2024年04月21日
悪は存在しない
監督・脚本:濱口竜介
音楽:石橋英子
撮影:北川喜雄
美術:布部雅人
出演:大美賀均、西川玲、小坂竜士、渋谷采郁、菊池葉月、三浦博之、鳥井雄人、山村崇子、長尾卓磨、宮田佳典、田村泰二郎
自然豊かな高原に佇む長野県水挽町。巧(大美賀均)は薪を割ったり、せせらぎで水を汲んだりの暮らし。小学生の娘・花(西川玲)を迎えに行く時間をつい忘れて、いつも花はすでに歩いて帰途についたといわれる。林の中で花を見つけ、木の名前や、野生の鹿の水場を教える。自然と共にある暮らし。
そんな町に、東京の芸能事務所がグランピング場を作る計画が持ち上がる。住民を集めての説明会が開かれる。キャンプブームで遠方からの客を期待できるし、地元の方にも愛されるものを目指しているという。だが、地元の者にとっては汚染水や焚火の不始末など不安要素が多く、すぐには賛成できない。巧は、建設予定地が野生の鹿の通り道なのも心配だ・・・
『ドライブ・マイ・カー』(21)で音楽を担当した石橋英子さんから、濱口監督に提案された映像制作の新たな試み。映像に音楽をつけるのでなく、映画と音楽のセッション。
冒頭、美しい林の映像に、心を掻き立てるような音楽。けれども、映画全体に音楽が流れているわけではなく、日々の営みや、説明会の場面はあくまで映像中心。
そして、『ハッピーアワー』(2015年)と同様、出演者の方たちは名前をみても顔の浮かばない方たち。主演の巧を演じた大美賀均さんは、濱口監督作品には『偶然と想像』で初めて制作部の一員として入り、今回も当初スタッフとして参加していたところ、主役に抜擢されたという経緯に驚きます。
芸能事務所の説明会には、エキストラの方たちも参加しているのですが、それぞれの人物背景がしっかり設定されていたとのこと。
グランピング場は、コロナ禍で業績の落ち込んだ芸能事務所が、政府からの補助金を得て計画したもの。説明会に赴く芸能事務所の二人の会話が、人間臭くて面白いものでした。
芸能人のマネージャーとして17年働いてきた男性は、なぜ自分が住民に説明する立場にならなければならないのかと最初は不満たらたら。巧のところで薪割りをさせてもらって、スパッと割れた時の快感から、グランピング場の管理人もいいかなと思い始めます。芸能事務所とは真逆の業種から転職してきた女性も、このままでいいのかとつぶやきます。人生の岐路に立たされた時の思いにも寄り添った物語。
大人たちが、それぞれの立場で自分の思いを吐き出す中で、小学生の花が森の自然や野生の鹿を見つめる目はとてもピュア。写真でしか出てこない母親は亡くなったのか、離別したのか・・・ いろいろ想像を巡らす中、驚きのラストを迎えました。あ~ なんという映画なのでしょう! (咲)
第80回ヴェネチア国際映画祭 銀獅子賞(審査員グランプリ)受賞
2023年/106分/日本
配給:Incline 配給協力:コピアポア・フィルム
公式サイト:https://aku.incline.life/
★2024年4月26日(金).Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、シモキタ - エキマエ - シネマ『K2』ほか全国順次公開
越後奥三面 山に生かされた日々
監督:姫田忠義
出演:奥三面(おくみおもて)のみなさま
日本各地の生活や民族の伝統を数多くの映像作品として送り出した、姫田忠義監督。1976年民族文化映像研究所を設立し、1980年からダム計画によって、消えていく新潟県北部の奥三面という山村の取材を始めた。そこには消えつつある伝統の暮らしが驚くほど継承され、残っていた。4年をかけて映像をとりためた。集落は1985年に廃村、2000年にはダムの底に沈んだ。
1984年9月21日に日本初公開された作品が、40年を経てデジタルリマスター版でリバイバル公開です。
八百万の神はそこにもここにもいらっしゃいます。折りあればこうべをたれ、手を合わせます。自然を敬い、厳しい自然と折り合って暮らす人々が映像に残されています。ちんまりと座るおばあちゃん、毛皮を着て山に入る男性。なんだか自分の祖父母を見ているようです。育ったところは違うのですが、空気やたたずまいが似ています。頼み込んで狩猟に同行する監督のわくわく感も伝わってきます。子どもたちも仕事を分担し、親を助けてよく働きます。犬や猫にもちゃんと役割があります。
「山、山、山…」と繰り返す村の人の声になんだか泣けてきました。山で生まれ、山で育ち、心の中から身体のすみずみまで「山」が詰まっているんですね。
ここに映っている子どもたちは、すっかり大人になり、高齢の方々はすでに彼岸へと旅立たれたでしょう。姫田忠義監督も2013年に亡くなられています。この集落はダムの水面下に消えていきましたが、記録はこうやって残りました。記録は記憶になると映像作家の方が言われました。行ったことのない土地、会ったことのない人たちなのにどこか懐かしく思うのは、自分の記憶と少しでも重なるところがあるからです。感情もいっしょに上書き保存されて、新しい記憶となりました。(白)
1984年/日本/カラー/145分
配給:民族文化映像研究所
(C)民族文化映像研究所
https://minneiken.wixsite.com/okumiomote
民映研 X(旧Twitter)はこちら
★2024年4月27日(土)よりポレポレ東中野にてロードショー、全国順次公開
ラジオ下神白 あのとき あのまちの音楽から いまここへ
監督・撮影・編集:小森はるか
編集:福原悠介
整音:福原悠介
出演:下神白(しもかじろ)団地の住民さん、アサダワタル、榊裕美、鈴木詩織、江尻浩二郎、伴走型支援バンド
福島県いわき市に、復興公営住宅・下神白団地がある。ここには2011年の福島第一原発事故の後、浪江町・双葉町・大熊町・富岡町から避難してきた人々が暮らしている。
2016年から住民を応援するプロジェクト「ラジオ下神白」が始まった。一人一人を訪ね、町の思い出と懐かしい曲にまつわるエピソードを聞いて、最後にCDに仕上げてプレゼントしている。2019年には「伴走型支援バンド」を結成した。バンドの生演奏で歌える「歌声喫茶、ミュージックビデオ制作など音楽を通じた支援活動を、小森はるか監督が追いかけて撮影した。
小森はるか監督作品は『息の跡』(2016)『空に聞く』(2018/公開2020)『二重のまち/交代地のうたを編む』(2021)などがあり、シネジャでもご紹介しています。
小森監督はその土地に住み、住民の一人となって震災後の東北の人々と風景を記録してきました。
この音楽活動は文化活動家のアサダワタルさんが中心となっています。2018年から小森監督が参加して記録したことで、映画が始まりました。大好きな一曲を生の演奏つきで朗々と歌う方、思い出を事細かに話す方、どの方もとても嬉しそうです。
住民のお話を聞くのは、孫くらいの年齢の女性たちです。とても親身に応対しているのに胸が熱くなりました。引っ越し予定の方は、別れを惜しんで寂しいと涙しています。故郷の老母の話をこんなに優しく聞いていないわ、と自分を振り返って反省しきりでした。「寄り添う」という言葉だけではない、目に見える行動をする人たちがここにいます。(白)
2023年/日本/カラー/70分
配給:ラジオ下神白
(C)KOMORI Haruka + Radio Shimo-Kajiro
公式サイトURL:https://www.radioshimokajiromovie.com/
公式X(旧Twitter): @shimokajiro
★2024年4月12日(金)よりフォーラム福島で先行上映、
4月27日(土)よりポレポレ東中野ほかにて全国順次公開ロードショー
夜明けへの道(原題:Rays of Hope)
監督・脚本・撮影・音楽:コ・パウ
音楽:コ・ピョウ
出演:コ・パウ
2021年2月1日、軍事クーデターが勃発。10年前、市民が手に入れた自由と平穏な生活は再び取り上げられた。軍は民主派政権の幹部を拘束し非常事態を宣言する。市民たちの抗議デモが繰り返され、コ・パウ監督はデモを先導したとして指名手配される。危険を感じた監督は、安全のためヤンゴンの家族と離れ、民主派勢力の地域へ逃れていく。いつ見つかるかもしれない、追われる恐怖の日々の中、撮影し続けたセルフドキュメンタリー。
コロナ禍で外出が制限されていたとき、コ・パウ監督が家族で作った動画が冒頭に流れます。俳優でもある監督が面白おかしいショートフィルムを作り、SNSに投稿して人々を元気づけていました。クーデター後はデモに参加し、軍の圧政に抗議を続ける姿勢を崩しませんでした。指名手配を受け、妻や子供たちに影響がないように、一人で逃亡する決心をします。家族の顔を見られるのは携帯での動画だけ、厳しい表情だった監督が、このときだけは優しいお父さんの顔に変わります。双方、どんなにか会いたいだろうと、想像するだけで胸が痛みます。
監督は自由を取り戻すまで、この戦いはやめない、と決心しています。しかし、クーデターから3年の時が過ぎ、世界の関心は新しいニュースに移っていきます。当事者の苦しみは終わっていないのに、世界中から無関心でいられることは足の下に何もないような感覚でしょう。これを「最後の闘いにしたい」と、大きな代償をはらっている人たちが、大勢います。コ・パウ監督たちが家族との平和な暮らしを取り戻せますように。そのために祈るだけでなく、形ある支援、行動を伴った支援をしなくてはと思います。(白)
2023年/ミャンマー/カラー/101分
配給:太秦
(C)Thaw Win Kyar Phyu Production
https://yoake-myanmar.com/
★2024年4月27日(土)より新宿K’s cinemaほか全国順次公開
■本作の興行収入より映画館への配分と、配給・宣伝経費を差し引いた配給収益の一部は支援金とし、コ・パウ監督らを通じてミャンマー支援にあてられます。[配給: 太秦株式会社]
マリウポリの20日間(原題:20 Days in Mariupol)
監督・脚本・撮影:ミスティラフ・チェルノフ
2022年2月、AP通信取材班は、東部のマリウポリが戦略的に重要な地点となると判断して車で向かう。到着1時間後に本当に戦争が始まった。民間人を攻撃しないとの期待はすぐに裏切られる。戒厳令がしかれ、戦場となったマリウポリに残った取材班は命がけで撮影を続けた。逃げ場もない市民は、少しでも安全に思える地下に駆け込む。住宅地にミサイルが撃ち込まれ、病院の産科も被害に遭う。何もかも足りない中、重傷者は増え続ける。病院の医師たちは休むまもなく救助活動にあたっているが、設備は破壊され、薬も人手もなくなるばかりだ。取材班は電波の良いところを探して、世界へ映像を送り続ける。
容赦ない砲撃を受ける住宅地、みるみるうちに崩れて街の姿はなくなっていきます。水や電気、通信網が破壊され、情報が遮断されます。逃げ場所もないと泣く女性、遺体が増えていく惨状も撮影します。霊安室もいっぱいになり、遺体は作業室にまで並べられます。細長く掘られた穴が仮の埋葬場所、係の男性は「戦争を始めたヤツらはみんなくたばれ!」と吐き捨てます。
ロシア側がマスコミの追及に「あのニュース映像は俳優が演じているフェイクだ!」と返す映像もあります。報道もまた戦争の最前線、重責を思います。周りの人たちも「真実を知らせて」「捕まったらフェイクニュースと言わされる」と口々に希望を託します。
Zマークの戦車が街に入ってきます。「映像を世界に送ってもらいたい」と軍人たちに支援され、取材班は赤十字の車列に追いつき脱出できました。しかし、街に残るしかない人たちを置いてきたことで自責の念にかられます。マリウポリは侵攻から86日目に陥落、死者は25000人以上にのぼりました。(白)
アカデミー賞(長編ドキュメンタリー賞)授賞式でのミスティラフ・チェルノフ監督挨拶(HPより)。
「この作品はウクライナ映画史上初めてアカデミー賞を受賞しました。
しかし、おそらく私はこの壇上で、こんな映画が作られなければよかった、などと言う最初の監督になるだろう。このオスカー像を、ロシアがウクライナを攻撃しない、私たちの街を占領しない姿と交換できれば、と願っています。ロシアは私の同胞であるウクライナ人を何万人も殺している。私は、彼らがすべての人質たち、国を守るために戦うすべての兵士たち、刑務所にいるすべての民間人たちを解放することを願っています。しかし、歴史を変えることはできません。過去を変えることもできません。私はあなた方に、世界で最も才能のあるあなた方に呼びかけます。私たちは、歴史を正しく記録し、真実を明らかにし、マリウポリの人々や、命を捧げた人々が決して忘れ去られないようにすることができます。なぜなら、映画は記憶を形成し、記憶は歴史を形成するからです」
2023年/ウクライナ・アメリカ合作/カラー/97分
配給:シンカ
https://synca.jp/20daysmariupol/
★2024年4月26日(木)TOHOシネマズ日比谷ほか全国緊急公開
一生売れない心の準備はできてるか
監督:當間早志
プロデューサー:奈須重樹 平良竜次
ライブ撮影:野田尚之 牧野裕二 當間早志
出演:やちむん刺激茄子(奈須重樹、育、長谷川淑生、さとうこうすけ、比嘉正一郎、ヤギフミトモ)、関島岳郎、島田篤、有田康信、和田充弘、ローリー、知念保、本村実篤、金城千賀子、赤嶺志麻子、内間晶子、ジーナ、新良幸人
沖縄発のバンド「やちむん刺激茄子」のリーダー奈須重樹は2021年、音楽活動30周年を迎えた。これまで小ヒットが一曲のみ。それでもめげずに活動を続け、今は流しを中心に日銭を稼ぎながら精力的に新曲を発表している。そんなイマイチ“売れない男”が、バンド結成25周年記念で18人編成のビッグ・バンドライブに臨んだ。会場は沖縄最古の映画館《首里劇場》。満員の聴衆を前に天衣無縫なパフォーマンスを繰り広げ、熱く華やかな空気で包み込んだ。
奈須重樹さんは延岡出身ですが、沖縄の大学進学を機に沖縄に住み早や42年。すっかり“しまんちゅ”です。カメラマンの仕事をしていたのに、タイトルのように心の準備ができたのか、いつのまにかミュージシャンが本業になってしまいました。沖縄は街も人も暖かくて暮らしていけるのでしょう(北国は寒くて大変)。何より歌っているのが心底楽しそうです。売れない覚悟は準備万端、覚悟を決めた人は強いのでしょう。この映画を観た後、タイトルの「一生売れない~♪」のフレーズが頭をぐーるぐる。すっかりしみ込んでしまいました。返事は「全然できてない♪」なんですが。(白)
沖縄のバンド、やちむん刺激茄子のリーダー奈須重樹を追ったライブドキュメンタリー。「やちむん刺激茄子」のバンド結成25周年記念ライブを首里劇場で行った貴重な記録でもある。そして奈須さんの30年に渡る歌が流れる。
私は奈須さんのことを知らなかったけど『パイナップル・ツアーズ』(1992年公開)の3パートのうち、この映画の監督でもある當間早志監督が担当したパートでカメラを担当していたというので、その映像は観ている。この映画には、当時シネマジャーナルのスタッフだったIさんとOさんが助っ人に入っていた。私にとっては初めて試写に行った作品でもある。それに、今は閉館してしまった首里劇場(2022年に閉館)でのライブというのも貴重な記録である。さらに、この2月に47年ぶりに沖縄に行ったのでぜひ観たいと思った。
そうしたら驚いた! 奈須さんは「今は流しを中心に日銭を稼いでいる」と語り、最後はその流しをしている那覇、国際通りの「のれん街」のビルがバックに見える場所で語っていたけど、なんとそこは、私が沖縄に行った初日に入った所。このビルの中の海鮮料理の店で食事をし、そこにギターを抱えた流しの若者がきたという経験をしていた。残念ながら奈須さんではなかったけど、今時、ギターの流しがいる商店街は珍しいと思っていたら、奈須さんもここで「流し」をしていたんですね。ここで奈須さんに会いたかったな。
それに、「生活の柄」(栄町市場にある居酒屋)で、横に座った人が気持ちよさそうにしていたので「さあふうふう」という歌を作ったといって、歌っていたのにもびっくり。実は今回、私も「生活の柄」に行き、同じような経験をしたので。『歌えマチグワー』という作品で、この店のことを知り、ぜひ行きたいと思っていたのだけど、私が行った日、他にもこの店が気になって来たという人(この人も東京から)がいて、その人もここでの会話を楽しんでいた。他の日にもそういうような人がいて、その感じを歌にしたんだと知って嬉しかった。
この『一生売れない心の準備はできてるか』は、奈須さんの生きてきた道を表したドキュメンタリー映画でもある(暁)。
2022年/日本/カラー/121分
配給:シネマラボ突貫小僧
(C)Shige&Hayashi
https://dekiteruka.com/
★2024年4月26日(金)よりアップリンク吉祥寺にて上映!
■2024年4月26日(金)〜5月2日(木)
※全ての回で主演・奈須重樹の舞台挨拶とミニLIVEを開催
※26日(金)27日(土)28日(日)は監督・當間早志も登壇。舞台挨拶を行います!!
■4月26日(金)夜〜
「world kitchen BAOBAB」(東京都武蔵野市吉祥寺南町2-4-6 B1F)にて奈須重樹LIVE開催予定。
システム・クラッシャー 原題:Systemsprenger 英題:System Crasher

© 2019 kineo Filmproduktion Peter Hartwig, Weydemann Bros. GmbH, Oma Inge Film UG (haftungsbeschränkt), ZDF
監督・脚本:ノラ・フィングシャイト
撮影:ユヌス・ロイ・イメール
音楽:ジョン・ギュルトラー
出演:ヘレナ・ツェンゲル、アルブレヒト・シュッフ、リザ・ハーグマイスター、ガブリエラ=マリア・シュマイデ
9歳の少女ベニーは、一見普通の女の子。だけど、いったん怒りの感情に火がつくと、あたり構わず暴力をふるって手がつけられなくなる問題児。里親の家庭、グループホーム、特別支援学校・・・と、問題を起こすたびにたらい回し。学校にも行かずに過ごしている。ベニーは、顔を触られることが大嫌い。赤ちゃんの頃、父親が顔にオムツを押し付けたことがトラウマになっていて、触られるとパニック発作を起こすのだ。ママ以外、誰にも顔を触らせない。心を許せるのはママと、社会福祉課のマリア・バファネの二人だけ。またトラブルを起こしたベニーの為に、マリアが新しい通学付添え人としてミヒャを連れてくる。彼の役目はベニーの通学に付き添うことだけど、ベニーは学校へ行く気などさらさらない。グループホームで包丁を振り回し、病院に連れていかれる始末。ミヒャが「森で3週間、1対1で世話をする。水も電気もない環境で」と提案。最初は、何もしたくないと素っ気なかったベニーが、親身に相手をしてくれるミヒャにだんだん心を開いていく・・・
システム・クラッシャーとは、あまりに乱暴で行く先々で問題を起こし、施設を転々とする制御不能で攻撃的な子供のこと。助けることができない子供たちを指す言葉。
本作が長編映画デビュー作となるノラ・フィングシャイトは、教育支援学校、緊急収容センター、児童精神科病棟など綿密に取材を重ね、現場を体験しながら5年間のリサーチを経て脚本を執筆し、映画化。
ベニーを演じたヘレナ・ツェンゲルの破壊的な怒りの演技がすごいです。これが地だったら、ほんとに手に負えなくて、親も周りも大変。でも、実際にこういう子供はいるのですよね。だから私は子育てしたくなかったのだと変に納得してしまいました。もちろん育てやすい子もいるのでしょうけど。先日、バスの中で泣きわめいてはた迷惑な女の子がいて、母親が何も言わないのが解せなかったのですが、思えば、あそこで母親が何か言ったとしても泣き止まないのを経験上わかっているからなのですね。あ~子育ては大変!(咲)
☆ヘレナ・ツェンゲルはドイツ映画賞の主演女優賞を歴代最年少で受賞
2019年/ドイツ/ドイツ語/カラー/125分/ビスタ
日本語字幕:上條葉月
後援:ゲーテ・インスティトゥート東京
提供:クレプスキュール フィルム、シネマ サクセション
配給:クレプスキュール フィルム
公式サイト:http://crasher.crepuscule-films.com
★2024年4月27日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開