2024年03月31日

アイアンクロー   原題:THE IRON CLAW

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© 2023 House Claw Rights LLC; Claw Film LLC; British Broadcasting Corporation. All Rights Reserved.

監督・脚本:ショーン・ダーキン
出演:ザック・エフロン、ジェレミー・アレン・ホワイト、ハリス・ディキンソン、モーラ・ティアニー、スタンリー・シモンズ、ホルト・マッキャラニー、リリー・ジェームズ

1980年初頭、プロレス界に歴史を刻んだ“鉄の爪”フォン・エリック家の物語

元AWAヘビー級王者のフリッツ・フォン・エリック(ホルト・マッキャラニー)は必殺技“アイアンクロー=鉄の爪”を生み出し一世を風靡したプロレスラー。息子たち全員をプロレスラーに育て、苛烈な競争が繰り広げられる世界で“史上最強の一家”となる野望を燃やしていた。次男ケビン(ザック・エフロン)、三男デビッド(ハリス・ディキンソン)、四男ケリー(ジェレミー・アレン・ホワイト)は、厳格な父のもとレスラーとしての才能を開花させ、1980年代に絶頂期を迎える。しかし、デビッドが日本でのプロレスツアー中に急死。さらにフォン・エリック家は悲劇に見舞われる。すでに幼い頃に長男ジャックJr.を亡くしており、いつしか「呪われた一家」と呼ばれるようになる・・・

スポーツ界のケネディ家と呼ばれてきたフォン・エリック家。ショーン・ダーキン監督は、イギリスで過ごしていた少年時代、何度か試合を見てファンだったフォン・エリック家の死亡事故を雑誌で知り、そのことがずっと頭の中に残っていて、それが映画として結実しました。次々に不幸に見舞われますが、めげずに一家を率いるのが、次男のケビン。長男が幼くして亡くなっているので、実質、長男としての役目を自覚して、皆に気遣う姿をザック・エフロンが体現しています。
ザック・エフロンといえば、『ヘアスプレー』(07)で初めて観た時に、いかにもアメリカの白人の美青年!と、目を引いたものです。その後、『ハイスクール・ミュージカル ザ・ムービー』(08)、『きみがくれた未来』(2010年)など、スリムな姿で楽しませてくれました。今回は、レスラーとして驚異的な肉体改造をして、別人のよう! ほんとに、ザック・エフロン?と、何度も思いました。身体はごつくても、心優しい男で、やっぱりザック・エフロンならではの役柄でした。
最後に出て来る本物のケビン一家の写真に、「呪われた一家」の異名を吹き飛ばしてくれたと、ほっとさせられました。(咲)


2023年/アメリカ/英語/132分/カラー・モノクロ/ビスタ
字幕翻訳:稲田嵯裕里
提供:木下グループ 配給:キノフィルムズ 
公式サイト:http://ironclaw.jp/
★2024年4月5日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー


posted by sakiko at 18:46| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

毒親<ドクチン> 英題:Toxic Parents

4月6日(土)よりポレポレ東中野ほかにてロードショー公開
劇場情報

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(C)2023, MYSTERY PICTURES, ALL RIGHTS RESERVED


母からの過剰な愛に苦悩する娘の心の闇を描いた韓国発のミステリードラマ

スタッフ・キャスト
監督・脚本:キム・スイン
出演
ヘヨン:チャン・ソヒ
ユリ:カン・アンナ
イェナ:チェ・ソユン
ギボム:ユン・ジュンウォン
オ刑事:オ・テギョン

成績が優秀で優等生の高校生ユリ。そして、誰よりもユリを愛する母親ヘヨン。二人は誰が見ても完璧で理想の母娘と周囲では羨ましがられている。しかし、実はユリは母へヨンの度を過ぎた教育と執着に長年悩まされていた。ある模擬試験の当日、学校には登校せず姿を消したユリは、湖畔に止められた車から他の二人とともに遺体となって発見される。
捜査に乗り出したオ刑事は、自殺の可能性が高いとみていたが、ヘヨンは頑なに認めようとしない。逆に担当教員ギボムがユリを呼び出していたことを知ったヘヨンは、その教員とユリの友人イェナが関わっていると主張し二人を告訴する。事件を探れば探るほど徐々にヘヨンの歪んだ子供への愛が浮かび上がり、やがて衝撃の真実があらわになる。

日本では「モンスターペアレント」という言葉で広く認知されたが、韓国では現在、子供への過剰な教育や躾を強いる親の存在が、大きな社会問題となっている。本作はその名の通り子供にとって<毒なる親>というべき存在を、母親、娘、周囲の人間それぞれの視点で描きながら、息つく間もない展開で観るものを釘付けにする韓流ミステリーがここに誕生した。

HPより
「ストーリー・オブ・マーメイド」「妻の誘惑」など数々の人気ドラマに出演してきたチャン・ソヒが母ヘヨン、ドラマ「ペーパー・ハウス・コリア 統一通貨を奪え」のカン・アンナが娘ユリを演じた。「オクス駅お化け」の脚色や「覗き屋」の脚本を手がけたキム・スインが、自身の脚本で長編初メガホンをとった。

去年(2023)のあいち国際女性映画祭で上映され、キム・スイン監督と母親役のチャン・ソヒさん、ユリ役のカン・アンナさんがゲストで来場された。記者会見、映画上映後のトークでキム・スイン監督は下記のように語っている。
「毒親という言葉は韓国ではまだ新しい言葉なので、。インパクトのある言葉としてタイトルにした。そして、タイトル負けしない物語にしたいと思った。ユリの担任ギボムと毒親の父との関係も対比で描きました。
どこの国でも起こりうる親子の問題として捉えて欲しい。人間が誰かを間違った方法で愛することは、私たち全員が経験する可能性があり、今、まさに私の話かもしれない問題だからです」
2023あいち国際女性映画祭記者会見にて.JPG
2023あいち国際女性映画祭記者会見にて
左からキム・スイン監督、チャン・ソヒさん、カン・アンナさん


この作品、去年のあいち国際女性映画祭で観たけど、母親役のチャン・ソヒの迫力ある演技に驚いた。脚本家出身のキム・スイン監督の送り出す母親のセリフは心に突き刺さる。それを受け止めるユリの心情。心が痛い。
数日前にもTVの番組で毒親のことを特集していたけど、親は子供が憎くていうのではなく子供に良かれと思っていうのだけど、子供の心を傷つけているということに気がつかない。昔から、そういう親はいたけど、昔は「教育ママ」って言ってたけど、最近は毒親っていうんだと思った(暁)。


公式HP https://dokuchin.brighthorse-film.com/#
[R-15] / 上映時間:104分 /
製作:2022年(韓国) /
配給:ミステリーピクチャーズ=シグロ
posted by akemi at 18:28| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年03月29日

ブルックリンでオペラを  原題:She Came To Me

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© 2023. AI Film Entertainment LLC. All Rights Reserved.


監督・脚本:レベッカ・ミラー 
音楽:ブライス・デスナー(『カモンカモン』『レヴェナント: 蘇えりし者』)
撮影:サム・レヴィ(『レディ・バード』『フランシス・ハ』)
出演:アン・ハサウェイ(『プラダを着た悪魔』『レ・ミゼラブル』)、ピーター・ディンクレイジ(『シラノ』『ゲーム・オブ・スローンズ』シリーズ)、マリサ・トメイ(『いとこのビニー』『スパイダーマン』シリーズ)

ニューヨーク、ブルックリン。精神科医のパトリシア(アン・ハサウェイ)は、スランプに陥っていた現代オペラ作曲家のスティーブン(ピーター・ディンクレイジ)と担当医として知り合い、結婚。いまだに作曲できないでいる夫を、治療の一環として愛犬と行く当てのない散歩に送り出す。スティーブンは、真っ昼間からバーでウィスキーを飲み、曳船の船長カトリーナ(マリサ・トメイ)と出会う。彼女の船に案内され、恋愛依存症だと打ち明けられ、誘いに乗ってしまう。想定外の出来事に、大慌てで船を降りるが、突然、オペラのアイディアが湧いてくる。
一方、パトリシアが大学2年生の時に産んだ18歳になる息子ジュリアン(エヴァン・エリソン)は、16歳のテレザ(ハーロウ・ジェーン)と恋愛中。テレザの母マグダレナ(ヨアンナ・クリーク)は、パトリシアが雇っている家政婦だった。マグダレナのパートナーで法廷速記者のトレイ(ブライアン・ダーシー・ジェームズ)は、未成年の娘を犯した罪でジュリアンを訴えると言い出す・・・

スティーブンには誰しもが羨む魅力的な妻がいるのに、降って湧いたような出会いのカトリーナに既婚者だと言い出せません。ちょっとがさつな船長に、次第に惹かれるスティーブンが可愛いです。
義父のトレイが、恋人を訴えると息巻いているのをかわすには、結婚するしかないと、若い二人は決意します。16歳のテレザは、ニューヨークでは結婚出来ず、近くの州だとデラウェア州なら結婚できるとわかります。(賭博が州によって合法か違法か話題になっていますが、中絶や結婚も、アメリカでは州によって法律が違うのですね・・・) 
さて、若い二人は無事結婚できるのか。そして、スティーブンと船長の恋の行方は? と、コメディタッチでオペラに乗せて、人生の行方を見せてくれます。(咲)


オペラの作曲家、曳船の船長など、なかなかこれまでの映画の主人公としては出てこなかった役の設定が面白い。しかも、物語の意外性と展開にまたびっくり。まさか船で逃走するという発想につながるとは。そのために曳船の船長という設定を作ったのかと、最後に納得。それにしても、いくらスランプだったからといって、自分が経験したことをそのまま歌劇にしてしまうとは…。安易じゃない? それでいいのと思ってしまったけど、それだけユニークな展開だったからよしとしよう。(暁)。


監督・脚本・プロデューサー
レベッカ・ミラー

REBECCA MILLER Headshot (Photo Credit - Leo Veira).jpg
© Leo Veira
1962年9月15日、米コネチカット州ロックスベリー生まれ。アメリカを代表する劇作家アーサー・ミラーを父に持ち、夫は元俳優のダニエル・デイ=ルイス。イェール大学で絵画と文学を専攻。ドイツで数年を過ごした後、1987年にニューヨークのニュースクール大学で映画を専攻。卒業後は女優として舞台や映画で活躍していたが、1995年に監督デビューした『アンジェラ』で、サンダンス映画祭においてフィルムメーカーズ・トロフィーと撮影賞、ゴッサム賞でオープンパーム賞を受賞。その後『Personal Velocity:Three Portraits』(02・原題)でサンダンス映画祭審査委員大賞、撮影賞と、インディペンデント・スピリット賞のジョン・カサヴェテス賞に輝いた。その他の監督作には『50歳の恋愛白書』(10)、『マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ』(15)、ドキュメンタリー映画『Arthur Miller: Writer』(17・原題)など。小説家としても活躍しており、本作の原案となった短編小説「She Came to Me」が収録されている「Total」を含む5冊の本を執筆している。(公式サイトより)


第81回ゴールデングローブ賞歌曲賞ノミネート
第73回ベルリン国際映画祭オープニング作品

2023年/アメリカ/英語/102分/ビスタ/カラー/5.1ch
日本語字幕:高内朝子
配給:松竹
公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/BrooklynOpera
★2024年4月5日(金)新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、シネリーブル池袋 他全国公開


posted by sakiko at 03:58| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年03月28日

成功したオタク  原題:성덕(ソンドク) 英題:FANATIC

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監督:オ・セヨン

「推し」が性加害で逮捕! さて、私たちの思いは?

あるK-POPスターの熱狂的ファンだったオ・セヨン。ファンサイン会に韓服を着ていき、認知してもらい、テレビ共演も果たした「成功したオタク」だった。彼の考えが込められた歌詞が好きで、嗜好や価値観も同じでいたいと思った。推し活の中で友達もできた。
そんなある日、彼が集団性暴⾏等の罪で逮捕されてしまう。突然「犯罪者のファン」になってしまったオ・セヨンは混乱する。裏切られたという一方で、これまでの楽しかった時間まで否定しなければいけないのか・・・ 複雑な思いがよぎる。同じ経験をした友たちは、どんな気持ちでいるのだろう。オ・セヨンは友たちに会ってみることにした。彼女たちが何を語るのかにも興味があったが、内心、慰められたいという思いもあった・・・

オ・セヨン監督は、まだ10代の頃、憧れの彼から「学年1位を目指して、親孝行しろよ」と言われれば、1位になり、「ソウル大学に行けよ」と言われれば、ちゃんと入学。彼の存在に励まされて青春を送ってきた彼女が、どこに気持ちを持っていけばいいのかと戸惑う思い、すごくよくわかります。私自身、長年、追っかけていた(当時は「推し活」でなく「追っかけ」でした)レスリー・チャンが人気の絶頂期に自殺してしまって、梯子をはずされたような思いをしたから。 プライバシーを侵害されることを嫌がっていたレスリーを、私たちが追っかけ過ぎたのも自殺の一因になったのではと、お仲間と話して、胸を痛めもしました。一方で、あの頃の追っかけ仲間と、今も思い出話を語れるのは、レスリーのお陰と感謝しています。
「長い間、推し活をして、自分にとって美しい思い出になり、それで幸せになれるなら、それこそソンドク(成功したオタク)だ」という言葉に、まさに同感!
「彼はこの映画を観てどう思うかな?」というオ・セヨンに、「感謝するはずよ」というお母さま。さらに「好きになった過程が大事」と素敵です。そのお母さま自身、わいせつ事件を起こして自殺してしまったスターのファンだったとのこと。
自分の気持ちを的確に分析し、同様の体験をした人たちへの取材を重ねて、率直な思いを聞き出し、1本の映画にしてしまったオ・セヨン! 今後、どんな映画を作り出してくれるのか、大いに期待しています。(咲)


2021 年/韓国/85 分/カラー
配給・宣伝:ALFAZBET
公式サイト:https://alfazbetmovie.com/otaku
★2024年3月30日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開

*監督来日舞台挨拶・各種イベント*
【東京】
オ・セヨン監督上映後トークイベント
日時:3月30日(土)1回目の上映、2回目の上映終了後
会場:シアター・イメージフォーラム(渋谷区渋谷2-10-2)
https://www.imageforum.co.jp/theatre/

前夜祭!映画をもっと楽しむためのトークイベント
桑畑優香さんによる公開インタビュー!
日時:3月28日(木)19:00〜
会場:チェッコリ
ゲスト:オ・セヨン監督、桑畑優香(翻訳家、ライター)
https://chekccori240328.peatix.com

オ・セヨン監督と話そう!
当日映画を観た方はもちろん、これから観るという方はネタバレ有りをご了承の上、じっくりお話ししましょう!
日時:3月30日(土)19:00〜
会場:SPBS本店(渋谷区神山町17-3 テラス神山1F)
https://spbs20240330.peatix.com/

【神戸】
元SKE48加藤るみさんが語る!
元アイドルで「推される側」だった加藤るみさんが本作を深掘り!
日時:4月6日(土)19:40の回上映終了後
会場:元町映画館(神戸市中央区元町通4丁目1-12)
https://www.motoei.com/post_event/seikouotaku_event1/


作家アルテイシアさんと感想おしゃべり会!
日時:4月7日(日)19:40の回上映終了後
会場:元町映画館(神戸市中央区元町通4丁目1-12)
https://www.motoei.com/post_event/seikouotaku_event2/

posted by sakiko at 14:14| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年03月24日

パスト ライブス 再会(原題:Past Lives)

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監督・脚本:セリーヌ・ソン
出演:グレタ・リー(ノラ)、ユ・テオ(ヘソン)、ジョン・マガロ(アーサー)

同級生のヘソンとノラ12歳。勉強面では競争相手でもあったが仲は良く、お互い初恋のような思いを抱いている。ノラの家族がソウルから海外へ移住することになり、二人はそれきり別れてしまった。24歳になったノラはニューヨークで作家になる夢を抱いている。SNSでヘソンが自分を探していたことを知り、オンラインで顔を合わせることができた。
さらに12年後、36歳のヘソンはノラを訪ねてニューヨークへ行く。ノラは作家のアーサーと結婚していたが、アーサーは13時間もかけてやってきたヘソンを歓迎する。

幼い思いを抱いたまま別れ、24年間すれ違った二人がニューヨークで再会しました。36歳になった二人の恋の行方は?
かつての光景をフラッシュバックさせながら、しみじみとした大人の会話が続きます。初めてニューヨークを訪れたヘソンを、ノラはあちこちへと案内、観客も一緒に美しい風景を見せてもらえます。子どもだった二人はすっかり大人になって、笑顔を交わしながら歩きます。互いの視線がしっかりと相手に届いているのも良いです。
とても印象に残るセリフがありました。「見知らぬもの同士が道ですれ違い、袖が偶然ふれあったらそれは8000層もの”縁(イニョン)が結ばれたということ」。日本にも「袖振り合うも多生の縁」ということばがあります。「多生」とは輪廻のこと、仏教用語なのでしょう。
ノラがいう「8000層の縁」と大きな数字は”とにかくたくさん”ということでしょう。「白髪三千丈」の中国から回ってきたのかもしれません。袖振り合うだけでなく、出会って友人になり、伴侶となり、子どもを得て、となればどれだけの縁が重なり、結ばれたのかわかりません。思わず自分の家族や友人を思いました。どうぞあなたの周りの方々を大切に。(白)


2023年/アメリカ・韓国/カラー/シネスコ/106分
配給:ハピネットファントム・スタジオ
Copyright 2022 (C) Twenty Years Rights LLC. All Rights Reserved

★2024年4月5日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 14:31| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ラブリセット 30日後、離婚します(原題:30일 英語題:Love Reset)

「ラブリセット」.jpg

監督:ナム・デジュン
脚本:パン・ギチョル、ナム・デジュン
出演:カン・ハヌル(ノ・ジョンヨル)、チョン・ソミン(ホン・ナラ)、チョ・ミンス(ナラの母ボベ)、キム・ソニョン(ジョンヨルの母スクチョン)、ユン・ギョンホ(ギベ)

ノ・ジョンヨルは自称イケメンで完璧な弁護士、ホン・ナラは名家の出身で映画のプロデューサーをしているバリキャリウーマン。二人は出会い、ドラマのような熱烈な恋に落ちて結婚した。しかしいつしかロマンスはホラーに代わり、互いの欠点だけがアップで見えてくる。大喧嘩の末に離婚調停に進み、熟慮して30日後に離婚することになった。帰りの車の中でも口喧嘩を続け、大型車に気づかず激突。
病院で目覚めたとき、ジョンヨルとナラの記憶は綺麗さっぱりなくなっていた。夫婦だったの?!周囲を巻き込んで失った記憶を取り戻そうと試みるが。

美男美女の二人は一目ぼれしての結婚ですが、実生活に入ってみればジョンヨルはヘタレxセコイ。ナラは破天荒で酒乱気味。理想の結婚生活はガラガラと崩れていきます。コメディ映画だから、そこんとこがオーバーに描かれていて大笑いできます。しかし、現実はそんなものと多くの既婚者が頷くでしょう。結婚はゴールではなくって、他人だった人との新たなスタートなのですよ。
別れる直前に、いいことも悪いことも全ての記憶がなくなったら、さて、もう一度一目ぼれするのでしょうか??芸達者な脇の俳優たちが主演を支えてさらに盛り上げてくれます。(白)


2023年/韓国/カラー/119分
配給:松竹
(C)CINEMA WOOLLIM, TH STORY AND MINDMARK
https://www.rakuten-ipcontent.com/lovereset/
★2024年3月29日(金)丸の内ピカデリーほかにて全国公開
posted by shiraishi at 14:15| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

RHEINGOLD ラインゴールド   原題:Rheingold

Rheingold.jpg
©2022 bombero international GmbH & Co. KG/Palosanto Films Srl/Rai Cinema S.p.A/Lemming Film/corazón international GmbH & Co. KG/Warner Bros. Entertainment GmbH
Photo© 2022 Bombero Int. _ Warner Bros. Ent. _ Gordon Timpen

監督・脚本:ファティ・アキン(『クロッシング・ザ・ブリッジ 〜サウンド・オブ・イスタンブール〜』『女は二度決断する』
出演:エミリオ・ザクラヤ、カルド・ラザーディ、モナ・ピルザダ、アルマン・カシャニ、フセイン・トップ、ソゴル・ファガーニ

クルド人のラッパー&音楽プロデューサーXatar(カター)の破天荒な人生

Xatarカター
1981年12月24日イラン北部クルディスタン州のサナンダジュ生まれ。
本名ジワ・ハジャビ(Giware Hajabi)。愛称はG。カターはクルド語で「危険」を意味する。
1985年 家族でドイツのボンに亡命。
ラッパー、音楽プロデューサー、レストラン経営者など様々な顔を持つ。
2015年に出版した自伝「Alles oder Nix: Bei uns sagen man, die Welt gehört dir(オール・オア・ナッシング:世界はお前のもの)」をベースに『RHEINGOLD ラインゴールド』は作られた。

イラン革命でイスラーム政権となり音楽が禁じられ、クルド人の音楽家の両親は命からがら演奏会場から逃げ出す。反体制運動をする最中、母はジワを出産。一家は逮捕され、ジワの最初の記憶は刑務所の中だ。数年後、出国し、滞在中のイラクで父が有名な音楽家であることから保護され、パリ経由、ドイツのボンに亡命する。
1996年、父が作曲した曲のコンサートが開かれ、家族は晴れがましい思いだったが、父は愛人を作って家を出ていく。その頃、歌がうまいパレスチナ人のサミーと出会う。クスリの売人になるが、不良たちにクスリを盗まれ、復讐のためにボクシングジムで戦い方を覚え、Xatar(カター:危険)と呼ばれるようになる。クスリを売っていたクラブでラップに出会い、作曲やキーボード演奏を楽しむようになるが、クスリの密売容疑で少年刑務所に。
出所後、オランダで音楽マネジメントを学ぶ。ボンに帰り資金稼ぎのために金塊強盗をし、国際手配され、シリアで8か月拘束された後、ドイツに送還され8年の禁固刑が言い渡される。見張りの目を盗んでレコーディングし、アルバムを完成させる。獄中から発売したアルバムはヒット、“ギャングスタ・ラッパー”として、さらに音楽プロデューサーとしても、その名を轟かせていく・・・

トルコ移民の両親のもと、ドイツで生まれたファティ・アキン監督が紡いだ壮大なXatar(カター)の物語。彼の自伝を読み、様々なことが描けると確信。カターにインタビューを重ね、大胆に脚色した脚本に。カターについて知らない観客やドイツのヒップホップに興味のない観客にもわかるストーリー、さらにカターのファンにも納得のいくものを心掛けたとのこと。撮影現場でカターからアドバイスを受け、カター自身も納得のいく作品になっているようです。
本作は、ファティ・アキン監督の亡き父に捧げられていますが、カターが父親と語る場面が味わい深く、印象に残っています。
1986年、オペラハウスでワーグナーの「ラインの黄金」のリハーサルを聴きながら、父が「ラインの黄金は不滅。掴んだ者は手放さない」とジワに語る場面。そして、刑務所に父が面会に来た時の会話。収監されている時間も活用するという父の言葉に、カターは作曲しCDまで作ってしまうのです。

イラン好きの私には、イラン生まれのカターに興味津々。革命後、クラシック音楽のコンサート会場に、ターバン姿の聖職者と革命防衛隊が押し入ってくる場面は、ちょっとオーバーかなと思いましたが、あり得ないことでもないなぁと。
ジワの母を演じたモナ・ピルザダも、ジワの妻となるシーリンを演じたソゴル・ファガーニも、ドイツで活躍するイラン人の女優さん。どんな経緯で、今ドイツにいらっしゃるのかも気になります。1979年の革命後、どれだけ多くの人たちが、世界各地に散らばってしまったことでしょう。そんな移民の思いも込められた作品です。(咲)



2022年/ドイツ・オランダ・モロッコ・メキシコ/ドイツ語、クルド語、トルコ語、オランダ語、英語、アラビア語/140分/1.85:1 *ペルシア語部分もありました(咲)
日本語字幕:吉川美奈子 
配給:ビターズ・エンド
公式サイト: https://www.bitters.co.jp/rheingold/
★2024年3月29日㈮より、ヒューマントラストシネマ有楽町、シネマート新宿、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国順次ロードショー!




posted by sakiko at 00:33| Comment(0) | ドイツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年03月23日

パリ・ブレスト 夢をかなえたスイーツ   原題:A la belle etoile

paris brest.jpg
(C)DACP-Kiss Films-Atelier de Production-France 2 Cinema

監督:セバスチャン・テュラール
脚本:セドリック・イド
出演:リアド・ベライシュ、ルブナ・アビダル、クリスティーヌ・シティ、パトリック・ダスマサオ、フェニックス・ブロサール、リカ・ミナモト

夢を叶え世界最高のパティシエになったヤジッド・イシュムラエンの物語

少年ヤジッドの母サミナは、定職もなくアル中のモロッコ移民のシングルマザー。ヤジッドは、預けられていたフォスターファミリー(里親)の家の息子がパティシエで、手作りのスイーツを皆で食べるのが楽しみだった。いつしか自分もパティシエになることを夢見るようになる。
2006年、児童養護施設で暮らすヤジッドは、パリの高級レストランに、機転を効かせた作戦で見習いとして雇ってもらう。毎日180キロ離れた田舎町エペルネからパリへ長距離通勤。時に野宿をしながらも必死に学び続け、偉大なパティシエたちに従事し、活躍の場を広げていく。心許せる親友も出来、夢に向かって充実した日々を過ごすヤジッドだったが、そんな彼に嫉妬する同僚の嫌がらせで、突然仕事を失ってしまう。なんとかしてパティスリー世界選手権に出場したいと、ヤジッドはかつて自分の作った「パリ・ブレスト」を気に入ってくれたムッシュ・ブシャールにパトロンになってほしいと頼み込む。半年後、いよいよパティスリーの世界選手権国内予選に挑む・・・

ヤジッド・イシュムラエンは、1991年フランスのエペルネ生まれのパティシエであり実業家。著書「Un rêve d'enfant étoilé: Comment la pâtisserie lui a sauvé la vie et l'a éduqué」(星の少年の夢:菓子作りが彼を救った理由)を、「Clique」という番組で紹介する彼に、本作のプロデューサーであるローレンス・ラスカリーが圧倒されたことから、この映画は生まれました。彼女は、ヤジッドの常に上を目指す姿に感銘を受け、著書の映画化権を獲得。縁あってセバスチャン・テュラールの初監督作品となりました。
本のタイトルに「星の少年の夢」とあるように、ヤジッドは夜空を眺めるのが好きでした。野宿するヤジッドに「10億星ホテルに泊まってる!」と親友。その親友に「北斗七星は片手鍋、こぐま座は小鍋の形」と言って、「星を見ても仕事!」とからかわれます。バンリュー(都市の郊外)で育ったモロッコ移民ルーツのヤジッドが、22歳でパティスリーの世界選手権のチャンピオンに輝き、今や、アヴィニョンのほか、ギリシャ、スイス、カタルなどにも店舗をオープン。高級ブランドともコラボし、実業家としても成功しています。
本作で、ヤジッド役を務めたリアド・ベライシュは、アルジェリア生まれで、8歳の時に両親と共にフランスに移民。YouTubeチャンネル「Just Riadh」を運営し、その登録者数は142万人を超える人気者。
ヤジッドの母親サミナ役のルブナ・アビダルもモロッコ生まれで、フランスの映画やTVシリーズで活躍する方。フランスの3割を占めるといわれる移民ルーツの人たちの存在をずっしり感じさせてくれる映画です。(咲)


2023年/フランス/フランス語/110分/5.1ch/カラー
字幕翻訳:手束紀子.
配給協力:FLICKK 
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ、日本スイーツ協会 
配給:ハーク
公式サイト:https://hark3.com/parisbrest/
★2024年3月29日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMA ほか全国ロードショー

posted by sakiko at 22:55| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年03月22日

オッペンハイマー  原題, Oppenheimer

Oppenheimer.jpg
© Universal Pictures. All Rights Reserved.


監督、脚本、製作:クリストファー・ノーラン
製作:エマ・トーマス、チャールズ・ローヴェン
原作:カイ・バード、マーティン・J・シャーウィン 「オッペンハイマー」(2006年ピュリッツァー賞受賞/ハヤカワ文庫)
出演:キリアン・マーフィー、エミリー・ブラント、マット・デイモン、ロバート・ダウニー・Jr.、フローレンス・ピュー、ジョシュ・ハートネット、ケイシー・アフレック、ラミ・マレック、ケネス・ブラナー

「原爆の父」オッペンハイマーの栄光と没落の生涯

J・ロバート・オッペンハイマー
1904年4月22日 ドイツからのユダヤ系移民の子としてニューヨークで生まれる。
1925年、ハーバード大学を3年で卒業後、イギリスのケンブリッジ大学に留学。
1926年、敬愛する客員教授ニールス・ボーアに勧められ、ドイツで理論物理学を学ぶ。
1927年、博士号を取得しアメリカに帰国。カリフォルニア大学で教鞭を取るようになる。
1936年、家主が開いた集会で共産党員のジーン・タトロックと出会い恋に落ちるが、長くは続かなかった。その後、出会った当時既婚者だった植物学者のキティ(キャサリン)と結婚。
第二次世界大戦下の1942年、オッペンハイマーは、国家の極秘プロジェクト「マンハッタン計画」に参加。優秀な科学者たちを率いて、ニューメキシコ州ロスアラモス研究所で原子爆弾の開発を進める。ナチスドイツの原子爆弾開発に対抗するものだったが、ナチスは降伏。その後は日本を降伏させるための武器として研究は続けられ、1945年7月「トリニティ実験」でついに成功を収める。しかし原爆が実戦で投下されると、その惨状を聞いたオッペンハイマーは深く苦悩するようになる。
戦争を終結させた立役者として賞賛されるも、その後、冷戦、赤狩り―激動の時代の波に、オッペンハイマーはのまれてゆく・・・

原爆の開発に成功したオッペンハイマーの内面を一人称で語り、作り出してもいいのかと苦悩する姿も見せてくれるのですが、被爆国の私たち日本人にとっては、罪悪感を持つなら作らないでほしかったと思わざるをえません。本作では、広島・長崎に投下された事実やその後の今も続く後遺症については語られていません。そこは不満なのですが、優秀な科学者は、自分の研究成果がどんな影響を与えるのかを考えて行動してほしいというメッセージは強く感じました。
原爆投下で戦争を終わらせることが出来たというのは詭弁で、すでに日本は負け戦だったと聞きます。開発に成功したから落としてみたかったのではと勘繰りたくもなります。
その後も、水爆や新しい兵器の開発は進み、一向に世界から戦争はなくなりません。

第96回アカデミー賞® 作品賞、監督賞、主演男優賞、助演男優賞、撮影賞、編集賞、作曲賞の最多7部門を受賞した本作。 オッペンハイマーと、彼を取り巻く人々を丁寧に描いたクリストファー・ノーラン監督の思いを噛みしめながら、大きな画面でご覧ください。(咲)

2023年/アメリカ/180分  
配給:ビターズ・エンド  ユニバーサル映画
公式サイト:https://www.oppenheimermovie.jp/
★2024年3月29日(金)、全国ロードショー



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ゴッドランド 原題:Vanskabte Land  

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(C)2023 ASSEMBLE DIGITAL LTD. ALL RIGHTS RESERVED.


監督・脚本:フリーヌル・パルマソン
出演:エリオット・クロセット・ホーヴ、イングヴァール・E・シーグルズソン、ヴィクトリア・カルメン・ゾンネ

デンマークの統治下に置かれていた19世紀後半のアイスランド。
キリスト教ルーテル派の若きデンマーク人牧師ルーカスは、司教の命を受け、植民地アイスランドに布教の旅に出る。最も重要な任務は、冬が到来する前に赴任先の辺境の村に教会を建てることだ。
通訳と数人のアイスランド人労働者を伴って船に乗ったルーカスは、目的地から遠く離れた浜辺に上陸する。そこから、大きな十字架や書物などを10頭ほどの馬に乗せ辺地の村を目指す。アイスランド語しか話さない年老いたガイドのラグナルとはことごとく対立する。増水した川の急流に行く手を阻まれ、ラグナルから引き返すべきだと助言を受けるが、ルーカスは渡ることを強行する。馬がバランスを崩し、十字架は川に流され、通訳もおぼれ死んでしまう。
険しい火山地帯や氷河湖を越え、やがて瀕死の状態で村にたどり着く。デンマークからの入植者のカールと、その二人の娘アンナとイーダの手厚い看護で元気を取り戻したルーカスは教会建設に取り組む。ようやく教会が完成しようとしたとき、事あるごとに対立してきたラグナルとの間で思いがけない悲劇が起こる・・・

そもそも布教という行為自体、人の感情につけ込む余計なものと思うのですが、このルーカスという牧師の傲慢さが最初から際立ちます。現地ガイドのラグナルとの対立は、通訳が死んでしまって、意思疎通ができなくなり、さらにエスカレートします。
険しい道中、ルーカスはこれはという場所で三脚を立てて写真を撮るのですが、実は、海路で僻地の村の近くまで行けたのに、未知のアイスランドの写真を撮りたいばかりに、陸路を選んだことが明かされます。険しい自然を知っておくべきというのも、一理ありますが。
冒頭、「アイスランドで発見された木箱にデンマーク牧師が撮った7枚の写真が入っていた。本作はこれらの写真にインスパイアされて製作された」と掲げられていますが、パルマソン監督による架空の設定。
アイスランドの壮大な風景が繰り広げられ、息を呑みます。傲慢な人間の行為が、その大自然のもとでは、あまりに情けなく思えます。(咲)


2022年/デンマーク、アイスランド、フランス、スウェーデン/デンマーク語、アイスランド語/143分
日本語字幕:古田由紀子
後援:駐日アイスランド大使館
配給:セテラ・インターナショナル
公式サイト:https://www.godland-jp.com/
★2024年3月30日(土) シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開




posted by sakiko at 11:31| Comment(0) | アイスランド | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年03月21日

コール・ジェーン 女性たちの秘密の電話  原題:Call Jane

2024年3月22日 全国公開 上映館情報 

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©2022 Vintage Park, Inc. All rights reserved.

1960年代―中絶が違法な時代のアメリカ
名もなきヒロインたちが「女性の権利」のために立ち上がった


監督・脚本:フィリス・ナジー
プロデューサー:ロビー・ブレナー
出演:エリザベス・バンクス、シガニー・ウィーバー

私の身体か、胎児のいのちか、自由に選択できないわたしたち

『コール・ジェーン –女性たちの秘密の電話-』は、女性の権利としての人工妊娠中絶を描いた実話を基にした映画。
この作品は、1973 年に最高裁が中絶を合法化する判決を下した「ロー対ウェイド判決(※)」以前、人工妊娠中絶が違法だった 1960 年代後半から70 年代初頭にかけて、推定12,000人を救ったと言われている実在した団体「ジェーン」の実際の活動を元に作られた物語。
女性たちが自らの権利を勝ち取った実話を映画化した本作は、映画祭で注目を集め大きな話題となった今観るべき社会派エンタテインメント。是非この機会にご高覧ください。
(※)1973 年アメリカ連邦最高裁が女性の人工妊娠中絶の権利を合法とした歴史的判決

妊娠? 助けが必要? ジェーンに電話を!
この「秘密の電話」が歴史を変えた――

1960年代のアメリカ。裕福な家の主婦として生きるジョイ。中絶が法律的に許されていない時代のシカゴで、2人目の子供を妊娠した。しかし、妊娠によって心臓の病気が発覚。唯一の治療は、妊娠をやめることだと担当医に言われ中絶を申し出るが、中絶が法律的に許されていない時代。病院の男性責任者たちから、あっさりと中絶を拒否されてしまった。なぜ本人の意志で中絶は決められないのか? なぜ命の危険が分かっていながらも本人の身体を優先できないのか? ジョイは正規ルートではない方法で中絶を試みる決心をする。
そんな中、街で偶然「妊娠? 助けが必要? ジェーンに電話を」という張り紙を見つけ、違法だが安全な中絶手術を提供するアンダーグラウンドな団体「ジェーン」にたどり着く。「ジェーン」を率いるのはフェミニストのバージニア。
その後、彼女に誘われて、ジョイも「ジェーン」に深く関わるようになり、自分と同じ立場で中絶が必要な女性たちを救うために立ち上がる!

本作に登場するアンダーグランドで活動する「ジェーン」は、実在した団体。1960年代後半から70年代初頭にかけて、推定12,000人の女性たちの中絶を手助けしたと言われている。1973年、彼女たちの熱く力強い想いは、アメリカ連邦最高裁が女性の人工妊娠中絶の権利に合法の判決を下した「ロー対ウェイド判決」で実を結んだ。しかし、いまテキサス州をはじめとする保守的な一部の州で、またもや中絶が事実上不可能になりつつある。そんな時代に、『コール・ジェーン –女性たちの秘密の電話-』は、誰にでも性や自分自身の身体を守る権利があることを知るきっかけとなる映画として世界に伝えている。

HPより
フィリス・ナジー監督。
劇作家としてキャリアをスタートさせ、TV映画『ミセス・ハリスの犯罪』(05)では監督と脚本をとつめ、その後トッド・ヘインズ監督の『キャロル』(15)で脚本担当。期待の作家として注目を集めているフィリス・ナジー監督にとって、本作は長編映画デビュー作となる。

主演は、『ピッチ・パーフェクト2』(15)や『チャーリーズ・エンジェル』(19)で、俳優としてだけでなく監督・プロデューサーとしても活躍するエリザベス・バンクス。ブルジョワの主婦から女性権利の戦士に転身していくジョイを繊細かつ逞しく演じた。活動団体「ジェーン」を率いるバージニア役はシガニー・ウィーバー。『エイリアン』シリーズをはじめ様々な役に挑んできた名優が、「ジェーン」を訪れる女性たちをサポートするバージニアを熱演する。

主人公ジョイを演じたエリザベス・バンクスは、この物語の核となるジェーンたちが、信条・知識を共有し、サポートを提供するために女性同士がつながる姿勢に惹かれた。「女性たちがお互いを思いやり、助け合うという長い伝統に加わっているような気がしました。フィリスは、その聖火を手にして走り出した。彼女はこの物語が何を意味するのか、リプロダクティブ・ライツ(性と生殖に関する健康と権利)のための闘いが停滞していることについて何を伝えたいのか、とても明確だった。」と語る。

「ジェーン」を率いるフェミニストのバージニアを演じたシガニー・ウィーバーは脚本を読むまでジェーンズのことは知らなかったが、ロー対ウェイド判決以前の生活を覚えている数少ない出演者の一人である。ウィーバーは大学時代、避妊具や中絶へのアクセス不足がいかに女性に悪影響を及ぼしているかを痛感していた

2022年/ アメリカ / PG12
配給:プレシディオ
公式 HP URL:https://www.call-jane.jp
X 公式アカウント:https://twitter.com/CallJane_jp
posted by akemi at 21:17| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ロッタちゃんと赤いじてんしゃ 原題:Lotta pa Brakmakargatan 英題:A CLEVER LITTLE GIRL LIKE LOTTA

2024年3月22日(金)よりYEBISU GARDEN CINEMA 、新宿シネマカリテ、 ヒューマントラストシネマ有楽町 他、全国にて順次公開
上映情報

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©1992 AB SVENSK FILMINDUSTRI ALL RIGHTS RESERVED

『ロッタちゃんと赤いじてんしゃ』2Kリマスター版
1992年製作/78分/スウェーデン 
2000年6月24日(日本初公開)

スタッフ・キャスト
監督・脚本:ヨハンナ・ハルド
製作:ワルデマル・ベルゲンダール
原作:アストリッド・リンドグレーン
撮影:オーロフ・ヨンソン
美術:ラッセ・ベストフェルト
衣装:インゲル・ペーション
音楽:ステファン・ニルソン
出演
ロッタ:グレテ・ハブネショルド
姉ミア:リン・グロッペスタード
兄ヨナス:マルティン・アンデション
ママ:ベアトリス・イェールオース
パパ:クラース・マルムベリー
ベルイさん:マルグレット・ベイベルス

「長くつ下のピッピ」で有名なスウェーデンの国民的童話作家アストリッド・リンドグレーンが生んだ、もう一人のスーパー・ヒロイン、5歳の女の子ロッタちゃんと家族、彼女の相棒であるブタのぬいぐるみバムセが巻き起こすゆかいなエピソード。その数々はおしゃれで可愛く、やさしくて温かい。懐かしさを感じさせる何気ない日常がつむぎだす幸せの玉手箱。

ロッタはスウェーデンのヴィンメルビューで、両親と兄ヨナスや、姉ミアと暮らす女の子。買い物に行きたいのに風邪をひいたので、ママは許してくれない。我慢できないロッタは黄色いレインコートを着て雨の中へ飛び出して遊びにいく。春にはパパの運転する車で、家族5人で湖へピクニックに出かける。お兄ちゃんが溺れそうになったり、バムセが行方不明になったりしたけど、無事帰ってきた。
自転車に乗って出かけていく兄や姉の姿に羨望の念を抱いたロッタは、三輪車を卒業して自転車が欲しいと主張するが両親は取り合わない。ロッタが期待していた5歳の誕生日にも、プレゼントの自転車はなかった。業を煮やしたロッタは、悪知恵を働かせ、燐りのベルイさんの家の納屋にある自転車を無断で持ち出すが、大きな自転車で、小さいロッタには使いこなせない。そうまでして自転車に乗りたい思いは伝わるのか…。
大人たちの愛情に包まれながら、兄や姉と仲良く過ごすロッタの生活。春から夏にかけての日々を北欧の豊かな自然の中に描く。

公式HPより
監督・脚本 ヨハンナ・ハルド
1945年7月20日生まれ。写真学校を卒業後、スチルのカメラマンとして『刑事マルティン・ベック』(76)などの映画の現場に参加、その後映画製作を学び、短編映画の製作を開始した。脚本家として『LOVE ME!』(86)やTVシリーズを手掛け、89年にアストリッド・リンドグレーン原作の短編“Hoppa högst”、90年に同じく“Pelle flyttar till Komfusenbo”を監督、『ロッタちゃんと赤いじてんしゃ』(92)が長編デビュー作となり、続けて『ロッタちゃん はじめてのおつかい』(93)を撮った。その後、『カッレくんの冒険』(96)、『太陽の誘い』(98)などの脚本を手掛けている。


当時の撮影で使用されたロッタちゃんの相棒・"バムセ"(豚のぬいぐるみ) がスウェーデンより緊急来日!! 上映期間中は「新宿シネマカリテ」の劇場ロビーにて、展示されるそうです。
また、本作の公開を記念し、バムセの再販決定が発表されると大きな反響を呼ぶなど、日本でも根強い人気がある。

その他、「ヒューマントラストシネマ有楽町」ではオリジナルドリンクの提供、「YEBISU GARDEN CINEMA」ではロッタちゃんギャラリーが展示されるなど、公開に合わせて様々な企画が開催されています。
posted by akemi at 20:36| Comment(0) | スウェーデン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

流転の地球 -太陽系脱出計画- 原題:流浪地球2 英題:THE WANDERING EARTH Ⅱ

2024年3月22日(金)よりTOHOシネマズ系にて公開
上映情報

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(C)2023 G!FILM STUDIO [BEIJING] CO., LTD AND CHINA FILM CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

ベストセラーSF小説を元に、中国で大ヒットを記録したSF大作『流転の地球』のシリーズ第2作目

監督:郭帆(グオ・ファン)『流転の地球』
製作・原作:劉慈欣(リウ・ツーシン)
出演:
呉京(ウー・ジン)軍所属の宇宙飛行士、リウ・ペイチアン役
劉徳華(アンディ・ラウ)軍所属の宇宙飛行士、リウ・ペイチアン役
李雪健(リー・シュエチェン)国際地球政府中国代表大使ジョウ・ジョウジー役
沙溢(シャー・イー)リウ・ペイチアンの恩師
寧理(ニン・リー)科学者のマー・ジャオ主任役
王智(ワン・ジー)リウ・ペイチアンの妻ハン・ドゥオドゥオ役
朱顔曼滋(シュ・ヤンマンツー)国際地球政府中国代表外交官ハオ・シャオシー役

中国でシリーズ累計2千万部を超える超ベストセラーとなり、アジア人としては初のヒューゴー賞(SF界のノーベル文学賞といわれている)を受賞した、「三体」の原作者・劉慈欣による短編小説「さまよえる地球」を基に豪華キャストで映画化。今春Netflixドラマシリーズも配信される。

100年後、太陽が老化によって膨張し、300年後には太陽系が消滅すると予測された。そう遠くない未来に起こりえる太陽系消滅に備え、地球連合政府による、1万基に及ぶロケットエンジンを使って地球を太陽系から離脱させる巨大プロジェクト「移山計画」が始まる。 
人類存亡の危機を目前に各国の思惑、内紛、争いが相次ぐ中、自らの危険を顧みず立ち向かった人がいた。亡き妻への想いを胸に、宇宙へと旅立つ飛行士・リウ(ウー・ジン)。禁断のデジタル技術によって、事故死した娘を蘇らせようとする量子科学研究者トゥー(アンディ・ラウ)。大きな決断を迫られる連合政府の中国代表ジョウ(リー・シュエチェン)。移送計画は一筋縄ではいかず、この計画に反対する勢力は、計画を阻止しようと、妨害を続ける。多くの犠牲を払いながらも、地球と人類の存亡と希望を懸けた最終作戦が始まった!

圧倒的なスケール、精緻な映像美、壮大なストーリー。
ハリウッドにもひけを取らない、中国発のSF超大作映画がここに誕生!
精緻な映像美で描かれ、ドラマティックに描かれる人間模様。さらに圧倒的なスケールで繰り広げられる描写など、3.2億元(約65億円)の製作費を費やし、ハリウッド大作も圧倒する究極のSFエンタテインメント超大作。
 中国本土で初登場第一位に輝き、興収40億2900万元(約815億円)を突破。歴代興行収入ベストテン入りを果たすメガヒットを記録! 北米でも大ヒットを記録たという。世界興収は約6億米ドル。第96回米国アカデミー賞国際長編映画賞の中国代表としても選出された。すでにシリーズ3作目の製作も決定するなど社会現象となっている。

公式HPより
監督:郭帆 グオ・ファン
1980年、山東省生まれ。海南大学で法律を学んだのち、北京電影大学大学院を卒業。金鶏奨作品賞など数々の賞を受賞し全世界興収770億円の大ヒットを記録した前作『流転の地球』(19)までは、チョウ・ドンユィ主演の『同桌的妳』(14)程度しか知られていなかったが、前作を制作する際に全財産を投じ、50年後の世界を具現化するために、惑星エンジンから、地下都市、運搬車まで、あらゆるシーンの細かいイメージを描き、コンテンツイメージは3000枚、絵コンテは8000枚にもなったという。朝鮮戦争を描いた『バトル・オブ・ザ・リバー 金剛川決戦』(20)にグェン・フー、ルー・ヤンらと共同監督し、今作制作へと着手した。

製作:劉慈欣 リウ・ツーシン
1963年6月23日生まれ。1985年、北水利水電学院(現・華北水利水電大学)の水力電気工学科を卒業。その後、山西省陽泉市にある火力発電所に配属され、コンピュータープログラマーとして働きながらSF作品を執筆。1999年、SF雑誌『科幻世界』でデビュー。2006年より、科幻世界にて「三体」の連載を開始。08年に単行本として刊行されるや、三部作で計2,100万部以上のベストセラーに。2015年、アジア人作家として初めてSF最大の賞であるヒューゴー賞を受賞。現代中国SF文学の旗手と見なされている。代表作に「三体」三部作、「超新星紀元」、「三体0球状閃電」、「老神介護」、「郷村教師」などがある。また、原作短篇「流浪地球」が『流転の地球』として映画化し、本作にはプロデューサーとしても参加した。

2023年/中国/中国語・英語/173分/カラー/シネスコ/5.1ch/DCP
字幕翻訳:神部明世/字幕監修:大森望/配給:ツイン 
公式HP https://rutennochikyu.jp/
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2024年03月20日

美と殺戮のすべて  原題:All the Beauty and the Bloodshed

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(C)2022 PARTICIPANT FILM, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

監督・製作:ローラ・ポイトラス
出演・写真&スライドショー・製作:ナン・ゴールディン

アメリカの女性写真家ナン・ゴールディン。
1953年9月12日、ユダヤ人の中産階級の家に生まれる。
1970年代から80年代のドラッグカルチャー、ゲイサブカルチャー、ポストパンク/ニューウェーブシーン…… 当時過激とも言われた題材を撮影し、一躍時代の寵児となる。2023年には、イギリスの現代美術雑誌ArtReviewが発表するアート界で最も影響力のある人物の1位に選出されるなど今日に至るまで世界にインパクトを与え続けている。
2018年3月10日、ゴールディンは多くの仲間たちとニューヨークのメトロポリタン美術館を訪れる。目的の場所は「サックラー・ウィング」。製薬会社を営む大富豪サックラー家が多額の寄付をした展示スペース。そこにある池に、彼女たちは鎮痛剤「オキシコンチン」のラベルが貼られた容器を一斉に投げ込む。「サックラー家は人殺しの一族だ!」と口々に声を上げながら……。

本作は、ナン・ゴールディンが写真家となり、さらに活動家となった軌跡を描いたドキュメンタリー。
ナン12歳の時、18歳の姉が自殺。その後、実の親にも里親にも見捨てられ、ヒッピーのところに居つき、15歳の時に出会ったゲイのディヴィッドの影響でカメラが自身に存在価値を与えてくれることを知ったという彼女の生い立ち。
一方、ナンは、ドイツで手術後に処方された薬の中毒になり、その「オキシコンチン」が「オピオイド鎮痛薬」の一種で、全米で50万人以上が死亡する原因になっていることを知ります。さらに、「オキシコンチン」を製造する製薬会社を営むサックラー家が、収益の一部を各地の美術館に寄贈していることに声を上げ闘う決意をします。抗議団体「P.A.I.N」を設立し、先頭に立って闘う姿が凛々しいです。 
癌治療薬として処方される「オキシコンチン」の危険性をなかなか認めないサックラー家との闘い・・・ 合法的に処方された薬で麻薬中毒症状になるとは!と驚きました。(咲)


2022年・第79回ベネチア国際映画祭 金獅子賞受賞

2022年/アメリカ/英語/121分/16:9/5.1ch/R15+
配給:クロックワークス
公式サイト:https://klockworx-v.com/atbatb/
★2024年3月29日(金)より新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、グランドシネマサンシャイン池袋ほかにて全国公開
posted by sakiko at 01:30| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年03月19日

ブリックレイヤー  原題:The Bricklayer

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Copyright © 2023 BRICKLAYER PRODUCTIONS, INC. All Rights Reserved.

監督:レニー・ハーリン
原作:ノア・ボイド「脅迫」(ソフトバンク文庫刊)
脚本:マット・ジョンソン、マーク・モス
出演:アーロン・エッカート、ニーナ・ドブレフ、クリフトン・コリンズ・Jr、ティム・ブレイク・ネルソン

米国の諜報活動への抗議デモが広がるヨーロッパ。ギリシャのテッサロニキで反米を唱える女性記者が遺体で発見される。何者かが米政府に批判的なジャーナリストを殺害することでCIAの仕業にみせかけ、世界を敵に回させようとしていた。事態を重く受け止めたCIAは捜査の末、容疑者としてある一人の男にたどり着く。男の名はヴィクター・ラデック。1年半前に死亡したはずのCIA諜報員だった。捜査が手詰まりとなる中、米政府はかつてラデックの同僚でもあり、犯人追跡に特異な才能を見せていた元CIAエージェントのスティーヴ・ヴェイルに協力を要請する。レンガ職人として穏やかな生活を送っていたヴェイルは要請を断るが、直後にラデックが送り込んできた刺客の襲撃を受ける。辛くもこれを退けたヴェイルは旧友との因縁に決着をつけることを誓い、再び捜査に身を投じていく。

ギリシャのテッサロニキの町で繰り広げられる物語にワクワク。海を見晴らす高台の住宅街、石畳の趣のある通りでのカーチェイス、海辺に広がるテッサロニキの全景も圧巻。カフェでバックギャモンに興じる男たちが、まわりの騒ぎに一瞬怯みながらも、ゲームを続ける様も楽しい。
レンガ職人としてのんびり暮らしていたヴェイルが、再び諜報活動するにあたり、CIA諜報員の女性たちとの絡みも見逃せません。女性たちがなかなか強い!
ギリシャ外務副大臣が、「アメリカは他国の主権を無視してきた。CIAのヨーロッパへの不当な扱いは許せない」と語る姿に、ヨーロッパだけじゃないでしょう!と思いながら、よくぞこの場面を!と。
レニー・ハーリン監督は、90年代に『クリフハンガー』や『ダイ・ハード2』などで楽しませてくれた方。ツボを心得たスパイアクションです。(咲)


2023年/アメリカ・ブルガリア・ギリシャ/カラー/シネスコ/5.1ch/110分/英語
日本語字幕:北村広子
配給:クロックワークス
公式サイト:https://klockworx-v.com/bricklayer/
★2024年3月22日(金)より新宿バルト9ほか全国ロードショー



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2024年03月17日

ナチ刑法175条  原題:Paragraph 175

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監督:ロブ・エプスタイン(『ハーヴェイ・ミルク』)+ジェフリー・フリードマン 
ナレーター:ルパート・エヴェレット

ドイツでかつて施行されていた同性愛者を差別する<刑法175条>により、特にナチ支配下で男性同性愛者が弾圧されていた事実を、6人のゲイとひとりのレズビアンによる証言を通して描いたドキュメンタリー


<刑法175条>条文抜粋
制定:1871年5月15日 施行:1872年1月1日
男性と男性の間で、あるいは人間と動物の間で行われる不自然な性行為は、禁固刑に処される。公民権が剥奪される場合もある。

An unnatural sex act committed between persons of the male sex or by humans with animals is punishable by imprisonment; the loss of civil rights may also be imposed.
(PARAGRAPH 175 German Penal Code, 1871)


刑法175条は1872年に施行されたが、“黄金の20年代“と、性に寛容で同性愛者の集うクラブもあった1920年頃のベルリン。ナチスが台頭し、ナチスは同性愛の男性を、“ドイツ国民を堕落させ、弱体化させる危険な病”とみなし、<再教育>のために強制収容所に入れる。ユダヤ人でない者の多くがガス室を免れたが、その 3 分の 2 は死亡。
刑法 175 条は、東ドイツ版が 1968 年まで有効、西ドイツは 1969 年まで維持した。終戦後も、175 条で迫害された人々は犯罪者とみなされ、ナチスの犠牲者として法的な承認を受けた者は長らくいなかった・・・

刑法175条により約 10 万人が捕まり、1 万から 1.5 万人が強制収容所に送られ、強制労働や医学実験に使われた結果、生存者は約 4000 人。本作製作時に生存が確認出来たのは僅か 10 名に満たなかったそうです。
当時を生き延びた同性愛者の方たちも、その多くが体験を語らなかった中、本作は貴重な記録。

証言者の一人カール・ゴラート氏は、囚人病院で働かされていた時に、同性愛者を示すピンクのワッペンを、秘密裏に、政治犯がつける赤いワッペンに交換し、最底辺に位置づけられた同性愛者の境遇から脱することができたと語っています。
ワッペンは、逆三角形。ユダヤ人は、黄色い三角形を二つ組み合わせダビデの星の形。
ユダヤ人の同性愛者は、黄色とピンクの三角形を組み合わせた形でした。
一目でわかる形で、人を識別し、差別していたナチスは敗北しましたが、世界には、今も人種や性の志向で差別し虐待していることが多々あります。多様性を尊重する社会の大切さを、差別する人にこそ本作を見て学んでほしいものです。(咲)



1999年/米国/英語・ドイツ語・フランス語/カラー/81分
日本版字幕:川口隆夫 
宣伝デザイン:潟見陽 
パブリシティ:スリーピン
配給:パンドラ
公式サイト:http://www.pan-dora.co.jp/paragraph175/
★2024年3月23日(土)から新宿K;s cinemaほか全国順次公開

posted by sakiko at 15:14| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ボンゴマン ジミー・クリフ デジタル・リマスター   原題:Bongo Man

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(C)2022 Stefan Paul All Rights Reserved


監督:ステファン・ポール
編集:ヒルデガルト・シュレーダー
撮影監督 マイク・コンデ、ウド・ヒッツラー、ハインツ・レクサー、ヘリベルト・シュースター
出演:ジミー・クリフ、ナディーン・サザーランド、ムタバルーカ、バーバラ・ジョーンズ、ミリアム・マケバ、ボブ・マーリー

【2010年ロックの殿堂入り】
【1985年「Cliff Hanger 」グラミー賞受賞】
【2013年「Rebirth」グラミー賞受賞】

レゲエ界の生ける伝説ジミー・クリフの全盛期を納めたミュージック・ドキュメンタリー

総選挙が近い1980年秋のジャマイカ。
パトカーのサイレンが鳴り響き、燃えさかる街並み。二大政党JLPとPNPの激しい抗争で一触即発のトレンチタウン。
「欲をかくものは、全てを失う」と高らかとアジテートするジミー・クリフ。
故郷サマートンで、2万人を見込むフリーコンサート「アフリカ国民の日」を企画する。小さいときから、ここで開きたいと思っていた空地。地元の人たちがボランティアで手伝ってくれて、重機でならし、ステージを作る。当日、雨が降る。それも神の意思だ。
さらにカメラは、南アフリカのソウェト、ドイツのハンブルグのツアーを追う・・・

「ジャマイカに来たら、人々の心をみてほしい」
♪ボンゴマンが来た、太陽の島に♪ 
冒頭、のどかな風景が一転し、選挙を巡り抗争中の町。
映画は、ジミー・クリフの楽曲と共に、ジャマイカの歴史を辿る興味深いものでした。
JAMAICA という国の名前
J ユダヤ人
A アフリカ人
M マルーン(逃亡奴隷)
A アメリカ人
I インド人
C 中国人
A アラワク・インディアン(先住民)
と、ジャマイカの人種構成によるものとの説明がありました。
コロンブスがやってきた時に、闘った先住民であるアラワク、その後、17世紀にイギリスが来てスペインからジャマイカを奪ったとき、山に逃げた奴隷たち(マルーン)がイギリスと闘い、自治権を持ったことなど、この映画を通じて学びました。
ちなみに、ユダヤ人は、15世紀、レコンキスタでスペインやポルトガルから追放されて、ジャマイカにも来ていたことを知りました。人数は少ないようですが。

ジミー・クリフが、1980年7月のハンブルグのコンサートで「ベトナム戦争を誰か止めてくれ」と歌う中で、アフガニスタン、イラン、南アフリカでの戦争も止めてくれという言葉がありました。どこも、当時、戦争に見舞われていたのを思い出します。
また、女性解放についても歌う場面があって、「アフリカの女性は元々解放されていた。ヨーロッパの文化に触れて、女性解放の戦いを知った」という言葉が気になりました。

ジャマイカで生まれたレゲエについては、2024年2月9日に公開された『ボブ・マーリー ラスト・ライブ・イン・ジャマイカ レゲエ・サンスプラッシュ デジタルリマスター』でも学ぶことができました。1992年12月19日に日本初公開された『ボンゴマン ジミー・クリフ』も、今のこの時期にデジタル・リマスター版が公開されることの意義を噛みしめたいと思います。(咲)


1981年/ジャマイカ・ドイツ合作/英語/93分
提供:ニューセレクト
配給:アルバトロス・フィルム
公式サイト:https://jimmy-cliff-movie.com/
★2024年3月22日(金)より新宿シネマカリテほか全国ロードショー
posted by sakiko at 12:02| Comment(0) | ジャマイカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年03月15日

MONTEREY POP モンタレー・ポップ 原題:Monterey Pop

2024.3.15(金)渋谷シネクイント、立川シネマシティ他にて 全国順次公開
その他公開情報 公式HP http://mp.onlyhearts.co.jp/ 

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(C)2002 THE MONTEREY INTERNATIONAL POP FESTIVAL FOUNDATION, INC., AND PENNEBAKER HEGEDUS FILMS, INC. (C)2017 JANUS FILMS

1967年6月、サンフランシスコ郊外で世界初の大規模な音楽イベント、モンタレー国際ポップフェスティバルが開催された。

スタッフ
監督:D.A.ペネベイカー、制作:ジョン・フィリップス/ルー・アドラーライトショー
撮影:D.A.ペネベイカー/リチャード・リーコック/ニック・プロフェレス/アルバート・メイスルズ/ジェームズ・デスモンド/バリー・ファインスタイン/ロジャー・マーフィー
撮影助手:ロバート・リーコック/ブリス・マーデン
舞台監督:ボブ・ニュワース/ティム・カニンガム/ベアード・ハーシー/ジョン・マドックス/ニナ・シュルマン/ピーター・ピラフィアン
舞台照明:チップ・モンク 録音:ウォーリー・ハイダー

出演:スコット・マッケンジー、ママス&パパス、ジミ・ヘンドリックス、ジャニス・ジョプリン、オーティス・レディング、サイモン&ガーファンクル、ジェファーソン・エアプレイン、ザ・フー、エリック・バードン&ジ・アニマルズ、ラビ・シャンカール、カントリー・ジョー&ザ・フィッシュ、キャンド・ヒート、ヒュー・マセケラ

1967年製作/78分/アメリカ
配給:オンリー・ハーツ
日本初公開:1977年3月23日

「モンタレー・ポップフェスティバル」は1967年6月16日から18日までの3日間、アメリカのカリフォルニア州モントレー(モンタレー)で開かれた大規模な野外コンサート。20万人以上の観客を動員し、1969年のウッドストック・フェスティバルに先立つ画期的な出来事として長く語り継がれる伝説のイベント。日本初公開は1977年。その映像が、4Kレストアの映像と音響で蘇る。出演者はロックミュージシャンだけでなく、ブルース、ブルースロック、フォーク、民族音楽などのミュージシャンも出演。30組以上が出演し、今日の野外フェスティバルの源流ともいわれる。
登場したのは、新時代の到来を告げ、その後、音楽界のレジェンドとなったミュージシャンばかり。フォークロック界の雄サイモン&ガーファンクル、60年代カウンターカルチャーの象徴ジェファーソン・エアプレイン、ブリティッシュロック界の大物ザ・フーやエリック・バードン&ジ・アニマルズ、インド音楽、シタールの名手でビートルズのジョージ・ハリスンも師事したラヴィ・シャンカール等。
主催者のジョン・フィリップスもママス&パパスで登場。彼が作ったフェスのテーマ曲「花のサンフランシスコ」(歌・スコット・マッケンジー)の、「サンフランシスコへ行くならば、忘れないで花の首飾り」という歌詞は、当時ヒッピーの若者たちが起こした<フラワー・パワー>を象徴している。彼らは<Music, Love&Flowers>を旗印にして、激化していたヴェナム戦争に対する反戦運動を盛り上げた。
そして、今も史上最高のロック・ギタリストと崇められるジミ・ヘンドリックスはギターに火をつける衝撃的なプレイを、女性ロックシンガーの原点ともいわれるジャニス・ジョプリンは、全身から声を絞り出すような独特のハスキーボイスで圧巻のヴォーカルを披露。当時24歳だった二人は3年後に、共にドラッグの過剰摂取のため他界。25歳だった伝説のソウルシンガー、オーティス・レディングも魂を揺さぶる歌声を聴かせるが半年後に飛行機事故でこの世を去った。没後のヒット曲は「ドッグ・オブ・ザ・ベイ」。
監督のペネベイカーは、ボブ・ディランの65年の英国ツアーを記録した『ドント・ルック・バック』(67)、デヴィッド・ボウイの73年の記念碑的なステージ『ジギー・スターダスト』(79)も映画化。2012年にはアカデミー賞名誉賞を受賞している。
音楽映画史に残る傑作でありながら日本で正式に劇場公開されたことのない本作が、今回レストアされた4K・5.1CH版という最良の状態で上映されることになった。本作は2018年、アメリカ国立フィルム保存委員会により「文化的、歴史的、また芸術的に重要」ということで半永久的保存推奨作品に登録されている。

ミュージシャンと演奏曲

ジャニス・ジョプリン ビッグ・ブラザー&ザ・ホールディング・カンパニー
「コンビネーション・オブ・ザ・トゥー」

スコット・マッケンジー
「花のサンフランシスコ」

ママス&パパス
「クリーク・アレイ」「夢のカリフォルニア」

キャンド・ヒート
「ローリン・アンド・タンブリン」

サイモン&ガーファンクル
「59番街橋の歌」

ヒュー・マセケラ
「バジャブラ・ボンケ」

ジェファーソン・エアプレイン
「ハイ・フライング・バード」「トゥデイ」

ジャニス・ジョプリン ビッグ・ブラザー&ザ・ホールディング・カンパニー
「ボール・アンド・チェイン」

エリック・バードン&ジ・アニマルズ
「黒くぬれ!」

ザ・フー
「マイ・ジェネレーション」

カントリー・ジョー&ザ・フィッシュ
「セクション43」

オーティス・レディング
「シェイク」「愛しすぎて」

ザ・ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス
「ワイルド・シング」

ママス&パパス
「感じるね」

ラヴィ・シャンカール
「ドゥン」


公式HP
http://mp.onlyhearts.co.jp/
posted by akemi at 20:44| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年03月14日

ペナルティループ

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監督・脚本:荒木伸二
撮影:渡邉寿岳
出演:若葉竜也(岩森淳)、伊勢谷友介(溝口登)、山下リオ(砂原唯)、ジン・デヨン(スタッフ)

岩森淳が朝6時に目覚めると、アナウンサーの「おはようございます。6月6日、月曜日。晴れ。風のない穏やかな1日になりそうです。今日の花はアイリス。花言葉は『希望』です」という声が流れてくる。岩森は身支度をして家を出て、最愛の恋人・砂原唯を殺めた溝口登を殺害し、疲労困憊して眠りにつく。翌朝目覚めると昨日と同じアナウンサーの声。勤め先までのできごとも全く同じだ。溝口も生きている。岩森はまた凶器を振るって復讐を果たす。翌日もまた・・・。

ループものは大好きですが、かたき討ちループなのでスプラッターちょいと入ります。苦手な方ご注意ください。このストーリーが一味違うのは、相手の溝口も岩森に殺されるのを察知するところ。
復讐ループの合間には唯との思い出がフラッシュバックします。唯がなんで殺されたのか、どんな秘密があったのか岩森が問い詰めるのを待つ気分になりますが、なかなか明かされません。思いがけない交流に発展していくのに、えっ!?
荒木伸二監督はオリジナルストーリー『人数の町』(2020)で長編監督デビューした方ですが、今回も面白い趣向の作品。翻弄される岩森を若葉竜也さん、ミステリアスな唯を山下リオさん、毎回殺されるのになんだか余裕の溝口を伊勢谷友介さん。ラストまで見届けたら、もう一回確かめたくなりそうです。(白)


2023年/日本/カラー/シネスコ/99分
配給:キノフィルムズ
©2023『ペナルティループ』FILM PARTNERS
https://penalty-loop.jp
https://twitter.com/PenaltyLoopfilm
★2024年3月22日(金) 新宿武蔵野館、池袋シネマ・ロサほか全国公開
posted by shiraishi at 21:34| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ピアノ 2 Pianos 4 Hands(原題: Pianos 4 Hands)

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監督:テッド・ダイクストラ、リチャード・グリーンブラッド
出演:テッド・ダイクストラ、リチャード・グリーンブラッド

強引な親に風変わりな教師、何時間にもおよぶ反復練習、舞台恐怖症、ライバルや試験の重圧、そして偉大なピアニストになるという夢――ピアノ漬けの日々を送るなか、テッドとリチャードは“ピアノオタク”になっていく。
成長するにつれ、2人は“とても上手”と“偉大”との差を痛感し、コンサートに引っ張りだこのスターにはなれないのではないかと、身の程を思い知らされることに。とはいえ、2人がこの界隈で1、2を争うピアニストかもしれないこと自体、祝福する価値あり!『ピアノ』(原題:2 Pianos 4 Hands)は、ピアノのレッスンに付き物のユーモラスなあれこれや、いずれ来る夢を手放す瞬間の喪失感を描く。

ニューヨークのオフ・ブロードウェイでも大絶賛!
全世界200都市200万人が熱狂した、音楽ドラマ・エンターテイメント!
舞台には2台のピアノ、テッドとリチャードの二人だけ。
子供の頃から現在までのピアノ人生を軽妙なやりとりとピアノ演奏で語ります。ピアノに全く縁のない人も、息がぴったりな二人のお喋りと自由自在な演奏に引き込まれるはずです。あははと笑ったり、目を丸くしているうちに時間が過ぎて行きました。
予告編はこちらです。
(白)


2013年/カナダ/カラー/シネスコ/114分
配給:松竹
(C)BroadwayHD/松竹
(C)2 Pianos 4 Hands
https://broadwaycinema.jp//2P4H
★2024年3月22日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 21:33| Comment(0) | カナダ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年03月12日

IGUANA TOKYO ーイグアナ トウキョウー   原題:IGUANA TOKYO

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©COLOURED GIRAFFE/trixta/ASTEROS

監督:カアン・ミュジデジ
出演:エルタン・サバーン、サーデー・アクソイ、デニス・ウルクほか

長編デビュー作『シーヴァス 王子さまになりたかった少年と負け犬だった闘犬の物語』でヴェネツィア国際映画祭審査員特別賞を受賞したトルコの俊英カアン・ミュジデジが紡ぎ出すサスペンススリラー。
東京で幸せに暮らしていたはずの一家が、ゲームを通じてメタヴァースの世界に足を踏み入れたことから奇妙な出来事に巻き込まれ始め、やがて崩壊へと向かうさまをペットのイグアナの視点から巧みに描き出す。

お寺の墓地に併設された小さな葬儀場?に赴くトルコ人の親子。棺に小さな遺体を納め、お経をあげてもらう。亡くなったのは誰?? そも、トルコ人が仏式で火葬?? と、最初からくらくら。
娘の名前は、トウキョウ。娘が父に銃を向け、刀で刺す。
妻が蛇口をひねると、小さな魚が出てくる。専門店に持っていって聞くと、争う魚「ソウギョ」だと言われる。
日本的な音色を背景に、不思議な世界が繰り広げられ、最後までくらくら・・・ 

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©COLOURED GIRAFFE/trixta/ASTEROS

カアン・ミュジデジ監督には、2015年に『シーヴァス 王子さまになりたかった少年と負け犬だった闘犬の物語』が公開された折にインタビューさせていただきました。

とても哲学的な方だったのを思い出しました。その彼が日本で撮った作品と思えば、なるほど!と唸りました。 凡人の私には、どう解釈していいのかの世界でしたが、妙に脳裏に残る作品。(咲)



2022年/74分/ドイツ・日本・トルコ合作/カラー/DCP 
配給:トリクスタ
★『映画に愛される街、TOKYO!―アート・キッチュ・エキゾチズムー 』で上映
期間:2024年3月16 日(土)~3月29日(金)

会場:ユーロスペース 公式HP:http://www.eurospace.co.jp
上映スケジュール:http://www.eurospace.co.jp/works/detail.php?w_id=000764


posted by sakiko at 01:47| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年03月10日

戦雲(いくさふむ)

3/16(土)よりポレポレ東中野、3/23(土)より桜坂劇場ほか全国順次公開 
劇場情報 

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(c)2024『戦雲』製作委員会


『標的の村』(2013)、『標的の島 風かたか』(2017)、『沖縄スパイ戦史』(2018 大矢英代と共同監督)など、たくさんの沖縄に関する映画を製作してきた三上智恵監督。これは6年ぶりの最新作で、沖縄や南西諸島での、自衛隊の急速な軍事要塞化の状況や、島々の暮らし祭りなどを描き、警鐘を伝えている。

監督:三上智恵
プロデューサー:橋本佳子 木下繁貴
語り:山里節子
撮影:上江洲佑弥
監督補:桃原英樹
音楽:勝井祐二
編集:青木孝文
CG:比嘉真人
イラスト:山内若菜

本当の「国防」とは何か?
圧殺されるのは沖縄の声だけではない


沖縄本島、与那国島、宮古島、石垣島、奄美大島など、珊瑚による海の色が美しい島々で、日米両政府の主導のもと急速な軍事要塞化が進行している。自衛隊基地の建設、自衛隊ミサイル部隊の配備、弾薬庫の大増設、基地の地下化、そして全島民避難計画等など。そして、2022年には「台湾有事」を想定した大規模な日米共同軍事演習「キーン・ソード23」と、安保三文書の中で、九州から南西諸島を主戦場とした現地の人々の犠牲を事実上覚悟した防衛計画が露わになった。しかし、その内容を読み解き、真の恐ろしさを報じるメディアはほとんどない。全国の空港・港湾の軍事拠点化・兵站基地化が進められていることもほとんど報道されない状況で、どれほどの日本人がそのことを知っているか。本当の「国防」とは何か。圧殺されているのは沖縄の声だけではない。このドキュメンタリーはそれを問いかける。

これは、2015年から8年かけ沖縄や南西諸島をめぐり、取材を続けてきた三上智恵監督による渾身の最新レポート。タイトルは、出演している山里節子さんが「また戦,雲(いくさふむ)が湧き出してくるよ、恐ろしくて眠れない」と歌う、石垣島の抒情詩「とぅばらーま」の歌詞から。
映画が映し出すのは、迫り来る戦争の脅威だけではない。過酷な歴史と豊かな自然に育まれた人々の暮らしや祭り。それらこそ、まやかしの「抑止力」の名のもとで今まさに蹂躙されようとしているかけがえのない人々の営みであり、私たちの希望と祈りの源にほかならないと映像は語る。

HPより
監督 三上智恵(みかみ・ちえ)
映画監督、ジャーナリスト。1987年、アナウンサー職で毎日放送に入社。95年、琉球朝日放送の開局時に沖縄に移住。同局のローカルワイドニュース番組のメインキャスターを務めながら、「海にすわる〜辺野古600日の闘い〜」「1945〜島は戦場だった オキナワ365日〜」「英霊か犬死か〜沖縄から問う靖国裁判〜」など、沖縄の文化、自然、社会をテーマに多くのドキュメンタリー番組を制作。2010年、日本女性放送者懇談会放送ウーマン賞を受賞。12年に制作した「標的の村~国に訴えられた沖縄・高江の住民たち~」は、ギャラクシー賞テレビ部門優秀賞、座・高円寺ドキュメンタリーフェスティバル大賞など多くの賞を受賞。
13年に映画版『標的の村』で映画監督デビュー。14年にフリー転身。15年に『戦場ぬ止み』、17年に『標的の島 風かたか』、18年に『沖縄スパイ戦史』(大矢英代と共同監督)を発表。
著書に「戦場ぬ止み 辺野古・高江からの祈り」(大月書店)、「女子力で読み解く基地神話」(島洋子氏との共著/かもがわ出版)、「風かたか 『標的の島』撮影記」(大月書店)など。「証言 沖縄スパイ戦史」(集英社新書)で石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞 草の根民主主義部門 大賞、城山三郎賞、JCJ賞を受賞。24年1月17日に「戦雲 要塞化する沖縄、島々の記録」(集英社新書)を上梓。

語り 山里節子(やまざと・せつこ)
1937年石垣島出身。8歳で終戦を迎える。兄は乗っていた船が撃沈、妹は栄養失調で防空壕で息絶え、祖父と母はマラリアに罹患し戦争で家族4人を失う。戦後、琉米文化会館で英語を習い、米国地質調査所の調査団の助手を務めたのち南西諸島とアメリカを結ぶ国際線の客室乗務員として働く。その後、石垣島で絹織物の製造に従事。沖縄の「本土」復帰後、環境保護や平和運動に共鳴、78年ごろから白保の新空港建設反対運動に参加。2016年から自衛隊ミサイル基地に抵抗する「いのちと暮らしを守るオバーたちの会」会長。

プロデューサー 橋本佳子(はしもと・よしこ)
テレビ、映画とも数多くの受賞作をプロデュースし、放送文化基金個人賞、ATP個人特別賞、日本女性放送者懇談会放送ウーマン賞を受賞。『ニッポンの嘘 報道写真家 福島菊次郎 90歳』(12/長谷川三郎監督/キネマ旬報ベスト・テン文化映画第1位)、『フタバから遠く離れて 第1部・第2部』(12・14/舩橋淳監督/共にベルリン国際映画祭正式招待作品)など。近年は『FAKE』(16/森達也監督)、『いしぶみ』(16/是枝裕和監督)、『Ryuichi Sakamoto: CODA』(17/スティーブン・ノムラ・シブル監督/ヴェネチア国際映画祭正式招待作品)、『柄本家のゴトー』(17/山崎裕演出)、『春の画 SHUNGA』(23/平田潤子監督)などのプロデューサーを務める。
三上智恵監督作品のプロデュースは『戦場ぬ止み』(15)、『標的の島 風かたか』(17)、『沖縄スパイ戦史』(18)に続き本作が四作目。座・高円寺ドキュメンタリー映画祭実行委員。2018年に自由な表現のための多目的スペース「シネマハウス大塚」を東京都豊島区にオープンし、同館のスーパーバイザーを務める。

公式HP  https://ikusafumu.jp/
2024年製作/132分/日本
配給:東風

●劇場イベント情報

[東京]ポレポレ東中野:3/16(土)
3/16(土)午前9:50の回,12:30の回上映後、三上智恵監督による舞台挨拶

[横浜]シネマ・ジャック&ベティ:3/16(土)
3/16(土)17:40の回上映後、三上智恵監督による舞台挨拶

[神戸]元町映画館:3/17(日)
3/17(日)12:50の回上映後、三上智恵監督による舞台挨拶

[大阪]第七藝術劇場:3/17(日)・3/29(金)
3/17(日)15:50の回上映後、3/29(金)12:25の回上映後、三上智恵監督による舞台挨拶

*シネマジャーナルHP参考資料

特別記事
『標的の村』 三上智恵監督インタビュー
http://www.cinemajournal.net/special/2013/hyoteki/

橋本佳子さんインタビュー記事
『ひろしま 石内都・遺されたものたち』
リンダ・ホーグランド監督・橋本佳子プロデューサーインタビュー
http://www.cinemajournal.net/special/2013/hiroshima/index.html

『ニッポンの嘘 報道写真家 福島菊次郎90歳』
長谷川三郎監督インタビュー
http://www.cinemajournal.net/special/2012/nipponnouso/index.html

スタッフ日記
「憲法映画祭2022」に行ってきました。本日4月24日もあります!(暁)
この中で、『島がミサイル基地になるか 若きハルサーたちの唄』を紹介しています。
http://cinemajournal.seesaa.net/article/487046406.html

posted by akemi at 23:15| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

COUNT ME IN 魂のリズム   原題:COUNT ME IN

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(C)2020 Split Prism Media Ltd. ALL RIGHTS RESERVED.

監督・製作:マーク・ロー
出演:ロジャー・テイラー(クイーン)、イアン・ペイス(ディープ・パープル)、ニック・メイソン(ピンク・フロイド)、チャド・スミス(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)、スチュワート・コープランド(ポリス)、ニック・“トッパー“・ヒードン(ザ・クラッシュ)、テイラー・ホーキンス(フー・ファイターズ)、シンディ・ブラックマン・サンタナ(サンタナ/レニー・クラヴィッツ)、クレム・バーク(ユーリズミックス/ブロンディ)、ニコ・マクブレイン(アイアン・メイデン)、ラット・スキャビーズ(ザ・ダムド)、ボブ・ヘンリット(ザ・キンクス/アージェント)、ジム・ケルトナー(トラヴェリンク・ウィルベリーズ/エリック・クラプトン/ライ・クーダー)、エミリー・ドーラン・デイヴィス(ザ・ダークネス/ブライアン・フェリー)、スティーヴン・パーキンス(ジェーンズ・アディクション/ポルノ・フォー・パイロス)、ベン・サッチャー(ロイヤル・ブラッド)、サマンサ・マロニー(イーグルス・オブ・デス・メタル/ホール)、エイブ・ラボリエル・ジュニア(ポール・マッカートニー/スティング)、ジェス・ボーウェン(ザ・サマー・セット)

音楽におけるドラムの役割とドラマーの想い
ドラムを通じた 人々や社会、世界との繋がり。
超一流のドラマーから若い世代のドラマー、ドラムに関するスペシャリストにもスポットを当てた、全ての音楽ファン必見のドキュメンタリー

鍋やフライパンまでありとあらゆるものを叩きながら過ごした子供時代から、世界中のスタジアムで旋風を巻き起こすようになるまでの道のりはどんなものだったのだろうか?
名だたるドラマーたちが語るドラムの歴史、自身のキャリア、音楽やドラムのこと・・・

現代ドラム文化の本拠地・米国と、ビートルズ、ローリング・ストーンズ、ザ・フー、レッド・ツェッペリンなどの偉大なバンドを産み、お互い影響しながら音楽文化を発展させてきた英国。伝説的なジャズ・ドラマーたちが現代のドラマーと音楽に対して与えてきた影響を解説しながら、それらのレガシーをロックへ持ち込んだジンジャー・ベイカーの功績を讃え、ニック・”トッパー“・ヒードンやラット・スキャビーズといった伝説的なパンク・バンドのドラマーをフィーチャーするなど、英国制作ならではの視点が光る。

ドラマとドラマーだけに焦点を当てた映画が、これまでにあったでしょうか・・・
ミュージッシャンにフォーカスした映画が、ここ数年も数多く作られていますが、思えば、ドラマーの映画はほとんどなかったように思います。
バンドの後ろに、ど~んと構えて、派手な演奏をすることも多いのに、意外と目がいかないのがドラマーかもしれません。 あらためて、ドラムの存在意義を認識させられた映画です。
密かに家の一部屋にドラムセットを置いて、楽しんでいる友人がいます。ジャズ倶楽部で、本格的にセッションも! 思い切り叩くと、すっきりすると言ってます。確かに気持ち良さそう! そんなドラムの魅力も感じることのできる1作。(咲)


2021年/イギリス/英語/86分/ビスタ/カラー/5.1ch
日本語字幕:堀上香  字幕監修:北野賢、山本拓矢
配給:ショウゲート
公式サイト:https://countmein.jp/
★2024年3月15日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテほかにて全国ロードショー



posted by sakiko at 19:38| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年03月06日

アバウト・ライフ 幸せの選択肢(原題:Maybe I Do)

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監督・脚本:マイケル・ジェイコブス
撮影:ティム・サーステッド
音楽:レスリー・バーバー
出演:ダイアン・キートン(グレース)、リチャード・ギア(ハワード)、スーザン・サランドン(モニカ)、エマ・ロバーツ(ミシェル)、ルーク・ブレイシー(アレン)、ウィリアム・H・メイシー(サム)

ミシェルは恋人のアレンとの結婚を望んでいるが、アレンは今の関係がいごこちいい。ミシェルは両家の親たちを会わせて話を進めたい。顔合わせに集まった親たちは仰天。互いの親たちはすでに知り合い。ミシェルの父ハワードは、アレンの母モニカと不倫関係にあり、ミシェルの母グレースとアレンの父サムは、久しぶりに胸がときめく時間を過ごしたばかりだった。とても娘や息子に本当のことは言えない。後ろめたい親たちのこれから先は?

このシチュエーション、若い人たちのドラマではありそうです。しかしこちらは70代の熟年夫婦たち。そんな~と思いますが、右往左往する親たちのドタバタが見ものです。ほんとにこんなことになったらさぞバツが悪いことでしょう。奔放なモニカは悪びれず、まだ続けたい意欲満々ですがハワードは及び腰。真面目なサムと、グレースはどうなるのと気になります。
4人の熟練俳優たちの軽妙な演技で、からリと明るいコメディ作品に仕上がっていました。ミシェル役のエマ・ロバーツは、ケリー・カニンガムの娘で、父親はエリック・ロバーツ(ジュリア・ロバーツの兄)ですが、彼は別の女性と結婚しています。母親似のエマは10歳から子役デビュー、美しく成長してすでに一児の母。(白)


結婚式を挙げて、正式な夫婦になりたいと願う女性と、法的な裏付けなどなくても、一緒にいて居心地よければいいと思っている男性・・・ 一方で、法的に長年夫婦を続けている70代の親世代は、それぞれに不倫! 離婚率の高いアメリカで、離婚しないだけマシ? と、なんともアメリカ的な物語なのですが、何よりアメリカだ~!と思ったのは、どのカップルも靴を履いたままベッドに並んで座っていたこと。 いつまでも素敵なリチャード・ギアちゃんも、もちろん靴のままベッドに足を伸ばして座ってました。服を脱ぐまで、靴も脱がないのが習慣??  家に入る時には、必ず靴を脱ぐ私には、どうにも見ていて気になったのでした。(咲)


2023年/アメリカ/カラー/シネスコ/95分
配給:AMGエンタテインメント
(C)2023. FIFTH SEASON, LLC. All Rights Reserved.
https://aboutlife-movie.jp/
★2024年3月8日(金)新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかロードショー

posted by shiraishi at 16:14| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

DOGMAN ドッグマン(原題:Dogman)

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監督・脚本:リュック・ベッソン
出演:ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ(ダグラス)、ジョージョー・T・ギッブス(エヴリン・デッカー)、クリストファー・デナム(アッカーマン)

ある夜、警察が止めたトラックに乗っていたのは女装して怪我をした男。荷台には10数匹の犬がいた。
「ドッグマン」と呼ばれるその男ダグラスは、促されるままこれまでの壮絶な半生を語った。
ダグラスは子どものころから、暴力的な父と兄に虐待され、犬の檻の中で犬たちと一緒に寝起きして大きくなった。いつしか物言わぬ犬たちと心が通じあっていく。ダグラスは犬たちと生きて行くため犯罪に手を染め、ギャング組織に狙われるようになった。

金髪碧眼のケイレブ・ランドリー・ジョーンズのクイーン姿は、妖艶でなかなか美しいです。しかしその生い立ちのから、全てをあきらめたような空気をまとっています。ケイレブ・ランドリー・ジョーンズは、どこか病んでいる役が似合いますが、そればかり続くのも辛いでしょう。
本作では、彼に従う賢い愛犬たちみんなに、パルム・ドッグ賞をあげたいくらいです。ことにダグラスの意図するところを理解し、見事な連係プレーを見せるのには、目が丸くなること請け合い。凄惨なストーリーなのに、いや、だからこそダグラスと犬たちの繋がりが尊いです。愛犬家はもちろん、そうでなくともジーンとしてしまうはず。(白)


2023年/フランス/カラー/シネスコ/114分
配給:クロックワークス
(C)2023. FIFTH SEASON, LLC. All Rights Reserved.
https://klockworx-v.com/dogman/
★2024年3月8日(金)新宿バルト9ほか全国順次公開

posted by shiraishi at 01:01| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年03月03日

青春ジャック 止められるか、俺たちを2

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監督・脚本:井上淳一
撮影:蔦井孝洋
音楽:宮田岳
出演:井浦 新(若松孝二)、東出昌大(木全純治)、芋生 悠(金本法子)、杉田雷麟(井上淳一)、コムアイ、有森也実、田中要次、田口トモロヲ、門脇 麦、田中麗奈、竹中直人

1980年代、映画監督の若松孝二が名古屋にミニシアター”シネマスコーレ”を作った。支配人として声をかけられたのは、池袋の文芸坐をやめて故郷の名古屋に戻っていた木全純治(きまたじゅんじ)。明るくポジティブな木全は、入りの悪さを心配する若松に「これから、これから」と返して屈託がない。名画座存続のために、ピンク映画も上映した。
小さな名画座と若松という才能に惹かれて、まだ何者でもない若者がやって来た。監督になりたいが、本当に撮りたいものがない金本法子。田舎の映画青年で予備校生の井上淳一。若松監督を敬愛している井上は、思い切って「弟子にしてください」と頭を下げる。

若松プロに集った若者たちの映画『止められるか、俺たちを』(2019/白石和彌監督)の10年後。実在の映画館シネマスコーレの黎明期を再現。若松孝二監督と木全純治支配人という大人に対して、若い金本法子と井上淳一の二人を配して映画と映画館にかけるそれぞれの思いを描いています。
井上青年は、もちろん監督自身の若いころ。自分のことだからとずいぶんと自意識過剰&ヘタレに描いています。なんの負荷もなしに、自分の先を行ってしまう井上を見る金本の強い視線が印象的です。いろいろなものが込められて渦巻いているようでした。このキャラクターだけがフィクションだそうです。同世代の人には共感を呼ぶはず。映画館の存続に苦労する大人2人は、大変なわりにどこか楽しそうです。
実在の人が登場するので、どのエピソードが事実で、どこが脚色なのだろうとつい思ってしまいますが、そのへんも井上監督に伺ってみました。今週中に掲載しますので、今しばらくお待ちください。『カメ止め』ならぬ『止め俺』もヒットしますように。(白)


◎井上淳一監督インタビューはこちらです。

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2024年/日本/カラー/ビスタ/119分
配給:若松プロダクション
©️若松プロダクション
http://www.wakamatsukoji.org/seishunjack/
★2024年3月15日(金)テアトル新宿、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開
posted by shiraishi at 19:12| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年03月02日

ゴールド・ボーイ

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監督:金子修介
原作:紫金陳(ズー・ジンチェン)
脚本:港岳彦
撮影:柳島克己
主題歌:倖田來未「Silence」
出演:岡田将生(東昇)、黒木華(安室香)、羽村仁成(安室朝陽)、星乃あんな(上間夏月)、前出燿志(上間浩)、松井玲奈(東静)、北村一輝(打越一平)、江口洋介(東巌)

それは完全犯罪のはずだった。まさか少年たちに目撃されていたとは…。
義父母を崖から突き落とす男の姿を偶然にもカメラでとらえた少年たち。事業家の婿養子である男は、ある目的のために犯行に及んだのだ。
一方、少年たちも複雑な家庭環境による貧困や、家族関係の問題を抱えていた。
「僕達の問題さ、みんなお金さえあれば解決しない?」朝陽(13)は男を脅迫して大金を得ようと画策する。
「何をしたとしても14歳までは捕まらないよ。少年法で決まってるから」殺人犯と少年たちの二転三転する駆け引きの末に待ち受ける結末とは……。

原作は中国のベストセラー作家が書いた「坏小孩」 (悪童たち)。坏は破壊の「壊」です。主人公は悪い子どものほう。ドラマ化されて、動画サイトで大ヒットしたとか。金子修介監督&港岳彦脚本で日本を舞台に映画化したのが本作です。
夏の沖縄で、殺人事件が起こります。それも終わるまで次々と。たまたま動画を撮ってしまった少年がその犯人を脅迫し、物語は予想を超えて進んでいき、観客はふりまわされたうえ背筋が寒くなる思いをします。
白皙の青年が冷酷な殺人犯というのも怖いですが、脅迫する中学生ももっと怖い。頭はすごく回りますが、感情か倫理観が欠落しているようで不気味です。岡田将生VS羽村仁成の勝敗はいずれに?実際に中学生の星乃あんなさんが可憐で、いちずな夏月を演じて切ないです。
島国の日本、危険なところはいっぱいありますが、崖に近づくのはやめましょう。(白)


2023年/日本/カラー/シネスコ/129分
配給:東京テアトル、チームジョイ
(C)2024『ゴールド・ボーイ』製作委員会
https://gold-boy.com/
★2024年3月8日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 20:53| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

PLAY! ~勝つとか負けるとかは、どーでもよくて~

thumbnail_『PLAY! ~勝つとか負けるとかは、どーでもよくて~』ポスタービジュアル.jpg

監督:古厩智之
企画・プロデュース:広井王子
脚本:櫻井剛
撮影:下垣外純
音楽:遠藤浩二
出演:奥平大兼(郡司翔太)、鈴鹿央士(田中達郎)、山下リオ(三上桃子)、小倉史也(小西亘)、花瀬琴音(松永紗良)、三浦誠己

「全国高校【eスポーツ】大会メンバー大募集」
勧誘ポスターに興味を持った翔太は、このポスターを作った張本人で1学年先輩の達郎に連絡を取る。1チーム3人編成の<ロケットリーグ>出場をもくろむ達郎は、人数合わせとしてたまたま席が近かった亘を残り1枠にロックオン。なかば強引にYESを取り付けてチームが成立!はじめは全く息の合わなかった彼らだったが、次第に競技に魅せられ、東京での決勝戦を目指す……。

【e】はelectronicのe。コンピューターやモバイルを使ったスポーツ対戦競技のことです。本作では「車でサッカー」をするゲーム。1チーム3人で、相手チームと対戦、ゴールにボールをたたき込めば得点。翔太は1本の映画が別建てでできそうなほど、問題の多い家庭の長男です。達郎のポスターをきっかけに、現実と全く関係のないeスポーツに参加してその楽しさに目覚めていきます。
怪我でバスケをやめ、一人でeスポーツをしていた達郎は、仲間を探す気持ちになります。Vチューバーに入れ込んでいる亘は、巻き込まれて参加。3人が仲間になっていく過程を、くすっと笑えるシーンをちりばめながら見せていきます。迫力のゲーム画面では、コントローラーを握っている気分になって、展開にハラハラさせられます。最初は達郎が初心者の二人を引っ張っていきますが、翔太が上達し、亘が覚醒し、とゲーム上も盛り上がります。3人3様のキャラを演じる若手がキラキラしていました。大きな画面で手に汗握ってください。

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舞台挨拶公式写真

eスポーツを扱った映画はほかに。野村周平さん主演『ALIVEHOON アライブフーン』(2022/下山天監督)、『グランツーリスモ』(2022/アメリカ・日本合作)があります。どちらもは本物そっくりの運転席で車を操るもので、勝ち上がった主人公はスカウトされて、実際のレーシングカーに乗り、レースに出場しました。(白)


2024年/日本/カラー/シネスコ/122分
配給:ハピネットファントム・スタジオ
(C)2023映画「PLAY! 勝つとか負けるとかは、どーでもよくて」製作委員会
https://happinet-phantom.com/play/
★2024年3月8日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開
posted by shiraishi at 01:54| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする