2024年05月05日
またヴィンセントは襲われる(原題:VINCENT DOIT MOURIR 英題:VINCENT MUST DIE)
監督:ステファン・カスタン
原作:マチュー・ナールト
脚本:マチュー・ナールト、ドミニク・ボーマール、ステファン・カスタン
出演:カリム・ルクルー(ヴィンセント)、ビマーラ・ボンス(マルゴー)
建築デザイナーのヴィンセントは、職場のインターン生から突然殴られる。同僚からも襲われるが、加害者たちはその記憶がないという。非があるのはヴィンセントのほうでは?と疑われ、自宅ワークを進められる。しかし、知らない老若男女たちからも突然攻撃され命を狙われるようになった。なんの心当たりもなかったが「自分と目線が合ったとたんに、相手が襲いかかってくる」のに気がついた。この理不尽な暴力の日々に放り込まれたヴィンセントは、自衛の方法を考える。
「ただ目が合っただけ」で周囲の人々に襲われるようになったとは!猿山に出かけたとき、猿と目を合わせないように、と注意を受けたことがあります。でもこれは人間世界の話。自分がそんな目にあったら、と思うとぞっとします。視線を合わせないために「サングラスをかけたら」とすぐ思いつきますが、映画では一度も使われません。SNS情報もあまり駆使されず、話はわりあいシンプルです。この災厄のおかげで出会うマルゴーや、目の見えない人に活躍してほしかったし、続編はないのでしょうか。
主人公ヴィンセントを演じたのは『バック・ノール』のカリム・ルクルー。目力が強いので、そのせいではと最初に考えてしまいましたが、そうではありませんでした。はて?
本作は、第76回カンヌ国際映画祭の批評家週間に選出されゴールデンカメラ賞にノミネート。シッチェス・カタロニア国際映画祭では最優秀主演俳優賞を獲得。(白)
2023年/フランス/カラー/シネスコ/115分
配給:NAKACHIKA PICTURES
(C)2023 - Capricci Production - Bobi Lux - GapBusters - ARTE France Cinema - Auvergne-Rhone-Alpes Cinema – RTBF
https://vincent-movie.jp/#
★2024年5月10日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国公開
ジョン・レノン 失われた週末(原題:he Lost Weekend:A Love Story)
監督:イヴ・ブランドスタイン、リチャード・カウフマン、スチュアート・サミュエルズ
音楽監督:ハワード・パール
出演:メ イ・パ ン、ジュリアン・レノン
「 あの時期のことは誰も何も知らない。だから真実を伝え、誤解を正したいと思う。今まで書かれたことは不正確だから。私の物語は私が書く」
「私」とは、メイ・パン。若き日にジョン・レノンとオノ・ヨーコの個人秘書を務めていた女性だ。ジョンとヨーコは1969年に結婚。以降、ジョンが1980年12月8日に40歳の若さで凶弾に倒れるまで共に過ごしたが、一時期だけ例外があった。1973年後半にジョンは家を出て、メイと暮らした。これは「失われた週末」と呼ばれる、ジョンとメイが一緒に過ごした時期をめぐる物語である。
ジョン・レノンを取り上げた映画はこれまでもいくつも発表されてきました。この映画は雇い主だったオノ・ヨーコの公認(ほぼ命令?)で、一時期愛人だったメイ・パンが語ったストーリーからできています。
仕事や家庭から離れて、リラックスしたジョンがいます。まだ若かったメイが、最初は戸惑いながらもジョンにすっかり夢中になるようすが見て取れます。ロック少女だったメイはジョンと話が合い、とてもよく気働きのできる人で、それまで疎遠だった人とジョンとの橋渡し役もつとめます。二人は短い間ですが相思相愛で暮らしたのでしょう。詳しい方なら、その間にジョンが発表した名曲の数々も浮かぶはず。貴重な映像や懐かしい歌を見聞きしながら、ジョンを偲んでください。(白)
リアルタイムでビートルズの曲が好きでしたが、まだ10代だったこともあって、彼らの生き様にまでは興味はなくて、オノ・ヨーコのことはさすがに知っているものの、メイ・パンという女性のことは全く知りませんでした。コアなファンなら周知のことらしいですが、それでもこの映画では、知らないエピソードも多々あるらしいです。当時の映像がたくさん残っていることにも驚かされます。そこには、メイ・パンのはつらつとした姿が映っていて、若いのに、いかにもやり手という感じ。 ジョン・レノンがヨーコのもとを離れていた18か月は、私との蜜月時間だったのよと、堂々と明かしていて、私はちょっと引いてしまいました。ジョンからの最後の電話になってしまったという会話の中では、「君と暮らす方法を考えている」という話も出たとのこと。これがほんとかどうかは、天国にいるジョンのみが知ること。 ジョンが存命ならば作れなかった映画だと感じてしまいます。何より、オノ・ヨーコがいかにも女帝のように描かれていて、彼女にとっては心地よい映画であるはずがありません。
ジョン・レノンが、何かあると周りの人に暴力をふるったという話は、ちょっとショックでした。平和を願い、反戦運動に身をやつしたジョンが・・・と。
ニクソン大統領は、反戦運動を理由にジョンを国外追放しようとしていて、ウォーターゲート事件でニクソンが大統領を辞任し、やっと心穏やかに暮らせることになったというエピソードも、今さらながら、そんなこともあったと思い出しました。
エンドロールで、メイ・パンが、Special Thanksとして、名前だけでなく、それぞれに宛ててメッセージを書いているのも興味深いです。
お父さんには、「あなたが男の子を欲しかったと知ってる。でも、女の子だって、強くなれることを見せたと思うわ」と書いています。映画の冒頭で、父親は、娘が生まれたので、男の子を養子に迎えたことから、自分は「望まれない子」だと感じたと語っています。それがメイ・パンの原動力だったのかもしれませんね。(咲)
2022年/アメリカ/カラー/94分/1.85:1/5.1ch
字幕:松浦美奈 字幕監修:藤本国彦
配 給:ミモ ザ フィルム ズ
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https://mimosafilms.com/lostweekend/
★2024年5月10日(金)より角川シネマ有楽町、シネクイント、新宿シネマカリテ、池袋シネマ・ロサ、アップリンク吉祥寺ほか全国順次ロードショー