2024年02月08日
フィリピンパブ嬢の社会学
監督:白羽弥仁
原作:中島弘象
脚本:大河内聡
撮影監督:豊浦 律子/撮影:森﨑 真実
音楽:奈良部 匠平
出演:前田 航基(中島翔太)、一宮 レイゼル(ミカ)、ステファニー・アリアン、津田 寛治、近藤 芳正、田中 美里、飯島 珠奈、仁科 貴、浦浜 アリサ、勝野 洋
大学院生の中島翔太は、フィリピンパブで働く女性たちを論文の研究対象にし、生まれて初めてパブを訪れる。取材に通ううちに、フィリピンの家族に送金を続け明るく逞しく働くミカと親しくなる。フィリピンの家族にも紹介され、ますますミカを大切に思う翔太は、来日するため偽装結婚していたミカの事情を知り、こわごわヤクザの元に乗り込むことになった…。
本作は大学院生と、フィリピンパブ嬢の恋模様をコメディタッチで描きながら、多文化共生の未来も考えさせる内容です。ミカの家族思いに感心しながらも、一族の絆の強さにこの先大変だねとつい老婆心も出てしまいます。演じる前田 航基さん、一宮 レイゼルさんのお二人が応援したくなる好演です。これがほぼ実話を元にしているというのにびっくり、原作はさらに詳しいので、そちらもご覧ください。
日本ではたくさんの外国から来た人たちが働いています。飲食店や病院、建築現場でもよく見かけます。超高齢化社会に突入した日本が、日々支えられていると言っても過言ではありません。農業・漁業・工場などでたくさん働いている技能実習生の待遇改善も実行されますように。(白)
白羽弥仁監督&中島弘象さんにお話を伺いました。
楽しかったインタビューはこちら
『フィリピンパブ嬢の社会学』中島弘象著(新潮新書 2017年)
『フィリンピンパブ嬢の経済学』中島弘象著(新潮新書 2023年)
タイトルを見て思い出したのが、1983年頃に商社で労働組合の本部役員をしていた時に、数回連れていってもらったフィリピンパブのことでした。名古屋では、まだ少女のような娘たちも何人かいて、客の男たちとチークダンス。過激なショーがあるらしいと連れていかれた四ツ谷のパブでは、ショータイムにきわどい衣装で8人程が登場。ちらほら見えそうになる胸を気にしている子もいました。銀座の高級クラブには、実はよく上司に連れていってもらっていて、そこで働くホステスさんたちと比べると、フィリピンの若い女の子たちは、家族のために意に沿わない仕事をしているように感じてしまったものです。
本作でも、フィリピンで娘の稼ぐお金をあてにしているらしい大家族が出てきました。香港などで家政婦として働くフィリピン女性も多いし、ほかの国と違って、外国に出稼ぎに行くのは女性の方が多いのは、なぜなのでしょう。
1980年代は、タレントビザでフィリピンの女性たちは来日していたようですが、今は違うそうです。思えば、銀座の高級クラブも、1990年代に入ると、中国などの留学生に出会うことが多くなったのを思い出します。
原作者の中島弘象さんは、修論の研究対象が恋愛対象になってしまったそうですが、勤務していた会社の先輩男性で、フィリピンパブに足繁く通ううちに、結婚したという人もいました。島国の日本にも、今は世界各地の人たちが普通に暮らす時代になったのを感じます。 主役を演じた一宮レイゼルさんも、12歳から日本で暮らす日本語も英語も流暢なトリリンガル。とても可憐で、彼女を起用できて、本作はラッキーだったと思いました。(咲)
2023年/日本/カラー/114分
配給:キョウタス
https://mabuhay.jp/
★2024年2月17日(土)ロードショー