「新生訓導處」は1951年から1965年まで設置された。
実話に基づく話から、3人の女性を元に、この島でのことが語られる。
絵を描くのが大好きな高校生余杏惠(ユー・シンホェイ)。子どもが生まれて間もなく投獄された正義感の強い看護師嚴水霞(イェン・シュェイシア)。妹を拷問から守るため自ら囚人になったダンサー陳萍(チェン・ピン)。拷問や処刑などもあり、次々と迫る不条理に対しても、台湾語、北京語、日本語など様々な言語を使いながら一日一日を生き延びようと助け合う人々。思想犯罪とは何なのか。考えることは罪なのか。これまで閉ざされていた歴史が問われる。
映画のタイトルとなった「流麻溝十五号(原題:流麻溝十五號)」とは身分も年齢も違う女性たちが収容されていた住所。戒厳令は1987年に解除されるまで38年続いた。
*白色テロ:1947年2月28日に台北で発生した「二・二八事件」以降、国民党政権が反体制派に対して行った政治的弾圧のこと
台湾での劇場公開に際して、宣伝活動・ポスプロ費などのために行われたクラウドファンディングでは、43日間で5,758名から支援を受け、約6,085万円(1,217万ニュー台湾ドル)の資金調達を達成。公開から1ヶ月余りで約10万人が劇場で本作を鑑賞。民主化の道を歩み始めて37年。台湾初の女性政治犯を扱った映画が日本公開される。
6人の被害者の口述をまとめた曹欽榮(ツァオ・シンロン)の本「流麻溝十五號:綠島女生分隊及其他」をベースにした物語。
監督は、これまで一貫して女性が主人公の映画を撮ってきた周美玲(ゼロ・チョウ)。2022年10月28日から台湾で公開され、興収4000万台湾ドルというヒット作。
公式サイト
2022年/112分/台湾/DCP/5.1ch
協力:臺灣電影公司 監修協力:江口洋子 日本語字幕:青井哲人+亭菲
後援:台北駐日経済文化代表処 台湾文化センター
配給:太秦
*参照 周美玲(ゼロ・チョウ)監督 以前のインタビュー記事
『花様~たゆたう想い~』(原題 花漾)
周美玲(ゼロ・チョウ)監督インタビュー
民主化の道を歩み始めて37年―
女性政治犯を初めて扱った台湾映画
監督:周美玲(ゼロ・チョウ)
原作「流麻溝十五號:綠島女生分隊及其他」:曹欽榮(ツァオ・シンロン)
出演:余佩真(ユー・ペイチェン)、連俞涵(リエン・ユーハン)、徐麗雯(シュー・リーウェン)、徐韜(シュー・タオ)、莊岳(ジャン・ユエ)
脚本:周美玲、吳旻炫(ウー・ミンシュアン)
製作総指揮:姚文智(ヤオ・ウェンチー)
製作:張永昌(チャン・ヨンチャン)
主題歌:曹雅雯(ツァオ・ヤーウェン)
二二八事件、白色テロの時代を描いた
太平洋戦争後、日本統治が終わった台湾に、1949年、中国での共産党との戦いに敗れた蒋介石とともに台湾にやってきた国民党政府。やがて、二二八事件が起こり、恐怖政治下、戒厳令が敷かれ「白色テロ」の時代に。この時代、台湾南東岸の自然豊かな島・緑島には30年以上もの間、政治犯収容を目的とした教育施設と監獄が置かれていた。
1953年、自由を口にするもの、あるいはそうみなされた人たちが政治犯として逮捕される時代になっていった。政治的弾圧が続く中、罪を課せられた者は、思想改造および教育・更生のためということで緑島に収監されていた。
連行された者たちは名前ではなく番号で管理され、囚人として「新生訓導處」に監禁、重労働を課せられる日々を余儀なくされた。この「新生訓導處」は1951年から1965年まで設置された。
実話に基づく話から、3人の女性を元に、この島でのことが語られる。
絵を描くのが大好きな高校生余杏惠(ユー・シンホェイ)。子どもが生まれて間もなく投獄された正義感の強い看護師嚴水霞(イェン・シュェイシア)。妹を拷問から守るため自ら囚人になったダンサー陳萍(チェン・ピン)。拷問や処刑などもあり、次々と迫る不条理に対しても、台湾語、北京語、日本語など様々な言語を使いながら一日一日を生き延びようと助け合う人々。思想犯罪とは何なのか。考えることは罪なのか。これまで閉ざされていた歴史が問われる。
映画のタイトルとなった「流麻溝十五号(原題:流麻溝十五號)」とは身分も年齢も違う女性たちが収容されていた住所。戒厳令は1987年に解除されるまで38年続いた。
*白色テロ:1947年2月28日に台北で発生した「二・二八事件」以降、国民党政権が反体制派に対して行った政治的弾圧のこと
台湾での劇場公開に際して、宣伝活動・ポスプロ費などのために行われたクラウドファンディングでは、43日間で5,758名から支援を受け、約6,085万円(1,217万ニュー台湾ドル)の資金調達を達成。公開から1ヶ月余りで約10万人が劇場で本作を鑑賞。民主化の道を歩み始めて37年。台湾初の女性政治犯を扱った映画が日本公開される。
6人の被害者の口述をまとめた曹欽榮(ツァオ・シンロン)の本「流麻溝十五號:綠島女生分隊及其他」をベースにした物語。
監督は、これまで一貫して女性が主人公の映画を撮ってきた周美玲(ゼロ・チョウ)。2022年10月28日から台湾で公開され、興収4000万台湾ドルというヒット作。
公式サイト
2022年/112分/台湾/DCP/5.1ch
協力:臺灣電影公司 監修協力:江口洋子 日本語字幕:青井哲人+亭菲
後援:台北駐日経済文化代表処 台湾文化センター
配給:太秦
*参照 周美玲(ゼロ・チョウ)監督 以前のインタビュー記事
『花様~たゆたう想い~』(原題 花漾)
周美玲(ゼロ・チョウ)監督インタビュー
2024年07月14日
台湾巨匠傑作選2024 ~台湾映画の傑物ワン・トン(王童)監督と台湾ニューシネマの監督たち~
2024年7月20日(土) ~ 8月30日(金) 新宿K’s cinemaほか順次開催!
スケジュールはこちら
毎年恒例になった「台湾巨匠傑作選」。今年は台湾ニューシネマの先駆けとして登場し、現在も活躍中のワン・トン(王童)を特集し開催されます。今回はワン・トン監督、台湾映画を世界に知らしめたホウ・シャオシェン(侯孝賢)監督、エドワード・ヤン(楊德昌)監督、チェン・クンホウ(陳坤厚)監督、≪第二次台湾ニューシネマ≫の旗手ツァイ・ミンリャン(蔡明亮)監督、チェン・ユーシュン(陳玉勲)監督の作品を特集。初公開2作品を含む、合計20作品が上映されます。
ワン・トン監督からのメッセージ
<台湾近代史三部作>が日本で上映されることになり、とても嬉しく思います。台湾映画や台湾文化を描いた映像作品が好きな多くの方に、この特集上映へお越しいただければと思います。なぜならこの三部作、時間軸的には日本統治時代の大正から昭和、そして現在の民国までを描いているからです。台湾にはどのような過去があり、台湾人がどのように生きてきたか、そして台湾と世界の交わり、とりわけ日本の統治により生まれた台湾と日本の関係には、憎しみも友情も…、さまざまな思いがあるのです。私たちはこの過程を見て、歴史が多くのことを教えてくれることを知ります。現代人は過去のあらゆる変化を次の世代に受け継いでいきます。平和に文化的に仲良く、共に歩んでいきましょう。なにより大切なのは、映像や言語、そして芸術でコミュニケーションすることです。ぜひ多くの皆さまにご鑑賞いただければ幸いです。
ワン・トン(王童)監督 プロフィール&フィルモグラフィ
1942年中国安徽省大和県生まれ。国立台湾芸術専科学校卒業後、中央電影でキン・フー監督の『残酷ドラゴン 血斗竜門の宿』(67)、『俠女』(70)等に美術スタッフとして参加、その後リー・シン(李行)監督、パイ・ジンルイ(白景瑞)監督らの下で美術を担当し高い評価を得る。
1981年『仮如我是真的』(If I Were for real・未)で監督デビュー、同作で第18回金馬奨最優秀作品賞、最優秀主演男優賞、最優秀改編脚本賞を獲得。代表作に『海を見つめる日(看海的日子)』、(83)『村と爆弾(稲草人)』(87)、『無言の丘(無言的山丘)』(92)など。『熱帯魚』(95)、『藍色夏恋』(02)プロデューサー。自身の監督作品のほか、100を超える作品で美術指導にあたる。2007年に台湾文芸界における最高栄誉賞である国家文芸賞を、2019年に金馬奨の名誉賞である終身成就奨を受賞。
「台湾巨匠傑作選2024 ~台湾映画の傑物ワン・トン(王童)監督と台湾ニューシネマの監督たち~」で上映される作品を紹介します。
≪上映作品/作品概要≫
≪ワン・トン監督/台湾近代史三部作≫
『村と爆弾』[デジタルリマスター版] ※劇場初公開
1987年/台湾/98分/台湾語、日本語 原題:稻草人
監督:ワン・トン
出演:チャン・ボーチョウ、ジョウ・シェンリー
★第24回金馬奨最優秀長編作品賞、最優秀監督賞、最優秀オリジナル脚本賞受賞
★第32回アジア太平洋映画祭最優秀作品賞、最優秀助演男優賞受賞
日本統治時代末期、太平洋戦争真っただ中の台湾。農村で暮らす小作人のアファとコウヅエの兄弟は家族とともに貧しい生活を送っていた。母親は耳が遠く、妹は夫を戦争で失って以来、精神を病んでいる。ある日、遠方から地主がやって来て、兄弟に田畑を製糖会社に売り払うと告げる。さらに追い打ちをかけるように日本人に一家の唯一の財産である牛が徴用されてしまう。翌日、村が米軍の空襲を受けるが、敵機が去った後、兄弟の畑に残されたのは一発の不発弾。上官から褒美をせしめようと、兄弟と村の巡査は隣町の駐在所へ不発弾を届けることにするが…。物言わぬ案山子を通して、日本による植民地政策のもと、不条理な状況に置かれた台湾の人々の強かな生き様や戦争の悲哀をユーモアたっぷりにテンポよく描いた。
『無言の丘』[デジタルリマスター版] ※劇場初公開
1992年/台湾/175分/台湾語、日本語 原題:無言的山丘
監督:ワン・トン
出演:ポン・チャチャ、ホアン・ピンユエン
★第29回金馬奨最優秀長編映画賞、最優秀監督賞、最優秀オリジナル脚本賞、最優秀美術設計賞、最優秀造型設計賞、最優秀観客賞受賞
★第38回アジア太平洋映画祭最優秀脚本賞、最優秀美術設計賞受賞
★第1回上海国際映画祭最優秀作品賞受賞
★第6回シンガポール国際映画祭最優秀主演女優賞、審査員特別賞受賞
大正時代末期~昭和初期、日本統治下の台湾。チュウとウェイの小作人兄弟は両親の葬儀費用のために地主と不当な長期労働契約を結ばされていた。ある日、ゴールドラッシュの噂を聞きつけたふたりは村を抜け出し金瓜石(キンカセキ)へ向かい、未亡人ズーの家に部屋を借りながら劣悪な環境のもと、日本人が管理する鉱山で金採掘に従事する。やがて兄のチュウは強かに生きるズーに、弟のウェイは九份(キュウフン)の娼館で下働きする琉球出身の富美子に惹かれ始めるが…。貧しい鉱夫の兄弟の視点で、日本人の経営する金瓜石鉱山における台湾人労働者の生活をリアルに描く。
『バナナパラダイス』[デジタルリマスター版]
1989年/台湾/148分/中国語、台湾語 原題:香蕉天堂
監督:ワン・トン
出演:ニウ・チェンザー、チャン・シー
★第26回金馬奨最優秀助演男優賞受賞、最優秀作品賞、最優秀主演男優賞、最優秀オリジナル脚本賞、最優秀衣装デザイン賞、最優秀録音賞ノミネート
1949年、幼馴染みのダーションを頼って国共内戦中の国民党軍に潜り込んだ青年メンシュアンは、寒風吹きすさぶ荒涼たる中国華北から、バナナが実る緑豊かな南国台湾へとたどり着く。その新天地で二人にスパイ容疑がかけられ、メンシュアンは命からがら逃げだす。途中、ある男の臨終に出くわしたメンシュアンは、その妻ユエシャンに彼女の夫に成りすまして仕事に就くことを持ちかけられる…。大陸から台湾に渡り、数奇な運命を辿る男の半生を綴る。日本人の知らない戦後台湾史を、ユーモアあふれるエピソードと奇想天外な展開で描き出す最高傑作!
≪ワン・トン監督プロデュース作品≫
『熱帯魚』[デジタルリストア版] ※特別上映
1995年/108分/台湾 原題:熱帯魚
監督:チェン・ユーシュン 出演:リン・ジャーホン、シー・チンルン、リン・チェンシン
★第48回ロカルノ国際映画祭青豹賞 ★第32回金馬奨最優秀脚本賞、最優秀助演女優賞
90年代台北。小学生のタウナンが誘拐される事件が発生。空想好きで落ちこぼれの中学生ツーチャンもひょんなことから同じ犯人に誘拐されてしまう。ところが主犯の男が交通事故であっけなく死に、困り果てた共犯のアケンは…。『1秒先の彼女』(20)のチェン・ユーシュン監督による傑作コメディ。
≪台湾ニューシネマの監督たち≫※製作年順
『風が踊る』[デジタルリマスター版]
1981年/92分/台湾 原題:風兒踢踏踩
監督:ホウ・シャオシェン
出演:フォン・フェイフェイ、ケニー・ビー、アンソニー・チェン
CMの撮影で澎湖島を訪れた女性カメラマン・シンホエは、事故で視力を失った青年チンタイと知り合う。その後ふたりは台北で偶然再会を果たすが…。1980年代初頭の、民主化へと向かいつつある戒厳令下の台湾社会を背景に、伝統的な家族観や結婚観と自由恋愛の間で揺れ動く自立した女性の心理を、澎湖島、台北、鹿谷を舞台にキャッチーな歌謡曲と共に、軽やかに描いたホウ監督初期作品。
『少年』[デジタルリマスター版]
監督:チェン・クンホウ
出演:チャン・チュンファン、ツイ・フーシェン、トゥオ・ツォンホア
★第20回金馬奨最優秀作品賞・最優秀監督賞・最優秀脚本賞受賞
1960年代台湾・淡水。未婚の母シウインは息子アジャのために年の離れた男性ターシュンと見合い結婚する。ターシュンは実の息子のようにアジャを可愛がるが、やがて弟がふたり生まれ、元々やんちゃだったアジャは中学生になる頃にはすっかり不良少年に。そんなある日、アジャの不注意から弟が事故に遭い…。ひとりの少年の成長譚を隣家の少女の視点で語る、のちにホウ・シャオシャオ監督作品で脚本を務める小説家朱天文(チュウ・ティエンウェン)の短編小説をチェン・クンホウ監督がホウ・シャオシェンらとともに映画化した、台湾ニューシネマの夜明けを代表する珠玉の名作。
『坊やの人形』
1983年/ 108分/台湾 原題:兒子的大玩偶
監督:ホウ・シャオシェン、ソン・ジュアンシャン、ワン・レン
出演:チェン・ボージョン、ヤン・リーイン
60年代前半の台湾を舞台に必死に生活を送る人々の姿を描く。「坊やの人形」「シャオチの帽子」「りんごの味」の三部作で構成されている。監督は「坊やの人形」がホウ・シャオシェン、「シャオチの帽子」がソン・ジュアンシャン、「りんごの味」がワン・レン。台湾ニューシネマの誕生を告げた記念作。
『風櫃の少年』
1983年/ 101分/台湾 原題:風櫃来的人
監督:ホウ・シャオシェン 出演:ニウ・チェンザー、チャン・シー
★第6回ナント三大陸映画祭グランプリ ★1985年アジア太平洋映画祭最優秀監督賞
澎湖島の風櫃に住むアチンと彼の友人たちは悪戯や喧嘩をして日々を過ごしていた。ある日、対立するグループとの争いが警察沙汰となり、家に戻れなくなった彼らは高雄に行くことを決める。世界の映画作家に多大な影響を与えた一作。
『台北ストーリー』[4Kレストア・デジタルリマスター版]
1985年/台湾/119分 原題:青梅竹馬
監督:エドワード・ヤン
出演:ホウ・シャオシェン、ツァイ・チン、ウー・ニェンチェン
★第38回ロカルノ国際映画祭審査員特別賞
1980年代半ば、過去に囚われた男と未来に想いを馳せる女のすれ違いが、変わりゆく台北の街並みに重ねられ、やがて思いもよらない結末を呼び込む。エドワード・ヤン監督、ホウ・シャオシェン主演…台湾ニューシネマの若き才能たちが総結集した、奇跡の作品。
『童年往事 時の流れ』
1985年/ 138分/台湾 原題:童年往事
監督:ホウ・シャオシェン 出演:ユー・アンシュン、シン・シューフェン
★第22回台湾金馬奨 最優秀助演女優賞・最優秀脚本賞 ★第36回ベルリン国際映画祭 国際批評家連盟賞
少年の成長の年代記を、彼と家族の日常をめぐるささやかな出来事で綴る。主人公の阿孝は、1947年広東省に生まれ、一歳のときに一家で台湾に移住した。ガキ大将的存在の阿孝だったが病弱な父は、阿孝に小さな影を落としていた…。ホウ・シャオシェン初期の自伝的代表作。
『恋恋風塵』
1987年/109分/台湾 原題:戀戀風塵
監督:ホウ・シャオシェン
出演:ワン・ジウウエン、シン・シューフェン、リー・ティエンルー
★第9回ナント三大陸映画祭 最優秀撮影賞・最優秀音楽賞
60年代、幼い頃から田舎町で兄弟のようにいつも一緒に育ってきた中学生の少年アワンと少女アフン。卒業して台北に働きに出た二人の淡い恋とその切ない別れを描く。
『ナイルの娘』[4Kデジタル修復版]
1987年/93分/台湾 原題:尼羅河女兒
監督:ホウ・シャオシェン
出演:ヤン・リン、ヤン・ファン、シン・シューフェン
★第5回トリノ国際映画祭 審査員特別賞
★第24回金馬奨最優秀音楽賞
母を亡くし、父は遠い町に暮らす孤独な少女、シャオヤン。彼女は「ナイルの娘」という日本の漫画に夢中。兄の経営するレストランで働くアーサンという男に想いを寄せる彼女だったが、ある日アーサンはヤクザの情婦と恋に落ちてしまう…。少女の眼が捉えた台北の夜の闇に生きる青春群像を、独特の静寂の中に描く異色作。
『青春神話』
1992年/106分/台湾 原題:青少年哪吒
監督:ツァイ・ミンリャン 出演:リー・カンション、チェン・チャオロン
★第6回東京国際映画祭ヤングシネマ部門ブロンズ賞
★1993年トリノ映画祭最優秀新人監督賞
★第15回ナント三大陸映画祭最優秀処女作賞
台湾の首都、台北を舞台に、一人の予備校生と周囲の人間関係を通して、現代の台湾社会を独特の抑制された形式で描いた青春群像劇。ツァイ・ミンリャン監督衝撃のデビュー作。
『愛情萬歳』
1994年/台湾/117分 原題:愛情萬歳
監督:ツァイ・ミンリャン
出演:ヤン・クイメイ、リー・カンション
★第51回ヴェネチア国際映画祭グランプリ(金獅子賞)・国際映画評論家賞 ★第31回金馬奨最優秀監督賞・最優秀作品賞・最優秀録音賞
★第16回ナント三大陸映画祭最優秀監督賞・最優秀男優賞
現代の台北を舞台に、孤独な男女3人の生き方を、冷徹なカメラワーク、極端に少ない台詞、一切の音楽の助けを借りない俳優たちの陰影豊かで繊細な演技など、抑制された演出でつづった人間ドラマ。
『憂鬱な楽園』 ※35mmフィルム上映
1996年/ 112分/台湾・日本 原題:南國再見、南國
監督:ホウ・シャオシェン
出演:ガオ・ジェ、リン・チャン、伊能静
★第33回金馬奨 最優秀オリジナル音楽賞
中年間近のチンピラと、弟分と彼の恋人のその日暮らしの毎日を描いた一編。チンピラのガオは40歳近いが正業に就かず、弟分のピィエンと彼の恋人のマーホァを連れて、田舎町の平渓にやって来る。中盤のオートバイ走行の長回しが圧巻。
『河』
1997年/台湾/115分 原題:河流
監督:ツァイ・ミンリャン
出演:リー・カンション、ミャオ・ティエン
★第47回ベルリン国際映画祭審査員特別賞
台北。シャオカンは街で旧知の女友達と再会。映画スタッフの彼女に誘われ、撮影現場に訪れた彼は、河に浮かぶ死体役に抜擢されてしまう。彼女と一夜をすごした後、彼は首が曲がったままになる奇病にかかっていた…。
『HHH:侯孝賢』[デジタルリマスター版]
1997年/92分/フランス・台湾 原題:HHH Portrait de HOU HSIAO-HSIEN
監督:オリヴィエ・アサイヤス 出演:ホウ・シャオシェン、オリヴィエ・アサイヤス、チュウ・ティエンウェンほか
批評家時代から台湾ニューシネマを積極的に世界に紹介し、監督デビュー後もホウ・シャオシェンからの影響を公言して憚らない、フランスを代表する映画監督の一人オリヴィエ・アサイヤスがホウ監督とともに台湾を旅しながら、彼の素顔に迫る貴重なドキュメント。
『フラワーズ・オブ・シャンハイ』[4Kデジタル修復版]
1998年/ 114分/日本・台湾 原題:海上花
監督:ホウ・シャオシェン
出演:トニー・レオン、羽田美智子、ミシェル・リー
★第33回金馬奨 最優秀オリジナル音楽賞
ホウ・シャオシェン監督が初めて挑んだ時代劇。19世紀末の清朝末期、上海のイギリス租界の高級遊郭を舞台に男たちと娼婦たちの愛の葛藤を描きだす。
『ヤンヤン 夏の想い出』 ※35mmフィルム上映
2000年/ 173分/台湾・日本 原題:Yi yi
監督:エドワード・ヤン
出演:ジョナサン・チャン、ケリー・リー、イッセー尾形
★第53回カンヌ国際映画祭 最優秀監督賞
★第26回L.A.批評家協会賞 最優秀外国語映画賞
★第67回N.Y.批評家協会賞 最優秀外国語映画賞
8歳のヤンヤンは、祖母と両親と姉と台北で暮している。祖母が脳卒中で倒れたのを機に看病に疲れた母は家を出、昔の恋人と再会した父は過去を思い出し、姉は恋に思い煩う。そんな家族の姿をヤンヤンは冷静に見守り…。2007年早世したヤン監督の遺作となった。
『ミレニアム・マンボ』[4Kレストア版]
2001年/105分/台湾・フランス 原題:千禧曼波
監督:ホウ・シャオシェン
出演:スー・チー、カオ・ジエ、トゥアン・ジュンハオ
★第54回カンヌ国際映画祭高等技術院賞
★第38回金馬奨最優秀撮影賞、最優秀オリジナル映画音楽賞、最優秀音響賞
2001年台北。ヴィッキーは嫉妬深くだらしない同棲中の恋人のハオとの生活にうんざりしていた。やがてホステスとして働き始めたヴィッキーは、店で知り合った年上男性ガオのもとに転がり込む。だがそのガオもトラブルに巻き込まれ、日本へ高飛びしてしまい…。ヴィッキーを演じるのはその後ホウ監督のミューズとなるスー・チー。
公式HP はこちら
■配給:オリオフィルムズ ■配給協力:トラヴィス
共催:国家電影及視聴文化中心
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毎年恒例になった「台湾巨匠傑作選」。今年は台湾ニューシネマの先駆けとして登場し、現在も活躍中のワン・トン(王童)を特集し開催されます。今回はワン・トン監督、台湾映画を世界に知らしめたホウ・シャオシェン(侯孝賢)監督、エドワード・ヤン(楊德昌)監督、チェン・クンホウ(陳坤厚)監督、≪第二次台湾ニューシネマ≫の旗手ツァイ・ミンリャン(蔡明亮)監督、チェン・ユーシュン(陳玉勲)監督の作品を特集。初公開2作品を含む、合計20作品が上映されます。
ワン・トン監督からのメッセージ
<台湾近代史三部作>が日本で上映されることになり、とても嬉しく思います。台湾映画や台湾文化を描いた映像作品が好きな多くの方に、この特集上映へお越しいただければと思います。なぜならこの三部作、時間軸的には日本統治時代の大正から昭和、そして現在の民国までを描いているからです。台湾にはどのような過去があり、台湾人がどのように生きてきたか、そして台湾と世界の交わり、とりわけ日本の統治により生まれた台湾と日本の関係には、憎しみも友情も…、さまざまな思いがあるのです。私たちはこの過程を見て、歴史が多くのことを教えてくれることを知ります。現代人は過去のあらゆる変化を次の世代に受け継いでいきます。平和に文化的に仲良く、共に歩んでいきましょう。なにより大切なのは、映像や言語、そして芸術でコミュニケーションすることです。ぜひ多くの皆さまにご鑑賞いただければ幸いです。
ワン・トン(王童)監督 プロフィール&フィルモグラフィ
1942年中国安徽省大和県生まれ。国立台湾芸術専科学校卒業後、中央電影でキン・フー監督の『残酷ドラゴン 血斗竜門の宿』(67)、『俠女』(70)等に美術スタッフとして参加、その後リー・シン(李行)監督、パイ・ジンルイ(白景瑞)監督らの下で美術を担当し高い評価を得る。
1981年『仮如我是真的』(If I Were for real・未)で監督デビュー、同作で第18回金馬奨最優秀作品賞、最優秀主演男優賞、最優秀改編脚本賞を獲得。代表作に『海を見つめる日(看海的日子)』、(83)『村と爆弾(稲草人)』(87)、『無言の丘(無言的山丘)』(92)など。『熱帯魚』(95)、『藍色夏恋』(02)プロデューサー。自身の監督作品のほか、100を超える作品で美術指導にあたる。2007年に台湾文芸界における最高栄誉賞である国家文芸賞を、2019年に金馬奨の名誉賞である終身成就奨を受賞。
「台湾巨匠傑作選2024 ~台湾映画の傑物ワン・トン(王童)監督と台湾ニューシネマの監督たち~」で上映される作品を紹介します。
≪上映作品/作品概要≫
≪ワン・トン監督/台湾近代史三部作≫
『村と爆弾』[デジタルリマスター版] ※劇場初公開
1987年/台湾/98分/台湾語、日本語 原題:稻草人
監督:ワン・トン
出演:チャン・ボーチョウ、ジョウ・シェンリー
★第24回金馬奨最優秀長編作品賞、最優秀監督賞、最優秀オリジナル脚本賞受賞
★第32回アジア太平洋映画祭最優秀作品賞、最優秀助演男優賞受賞
日本統治時代末期、太平洋戦争真っただ中の台湾。農村で暮らす小作人のアファとコウヅエの兄弟は家族とともに貧しい生活を送っていた。母親は耳が遠く、妹は夫を戦争で失って以来、精神を病んでいる。ある日、遠方から地主がやって来て、兄弟に田畑を製糖会社に売り払うと告げる。さらに追い打ちをかけるように日本人に一家の唯一の財産である牛が徴用されてしまう。翌日、村が米軍の空襲を受けるが、敵機が去った後、兄弟の畑に残されたのは一発の不発弾。上官から褒美をせしめようと、兄弟と村の巡査は隣町の駐在所へ不発弾を届けることにするが…。物言わぬ案山子を通して、日本による植民地政策のもと、不条理な状況に置かれた台湾の人々の強かな生き様や戦争の悲哀をユーモアたっぷりにテンポよく描いた。
『無言の丘』[デジタルリマスター版] ※劇場初公開
1992年/台湾/175分/台湾語、日本語 原題:無言的山丘
監督:ワン・トン
出演:ポン・チャチャ、ホアン・ピンユエン
★第29回金馬奨最優秀長編映画賞、最優秀監督賞、最優秀オリジナル脚本賞、最優秀美術設計賞、最優秀造型設計賞、最優秀観客賞受賞
★第38回アジア太平洋映画祭最優秀脚本賞、最優秀美術設計賞受賞
★第1回上海国際映画祭最優秀作品賞受賞
★第6回シンガポール国際映画祭最優秀主演女優賞、審査員特別賞受賞
大正時代末期~昭和初期、日本統治下の台湾。チュウとウェイの小作人兄弟は両親の葬儀費用のために地主と不当な長期労働契約を結ばされていた。ある日、ゴールドラッシュの噂を聞きつけたふたりは村を抜け出し金瓜石(キンカセキ)へ向かい、未亡人ズーの家に部屋を借りながら劣悪な環境のもと、日本人が管理する鉱山で金採掘に従事する。やがて兄のチュウは強かに生きるズーに、弟のウェイは九份(キュウフン)の娼館で下働きする琉球出身の富美子に惹かれ始めるが…。貧しい鉱夫の兄弟の視点で、日本人の経営する金瓜石鉱山における台湾人労働者の生活をリアルに描く。
『バナナパラダイス』[デジタルリマスター版]
1989年/台湾/148分/中国語、台湾語 原題:香蕉天堂
監督:ワン・トン
出演:ニウ・チェンザー、チャン・シー
★第26回金馬奨最優秀助演男優賞受賞、最優秀作品賞、最優秀主演男優賞、最優秀オリジナル脚本賞、最優秀衣装デザイン賞、最優秀録音賞ノミネート
1949年、幼馴染みのダーションを頼って国共内戦中の国民党軍に潜り込んだ青年メンシュアンは、寒風吹きすさぶ荒涼たる中国華北から、バナナが実る緑豊かな南国台湾へとたどり着く。その新天地で二人にスパイ容疑がかけられ、メンシュアンは命からがら逃げだす。途中、ある男の臨終に出くわしたメンシュアンは、その妻ユエシャンに彼女の夫に成りすまして仕事に就くことを持ちかけられる…。大陸から台湾に渡り、数奇な運命を辿る男の半生を綴る。日本人の知らない戦後台湾史を、ユーモアあふれるエピソードと奇想天外な展開で描き出す最高傑作!
≪ワン・トン監督プロデュース作品≫
『熱帯魚』[デジタルリストア版] ※特別上映
1995年/108分/台湾 原題:熱帯魚
監督:チェン・ユーシュン 出演:リン・ジャーホン、シー・チンルン、リン・チェンシン
★第48回ロカルノ国際映画祭青豹賞 ★第32回金馬奨最優秀脚本賞、最優秀助演女優賞
90年代台北。小学生のタウナンが誘拐される事件が発生。空想好きで落ちこぼれの中学生ツーチャンもひょんなことから同じ犯人に誘拐されてしまう。ところが主犯の男が交通事故であっけなく死に、困り果てた共犯のアケンは…。『1秒先の彼女』(20)のチェン・ユーシュン監督による傑作コメディ。
≪台湾ニューシネマの監督たち≫※製作年順
『風が踊る』[デジタルリマスター版]
1981年/92分/台湾 原題:風兒踢踏踩
監督:ホウ・シャオシェン
出演:フォン・フェイフェイ、ケニー・ビー、アンソニー・チェン
CMの撮影で澎湖島を訪れた女性カメラマン・シンホエは、事故で視力を失った青年チンタイと知り合う。その後ふたりは台北で偶然再会を果たすが…。1980年代初頭の、民主化へと向かいつつある戒厳令下の台湾社会を背景に、伝統的な家族観や結婚観と自由恋愛の間で揺れ動く自立した女性の心理を、澎湖島、台北、鹿谷を舞台にキャッチーな歌謡曲と共に、軽やかに描いたホウ監督初期作品。
『少年』[デジタルリマスター版]
監督:チェン・クンホウ
出演:チャン・チュンファン、ツイ・フーシェン、トゥオ・ツォンホア
★第20回金馬奨最優秀作品賞・最優秀監督賞・最優秀脚本賞受賞
1960年代台湾・淡水。未婚の母シウインは息子アジャのために年の離れた男性ターシュンと見合い結婚する。ターシュンは実の息子のようにアジャを可愛がるが、やがて弟がふたり生まれ、元々やんちゃだったアジャは中学生になる頃にはすっかり不良少年に。そんなある日、アジャの不注意から弟が事故に遭い…。ひとりの少年の成長譚を隣家の少女の視点で語る、のちにホウ・シャオシャオ監督作品で脚本を務める小説家朱天文(チュウ・ティエンウェン)の短編小説をチェン・クンホウ監督がホウ・シャオシェンらとともに映画化した、台湾ニューシネマの夜明けを代表する珠玉の名作。
『坊やの人形』
1983年/ 108分/台湾 原題:兒子的大玩偶
監督:ホウ・シャオシェン、ソン・ジュアンシャン、ワン・レン
出演:チェン・ボージョン、ヤン・リーイン
60年代前半の台湾を舞台に必死に生活を送る人々の姿を描く。「坊やの人形」「シャオチの帽子」「りんごの味」の三部作で構成されている。監督は「坊やの人形」がホウ・シャオシェン、「シャオチの帽子」がソン・ジュアンシャン、「りんごの味」がワン・レン。台湾ニューシネマの誕生を告げた記念作。
『風櫃の少年』
1983年/ 101分/台湾 原題:風櫃来的人
監督:ホウ・シャオシェン 出演:ニウ・チェンザー、チャン・シー
★第6回ナント三大陸映画祭グランプリ ★1985年アジア太平洋映画祭最優秀監督賞
澎湖島の風櫃に住むアチンと彼の友人たちは悪戯や喧嘩をして日々を過ごしていた。ある日、対立するグループとの争いが警察沙汰となり、家に戻れなくなった彼らは高雄に行くことを決める。世界の映画作家に多大な影響を与えた一作。
『台北ストーリー』[4Kレストア・デジタルリマスター版]
1985年/台湾/119分 原題:青梅竹馬
監督:エドワード・ヤン
出演:ホウ・シャオシェン、ツァイ・チン、ウー・ニェンチェン
★第38回ロカルノ国際映画祭審査員特別賞
1980年代半ば、過去に囚われた男と未来に想いを馳せる女のすれ違いが、変わりゆく台北の街並みに重ねられ、やがて思いもよらない結末を呼び込む。エドワード・ヤン監督、ホウ・シャオシェン主演…台湾ニューシネマの若き才能たちが総結集した、奇跡の作品。
『童年往事 時の流れ』
1985年/ 138分/台湾 原題:童年往事
監督:ホウ・シャオシェン 出演:ユー・アンシュン、シン・シューフェン
★第22回台湾金馬奨 最優秀助演女優賞・最優秀脚本賞 ★第36回ベルリン国際映画祭 国際批評家連盟賞
少年の成長の年代記を、彼と家族の日常をめぐるささやかな出来事で綴る。主人公の阿孝は、1947年広東省に生まれ、一歳のときに一家で台湾に移住した。ガキ大将的存在の阿孝だったが病弱な父は、阿孝に小さな影を落としていた…。ホウ・シャオシェン初期の自伝的代表作。
『恋恋風塵』
1987年/109分/台湾 原題:戀戀風塵
監督:ホウ・シャオシェン
出演:ワン・ジウウエン、シン・シューフェン、リー・ティエンルー
★第9回ナント三大陸映画祭 最優秀撮影賞・最優秀音楽賞
60年代、幼い頃から田舎町で兄弟のようにいつも一緒に育ってきた中学生の少年アワンと少女アフン。卒業して台北に働きに出た二人の淡い恋とその切ない別れを描く。
『ナイルの娘』[4Kデジタル修復版]
1987年/93分/台湾 原題:尼羅河女兒
監督:ホウ・シャオシェン
出演:ヤン・リン、ヤン・ファン、シン・シューフェン
★第5回トリノ国際映画祭 審査員特別賞
★第24回金馬奨最優秀音楽賞
母を亡くし、父は遠い町に暮らす孤独な少女、シャオヤン。彼女は「ナイルの娘」という日本の漫画に夢中。兄の経営するレストランで働くアーサンという男に想いを寄せる彼女だったが、ある日アーサンはヤクザの情婦と恋に落ちてしまう…。少女の眼が捉えた台北の夜の闇に生きる青春群像を、独特の静寂の中に描く異色作。
『青春神話』
1992年/106分/台湾 原題:青少年哪吒
監督:ツァイ・ミンリャン 出演:リー・カンション、チェン・チャオロン
★第6回東京国際映画祭ヤングシネマ部門ブロンズ賞
★1993年トリノ映画祭最優秀新人監督賞
★第15回ナント三大陸映画祭最優秀処女作賞
台湾の首都、台北を舞台に、一人の予備校生と周囲の人間関係を通して、現代の台湾社会を独特の抑制された形式で描いた青春群像劇。ツァイ・ミンリャン監督衝撃のデビュー作。
『愛情萬歳』
1994年/台湾/117分 原題:愛情萬歳
監督:ツァイ・ミンリャン
出演:ヤン・クイメイ、リー・カンション
★第51回ヴェネチア国際映画祭グランプリ(金獅子賞)・国際映画評論家賞 ★第31回金馬奨最優秀監督賞・最優秀作品賞・最優秀録音賞
★第16回ナント三大陸映画祭最優秀監督賞・最優秀男優賞
現代の台北を舞台に、孤独な男女3人の生き方を、冷徹なカメラワーク、極端に少ない台詞、一切の音楽の助けを借りない俳優たちの陰影豊かで繊細な演技など、抑制された演出でつづった人間ドラマ。
『憂鬱な楽園』 ※35mmフィルム上映
1996年/ 112分/台湾・日本 原題:南國再見、南國
監督:ホウ・シャオシェン
出演:ガオ・ジェ、リン・チャン、伊能静
★第33回金馬奨 最優秀オリジナル音楽賞
中年間近のチンピラと、弟分と彼の恋人のその日暮らしの毎日を描いた一編。チンピラのガオは40歳近いが正業に就かず、弟分のピィエンと彼の恋人のマーホァを連れて、田舎町の平渓にやって来る。中盤のオートバイ走行の長回しが圧巻。
『河』
1997年/台湾/115分 原題:河流
監督:ツァイ・ミンリャン
出演:リー・カンション、ミャオ・ティエン
★第47回ベルリン国際映画祭審査員特別賞
台北。シャオカンは街で旧知の女友達と再会。映画スタッフの彼女に誘われ、撮影現場に訪れた彼は、河に浮かぶ死体役に抜擢されてしまう。彼女と一夜をすごした後、彼は首が曲がったままになる奇病にかかっていた…。
『HHH:侯孝賢』[デジタルリマスター版]
1997年/92分/フランス・台湾 原題:HHH Portrait de HOU HSIAO-HSIEN
監督:オリヴィエ・アサイヤス 出演:ホウ・シャオシェン、オリヴィエ・アサイヤス、チュウ・ティエンウェンほか
批評家時代から台湾ニューシネマを積極的に世界に紹介し、監督デビュー後もホウ・シャオシェンからの影響を公言して憚らない、フランスを代表する映画監督の一人オリヴィエ・アサイヤスがホウ監督とともに台湾を旅しながら、彼の素顔に迫る貴重なドキュメント。
『フラワーズ・オブ・シャンハイ』[4Kデジタル修復版]
1998年/ 114分/日本・台湾 原題:海上花
監督:ホウ・シャオシェン
出演:トニー・レオン、羽田美智子、ミシェル・リー
★第33回金馬奨 最優秀オリジナル音楽賞
ホウ・シャオシェン監督が初めて挑んだ時代劇。19世紀末の清朝末期、上海のイギリス租界の高級遊郭を舞台に男たちと娼婦たちの愛の葛藤を描きだす。
『ヤンヤン 夏の想い出』 ※35mmフィルム上映
2000年/ 173分/台湾・日本 原題:Yi yi
監督:エドワード・ヤン
出演:ジョナサン・チャン、ケリー・リー、イッセー尾形
★第53回カンヌ国際映画祭 最優秀監督賞
★第26回L.A.批評家協会賞 最優秀外国語映画賞
★第67回N.Y.批評家協会賞 最優秀外国語映画賞
8歳のヤンヤンは、祖母と両親と姉と台北で暮している。祖母が脳卒中で倒れたのを機に看病に疲れた母は家を出、昔の恋人と再会した父は過去を思い出し、姉は恋に思い煩う。そんな家族の姿をヤンヤンは冷静に見守り…。2007年早世したヤン監督の遺作となった。
『ミレニアム・マンボ』[4Kレストア版]
2001年/105分/台湾・フランス 原題:千禧曼波
監督:ホウ・シャオシェン
出演:スー・チー、カオ・ジエ、トゥアン・ジュンハオ
★第54回カンヌ国際映画祭高等技術院賞
★第38回金馬奨最優秀撮影賞、最優秀オリジナル映画音楽賞、最優秀音響賞
2001年台北。ヴィッキーは嫉妬深くだらしない同棲中の恋人のハオとの生活にうんざりしていた。やがてホステスとして働き始めたヴィッキーは、店で知り合った年上男性ガオのもとに転がり込む。だがそのガオもトラブルに巻き込まれ、日本へ高飛びしてしまい…。ヴィッキーを演じるのはその後ホウ監督のミューズとなるスー・チー。
公式HP はこちら
■配給:オリオフィルムズ ■配給協力:トラヴィス
共催:国家電影及視聴文化中心
HOW TO HAVE SEX(原題:HOW TO HAVE SEX)
監督・脚本:モリー・マニング・ウォーカー
出演:ミア・マッケンナ=ブルース(タラ)、ララ・ピーク(スカイ)、エンヴァ・ルイス(エム)、サミュエル・ボトムリー、ショーン・トーマス、ラウラ・アンブラー
16歳のタラ、スカイ、エムの3人は卒業旅行にギリシャ・クレタ島のリゾート地、マリアにやってきた。タラは明るく積極的に見えるが実は自分だけがバージンなので、この旅行で卒業したい。親友2人はそんなタラを応援するべくお節介をやく。ロマンチックな初体験を夢見ているタラは、おしゃれしてライブやダンスに出かけ、初めて会った子に誘われてパーティにも参加する。初体験は果たせぬままホテルに帰ると、バルコニー越しに隣室の青年たちと出会う。少し年上に見える彼らといい思い出が作れるのか??
モリー・マニング・ウォーカーは撮影監督として仕事をしてきただけあって、これが初監督作品と思えない仕上がりになっています。自分の10代のころの体験を盛り込んだ脚本は、リアルな気持ちのこもったセリフが満載です。彼氏がいての初体験でなく、リゾート地で出会った人でいいの?と老婆心がまたまた湧いてきます。遅れをとったからと焦るのは、どこの国の人も同じなんですね。早い遅いなんて、そんなの大事じゃないのに。とは、後でわかることです。
「同意」が以前より注目されていますが、この映画のタラと相手との隔たりは大きいです。男子はモノにしたかどうかが自慢の種で、次は最初ほど気を使っていません。女子の気持ちは!? 何も学んでないのか全くもう!と、おばさんはどつきたくなります。良かったのは、タラと一緒にいてくれる親友の存在。チャラチャラしているようでもタラのことを心配しています。本音で言うから傷つくこともあるけれど、嘘がないから仲直りもできます。安心できる人がいるって大事。青春あるあるな体験なので、自分を振り返っていろいろ恥ずかしいことを思い出しそうです。イタイ青春の思い出も過ぎてしまえば夢のようですが、良い夢でなかったとしたら、次のためだったと思ってくださいな。(白)
もう30年以上前にクレタ島に行ったことがあって、どこが出てくるかなぁ~と楽しみに映画を観ました。イラクリオン空港に着いて、向かった先はマリア。海辺のリゾート地としても有名ですが、紀元前2000年頃に建造されたマリア宮殿のあるところ。同じころに建造されたクノッソス宮殿に行きましたが、マリアには残念ながら行ってないと思います。とても美しい海辺で食事をしたのですが、そこがどこだったのかわからない次第。
映画には、彼女たちが泊まったホテル、若者たちが集うビーチやクラブのほかに出てきたのは、ごみが散乱する通り。ひと気のない通りを、ひと夏の経験に心ここにあらずのタラがフラフラ歩いていくのが、なんとも痛いです。「経験」に出遅れているからって、あせる必要は何もないのに!
せっかくイギリスからクレタ島まで行って、リゾートだけで遺跡には行かなかったのかなぁ~ 知り合った彼と散策するには、素敵なところなのに・・・と、物語にはあまり関係ないことが気になったのでした。
知り合った男の子たちも、イギリスから来ていたので、行きずりの関係に終わらず、いい仲に発展すれば、それはそれでいいのにと思った次第。(咲)
☆第 76 回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門でグランプリを受賞
2023年/イギリス、ギリシャ/カラー/91分
字幕: 高内朝子
配給:カルチュア・パブリッシャーズ
© BALLOONHEAVEN, CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION, THE BRITISH FILM INSTITUTE 2023
公式サイト: https://culture-pub.jp/hths_movie/
公式 X:@HTHS_MOVIE #HowToHaveSex
★2024年7月19日(金)ヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル池袋、シネマート新宿、アップリンク吉祥寺ほかにて全国公開
2024年07月08日
ある一生(原題:Ein ganzes Leben)
監督:ハンス・シュタインビッヒラー
脚本:ウルリッヒ・リマー
原作:ローベルト・ゼーターラー「ある一生」(新潮クレスト・ブックス)
撮影:アルミン・フランゼン
出演:シュテファン・ゴルスキー(青年期)/アウグスト・ツィルナー(老年期)/イヴァン・グスタフィク(少年期)(アンドレアス・エッガー)、アンドレアス・ルスト(クランツシュトッカー)、マリアンヌ・ゼーゲブレヒト(アーンル)、ユリア・フランツ・リヒター(マリー)
1900年頃のオーストリア・アルプス。孤児の少年アンドレアス・エッガーは、渓谷で農場を営む遠い親戚クランツシュトッカーに引き取られた。酷薄な農場主にとっては、アンドレアスはこき使える働き手に過ぎず、ほかの子供たちと一緒に食卓につくことも許さなかった。少しのミスで、アンドレアスは厳しい折檻を受けるのが常。声を上げず泣きもしないのが、ますますクランツシュトッカーを怒らせた。アンドレアスを支えたのは、老婆のアーンルの存在だった。
青年となったアンドレアスは、アーンルが亡くなるとすぐに農場を出て日雇い労働者として働いた。渓谷には観光客を運び、電気をもたらすロープウェイが建設されることになった。作業員となったアンドレアスはマリーと出会い、ぎこちない付き合いの末結婚する。渓谷を見渡せる山小屋で始まった結婚生活は、幸せに満ちていたが途中で断ち切られてしまう。
苦労の絶えなかったアンドレアス・エッガーを3人の俳優が演じ、それぞれに印象的です。子どものころに木の枝で折檻されて、足の骨が折れる場面がありました。子どもを骨折するほど叩くって、同じ目に遭わせたくなります(こらこら)。そのため骨が変形してアンドレアスは足を引きずるようになりました。それでも力仕事のできる逞しい青年に成長し、一人で暮らしていけるようになります。
子どものころの暮らしのせいか、口数が少なく朴訥なアンドレアスの人生に光がさしたのはマリーと出会ってから。短い間でも良かったねぇ、と言いたくなります。兵隊に志願しても足が悪いからと却下されたのに、戦争も後半になると兵隊が足りなくなり召集令状がきます。冬山でロシア兵の捕虜となってしまい、シベリアの収容所に送られ、終戦後何年もたってから解放されます。アルプスに戻って山々を見渡したアンドレアスの脳裏を懐かしい日々がよぎって行きます。美辞麗句を排した原作と同じく、無口なアンドレアスの心情の説明はなくとも彼の眼に映る風景が雄弁です。
子どものころの彼を庇ってくれたアーンリお婆さんを演じたのは、『バクダッド・カフェ』(1989年日本公開)のころはふくよかだったマリアンヌ・ゼーゲブレヒト(1945年生)でした。
ローベルト・ゼーターラーのこの小説は、貧しく、困難な日々であっても生きることをあきらめなかった無名な男の一生を淡々と描いて、多くの人々の共感を呼びました。世界40カ国以上で翻訳され160万部以上発行、ブッカー賞最終候補にもなりました。
同じ著者の映画化作品に2020年に公開された『17歳のウィーン フロイト教授人生レッスン』。こちらの原作は「キオスク」(東宣出版/酒寄進一 訳)。「ある一生」と一緒に図書館から借りて、読み始めてすぐ映画を思い出しました。(白)
2023年/ドイツ=オーストリア映画/カラー/ドイツ語/115分/シネスコサイズ
https://www.awholelife-movie.com/
配給:アットエンタテインメント
(C)2023 EPO Film Wien/ TOBIS Filmproduktion Munchen
https://awholelife-movie.com/
後援:ゲーテ・インスティトゥート東京
★2024年7月12日(金)新宿武蔵野館ほか全国順次公開
2024年07月07日
メイ・ディセンバー ゆれる真実(原題:May December)
監督:トッド・ヘインズ
脚本:サミー・バーチ
撮影:クリストファー・ブロベルト
出演:ナタリー・ポートマン(エリザベス)、ジュリアン・ムーア(グレイシー)、チャールズ・メルトン(ジョー)
1996年、36歳の女性教師・グレイシーが13歳の少年ジョーと関係を持ったというスキャンダルが全米を驚かせた。逮捕されて7年の実刑を受けたグレイシーは、ジョーの子供を獄中出産した。出所後結婚した2人は、3人の子どもに恵まれ、穏やかな家庭を築いている。このスキャンダルを映画化したい女優のエリザベスは、役作りのために彼らの家を訪れた。初めは友好的にエリザベスを受け入れたグレイシーだったが、踏み込んでくるエリザベスに次第に苛立ちが募ってくる。
”メイ・ディセンバー”とは5月と12月ほど(年齢が)離れたカップルのことを言う慣用句。親子ほど離れたカップルはよく聞くけれど、男性が上というのが多い気がします。このカップルのモデルは先生と生徒というのにちょっと驚きました。映画がフォーカスしているのはその発端や過去ではなく、女優が家庭に入ってきたことで波風がたっていくところ。さざ波どころではありません。
初めはエリザベスのように過去の真実が知りたいと思うのですが、進むにつれてバチバチと火花を散らす女性2人にたじたじとなります。あぶりだされるのは、誰の真実かそれとも悪意か。わざと合わなく作っているような音楽もあいまって、興味本位な自分が恥ずかしいしもてあまします。なんだか居心地が悪くなってくる映画なのですが、がっつり競演しているベテラン女優の決着はどうなるのか、2人に負けることなく、ジョーを演じているチャールズ・メルトンも気になりました。彼の別の作品が観たくなりました。(白)
2023年/アメリカ/カラー/117分/R15
配給:ハピネットファントム・スタジオ
(C)2023. May December 2022 Investors LLC, ALL Rights Reserved.
https://happinet-phantom.com/maydecember/
★2024年7月12日(金)ほか全国ロードショー
お母さんが一緒
監督・脚色:橋口亮輔
原作・脚本:ペヤンヌマキ
撮影:上野彰吾
音楽:平井真美子
出演:江口のりこ(長女・弥生)、内田慈(次女・愛美)、古川琴音(三女・清美)、青山フォール勝ち〈ネルソンズ〉(清美の彼氏・タカヒロ)
親孝行のつもりで母親を温泉旅行に連れてきた三姉妹。長女の弥生は妹たちのように可愛いといわれなかったコンプレックスがある。母の期待に応えて成績を上げ、いい大学にいい会社に入った。次女の愛美は優等生の長女といつも比べられて、頑張っても認めてもらえず姉とは犬猿の仲だ。三女の清美は、姉二人を見て育ち今は母と二人で暮らしている。母親の口から出るのはいつも欠点をあげつらう否定の言葉ばかり。三人は父親の悪口もさんざん聞かされてきた。
三人に共通しているのは「母親みたいな人生を送りたくない」ということ。それでも誕生日を迎える母のために温泉宿を予約してきたのだった。迎えの車が上り坂でエンストし、汗だくで押すという始まりがすでに不穏だ。母親の愚痴は止まらず、姉妹喧嘩もエスカレートしていく。
舞台劇を映画化するにあたって、橋口亮輔監督が脚色。舞台版で次女役だった内田慈さんが続投です。姉妹あるあるなセリフに、共感の連続でした。当人たちは真剣なのですが、はたから見ると滑稽なことがよくわかります。三人いると、2:1に分かれてしまいがちで、同じ三姉妹で育った私(次女)もいろいろと思い出しました。
末娘の清美がめんどくさい母親と同居しているので、お姉ちゃんたちは感謝とともに妹を気遣っています。弥生と愛美は未婚ですが、清美は結婚したい相手・タカヒロをサプライズで会わせようと思っていました。せっかく温泉に来たのに、姉妹喧嘩のとばっちりで、温泉にも入れずご馳走もお預けのタカヒロに同情してしまいます。気のいいタカヒロが、三姉妹の潤滑油になる役回り。外から人が入ることでこの「家族」もうまく回っていく気がしました。笑っているうちに、心がじんわり温まる温泉のような作品。(白)
2024年/日本/カラー/106分/G
配給:クロックワークス
(C)2024 松竹ブロードキャスティング
https://www.okaasan-movie.com/#modal
★2024年7月12日(金)新宿ピカデリーほか全国公開
クレオの夏休み 原題:Àma Gloria
監督:マリー・アマシュケリ
出演:ルイーズ・モーロワ=パンザニ、イルサ・モレノ・ゼーゴ
乳母を訪ねて、幼いクレオはパリからアフリカの島国カーボベルデに一人旅
父親とパリで暮らす6歳のクレオ。いつもそばにいてくれるナニー(乳母)のグロリアが大好き。ある日、グロリアから「お母さんが亡くなって、お葬式で故郷に帰ることになったの」と聞かされる。しかも、もうパリには戻らないという。突然の別れに戸惑うクレオ。グロリアはクレオの父に、「遊びに来させて」と言い残す。そして夏休み、クレオは一人で飛行機に乗って彼女のもとへ行く・・・
マリー・アマシュケリ監督は、1979年7月16日生まれのジョージア系フランス人。幼い頃にナニーの女性に育てられた経験を、彼女への感謝の気持ちを込めて物語にしようと思い立ったのが本作のきっかけ。映画の最後に、ナニーのLaurinda Pereira Coareiaさんのお名前が記されてました。
ナニーの故郷をアフリカの島国カーボベルデにしたのは、本作のリサーチでナニーの女性たちと会って話をしていた中で出会い、グロリア役として出演を依頼することになったイルサ・モレノ・ゼーゴさんが、カーボベルデ出身だったことから。西アフリカの沿岸にある火山のある島国です。
昨年の山形国際ドキュメンタリー映画祭と東京フィルメックスで上映された『火の娘たち』(監督:ペドロ・コスタ、ポルトガル/2023年)の舞台になっているのがカーボベルデです、
グロリアには、年頃を迎えた娘(妊娠している!)と、まだ10歳位の息子がいて、出稼ぎ中は自分の母親に子供たちの面倒をみてもらっていました。息子は、グロリアのことを母親と認めず、我が子のように接するクレオを妬ましく思うのです。
クレオの母親はなぜいないの?の疑問は、グロリアとの会話の中で出てきました。
幼くして母を亡くしたクレオにとって、ずっと一緒にいてくれたグロリアは母のような存在。グロリアが我が子に少しでも良い生活をさせようと、出稼ぎに出なくてはならなかったことを思うと複雑な気持ちになりました。
クレオを演じたルイーズ・モーロワ=パンザニは、撮影当時5歳半。パリの公園で遊んでいたところを見出され、本作が演技初挑戦。可愛いだけじゃない、なかなかの少女です。
時折アニメーションが挟み込まれるのですが、その時々のクレオの気持ちを表すような色使いで、とても素敵です。(咲)
2023年カンヌ国際映画祭 批評家週間 オープニング作品
2023年/フランス/フランス語、カーボベルデ・クレオール語/83分/カラー/1.42:1/5.1ch
日本語字幕:星加久実
配給:トランスフォーマー
公式サイト:https://transformer.co.jp/m/cleo/
★2024年7月12日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほかにて全国公開
大いなる不在 Great Absence
監督:近浦啓
出演:森山未來、真木よう子、原日出子、藤竜也
俳優の遠山卓(たかし)は、ある日、劇団のワークショップを終えると父・暘二が警察に捕まったと連絡を受ける。小さい頃に自分と母を捨てた父は、再婚して北九州で暮らしていた。かつて大学教授だった父は認知症を患っており、施設で保護されているという。
妻の夕希と共に北九州に降り立ち、施設に向かうが、今は会えないといわれる。父の家に行くと、中は荒れ放題で、一緒に暮らしていたはずの義理の母は携帯電話を置いたままいなくなっていた・・・
冒頭、閑静な住宅街に潜む機動隊員たち。「遠山」の表札の一軒家に踏み込もうとした時、玄関のドアが開き、藤竜也さん演じる男が現れます。一体、何の事件?
最後に事の真相が明かされるのですが、グッと引き付けられる幕開け。
施設の職員から、「お父さんの食べ物のアレルギーは?」と聞かれるのですが、もう30年も前に家を出た父のことを卓はわかりません。5年前に、25年ぶりに父に会いに行ったことがあって、卓は再婚相手にも会っています。ぞの彼女は行方不明。
卓は、手がかりはないかと家の中を探します。施設の職員からは、父が大事に持っていた鞄を手渡されます。その中には父の人生を示す重要な手がかりが・・・
両親のことを子は知っているようで、知らないことの方が多いのではないでしょうか。
離婚して長い間離れて暮らしていてはなおさらです。
卓が父の再婚相手がいる場所はあそこに違いない!と、電車で向かいます。窓の外の風景はどうやら有明海のよう。降り立った駅は、熊本県の網田(おうだ)駅。とても雰囲気のある駅です。監督が海辺のシーンを撮るのに適した絶景スポットをグーグルマップで探し出したのが、この近くの宇土市住吉町の長部田海床路。ぜひ行ってみたい素敵なところです。
藤竜也さんは、認知症を患った老人役でも、やっぱり渋くて素敵。第71回サン・セバスティアン国際映画祭で日本人初となる最優秀俳優賞を受賞されました。(咲)
第67回サンフランシスコ国際映画祭
“最高賞”【グローバル・ビジョンアワード】受賞
2023年/日本/カラー/アメリカンビスタ/5.1chデジタル/133分/G
製作・制作プロダクション:クレイテプス
配給:ギャガ
公式サイト:https://gaga.ne.jp/greatabsence/
★2024年7月12日(金)テアトル新宿、TOHOシネマズシャンテ他 全国順次公開.
密輸1970 原題:密輸 밀수 英題:Smugglers
監督:リュ・スンワン
出演:キム・ヘス、ヨム・ジョンア、チョ・インソン、パク・ジョンミン、キム・ジョンス、コ・ミンシ
1970年代半ば、韓国西海岸の漁村クンチョン。海女さんたちが昔ながらの素潜り漁で生計を立てていたが、化学工場の廃棄物で海が汚され、アワビが死滅してしまう。海女さんチームのリーダーのジンスク(ヨム・ジョンア)は皆の生活を守るため、海底から密輸品を引き上げる仕事を請け負う。ところが作業中に税関の摘発に遭い、ジンスクは刑務所送りとなり、親友チュンジャ(キム・ヘス)だけが逃亡に成功する。
2年後、ソウル。チュンジャは派手な姿で密輸品の洋服を売りさばいていたが、密輸王クォン軍曹(チョ・インソン)から縄張りを荒らしたとして賠償金を要求される。咄嗟に、クンチョンの海女たちと組んで、一儲けすることをクォン軍曹に持ち掛ける。
クンチョンに舞い戻り、出所したばかりのジンスクに新たな密輸のもうけ話を持ちかける。ジンスクはチュンジャへの不信感を拭えないでいるが、一攫千金を得ることができる一世一代の機会に、再起を懸けた大勝負に身を投じていく・・・
冒頭の海女さんたちの水中シーンに、まず圧倒されます。本物の海女さんさながら、海に潜って自由自在に仕事をこなすヨム・ジョンアとキム・ヘス。3か月におよぶ水中訓練の賜物。素晴らしいです。
責任感が強く落ち着いた雰囲気のジンスクと、派手でやり手のチュンジャ。そこに、密輸王のクォン軍曹や、チンピラのドリ、そして彼らを取り締まろうとする税関係長ジャンチュンが絡み、海を舞台に繰り広げられる物語の行方に最後の最後まで目が離せませんでした。
監督がこだわった大衆歌謡や音楽でかもし出される1970年代の雰囲気も、どこか懐かしいです。(咲)
223年/韓国/韓国語/カラー/シネマスコープ/5.1ch
字幕翻訳:根本理恵
配給:KADOKAWA、KADOKAWA Kプラス
公式サイト:https://mitsuyu1970.jp/index.html
★2024年7月12日(金) 新宿ピカデリーほか全国公開
2024年07月04日
郷愁鉄路~台湾、こころの旅~ 原題:南方、寂寞鐵道 英題:On The Train
7月5日(金)新宿武蔵野館ほか全国順次公開 その他劇場情報
美しい台湾南部の風景、そこに生きる鉄道員とその家族たち、険しい自然と人間の諦めない戦い、この土地に残る人々の記憶
監督:簫菊貞(シャオ・ジュイジェン)
プロデューサー:陳博文(チェン・ボーウェン)、沈邑頴(シェン・イーイン)
音楽:陳明章/陳明章音楽工作有限公司(チェン・ミンジャン)、謝韻雅/MIA(シェ・ユンヤー)
編集:陳博文(チェン・ボーウェン)/陳昱璁(チェン・ユーツォン)
音響:杜篤之(ドゥ・ドゥーチー)/謝青㚬(シェ・チンジュン)
日本語字幕:樋口裕子
台湾南部の鉄道路線「南廻線」。「南廻線」を支える鉄道員とその家族、そして同線を愛する人々の想いを記録した台湾初の鉄道文化ドキュメンタリー作品『郷愁鉄路~台湾、こころの旅~』。
屏東県枋寮駅から台東県台東駅までを結ぶこの路線は、パイナップル畑や、線路の近くまで迫る海など大自然の中をSLやディーゼル列車がのんびりと走り抜ける旅情豊かな路線だったそうですが、2020年に全線電化され、その模様は変化を遂げました。
台湾でドキュメンタリー監督として活躍し、山形ドキュメンタリー映画祭にも出品経験のあるシャオ・ジュイジェン監督が4年の歳月をかけ、失われていく沿線の原風景と鉄路をカメラにおさめ、鉄道員やその家族、「南廻線」を愛する人々の想いを記録として残しています。
台湾には5回行ったけど、台北以北しか行ったことがない。九份へ行くのに台北から電車で行ったこともあるし、そこからさらに平溪線に乗り、『台北に舞う雪』の舞台である平溪線終点の菁桐駅まで行ったこともある。そして、いつか台北以南の列車の旅にも行ってみたいと思っていた。台湾一周もしたいと思っていたけど、バスで行くか列車で行くのがいいのか、漠然と考えてはいた。そんな時、この映画を観たので、これは断然列車での一周だなと思った。
この「南廻線」というのは、旅情豊かな路線だと思ったし、それを支えてきた人々の思いがひしひしと伝わってきた。日本もそうだけど、電化されたことで早く行けたり、便利にはなっただろうけど、人情とか旅情は変わってしまったかもしれない。でも、この映画で沿線の景色を見たら、いつか行ってみたいと思った(暁)。
公式サイトアドレス:https://on-the-train-movie.musashino-k.jp/
製作:Pineal Culture Studio(上善醫文化工作室)
2023年/台湾/106分/DCP/
翻訳協力:小田急電鉄株式会社/G
配給:武蔵野エンタテインメント
6月1日にはシャオ・ジュイジェン監督が来日しての上映会とトークショーが行われた。
*参照記事
シネマジャーナルHP 特別記事 2010年
台湾ロケ地めぐり 平渓線沿線 『台北に舞う雪』公開記念
http://www.cinemajournal.net/special/2010/pingxi/index.html
シネマジャーナルHP スタッフ日記 2024年
台湾映画・台湾関連映画を5本も観た1週間(暁) 『春行』『中村地平』『狼が羊に恋をするとき』『村と爆弾』『郷愁鉄路』
http://cinemajournal.seesaa.net/article/503671145.html
美しい台湾南部の風景、そこに生きる鉄道員とその家族たち、険しい自然と人間の諦めない戦い、この土地に残る人々の記憶
監督:簫菊貞(シャオ・ジュイジェン)
プロデューサー:陳博文(チェン・ボーウェン)、沈邑頴(シェン・イーイン)
音楽:陳明章/陳明章音楽工作有限公司(チェン・ミンジャン)、謝韻雅/MIA(シェ・ユンヤー)
編集:陳博文(チェン・ボーウェン)/陳昱璁(チェン・ユーツォン)
音響:杜篤之(ドゥ・ドゥーチー)/謝青㚬(シェ・チンジュン)
日本語字幕:樋口裕子
台湾南部の鉄道路線「南廻線」。「南廻線」を支える鉄道員とその家族、そして同線を愛する人々の想いを記録した台湾初の鉄道文化ドキュメンタリー作品『郷愁鉄路~台湾、こころの旅~』。
屏東県枋寮駅から台東県台東駅までを結ぶこの路線は、パイナップル畑や、線路の近くまで迫る海など大自然の中をSLやディーゼル列車がのんびりと走り抜ける旅情豊かな路線だったそうですが、2020年に全線電化され、その模様は変化を遂げました。
台湾でドキュメンタリー監督として活躍し、山形ドキュメンタリー映画祭にも出品経験のあるシャオ・ジュイジェン監督が4年の歳月をかけ、失われていく沿線の原風景と鉄路をカメラにおさめ、鉄道員やその家族、「南廻線」を愛する人々の想いを記録として残しています。
台湾には5回行ったけど、台北以北しか行ったことがない。九份へ行くのに台北から電車で行ったこともあるし、そこからさらに平溪線に乗り、『台北に舞う雪』の舞台である平溪線終点の菁桐駅まで行ったこともある。そして、いつか台北以南の列車の旅にも行ってみたいと思っていた。台湾一周もしたいと思っていたけど、バスで行くか列車で行くのがいいのか、漠然と考えてはいた。そんな時、この映画を観たので、これは断然列車での一周だなと思った。
この「南廻線」というのは、旅情豊かな路線だと思ったし、それを支えてきた人々の思いがひしひしと伝わってきた。日本もそうだけど、電化されたことで早く行けたり、便利にはなっただろうけど、人情とか旅情は変わってしまったかもしれない。でも、この映画で沿線の景色を見たら、いつか行ってみたいと思った(暁)。
公式サイトアドレス:https://on-the-train-movie.musashino-k.jp/
製作:Pineal Culture Studio(上善醫文化工作室)
2023年/台湾/106分/DCP/
翻訳協力:小田急電鉄株式会社/G
配給:武蔵野エンタテインメント
6月1日にはシャオ・ジュイジェン監督が来日しての上映会とトークショーが行われた。
*参照記事
シネマジャーナルHP 特別記事 2010年
台湾ロケ地めぐり 平渓線沿線 『台北に舞う雪』公開記念
http://www.cinemajournal.net/special/2010/pingxi/index.html
シネマジャーナルHP スタッフ日記 2024年
台湾映画・台湾関連映画を5本も観た1週間(暁) 『春行』『中村地平』『狼が羊に恋をするとき』『村と爆弾』『郷愁鉄路』
http://cinemajournal.seesaa.net/article/503671145.html
潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断 原題:Comandante
監督:エドアルド・デ・アンジェリス
CAST
ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ: サルヴァトーレ・トーダロ艦長役
マッシミリアーノ・ロッシ: ヴィットリオ・マルコン副長役
ヨハン・ヘルデンベルグ: ヴォーゲル艦長役(ベルギー人)
アルトゥーロ・ムゼッリ: ダニロ・スティエポヴィッチ役
ジュゼッペ・ブルネッティ: ジジーノ・マグニフィコ役
ジャンルカ・ディ・ジェンナーロ: ヴィンチェンツォ・ストゥンポ役
ヨハネス・ヴィリックス: ジャック・レクレルク役(ベルギー人)
ピエトロ・アンジェリーニ: イヴァーノ・レアンドリ役
マリオ・ルッソ: サルヴァトーレ・ミンニーティ役
セシリア・ベルトッツィ: アンナ役
パオロ・ボナチェッリ: ベッティ役
シルヴィア・ダミーコ: リナ・トーダロ役
実話を基に描いた、海の男たちの誇りと絆の戦争秘話
1940 年 10 月、イタリア海軍潜水艦コマンダンテ・カッペリーニは、イギリス軍への物資供給を断つために地中海からジブラルタル海峡を抜けて大西洋に向かっていた。その途中、船籍不明の貨物船に遭遇する。艦砲を装備し、戦争地帯で灯火管制をしての航行であったためこれを撃沈。だがそれは中立国であるはずのベルギー船籍の自衛武装を備えた貨物船カバロ号だった。“イタリア海軍一無謀な少佐”サルヴァトーレ・トーダロ艦長は「ナチなら見殺しにするだろうが、我々は人間は助ける」と、海に放り出された乗組員たち26人を救助し、彼らを最寄りの安全な港まで運ぶ決断を下す。狭い潜水艦の艦内に無理矢理彼らを収容し、潜航するのもあきらめ、自らの危険も覚悟のうえで、無防備状態のままイギリス軍の支配海域を航行していく・・・
助けたベルギー船の若き乗組員ジャック・レクレルクは、イタリア語だけでなくフランス語、ポルトガル語、英語、ラテン語、古代ギリシャ語も出来る語学の達人。彼のお陰で意思疎通を図ることができたのでした。
そも、イタリアの北から南までが統一されたのはそれほど古い話でなく、トーダロ艦長が、「(北の)リヴォルノと(南の)シチリアでは、言葉も文化も気候もかけ離れている」と語る場面がありました。
潜水艦の料理人ジジーノは、イタリアのどこの料理も作れるのが自慢です。予定外に26人も乗せた為、材料も底をついてきます。それでも、ベルギーの国民食は?と、彼らのために懐かしい料理を作ります。教えてもらいながら作ったのは、なんとポテトフライ! ハンバーガーについてくるお馴染みのポテトフライです。(少し太めらしいです)ベルギーの国民食だとは知らなったので、ちょっと驚き。
ベルギーの乗組員たちを助けた勇気あるサルヴァトーレ・トーダロ艦長ですが、2年後に戦死。従軍中に生まれた娘に会えないまま亡くなられたのですが、助けられたジャック・レクレルクはじめ数名が、奥様と娘さんに会いにいったというその後の話に涙。
エンドロールで流れるのは、最初は愛を歌った曲ですが、そのあとはイタリア料理の名前が延々と語られます。途中から字幕が無くなりますが、マカロニやスパゲッティなどお馴染みの単語が聴こえてきました。潜水艦の中の息苦しさを、最後に吹き飛ばしてくれました。
世界の各地で戦火の絶えない今、人権を重んじたトーダロ艦長に思いを馳せていただければと思います。(咲)
2023年ヴェネツィア国際映画祭オープニング作品
2023年/イタリア・ベルギー/イタリア語・オランダ語・英語/シネマスコープ/121分
字幕翻訳:岡本太郎
後援:イタリア文化会館
配給:彩プロ
公式サイト:https://comandante.ayapro.ne.jp/
★2024年7月5日(金)より、TOHOシネズ日比谷ほか全国公開