2024年05月12日
ボブ・マーリー:ONE LOVE 原題:Bob Marley: One Love
監督:レイナルド・マーカス・グリーン(『ドリームプラン』)
脚本:テレンス・ウィンター(『ウルフ・オブ・ウォール・ストリート』)、フランク・E・フラワーズ、ザック・ベイリン(『グランツーリスモ』)、レイナルド・マーカス・グリーン
出演:キングズリー・ベン=アディル(『あの夜、マイアミで』)、ラシャーナ・リンチ(『キャプテン・マーベル』『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』)
1976年12月3日、ジャマイカ。2日後に開催する無料コンサート「スマイル・ジャマイカ・コンサート」のリハーサル中、ボブ・マーリーは銃撃された。当時、ジャマイカでは二つの政党が対立し、内戦一歩手前の状況で、コンサートは平和を呼びかける目的でボブが企画したものだった。ところが、ボブの人気を政治利用しようと、政党PNPがコンサートの2週間後に総選挙をすることを発表。そんな状況下で、対立政党JLPによるものと思われる銃撃だった。2日後、怪我をおしてステージに立ったボブは、「コンサートを決めた時、政治なんてなかった。人々の愛のためだけに演奏したかったんだ!」と8万人の観衆に向けて叫んだ。身の危険を感じたボブは、翌日、ロンドンへと脱出した。
ボブは、アルバム『エクソダス』の制作に勤しむ。その後、20世紀最高のアルバム(タイム誌)と呼ばれる名盤だ。ヨーロッパ主要都市を周るライブツアーを敢行し、アメリカツアーの準備中、癌が見つかる。体に刃物を当ててはいけないという敬虔なラスタファリアンだったボブは切除を拒否。放射線治療や化学療法を行うが、1981年5月11日、36歳の若さで亡くなった。5月21日、祖国ジャマイカで国葬が執り行われた・・・
世界に名を轟かせた「レゲエの神様」であり、ジャマイカの国民的英雄ボブ・マーリーの知られざる激動の生涯を描いた映画。
妻リタ・マーリー、娘のセデラ・マーリー、息子のジギー・マーリーなど、ボブ本人を誰よりも近くで見守ってきた家族たちがプロデューサーに名を連ねた<正真正銘のボブ・マーリー映画>
ボブの信じたラスタファリズムとは、旧約聖書に出てくる古代イスラエル人(ユダヤ人)とは自分たち黒人の祖先であり、奴隷として世界中に売られた黒人を救世主(ヤハウェー=ジャー)が救済し、約束の地アフリカに導いてくれるという宗教的思想運動。
ボブが生きていた時代、エチオピアの皇帝ハイレ・セラシエ1世が、ラスタにとって神ヤハウェ(=ジャー)の化身である生き神と信じられていました。ハイレ・セラシエ1世の即位前の名が「ラス・タファリ・マッコウネン」であることから、崇拝者のことをラスタファリアン(ラスタ)と呼ぶとのこと。
ボブの特徴的な髪形である「ドレッドロックス」は、聖書の記述に則り、体に刃物を当ててはならないことから生まれたラスタ特有のもの。
ボブの妻リタが、大きなダビデの星のペンダントをしていて、なるほど、ユダヤなのだと。
ボブの生涯、ラスタのこと、そしてジャマイカの政治状況のことなど、いろいろと学ぶことのできる1作です。(咲)
2024年/アメリカ/108分
字幕監修:池城美菜子
配給:東和ピクチャーズ
公式サイト:https://bobmarley-onelove.jp/
★2024年5月17日(金)ロードショー
ありふれた教室 原題:Das Lehrerzimmer 英題:The Teachers’Lounge
監督・脚本:イルケル・チャタク
出演:レオニー・ベネシュ(『白いリボン』)、レオナード・ステットニッシュ、エヴァ・ロバウ、マイケル・クラマー、ラファエル・シュタホヴィアク
若き女性教師カーラ・ノヴァク。新たに赴任した中学で1年生を受け持ち、張り切る日々。学校では盗難事件が頻発していて、ある日、授業中に校長たちが抜き打ち検査を行う。大金を持っていたアリが疑われ、両親が学校に呼ばれるが、母親がいとこへのプレゼントを買う為に渡したものだと判明する。正義感溢れるカーラは、独自に犯人を捜そうと、職員休憩室でパソコンのカメラをオンにしておく。すると、特徴ある柄のブラウスから、ベテラン事務職員クーンがカーラのお金を盗んだらしいことが判明する。クーンは犯行を否定するが、休職させられる。成績優秀な息子のオスカーはカーラのクラスで、母は犯人じゃないと言い張る・・・
カーラは職員休憩室で、ある人物がコーヒー代を入れる箱から小銭を持ち去る姿を見て、カメラを仕掛けるのですが、その行為が人権侵害だと指摘されて、クーンを疑いながらも、画像を公開しません。教師の中には、「今の清掃会社になって盗みが増えた」という者もいます。盗難犯は、おそらく一人ではないはず。オスカーが母親の潔白を信じる姿が、あっぱれです。
移民の多いドイツを反映して、カーラのクラスにはスカーフをした女子生徒やトルコ系や色の黒い男の子もいます。カーラ自身、ドイツ生まれですが、両親はポーランドからの移民という設定。ポーランド系の同僚からポーランド語で話しかけられ、「ここではほかの人もいるからドイツ語で」と言っています。盗難を疑われたアリの両親が、トルコ語で会話した時には、「ここではドイツ語で」と促されます。
イルケル・チャタク監督は、トルコ移民の両親のもとドイツ・ベルリンで生まれ、12歳の時にイスタンブールへ。現地のドイツ系高校での同級生ヨハネス・ドゥンカーと共同で脚本を書いています。二人の学校時代、体育の時間に休んだ者が盗みを働いていたという思い出などが本作のきっかけ。
どこの国でもあり得る物語。ただ、ドイツでは、日本のような職員専用の机のある職員室はなくて、授業の合間の休憩時間に職員が過ごす場所があるとのこと。英語のタイトル『The Teachers’Lounge』が、そのイメージ。ところ変わればですね。
生徒たちが作る学校新聞には、「移民の背景を持つ生徒を証拠もなく疑った」と大きく掲載されます。移民排斥や人種差別があることも、映画の背景になっているようです。(咲)
*本年度アカデミー賞®国際長編映画賞ノミネート
*第73回ベルリン国際映画祭 W 受賞(C.I.C.A.E Award、Label Europa Cinemas)
2022年/ドイツ/ドイツ語、トルコ語、ポーランド語/99分/スタンダード/5.1ch
配給:アルバトロス・フィルム
公式サイト:https://arifureta-kyositsu.com/
★2024年5月17日(金)、新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、シネ・リーブル池袋他全国公開