2024年3月1日(金) 全国順次公開 劇場情報
14歳の愛と宗介。
孤独な少年少女の喪失から再生までの姿を独自の世界観で魅せる、青春譚
監督・脚本:宮嶋風花
製作総指揮 :中村直史
プロデューサー :古賀俊輔、谷垣和歌子、濱中健太、キタガワユウキ
音楽 :茂野雅道
撮影 :岸建太朗
美術 :佐藤高真
録音・整音 :伊藤裕規
衣装 :杉本仁紀
ヘアメーク :升水彩香
出演者
長澤樹、窪塚愛流、林田麻里、兵頭功海、平田敦子、堀部圭亮、田中麗奈
『愛のゆくえ』は、宮嶋監督自身の実体験や人生そのものが物語の軸となっている半自伝的作品。高校生という多感な年頃に母親が他界。監督自らが経験した親に対する複雑な感情や、残された子どもたちの気持ちに真正面から向き合い、赤裸々に描いた。監督が生まれ育った北海道を舞台に、孤独な少年と少女の心の成長を独自の世界観で描く。
北海道で暮らす幼なじみの愛と宗介。2人の母親はそれぞれに二人を守ろうとしていたが、宗介の母は宗介が6歳の時に夫が亡くなり、それ以来心が折れて、上手に愛情を表現できず、宗介とうまくコミュニケーションがとれなくなってしまった。愛の母は面倒見がよく、そんな宗介を引き取り、愛と一緒に育てていた。しかし、二人が14歳の時、大きな変化があり、そんな世界がある日突然崩壊してしまった。愛の母由美と宗介が喧嘩をして、家出をした宗介を探している途中で由美は亡くなってしまったのだ。子ども達は、その喪失とどう向き合い、どうやって生きていけばいいのか? 愛は父親に連れられて東京に引っ越しを余儀なくされ、宗介は北海道に残されることになった。
宗介は雪深い北海道での生活を続け、都会で孤独感を抱えて生きている愛。二人は自分の居場所をみつけられるだろうか。
「島ぜんぶでおーきな祭 沖縄国際映画祭」で実施されている次世代を担う25歳以下の若手映像作家の発掘と支援を目的とした「クリエイターズ・ファクトリー」で、初監督作『親知らず』(札幌大谷大学芸術学部美術学科での卒業制作)が、2018年度のグランプリを受賞した宮嶋風花監督。商業デビューをかけたワークショップを勝ち抜き制作されたのが、初の長編映画『愛のゆくえ』。
脚本の完成までに3年を費やし、その過程では「クリエイターズ・ファクトリー2018」で審査委員長を務めていた中江裕司監督と、同じく審査員を務めた脚本家の中江素子の意見を参考に何度も書き換えたそう。
監督・脚本 宮嶋風花
1996年生まれ、北海道出身
高校時代から美術を専門に学び、2018年に札幌大谷大学芸術学部美術学科卒。大学在学中にアニメーション作品『trace』を中心に数々のコンペや映画祭で受賞。
須藤 愛 役:長澤 樹(ながさわいつき)
2005年10月24日生まれ、静岡県出身。
2020年公開の豊田利晃監督作『破壊の日』で映画に初出演。CMに数多く出演。ドラマでは「オレは死んじまったゼ!」(WOWOW)、時代劇「あきない世傳 金と銀」(NHKBS)に出演中。映画『光を追いかけて』(成田洋一監督)、『ハウ』(犬童一心監督)、『ちひろさん』(今泉力哉監督)などに出演
伊藤宗介 役:窪塚 愛流(くぼづか あいる)
2003年10月3日生まれ、神奈川県出身。
2018年の映画『泣き虫しょったんの奇跡』(豊田利晃監督)でスクリーンデビュー。2021年から本格的に俳優活動を開始。『麻希のいる世界』(塩田明彦監督)、『少女は卒業しない』(中川駿監督)など、着実に出演作品を重ねている。2024年は初めて主演を務めた映画『ハピネス』(篠原哲雄監督)が公開される。
20代後半のまだ若い監督のデビュー作。しかも自身の経験をかなり反映させているというのにびっくり。まさしく波乱万丈の人生。それを作品に投影させるというのは、かなりの覚悟がいる。あるいは映画に昇華させることで、新たなる自分の人生の道が開けるのかもしれない。映画の道が宮嶋監督の居場所になっていくのかもしれない。粗削りの表現だけど、何本も撮ることで、自分のスタイルができてくるのでしょう。次はどんな作品になっていくのか楽しみです(暁)。
公式サイト ainoyukue.official-movie
2023年製作/88分/PG12/日本
配給:パルコ
2024年02月29日
2024年02月28日
ピーター・グリーナウェイ レトロスペクティヴ『英国式庭園殺人事件』『ZOO』『数に溺れて』『プロスペローの本』
ピーター・グリーナウェイ レトロスペクティヴ
美を患った魔術師
英国アート映画の先駆者として、世界中でカルト的人気を誇る映画監督ピーター・グリーナウェイ。
アリ・アスターが「映画人生を狂わされた」と語り、淀川長治が「英国アート映画史上最もエレガントな狂的天才」と絶賛した英国紳士。
今回の特集上映では、グリーナウェイの数ある作品のなかでも『髪結いの亭主』、『ピアノ・レッスン』、『ガタカ』等で世界的に知られる音楽家マイケル・ナイマンが音楽を手掛けた作品を選定。異彩を放つグリーナウェイの世界に音で更なる煌めきを与えたナイマンとの、世紀のコラボレーションと呼ぶに相応しい4作が上映されます。
上映作品
『英国式庭園殺人事件』 4Kリマスター (1982)
『ZOO』 (1985)
『数に溺れて』 4Kリマスター (1988)
『プロスペローの本』 (1991)
配給宣伝協力:Gucchi’s Free School
配給:JAIHO
公式サイト:https://greenaway-retrospective.com/
★2024 年 3 月 2 日 ( 土 ) よ り シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
ピーター・グリーナウェイ
1942年イギリス、ウェールズのニューポート生まれ。
幼少期はフェルメール等の絵画に魅せられ画家を志す。一方で、イングマール・ベルイマンの『第七の封印』等、映画にも夢中になる。ロンドンのウォルサムストー美術学校在学中に初の映像作品『Death of Sentiment(原題)』(62・未)を制作。
80年、飛行機事故に遭った92人の事故後を記録したフェイクドキュメンタリー『ザ・フォールズ』で長編デビュー。82年、『英国式庭園殺人事件』を手掛け、その独特な構図と画角のなかで描かれる貴族の美しくも下品な表裏の世界を皮肉とユーモアを交えた独創的な内容が話題を呼び、その名を世界に広く知らしめた。
88年に『数に溺れて』で第41回カンヌ国際映画祭芸術貢献賞を受賞、89年にジャンポール・ゴルチエが衣裳を担当した事で話題となった『コックと泥棒、その妻と愛人』で世界中を震撼させた。
2014年、第67回英国アカデミー賞英国映画貢献賞受賞。
現在、ダスティン・ホフマンが主演するイタリアの都市ルッカを舞台にした新作映画『Lucca Mortis(仮題)』を準備中。
********************
『英国式庭園殺人事件 4Kリマスター』 原題:The Draughtsman's Contract
C1982 Peter Greenaway and British Film Institute.
監督:ピーター・グリーナウェイ
音楽:マイケル・ナイマン
出演:アントニー・ビギンズ、ジャネット・スーズマン、ルイーズ・ランバート、ニール・カニンガム他
主人を殺したのは誰?屋敷の庭を描いた画家の 12 枚の絵の中に浮かび上がる、完全犯罪の謎。
ピーター・グリーナウェイの名を有名にした初期の傑作ミステリー!
17 世紀末、画家ネヴィルは英国南部ウィルトシャーにあるハーバート家の屋敷へ招かれる。主人のハーバート氏は不在で、代わりに出迎えた夫人のヴァージニアは、夫が戻るまでに屋敷の絵を 12 枚完成させること、報酬は一枚 8 ポンドに寝食の保証、そして夫人はネヴィルの快楽の要求に応じると言い、契約を結ぶ。ネヴィルは絵を描き始めるが、描こうとする構図の中に誰かがハーバート氏のシャツ、裂かれた上着等、何かを暗示するような物を紛れ込ませようとする。
1982年/イギリス/英語/カラー/ヨーロピアンビスタ/モノラル/107 分
※2022 年に4K リマスターされたものを修正無し・オリジナル版で初上映
『ZOO』原題:A Zed & Two Noughts
C1985 Allarts Enterprises BV and British Film Institute.
監督:ピーター・グリーナウェイ
音楽:マイケル・ナイマン
出演:アンドレア・フェレオル、ブライアン・ディーコン、エリック・ディーコン他
腐敗していく動物の死骸に捉われた双子の兄弟を描いたトラウマ級の衝撃作。
オランダ・ロッテルダムの動物園で働く双子の動物学者オズワルドとオリヴァーは交通事故で同時に妻を亡くし、車を運転していた女性アルバは一命をとりとめるが片足を失う。事故後、オズワルドとオリヴァーは何かに憑かれたように動物の死骸が腐敗していく過程を映像に記録する事に没頭する。やがて 2 人はアルバと親しくなり、アルバも 2 人に好意を抱き始める。
1985年/イギリス/英語/カラー/ヨーロピアンビスタ/2.0ch/116 分
※2000 年初期の HD リマスター版を無修正で劇場初上映
『数に溺れて 4Kリマスター』 原題:Drowing by Numbers
C1988 Allarts/Drowing by Numbers BV
監督:ピーター・グリーナウェイ
音楽:マイケル・ナイマン
出演:ジョーン・プロ―ライト、ジュリエット・スティーヴンソン、ジョエリー・リチャードソン、バーナード・ヒル他
同じシシーという名前を持つ3人の女性による殺人を描いたサスペンス。第 41 回カンヌ映画祭芸術貢献賞受賞
英国サフォーク州の水辺に暮らす同姓同名の 3 人の女性シシー・コルピッツたちは、愛の冷めてしまった夫をそれぞれで殺そうとする。1 人目のシシーは若い女と浮気している夫を湯に沈め、2 人目のシシーは自分に関心のない夫を海で溺れさせ、3 人目のシシーは、新婚早々熱が冷めた夫をプールで溺れさせた。検視官のマジェットは 3 人から一連の出来事を全て事故死として処理するように脅されるが...。
1988年/イギリス/英語/カラー/ヨーロピアンビスタ/2.0ch/118 分
※2022 年に4K リマスターされたものを修正無し・オリジナル版で初上映
『プロスペローの本』原題:Prospero's Book
監督:ピーター・グリーナウェイ
音楽:マイケル・ナイマン
衣裳:ワダエミ
出演:ジョン・ギールグッド、マイケル・クラーク、ミシェル・ブラン、エルランド・ヨセフソン他
シェイクスピアの戯曲テンペストを原案に、24冊の魔法の書を手に入れた男による復讐劇
衣裳は日本を代表するデザイナーのワダエミ
ミラノ大公プロスペローは、ナポリ王アロンゾ―と共謀した弟アントーニオに国を追われ、娘のミランダと共に絶海の孤島に幽閉される。アロンゾ―への復讐を片時も忘れなかったプロスペローは友人ゴンザーローから譲り受けた 24 冊の魔法の書を読み解いて強大な力を身に着け、島にいる悪魔の力を持つ怪物キャリバンや妖精エアリエルを操り、魔法の力で復讐を実行する。
1991年/イギリス・フランス・イタリア/英語/カラー/ヨーロピアンビスタ/2.0ch/126 分
※2011 年の HD リマスター版を無修正で劇場初上映
公式サイトに、大きく
大好きか大嫌いかの二極、貴方はどちら?
と書かれています。
せっかく試写のご案内をいただいたので、恐る恐る、『英国式庭園殺人事件』を拝見。
庭園に佇むエレガントな英国婦人と裏腹に、なんとも凄い場面が・・・ 観たくないものを観てしまったという思いもよぎりました。
でも、なぜだか、ほかの作品も観たくなってしまいました。
『プロスペローの本』は、24冊の魔法の書というのにも惹かれましたが、衣装がワダエミさんとあっては、やはり気になります。さすがなお仕事でした。
そうなると、カンヌ映画祭芸術貢献賞を受賞した『数に溺れて 4Kリマスター』も観ないわけにいきません。 何回と数えながら縄跳びする若い娘。なんといっても「数」がキーワード。そこかしこに「数」が出てきます。シシーという名前は同じだけど、年齢も境遇も違う3人の女性が、ダメ夫に愛想をつかして殺してしまいます。艶やかな衣装で葬る姿がお見事!
3本観て、どれも強烈な印象で、確かに癖になる人はなるという作風。でも、腐敗していく動物の死骸に捉われた双子の兄弟を描いた『ZOO』だけは、まだ観る勇気がありません。
アリ・アスターの『ミッドサマー』を思い起こしてみれば、なるほど、アリ・アスターが彼の作品に衝撃を受けたのがわかります。
好きか嫌いか・・・ 勇気を出して、口にしてみてください! (咲)
2024年02月25日
かづゑ的 英題 BEING KAZUE
2024年3月2日(土)よりポレポレ東中野、ヒューマントラストシネマ有楽町にてロードショー 他全国順次公開
劇場情報
監督 熊谷博子
ナレーション・朗読:斉藤 とも子
撮影:中島広城
録音:奥井義哉
助監督:土井かやの
編集:大橋富代
映像技術:柳生俊一
整音:小長谷啓太
音楽:黒田京子
宣伝美術:安倍大智
出演:宮﨑かづゑ、宮﨑孝行ほか
私、みんな受けとめて、逃げなかった
『三池~終わらない炭鉱(やま)の物語』、『作兵衛さんと日本を掘る』など炭鉱に関わる人々を追い続けてきた熊谷博子監督。最新作は、岡山県瀬戸内市にある国立ハンセン病療養所・長島愛生園に暮らすハンセン病回復者の宮﨑かづゑさんを8年間に渡り撮影したドキュメンタリー。
かづゑさんの人生に伴走し、厳しくも充実した人生を生き抜いてきた彼女に寄り添って見えてきたものは、力強く誇り高くもチャーミングな生き方。
かづゑさんは10歳で入所して以来約80年、生まれ故郷の家に帰れずこの島で生きてきた。病気の影響で手の指全部と片足を切断、視力も落ちている。それでも電動カートに乗って施設内の商店に買い物に行ったり、料理など周囲の手を借りながら自分で行っている。
らい患者の日常を知ってもらいたい、本当のらい患者の感情、飾っていない患者生活を残したい。らいに負けてなんかいませんよと力強く語る。患者同士のいじめに遭いつらかった子ども時代や、より重病者を下に見て、差別されているものが差別をする実態も語られる。
しかし、家族の愛情と、たくさんの愛読書が絶望の淵から引き上げてくれたという。そして夫の孝行さんと出会い、海沿いにあった夫婦寮で自然とともに暮らしてきたことを懐かしむ。
かづゑさんはいつも新しいことに挑戦し、78歳のときにパソコンを覚え、84歳になって初の著作「長い道」(みすず書房)を出版。類まれな表現力で日常を瑞々しく綴り、版を重ねている。
そして、90歳半ばになったかづゑさんは「できるんよ、やろうと思えば。」と語る。
熊谷博子監督メッセージ HPより
宮﨑かづゑさんは、私が初めて会ったハンセン病の元患者さん(回復者)でした。信頼する知人に、会わせたい人がいるからと、半ば強引に長島愛生園に連れていかれました。10歳からハンセン病療養所で生活している、という人に。その日々の暮らしを描いた著書「長い道」を会う前に読み、大変心をうたれました。かづゑさんの部屋で話しながら、この人生を撮って残しておかねばと心に決め、2016年から愛生園に通い始めました。それから8年間、私たちはカメラとマイクを携えて、かづゑさんの人生に伴走することになりました。この映画はハンセン病を背景にしていますが、決してハンセン病だけの映画ではありません。人間にとって普遍的なことを描いたつもりです。
公式HP https://www.beingkazue.com/
2023年製作/119分/DCP/日本
協力:国立療養所 長島愛生園
配給協力:ポレポレ東中野 宣伝:きろくびと
製作・配給:オフィス熊谷
劇場情報
監督 熊谷博子
ナレーション・朗読:斉藤 とも子
撮影:中島広城
録音:奥井義哉
助監督:土井かやの
編集:大橋富代
映像技術:柳生俊一
整音:小長谷啓太
音楽:黒田京子
宣伝美術:安倍大智
出演:宮﨑かづゑ、宮﨑孝行ほか
私、みんな受けとめて、逃げなかった
『三池~終わらない炭鉱(やま)の物語』、『作兵衛さんと日本を掘る』など炭鉱に関わる人々を追い続けてきた熊谷博子監督。最新作は、岡山県瀬戸内市にある国立ハンセン病療養所・長島愛生園に暮らすハンセン病回復者の宮﨑かづゑさんを8年間に渡り撮影したドキュメンタリー。
かづゑさんの人生に伴走し、厳しくも充実した人生を生き抜いてきた彼女に寄り添って見えてきたものは、力強く誇り高くもチャーミングな生き方。
かづゑさんは10歳で入所して以来約80年、生まれ故郷の家に帰れずこの島で生きてきた。病気の影響で手の指全部と片足を切断、視力も落ちている。それでも電動カートに乗って施設内の商店に買い物に行ったり、料理など周囲の手を借りながら自分で行っている。
らい患者の日常を知ってもらいたい、本当のらい患者の感情、飾っていない患者生活を残したい。らいに負けてなんかいませんよと力強く語る。患者同士のいじめに遭いつらかった子ども時代や、より重病者を下に見て、差別されているものが差別をする実態も語られる。
しかし、家族の愛情と、たくさんの愛読書が絶望の淵から引き上げてくれたという。そして夫の孝行さんと出会い、海沿いにあった夫婦寮で自然とともに暮らしてきたことを懐かしむ。
かづゑさんはいつも新しいことに挑戦し、78歳のときにパソコンを覚え、84歳になって初の著作「長い道」(みすず書房)を出版。類まれな表現力で日常を瑞々しく綴り、版を重ねている。
そして、90歳半ばになったかづゑさんは「できるんよ、やろうと思えば。」と語る。
熊谷博子監督メッセージ HPより
宮﨑かづゑさんは、私が初めて会ったハンセン病の元患者さん(回復者)でした。信頼する知人に、会わせたい人がいるからと、半ば強引に長島愛生園に連れていかれました。10歳からハンセン病療養所で生活している、という人に。その日々の暮らしを描いた著書「長い道」を会う前に読み、大変心をうたれました。かづゑさんの部屋で話しながら、この人生を撮って残しておかねばと心に決め、2016年から愛生園に通い始めました。それから8年間、私たちはカメラとマイクを携えて、かづゑさんの人生に伴走することになりました。この映画はハンセン病を背景にしていますが、決してハンセン病だけの映画ではありません。人間にとって普遍的なことを描いたつもりです。
公式HP https://www.beingkazue.com/
2023年製作/119分/DCP/日本
協力:国立療養所 長島愛生園
配給協力:ポレポレ東中野 宣伝:きろくびと
製作・配給:オフィス熊谷
瞼の転校生
監督:藤田直哉
脚本:金子鈴幸
撮影:古屋幸一
音楽:額田大志
舞台演出:松川小祐司
タイトルデザイン:赤松陽構造
出演:松藤史恩(裕貴)、齋藤潤(建)、葉山さら(茉耶)、佐伯日菜子、村田寛奈、高島礼子
旅回りの大衆演劇一座に所属する中学生の裕貴は、公演に合わせて1ヶ月ごとに転校を繰り返している。「すぐに別れるから」と友達を作ろうともせず、誰とも話さずに公演時間に間に合うよう早退していた。ある日、担任から頼まれて会ったことのないクラスメイトの家に立ち寄ることになった。建は不登校なのに成績優秀で、ちょっと他の同級生とは違っていた。
後日、地下アイドル「パティファイブ」ライブに行った裕貴は、偶然に建と再会する。建は「パティファイブ」の浅香ファンだった。2人は一気に仲良くなり、建の元カノの茉耶も加わって、3人で過ごすことが多くなった。裕貴は2人に舞台に立つ自分を観てほしいと思い始めるが、残りの時間は少ない・・・。
大衆演劇になじみのない方が多いかと思いますが、こちらはその一座の中学生のお話です。毎日違う演目での昼夜公演。舞踊ショーとお芝居で3時間ほどの生の舞台が2000円~3000円。映画の舞台になったのは、北区十条の篠原演芸場でした。私は20年ほど前に浅草で観て以来、いろいろな劇団の公演に通ってきましたが、普段は見られない楽屋や稽古のようすも観られて嬉しかったです。
可愛い女形を披露する松藤史恩くんは昨年公開の『雑魚どもよ、大志を抱け!』ではメガネっ子の正太郎くん役。齋藤潤くんは『正欲』『カラオケ行こ!』に出演。これからが楽しみです。
藤田直哉監督にお話をうかがいました。こちらです。(白)
SKIPシティ国際Dシネマ映画祭の記念すべき20周年のオープニング作品として上映された折に拝見。
映画祭20周年と川口市制施行90周年を記念して製作された作品。藤田直哉監督は、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2020の短編部門で『stay』が優秀作品賞を受賞。本作で長編デビュー。
1か月ごとに学校を変わらなくてはいけない、大衆演劇の親を持った男の子と、優秀なのに不登校の男の子の物語。
松藤史恩さんの美しい女形の姿に、うっとり。本作を観たら、本物の大衆演劇を観てみたくなることと思います。(咲)
映画祭の折の舞台挨拶の模様は、こちらで!
SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2023 オーニング作品 『瞼の転校生』 (咲)
2023年/日本/カラー/ビスタ/80分
配給:インターフィルム
(C)2023埼玉県/SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ 川口市
https://mabuta-no-tenkousei.com/
★2024年3月2日(土)ロードショー
水平線
監督:小林且弥
脚本:齋藤孝
撮影:渡邉寿岳
出演:ピエール瀧(井口真吾)、栗林藍希(奈生)、足立智充(江田)、内田慈(河手)、押田岳(渡部)、円井わん(沙帆)、高橋良輔(城島)、清水優(隼人)、遊屋慎太郎(松山)、大方斐紗子(平島)、大堀こういち(箕輪)、渡辺哲(清一)
井口真吾は福島の港町で娘の奈生と二人暮らし。妻は震災で行方不明になり、遺骨も見つかっていない。井口は一人で散骨業を営み、高齢者や生活困窮者の依頼を格安で受けている。母亡きあと家事を引き受け、水産加工場で働く奈生は母の死をいまだ受け入れられずにいた。
ある日若い男が兄の遺骨を託して帰ったが、まもなくジャーナリストだという江田が訪ねてきた。江田はその遺骨が世間を震撼させた殺人犯のものだと告げ、多くの遺骨が眠る福島の海を汚すつもりかと迫る。井口は「無関係な人間が口を出すな」とあしらうが、執拗な取材は続きその動画がSNSで拡散される。
映画『凶悪』(2013年/白石和彌監督)で、ヤクザの兄貴役と舎弟役で共演した二人が ふたたびタッグを組みました。小林且弥監督のデビュー作の主演にとピエール瀧さんに切望して実現した作品です。いつも強面の役柄が多いピエール瀧さんが、寄る辺ないような寂しげな男を演じていて、うわ~、同じ人?と思いました。江田が井口を責めるのはおかしいだろうと思いながら、自分が問われたらと考えるとすぐに答えは出ません。海はいろいろなものを飲み込んでくれていますが、それは山でも人でも同じに思えます。
罪なき人は前へ出よ、と言われて胸を張って出られる人はいるのでしょうか?過去を持たない子どもたちだけじゃないでしょうか?辿り辿れば、いろいろな人が自分の系譜の中にいただろうし、と観た後いろいろ考えたのでした。
小林監督、瀧さんを主演にこんなデビュー作を送りだしてくれてありがとうございます。(白)
2023年/日本/カラー/119分
配給:マジックアワー
(C)2023 STUDIO NAYURA
https://studio-nayura.com/suiheisen/
★2024年3月1日(金)ロードショー
リトル・リチャード:アイ・アム・エヴリシング 原題:Little Richard: I Am Everything
監督:リサ・コルテス
出演:リトル・リチャード、ミック・ジャガー、トム・ジョーンズ、ナイル・ロジャーズ、ノーナ・ヘンドリックス、ビリー・ポーター、ジョン・ウォーターズほか
リトル・リチャード。1950年代半ばに彗星のように音楽シーンに現れ、後進のロック・ミュージシャンに多大な影響を与えた革新的黒人アーティスト。
ミック・ジャガーは「ロックンロールはリトル・リチャードが始めた」と語り、エルヴィス・プレスリーは「彼こそロックンロールの真のキングだ」と称賛。ビートルズのデビュー前から親交があったジョン・レノンは「初めて会ったとき、畏敬のあまり、硬直してしまった」と言い、ポール・マッカートニーは「歌で叫ぶのはリチャードの影響さ」と語る。はたして彼はいったいどのような生い立ちを経て、その名を世界に刻んでいったのか。
本作は、ピアノを叩くように弾いたり、ピアノの上で衣服を脱ぎ捨てる姿などのアーカイヴ映像や、彼を崇拝する多くのミュージシャンの言葉を綴って、リトル・リチャードがロックンロールの祖であることを示したドキュメンタリー。
リトル・リチャード。1932年12月、教会の多い保守的な町ジョージア州メイコンでアフリカ系黒人の両親のもとに生まれる。母とは静かに祈るバプテスト教会、父とはメソジスト教会に通い、踊りながらゴスペルを歌っていたそうです。ゲイを公言した為、父からは破門され、白人向けのゲイクラブの2階に住まわせてもらい、ブルースやゴスペルを歌う暮らし。
1955 年のデビュー・シングル「トゥッティ・フルッティ」は、最初、黒人専用ラジオチャンネルで流されるも、カーラジオなどで白人も聴いて知るところに。その後、「のっぽのサリー」の大ヒット。白人と黒人が同じ場所に居られなかった時代。白人がリトル・リチャードのコンサートに押しかけ、黒人音楽を白人に聴かせた罪で捕まったことも。
人気の絶頂期、1957年、アラバマ州のオークウッド大学に入学して神学を修め牧師に。ゴスペルを歌い、ゴスペルのキングと名乗ります。結婚もしますが、1962年、突如ロック歌手として復帰。ロンドンでのツアーは暴動と化すほど過激でした。その後、リバプールでまだ駆け出しのビートルズに会うのですが、ビートルズにとって有名人に会う初めての機会だったとか。若い4人の姿が初々しいです。ローリング・ストーンズも、リトル・リチャードのイギリスツアーの前座だったのです。多くの名だたるミュージシャンに影響を与えたのに、ロックンロールのルーツが黒人だったことを抹殺していると嘆きます。ようやく日の目をみたのが、1997年。アメリカン・ミュージック・アワード功労賞に輝きます。「生きている間に貰えて嬉しい」と語るリトル・リチャード。64歳になっていました。
私にとっては、まったく知らない人だったのですが、黒人音楽が好きな妹に『リトル・リチャード:アイ・アム・エヴリシング』という映画が、3/1から公開されるとLINEを送ったら、すぐに「へー観たい。全ては彼から始まったんです」と返事。「ポールやジョンが彼の音楽スタイル真似して大きくなった」と、まるで公式サイトを見たかのような返事が来ました。(寸時に返事が来たので、見てないはず) そうっか、知る人ぞ知るだったのだと。
この映画を機会に、彼を知らなかった人に、黒人やゲイが激しく差別されていた時代に、自分らしく表現した人がいたことを知ってほしいと思いました。(咲)
2023年/アメリカ/101分/カラー/ビスタ/5.1ch/DCP
字幕:堀上香
字幕監修:ピーター・バラカン
提供・配給:キングレコード
公式サイト:https://little-richard.com/
★2024年3月1日(金)より、シネマート新宿ほか全国公開
ロッタちゃん はじめてのおつかい(原題:Lotta 2 - Lotta flyttar hemifran)
監督・脚本:ヨハンナ・ハルド
原作:アストリッド・リンドグレーン
撮影:オーロフ・ヨンソン
音楽:ステファン・ニルソン
出演:グレテ・ハヴネショルド(ロッタ)、ベアトリス・イェールオース(ママ)、リン・グロッペスタード(ミア)、マルティン・アンデション(ヨナス)、クラース・マルムベリー(パパ)、マルグレット・ヴェイヴェルス(ベルイさん)
ニイマン家のロッタちゃんは5歳。チクチクするのでキライなセーターをロッタちゃんはハサミで切り刻んでしまう。ママが帰る前に、お隣のベルイさんちに家出をした。ベルイさんは、物置の2階にロッタちゃんの部屋を作ってくれた。お兄ちゃんのヨナスとお姉ちゃんのミア、パパとママまで訪ねてくるけれど帰ってなんかやらない。
雪が積もった日、ロッタちゃんはママのお使いでベルイさんにお見舞いのパンを届けに行く。ゴミ袋も引き受けたら、パンとバムセ(豚のぬいぐるみ/ロッタちゃんの親友)の入った袋のほうを間違ってゴミ箱に入れてしまった!収集車に持って行かれたバムセは見つかるのか?
クリスマスにツリーが手に入らなくて困っているパパとママ、ヨナスとミアはがっかりして泣いている。ロッタちゃんが起こした奇跡とは?
もう一つ、復活祭の日にまたまたロッタちゃんが大活躍。3つのエピソードを上映。
2000年に日本で公開され、大ヒットしたロッタちゃんが戻ってきました。当時私も観て、自分や子どもたちの小さかったころを思い出したものです。このたび2Kリマスター版でリバイバル上映されます。撮影当時ロッタちゃんと同じ5歳だったグレテ・ハヴネショルドは今どんな女性に成長しているのでしょう。撮影は原作者アストリッド・リンドグレーン(1907~2002)の故郷ヴィンメルビー(Vimmerby)にある”アストリッド・リンドグレーン・ワールド(Astrid Lindgren Värld)とヴィンメルビーのあちこちで撮影されたもの。
5歳の女の子の頑固さや独立心、「あたしってなんでもできる」という自己肯定を生意気と思うか、すごいと思うか。あなたはどちらでしょう。
この映画の大人たちはロッタちゃんを頭ごなしに叱ったり、大人のルールで縛ったりしません。子育てのヒントになります。兄や姉も「そうかい」「そうなの」と受け入れてくれます。今やそっちの方がファンタジーに思えるかも。
インテリアや小物が素敵、ロッタちゃんファッションも可愛いです。もしも機会がもてたならこのテーマパークに行って、リンドグレーンの著書の主人公たちピッピやカツレくんやロッタちゃんの遊んだ街を楽しみたいものです。長旅に耐えられるうちに。(白)
ロッタちゃんは、5歳なのに自立心が強くて、ちょっと意地悪にも見えて、なんて子だ!と最初は思ってしまいます。でも、お隣の一人暮らしのベルイおばさんにも気遣いのできる子。具合の悪いベルイおばさんに頼まれて雑誌を買いにいくと、お店の人はちゃんとベルイさんの読んでいる雑誌を知っています。
お菓子屋を営むギリシャ人のバシリスさんは、「スウェーデンの人たちは、土曜日に少しお菓子を買うだけなので商売にならない」と嘆いて、国に帰ってしまいます。もしかしたら、子どもたちに、お菓子は土日やお祝い事の日だけと躾けているのかなと思いました。
クリスマスや復活祭を大事にするスウェーデンの小さな町の人たちの暮らしが垣間見れました。(咲)
1993年/スウェーデン/カラー/ビスタ/85分
配給:エデン
(C)1993 AB SVENSK FILMINDUSTRI ALL RIGHTS RESERVED
https://lotta-eden.jp/
★2024年3月1日(金)ロードショー
3月22日(金)から『ロッタちゃんと赤い自転車』公開予定です。
津島ー福島は語る・第二章ー
監督・撮影・編集・製作:⼟井敏邦
整⾳:藤⼝諒太
⾳楽:李政美(歌・作曲)、武藤類⼦(作詞)
浪江町津島は福島県の東部、阿武隈⼭系の⼭々に囲まれた⼈⼝約1400⼈の平穏な⼭村でした。福島第⼀原発から北⻄に30キロ離れているにもかかわらず、2011年3⽉ 11⽇の事故直後に⼤量の放射性物質が降り注ぎ、「帰還困難区域」に指定されたまま、現在も多くの住⺠が帰れずにいます。故郷を離れ10年以上を経た今も、⼈々の⼼の中には津島での⽇々があります。貧しかった開拓時代の記憶、地域コミュニティと共にあった暮らし、綿々と受け継がれてきた伝統⽂化、今は亡き家族との思い出…。 津島の歴史と、そこで⽣きてきた⼈々の記憶と感情を映像化したのは、『福島は語る』(2018 年)の⼟井敏邦監督。裁判記録「ふるさとを返せ!津島原発訴訟 原告意⾒陳述集」に記された住⺠たちの⾔葉に衝撃を受けた⼟井監督は、「この声を映像で記録したい」と原告32名の元を訪ね歩き、10ヶ⽉にわたるインタビューを敢⾏。その中には、避難先で起こった⼦どもたちへの差別といじめについての証⾔もありました。総勢18名による、全9章、3時間を超える圧巻の語りの数々。
第一章“記録”今野義人
第二章“開拓”関場健治/三瓶宝次/志田昭治/馬場績
第三章“共同体” 石井ひろみ/今野千代/須藤カノ
第四章“伝統文化”今野秀則
第五章“家族喪失”三瓶春江/武藤晴男/佐々木やす子
第六章“子どもの傷”柴田明美・明範/須藤カノ・隼人・玲
第七章“棄民”今野秀則/末永一郎
第八章“故郷”馬場績
最終章“帰郷”紺野宏
■⼟井監督のコメント 「津島の記録映画を作りたい」と私を駆り⽴てたのは、⼀冊の裁判記録だった。そこには、32⼈の原告たちが裁 判所で陳述した、家族の歴史、原発事故による家族と⼈の⼼の破壊、失った故郷への深い想いが切々と綴られていた。「あの原発事故は住⺠の⼈⽣をこれほどまでに破壊していたのか」と、私は強い衝撃を受けた。「この陳述集の声を映像で記録したい」 それが映画「津島」制作の原点である。 2021年春から、私は陳述集に登場する原告たちを訪ね歩き始めた。横浜から福島まで⾞で往復し⾞中泊を繰り 返す、ほぼ10カ⽉がかりのインタビューの旅だった。 “津島”は、⼈⼝約 1400 ⼈の問題に終わらない。「多数派の幸福、安全、快適さのために少数派を犠牲にする」在り⽅への、津島住⺠の“異議申し⽴て”であり“抵抗”だともいえる。そういう意味で、“津島の存在と闘い”は⼩さな⼀地域の問題ではなく、⽇本と世界に通底する“普遍的なテーマ”を私たちに問いかけていると私は思う。 「『フクシマは終わったこと、なかったこと』にされてたまるか!」。 映画の中で涙ながらに語る証⾔者たちの声の後ろに、そんな悲痛な叫び声を私は聞いてしまうのである。
⼟井監督は、1985年よりパレスチナ・イスラエルの現地取材を重ね、1993年からは映像取材も開始し、NHKや民放で多くのドキュメンタリー番組を発表しています。2009年4月に、ドキュメンタリー映像シリーズ『届かぬ声―パレスチナ・占領と生きる人びと』全4部作を完成させています。理不尽に故郷を追われたパレスチナの人たちの姿に、放射能という見えないものの為に故郷を追われた福島の人たちの姿が重なったのは、長年、パレスチナの人々を追ってきた古居みずえ監督が飯舘村の母ちゃんたちに思いを寄せるのと同様の気持ちでしょう。
本作の最後に資金協力した個人の方たちのお名前が掲載されていますが、その中には、アラブやイランなど中東研究者のお名前もありました。
地震や津波で家が壊れたわけでなく、見た目は平穏な津島の風景。それなのに、帰宅できないのは納得がいきません。やっと帰宅許可の出た地区も、10年以上、家を空けていたので、すぐに住める状態ではありません。地震は天災だけど、原発事故を想定外と片づけられるのは納得がいきません。
「離婚して子育ては大変だったけど、ここで生きている!という楽しさがあった」
「避難先では誰にも悩みを打ち明けられない」
「農業が好きだった母が、避難先で何もすることがなくなり半年後には認知症になった」
「学校で放射能が移ると、教師にもいじめられた」
「故郷は生きる根源。人生を奪われた」
避難命令が出た時には、よもや故郷・津島に帰れなくなるとは思ってなかった人たちの、無念な思いがずっしり伝わってくる189分。他人事と思わず、いつ自分にも降りかかるかもしれないことと、しっかりと津島の人たちの言葉を噛みしめたいと思いました。(咲)
◆上映日程とトーク予定◆
【東京 K’s cinema】
3/2(土)~ 予定:初日+αで監督トーク
【京都 京都シネマ】
3/8(金)~ 予定:3月10日監督トーク
【大阪 第七藝術劇場】
3/9(土)~ 予定:3月10日監督トーク
【兵庫 元町映画館】
3/9(土)〜 予定:3月11日監督トーク
【愛知 シネマスコーレ】
3/11(月) 予定:3月11日監督トーク
【神奈川 シネマ・ジャック&ベティ】
3/16(土)~ 予定:3月16日+αで監督トーク
【福島 フォーラム福島】
3/22(土)~初日 予定:3月22日監督トーク
【長野 松本CINEMAセレクト】
4/7(日) 予定:監督トーク
山形国際ドキュメンタリー映画祭2023(ともにある Cinema with Us)上映作品
2023年/⽇本/ドキュメンタリー/189分/DCP
配給協⼒・宣伝:リガード
公式サイト:http://doi-toshikuni.net/j/tsushima/
★2024年3⽉2⽇(⼟)よりKʼs cinemaほか全国順次公開
すべての夜を思いだす
脚本・監督:清原 惟
音楽:ジョンのサン&ASUNA
ダンス音楽:mado&supertotes,ESV
出演:兵藤公美、大場みなみ、見上 愛、内田紅甘、遊屋慎太郎、奥野 匡
東京郊外、多摩ニュータウン。
大きな樹の下で、それぞれの楽器を奏でる人たち。
大型団地の朝が始まる。
その日、誕生日を迎えた知珠(兵藤公美)。
友人からの転居通知の葉書を手に出かける。まず寄ったのは、ハローワーク。経験を活かして着物の着付の仕事を希望しているが無いと言われる。友人の転居先である聖ヶ丘を目指して歩いていく途中、覗いた和菓子屋で、元の同僚に声をかけられる。知珠が人減らしで辞めさせられて、人手が足りなくて大変なこともあると言われる。なんとも恨めしい。友人の家を探す途中で、若い女性がダンスするのを真似てみる・・・
ガス検針員の早苗(大場みなみ)。
いつも回る諏訪団地で、ベランダからお婆さんが声をかけてきて蜜柑をくれる。同じ棟に暮らす老人が、早朝から行方がわからないので見かけたら家族のもとに届けてほしいと頼まれる。見つけた老人を送り届けようとするが、家は反対方向の永山だという。昔、住んでいたらしい家に連れていかれる・・・
大学生の夏(見上愛)。
生まれ育ったこの街で今日もダンスをし、友人に会い、カフェでお茶をする。
違うのは、いつも近くに居た友人の彼がもういないこと。一回忌の今日、亡き彼の実家に、写真の現像引き換え券を届けにいくが、彼の母親から「あなたが引き換えて」と言われる。引き取った写真に映っていたものを見て、夏は彼と過ごした花火をした冬の夜を思い出す・・・
夕方、多摩市役所の「男性は無事発見されました」というアナウンスが流れる・・・
冒頭、赤いツツジが脇に咲く広い坂道が映り、続いて、京王線と小田急線が並行して走る姿。多摩ニュータウンに程近い、高幡不動に住んでいる私には馴染み深い風景。55年前、百草団地に引っ越してきた時には、多摩ニュータウンに団地が立ち始めているのがすぐ眼下に見えましたが、当時は、バスの便も悪く、車なら10数分で行ける多摩センターも遠い場所でした。妹が車を運転するようになってからは、よく家族で四季折々の自然を楽しみに行ったものです。それが、25年前に多摩モノレールが出来て、高幡不動から14分で行けるようになって、ぐっと近い場所になりました。
本作は、清原惟監督が幼稚園の頃に住んでいた多摩ニュータウンの中でも初期に造成されたエリアで撮影されています。木も生い茂り、すっかり落ち着いた団地。
主演の3人の女性は、直接、言葉を交わすことはないけれど、知珠が迷いながら歩いている姿を早苗が見かけたり、夏が踊るのを遠くで真似て知珠が踊っているのに夏が気付く・・・など、さりげない形で触れ合うことが描かれています。私たちも、気が付かないうちに経験している日常。
認知症で徘徊しているおじいさんを演じたのは、アッバス・キアロスタミ監督の遺作『ライク・サムワン・イン・ラブ』の主演を務めた奥野匡さん。すっかりおじいさんになりました。(成りきっているのかもですが)多摩市役所のアナウンスも、ほんとうにあるそうです。
初長編の前作『わたしたちの家』から2作品連続ベルリン国際映画祭に出品。最新作『すべての夜を思いだす』は、2023年/第73回ベルリン国際映画祭フォーラム部門出品の後、日本に先駆け北米公開を果たしています。何気ない日常が、静かに心に響きます。(咲)
◆初日舞台挨拶
3月2日(土) 18:25の回終了後
会場:ユーロスペース(東京都渋谷区円山町1-5 KINOHAUS 3F)
登壇者(予定):清原惟監督、兵藤公美、大場みなみ、内田紅甘、遊屋慎太郎
第26回PFFスカラシップ作品
2022年/日本/116分
配給:一般社団法人PFF
公式サイト:https://subete-no-yoru.com/
★2024年3月2日(土)より渋谷ユーロスペースにて公開ほか全国順次公開
ストリートダンサー 原題:Street Dancer 3D
監督:レモ・デソウザ(『フライング・ジャット』)
出演:ヴァルン・ダワン(『スチューデント・オブ・ザ・イヤー 狙え! No.1!!』)、シュラッダー・カプール(『サーホー』)、プラブデーヴァー(『Rラージクマール』)、ノーラー・ファテーヒー(『バーフバリ伝説誕生 完全版』)
ロンドンを舞台に、インド系移民とパキスタン系移民の2つのダンスグループが、世界一のダンサーを決めるダンス大会「グラウンド・ゼロ」で、優勝を競う物語。
ロンドンで生まれ育ったインド人のサヘージ(ヴァルン・ダワン)は、インド系の仲間たちと「ストリート・ダンサー」というチームでダンスを踊っている。ダンスで膝を痛めた兄のインデル(プニト・パタク)が子どもたちにダンス指導ができるようにとダンススタジオを用意する。自分で踊れなくなったインデルにとって、弟サヘージがダンス大会「グラウンド・ゼロ」で優勝することが夢だ。
一方、パキスタン系移民の娘イナーヤト(シュラッダー・カプール)は、「ルール・ブレイカーズ」というグループを率いて踊っている。
超絶ダンサーのアンナー(プラブ・デーヴァー)がオーナーを務めるレストランで、二つのダンスグループは、インドとパキスタンのクリケットの試合を観戦しながら、喧嘩になる。「ここで喧嘩しないで、ダンス大会で競ってくれ」と仲介に入るアンナー。
ある日、イナーヤトは、アンナーがレストランの残り物を違法滞在している移民たちに配っていることを知る。違法移民の中には、国に帰りたくても帰れない人たちもいることを知ったイナーヤトは、ダンス大会の賞金10万ドルを彼らのために使いたいと、優勝を勝ち取ることを決意する・・・
イナーヤトは、ダンスをしている時には、はじけていて、服装もお腹が見えたりしているのですが、家に入る前には、そっとスカーフを被ります。パキスタン移民の家族が、ムスリムらしく暮らしている様子が垣間見れます。イナーヤトがダンスをしていることは、もちろん家族には秘密です。
サヘージは、両親の故郷であるインドのパンジャーブに行った時に、近所のシク教徒の青年4人からイギリスに行きたいとせがまれ、仲介業者からお金を貰って、自分のダンスの音楽隊だと偽って、イギリスに入国させます。けれども入国後は彼らと決別してしまいます。
その後、サヘージはライバルチームのイナーヤトが、アンナーを手伝って違法移民の人たちに食事を配っていることを知るのですが、その中に、自分が見捨てたシク教徒の4人がいて驚きます。彼らは仲介業者に言われた場所に行ったものの、仕事は得られず、パスポートも燃やし、髪の毛も切られていました。シク教徒にとって髪の毛を切ることはご法度。涙が出ます。
現在のイギリス首相リシ・スナク氏は、イギリスで初めてのアジア系首相。
父方の祖父母は英領インド帝国パンジャーブ地方のグジュラーンワーラー出身のヒンズー教徒で、印パ分離独立後にはパキスタン領となっています。
二つのダンスチームが、クリケットの観戦をしている時、応援しているのがインドなのかパキスタンなのかで、それぞれのルーツがわかりますが、見た目ではほとんどどっちがどっちかわかりません。 パンジャーブ地方が、印パ分離独立でインド側とパキスタン側に二つに分かれたごとく、広いインド亜大陸。多様な人たちがどっちに属しているかは、歴史的背景があってのことだと感じます。
本作では、イギリスで恵まれない人たちに炊き出しを行っているシク教徒系の団体Nishkam SWAT(Sikh Welfare and Awareness Team)の活動がベースになっていて、最後に実際の彼らの活動が映し出されています。
シク教といえば、お寺でのランガル(パンジャーブ語で無料で食事を提供するという意味)が有名。『聖者たちの食卓』(フィリップ・ウィチュス監督、2011年)を思い出しました。
さて、二つのチームは準決勝まで勝ち進み、いよいよ優勝を競うことになります。
結果は、映画をどうぞご覧ください。(咲)
インディアンムービーウィーク2023パート2 で上映されたものが、一般公開されることになりました。
2020年/インド/ヒンディー語/142分 (*ウルドゥー語も)
日本字幕翻訳:佐藤裕之
配給:SPACEBOX
公式サイト:https://spaceboxjapan.jp/streetdancer/
★2024年3月1日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開
2024年02月23日
落下の解剖学(原題:Anatomie d'une chute)
監督:ジュスティーヌ・トリエ
脚本:ジュスティーヌ・トリエ、アルチュール・アラリ
出演:ザンドラ・ヒュラー(サンドラ)、スワン・アルロー(ヴァンサン)、ミロ・マシャド・グラネール(ダニエル)、アントワーヌ・レナルツ(検事)
人里離れた雪山の山荘で、男が転落死した。
はじめは事故と思われたが、
次第にベストセラー作家である
妻サンドラに殺人容疑が向けられる。
現場に居合わせたのは、
視覚障がいのある11歳の息子だけ。
証人や検事により、夫婦の秘密や嘘が暴露され、
登場人物の数だけ<真実>が現れるが──。
ロケーションが美しいです。雪山に建つ家に住むのはサンドラ夫婦、視覚障害のある一人息子ダニエルとボーダーコリーのスヌープ。冒頭はインタビューに答える作家の妻サンドラ。上の階で作業する夫が大音量で音楽をかけています。階下の二人の会話がしばしば聞こえなくなります。なぜ注意しにいかないのだろうと疑問がわくほどです。
夫が亡くなって警察の捜査が入り、疑われたサンドラは旧知の弁護士に相談します。この二人の親密度が妙に高くて、いろいろ勘ぐってしまったり、最初の発見者の息子のショックを思ったりしてしまいます。法廷場面にけっこうな時間を割いていますが、こちらは彼女が犯人なのか、事故なのか、真実はどこに?と気にしているので、緊張は解けません。
上にあげた公式HPの紹介文の「登場人物の数だけ真実が」は、「観た人の数だけ真実が」に言い換えられそうです。
愛犬スヌープ役のボーダーコリーのメッシがパルムドッグ賞を受賞しました。(白)
息子ダニエルを演じたミロ・マシャド・グラネール、目が見えない役柄を見事に演じていました。中でも時折奏でるピアノ曲のアレンジが、時に激しく、時に寂し気にと変わり、気持ちを表していて素晴らしかったです。 そして、弾いていた曲のメインは、私が小学生高学年の頃にピアノを習っていた時に、「ブルクミュラー25の練習曲」の中で一番好きだった曲。イサーク・アルベニスのピアノ曲《スペインの歌》作品232の第1曲「前奏曲」として書かれた《アストゥリアス (伝説曲)(西語:Asturias (Leyenda))》です。アンダルシアのアラブ音楽に影響を受けた旋律だそうで、まだ10歳位だった私が心惹かれたとは!
あと興味深かったのは、裁判の場面で、サンドラがフランス語では自分の思うことをちゃんと伝えられないから、英語で話してもいいかとお願いした部分。フランス人と結婚し、長年、フランスで暮らしていても、微妙なことは言い表せないのだと思います。裁判の行方を固唾をのんで見守りました。(咲)
◎第76回カンヌ国際映画祭<最高賞>パルムドール受賞
◎第81回ゴールデン・グローブ賞 脚本賞/非英語作品賞2部門受賞
2023年/フランス/カラー/ビスタ/152分
配給:ギャガ
(C)LESFILMSPELLEAS_LESFILMSDEPIERRE
https://gaga.ne.jp/anatomy/
★2024年2月23日(金・祝)TOHOシネマズ シャンテ他全国順次公開
マダム・ウェブ(原題:Madame Web)
監督:S・J・クラークソン
脚本:クレア・パーカー S・J・クラークソン
撮影:マウロ・フィオーレ
音楽:ヨハン・セーデルクビスト
出演:ダコタ・ジョンソン(キャシー・ウェブ)、シドニー・スウィーニー(ジュリア・コーンウォール)、イザベラ・メルセド(アーニャ・コラソン)、セレステ・オコナー(マティ・フランクリン)、タハール・ラヒム(エゼキエル・シムズ)
ニューヨーク。救キャシー・ウェブは、救急救命士として日夜奮闘している。一人でも多くの命を救うため、危険と隣り合わせの現場にも赴く。
ある時、大きな事故に巻き込まれてしまい無事回復したものの、奇妙なデジャブに襲われる。正確にはこれから先に起きることが一瞬見えるようになったのだ。予知能力がなぜ自分に?
あるとき3人の少女が、黒いマスク姿の男に殺される場面が見えた。戸惑うキャシーだったが、知ってしまった以上何もしないわけにはいかない。謎の男が現れる前に、少女たちを安全な場所に移動させなくては。圧倒的な力を持つ男は、どこまでも追ってくる。その正体は?能力を得たキャシーと少女たちとの関わりは?
女性ばかりのグループ?マーベルの送り出す映画で初めてのはず、とわくわくしながら試写へ。ダコタ・ジョンソン演じるキャシーは救急救命士として有能、決断が早い、度胸もあります。救命士の仕事も見せつつ、話が進むにつれ、キャシーの出生の秘密や少女たちとの出会いの理由が明らかになっていきます。冒頭から激しいカーアクション、黒マスクの男から少女たちを守る戦いが続きます。初めから戦闘能力の高いほかのマーベルヒーローと違い、キャシーには予知能力があるだけ。それも好きなように操ることはできません。なんとかかわし続けるキャシー。最初まったく危機感のない少女たちにハラハラさせられますが、最後まで見守ってください。
敵役のタハール・ラヒムはアルジェリアからフランスに移民した両親のもとに生まれました。その風貌と演技力から世界中の監督との仕事が続いています。(白)
2024年/アメリカ/カラー/シネスコ/116分
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
(C) & TM 2024 MARVEL
© 2024 Sony Pictures Entertainment (Japan) Inc. All rights reserved.
https://www.madame-web.jp/
★2024年2月23日(金・祝)ロードショー
2024年02月17日
コヴェナント/約束の救出 原題:Guy Ritchie's the Covenant
監督・脚本・製作;ガイ・リッチー
出演:ジェイク・ギレンホール、 ダール・サリム、 アントニー・スター、 アレクサンダー・ルドウィグ、 ボビー・ス コフィールド、 エミリー・ビーチャム、 ジョニー・リー・ミラー
2018年、アフガニスタン。タリバンの武器や爆弾の隠し場所を探す部隊を率いる米軍のジョン・キンリー曹長は、アフガン人通訳として非常に優秀だが簡単には人の指図を受けないアーメッドを雇う。通訳には報酬としてアメリカへの移住ビザが約束されていた。部隊は爆発物製工場を突き止めるが、タリバンの司令官に大量の兵を送り込まれ、キンリーとアーメッド以外は全員殺される。キンリーも腕と足に銃弾を受け瀕死の状態となるが、身を潜めていたアーメッドに救出される。アーメッドはキンリーを運びながら、ひたすら山の中を100キロ進み続け、遂に米軍の偵察隊に遭遇する。7週間後、回復したキンリーは妻子の待つアメリカへ帰るが、アーメッドと家族の渡米が叶わないばかりか、タリバンに狙われ行方不明だと知って愕然とする。アーメッドを助けると決意したキンリーは、自力でアフガニスタンへ戻る・・・
険しい山道を、何度も危ない目に逢いながら瀕死のキンリーを100キロもの距離を運び、無事米軍に引き渡したアーメッド。身体が回復し米国の家族のもとに帰ったキンリーは、アーメッドに約束の米国ビザが下りてないことを知って、恩に報いる為、自費でアーメッドを探しに危険を承知でアフガニスタンに戻ります。この部分だけを捉えれば美談。ガイ・リッチー監督が、ドキュメンタリーで知った実話をもとに映画化したのは、決して美談だけを描きたかったわけではないと思います。
そも、なぜ米軍がアフガニスタンに侵攻したのか。国の政策で派兵される人たちも気の毒ですが、ソ連軍が去ったと思ったら、今度は米軍と、落ち着かない国土に暮らすアフガニスタンの人たちのことを思うと胸が痛みます。そして、米軍撤退後に、タリバンの復権。大国の身勝手な政策が及ぼす影響の大きさにも思いが至ります。タリバン復権で、芸術が否定され、女性の権利も後退。米軍に通訳として協力した多くのアフガニスタンの人たちも身の危険にさらされているという現実があります。
世界に目を向けてみれば、ロシアのウクライナ侵攻、イスラエルのガザ侵攻・・・等々。犠牲になるのは、戦場になった地の庶民。戦争に加担したくなくても徴兵という形で逃れられない人たちも大勢います。それを本作を観て思い起こしてほしいと切に願います。(咲)
2022年/アメリカ/英語/123分/カラー/スコープ
字幕翻訳:松崎広幸
配給:キノフィルムズ
公式サイト:https://www.grtc-movie.jp/
★2024年2月23日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほかにて全国ロードショー
マリア 怒りの娘 原題:LA HIJA DE TODAS LAS RABIAS
(C)Felipa S.A. - Mart Films S.A. de C.V. - Halal Scripted B.V. - Heimatfilm GmbH + CO KG - Promenades Films SARL - Dag Hoel Filmprooduksjon as - Cardon Pictures LLC - Nephilim Producciones S.L. ‒ 2022
監督:ローラ・バウマイスター
出演:アラ・アレハンドラ・メダル、バージニア・セビリア、カルロス・グティエレス、ノエ・エルナンデス、ダイアナ・セダノ
中米ニカラグア、マナグア湖そばの広⼤なゴミ集積場。11歳のマリア(アラ・アレハンドラ・メダル)は、風が舞う中、ゴミの中から残飯を拾って家に帰る。子犬たちと戯れていると、⺟親のリリベス(バージニア・セビリア)から、「売り物よ。情がわくから可愛がっちゃダメ」と言われる。
政府がゴミ収集事業の⺠営化を決定する。リリベスが廃品を売りに集積場に行くが、民営化反対の抗議活動の影響で、ここでは引き取れないと言われる。リリベスは知⼈夫婦(ノ エ・エルナンデス、ダイアナ・セダノ)が営むリサイクル施設にマリアを預け、街に出かけていく。その施設では身寄りのない⼦どもたちが廃棄物のリサイクル作業を⼿伝っていた。タデオという少年(カルロス・グティエレス)が、字を教えてくれて、優しくかまってくれる。ニュースで映し出された抗議デモで負傷した人たちの姿に、戻ってこない母が心配になり、 マリアはタデオの手助けを得て、施設を抜け出し母を探す旅に出る・・・
これまで製作された⻑編映画はわずか数本のニカラグア出身の女性監督による初監督作品。
監督:ローラ・バウマイスター LAURA BAUMEISTER
1983年、ニカラグア⽣まれ。映画監督、社会学者。 メキシコの国⽴映画学校・CCC映画センター(Centro de Capacitacion Cinematografica) で映画制作を学び、 これまで数本の短編を制作。短編『Isabel Im Winter』 (2014 年/22分/メキシコ・ドイツ/ドイツ語/⽇本未 公開)は、2014年カンヌ国際映画祭批評家週間で上映された。本作『マリア 怒りの娘』で⻑編デビューを果たす。
「欲しいものは自分で勝ち取れ」という母親の言葉を胸に、少女から大人の女性へと育っていく姿を圧倒的な映像で描いています。 マリアを演じたアラ・アレハンドラ・メダルの存在感が凄いです。当初予定していたマリア役の少女が、コロナ禍で撮影が延びる中、成長してしまったので、当初エキストラで参加予定だったアラ・アレハンドラ・メダルが抜擢されたのだそうです。
母リリベスを演じたバージニア・セビリアも、必死に社会の中で抗う姿と、マリアの夢に出てくる妖艶ともいえる子を思う姿の対比が素晴らしいです。
楽曲は、フランス映画『燃ゆる⼥の肖像』などを担当したパラ・ワン(ジ ャン=バティスト・デ・ラウビエ)とアーサー・シモニーニが担当。母と娘を描いた本作を、しっとりと盛り立てています。
環境問題や児童労働という、ほかの国でもあることを織り込みながら、なかなか目にすることのないニカラグアの風景を映し出していて、興味を惹かれました。 (咲)
2022年/ニカラグア、メキシコ、オランダ、ドイツ、フランス、ノルウェー、スペイン/91分/スペイン語
字幕:田渕貴美子
配給:ストロール
公式サイト: https://strollfilms.com/daughter
★2024年2月24日(土) ユーロスペースほか全国順次公開
2024年02月16日
ネクスト・ゴール・ウィンズ(原題:Next Goal Wins)
監督:タイカ・ワイティティ
脚本:タイカ・ワイティティ、イアン・モリスン
撮影:ラクラン・ミルン
音楽:マイケル・ジアッキノ
出演:マイケル・ファスベンダー(トーマス・ロンゲン)、オスカー・ナイトリー(タヴィタ)、エリザベス・モス(ゲイル)、カイマナ(ジャイヤ)
アメリカ領サモアのサッカー代表チームは、2001年のWC予選で0対31という記録的な大敗を喫した。創設以来、試合で得点したことがない最弱チームだ。次の予選が近づき、サッカー協会の会長は新しいコーチを招へいした。言動の粗暴さから、チームをクビになったトーマス・ロンゲンがやってくる。何事もゆるやかなサモアの暮らしやチームにいらだつトーマスは、チームの立て直しを図る。鬼コーチは世界最弱のサッカーチームを鍛え直し、悲願の1点をあげることができるのか。
実話を元に、ハリウッドでひっぱりだこのタイカ・ワイティティ監督が映画化。
サモアというと、みんなのうたの「♪サモアのしま、楽しいしまよ~♪」というフレーズが浮かびます。その歌のまま明るく楽しく暮らしている島では、怒鳴り散らし、椅子を放り投げる鬼コーチは、すっかり浮きまくっています。しかし、有望な選手を見つけ出す目は曇っていません。マイケル・ファスベンダーが、いつものセクシーな空気を消してちょっとわけありなサッカー・コーチを演じています。愛娘の動画に微笑んだかと思えば、別れた妻とその彼氏にげんなりし、チームメイトに溶け込むまで、山あり谷ありの毎日です。
サッカーチームの面々も個性豊かで、フォワードのジャイヤは第3の性”ファファフィネ”、トーマスと一番関わります。演じるカイマナも”ファファフィネ”として生きています。ワイティティ監督のユーモアと愛がたっぷりの作品をお楽しみください。エンドロールにモデルの選手たちの写真が出ますので最後までお席で。(白)
2023年/イギリス、アメリカ/カラー/シネスコ/104分
配給:ディズニー・ピクチャーズ
(C)2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.
https://www.searchlightpictures.jp/movies/nextgoalwins
★2024年2月23日(金・祝)公開
2024年02月11日
アリラン ラプソディ 〜海を越えたハルモニたち〜
2024年2月17日(土)ロードショー 新宿K's cinema より 全国順次公開
他の上映情報
川崎に生きるハルモニたち 在日一世のおばあさんたちの歴史
劇場公開に先駆けて、映画の舞台となった川崎市にて 2023/12/16(土)〜22日(金)川崎市アートセンターで特別公開があった。
監督:金聖雄
出演:川崎市のハルモニたち
韓国語でおばあさんのことをハルモニという。戦争に翻弄され、生きる場を求めて日本海を渡り、川崎市桜本にたどりついた在日一世のハルモニたち。たどり着いた桜本でささやかにそしてたくましく生きてきた。波乱万丈の人生を歩み、朝鮮半島の故郷への思いも、貧困と差別の記憶も封印してきた。老いてようやく文字を学び、歴史を知り、静かに、そして力強く生きている。穏やかな老後を送るハルモニたちが波乱万丈の半生を語る。ハルモニたちは戦争を経験した最後の世代。ハルモニたちが、今、語っておきたいことは?
監督は在日二世の金聖雄。デビュー作品『花はんめ』(2004年)の撮影で桜本に通い始めて四半世紀。「ハルモニたちの過去と今をきちんと記録しておかなければ」との思いをもち完成させた。想像を絶する苦労をしてきたハルモニたちだけど、今はシワいっぱいの笑顔で語る、チャーミングな彼女たちの姿を映像に残した。
監督 金 聖雄(きむ そんうん)
1963年、大阪・鶴橋生まれ。『花はんめ』以降の作品は『空想劇場』(2012)に続き、冤罪をテーマにした『SAYAMA みえない手錠をはずすまで』(2013)、『袴田巖 夢の間の世の中』(2016)、『獄友』(2018)、『オレの記念日』(2022)の4作品。『SAYAMAみえない手錠をはずすまで』では毎日映画ドキュメンタリー映画賞受賞。『オレの記念日』は、全州国際映画祭に参加、フランクフルト ニッポン・コネクションではニッポン・ドックス賞受賞。時間をかけた取材、被写体に寄り添うあたたかな眼差しが国内外で評価されている。
金監督からのMessage
「生きていて良いことなんてひとつもなかった」人生の終盤を迎えたハルモニが振り絞ったひと言だ。植民地時代、解放、朝鮮戦争……。差別と貧困の中、ハルモニたちはただ生きる場所を求め、命をかけて何度も海を越えた。そのハルモニが完成した映画を観た後、こう語ってくれた。「昔の苦労を思い出したけど、自分ひとりで知ってるより、みんなに知ってもらってありがたかった」もうひとりのハルモニは「私たちの映画を観にきてくれてありがとう」そう言って試写会にきた人たちを迎えてくれた。その顔はにこやかでとても誇らしげに見えた。
「映画をつくってよかった」と、心から思えた。映画ってなんだろう。近ごろ、作家性や芸術性などどうでも良いと思ってしまう。監督としては失格かもしれない。ハルモニたちのシワいっぱいのチャーミングな笑顔を見られるだけで、ちょっとだけ救われた気持ちになる。
その深いシワの奥に刻まれた歴史ごと映画を楽しんでもらえれば幸い。この映画は応援団のみなさんからあたたかく力強いエールをいただき700人を超える個人・団体から寄せられた協力金によって製作いたしました。
『花はんめ』で金監督のことを知った。その後の『SAYAMA みえない手錠をはずすまで』(2014)、『袴田巖 夢の間の世の中』(2016)、『獄友』(2018)、『オレの記念日』(2022)という、一連の免罪を扱った作品を観て、金監督の心意気、力強さ、優しさを感じる作品群に共感を感じてきた。そして、桜本を25年に渡って取材した記録をまとめたこの作品。波乱万丈の人生を送ってきたハルモニたち。差別や貧困の中で生きてきて、同じような体験をした仲間たちを得、笑いあったりするハルモニ達の姿を観て少し嬉しかった(暁)。
2023年/日本/カラー/ビスタ/2h05/DCP
最新情報(2024年3月27日現在)
東京
「シネマ・チュプキ・タバタ」 3/31(日)まで 連日15:15から上映
*日本語字幕・音声ガイドあり
*日本で唯一のユニバーサルシアター。20席なので予約がおすすめ
横浜
「横浜シネマリン」~ 4/5(金)まで 連日10:00から上映
京都
「京都シネマ」 3/29(金)〜 4/11(木)
上映開始時間 3/29 12:10から、3/30〜4/4 12:25から、4/5〜11 16:35から
*初日3月29日は金監督の舞台あいさつあります!
大阪
「第七藝術劇場」 3/30(土)〜 4/12(金)
上映開始時間 3/30 12:30から、3/31〜4/5は12:00から、4/6〜12は10:00から
*初日30日と31日は金監督の舞台あいさつあります!
*「シアターセブン」(第七藝術劇場と同ビル5F)にて
デビュー作の『花はんめ』上映 4月6日(土)〜12日(金)の1週間
上映開始時間は4/6と4/7 13:40から、4/8〜12 13:20から
神戸
「元町映画館」 4/6(土)〜 4/19(金)
上映開始時間 4/6〜12 10:30から、4/13〜19 13:10から
*初日6日は金監督の舞台あいさつあります!
6月中旬以降
名古屋「シネマスコーレ」
最新情報は公式サイトにアップしています。
https://arirangrhapsody.com/
りりィ私は泣いています
2/16(金)~アップリンク吉祥寺、他にて全国順次公開
スタッフ・キャスト
企画・監督・撮影:高間賢治
構成・録音・編集:熊谷達文
整音:光地拓郎 山本逸美 田中修一
スーパーバイズ:神原健太朗
出演:りりィ、齊藤洋士、高橋和也、根岸季衣、山崎ハコ、JUON、寺本幸司、研ナオコ、深沢剛、谷口幸生、豊川悦司、岩井俊二
「私は泣いています」などのヒット曲で知られ、2016年に64歳でこの世を去るまでシンガーソングライターとして活動しつづけたりりィ。女優としても『処刑遊戯』『リップヴァンウィンクルの花嫁』などに出演した。
撮影監督の髙間賢治は「りりィ+洋士」のライブを見て感動し、2013年から10年撮り続けようとライブ公演を独力で記録していた。しかし、りりィの体調悪化で2015年に中断を余儀なくされる。映像は数年放置されたが、熊谷達文の編集で「りりィに会いたい」というDVDが2022年に作られ、ユニバーサルミュージックから発売された。
この作品はそのライブ映像に、生前りりィと交流のあった高橋和也、根岸季衣、山崎ハコ、研ナオコ、豊川悦司、岩井俊二、りりィを発掘した音楽プロデューサーの寺本幸司、りりィの息子であるミュージシャン・JUONらのインタビュー映像を加えて、在りし日のりりィの音楽性・人物像とその魅力を浮き彫りにした劇場用映画作品。
また、愛するパートナーを失い、絶望、挫折、喪失感を乗り越えようと苦闘するパートナー齊藤洋士の物語にもなっている。
りりィ(1952年2月17日〜 2016年11月11日)HPより
16〜17歳から新宿を中心に路上ライブを重ね、1972年20歳でアルバム「たまねぎ」でメジャーデビュー。シングル「私は泣いています」が87万枚を超える大ヒット。資生堂春のキャンペーンに採用された「オレンジ村から春へ」や「心が痛い」など多くのヒット曲がある。また、女優としては『夏の妹』(72/大島渚監督)や『処刑遊戯』(79/村川透監督)などに出演するが、80年代半ばよりしばしば活動休止。1997年のドラマ「青い鳥」をきっかけに数々の映画、ドラマに出演。『パークアンドラブホテル』(07/熊坂出監督)では主演を果たし、岩井俊二監督作品『リップヴァンウィンクルの花嫁』(16)では高崎映画祭助演女優賞を受賞した。
1999年からは齊藤洋士とユニットを組み「りりィ+洋士」としてライブ活動を続け、『火火』(高橋伴明監督)の主題歌を提供するなど活動を続けていた。
配給協力:村岡克彦(ファーイースト)、神原健太朗(ユーステール)
2023年製作/108分/日本
配給:渋谷プロダクション
スタッフ・キャスト
企画・監督・撮影:高間賢治
構成・録音・編集:熊谷達文
整音:光地拓郎 山本逸美 田中修一
スーパーバイズ:神原健太朗
出演:りりィ、齊藤洋士、高橋和也、根岸季衣、山崎ハコ、JUON、寺本幸司、研ナオコ、深沢剛、谷口幸生、豊川悦司、岩井俊二
「私は泣いています」などのヒット曲で知られ、2016年に64歳でこの世を去るまでシンガーソングライターとして活動しつづけたりりィ。女優としても『処刑遊戯』『リップヴァンウィンクルの花嫁』などに出演した。
撮影監督の髙間賢治は「りりィ+洋士」のライブを見て感動し、2013年から10年撮り続けようとライブ公演を独力で記録していた。しかし、りりィの体調悪化で2015年に中断を余儀なくされる。映像は数年放置されたが、熊谷達文の編集で「りりィに会いたい」というDVDが2022年に作られ、ユニバーサルミュージックから発売された。
この作品はそのライブ映像に、生前りりィと交流のあった高橋和也、根岸季衣、山崎ハコ、研ナオコ、豊川悦司、岩井俊二、りりィを発掘した音楽プロデューサーの寺本幸司、りりィの息子であるミュージシャン・JUONらのインタビュー映像を加えて、在りし日のりりィの音楽性・人物像とその魅力を浮き彫りにした劇場用映画作品。
また、愛するパートナーを失い、絶望、挫折、喪失感を乗り越えようと苦闘するパートナー齊藤洋士の物語にもなっている。
りりィ(1952年2月17日〜 2016年11月11日)HPより
16〜17歳から新宿を中心に路上ライブを重ね、1972年20歳でアルバム「たまねぎ」でメジャーデビュー。シングル「私は泣いています」が87万枚を超える大ヒット。資生堂春のキャンペーンに採用された「オレンジ村から春へ」や「心が痛い」など多くのヒット曲がある。また、女優としては『夏の妹』(72/大島渚監督)や『処刑遊戯』(79/村川透監督)などに出演するが、80年代半ばよりしばしば活動休止。1997年のドラマ「青い鳥」をきっかけに数々の映画、ドラマに出演。『パークアンドラブホテル』(07/熊坂出監督)では主演を果たし、岩井俊二監督作品『リップヴァンウィンクルの花嫁』(16)では高崎映画祭助演女優賞を受賞した。
1999年からは齊藤洋士とユニットを組み「りりィ+洋士」としてライブ活動を続け、『火火』(高橋伴明監督)の主題歌を提供するなど活動を続けていた。
配給協力:村岡克彦(ファーイースト)、神原健太朗(ユーステール)
2023年製作/108分/日本
配給:渋谷プロダクション
2024年02月08日
フィリピンパブ嬢の社会学
監督:白羽弥仁
原作:中島弘象
脚本:大河内聡
撮影監督:豊浦 律子/撮影:森﨑 真実
音楽:奈良部 匠平
出演:前田 航基(中島翔太)、一宮 レイゼル(ミカ)、ステファニー・アリアン、津田 寛治、近藤 芳正、田中 美里、飯島 珠奈、仁科 貴、浦浜 アリサ、勝野 洋
大学院生の中島翔太は、フィリピンパブで働く女性たちを論文の研究対象にし、生まれて初めてパブを訪れる。取材に通ううちに、フィリピンの家族に送金を続け明るく逞しく働くミカと親しくなる。フィリピンの家族にも紹介され、ますますミカを大切に思う翔太は、来日するため偽装結婚していたミカの事情を知り、こわごわヤクザの元に乗り込むことになった…。
本作は大学院生と、フィリピンパブ嬢の恋模様をコメディタッチで描きながら、多文化共生の未来も考えさせる内容です。ミカの家族思いに感心しながらも、一族の絆の強さにこの先大変だねとつい老婆心も出てしまいます。演じる前田 航基さん、一宮 レイゼルさんのお二人が応援したくなる好演です。これがほぼ実話を元にしているというのにびっくり、原作はさらに詳しいので、そちらもご覧ください。
日本ではたくさんの外国から来た人たちが働いています。飲食店や病院、建築現場でもよく見かけます。超高齢化社会に突入した日本が、日々支えられていると言っても過言ではありません。農業・漁業・工場などでたくさん働いている技能実習生の待遇改善も実行されますように。(白)
白羽弥仁監督&中島弘象さんにお話を伺いました。
楽しかったインタビューはこちら
『フィリピンパブ嬢の社会学』中島弘象著(新潮新書 2017年)
『フィリンピンパブ嬢の経済学』中島弘象著(新潮新書 2023年)
タイトルを見て思い出したのが、1983年頃に商社で労働組合の本部役員をしていた時に、数回連れていってもらったフィリピンパブのことでした。名古屋では、まだ少女のような娘たちも何人かいて、客の男たちとチークダンス。過激なショーがあるらしいと連れていかれた四ツ谷のパブでは、ショータイムにきわどい衣装で8人程が登場。ちらほら見えそうになる胸を気にしている子もいました。銀座の高級クラブには、実はよく上司に連れていってもらっていて、そこで働くホステスさんたちと比べると、フィリピンの若い女の子たちは、家族のために意に沿わない仕事をしているように感じてしまったものです。
本作でも、フィリピンで娘の稼ぐお金をあてにしているらしい大家族が出てきました。香港などで家政婦として働くフィリピン女性も多いし、ほかの国と違って、外国に出稼ぎに行くのは女性の方が多いのは、なぜなのでしょう。
1980年代は、タレントビザでフィリピンの女性たちは来日していたようですが、今は違うそうです。思えば、銀座の高級クラブも、1990年代に入ると、中国などの留学生に出会うことが多くなったのを思い出します。
原作者の中島弘象さんは、修論の研究対象が恋愛対象になってしまったそうですが、勤務していた会社の先輩男性で、フィリピンパブに足繁く通ううちに、結婚したという人もいました。島国の日本にも、今は世界各地の人たちが普通に暮らす時代になったのを感じます。 主役を演じた一宮レイゼルさんも、12歳から日本で暮らす日本語も英語も流暢なトリリンガル。とても可憐で、彼女を起用できて、本作はラッキーだったと思いました。(咲)
2023年/日本/カラー/114分
配給:キョウタス
https://mabuhay.jp/
★2024年2月17日(土)ロードショー
2024年02月07日
テルマ&ルイーズ 4K 原題:TELMA&LOUISE
監督・製作:リドリー・スコット
出演:スーザン・サランドン、ジーナ・デイヴィス、ハーヴェイ・カイテル、マイケル・マドセン、ブラッド・ピット
アメリカ中西部アーカンソー州。平凡な主婦のテルマ(ジーナ・デイヴィス)とダイナーでウェイトレスをしている独身のルイーズ(スーザン・サランドン)は大の仲良し。週末、ルイーズは、いつも夫に縛られているテルマを誘ってドライブ旅行に出る。途中で立ち寄ったバーで、解放感からテルマが男と踊るうち、外に連れ出されレイプされそうになる。ルイーズは咄嗟に護身用に預かっていた拳銃で男を射殺してしまう。二人の逃亡劇が始まる。国境を越えてメキシコに逃げると決意するルイーズ。恋人のジミーから金を調達し、メキシコに向かう途中で、大学生と名乗るハンサムなJD(ブラッド・ピット)を車に乗せる。二人は警察に指名手配され、地元の警察からFBIまで、州を越えて追われていることを知る。さて、無事二人は逃亡できるのか・・・
1992年、第64回アカデミー賞で6部門にノミネートされ脚本賞を受賞した作品。2016年には、半永久に保存する価値のある作品が選ばれるアメリカ国立フィルム登録簿に登録されています。今回、リドリー・スコット監督の監修のもとオリジナルネガからの4Kレストアが実現しました。
1991年10月に日本で劇場公開された折に観ているのですが、「ぶっ飛んだ女性二人の逃亡劇」としか記憶にありませんでした。ブラピの出世作だそうですが、出ていたの?という認識。すみません。(いや~若いです。)
あらためて拝見。まだ携帯電話がなくて、電話して局留めで送金を頼むなど、時代を感じさせるアイテムはあるものの、今観ても色あせない面白さ。ストーリー展開にわくわくしました。
オクラホマからテキサスを通らないでメキシコに行きたいというルイーズ。そんなことは無理なのですが、実は、テキサスでルイーズにはかつてレイプされた過去があった次第。
10代から専業主婦のテルマは、夫に縛られる生活を送ってきていて、アメリカでもそんな時代だったのだとあらためて思いました。夫に黙って旅に出るのですが、出かける時に、かつて夫から護身用に渡された拳銃を、ポンと鞄に入れます。それをルイーズに預けたのが、レイプしようとした男を撃ち殺すことになってしまい、そこからどんどん大胆な行動を起こしていきます。これまで鬱積していたものが爆発したかのように! 最後の場面が痛快です。(咲)
1991年/アメリカ/129分
配給:アンプラグド
公式サイト:https://unpfilm.com/thelma_louise/
★2024年2月16日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほか全国順次公開
THE WILD 修羅の拳 原題:더 와일드: 야수들의 전쟁 英題:THE WILD
監督:キム・ボンハン 脚本:キム・ジュマン 製作:ナム・ジウン
撮影:キム・ジェソン 編集:キム・ウヒョン、キム・ヒョンソ 音楽:モク・ヨンジン
出演:パク・ソンウン、オ・デファン、オ・ダルス、チュ・ソクテ、ソ・ジヘ
ボクサーのウチョル(パク・ソンウン)は、私設の違法賭博場で試合中に相手を誤って殺してしまい、8年の懲役刑となる。模範囚として釈放され、静かに生きたいと願うが、古き友人で犯罪組織の首領ドシク(オ・デファン)から、また一緒に仕事をしようと誘われる。ドシクが用意してくれた部屋にいくと、そこにはコールガールのミョンジュ(ソ・ジヘ)がいた。その後、ウチョルはミョンジュを襲った男を殴りつける。その男は汚職刑事のジョンゴン(チュ・ソクテ)だった。ドシクが彼と取引し逮捕を免れるが、その代わりに、脱北者で構成された麻薬密売組織を仕切るガクス(オ・ダルス)を消すよう命じられる・・・
ウチョルの罪は殺人とはいえ、試合中の事故。犯罪組織とは離れて平穏に暮らしたいのに、偶然知り合った女性を助けるために、どんどん悪の世界に引きずり込まれてしまいます。
ウチョルを演じたパク・ソンウンは、優しい面立ちなのに、最近の出演作『ザ・ガーディアン/守護者』でも組織のボス役でした。多くの映画で名脇役を務めてきましたが、本作では晴れて主役。普通の人になりたいのに、なれない悲しみを顔で伝えてくれます。
出てくるだけで可笑しいオ・ダルスもいい味出してます。ボスのドシクを演じたオ・デファンは、ドラマでも調子のいい男の役が多いです。
「こんな地方都市から抜け出してソウルにいきたい」という言葉がありましたが、海辺の素敵な町。どこなのか気になりました。(咲)
2023年/韓国/韓国語/カラー/シネマスコープ/5.1ch/110分
字幕翻訳:小西朋子
配給:クロックワークス
公式サイト:https://klockworx-v.com/wild/
★2024年2月16日(金) よりシネマート新宿ほか順次公開
フジヤマコットントン
監督:青柳拓
撮影:青柳拓、山野目光政、野村真衣菜
音楽:みどり
出演:「みらいファーム」のみなさま
甲府盆地の真ん中にある障害福祉サービスの事業所「みらいファーム」には幅広い年代の方々が通ってくる。ラジオ体操から始まる1日、一人一人がやりたいことをする。得意分野を見つけ出してマイペースで作業し、食事をし、お喋りして笑う。1日中絵を描いてもいいし、一人で考え事にふけってもいい。寝ていても起こされたりしない。1町歩の水田で作った米は子どもたちの給食になり、花はスーパーで売られ、社会とも関わっている。ファームで過ごす人たちのそんな日常を追う。
特に綿花の種をまいて育て、収穫して糸を紡ぎ、機織りをして製品になるまでが丁寧に映される。めぐさんの織物は好評で注文が絶えない。いつもの場所、いつものスタッフと友達、安心できる居場所がここにある。
コロナ禍中、自ら配達員のアルバイトに応募、ドキュメンタリー『東京自転車節』として記録した青柳拓監督。”相模原障害者施設殺傷事件”に衝撃を受けて、植松死刑囚の言葉へのアンサーとして制作したのだそうです。自転車節では一人でしたが、今回は対象の人数が多いので、応援を頼んでカメラマン3人での撮影。監督のお母さんがこちらの職員だったことから、子どものころからよく訪ねて入所者の方々に遊んでもらっていたとか。なじみのある方々なので、よけいほっこりとした雰囲気が出たのかもしれません。
それぞれのやり方、スピードで作業にいそしみながら仲間と結婚や恋愛の話もしています。ポツンともらす一言、二言にハッと胸をつかれました。こういう場所が日本中にあってほしいです。(白)
2023年/日本/カラー/95分
配給:ノンデライコ
(C)nondelaico/mizuguchiya film
http://fujiyama-cottonton.com/
★2024年2月10日(土)ポレポレ東中野ほか全国順次公開
2024年02月06日
一月の声に歓びを刻め
監督・脚本:三島有紀子
撮影:山村卓也、米倉伸
音楽:田中拓人
出演:前田敦子(れいこ)、誠を哀川翔(誠)、カルーセル麻紀(マキ)、坂東龍汰(トト・モレッティ)、片岡礼子(美砂子)、宇野祥平(正夫)、哀川翔(誠)、原田龍二(龍)、松本妃代(海)、長田詩音(さら)、とよた真帆(真歩)
洞爺湖畔で一人暮らしているマキの元に、娘の美砂子夫婦と孫娘のサラがやってきてお節料理を囲む。マキはもう一人の娘、れいこを幼いころ亡くしていた。それをきっかけにマキは自分の「男性」性を嫌悪し、女性として生きて来た。美砂子はそんな父を受け入れられず、いまだに「お父さん」と呼び、娘のさらに非難されている。
八丈島の牛飼いの誠の娘、海が身重の身体で帰ってきた。妻を早くに亡くし男手一つで育てた誠だったが、結婚したことも知らされなかった。海の部屋で離婚届を見つけた誠は仰天するが、慮って事情を尋ねることができない。
大阪堂島。れいこは元恋人の葬儀に出席するため、故郷に戻ってきた。一人歩いていて「レンタル彼氏」だという若い男に声をかけられる。子どものころ性被害に遭ったれいこは、他人の身体に触れられずにいたが「トト・モレッティ」と名乗る彼に興味を覚えて付き合うことにした。
三島監督は自分の体験を元にこの映画を作られたそうです。生と性、罪をテーマに3つの物語が展開します。洞爺湖の中島、八丈島、大阪堂島と3つの島が舞台です。島をつなぐのが船、「船で向かう者」「船を待つ者」「船でやってきた者」がそこに登場し、ゆるやかなつながりがあります。
観ていて驚いたのは、当時80歳のカルーセル麻紀さん。最初の物語の主人公を、零下20度の厳寒の中ワンカーットワンシーンで演じたこと。亡くなった娘を思っての慟哭のシーンにくぎ付けになりました。哀川翔さんの娘を思う普通の父親もとてもはまっていましたし、最後の堂島編の前田敦子さんは迷った末に引き受けたこの役で、またこれまでのどの役とも違う顔、表情を見せてくれています。性被害が、本人だけでなく、周りの人の人生に長く大きな影響をもたらすということをいまさらながら思いました。
タイトルは過去の傷や悲しみを抱えていても「再スタートの1月に内や外から聞こえる声を歓びたい」ということのようです。(白)
2024年/日本/カラー/シネスコ/118分
配給:東京テアトル
(C)bouquet garni films
https://ichikoe.com/
★2024年2月9日(金)ロードショー
2024年02月04日
風よ あらしよ 劇場版
2024年2月9日(金)より 新宿ピカデリーほか全国順次公開 劇場情報
100年前、自由を求め闘った伊藤野枝の生涯
演出:柳川 強
脚本:矢島弘一
音楽:梶浦由記
制作統括:岡本幸江
原作:村山由佳『風よ あらしよ』(集英社文庫刊)
出演
吉高由里子 永山瑛太 松下奈緒
美波 玉置玲央 山田真歩 朝加真由美 山下容莉枝
渡辺哲 栗田桃子 高畑こと美 金井勇太 芹澤興人 前原滉 池津祥子
音尾琢真 石橋蓮司 稲垣吾郎
2022年にNHKで放送された特集ドラマ「風よ あらしよ」の劇場版。
100年前、筆の力で結婚制度や社会道徳に異議を申し立てた女性伊藤野枝。関東大震災後(1923年、大正12年)の混乱のなか憲兵に虐殺された野枝の波乱に満ちた生涯を描く。
「女は、家にあっては父に従い、嫁しては夫に従い、夫が死んだあとは子に従う」が女の生きる道とされた大正時代。1895年(明治28年)1月21日福岡で産まれた伊藤野枝(吉高由里子)は、貧しい家を支えるための結婚を断り上京。平塚らいてう(松下奈緒)の「元始、女性は太陽であった」という言葉に感銘を受け、手紙を送ったところ、「青鞜」に参加することになり、男女差別や結婚制度、社会道徳に異議をとなえ、社会的矛盾を青鞜に綴るようになった。婦人解放を唱え闘う野枝と青鞜社の仲間たち。
野枝の文才を見出した最初の夫辻潤(稲垣吾郎)、その後パートナーになった無政府主義者の大杉栄(永山瑛太)との出会い。何人もの子供たち。
これからという28歳の時に関東大震災が起こり、その混乱の最中、朝鮮人や社会運動家たちが殺されたが、大杉栄と伊藤野枝も1923年(大正12年9月16日)憲兵大尉の甘粕正彦らの手によって殺害された。
演出は吉高主演のNHK朝の連続テレビ小説「花子とアン」も手がけた柳川強。
本作を観て思い出したのが、『金子文子と朴烈(パクヨル)』。
関東大震災発生後、ほどなくして朝鮮人アナキストの朴烈と共に、治安警察法違反容疑で起訴された金子文子。無政府主義者として朴烈と共に国家権力に対して闘い、「何が私をこうさせたか -獄中手記」という自伝や記事から文才に溢れた女性であったことがわかります。伊藤野枝もまた、筆の力で社会の矛盾を語り、女性解放を訴えた女性。映画の最後に映ったご本人はどこにそんな力を秘めていたのかと思う雰囲気の可憐な方。
100年前に、こうした勇気ある活動をした女性たちがいて、その積み重ねで今があることを忘れてはならないと思います。まだまだ日本の女性の置かれた立場は満足のいくものではないのに、彼女たちのように声をあげる人が少ないようにも思えます。
それにしても、大震災後の混乱に乗じて無政府主義者や社会主義者というだけで虐殺された人たちがいたことに胸が痛みます。多くの朝鮮人が犠牲になったこととあわせて、忘れてはならない歴史です。(咲)
公式HP https://www.kazearashi.jp/
2023年製作/127分/G/日本
製作・配給:太秦 映像提供:NHK
100年前、自由を求め闘った伊藤野枝の生涯
演出:柳川 強
脚本:矢島弘一
音楽:梶浦由記
制作統括:岡本幸江
原作:村山由佳『風よ あらしよ』(集英社文庫刊)
出演
吉高由里子 永山瑛太 松下奈緒
美波 玉置玲央 山田真歩 朝加真由美 山下容莉枝
渡辺哲 栗田桃子 高畑こと美 金井勇太 芹澤興人 前原滉 池津祥子
音尾琢真 石橋蓮司 稲垣吾郎
2022年にNHKで放送された特集ドラマ「風よ あらしよ」の劇場版。
100年前、筆の力で結婚制度や社会道徳に異議を申し立てた女性伊藤野枝。関東大震災後(1923年、大正12年)の混乱のなか憲兵に虐殺された野枝の波乱に満ちた生涯を描く。
「女は、家にあっては父に従い、嫁しては夫に従い、夫が死んだあとは子に従う」が女の生きる道とされた大正時代。1895年(明治28年)1月21日福岡で産まれた伊藤野枝(吉高由里子)は、貧しい家を支えるための結婚を断り上京。平塚らいてう(松下奈緒)の「元始、女性は太陽であった」という言葉に感銘を受け、手紙を送ったところ、「青鞜」に参加することになり、男女差別や結婚制度、社会道徳に異議をとなえ、社会的矛盾を青鞜に綴るようになった。婦人解放を唱え闘う野枝と青鞜社の仲間たち。
野枝の文才を見出した最初の夫辻潤(稲垣吾郎)、その後パートナーになった無政府主義者の大杉栄(永山瑛太)との出会い。何人もの子供たち。
これからという28歳の時に関東大震災が起こり、その混乱の最中、朝鮮人や社会運動家たちが殺されたが、大杉栄と伊藤野枝も1923年(大正12年9月16日)憲兵大尉の甘粕正彦らの手によって殺害された。
演出は吉高主演のNHK朝の連続テレビ小説「花子とアン」も手がけた柳川強。
本作を観て思い出したのが、『金子文子と朴烈(パクヨル)』。
関東大震災発生後、ほどなくして朝鮮人アナキストの朴烈と共に、治安警察法違反容疑で起訴された金子文子。無政府主義者として朴烈と共に国家権力に対して闘い、「何が私をこうさせたか -獄中手記」という自伝や記事から文才に溢れた女性であったことがわかります。伊藤野枝もまた、筆の力で社会の矛盾を語り、女性解放を訴えた女性。映画の最後に映ったご本人はどこにそんな力を秘めていたのかと思う雰囲気の可憐な方。
100年前に、こうした勇気ある活動をした女性たちがいて、その積み重ねで今があることを忘れてはならないと思います。まだまだ日本の女性の置かれた立場は満足のいくものではないのに、彼女たちのように声をあげる人が少ないようにも思えます。
それにしても、大震災後の混乱に乗じて無政府主義者や社会主義者というだけで虐殺された人たちがいたことに胸が痛みます。多くの朝鮮人が犠牲になったこととあわせて、忘れてはならない歴史です。(咲)
公式HP https://www.kazearashi.jp/
2023年製作/127分/G/日本
製作・配給:太秦 映像提供:NHK
レディ加賀
監督:雑賀俊朗
脚本:渡辺典子 雑賀俊朗
撮影:百足尚浩
音楽:田渕夏海
主題歌:眉村ちあき「バケモン」
出演:小芝風花(樋口由香)、松田るか(石崎あゆみ)、青木瞭(松村康平)、中村静香(星野麻衣)、八木アリサ(カトリーヌ)、奈月セナ
(秋山美希)、佐藤藍子(白石朋子)、森崎ウィン(花澤譲治)、檀れい(樋口春美)
樋口由香は、加賀温泉にある老舗旅館「ひぐち」の一人娘。しかし稼業の旅館を継がず、小学生のときに魅了されたタップダンサーを目指し、一人上京していた。現実は思うようには運ばず、夢破れて実家に戻って来る。母はそんな娘に厳しくのぞみ、一から女将修行を始めさせる。不器用な由香は失敗続きだったが、旧友たちの励ましも受けくじけずに日々頑張っていた。
そんなときに加賀温泉を盛り上げるためのプロジェクトが発足した。自称天才プランナーの花澤譲治が由香のダンスに目を止める。あきらめたタップダンスをふるさとで生かせる!由香は若女将たちを集めてタップダンスの特訓を始めたが……。
旅館の女将たちによる「レディー・カガ」は10年前に発足した、ほんとにあるプロモーションチーム。加賀温泉を盛り上げる為に結成されたものです。これに着想を得て企画されたのが本作。小芝風花さんの真剣なタップダンスのシーンにご注目ください。撮影9か月前から練習を始めたという成果が表れています。若女将たちがズラリと並んで、色とりどりの着物にモップを手に踊る和風タップダンスも華やかな見どころです。由香の母役の檀れいさんの凛とした女将姿も素敵。
元旦の地震で大きな被害の出た能登地区。同じ石川県の加賀温泉郷も建物にいくらか被害はあったそうですが、現在は通常営業に戻っています。観光客が戻ることも応援の一つ、旅好き、温泉好きな方は映画を観て、それからお出かけください。暖かな「おもてなし」が待っています。(白)
◎配給収入の一部(5%)を義援金として石川県に寄付します、と発表。
2024年/日本/カラー/シネスコ/110分
配給:アークエンタテインメント
(C)映画「レディ加賀」製作委員会
https://ladykaga-movie.com/
https://twitter.com/ladykaga_movie
https://www.instagram.com/ladykaga_movie/
★2024年2月9日(金)新宿ピカデリー他全国ロードショー
身代わり忠臣蔵
監督:河合勇人
原作:土橋章宏「身代わり忠臣蔵」(幻冬舎文庫)
脚本:土橋章宏
音楽:海田庄吾
テーマ曲:東京スカパラダイス・オーケストラ テーマ曲 「The Last Ninja」(cutting edge / JUSTA RECORD)
出演:ムロツヨシ(吉良上野介/孝証)、永山瑛太(大石内蔵助)、川口春奈(桔梗)、林遣都(斎藤宮内)、北村一輝(徳川綱吉)、筧一郎(清水一学)、森崎ウィン(堀部安兵衛)、本多力(堀江半右衛門)、野波麻帆 ( りく)、尾上右近 (浅野内匠頭)、柄本明 (柳沢吉保)
嫌われ者の殿・吉良上野介は赤穂藩主 浅野内匠頭にいけずをしたうえ悪口雑言をあびせて、ブチ切れた内匠頭は思わず刀を抜いてしまった。江戸城内で刃傷沙汰はご法度。赤穂藩主は当然切腹、赤穂藩はお取りつぶしとなる。だが、吉良上野介も実は死んでしまっていて、殿を失った吉良家もお家存亡の危機に瀕していた。まだ生きているように見せかけながら、上野介にそっくりな弟の坊主・孝証(たかあき)が密かに身代わりとなる。孝証は、衣食住安心なうえ一目ぼれした桔梗のそばにいられることだし、と渋々引き受けることに。さらに、敵だったはずの赤穂藩家老・大石内蔵助と出逢って意気投合し、2人は共謀して討ち入りを阻止しようと…!?
あまりにも有名なこの事件を大胆に脚色、コメディ小説に書き換えたのは土橋章宏氏。『超高速参勤交代』は第38回日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞しています。2014年に映画化され、藩主役の佐々木蔵之介さんが走りに走りました。ご苦労を思いながらも大笑いしましたっけ。
ムロツヨシさんが真逆な二人を演じ分け、うまい俳優さんなんだと再認識。瑛太さん、遣都さんもこれまでとは違う顔を観た気がします。北村一輝さんの繋がり眉の家光にも吹き出しました。そういえば森崎ウィンさんは大河ドラマでこの前の第2代将軍秀忠を演じたのでした。ここでは熱血漢の堀部安兵衛。生粋のミャンマー人ですが全く違和感ありません。みんなアジア人ですものね。
豪華な布陣のコメディをまとめあげたのは、『総理の夫』『かぐや様は告らせたい 天才たちの恋愛頭脳戦 ファイナル』などの河合勇人監督。ちょっと変わった設定で笑える作品が多いですね。2007年台湾のジェイ・チョウが監督・出演した『言えない秘密』のリメイクも手掛け、今年公開になるようです。
お正月から暗い話題が続きましたが、この作品をお楽しみください。口八丁手八丁の身代わりが成功するや否や?!(白)
2024年/日本/カラー/119分
配給:東映
(C)2024「身代わり忠臣蔵」製作委員会
https://migawari-movie.jp/
★2024年2月9日(金)ロードショー
Firebird ファイアバード 原題:Firebird
監督・脚色ペーテル・レバネ
共同脚色 : トム・プライヤー、セルゲイ・フェティソフ
原作 : セルゲイ・フェティソフ
出演 : トム・プライヤー、オレグ・ザゴロドニー、ダイアナ・ポザルスカヤ
1977年、ソ連占領下のエストニアの空軍基地。間もなく兵役を終える二等兵セルゲイ(トム・プライヤー)の夢はモスクワで役者になることだ。そんなある日、パイロット将校のロマン(オレグ・ザゴロドニー)が着任し、セルゲイは部屋への案内係を担う。ロマンのカメラで一緒に写真を撮り、ロマンの部屋で現像する。チャイコフスキーを聴きながら、写真や演劇など共通の趣味で話がはずみ、「仕事を命じたことにするから泊まっていけ」と言われる。やがて二人の友情は愛へと変わっていく。当時のソ連では同性愛はタブーで、発覚すれば罪に問われる。一方、セルゲイの同僚で友人の女性将校ルイーザ(ダイアナ・ポザルスカヤ)も、秘書としてロマンに仕えるうちに彼に思いを寄せるようになっていた。そんな折、セルゲイとロマンの関係を怪しむクズネツォフ大佐は、二人の身辺調査を始める・・・
※ファイアバード 火・熱・太陽の象徴である“火の鳥(ファイアバード)”には、永遠の命と大きな愛の力が宿っている。しかしその圧倒的な強さ ゆえ、触れると火傷をすることもある。
同性愛が厳罰に処されるソ連、しかも、さらに規律の厳しい軍の中で、自分の気持ちに忠実であろうとする男たちの思いが、切々と伝わる物語。実は、役者になる夢を叶えたセルゲイ・フェティソフが、自ら綴った回想録「ロマンについての物語」がペーテル・レバネ監督の手にわたったことから、この映画は出来上がったとのこと。初長編映画の題材を探していたレバネ監督は、読んですぐに本作の映画化を決め、2014年には、俳優のトム・プライヤーと共にセルゲイ・フェティソフにインタビューを重ね、3人の共作で脚本を完成。ところが、2017年、セルゲイが65歳の若さで急逝。セルゲイへの追悼の思いを胸に、レバネ監督とトム・プライヤーが執念で完成させた映画。
このところ同性愛を描いた作品が多くて、またか・・・と思ったのですが、驚くべき実話がベースになっていて、胸に迫りました。セルゲイの同僚であり友人でもある女性ルイーザを巻き込んでの、あの時代だったからこその微妙な三角関係が切ないです。
トム・プライヤーもオレグ・ザゴロドニーも美男ですが、レバネ監督も負けず劣らずの美男! 公開にあわせて3人が来日とのこと。楽しみです。(咲)
『Firebird ファイアバード』初日舞台挨拶
Facebook アルバム 『Firebird ファイアバード』初日舞台挨拶
2月9日(金)@新宿ピカデリー
ペーテル・レバネ監督、主演トム・プライヤー&オレグ・ザゴロドニー
緊急来日舞台挨拶のスケジュール
詳細は各劇場公式サイトでご確認ください。
新宿ピカデリー
横浜ジャック&ベティ
名古屋ミッドランドスクエアシネマ
なんばパークスシネマ
MOVIX京都
2021年/イギリス・エストニア/英語・ロシア語/107分/5.1ch/DCP & Blu-ray
日本語字幕 : 大沢晴美
配給:リアリーライクフィルムズ
公式サイト:https://www.reallylikefilms.com/firebird
★2024年2月9日(金)より新宿ピカデリーほか全国にて公開
梟ーフクロウー 原題:올빼미(フクロウ) 英題:The Night Owl
監督:アン・テジン
出演:リュ・ジュンヨル、ユ・ヘジン
朝鮮王朝時代の記録物「仁祖実録」(1645年)に記された‟怪奇の死“にまつわる謎に迫る
盲目の天才鍼師ギョンス(リュ・ジュニョル)は、才能を認められ宮殿に入るが、病の弟を救うため、誰にも言えない秘密を抱えていた。折しも、清国の人質となっていた世子(キム・ソンチョル)が、清の王に連れられて8年ぶりに帰国する。世子は父である国王・仁祖(ユ・ヘジン)に清と親しくすることが生きる道と進言するが、仁祖は「世子は心の病」と一蹴する。
ある夜、当直だったギョンスは、世子の死に至る現場を「目撃」してしまう。見て見ぬふりをしなければ弟に危険が迫るが、親の顔を見ないで8年を過ごした世子の息子の為にも真相を明かしたいとギョンスは死闘する・・・
闇の中では、かすかに見ることができるギョンスが見たものとは?
清の属国になりさがりたくない国王・仁祖を演じたユ・ヘジンの鬼気迫る姿に圧倒されます。
盲目のギョンスは、暗闇の中で、どこまで見えるのか・・・
真相が明かされていく様に、ぞくぞくさせられました。
本作が長編デビュー作とは思えない、重厚な作品。(咲)
2023 第59回 百想芸術大賞 作品賞、新人監督賞、男子最優秀演技賞(リュ・ジュニョル)
2023 第43回 韓国映画評論家協会賞 新人監督賞、男優主演賞(リュ・ジュニョル)、撮影賞
2023 第43回 黄金撮影賞授賞式 最優秀作品賞、監督賞、撮影賞 金賞
最優秀男優主演賞(リュ・ジュニョル)、最優秀助演男優賞(チェ・ムソン)、照明賞
2023 第59回 大鐘賞映画祭 新人監督賞、脚本賞、編集賞
2023 第44回 青龍映画賞 新人監督賞、撮影照明賞、編集賞
2023 第28回 春史国際映画祭 主演男優賞(リュ・ジュニョル)、新人男優賞(キム・ソンチョル)、新人監督賞、脚本賞
2023 第10回 韓国映画制作家協会賞 脚本賞、編集賞、音響賞(パク・ヨンギ)
2022年/韓国/118分
日本語字幕:根本理恵.
配給:ショウゲート
公式サイト:http://fukurou-movie.com/
★2024年2月9日(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開
ボブ・マーリー ラスト・ライブ・イン・ジャマイカ レゲエ・サンスプラッシュ デジタルリマスター 原題:Reggae Sunsplash
劇場公開 2024年2月9日 劇場情報
ボブ・マーリー、母国ジャマイカでの伝説のラストライブがスクリーンに蘇る
監督:ステファン・ポール
製作:ステファン・パウル
撮影:ライナー・ハインツェルマン ハンス・シャルク
編集:ヒルデガルト・シュローダー
出演:ボブ・マーリー、ピーター・トッシュ、バーニング・スピア
カリブ海の島ジャマイカで生まれたレゲエ・ミュージック。貧困、戦争、差別と闘い、平和を願って歌われたレゲエ。70年代、レゲエはロック界に大きな衝撃を与え、クラプトンやストーンズ等、様々なミュージシャンに大きな影響を及ぼした。また、英国のパンク・ムーブメントとも共鳴し合い、鬱屈した当時の若者達を巻き込み世界に広がった。ボブ・マーリーはそのカリスマだった。
これは、1979年7月、ジャマイカで開催された第2回レゲエ・サンスプラッシュの模様を収録したライブ・ドキュメンタリー。1981年、36歳の若さでこの世を去ったボブ・マーリーの母国ジャマイカでのラストライブを映像化した。その熱狂を追体験できる。ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズの圧巻のパフォーマンスが蘇る。ピーター・トッシュ、バーニング・スピア、サード・ワールドのパフォーマンスも。ライブの中でボブ・マーリーが、背中に「一番」と書かれた日本の火消しの半纏を羽織って歌うシーンが出てくる。同年4月に最初で最後の来日公演があったそうだけど、その時にゲットしたものかな。ファンからのプレゼントかも
。
アフリカへの回帰運動を掲げるラスタファリアニズムの象徴としてのボブ・マーリー。ドレッドヘア、ガンジャ(大麻)、赤・黄・緑・黒のラスタカラー。貴重なインタビュー映像からは、差別を嫌い、平和を願うボブのメッセージが語られる。またあの時代のジャマイカのスラム街のカラフルで雑多な街並み、雑然とした風景が映し出され、ジャマイカの社会を垣間見ることができる。45年前のジャマイカ、そして熱狂のライブがおこなわれたモンテゴ・ベイ、ジャレット・パークへようこそ。“反逆”のカリスマとなって、多くのミュージシャンに影響を与えたボブ・マーリーの姿が蘇る。
1994年8月1日、日本初公開。その映像がデジタルリマスター版でリバイバル公開される。
公式HP https://bob-marley-movie.com/
1980年製作/109分/PG12/西ドイツ・ジャマイカ合作
配給:アルバトロス・フィルム
ボブ・マーリー、母国ジャマイカでの伝説のラストライブがスクリーンに蘇る
監督:ステファン・ポール
製作:ステファン・パウル
撮影:ライナー・ハインツェルマン ハンス・シャルク
編集:ヒルデガルト・シュローダー
出演:ボブ・マーリー、ピーター・トッシュ、バーニング・スピア
カリブ海の島ジャマイカで生まれたレゲエ・ミュージック。貧困、戦争、差別と闘い、平和を願って歌われたレゲエ。70年代、レゲエはロック界に大きな衝撃を与え、クラプトンやストーンズ等、様々なミュージシャンに大きな影響を及ぼした。また、英国のパンク・ムーブメントとも共鳴し合い、鬱屈した当時の若者達を巻き込み世界に広がった。ボブ・マーリーはそのカリスマだった。
これは、1979年7月、ジャマイカで開催された第2回レゲエ・サンスプラッシュの模様を収録したライブ・ドキュメンタリー。1981年、36歳の若さでこの世を去ったボブ・マーリーの母国ジャマイカでのラストライブを映像化した。その熱狂を追体験できる。ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズの圧巻のパフォーマンスが蘇る。ピーター・トッシュ、バーニング・スピア、サード・ワールドのパフォーマンスも。ライブの中でボブ・マーリーが、背中に「一番」と書かれた日本の火消しの半纏を羽織って歌うシーンが出てくる。同年4月に最初で最後の来日公演があったそうだけど、その時にゲットしたものかな。ファンからのプレゼントかも
。
アフリカへの回帰運動を掲げるラスタファリアニズムの象徴としてのボブ・マーリー。ドレッドヘア、ガンジャ(大麻)、赤・黄・緑・黒のラスタカラー。貴重なインタビュー映像からは、差別を嫌い、平和を願うボブのメッセージが語られる。またあの時代のジャマイカのスラム街のカラフルで雑多な街並み、雑然とした風景が映し出され、ジャマイカの社会を垣間見ることができる。45年前のジャマイカ、そして熱狂のライブがおこなわれたモンテゴ・ベイ、ジャレット・パークへようこそ。“反逆”のカリスマとなって、多くのミュージシャンに影響を与えたボブ・マーリーの姿が蘇る。
1994年8月1日、日本初公開。その映像がデジタルリマスター版でリバイバル公開される。
公式HP https://bob-marley-movie.com/
1980年製作/109分/PG12/西ドイツ・ジャマイカ合作
配給:アルバトロス・フィルム
罪と悪
監督・脚本:齊藤勇起
撮影:大西健之
音楽:Teje、Yehezkel Raz
出演:高良健吾(阪本 春)、大東駿介(吉⽥ 晃)、石田卓也(朝倉 朔)、村上 淳(清水)、佐藤浩市(笠原)、椎名桔平(佐藤)
14歳の正樹の遺体が川で見つかった。春、晃、朔はある男を「犯人」と断定し、家に押しかけ。もみあったはずみで死なせてしまった。家に火をつけ、一人が罪をかぶって事件は終わる。20年後、それぞれの道を進んだ3人は再会する。春は街の不良少年たちの面倒を見、晃は父親と同じ警察官になっていた。朔は実家の農業を継いでいた。
しばらくして、同じ川にまた少年の遺体があった。3人の記憶の奥底にしまっていたはずの事件が、形を持って現れる。いったい真実はどこにあったのか。これから見つけることができるのか?
そうそうたる監督の助監督をつとめてきた齊藤勇起監督、脚本も監督オリジナルの長編映画。これが監督デビュー作?と驚きました。地方の小さな街で起こる殺人事件。少年時代の触れられたくなかった傷があらわになり、真実に近づいて行くまで緊迫したシーンが続きます。このラストでよかったのか、と監督が逡巡したようすがうかがえました。
中学生役の少年たちは、あまり見知った俳優さんでないことが功を奏していますし、長じての高良健吾さん大東駿介さんの再会場面は、懐かしさだけではなく、互いを探ろうとする思惑もあっての対峙のシーンです。『ハリヨの夏』の白シャツの少年がこんな俳優さんになったとは。石田卓也さん久しぶりの映画復帰だそうです、見違えました。(白)
2024年/日本/カラー/シネスコ/115分
配給:ナカチカピクチャーズ
(C)2023「罪と悪」製作委員会
https://tsumitoaku-movie.com/#
★2024年2月2日(金)全国公開中