2024年06月30日
方舟にのって~イエスの方舟45年目の真実~
監督 佐井大紀
企画・エグゼクティブプロデューサー 大久保 竜
チーフプロデューサー 能島一人
プロデューサー 津村有紀
クリエイティブプロデューサー 松木大輔
撮影 小山田宏彰 末永 剛
ドローン撮影 宮崎 亮
編集 佐井大紀 五十嵐剛輝
MA 的池将
1980年、東京・国分寺市から10人の女性が突如姿を消したと報道される。彼女達を連れ去ったとされる謎の集団「イエスの方舟」、その主宰者・千石剛賢は、美しく若い女性を次々と入信させハーレムを形成していると世間を騒然とさせた。2年2ヶ月の逃避行の末、千石が不起訴となり事件には一応の終止符が打たれる。しかし彼女たちの共同生活は、45年たった今も続いていた。「宗教法人ではない」と語るその正体とは!?
当時、千石イエス、千石ハーレムなどと、センセーショナルに報道されたことを、はっきりと覚えています。千石剛賢氏が、2001年に他界された後も、共同生活が今も続いていることに驚きました。本作を通じて、「イエスの方舟」に所属する女性たちが、あのように報道されたあとも、たくましく、なおかつ、心穏やかに集団生活を続けていることを知りました。2年間の逃避行で資金が底をついた時に普通の仕事に就くことが難しく、皆でキャバレー勤め。その後、自分たちで福岡中州で「シオンの娘」を開き、看板には「イエスの方舟」が経営していることを明記しています。老朽化でコロナ禍の前に中州から香椎に移転。その後、共同生活をする古賀にリニューアルオープンしています。宝塚好きだった千石剛賢氏の妻・まさ子さんもショーの舞台に立って嬉しそうな姿を見せていました。
人の生き方は様々。幸せならいいじゃないかと思います。
映画を見て、まず目がいったのが、「イエスの方舟」の建物にあるダビデの星の中に十字架があるシンボルマークでした。女性たちが胸にさげているペンダントも同じ。旧約聖書と新約聖書の両方を学んでいるという証なのだそうです。
個人的には、千石剛賢氏とまさ子さんが知り合った頃の神戸の町の映像が出てきたのが嬉しかったです。思えば神戸の北野町には、様々な宗教の施設がすぐ近くに点在しています。ダビデの星と十字架が一緒になっているのも有りだなと。
本作の佐井監督が、1980年当時の騒動を知らない1994年生まれということも、先入観のない目線で彼女たちを追うことができたのではないかと思いました。(咲)
【佐井監督のコメント】
かつて日本を騒然とさせた「イエスの方舟」の女性たちは、今でも福岡で共同生活をしている。騒動時の過激な報道を経験してもなお、水商売で生計を立てながら、聖書と共に在るその生き様を45年間貫き通した。TBSに残された貴重なフィルムと、私がこの目で見た彼女たちの現在。そこから浮かび上がる真実は、シスターフッドか?それとも狂気か?
鑑賞後もあなたは、“ハーレム教団”と呼びますか?
「TBSドキュメンタリー映画祭2024」上映作品
2024年/日本/69分/ステレオ/ 16:9
製作:TBSテレビ
配給:KICCORIT
配給協力:Playtime
公式サイト:https://hakobune-movie.jp/
★2024年7月6日(土)ポレポレ東中野ほか全国順次公開
ザ・ビートルズの軌跡 リヴァプールから世界へ 原題:The Beatles: Up Close and Personal
監督・脚本・製作:ボブ・カラザーズ
出演:アラン・ウィリアムズ、ピート・ベスト、アンディ・ホワイト、トニー・ブラムウェル、ノーマン・スミス、アラン・クレイン
“ビートルズを解雇された男”が語るザ・ビートルズの前日譚
伝説のロックバンド「ザ・ビートルズ」。数多くの名曲を生み出し熱狂的なファンを生んだ彼らも、メジャーデビュー前はリヴァプールで演奏する小さなコピーバンドだった。やがて初代マネージャーとなるアラン・ウィリアムズとの出会い、ハンブルク巡業、リヴァプール席巻、当時英国最大のレコード会社であったデッカ・レコードのオーディションの失敗、さらにメンバー交代劇など紆余曲折の末、62年「ラヴ・ミー・ドゥ」でメジャーデビューするまでを、当時のTV番組のパフォーマンス映像やコンサートの模様などを交えて、彼らの創造性やスターダムを上りつめていく過程を検証していく。
ジョン、ポール、ジョージ、リンゴの4人は、ビートルズが1970年に解散して、ジョン・レノンとジョージ・ハリスンがこの世を去っても、永遠のビートルズ。
ビートルズが世界的に有名になった1960年代から、彼らの音楽が大好きだった私にとっても、ビートルズといえば、この4人。本作を観て、この4人に落ち着くまでの紆余曲折を知ることができました。
中でも、ドラマーとして、2年半もメンバーだったピート・ベスト本人の語る当時の話は衝撃でした。初の海外進出であるハンブルグ公演にも参加し、高い評価を得たピート・ベスト。メジャーデビューを目指す「ラヴ・ミー・ドゥ」収録前に、突然クビになったのです。
「君はミュージシャンとして素晴らしい。でも、リンゴはビートルだ」
こう言われては、何も反論できなかったでしょう
唯一無二の伝説の4人は、こうして出来上がったのかと感無量! (咲)
2008年/イギリス/74分/カラー/16:9/ステレオ/英語
字幕監修:藤本国彦
配給:NEGA
公式サイト:https://beatles-filmselection.com/
★2024年7月5日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、池袋シネマ・ロサ、アップリンク吉祥寺他全国公開
2024年06月29日
リッチランド 原題:Richland
監督:アイリーン・ルスティック
原爆を作ったアメリカの町の過去と現在を描くドキュメンタリー映画
ワシントン州南部にあるリッチランド。ここは、1942年からのマンハッタン計画における核燃料生産拠点「ハンフォード・サイト」で働く人々とその家族が生活するために作られたベッドタウン。1945年8月9日、長崎に落とされた「ファットマン」のプルトニウムはハンフォード・サイトで精製されたものだった。終戦後は冷戦時に数多く作られた核兵器の原料生産も担い、稼働終了した現在はマンハッタン計画に関連する研究施設群として国立歴史公園に指定され、アメリカの栄光の歴史を垣間見ようと多くの観光客が訪れている。
© 2023 KOMSOMOL FILMS LLC
地元高校のフットボールチームのトレードマークは“キノコ雲”と“B29爆撃機”、チーム名は「リッチランド・ボマーズ」。「原爆は戦争の早期終結を促した」と誇りに思っている人々がいる一方で、多くの人を殺戮した原爆に関わったことに胸を痛める人もいる。
様々な声が行き交う中で、被爆3世であるアーティスト・川野ゆきよがリッチランドを訪れ、町の人々との対話を試みるが...
核燃料生産拠点ハンフォード・サイトやリッチランドは、何もなかった草原にできたわけではなく、先住民が代々暮らしてきた土地でした。米軍がやってきて、「土地を使わせてもらう。長い間じゃない」と先住民は言われ、結局、汚染された土地に戻れずにいるのです。その地には、先住民の生活になくてはならない資源もあったのに。
ハンフォード・サイトで働く人たち自体、放射能汚染の危険をまったく知らされていませんでした。「あの雲は誇り」「この土地を誇れ」と偉業を成したことを教え込まれたのです。偉業の恐ろしさは隠して。 防護服も着ずに家族のために仕事にまい進していた人たちの多くが癌で命を落としています。終戦直後、乳児や新生児が亡くなることも相次ぎ、小さなお墓が並んでいることに言葉を失います。
リッチランドで育ち、ハンフォードで土木技師として働いたキャスリン・フレニケンの詩集「プルーム」より、いくつかの詩が引用されて詠まれます。プルトニウムは安全だとしてきたアメリカ政府の裏切りや、放射能に侵された人々への思いが静かに伝わってきました。(咲)
アイリーン・ルスティック
監督・製作・編集
フェミニスト映画作家、アーカイブ研究者、アマチュア裁縫家。英国生まれボストン育ちの米国人1世であり、両親はチャウシェスク政権下のルーマニアを政治亡命者として逃れてきた。『リッチランド』以前にも3作の長編を制作。カリフォルニア大学サンタクルーズ校で、映画およびデジタルメディア学教授として映画制作を教える。
2023年/アメリカ/93 分/カラー/5.1ch/DCP
字幕:佐藤まな
製作:コムソモール・フィルムズ
宣伝:テレザ/配給:ノンデライコ
公式サイト:https://richland-movie.com/
★2024年7月6日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
SAALAR/サラール 原題:Salaar
監督・脚本;プラシャーント・ニール(『K.G.F』シリーズ)
出演:プラバース(『バーフバリ』シリーズ)、プリトヴィラージ・スクマーラン、シュルティ・ハーサン、ジャガパティ・バーブ
1985年、先祖代々盗賊を生業にする部族によって建てられた国カンサール。王ラージャ・マンナルの第二夫人の息子ヴァラダは、第一夫人の息子ルドラに名誉と権力の象徴である鼻輪を奪われてしまう。ヴァラダの親友デーヴァは、ヴァラダのために闘技場の試合に挑み、みごと鼻輪を取り戻す。
その後、国内で部族間の争いが発生し、デーヴァの母親が窮地に陥る。駆けつけたヴァラダは自分の持つ領地の中の一番大きい地を敵に与え、デーヴァの母親を救う。デーヴァは母親とカンサールを去ることになるが、デーヴァは別れ際に、ヴァラダに「名前を呼べば、必ず駆けつける」と言い残す。
2017年、デーヴァは母と北東インド、アッサム州で暮らしている。アメリカの実業家クリシュナカーントの娘アディヤが母の遺灰をガンジス河に流すためインドに帰って来る。父の宿敵の一団に襲われそうになったのを助けられ、アッサムにたどり着き、デーヴァの母のもとで教師として働くようになる。一方、カンサール王国は内乱状態に陥っていた。王子ヴァラダは自分を奉じようとする臣下のために立ち上がることを決意する。そして、デーヴァと長年の時を経て再会する・・・
デーヴァがカンサール王国を去る時に、ヴァラダに「名前を呼べば、必ず駆けつける」と告げたとき、ペルシア帝国で、王が呼べば必ず戻ると約束した将軍(サラール)がいたことに因んで、デーヴァに「サラール」のあだ名を付けたのがタイトルの由来。
インドが独立したあとも、地図に載らないまま都市国家として存続しているカンサール王国が本作の舞台。マンナール族、シャウリヤーンガ族、ガニヤール族という3つの部族が実効支配しています。抗争が続く中で、デーヴァがヴァラダの前に現れるのは本作の最後。実は、本作の原題は『Salaar: Part 1 – Ceasefire』。デーヴァの活躍は、Part2で描かれるということのようです。乞うご期待! (咲)
2023年/インド/テルグ語/174分/シネスコ/5.1ch
字幕:藤井美佳、字幕監修:山田桂子
配給:ツイン
公式サイト:https://salaar-movie.com/
★2024年月7月5日(金)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー
先生の白い嘘
監督:三木康一郎
原作:鳥飼茜 「先生の白い嘘」(講談社「月刊モーニング・ツー」所載)
脚本:安達奈緒子
音楽:コトリンゴ
主題歌:yama 「独白」 (ソニー・ミュージックレーベルズ)
出演:奈緒(原美鈴)、猪狩蒼弥(新妻祐希)、 三吉彩花(渕野美奈子)、風間俊介(早藤雅巳)
高校で国語の教師をしている原美鈴は騒がしく奔放な生徒たちを見ながら、地味だった自分の学生時代を思い出す。職員室に名指しでかかってきた業者だという電話は、早藤からだった。彼は美鈴の親友・美奈子の婚約者だったが、美鈴の初めての相手でもあった。無理矢理組み伏せられた美鈴は、壊れないように自分を納得させるしかなかった。以来、気まぐれで暴力的な早藤の誘いを断れずにいる。
美鈴のクラスの新妻祐希が年上の女性と交際していると噂が流れ、担任として真相を確認することになった。祐希は本当だと素直に認めるが、男女の格差を感じた美鈴は苛立ち、思わず本音をぶつけてしまう。
原作のコミックは’13〜’17年まで青年漫画誌に連載されました。ジェンダー格差とか、#MeToo運動がまだ広まる前のころ。女性の立場からの発信は当時の若い人たちにどんな風に届いたのか、今映画化されたことで伝わり方が違うでしょうか。
映画ではこれまでになかった顔を見せる奈緒さん、風間さんら俳優たちが、強く印象に残ります。それが仕事とはいえ、演じるのに大変だったのではと想像します。よその取材記事で奈緒さんが「インティマシー・コーディネイター」を要望したのに、監督が起用しなかったと知りました。細かに話し合って撮影したとのことで、映画は完成しました。プロの方がまだ数人しかいない、これまでいなくても撮れてきたこともあるのでしょうが、これは映画界全体が変わってもらいたいことです。
ポスターにアップになった美鈴の目は泣きはらしています。それぞれの気持ちも描いた本作をあなたはどう見るでしょうか。(白)
2024年/日本/カラー/117分/R15
配給:松竹ODS事業室 / イノベーション推進部
(C)2024「先生の白い嘘」製作委員会
(C)鳥飼茜/講談社
https://senseino-shiroiuso.jp/
公式X & Instagram :@shirouso_movie
★2024年7月5日(金)全国劇場&3面ライブスクリーンにてロードショー
THE MOON(原題:더 문)
監督・脚本:キム・ヨンファ
撮影:キム・ヨンホ
音楽:イ・ジェハク
出演:ソル・ギョング(キム・ジェググ)、ド・ギョンス(ファン・ソヌ)、キム・ヒエ(ユン・ムニョン)、チョ·ハンチョル(キム・インシク科学技術情報通信部大臣)、パク・ビョンウン(チョン・ミンギュ:ナロ宇宙センターの現責任者 )、チェ・ビョンモ(オ・ギュソク:科学技術情報通信部第一次官)、イ・ソンミン(ファン・ギュテ)、ホン・スンヒ(ハンビョル:ソベク山天文台天体観測チームのインターン)、キム・レウォン (イ・サンウォン)、イ・イギョン(チョ・ユンジョン)
月面の有人探査を叶えるべく、イ・サンウォン、チョ・ユンジョン、ファン・ソヌの3人を乗せた韓国の有人ロケット「ウリ号」は宇宙へ旅立った。しかし月周回軌道への進入を目前に、太陽風の影響で通信トラブルが発生、地球との交信ができなくなる。船外で修理作業中のサンウォンとヨンジュンの2人が事故のため次々と亡くなってしまった。
一人残された新人宇宙飛行士ソヌを生還させるため、キム・ジェグクが宇宙センターへ呼び戻される。彼は5年前の有人ロケット「ナレ号」爆発事故の責任を取って組織を去った当時の責任者だった。一方、ソヌは仲間の遺志を継ぐ決断をする。
ただ一人宇宙船に残ったファン・ソヌを演じるド・ギョンスは男性アイドルグループEXOのメイン・ボーカルのD.O.(ディオ)。出演映画ではキム・ヨンファ監督の『神と共に 第一章 罪と罰』(2018)『神と共に 第二章 因と縁』(2019)『スウィング・キッズ』(2020)などが日本で公開されています。
ロケットの内部、壮大で美しい宇宙空間は観客の眼をとらえて離しません。これらがみな遠く離れた場所でそれぞれ作られた映像だ、などちらりとも浮かびません。長い時間をかけて詳細な部分まで調査して作り込んだ結果できあがったものです。
事故が起こってからのソヌと韓国の宇宙センターの交信、政治も絡むNASAの緊張した関係、気の抜けないやりとりが続きます。ソヌが無事切り抜けるのを願って、こちらとあちらが一つになります。どうぞ大きな画面でドキドキしてください。格別な没入感が味わえます。
ソル・ギョングが登場するからには安心だ、という考えは捨てましょう。紆余曲折ありあり、天文台インターンのハンビョルに注目してね。騒がしい政府高官と違って、実にいい仕事をします。(白)
主演のソル・ギョングには、もちろん期待していましたが、キム・レウォンとイ・ソンミンがどんな役で出てくるのかが、楽しみでした。見落とさないようにしなくては・・・と心配していましたが、キム・レウォンは、有人ロケット「ウリ号」のイ・サンウォン船長役として早々に出てきました。そしてあっけなく宇宙に消えてしまうのですが、その後も度々回想シーンで出てきて和ませてくれました。イ・ソンミンは、月に一人取り残されたファン・ソヌの父親ファン・ギュテ役。5年前、打ち上げに失敗した「ナレ号」の関係者でした。ファン・ソヌが父の思いも背負って「ウリ号」に乗り込んだことに涙です。
そして、知的で実にカッコよかったのが、キム・ヒエ演じるNASAの統括ディレクター、ユン・ムニョン。ソル・ギョング演じるキム・ジェググとはワケありの縁。キリッとしたユン・ムニョンと対照的にキム・ジェググが世捨て人のように覇気がないのですが、これまた癒されました。さすが演技派ソル・ギョングでした。(咲)
2023年/韓国/カラー/ビスタ/129分/韓国語・英語
配給:クロックワークス
(C)2023 CJ ENM Co., Ltd., CJ ENM STUDIOS, BLAAD STUDIOS ALL RIGHTS RESERVED
https://klockworx-v.com/moon/
【公式X】 @themoon_jp
★2024年7月5日(金)新宿バルト9ほか全国ロードショー
YOLO 百元の恋(原題:热辣滚烫)
監督:ジャー・リン『こんにちは、私のお母さん』
原作:『百円の恋』(2014/監督:武正晴 脚本:足立紳)
監修:足立紳、武正晴、佐藤現
出演:ジャー・リン(ドゥ・ローイン)、ライ・チァイン(ハオ・クン)、チャン・シャオフェイ(ローダン)、ヤン・ズー(ドゥドゥ)、
32歳のローインは無職で親と同居、仕事もせず親のすねかじりをしている。のべつ食べているので太る一方だ。彼氏を親友に寝取られ、意気消沈しているところ、子連れで出戻った妹と大喧嘩して勢いで実家を出て来てしまった。初めての一人暮らしでご飯を作ってくれる母はいない。生活のためにまかないつきの食堂に職を得た。たまたまボクシングジムのコーチのハオと出逢い、営業トークの苦手なハオは、しぶしぶローインをイベントに誘う。泥酔したハオを部屋に泊めたローインは・・・。
ジャー・リンが『百円の恋』(2014 )の主演・安藤サクラに感銘を受けたことがきっかけて、リメイクが実現しました。武正晴監督、脚本の足立紳、佐藤現プロデューサーを監修に迎えて、オリジナルを大切にしながらコメディエンヌである自身の持ち味もたっぷり加えています。何より驚いたのは、監督・主演を務めメーキャップや造形に頼らず、本当に100㎏から50㎏も減量して撮影に臨んだこと。同じ人?!と二度見してしまいました。
『こんにちは、私のお母さん』(2021)で初監督・脚本・主演を果たしたジャー・リンは人気の俳優ですが、本作のために一年以上メディアの前に姿を見せず、増量と減量&ボクシングのトレーニングに励んだそうです。
あんなに怠け者だったローインがハオに心が動いてからというもの、すっかり可愛らしくなったうえ、こまめによく働きます。変わりようにびっくり。愛は強し。そしてボクシングに向かうローインを応援するように鳴り響くのは、あのテーマでした。ここから審査に通るまでの彼女の姿にくぎ付けになります。
この中国リメイク版は『热辣滚烫』(読み:ルーラーグンタン)のタイトルで2024年2月10日に公開され、春節映画のNO.1ヒット作となりました。世界累計興収は740億円超えというのにも驚愕。ダイエットしたい人が飛びついたのか、この映画の後、ボクシング熱も高まったとか。エンドロールには名シーンの後、1月4日(105㎏)から11月24日までの減量の記録が出ました。
「YOLO」とは「You Only Live Once(人生は一度きり)」の略。この映画を観た誰もが「私も!」と背中を押されるような、エンパワーメント作品です。オリジナルもまた見直したくなりますよ。(白)
2024年/中国/カラー/129分
配給:東映ビデオ
(C)New Classics Media Corporation
https://yolo100gennokoi.com/
★2024年7月5日(金)より全国公開中
クワイエット・プレイス DAY 1(原題:A Quiet Place: Day One)
監督・脚本:マイケル・サルノスキ
キャラクター創造:ブライアン・ウッズ、スコット・ベック
ストーリー:ジョン・クラシンスキー、マイケル・サルノスキ
出演:ルピタ・ニョンゴ(サミラ)、ジョセフ・クイン(エリック)、アレックス・ウルフ()、ジャイモン・フンスー(アンリ)
喧騒の大都市・ニューヨーク。
詩人のサミラは観劇のためマンハッタンに来ていた。唯一の家族、猫のフロドも一緒。コンビニに寄って外の尋常ではない喧噪に気づく。隕石と一緒に”何か”が飛来している。逃げ惑う人々にそれが襲い掛かり、阿鼻叫喚の地獄となってしまった。どうすればいいのかわからないまま、フロドを抱いて走った。劇場で知った顔を見つけて安堵するが、声を出すことを制止された。”何か”は小さな音さえ聞き逃さず、ものすごいスピードで襲ってくることがわかる。“何か”の群れに支配された街に、生き残る術など存在するのか。
「音を立てたら即死」というキャッチを覚えていますか?大ヒットしたジョン・クラシンスキー監督の『クワイエット・プレイス』(2018)『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』(2021)に続く第3弾ですが、時系列では最初になります。”何か”が地球にやってきたその一日目を描いています。人類を襲うそれが、「音に反応する」ということがわかるまでに、多くの人々が瞬殺!!
あのクリーチャーが迫ってくるのを見て、声を出さずにいられるでしょうか?
前日譚にあたるこの物語では、ヒロインのサミラ(サム)と猫のフロドが大活躍します。サムとフロドって、「指輪物語」のホビットのコンビですね。こちらの一人と一匹が旅するのは、捕食者が跋扈し、瓦礫の山と化したマンハッタン。猫は足音たてませんし、犬のように吠えたりしません。このフロドくん、ミャ~とも鳴かずとてもいい案内役でした。サムがどうしても行きたいところはパッツィというピザ屋さん、それは彼女の思い出の店で、そこで食べることが唯一の望みなのです。出会った法学生のエリックは、サムを助けて希望をつないでいきます。詳しく書けない中でのどんな説明よりも、自分の眼で見るのが一番。ぜひぜひ劇場へ。(白)
2024年/アメリカ/カラー/100分
配給:東和ピクチャーズ
(C)2024 PARAMOUNT PICTURES
https://quietplace.jp/
★2024年6月28日(金)全国ロードショー中
2024年06月23日
ボーン・トゥ・フライ 原題:長空之王 (Born to Fly)
監督・脚本:リウ・シャオシー
脚本:グイ・グアン
出演:ワン・イーボー(レイ・ユー)、フー・ジュン(チャン・ティン)、ユー・シー(ドン・ファン)、
空軍のレイ・ユーは訓練中に起こしたトラブルで、操縦能力を発揮できずにいた。ベテランの戦闘機のテストパイロットチーム隊長のチャンはレイの才能に気づいてチームに誘う。レイは厳しい審査を経て、テストパイロットチームの一員となった。精鋭が集められたチームでは、新世代ステルス戦闘機開発のため、日々高度一万メートル以上でのテストを繰り返している。成果が出せないレイはライバルのドンとも諍いを起こす。
リウ・シャオシー監督は本作で商業映画デビューながら、第36回金鶏奨新人監督賞を受賞。中国で今最も注目される新人監督となりました。テストパイロットだった親友が、飛行中に亡くなった悲痛な体験があり、テストパイロットの存在を知ってほしいと考えていたそうです。また空軍の飛行機を撮影した経験から、失敗や教訓を生かして撮影の準備に時間をかけたとか。演じる俳優たちは実際のテストパイロットたちの指導を受けました。その甲斐あって身体の動きや表情がリアルです。さらにパワーアップしたバーチャル撮影を駆使した迫力のシーンをご覧ください。
中国公開時は、わずか3日間で興収40億円を突破し、初週の興収ランキングで第1位を記録!その後もロングランヒットを飛ばし、世界興収177億円を打ち立てる快挙を成し遂げました。愛国心たっぷりの映画ですが、私でもエンタメ作品として、若者の成長物語として楽しめました。
主演のワン・イーポーは、2014年に中韓混合ボーイズグループ”UNIQ”のメンバーとしてデビューしました。アイドル時代の動画を探してみたら絵に描いたような美少年でした。2019年、時代物のドラマ「陳情令」で大ブレイクして今や映画に主演、ブランドのアンバサダーと、ひっぱりだこの人気です。どこまで行っちゃうのでしょう。(白)
2023年/中国/カラー/シネスコ/128分
配給:ツイン
(C)2023 Shanghai PMF Pictures Co., Ltd. & Mr. Liu Xiaoshi
★2024年6月28日(金)よりTOHOシネマズ日比谷他全国ロードショー
ワン・イーボーの日本の観客へ向けたメッセージ動画はこちら
長岡大花火 打ち上げ、開始でございます
監督:坂上明和
撮影:小山一彦
ナレーション:佐藤栞里
題字:金澤翔子
「日本三大花火大会」は、秋田県大仙市の「全国花火競技大会(大曲の花火)」8月31日、茨城県土浦市の「土浦全国花火競技大会」11月2日、新潟県長岡市「長岡まつり大花火大会」の3つ。長岡花火だけが競技大会ではなく、戦争や災害の歴史を経て慰霊と平和への祈りから始まった。毎年8月の2日、3日に渡り信濃川河川敷には、100万人もの観客が全国から集まってくる。
長年テレビ新潟で映像の仕事に関わった坂上明和監督の初監督作品。2023年8月の花火大会の様子を、20台以上のカメラで記録した。誰も見たことのない場所から撮影した映像が目の前に広がる。2004年の中越地震から復興20年祈念ドキュメンタリー。
この日に向けて工夫をこらし、美しく壮大な花火を作る花火師たち。見せ所を考えプログラムを組む人。会場設営に駆け回るスタッフ、観客の安全のために裏から支えるスタッフ、数えきれない人々がこの大会を作っています。その真摯な言葉が胸に刺さります。
夜空を見上げる人たちの様々な思いが、画面を通じて伝わってくるようでした。一瞬だけ描かれる打ち上げ花火は儚いものの代表のように言われますが、この迫力にそんな感想は吹き飛ぶはず。一度は行って自分の眼で見たい花火大会ですが、今年はひとまず映画館の大きなスクリーンで光と音のコラボをお楽しみください。(白)
2024年/日本/カラー/100分
配給:ナカチカピクチャーズ 宣伝:MAP
(C)2024 長岡花火ドキュメンタリー映画製作プロジェクト
HP:https://nagaoka-hanabi-movie.jp/
★2024年6月28日(金)ほか全国ロードショー
ふたごのユーとミー 忘れられない夏(原題:You & Me & Me)
監督・脚本:ワンウェーウ & ウェーウワン・ホンウィワット
製作:バンジョン・ピサンタナクーン
出演:ティティヤー・ジラポーンシン (ユー/ミー) アンソニー・ブイサレー (マーク)
一卵性双子のユーとミーは生まれたときからずっと一緒、何でも分け合い育ってきた。中学生になった今は、レストランの食べ放題や観たい映画をちゃっかり一人分の料金で楽しんでいる。違いはミーの頬にあるホクロ。ユーが苦手な数学の追試は、得意なミーがホクロを消して受けてきた。ところがこの追試で、ハーフの素敵な男の子マークと知り合い仲良くなった。これまで隠しごとなく、どんなことも打ち明けてきた一番の仲良しの2人に、初めてシェアできない“感情”が芽生えてしまった。
1999年が舞台の物語。「ノストラダムスの大予言」や「Y2K問題」で揺れていたのを思い出します。いつも屈託ない姉妹ですが、不仲の両親や自分たちの将来も実は不安です。長編映画デビューの姉妹監督は一卵性双子。もしも見分けがつかないほどそっくりだったら「やってみたいこと」を、映画館やレストランで実践して見せてくれて大いに笑えます。しょっちゅうやったらばれますよね。監督姉妹も試したことがあったのでしょうか?
驚くのは、ユーとミーを演じたのが双子ではなく、ティティヤー・ジラポーンシンの「一人二役」だったことです。それまで演技経験がなかったのに大抜擢されて、この難役です。見た目そっくりでも積極的なミーと堅実なユーの性格も演じ分け、タイ映画監督協会賞の最優秀新人女優賞を受賞しています。ほのぼのしてちょっと胸キュンな青春ストーリー。(白)
2023年/タイ/カラー/122分
字幕翻訳 : 宮崎香奈子 字幕監修 : 高杉美和
配給・宣伝 : リアリーライクフィルムズ
後援 : タイ王国大使館・タイ国政府観光庁
(c)2023 GDH 559 Co., Ltd. All Rights Reserved / ReallyLikeFilms
www.reallylikefilms.com/futago
★2024年6月28日(金)よりより新宿ピカデリーほかにて全国ロードショー
チャーリー 原題:777 Charlie
監督・脚本:キランラージ・K
出演:チャーリー、ラクシット・シェッティ、サンギータ・シュリンゲーリ、ラージ・B・シェッティ、ダニシュ・サイト、ボビー・シンハー
独り者で頑ななダルマは、職場でも家の近所でも偏屈者と疎まれ、楽しみといえば酒と煙草とチャップリンの映画を観ることぐらい。そんな彼も少年時代は両親と妹と楽しく暮らしていた。ある大雨の日、両親と妹が乗った車が飛び出してきた犬のために事故を起こして死んでしまったのだ。
ある日、彼の家に一匹のラブラドールの子犬がやってきて住み着いてしまう。ダルマの住む地区ではペット禁止。登録すれば譲りやすいと獣医に言われ、777の登録番号をもらい、「名前は?」と聞かれ、咄嗟に「チャーリー」と答える。
一度は人にもらわれていくが、チャーリーが家の中をめちゃくちゃにしたと言われ、連れて帰る。いたずら好きのチャーリーに振り回されながらも、次第に心を通わせていくが、チャーリーが血管肉腫で余命わずかだと判明する。自分を癒してくれたチャーリーに恩返しがしたい。チャップリンの映画の雪の場面に歓喜しているチャーリーに気づいて、本物の雪景色を見せようと、ダルマはお手製のサイドカーにチャーリーを乗せ、南インド・マイスールからヒマラヤを目指す旅に出る・・・
主演ダルマを務めたのはカンナダ語映画界の人気スター、ラクシット・シェッティ。自身の映画会社パランヴァ・スタジオによる製作としてプロデューサーも兼ね、監督のキランラージ・Kとともに、新型コロナのパンデミックによる中断期間を含め3年以上の製作期間、167日に及んだ撮影を経て本作を完成させています。
ヒンディー語の「ボリウッド」、テルグ語の「トリウッド」、タミル語の「コリウッド」に対し、「サンダルウッド」と称されるカンナダ語の映画として歴代5位の興行収入を記録。
第11回南インド国際映画賞 カンナダ語映画部門最優秀映画賞&最優秀主演男優賞
第69回インド ナショナル・フィルム・アワード カンナダ語長編映画部門 作品賞
ダルマは、毎朝、イドゥリ(発酵蒸しパン)を二つ買いにいくのですが、お店のお婆さんが一つおまけしてくれても放り出すような頑なな男。それが、チャーリーと過ごすようになって、煙草もやめ、人にも優しく接するようになります。 お向かいの少女アドリカが、そんなダルマをいつも見守って応援しています。 動物愛護委員会に務める女性デーヴィカは、ダルマがチャーリーを虐待しているのではないかと疑って、チャーリーを連れて旅に出たダルマをスクーターで追いかけます。
南インドから北を目指すインド縦断の旅は、海辺を走ったり、城壁の町を通り過ぎたり、シク教徒やチベット族に出会ったりと、多様なインド満載。 途中でドッグショーにも出演してしまいます。
こうして旅するうちに、チャーリーが生まれ育った悪徳ブリーダーの陣地を見つけ、動物愛護委員会のデーヴィカが摘発することになります。
ちなみに、チャーリーと名付けたけれど、雄ではなく雌犬。 チャーリーはダルマに素敵な贈り物を遺してくれます。
ワンちゃんとの心温まる物語とインドの広大な風景に癒されました。(咲)
2022年/インド/カンナダ語/カラー/シネスコ/164分/5.1ch
配給:インターフィルム
公式サイト:https://777charlie-movie.com/
★2024年6月28日(金)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー!!
2024年06月22日
プロミスト・ランド
脚本・監督:飯島将史
原作:飯嶋和一「プロミスト・ランド」(小学館文庫「汝ふたたび故郷へ帰れず」収載)
出演:杉田雷麟、寛一郎、三浦誠己、占部房子、渋川清彦 / 小林薫
春の東北、マタギの伝統を受け継ぐ山間の町。高校を出て親の仕事を手伝う20歳の信行は、閉鎖的な地に嫌気が差しながら、流されるままに暮らしている。
そんなある日、マタギ衆の寄り合いで、熊狩りを指揮する親方の下山が一同に意外な言葉を告げる。
「今年はどうも申請が通らねえみたいだ」
熊が減っていることを理由に、役所から今年の熊狩りを禁止する通達が来たという。違反すれば密猟とみなされ、マタギとして生きる道を閉ざされてしまう。皆が落胆しながら決定を受け入れるなか、ただひとり、信行の兄貴分である礼二郎だけが、通達など聞くことはないと反発する。
後日、鶏舎で働く信行のもとに礼二郎が訪ねてきた。「お前の手がいる」と、ふたりだけで熊狩りに挑む計画を持ち掛けられる。頑なに拒んだ信行だったが、ある早朝、そっと山に向かう礼二郎と信行の姿があった・・・
禁を破って熊撃ちをする礼二郎ですが、獲物となった熊を解体するときには、礼を尽くして「ケボカイ」の儀式を行います。熊の霊が天にのぼり、再び獲物となって現われるのを山の神々に祈念する儀礼。マタギたちに受け継がれてきた自然への畏怖の念と共生の願い。
覚悟を持って生きる礼二郎を、寛一郎さんが鋭い眼光で体現しています。
それにしても今、北海道、東北、信州など各地で熊に襲われて人が亡くなることが散見されます。熊が暮らす森に何か変化があったのは間違いありません。気候変動のせいでしょうか・・・ 私たち人間の功罪もありそうです。(咲)
◆ユーロスペース初日舞台挨拶
2024年6月29日(土)
11:00の回(上映後)
13:20の回(上映前)
登壇者(敬称略):杉田雷麟 寛一郎 飯島将史(監督)
2024年/日本/カラー/ 89分
配給:マジックアワー/リトルモア
公式サイト:https://www.promisedland-movie.jp/
★2024年6月14日㊎MOVIE ONやまがた、鶴岡まちなかキネマにて先行公開
6月29日㊏ ユーロスペースほか全国順次公開
レ・ミゼラブル 原題:Les Misérables
(C) 1988 / Les Films 13 - STUDIOCANAL - TF1 Films Production - Stallion Film Und Fernseh Produktiongesellschaft - Gerhard Schm Film Script. All Rights Reserved
監督・脚本・製作:クロード・ルルーシュ
音楽:フランシス・レイ、フィリップ・セルヴァン、エリック・ベルショ、ミシェル・ルグラン、ディディエ・バルブリヴァィアン
CAST
アンリ・フォルタン(父/子)/ジャン・ヴァルジャン:ジャン=ポール・ベルモンド
アンドレ・ジマン:ミシェル・ブジュナー
エリーズ・ジマン:アレサンドラ・マルティンヌ
サロメ・ジマン:サロメ・ルルーシュ
フランソワーズ:アニー・ジラルド
フランソワ:フィリップ・レオタール
カトリーヌ・フォルダン/フォンチーヌ:クレマンティンヌ・セラリエ
刑事/ジャヴェール警部:フィリップ・コルサン
19世紀が終わり20世紀を迎えた日、映画が誕生した1995年生まれで5歳の少年は皆とカウントダウン。父アンリ・フォルタンが雇い主の伯爵を乗せて運転していた時、伯爵が自殺。だが、アンリが殺したとして囚われる。脱獄に失敗してアンリは無念の死を遂げる。少年は母に連れられノルマンディーの漁村のホテルに住み込む。ほどなく、「息子の名を夫と同じアンリに変えます」の手紙を残して自殺してしまう。両親を亡くしアンリの名となった少年は、ノルマンディーの漁村で居酒屋を営む夫婦に育てられる。
やがて、アンリはボクシングのチャンピオンとなるが、1931年に引退し、運送業を始める。第二次世界大戦がはじまり、アンリはユダヤ人の弁護士ジマン家族の引っ越しを請け負う。だが、密告によって一家はスイスへの逃亡を余儀なくされ、フォルタンはそれも請け負う。危険が迫り、アンリは一家の娘サロメを修道院の寄宿学校に預け、夫婦を国境近くまで送るが、ナチスの卑劣な罠にはまって夫婦は引き裂かれる。アンリもナチスに協力する警察に逮捕されるがその後脱獄し、強盗団に参加、さらに終戦間近にはレジスタンスに加わる。ついに終戦を迎える。引き裂かれたユダヤ人一家は再び会うことができるのか・・・
ヴィクトル・ユゴーの名作「レ・ミゼラブル」を20世紀の激動の時代を舞台に大胆にアレンジして描いた大河ドラマ。
ジャン=ポール・ベルモンドが主人公アンリとその父、さらに劇中劇のジャン・ヴァルジャンの3役を熱演。皺を刻んだ老齢のジャン=ポール・ベルモンドが、深みのある演技を見せています。
第二次世界大戦時にユダヤ人が味わった悲劇。ユダヤ人の弁護士ジマンの妻エリーズはバレリーナで、結婚を機にカトリックからユダヤに改宗。ユダヤはオペラ座で踊れないとクビになります。皆が羨む立派な家具を乗せて引っ越しますが、すぐに密告され、家具を引っ越し先に残したままジマン一家はスイスを目指します。修道院に預けられた娘サロメは、一生懸命カトリックのお祈りを覚えます。ナチスの罠にはまって、美人の妻エリーズは連行されて、ドイツ人の相手をさせられます。死んだと思った弁護士の夫は、農業を営む夫婦に匿われます。次第に農夫は妻がジマンと出来ていると疑います。その腹いせか、ジマンにドイツ優勢と伝えます。ほんとは、もうドイツは敗北しているのに!
本作を観て、今もパレスチナやウクライナをはじめ、世界の各地で戦禍に見舞われている人たちが大勢いることを思いました。家族が戦争で引き裂かれる時代が早く終わりますように・・・ (咲)
1995年/フランス/フランス語/カラー/ヨーロピアン・ヴィスタサイズ(1:1,66)/175分
日本語版字幕: 松浦美奈
日本初公開:1996年8月3日
© 1994 / LES FILMS 13 - TF1 FILMS Production. All Rights Reserved
提供:JAIHO/配給:エデン
公式サイト:https://belmondoisback.com/#lineup3
ジャン=ポール・ベルモンド傑作選 GRAND FINALE
https://belmondoisback.com/
★2024年6月28日(金)より新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー!
ライオンと呼ばれた男 4Kリマスター版 原題:Itineraire D'un Enfant Gate
(C) 1988 / Les Films 13 - STUDIOCANAL - TF1 Films Production - Stallion Film Und Fernseh Produktiongesellschaf
t - Gerhard Schm Film Script. All Rights Reserved
監督・脚本:クロード・ルルーシュ
製作:ジャン=ポール・ベルモンド、クロード・ルルーシュ
音楽:フランシス・レイ
CAST
サム・リオン:ジャン=ポール・ベルモンド
アル・デュヴィヴィエ:リシャール・アンコニナ
ヴィクトリア:マリー=ソフィー・L
イヴェット:リオ
ピエロ・デュヴィヴィエ:ダニエル・ジェラン
コリーヌ:ベアトリス・アジェナン
サム:ミシェル・ボーヌ
1930年代のパリ。3歳の少年サムは母親に回転木馬のところに置き去りにされ、サーカス団に拾われる。ライオンが好きな少年は、リオンという名字をつけられる。サム・リオンは、空中ブランコのスターになるが、事故で大怪我を負い、サーカスを去る。
50代となったサムが、過去を振り返っている。サーカス時代の経験を活かして清掃会社を立ち上げた日々や家族のこと・・・。実業家として大成功を収めたが、様々なことに疲れたサムは、ある日、ヨットで単独大西洋横断に挑む。だが、大西洋上で行方不明となってしまい、2年後、サムは死んだものと思われ、会社は息子と娘が引き継いでいた。
実はサムはアフリカにいた。そこでサムは、「あなたの会社をクビになった」という青年アルに出会う。会社の経営がうまくいってないことを知ったサムは、アルの人柄を見込んで仕事のノウハウを伝授し、会社の経営を立て直す目的でアルに会社の面接を受けるよう送り込む。顧問弁護士が難色を示す中、娘のヴィクトリアはアルを気に入り、入社させる・・・
ジャン=ポール・ベルモンドは、本作で初の大きな演技賞となった第14回(1989)セザール賞主演男優賞を受賞。
ジャン=ポール・ベルモンド58歳の時の作品で、実に渋いです。人生をリセットしようと訪れたアフリカの地は、かつて妻と新婚の時に訪れたところ。ヴィクトリアの滝に滞在していた時に娘を身籠ったと信じる妻が、ヴィクトリアと名付けたエピソードが語られます。
ライオンが近づいてもひるまないサムに、アルも惚れこみます。サムはアルに挨拶一つで相手の気持ちを変えることができると、何度も「ボンジュール」と言わせます。そして、相手に話をさせることが大事だということも教えます。娘のヴィクトリアは、アルの話し方に父を感じると言います。サムの特訓、成功!
サムがなんとか娘たちにまた会いたいと、アルと策略し、変装して会うシーンにほろり。(咲)
1988年/フランス・ドイツ合作/フランス語/カラー/ヨーロピアン・ヴィスタサイズ(1:1,66)/127分
日本語版字幕:岸 正世
日本初公開:1991年4月20日
提供:JAIHO/配給:エデン
© 1988 / Les Films 13 - STUDIOCANAL - TF1 Films Production - Stallion Film Und Fernseh Produktiongesellschaft - Gerhard Schm Film Script. All Rights Reserved
公式サイト:https://belmondoisback.com/#lineup2
ジャン=ポール・ベルモンド傑作選 GRAND FINALE
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★2024年6月28日(金)より新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー!
おかしなおかしな大冒険 4Kリマスター版 原題:Le Magnifique
(C) 1988 / Les Films 13 - STUDIOCANAL - TF1 Films Production - Stallion Film Und Fernseh Produktiongesellschaft - Gerhard Schm Film Script. All Rights Reserved
監督:フィリップ・ド・ブロカ(『大盗賊』『リオの男』『カトマンズの男』)
製作:ジャン=ポール・ベルモンド、ジョルジュ・ダンシジェール、アレクサンドル・ムヌーシュキン
音楽:クロード・ボラン
キャスト:
フランソワ・メルラン & ボブ・セント・クレア:ジャン=ポール・ベルモンド
クリスティーヌ & タチアナ:ジャクリーン・ビセット
シャロン & カルポフ:ヴィットリオ・カプリオーリ
マダム・バーガー:モニク・ターベ
警官:マリオ・ダヴィッド
コリン大佐:ハンス・メイヤー
電気屋:ジャン・ルフェーブル
配管工:ド・ブロカ監督(カメオ出演)
ポントーベル将軍:レイモンド・ジェローム
冒険小説家フランソワ・メルランは、パリのアパートで秘密諜報員ボブ・セント・クレアを主人公に、メキシコのアカプルコを舞台にした人気シリーズの最新作を執筆中。自分が主人公になり、大活躍する姿を妄想しながら執筆するのが彼のスタイルだ。今回のヒロインは同じアパートに住む社会心理学専攻の美人女子大生クリスティーヌ。たまにエレベーターで会う彼女にフランソワは夢中で、自作の中にセクシーな女スパイ、タチアナとして登場させている。タイプライターが壊れ、購入代金の前借を出版社の編集長シャロンに頼みにいくが、嫌味を言われた上に原稿を督促される。アパートの給湯器が壊れ、配管工を呼ぶが電気の修理が先だと言われてしまう。ひょんなことからクリスティーヌに自分の小説を読んでもらう機会ができる。クリスティーヌは気に入って、ほかの小説も読みたいとまとめて何冊も持っていく。急速に二人は親密になってフランソワの筆も一気に進むが、実は編集長がクリスティーヌを狙っていると知り、フランソワは気が気でない。フランソワの妄想はエスカレートし、小説の内容はどんどん暴走していく…
冒頭、陽気な歌に合わせメキシコの民族衣装で踊る人たち。工作員の男が電話をかけている時に、電話ボックスごと釣りあげられ、ヘリコプターで海に落とされ、サメに襲われ死んでしまいます。まだ携帯電話のない時代。
この後、バグダードの場面が出てくるのですが、建物はスペインのアンダルシアかモロッコ風。空港のターンテーブルで待つ人の中にもモロッコ風の服装の男女やアラビア半島風の男。かつての欧米の映画でありがちの間違いに苦笑。 この空港で瀕死の状態の諜報員を保護するのですが、アルバニアのパスポートを持っていて、言葉はアルバニア語しか通じません。5人の通訳が登場して、ルーマニア語、セルビア語、チェコ語を経て通訳してもらう場面がなんとも可笑しかったです。今なら、iPhoneの翻訳機能で一発ですね。こんなところにも、時代を感じます。手打ちのタイプライターも懐かしい!
ジャン=ポール・ベルモンドがまだ40歳くらいで、元気溌剌、乗りに乗ってます。(咲)
1973年/フランス・イタリア合作/フランス語/カラー/ヨーロピアン・ヴィスタサイズ(1:1,66)/93分
日本語版字幕:松浦美奈
日本初公開:1974年6月22日
© 1973 / STUDIOCANAL - Nicolas Lebovici - Oceania Produzioni Internazionali Cinematografiche S.R.L. All Rights Reserved
提供:キングレコード 配給:エデン
公式サイト:https://belmondoisback.com/#lineup1
ジャン=ポール・ベルモンド傑作選 GRAND FINALE
https://belmondoisback.com/
★2024年6月28日(金)より新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー!
ジャン=ポール・ベルモンド傑作選 GRAND FINALE
(C) 1988 / Les Films 13 - STUDIOCANAL - TF1 Films Production - Stallion Film Und Fernseh Produktiongesellschaft - Gerhard Schm Film Script. All Rights Reserved
2021年9月6日に惜しくも世を去ったフランスの国民的英雄にして映画界の伝説(レジェンド)、ジャン=ポール・ベルモンド。
2020年10月、2021年5月、そして2022年9月の3回にわたって彼の主演作20本を厳選して上映し、大好評を博してきた「ジャン=ポール・ベルモンド傑作選」が、ここにその集大成ともいうべき最高のラインナップを揃え、感動のフィナーレを飾ることになりました。その名も「GRAND FINALE(グランドフィナーレ)」。
最後の傑作選、感動のフィナーレ。すべてをやり尽くした男の悔いなき映画人生。
ヌーヴェル・ヴァーグの顔として鮮烈に世界に登場し、体を張った危険なアクションとスタントの数々で現代アクション活劇の父となり、数々のブロックバスター級ヒット作でフランスのNO1.マネーメーキング・スターとして君臨、軽快な爆笑ナンセンス・コメディから文芸感動作まで、演技派名優として堂々たる風格を見せ続けた映画史上最高のスター、ジャン=ポール・ベルモンド。まさに映画の神に愛されたその完璧なるフィルモグラフィは、“面白くなければ映画じゃない“と断言する娯楽派から、“映画は芸術”と譲らないシネフィルまで、すべての映画ファンを唸らせ、虜にしてきた。
待望久しく、長き交渉の末、遂に傑作選に登場する3本は、ベルモンドの華麗なる映画人生において、様々な意味での到達点といえる。まさに傑作選のグランドフィナーレに相応しいこれらの傑作は、ベルモンドが映画スターとしてあらゆることを完璧にやり尽くし、悔いのない映画人生を送ったことの何よりの証であり、「これぞ、映画!」という驚くほどの魅力と感動に満ちて、観る者を圧倒する。
最後の傑作選、感動のフィナーレは、多くのベルモンド映画にとって映画館の大スクリーンで見ることが出来る最後の機会となるだろう。これは、映画ファンの映画人生にとっても極めて重要な体験となるはずだ。
「ジャン=ポール・ベルモンド傑作選」プロデューサー 江戸木純
◆幻の3大傑作 リマスター版上映
おかしなおかしな大冒険 4Kリマスター版
ライオンと呼ばれた男 4Kリマスター版
レ・ミゼラブル 2Kリマスター版
◆これまでの傑作選で上映してきた19本の作品の中から、人気作を厳選したアンコール上映
『冬の猿』4Kリマスター版
『リオの男』2Kリマスター版
『カトマンズの男』2Kリマスター版
『大頭脳』2Kリマスター版
『恐怖に襲われた街』2Kリマスター版 ※日本最終上映
『危険を買う男』2Kリマスター版 ※日本最終上映
提供:キングレコード/JAIHO
配給・宣伝:エデン
公式サイト:https://belmondoisback.com/
★2024年6月28日(金)より新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー!
ジャン=ポール・ベルモンド プロフィール
1933年4月9日、パリ郊外のヌイイ=シュル=セーヌに生まれる。父は著名な彫刻家ポール・ベルモンド、母も画家だった。幼い頃は病弱だったが、その後サッカーに熱中、さらにボクサーになる夢を持つスポーツマンとなった。やがて俳優を志し、コンセルヴァトワールに入学、56年に同校を優秀な成績で卒業する頃にはすでに有望な若手舞台俳優として注目を集めていた。57年の『歩いて馬で自動車で』で長編映画デビュー。
続きは、公式サイトのこちらで!
おそらく、出世作の『勝手にしやがれ』(ジャン=リュック・ゴダール監督/1959年)をテレビ放映で観て、ジャン=ポール・ベルモンドの風貌が気に入らなくて、その後の作品は食わず嫌いでした。
今回、『おかしなおかしな大冒険』『ライオンと呼ばれた男』『レ・ミゼラブル』の3作を拝見させていただいたら、どれも面白く、ジャン=ポール・ベルモンドの演技の幅にも感嘆。歳を重ねたベルモンドが特に素敵でした。
とはいえ、私の好みは、『ライオンと呼ばれた男』のアル役のリシャール・アンコニナ。ほかの作品も観たくなりました。もちろん、ジャン=ポール・ベルモンドの出演作も! (咲)
2024年06月21日
わたしの物語 原題:Is There Anybody Out There?
6月22日(土)より新宿K’s cinemaにて公開! 上映情報
わたしがわたしを肯定するために ありのままで生きる
監督・出演:エラ・グレンディニング
製作:ナターシャ・ダック/ニッキ・パロット/リサ・マリー・ルッソ/マーク・トーマス
日本版字幕:杉山 緑
わたしと同じような脚の人っている?
股関節がなく、大腿骨が短い20代のイギリス人女性監督エラ・グレンディニングが、4年間に渡って撮り続けたセルフ・ドキュメンタリー!
エラは「障がい」を意識せず伸び伸びと育てられた。しかし「自分だけ異質」という感覚がぬぐえない。人々が好奇の目線を投げかけてくるこの世界で、自分を肯定して生きていくためには何が必要か? その答えを求め、SNSを通じ「わたしと同じような脚の人っている?」と問いかけ、「自分と同じ障がいがある人」を探す旅が始まった。
そして、マッチングアプリで出会ったパートナー、スコットとの子を妊娠していることがわかり、出産、子育てをしながら撮影を続けた。エラを育てたシングルマザーの母や、親友である自閉症のナオミ、SNSを通じて知り合った障がいのある仲間たちとの出会い。エラの新しい世界は広がる。
障がい治療のため、大きな手術を何度も受ける子どもたちの姿に直面し、子どもの「障がい」を「治療」するべきか悩む親たち。はたして「わたしのからだ」は「治療」しなければならないのか? エラは「このままではいけないのだろうか?」と思う。四肢延長と再建手術の国際的権威ペイリー医師を訪ねると、「治療すれば人生が劇的に改善される」と言う。
障がいの「治療」と一体となって存在する〈障がい者差別(エイブリズム)〉に対峙するエラ。その常に前向きであろうとする姿からは、差別に反対する明確なメッセージが受け取れる。翻ってそれは「普通」とは何か、「非障がい者」が優先される社会とは何かを問う。一方で、今を生きるすべての“わたし”にエールが送られているような深い感動を呼び起こす。エラが自分を肯定するために出した答えとは。
エラ・グレンディニング Ella Glendining 公式HPより
1992年1月13日生まれ。「本当の障がい者の物語を伝える」ことを信条に活動する脚本家、監督。ドキュメンタリーとフィクションの垣根を超えて活躍。2018年から22年までBFI(British Film Institute/英国映画協会)の障害者スクリーン諮問グループ(Disability Screen Advisory Group)メンバー。スクリーン・インターナショナル(Screen International)による”Stars of Tomorrow 2020”に選出される。これまでに、アーツ・カウンシル・イングランド、ナショナル・パラリンピック・ヘリテージ・トラストなどより数々の支援を受け、短編映画の脚本と監督を手がける。短編映画“Like Sunday”(2017年)では、初脚本・監督・主演。初長編監督作となる『わたしの物語』は、BFI Doc Society、Chicken and Egg Pictures、クリエイティブ・スコットランドの支援を受け製作された。現在、障がい者を主人公とした長編歴史ドラマと、脚本、共同監督、主演も務めた短編コメディ・ドラマ‟Pyramid of Disunion”を製作中。俳優としても活躍している。
『わたしの物語』公式HP
2023年/イギリス/カラー/87分/ドキュメンタリー
配給:パンドラ
宣伝デザイン:loneliness books 潟見陽
パブリシティ:スリーピン 原田徹
各地域編成協力:ミカタ・エンタテインメント
わたしがわたしを肯定するために ありのままで生きる
監督・出演:エラ・グレンディニング
製作:ナターシャ・ダック/ニッキ・パロット/リサ・マリー・ルッソ/マーク・トーマス
日本版字幕:杉山 緑
わたしと同じような脚の人っている?
股関節がなく、大腿骨が短い20代のイギリス人女性監督エラ・グレンディニングが、4年間に渡って撮り続けたセルフ・ドキュメンタリー!
エラは「障がい」を意識せず伸び伸びと育てられた。しかし「自分だけ異質」という感覚がぬぐえない。人々が好奇の目線を投げかけてくるこの世界で、自分を肯定して生きていくためには何が必要か? その答えを求め、SNSを通じ「わたしと同じような脚の人っている?」と問いかけ、「自分と同じ障がいがある人」を探す旅が始まった。
そして、マッチングアプリで出会ったパートナー、スコットとの子を妊娠していることがわかり、出産、子育てをしながら撮影を続けた。エラを育てたシングルマザーの母や、親友である自閉症のナオミ、SNSを通じて知り合った障がいのある仲間たちとの出会い。エラの新しい世界は広がる。
障がい治療のため、大きな手術を何度も受ける子どもたちの姿に直面し、子どもの「障がい」を「治療」するべきか悩む親たち。はたして「わたしのからだ」は「治療」しなければならないのか? エラは「このままではいけないのだろうか?」と思う。四肢延長と再建手術の国際的権威ペイリー医師を訪ねると、「治療すれば人生が劇的に改善される」と言う。
障がいの「治療」と一体となって存在する〈障がい者差別(エイブリズム)〉に対峙するエラ。その常に前向きであろうとする姿からは、差別に反対する明確なメッセージが受け取れる。翻ってそれは「普通」とは何か、「非障がい者」が優先される社会とは何かを問う。一方で、今を生きるすべての“わたし”にエールが送られているような深い感動を呼び起こす。エラが自分を肯定するために出した答えとは。
エラ・グレンディニング Ella Glendining 公式HPより
1992年1月13日生まれ。「本当の障がい者の物語を伝える」ことを信条に活動する脚本家、監督。ドキュメンタリーとフィクションの垣根を超えて活躍。2018年から22年までBFI(British Film Institute/英国映画協会)の障害者スクリーン諮問グループ(Disability Screen Advisory Group)メンバー。スクリーン・インターナショナル(Screen International)による”Stars of Tomorrow 2020”に選出される。これまでに、アーツ・カウンシル・イングランド、ナショナル・パラリンピック・ヘリテージ・トラストなどより数々の支援を受け、短編映画の脚本と監督を手がける。短編映画“Like Sunday”(2017年)では、初脚本・監督・主演。初長編監督作となる『わたしの物語』は、BFI Doc Society、Chicken and Egg Pictures、クリエイティブ・スコットランドの支援を受け製作された。現在、障がい者を主人公とした長編歴史ドラマと、脚本、共同監督、主演も務めた短編コメディ・ドラマ‟Pyramid of Disunion”を製作中。俳優としても活躍している。
『わたしの物語』公式HP
2023年/イギリス/カラー/87分/ドキュメンタリー
配給:パンドラ
宣伝デザイン:loneliness books 潟見陽
パブリシティ:スリーピン 原田徹
各地域編成協力:ミカタ・エンタテインメント
2024年06月20日
WALK UP 原題:탑
監督・脚本・製作・撮影・編集・音楽:ホン・サンス
出演:クォン・ヘヒョ、イ・ヘヨン、ソン・ソンミ、チョ・ユニ、パク・ミソ、シン・ソクホ
映画監督のビョンスは、インテリア関係の仕事を志望する娘のジョンスを連れて、インテリアデザイナーとして活躍する旧友ヘオクの所有するアパートを訪れる。まずは一通り中を案内してもらう。1階はレストラン、2階は料理教室、3階は賃貸で外国帰りの若いカップルが暮らしている。そして4階は芸術家向けのアトリエで広いテラスがある。地下はヘオクの作業場。 3人でワインを飲みながら語らい、ビョンスはそこにあったギターで弾き語りする。そこへ仕事の連絡が入り、ビョンスはすぐ裏だからと出かけていく。ヘオクがジョンスに「有名な映画監督を父に持つのは、どんな気分?」と尋ねると、「外では有名だけど家では違う。臆病で子供っぽい。外に女性が出来て、もう10年くらい別居」と娘のジョンス。「皆、家の中と外では違うものよ」とヘオク・・・
こうして始まる物語。いつしか時が経ち、舞台は2階、3階、4階へと移ろい、ビョンスは階が変わるごとに一緒にいる女性が違います。ホン・サンス作品常連のクォン・ヘヒョが、浮気者でありながら、小心者でどこか臆病な映画監督を体現しています。4階で暮らしている場面では、付き合っている不動産業者のジヨンが入り浸りなのですが、演じているのは、クォン・ヘヒョの実際の奥様であるチョ・ユニ。彼女がドキッとする言葉を発するのですが、ホン・サンス監督のいたずら心?
公開を前に、主演のクォン・ヘヒョが緊急来日し、上映劇場の一つ、ヒューマントラストシネマ有楽町で6月6日(木)19:00回上映後にトークイベントが開かれたのですが、その中で、出演をオファーされた時に、「ソウルの江南に面白い建物を見つけた。ここで撮影したら面白い物語ができそうだ」と言われたと語っていました。その日に撮影する分だけの台本をホン・サンス監督は毎日書いて、撮影の1時間程前に俳優に渡すというスタイル。完璧に覚えてアドリブなしでの撮影。話の展開がどうなるのか、毎日、驚くばかりだったそうです。笑いに満ちたトークの様子をぜひお読みください。(咲)
映画『WALK UP』主演クォン・ヘヒョ登壇トークイベント報告 (咲)
映画『WALK UP』主演クォン・ヘヒョ登壇トークイベント Facebookアルバム
https://www.facebook.com/media/set/?set=a.993600336100885&type=3
2022年/韓国/韓国語/97分/モノクロ/16:9/ステレオ
字幕:根本理恵
配給:ミモザフィルムズ
公式サイト:https://mimosafilms.com/hongsangsoo/
★2024年6月28日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ、アップリンク吉祥寺、Strangerほか全国ロードショー
初めての女
監督・脚本:小平哲兵
脚本:桑江良佳・羽石龍平
原作:瀧井孝作「俳人仲間」(新潮社) 原作協力:小町谷新子
出演:髙橋雄祐 芋生悠 三輪晴香
藤江琢磨 ジャン・裕一 保坂直希 籾木芳仁 大地泰仁
谷口恵太 永瀬未留 石原久 西興一朗
明治末期の高山。瀧井孝作は、父の事業が失敗し、母も病没し、12歳の時に魚屋に丁稚奉公に出される。窮屈な日々を過ごす中、臨家の文学青年の手ほどきで始めた俳句が心の拠り所だった。ある日、意を決して行った西洋料理屋「ひさごや」で、そこで働く玉という美しい年上の女性に心を惹かれる。
“堤長き 並松月夜 涼み行く”
孝作は、心からの玉への気持ちを句にしたためた。
玉との距離は縮まるが、次第に玉の言動や噂から不信が募っていく。そんな折、玉と訪れた店で三味線芸者の鶴昇(加藤菊)と出会う。鶴昇の端麗でどこか悲しげな姿に心奪われ、玉が孝作の元から去った後、鶴昇にのめり込んでいく。孝作は、次第に俳句からも遠ざかってしまう・・・
高山市文化協会70周年記念として制作した映画
高山市出身で、芥川賞の選考委員を創設以来46年間務めた俳人・小説家 瀧井孝作氏の代表作「俳人仲間」(日本文学大賞受賞作品)の第3篇「初めての女」を原作に映画化。
「初めての女」をしたためたのは、晩年のこと。半世紀も前の青春時代の忘れられない切ない思い出。
明治末期から大正初期にかけての出来事ですが、高山に残る古い町並みのお蔭で、しっとりとその時代を描き出しています。ロケ地は、松本家住宅、かみなか旅館、宮地家、喫茶店「バグパイプ」、日枝神社など。瀧井孝作が暮らしているのは、2階の天井の低い部屋。高山を訪れた時に泊まった宿も、2階で天井が低かったのを思い出しました。
印象的だったのは、冒頭近く、東京から高山にやってきた河東碧悟桐から、俳句仲間と共に指導を受ける場面。その経験が、その後の人生を決める大きな動機になったのだと思いました。(咲)
◆イベント◆
6月22日(土) 10:45の回上映後 初日舞台挨拶
ゲスト:髙橋雄祐さん(瀧井孝作役)、芋生悠さん(玉役)、三輪晴香さん(加藤菊役)、小平哲兵監督
6月23日(日) 10:45の回上映後 トークイベント
ゲスト:髙橋雄祐さん(瀧井孝作役)、小平哲兵監督
6月24日(月) 11:10の回上映後 舞台挨拶
ゲスト:道田里羽さん(本作題字)、小平哲兵監督
2024年/日本/カラー/113分/シネマスコープ
助成:こだまーれ2019市民提案プロジェクト
製作:一般社団法人 高山市文化協会
制作協力:ニューシネマワークショップ
配給:TRYDENT PICTURES
公式サイト:https://www.palomapro.com/hajimetenoonna
★6月22日(土)渋谷ユーロスペースにて公開
2024年06月16日
つゆのあとさき
監督:山嵜晋平
原案:永井荷風「つゆのあとさき」
脚本:中野太 鈴木理恵 山嵜晋平
撮影:山村卓也
出演:高橋ユキノ(琴音)、西野凪沙(さくら)、吉田伶香(楓)、渋江譲二(清岡)、守屋文雄(矢田)、松嵜翔平(木村)/テイ龍進(野口)、前野朋哉(川島)
琴音は20歳。キャバクラで働いていたが、コロナ禍で店が休業してしまった。悪いことに一緒に住んでいた男がその日、家財を持って姿をくらまし家賃が払えない。行き場所をなくしてスーツケース一つで座り込んだ琴音に、声をかけた女の子がいた。出会い系喫茶で働いてる楓は琴音を誘い、パパ活で日々しのげるようになった。楓はホストにはまっていつも金欠、さくらは琴音とは真逆のまじめな女子大生だが学費のために働いている。ネットで中傷されたり、変な客にからまれたりもするが、琴音はあっけらかんと逞しく生きている。
永井荷風の短編小説を現代の東京に置き換えて構築した作品。
何もかもなくした琴音でしたが、とりあえず暮らせる術を見つけました。売られた昔と違って、本人が選び、納得していれば「堕ちた」という言葉はあたりません。マジックミラー越しにお客が品定めをするのは、飾り窓や遊郭の格子の現代版、選ばれる側のスマホでの会話が可笑しいです。
女の子たちの働く理由はさまざまで、男たちの通う理由は一つ(細かく見るとちがうかもしれないけれど)。生き物の身体の作りのせいとはいえ、冷めた表情の琴音の上でせっせと動く男の姿はなんだかもの哀しいです。好みの客に遇えた琴音が全く違うテンションで喜ぶのがまたゲンキン。でもずっとそうやって暮らしてはいけないよ、とまさに老婆心がむくむくとわいてきます。
渋谷の交差点で見上げる琴音の視線が印象的なポスター、琴音はこれからどこへ行くのでしょう。さくらに出逢ったことでちょっと変わったよね、と思いたいです。琴音役の高橋ユキノさんは200名を超えるオーディションの中から主役に抜擢。朝ドラの『虎に翼』にも出演を果たしたそうです。あら、どこに出ていたのでしょう?(白)
2023年/日本/カラー/105分/R15+
製作著作・配給:BBB
配給協力:インターフィルム
制作:コギトワークス
(C)2024BBB
https://tsuyunoatosaki.com/
★2024年6月22日(土)より、ユーロスペースにて公開!!
ONE LIFE 奇跡が繋いだ6000の命 原題:ONE LIFE
監督:ジェームズ・ホーズ
脚本:ルシンダ・コクソン、ニック・ドレイク
出演:アンソニー・ホプキンス、ジョニー・フリン、レナ・オリン、ロモーラ・ガライ、アレックス・シャープ、マルト・ケラー、ジョナサン・プライス、 ヘレナ・ボナム=カーター
ナチスの脅威から 669 人の子供たちを救ったニコラス・ウィントンの物語。
1938年、ロンドンで株式仲買人として働く青年ニコラスは、 労働党左派の友人マーティンから、プラハに大勢のユダヤ人がナチスから逃れてきていると聞く。プラハに赴き、現地で活動するイギリス難民委員会のメンバーたちと共に、子供たちをイギリスに避難させる為に奔走する。一人一人里親を見つけ、保証金も準備しなくてはならない。ロンドンに戻り新聞社に投稿し、2週間後には第一便で子供たちがリバプールに到着。里親に引き合わせる。その後、第8便まで669人の子供たちをチェコから脱出させた。第9便に250名を乗せようとしていた2日前、ついにナチスが侵攻し第二次世界大戦が始まってしまう。
それから50年。ニコラスは自責の念から捨てることの出来なかった子供たちの写真やデータを貼ったスクラップブックをメディア王の妻で歴史家の女性に預ける。すると、BBCからTV番組「ザッツ・ライフ!」の収録に呼ばれる・・・
ニコラス・ウィントンは、ロンドンに住むドイツ系ユダヤ人の両親のもとに生まれた方。親交のあった労働党左派の活動家からヒトラーの政策によるユダヤ人の危機を知り、株式仲買人の仕事をする傍ら、ユダヤ人の子供たちを救うことに手を尽くした人道活動家。ユダヤ人の子の里親になることを引き受けたイギリスの方たちが多くいたことにも感銘を受けました。
BBCのTV番組「ザッツ・ライフ!」の収録場面の撮影には、実際にニコラスに助けられた子供たちやその親族が世界中から参加。老いたニコラスを演じた名優アンソニー・ホプキンスも、そのことを知って感極まったそうです。一つの命を救ったことが、多くの命に繋がることをまざまざと見せてくれました。(咲)
2023年/イギリス/英語/109分/カラー/ビスタ
字幕翻訳:岩辺いずみ
提供:木下グループ
配給:キノフィルムズ
★2024年6月21日(金)新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほかにて全国ロードショー
アンゼルム “傷ついた世界”の芸術家 原題:Anselm
監督:ヴィム・ヴェンダース(『PERFECT DAYS』)
出演:アンゼルム・キーファー、ダニエル・キーファー、アントン・ヴェンダース
戦後ドイツを代表する芸術家、アンゼルム・キーファー。本作は、ドイツの暗黒の歴史を主題とした作品群で知られるアンゼルム・キーファーの生涯と、その現在を追ったドキュメンタリー。
アンゼルム・キーファーは、ナチスや戦争、神話などのテーマを、絵画、彫刻、建築など多彩な表現で壮大な世界を創造。ヴェンダース監督と同じ1945年生まれ。初期の作品の中には、戦後ナチスの暗い歴史に目を背けようとする世論に反し、ナチス式の敬礼を揶揄する作品を作るなど“タブー”に挑戦する作家として美術界の反発を生みながらも注目を浴びる存在となった。1992年からは、南フランスに拠点を移し、わらや生地を用いて、歴史、哲学、詩、聖書の世界を創作している。彼の作品に一貫しているのは戦後ドイツ、そして死に向き合ってきたことであり、“傷ついたもの”への鎮魂を捧げ続けている。
制作期間には2年の歳月を費やし、3D&6Kで撮影。従来の3D映画のような飛び出すような仕掛けではなく、絵画や建築を、立体的で目の前に存在するかのような奥行きのある映像を再現し、ドキュメンタリー作品において新しい可能性を追求した。
本作は『PERFECT DAYS』が出品された第76回カンヌ国際映画祭で、ヴィム・ヴェンダース監督作品として2作同時にプレミア上映された。
広大で天井も高いアトリエに並ぶ様々な作品の間を自転車で行くアンゼルム。作品の制作現場は、まるで工事現場のよう! 大型建設機械も駆使しての制作。観ただけではわからない作品の背景が丁寧に語られます。絵を埋め尽くす神話の英雄、ジークリフト、ヘルマン、パルツィファル・・・ ナチスが崇拝した血塗られたレジェンド。ベネチアビエンナーレに出品された時、批評家たちはアンゼルムをファシストだと非難。ドイツの過去の癒えぬ傷を描いたアンゼルムですが、非難されたことに反論もしません。
アンゼルムが父の軍服を着てナチス式の敬礼をする姿を映し出した作品も、ネオナチか?と言われても、自分が1930年代にいたら、どんな人間かわからないと思い、何も言いません。この作品を制作した1968~69年当時、ドイツで第二次世界大戦の反省は皆無で、学校でもファシズムや第三帝国についてもほとんど教えられなかったことから、忘れていることへの抗議の意味を込めたものなのです。
戦後ドイツの最も重要な詩人パウル・ツェランへの思いを込めた作品の前では、ツェラン自身が詩を朗読する声が披露されました。ツェランはユダヤ人で、両親をウクライナで殺されています。その後、ドイツで、ホロコーストで犠牲になったユダヤ人の子孫でありながら、ドイツ語で詩を書かざるをえなかった苦悩が絵から浮かび上がってきます。
「先入観を捨てて、この衝撃的なビジュアルをただ楽しんでもらいたい」とヴェンダース監督。最初から最後まで圧倒され、アンゼルム・キーファーが胸に秘めた思いを静かに感じることができました。(咲)
2023/ドイツ/93分/1.50:1/ドイツ語・英語/カラー・B&W/5.1ch
字幕:吉川美奈子
配給:アンプラグド
公式サイト:https://unpfilm.com/anselm/
★2024年6月21日(金) TOHOシネマズ日比谷ほか全国順次公開
2024年06月12日
フィリップ(原題:Filip)
監督:ミハウ・クフィェチンスキ
原作:レオポルド・ティルマンド
脚本:ミハウ・クフィェチンスキ, ミハル・マテキエヴィチ
撮影:ミハウ・ソボチンスキ
美術:タジーナ・ソバンスカ、マルセル・スラヴィンスキ
音楽:ロボット・コック
出演:エリック・クルム・ジュニア(フィリップ)、カロリーネ・ハルティヒ(リザ)、ヴィクトール・ムーテレ(ピエール)、ゾーイ・シュトラウプ(ブランカ)、サンドラ・ドルジマルスカ(マレーナ)、ロベルト・ヴィエツキーヴィッチ(スタシェク)、ジョゼフ・アルタムーラ(フランチェスコ)
1941年、ポーランド系ユダヤ人のフィリップはワルシャワのゲットーで暮らしている。恋人サラにプロポーズしたばかり。両親たちが見守る中、舞台でサラとダンスを披露していると突然入って来たナチスが無差別に銃撃。サラと家族や親戚を目の前で殺されてしまう。
2年後。生き残ったフィリップは、フランス人と偽ってフランクフルトの高級ホテルのレストランでウェイターとして働いている。戦場に夫を送り出したナチス上流階級の女性たちを次々と誘惑することが、フィリップの復讐だった。そんな中、ドイツ人のリザと出会う。
原作の小説は、ポーランド人作家レオポルド・ティルマンドが自らの実体験を基に1961年に発表したもの。ポスターのフィリップは傷だらけで、人相が悪いですが、これはナチスに暴行された後の顔だから。ウエイターとして働くフィリップは、独り寝をかこつナチスの上流奥様がたがその気になってしまうスマートさです。ばれることがないのは、ドイツ人女性が他国の男を交わると、純潔を汚した罪で頭を丸刈りにされるから。フィリップはそれを承知で誘惑しては捨てるの繰り返し。
そんな彼に「いい加減にしろ」と言ってくれる親友のピエールは、ナチスに公開処刑されてしまいます。フィリップが恋するリザは愛されて育った聡明な女性ですが、こんな情勢では…と観ていて胸が痛みます。ナチスの傲慢、残虐な仕業を責めたくなる半面、戦時中の日本もどこの国も簡単に人間性をなくしてしまうのだといまさらながら思いました。(白)
2022/ポーランド/ポーランド語、ドイツ語、フランス語、イディッシュ語/1:2/124分/
字幕翻訳:岡田壮平
配給:彩プロ
©TELEWIZJA POLSKA S.A. AKSON STUDIO SP. Z.O.O. 2022
https://filip.ayapro.ne.jp/
★2024年6月21日(金)より新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、アップリンク吉祥寺ほか全国公開
2024年06月09日
PS2 大いなる船出 原題:Ponniyin Selvan: Part Two
監督:マニラトナム(『ボンベイ』)
脚本:マニラトナム、イランゴー・クマラヴェール、ジェヤモーハン
原作:カルキ・クリシュナムールティ
撮影:ラヴィ・ヴァルマン
音楽:A・R・ラフマーン
編集:シュリーカル・プラサード
出演:ヴィクラム(『神様がくれた娘』)、アイシュワリヤー・ラーイ・バッチャン(『ロボット』)、ジェヤム・ラヴィ、カールティ(『囚人ディリ』)、トリシャー(『’96』)、ジャヤラーム、アイシュワリヤ・ラクシュミ(『トリッキー・ワールド』)、ショービタ・ドゥーリパーラ、プラカーシュ・ラージ(『ミルカ』)、ナーサル(『バーフバリ』シリーズ)
ベストセラー歴史小説「Ponniyin Selvan(ポンニ河の息子)」。
10世紀、インド南部タミル地方に実在したチョーラ王朝の宮廷を舞台にした愛憎と陰謀、国の存亡を懸けた戦いを描いた物語。壮大な歴史絵巻を、前編と後編の2作として映画化。
前編『PS1 黄金の河』は、こちらで!
大河は大海へーその歴史は、神話となる
数奇な運命が導く、インド究極の大河ドラマ、遂に終幕!
遠征先のランカ島沖の海上で、嵐に遭い海に投げ出されたチョーラ朝の次男アルンモリ王子。その生存は絶望的だとの知らせが届き、王国は悲しみに包まれた。しかし、アルンモリは白髪で聾唖の老女マンダーキニに助けられ一命をとりとめていた。スンドラ王の長男・アーディタ王子と長女・クンダヴァイ姫は、アルンモリが仏教僧院で治療中と密使デーヴァンより知らされ、会いに行く。本来の王位継承者であるマドゥラーンタカンを担ぎ謀反を起こした黒幕が、財務大臣パルヴェータの若い妻ナンディニーであることを知る。かつてアーディタと恋仲だったナンディニーだが、孤児であることから、結婚を許されず、復讐を目論んでいるのだ。ナンディニーへの愛憎を抱えたアーディタは、彼女の誘いに乗り、その牙城に赴き、アルンモリには刺客が放たれる。いま、王国に最大の危機が迫ろうとしていた…
アルンモリ王子を助けた白髪で聾唖の老女マンダーキニは、孤児ナンディニーにそっくりで、ナンディニーの出生の秘密が明かされるのが、なんといっても後編の一番の驚きでした。愛し合っていたのに一緒になれなかったアーディタとナンディニーの対決場面には、涙。そして、誰が王位を継ぐのか、最後の最後までハラハラしながら物語の行方を追いました。
前編『PS1 黄金の河』を観た時には、人物関係がなかなか把握できなくて、戸惑ったのですが、振り返って前編のあらすじをよく読んで関係性を把握した上で後編に臨み、今度はすっきり。壮大な物語を堪能しました。(咲)
2023年/インド/シネスコ/ タミル語/5.1ch/165分
字幕:大西美保 監修:小尾淳 協力:安宅直子
製作会社:マドラス・トーキーズ、ライカ・プロダクションズ
配給:SPACE BOX 宣伝:シネブリッジ
公式サイト:https://spaceboxjapan.jp/ps-movie/
★2024年6月14日(金)、新宿ピカデリーほか全国順次公開
2024年06月08日
蛇の道 原題:Le chemin du serpent
監督・脚本:黒沢 清
原案:『蛇の道』(1998年大映作品)
出演:柴咲コウ、ダミアン・ボナール、マチュー・アマルリック、グレゴワール・コラン、西島秀俊、ヴィマラ・ポンス、スリマヌ・ダジ、青木崇高
パリの病院で心療内科医として働く新島小夜子(柴咲コウ)。娘の死のショックで精神を病んだジャーナリストのアルベール・バシュレ(ダミアン・ボナール)と知り合い、娘を殺した犯人への復讐を手助けすることになる。とある財団が、娘マリーの殺害に絡んでいることを突き止め、小夜子とアルベールは財団の関係者を次々と拉致していく。彼らの口から思いもよらない恐ろしい真実が明らかになっていく・・・
黒沢清監督が、98 年に劇場公開された同タイトルの自作をオールフランスロケによる日仏共同製作でリメイク。セザール賞受賞歴もある撮影監督アレクシ・カヴィルシーヌはじめ『ダゲレオタイプの女』のスタッフたちが監督たっての希望で再結集。
小夜子を演じた柴咲コウは、撮影の半年前からフランス語の厳しいレッスンに臨み、現地で2ヶ月間、実際に生活をして、パリで暮らす謎多きヒロインを完璧に自分のものにしている。
『レ・ミゼラブル』(19)主演のダミアン・ボナールはじめ、マチュー・アマルリック、グレゴワール・コランなどフランスの名優たちが続々出てきて、味のある演技を見せてくれます。ずっとフランス語の場面が続く中、パリ駐在に慣れず心を病んで小夜子のもとを訪れる患者役の西島秀俊さんの登場は短いながら、ちょっと嬉しい。
日本で暮らす夫・宗一郎役の青木崇高さんは、黒沢監督の『旅のおわり世界のはじまり』(19)のウズベキスタンの撮影現場を訪ねた縁で、黒沢監督が是非にとオファー。
★ご参考『旅のおわり世界のはじまり』青木崇高さんのウズベキスタン弾丸ツアー!スペシャル映像上映付き加瀬亮さんとのトークイベント
青木崇高さんはビデオ通話の場面でしか登場しなかったと思うのですが、撮影のためにパリに飛んできてくれたそうです。
さて、復讐劇を描いた本作、柴咲コウさんの刺すような鋭い目線が、まさに「蛇の道」を象徴しているように感じました。(咲)
2024年/フランス・日本・ベルギー・ルクセンブルク/フランス語/113 分
字幕翻訳:関美冬
製作:CINEFRANCE STUDIOS KADOKAWA
配給:KADOKAWA
公式サイト:https://movies.kadokawa.co.jp/hebinomichi/
★2024年6月14日(金)全国劇場公開
2024年06月07日
ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ(原題:The Holdovers)
監督:アレクサンダー・ペイン
脚本:デヴィッド・ヘミングソン
出演:ポール・ジアマッティ(ポール・ハナム)、ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ(メアリー・ラム)、ドミニク・セッサ(アンガス・タリー)
1970年代、アメリカのマサチューセッツ州。全寮制のバートン校で教師を務めるポール・ハナムは皮肉屋で頭が固く、生徒ばかりか同僚たちにも嫌われている。クリスマス休暇が近づき、自宅に戻る生徒たちは浮かれ気味。中には都合で帰れず、学校に残る生徒もいる。ポールはそんな置いてけぼりの生徒たちの子守+監督をすることになってしまった。初めは数人いた生徒たちが、迎えに来た親とスキーに行き、残るは母親が再婚して帰れないアンガスだけ。傷心のアンガスと、ポール先生と料理長のメアリー、独りぼっちの3人のクリスマス休暇が始まった。
最初の生徒たちの描写で、アンガスの性格や家庭環境がわかります。メアリーは一人息子をベトナム戦争で失なったばかり、最後にいっしょに過ごしたこの学校で息子をしのびながら年を越したいのです。ポール先生が嫌われる理由は、いろいろ。アンガスのストレートな質問に躊躇なく答える先生ですが、まだ何かありそうです。
なかなか距離が縮まらないアンガスとポール先生の間で、メアリがちょっとした、でも大事なことを気づかせてくれます。彼女がそばにいるとなんだか安心します。おかげで、ポール先生が「社会見学」と称してアンガスをボストンに連れて行ってくれることになりました。そこで、誰にも話さなかった2人の秘密が明かされていきます。さてさて。
とっても寒そうなクリスマス休暇のあったかいストーリーでした。二人のベテラン俳優が上手いのはもちろんですが、これが初めての演技というドミニク・セッサが、不安や寂しさを抱えたアンガスそのものでした。次はどんな役で出会えるのか楽しみです。(白)
冬のボストンの町をたっぷり味わえる、心温まる映画でした。
古代史を教えているポール・ハナム先生が、真っ先にアンガスを連れていったのは、考古博物館。「今の時代を理解するには、過去から学ぶべき」というハナム先生。彼の愛読書「自省録」は、約2千年前、第16代ローマ皇帝マルクス・アウレリウスが日記のように書き留めたもの。「聖書、クルアーン、ギーター(ヒンドゥーの聖典のひとつ)を合わせたようなものだけど、神について書いてないのがいい」とアンガスに薦めます。頑固者で、授業では怒鳴ってばかりのハナム先生の印象がぐっと変わります。
アンガスは、「スケートしたり、本物のツリーが観たい」とボストン行きをハナム先生にお願いしたのですが、本当の目的は別にありました。それはどうぞ劇場で! (咲)
2023年/アメリカ/カラー/1.66:1/133分
配給:ビターズ・エンド ユニバーサル映画
Seacia Pavao/(C)2024 FOCUS FEATURES LLC.
公式HP:https://www.holdovers.jp/
公式 X:@TheHoldoversjp
★2024年6月21日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
九十歳。何がめでたい
監督:前田哲
原作:佐藤愛子「九十歳。何がめでたい」「九十八歳。戦いやまず日は暮れず」(小学館刊)
脚本:大島里美
撮影:山本英夫
出演:草笛光子(佐藤愛子)、唐沢寿明(吉川真也)、藤間爽子(杉山桃子)、木村多江(吉川麻里子)、真矢ミキ(杉山響子)
90歳になった佐藤愛子は断筆宣言をして作家生活を引退。締め切りに追われず、悠々自適に過ごす予定だったのに、あまりにも何もない日々に飽き飽きしていた。そこへ「ぜひエッセイ連載を!」とベテラン編集者・吉川が手土産持参で乗り込んでくる。手土産はもらうけれど「書けない、書かない、書きたくない!」と断固拒絶する愛子と吉川、頑固者同士の攻防が始まった。2階で同居している愛子の娘・響子と孫の桃子は、吉川とのやりとりで愛子が日々元気になっていくのを見守り、連載が決まったのに安堵する。愛子の痛快エッセイは好評でベストセラーとなった。
昨年11月、100歳を迎えた作家・佐藤愛子さんの同名エッセイ集の実写映画化。主演の草笛光子さんは『老後の資金がありません!』に続いての前田哲監督とタッグ。タイトルと同じ90歳になられましたが、今もお綺麗な現役の俳優、シニアの希望の星!よっ、光子さんカッコいい!
愛子先生の好敵手、いや良き相棒となる吉川は典型的な昭和男。会社では後輩に追い越され、同僚にはパワハラ男と避けられているのが実情です。若手に対抗して企画を通したい一心でもありました。家庭を顧みず仕事人間でやってきた結果、妻を泣かせていたのを娘の美優に言われてやっと気づく体たらくです。愛子先生と過ごすうちに少し変わる吉川でした。あの人この人がいろいろな役で登場しているのでお楽しみに。
怒るのには格別パワーが要ります、見ないふりをする方が楽ですが「正しく怒る」愛子先生に共感します。老化といつしか時代に取り残される不安は誰にも共通。愛子先生を見習い、元気で生き抜きましょう。(白)
完成披露試写舞台挨拶
作家を書く気にさせるには? を楽しく見せてくれました。
昭和な男が持ってくるありきたりのお菓子よりも、若い編集者が持ってくる珍しくてお洒落なスイーツに、つい書く気になる愛子さん!
引退して何もしないことが、いかに退屈かも見せてくれました。寝込まない限り、人生現役でいたいと、今一度、思った次第です。
それにしても、いかにもの昭和男を演じた唐沢寿明さん、モデルになった編集者の方に風貌を似せたのかもしれませんが、キャストを知らなければ、この人、誰?という位、ダサダサです。
あの人この人がいろんな役で出てくる中でも、オダギリジョーさんには大笑い。前田哲監督の手腕に脱帽です。(咲)
2024年/日本/カラー/ビスタ/99分
配給:松竹
(C)2024「九十歳。何がめでたい」製作委員会 (C)佐藤愛子/小学館
https://movies.shochiku.co.jp/90-medetai/
★★2024年6月21日(金)より全国順次公開“あなたの悩みも一笑両断”
骨を掘る男
監監督・撮影・編集:奥間勝也
出演:具志堅隆松
具志堅隆松さん70歳。「ガマフヤー(ガマを掘る人)」と自称し、同じ名前の収集ボランティアの会の代表を務めている。沖縄が戦地となったとき住民たちが避難したガマ(洞窟)で遺骨収集を続けて40年になった。薄暗い中、小さな破片も見逃さない。「あと10センチで出逢えるかもしれない」と堀り続けてきた。沖縄には、まだまだ見つからない遺骨がたくさん(3000柱)眠っている。そんな土を辺野古の埋め立てに使わないで、と抗議する。
激戦地だった南部では追い詰められた住民や、武器や装備の少ない兵隊の遺骨が多いそうです。具志堅さんはガマに残された遺骨や遺品から、その時の状況を推し量ります。小銃と砕けた頭蓋骨に出逢うと、「足で引き金を押して自決したのだろう」と推測。子どもの乳歯が見つかると、「お母さんも一緒だろう」と、さらに探します。
今は親族からサンプルを集めて、遺骨とのDNA鑑定ができます。遺骨の劣化が激しいと鑑定が難しく、また遺族も高齢となり、年々少なくなっていきます。奥間監督も大叔母(祖母の妹・当時20歳)の正子さんが亡くなっています。具志堅さんと共にガマに入りながら戦後生まれの監督は出逢ったことのない人の追悼を自問しています。戦争の記憶と記録を次世代にどうつなげるかということも。
摩文仁の丘には戦没者の名前が刻まれた石碑が寄せてはかえす波頭のように並んでいます。この40年「観念的な慰霊でなく、行動的な慰霊としてやっている」という具志堅隆松さんの言葉が胸に残りました。(白)
2024年/日本・フランス/カラー/DCP115分
配給:東風
(C)Okuma Katsuya, Moolin Production, Dynamo Production (C)Thaw Win Kyar Phyu Production
https://closetothebone.jp/
★2024年6月15日(土)東京 ポレポレ東中野、大阪 第七藝術劇場ほか全国順次公開
出演:具志堅隆松
具志堅隆松さん70歳。「ガマフヤー(ガマを掘る人)」と自称し、同じ名前の収集ボランティアの会の代表を務めている。沖縄が戦地となったとき住民たちが避難したガマ(洞窟)で遺骨収集を続けて40年になった。薄暗い中、小さな破片も見逃さない。「あと10センチで出逢えるかもしれない」と堀り続けてきた。沖縄には、まだまだ見つからない遺骨がたくさん(3000柱)眠っている。そんな土を辺野古の埋め立てに使わないで、と抗議する。
激戦地だった南部では追い詰められた住民や、武器や装備の少ない兵隊の遺骨が多いそうです。具志堅さんはガマに残された遺骨や遺品から、その時の状況を推し量ります。小銃と砕けた頭蓋骨に出逢うと、「足で引き金を押して自決したのだろう」と推測。子どもの乳歯が見つかると、「お母さんも一緒だろう」と、さらに探します。
今は親族からサンプルを集めて、遺骨とのDNA鑑定ができます。遺骨の劣化が激しいと鑑定が難しく、また遺族も高齢となり、年々少なくなっていきます。奥間監督も大叔母(祖母の妹・当時20歳)の正子さんが亡くなっています。具志堅さんと共にガマに入りながら戦後生まれの監督は出逢ったことのない人の追悼を自問しています。戦争の記憶と記録を次世代にどうつなげるかということも。
摩文仁の丘には戦没者の名前が刻まれた石碑が寄せてはかえす波頭のように並んでいます。この40年「観念的な慰霊でなく、行動的な慰霊としてやっている」という具志堅隆松さんの言葉が胸に残りました。(白)
2024年/日本・フランス/カラー/DCP115分
配給:東風
(C)Okuma Katsuya, Moolin Production, Dynamo Production (C)Thaw Win Kyar Phyu Production
https://closetothebone.jp/
★2024年6月15日(土)東京 ポレポレ東中野、大阪 第七藝術劇場ほか全国順次公開
オペラ座の怪人4Kリマスター版(原題:The Phantom of the Opera)
監督:ジョエル・シュマッカー
原作:ガストン・ルルー
脚本:アンドリュー・ロイド=ウェバー、ジョエル・シュマッカー
音楽:アンドリュー・ロイド=ウェバー
出演:ジェラルド・バトラー(ファントム)、エミー・ロッサム(クリスティーヌ)、パトリック・ウィルソン(ラウル)
19世紀のパリ。オペラ座では奇怪な事件が続いていた。仮面をつけた謎の怪人ファントムの仕業とされているが、いまだ捉えられていない。主役が事故のため降板し、若いクリスティーヌが代役をつとめることになった。初舞台で大成功をおさめ、幼馴染の貴族の青年ラウルとも再会した。
早くに両親に死なれ、寮生活を送ってきたクリスティーヌは、自分がプリマドンナとして成長できたのは、亡き父が差し向けてくれた「音楽の天使」のおかげと信じている。その正体が実はファントムと明らかになり、クリスティーヌは愛するラウルと心酔してきた天使=ファントムへの間で苦悩する。
ミュージカル「オペラ座の怪人」は、ガストン・ルルーの小説を元に、アンドリュー・ロイド=ウェバーが1986年に作曲し、初演はロンドン・ウエストエンドにあるハー・マジェスティーズ劇場。以来、世界中で1億6000万人が観劇、日本では劇団四季によって1988年から各地でロングラン公演を果たしています。
本作は2004年、アンドリュー・ロイド=ウェバー自身が製作・作曲・脚本を務め、『バットマン・フォーエバー』などのジョエル・シュマッカー監督とともにこだわりぬいて映画化。2005年1月29日に日本で公開されるとリピーターが続出したそうです。全世界の興収の4割を日本が占めたとか。
詳細は知らなくともビジュアルと音楽だけは記憶に残っている方も多いのではないでしょうか。
映画版が公開されて20年になったのを記念して、このほど4Kデジタルリマスター版でよみがえりました。豪華賢覧なオペラ座の舞台や衣装に目を見張ります。そして当時30代半ばのジェラルド・バトラーのファントムがそれはそれはセクシーです。ぜひ大きな画面+音響の良い劇場で堪能されることをおすすめします。(白)
2004年/アメリカ/カラー/シネスコ/141分/字幕翻訳:戸田奈津子
配給:ギャガ
(C)2004 The Scion Films Phantom Production Partnership
公式HP:gaga.ne.jp/operaza4K
公式X:@operaza4K
★2024年6月14日(金)TOHOシネマズ 日比谷 他ロードショー
2024年06月03日
プリンス ビューティフル・ストレンジ(原題:Mr Nelson on the North Side)
監督:ダニエル・ドール エリック・ウィーガンド
ナレーション:キース・デビッド
出演:プリンス、チャカ・カーン、チャックⅮ、ビリー・ギボンズ
1958年ミネソタ州のミネアポリス。プリンスはジャズピアニストの父とジャズシンガーの母の間に生まれた。アメリカ中西部の中でも黒人差別が激しい地域で、くすぶっている青少年たちのために、ミネアポリスに初めてブラック・コミュニティができた。「ザ・ウェイ」と命名され、若者たちが集える場所となった。スポーツができるほか、楽器もそろっている。子どもも音楽に触れ、演奏を学ぶことができた。
プリンスもその一人で、楽器を自在に弾きこなす基盤をここで身につけ音楽の才能が開花する。1978年にデビュー。以来、派手な衣裳やパフォーマンスで舞台に上がる恐怖を乗り越えて、独自の音楽性を持つミュージシャンとなった。頂点を極めながら、2016年ペイズリースタジオで急逝する。彼を惜しむ友人たち、関係者、ファンからのメッセージの花束のようなドキュメンタリー。
自伝的映画のタイトルにもなった「パープル・レイン」発表から40年。音楽に目覚めた少年時代、バンドを結成、メジャーからのオファーが殺到してデビューし、アルバムがヒット、シャイな少年は確実にスターとなっていきました。いつも故郷のミネアポリスへの愛と恩返しを忘れなかったプリンスの足跡が辿られます。彼に魅了された人々から、当時の思い出がたっぷり披露されます。紫の貴公子プリンスへの愛の花束のような作品です。そんなに才能あふれる人だったのか、と今さらながら知りました。代表曲しかわからなかったので、アルバムをちゃんと聞いてみようと思います。(白)
プリンスの名前しか知らない私が観て、さて、この映画を楽しめるかしら・・・と思いながら拝見。映画の前半では、プリンスが育った、というより、プリンスを生んだミネアポリスという町について、歴史的背景を丁寧に紐解いていきます。1940年代以降、南部から北の工業地域にアフリカ系黒人が大移住。その数、500万人以上。北ミネアポリスも、そうした黒人たちが住む町でしたが、生活費を稼ぐのにも苦労する地域でした。人種差別の激しかった1960年代に育ったことがプリンスに影響を与えたことも。「肌の色でなく、作品の質で判断してもらう」というプリンスの思いが胸に沁みます。プリンスが亡くなってから、彼が医療施設や教会への寄付を何十年も続けてきたことが判明したそうです。地域を変える為に何が出来るかを常に考えていたプリンス。見た目の派手な印象とは違うプリンスのことを知ることのできる秀作です。(咲)
2021年/カナダ/カラー/68分
配給:アルバトロス・フィルム
(C)PRINCE TRIBUTE PRODUCTIONS INC.
https://prince-movie.com/
★2024年6月7日(金)新宿シネマカリテほか全国公開
2024年06月02日
狼が羊に恋をするとき 原題:南方小羊牧場 英題:When a Wolf Falls in Love with a Sheep
2024年6月14日(金)より下北沢トリウッドにて公開
「予備校に行くね」と、恋人はメモを残し姿を消した
プロデューサー:廖士涵(リャオ・シーハン)
監督・脚本:侯季然(ホウ・チーラン)
脚本:ヤン・ユエンリン(楊元鈴)、ホー・シンミン(何昕明)、チェン・チンヨウ(陳慶祐)
字幕:鈴木真理子
出演:柯震東(クー・チェンドン)、簡嫚書(ジエン・マンシュウ)、郭書瑤(グオ・シューヤオ)、蔡振南(ツァイ・チェンナン)、張書豪(チャン・シューハオ)、謝欣穎(シエ・シンイン)、林慶台(リン・チンタイ)
本作は2012年秋の台湾公開後、日本ではSKIPシティ国際Dシネマ映画祭2013長編コンペティション部門、カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2014(東京)、台湾映画祭2015(福岡)と相次いで上映されたが、一般公開はされないままだった。その作品が10年の時を経て公開される。
*参照記事
シネマジャーナルHP 特別記事
「祝10周年! SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」記事はこちら
この中に『狼が羊に恋をするとき』の紹介あり
「予備校に行くね」というメモを残し、恋人のイーインが姿を消してしまった。落ち込むタンだったが、彼女を捜しにやってきたのは台北駅近くの予備校が集まる「南陽街」。タンはひょんなことから印刷屋の店長に拾われ住み込みで働き始める。近隣の予備校から依頼されるテスト用紙の印刷に明け暮れるうち、とある予備校の原稿に羊のイラストが描かれていることに気が付く。羊のイラストを描いていたのは「必勝予備校」のアシスタント・小羊(シャオヤン)だった。イラストレーターを目指す彼女は、海外留学してしまった元カレの帰りをこの予備校で働きながら待っていた。タンはある日、羊のイラストが描かれたテスト用紙の原稿に遊び心から狼のイラストを描き足してしまい、間違って印刷してしまう。印刷されたテスト用紙は納品されてしまい、テスト用紙上で狼と羊は会話を始めてしまう。このことは、瞬く間に学生たちの話題になっていった。「狼は誰?」。そんなある日、タンはシャオヤンが元カレのことをあきらめこの街を去ろうとしていることを知る。
実写に、アニメーションやコマ撮りの映像を加え、独特の世界観を創り出した本作は、侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督がプロデュースした『有一天(ONE DAY)』(10)で長編デビューしたホウ・チーラン監督。長編2作目である。10年も前の作品なのに古さを感じない。
主演は『赤い糸 輪廻のひみつ』のクー・チェンドン。大ヒット青春映画『あの頃、君を追いかけた』に続く主演2作目。そしてクー・チェンドンの相手役を演じたジエン・マンシュウにとっては、映画初出演にして初主演となる記念碑的作品だった。ふたりの初々しさがまぶしい。そして、その後の活躍を予感させる演技だった。
2013年の「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」で観たが、まさか10年もたって日本公開されるとは思ってもみなかった。でも、今、観ても古くない。予備校街の光景は、今もこんな状態なのかもと思ったし、二人の初々しい演技を観て、若々しさを感じた。
試験用紙に、羊のイラストを描いてしまうなんていうのは、日本では考えられないけど、台湾ではそういう遊び心が通じるのだろうか。受験生のつかの間の癒しになっていたというのが、ちょっと面白かった(暁)。
2012年/台湾/85分/カラー/シネスコ/5.1ch/
配給:台湾映画同好会 配給協力:台湾映画社
協力:SKIPシティ国際Dシネマ映画祭、トリウッド
作品HP:https://note.com/sheeplovermovie/
予告編
https://www.youtube.com/watch?v=VxLgeXkip1s
「予備校に行くね」と、恋人はメモを残し姿を消した
プロデューサー:廖士涵(リャオ・シーハン)
監督・脚本:侯季然(ホウ・チーラン)
脚本:ヤン・ユエンリン(楊元鈴)、ホー・シンミン(何昕明)、チェン・チンヨウ(陳慶祐)
字幕:鈴木真理子
出演:柯震東(クー・チェンドン)、簡嫚書(ジエン・マンシュウ)、郭書瑤(グオ・シューヤオ)、蔡振南(ツァイ・チェンナン)、張書豪(チャン・シューハオ)、謝欣穎(シエ・シンイン)、林慶台(リン・チンタイ)
本作は2012年秋の台湾公開後、日本ではSKIPシティ国際Dシネマ映画祭2013長編コンペティション部門、カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2014(東京)、台湾映画祭2015(福岡)と相次いで上映されたが、一般公開はされないままだった。その作品が10年の時を経て公開される。
*参照記事
シネマジャーナルHP 特別記事
「祝10周年! SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」記事はこちら
この中に『狼が羊に恋をするとき』の紹介あり
「予備校に行くね」というメモを残し、恋人のイーインが姿を消してしまった。落ち込むタンだったが、彼女を捜しにやってきたのは台北駅近くの予備校が集まる「南陽街」。タンはひょんなことから印刷屋の店長に拾われ住み込みで働き始める。近隣の予備校から依頼されるテスト用紙の印刷に明け暮れるうち、とある予備校の原稿に羊のイラストが描かれていることに気が付く。羊のイラストを描いていたのは「必勝予備校」のアシスタント・小羊(シャオヤン)だった。イラストレーターを目指す彼女は、海外留学してしまった元カレの帰りをこの予備校で働きながら待っていた。タンはある日、羊のイラストが描かれたテスト用紙の原稿に遊び心から狼のイラストを描き足してしまい、間違って印刷してしまう。印刷されたテスト用紙は納品されてしまい、テスト用紙上で狼と羊は会話を始めてしまう。このことは、瞬く間に学生たちの話題になっていった。「狼は誰?」。そんなある日、タンはシャオヤンが元カレのことをあきらめこの街を去ろうとしていることを知る。
実写に、アニメーションやコマ撮りの映像を加え、独特の世界観を創り出した本作は、侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督がプロデュースした『有一天(ONE DAY)』(10)で長編デビューしたホウ・チーラン監督。長編2作目である。10年も前の作品なのに古さを感じない。
主演は『赤い糸 輪廻のひみつ』のクー・チェンドン。大ヒット青春映画『あの頃、君を追いかけた』に続く主演2作目。そしてクー・チェンドンの相手役を演じたジエン・マンシュウにとっては、映画初出演にして初主演となる記念碑的作品だった。ふたりの初々しさがまぶしい。そして、その後の活躍を予感させる演技だった。
2013年の「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」で観たが、まさか10年もたって日本公開されるとは思ってもみなかった。でも、今、観ても古くない。予備校街の光景は、今もこんな状態なのかもと思ったし、二人の初々しい演技を観て、若々しさを感じた。
試験用紙に、羊のイラストを描いてしまうなんていうのは、日本では考えられないけど、台湾ではそういう遊び心が通じるのだろうか。受験生のつかの間の癒しになっていたというのが、ちょっと面白かった(暁)。
2012年/台湾/85分/カラー/シネスコ/5.1ch/
配給:台湾映画同好会 配給協力:台湾映画社
協力:SKIPシティ国際Dシネマ映画祭、トリウッド
作品HP:https://note.com/sheeplovermovie/
予告編
https://www.youtube.com/watch?v=VxLgeXkip1s
松本卓也監督特集上映
とき:6月7・8・9日の3日間
ところ:新宿アットシアター
プログラム:
『ダイナマイト・ソウル・バンビ』(99分)
インディペンデント映画業界で勢いのある若手監督の山本は、天野プロデューサーに見出され、低予算だが新作長編映画『ダイナマイト・ソウル・バンビ』制作の機会を得る。山本は仲間のスタッフ、キャストらと共に意気込み、プロチームと合同で撮影に挑む。その様子をメイキングカメラ担当の谷崎が記録していた――最低な監督と最高の仲間が選ぶ結末は?!
シネジャ作品紹介はこちら
『ラフラフダイ』(99分)
笑いながら突然死してしまう奇病「笑い死に」が全世界で拡大。世界は感染を恐れ、笑う事を禁止する。感情を殺す薬を飲み、心を失った世界で、自由に生きることを選んだ人々がいた。
『あっちこっちじゃあにー』(105分)
お笑いコンビを解散してピン芸人となった末松。後輩芸人からも面白くないといじられ、売れる気配は一向にない。ヘッドフォンで音楽を聴きながら、孤独に生きる日々。そんな時に6歳の女の子 加奈と出会い、動画配信の手伝いをしてもらう事になる。やがて末松は、遠方に住む加奈の父に会いに行くことを交換条件に、加奈に旅の動画撮影の同行をお願いする。 大人と子ども、奇妙な二人の旅が始まる――。
チケット:
1作品 予約1,500円 当日1,800円
複数鑑賞の場合、お得な割引サービスあり!
各上映ごとに舞台挨拶あり!
★特集上映プログラムを鑑賞した方限定で無料のワークショップ開催!
講師:松本卓也
『花子の日記』公開時(2011)のインタビューはこちら
今もお若いけれど可愛いです。
『ミスムーンライト』公開時(2017)のインタビューはこちら
罪深き少年たち 原題:소년들(少年たち) 英題:The Boys
監督:チョン・ジヨン
出演:ソル・ギョング、ユ・ジュンサン、チン・ギョン、ホ・ソンテ、ヨム・ヘラン
強盗殺人犯として逮捕された少年たちの無実を信じて闘う刑事
1999年、韓国で実際に起こった強盗殺人事件「サムネ(参礼)ナラスーパー事件」をもとに描いた物語
1999年、全羅北道・参礼の小さな商店ウリスーパーマーケットに強盗が押し入り、70代の女性が殺された。警察の捜査陣は、たった一日で町内に住む少年3人を容疑者として逮捕する。翌年、班長として赴任してきた敏腕刑事ファン・ジュンチョル(ソル・ギョング)のもとに、真犯人に関する情報提供が入る。少年たちの汚名を晴らすため再捜査を始めるが、当時の責任刑事チェ・ウソン (ユ・ジュンサン)の妨害にあい、ファン班長は左遷される。
それから16年後、定年を2年後に控えたファンが、僻地を転々とした後、参礼に戻ってくる。そこへ、事件の唯一の目撃者ユン・ミスク(チン・ギョン) と少年たちが訪ねてくる。話を聞き少年たちの無実を確信したファンは、彼らの汚名を晴らそうと再び警察と検察を相手に闘いに挑む・・・
島を転々として、やっと陸地に戻ってきたファン。左遷に追いやったチェ・ウソンはじめ、当時部下だった者は皆、ファンより出世しています。検察ともうまくやって、ずる賢くのし上がったチェ・ウソンを、ユ・ジュンサンが実に憎々しく演じています。好感度大だったドラマ「棚ぼたのあなた」や「がんばれ!プンサン」のイメージが、どっと崩れます。
やはり好人物のことが多いチョ・ジヌンが、冷血な検察役。また、ソ・イングク(『パイプライン』「元カレは天才詐欺師 ~38師機動隊~」)が重要な役どころで出てきたのも嬉しいです。
それにしても、警察が無理矢理犯人に仕立てる取り調べの場面が凄いです。否定すれば、さらに暴力を振るわれるのでは、耐えられなくて罪を認めてしまうのもわかるような気がします。こうして冤罪は作られる・・・
彼らの無実を信じて、信念を持って立ち向かうファン刑事は、ソル・ギョングだからこそ体現できたと感じました。(咲)
2022年/韓国/カラー/シネスコ/5.1ch/124分/韓国語/PG12
日本語字幕:小西朋子
配給:クロックワークス
公式サイト:https://klockworx-asia.com/boys/
★2024年6月7日(金) シネマート新宿 ほか 全国ロードショー
ハロルド・フライのまさかの旅立ち 原題:The Unlikely Pilgrimage of Harold Fry
監督:へティ・マクドナルド
出演:ジム・ブロードベント、ペネロープ・ウィルトン、アール・ケイヴ、リンダ・バセット、ジョセフ・マイデル
ビール工場を定年退職し、妻のモーリーンと静かな生活を送るハロルド・フライ。ある日、北の果てから1通の手紙が届く。かつて一緒に働いていた女性クイーニーからの、余命わずかでホスピスに入院中とのお別れの手紙だった。ハロルドはどう返事を書こうかと妻に相談するが、「思ったことを書けばいい」と素っ気ない。「どうかお大事に」と書いた返事を手に郵便局に向かう途中で立ち寄った店の女性店員に、「友達がガンだ」とつぶやく。すると、彼女から「信じる心で伯母のガンがよくなった」と言われる。ハロルドはホスピスに電話をかけ「今から歩いていくので、着くまで生きていてくれ」とクイーニーに伝言を頼む。今いる町から、目的地までは800キロ。ハロルドは、手ぶらのまま歩き始める。彼にはクイーニーにどうしても会って伝えたい“ある想い”があったのだ。何日も歩き続けたある日、カフェで雑談した男の撮ったハロルドの写真と共に、徒歩の旅のエピソードが新聞の一面に掲載される。多くの人が声をかけ、食べ物を差し入れたり、一緒に歩き始めたりする。だが、ハロルドには、この旅を独りで完遂しなければならないとわかっていた・・・
この映画を観て思い出したのが、『君を想い、バスに乗る』です。最愛の妻に先立たれた老人が、かつて妻と出会った場所を目指して、ローカルバスのフリーパスを使って旅をする物語。こちらも、SNSで話題になって、皆が応援しました。イギリスって、そういう国民性?
それにしても、どうしても直接伝えたいことがあると、無謀にも歩いて800キロも離れた地を目指す理由は何? 奥さんにも、ちゃんとクイーニーの名前を伝えているので、愛情を打ち明けるためではないし・・・と思い巡らしましたが、それは思いもよらない理由でした。驚くべき真相はともかく、イギリスの素朴で美しい田舎の風景をたっぷり味わえる映画です。(咲)
原作は、累計発行部数600万部を誇るベストセラー小説「ハロルド・フライの思いもよらない巡礼の旅」(講談社文庫)
2022年/イギリス/英語/108分/ビスタ/カラー/5.1ch
日本語字幕:牧野琴子
配給:松竹
後援:ブリティッシュ・カウンシル
公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/haroldfry/
★2024年6月7日(金)新宿ピカデリー、ヒューマントラスト有楽町、シネ・リーブル池袋ほか全国公開
違国日記
監督・脚本:瀬田なつき
原作:ヤマシタトモコ「違国日記」 (祥伝社 FEEL COMICS)
劇中歌:「あさのうた」(作詞・作曲:橋本絵莉子)
出演:新垣結衣、早瀬憩、夏帆、小宮山莉渚、中村優子、伊礼姫奈、滝澤エリカ、染谷将太。銀粉蝶、瀬戸康史
累計販売数180万部を突破し、”心に効く”と多くの共感を得た同名コミックの映画化
15歳の朝(早瀬憩)は、ある日、目の前で両親を交通事故で亡くしてしまう。葬式の席で、親戚たち誰もが朝を引き取ろうとしない中、槙生(新垣結衣)が言い放った。
「あなたを愛せるかどうかはわからない。でもわたしは決してあなたを踏みにじらない」
槙生は、朝の母親・実里の妹だが、全く交流がなく、朝とはほぼ初対面だった。ふたりの同居生活が始まる。人見知りで片づけが苦手な槙生は少女小説家。一日、パソコンに向かっている。専業主婦で綺麗好きな母に育てられた朝にとって、槙生は初めて見るタイプの大人だった。中学を卒業し、高校1年生になった朝のせわしい日常と、マイペースで黙々と過ごしてきた槙生の生活時間はなかなか噛み合わない。そんな中でも、槙生の長年の親友・醍醐(夏帆)とはすぐに打ち解け、3人での餃子パーティーは楽しい時間となる。
槙生は、母・京子(銀粉蝶)から、朝が大人になったら渡してと、実里の日記を預かる・・・
血は繋がっていても、ほぼ他人の未成年の子を引き取って同居するのは、ほんとに勇気のいることだと思います。数年前に、妹の孫の男の子(当時、小学校3年生だったかと)を5日間預かったことがありました。子どものいない私には、そんな小さい子の扱い方はわからなくて戸惑ったものですが、タブレットが子守をしてくれました。食事さえ作ればよかったものの、自分の生活のペースを崩されて、どっと疲れたものです。
朝の友達のみのりが、槙生に「なぜ結婚してないんですか?」と不躾に尋ねる場面がありました。「結婚してるのが普通で、してないのは変というのは今はない」と答える槙生。(そうだ! そうだ!) そんな槙生にも、かつては恋人だったけれど、今も大切な存在の男性がいるのです。それも素敵。
母親とは違ったタイプの叔母のもとで、少しずつ成長していく朝。他人を思いやりながら暮らしていくヒントも貰えそうな物語。(咲)
2024年/日本/139分
製作:「違国日記」製作委員会
配給:東京テアトル ショウゲート
制作プロダクション:ジャンゴフィルム
公式サイト:https://ikoku-movie.com/
★2024年6月7日(金)より全国ロードショー