2024年02月17日

コヴェナント/約束の救出   原題:Guy Ritchie's the Covenant

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(C)2022 STX FINANCING, LLC. ALL RIGHTS RESERVED

監督・脚本・製作;ガイ・リッチー
出演:ジェイク・ギレンホール、 ダール・サリム、 アントニー・スター、 アレクサンダー・ルドウィグ、 ボビー・ス コフィールド、 エミリー・ビーチャム、 ジョニー・リー・ミラー

2018年、アフガニスタン。タリバンの武器や爆弾の隠し場所を探す部隊を率いる米軍のジョン・キンリー曹長は、アフガン人通訳として非常に優秀だが簡単には人の指図を受けないアーメッドを雇う。通訳には報酬としてアメリカへの移住ビザが約束されていた。部隊は爆発物製工場を突き止めるが、タリバンの司令官に大量の兵を送り込まれ、キンリーとアーメッド以外は全員殺される。キンリーも腕と足に銃弾を受け瀕死の状態となるが、身を潜めていたアーメッドに救出される。アーメッドはキンリーを運びながら、ひたすら山の中を100キロ進み続け、遂に米軍の偵察隊に遭遇する。7週間後、回復したキンリーは妻子の待つアメリカへ帰るが、アーメッドと家族の渡米が叶わないばかりか、タリバンに狙われ行方不明だと知って愕然とする。アーメッドを助けると決意したキンリーは、自力でアフガニスタンへ戻る・・・

険しい山道を、何度も危ない目に逢いながら瀕死のキンリーを100キロもの距離を運び、無事米軍に引き渡したアーメッド。身体が回復し米国の家族のもとに帰ったキンリーは、アーメッドに約束の米国ビザが下りてないことを知って、恩に報いる為、自費でアーメッドを探しに危険を承知でアフガニスタンに戻ります。この部分だけを捉えれば美談。ガイ・リッチー監督が、ドキュメンタリーで知った実話をもとに映画化したのは、決して美談だけを描きたかったわけではないと思います。
そも、なぜ米軍がアフガニスタンに侵攻したのか。国の政策で派兵される人たちも気の毒ですが、ソ連軍が去ったと思ったら、今度は米軍と、落ち着かない国土に暮らすアフガニスタンの人たちのことを思うと胸が痛みます。そして、米軍撤退後に、タリバンの復権。大国の身勝手な政策が及ぼす影響の大きさにも思いが至ります。タリバン復権で、芸術が否定され、女性の権利も後退。米軍に通訳として協力した多くのアフガニスタンの人たちも身の危険にさらされているという現実があります。
世界に目を向けてみれば、ロシアのウクライナ侵攻、イスラエルのガザ侵攻・・・等々。犠牲になるのは、戦場になった地の庶民。戦争に加担したくなくても徴兵という形で逃れられない人たちも大勢います。それを本作を観て思い起こしてほしいと切に願います。(咲)


2022年/アメリカ/英語/123分/カラー/スコープ
字幕翻訳:松崎広幸
配給:キノフィルムズ
公式サイト:https://www.grtc-movie.jp/
★2024年2月23日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほかにて全国ロードショー




posted by sakiko at 21:25| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

マリア 怒りの娘  原題:LA HIJA DE TODAS LAS RABIAS

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(C)Felipa S.A. - Mart Films S.A. de C.V. - Halal Scripted B.V. - Heimatfilm GmbH + CO KG - Promenades Films SARL - Dag Hoel Filmprooduksjon as - Cardon Pictures LLC - Nephilim Producciones S.L. ‒ 2022

監督:ローラ・バウマイスター
出演:アラ・アレハンドラ・メダル、バージニア・セビリア、カルロス・グティエレス、ノエ・エルナンデス、ダイアナ・セダノ

中米ニカラグア、マナグア湖そばの広⼤なゴミ集積場。11歳のマリア(アラ・アレハンドラ・メダル)は、風が舞う中、ゴミの中から残飯を拾って家に帰る。子犬たちと戯れていると、⺟親のリリベス(バージニア・セビリア)から、「売り物よ。情がわくから可愛がっちゃダメ」と言われる。
政府がゴミ収集事業の⺠営化を決定する。リリベスが廃品を売りに集積場に行くが、民営化反対の抗議活動の影響で、ここでは引き取れないと言われる。リリベスは知⼈夫婦(ノ エ・エルナンデス、ダイアナ・セダノ)が営むリサイクル施設にマリアを預け、街に出かけていく。その施設では身寄りのない⼦どもたちが廃棄物のリサイクル作業を⼿伝っていた。タデオという少年(カルロス・グティエレス)が、字を教えてくれて、優しくかまってくれる。ニュースで映し出された抗議デモで負傷した人たちの姿に、戻ってこない母が心配になり、 マリアはタデオの手助けを得て、施設を抜け出し母を探す旅に出る・・・

これまで製作された⻑編映画はわずか数本のニカラグア出身の女性監督による初監督作品。

監督:ローラ・バウマイスター LAURA BAUMEISTER
1983年、ニカラグア⽣まれ。映画監督、社会学者。 メキシコの国⽴映画学校・CCC映画センター(Centro de Capacitacion Cinematografica) で映画制作を学び、 これまで数本の短編を制作。短編『Isabel Im Winter』 (2014 年/22分/メキシコ・ドイツ/ドイツ語/⽇本未 公開)は、2014年カンヌ国際映画祭批評家週間で上映された。本作『マリア 怒りの娘』で⻑編デビューを果たす。


「欲しいものは自分で勝ち取れ」という母親の言葉を胸に、少女から大人の女性へと育っていく姿を圧倒的な映像で描いています。 マリアを演じたアラ・アレハンドラ・メダルの存在感が凄いです。当初予定していたマリア役の少女が、コロナ禍で撮影が延びる中、成長してしまったので、当初エキストラで参加予定だったアラ・アレハンドラ・メダルが抜擢されたのだそうです。
母リリベスを演じたバージニア・セビリアも、必死に社会の中で抗う姿と、マリアの夢に出てくる妖艶ともいえる子を思う姿の対比が素晴らしいです。
楽曲は、フランス映画『燃ゆる⼥の肖像』などを担当したパラ・ワン(ジ ャン=バティスト・デ・ラウビエ)とアーサー・シモニーニが担当。母と娘を描いた本作を、しっとりと盛り立てています。
環境問題や児童労働という、ほかの国でもあることを織り込みながら、なかなか目にすることのないニカラグアの風景を映し出していて、興味を惹かれました。 (咲)


2022年/ニカラグア、メキシコ、オランダ、ドイツ、フランス、ノルウェー、スペイン/91分/スペイン語
字幕:田渕貴美子
配給:ストロール
公式サイト: https://strollfilms.com/daughter
★2024年2月24日(土) ユーロスペースほか全国順次公開



posted by sakiko at 16:01| Comment(0) | ニカラグア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする