2024年01月28日

ダム・マネー ウォール街を狙え!(原題:DUMB MONEY/G)

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監督:クレイグ・ギレスピー(『クルエラ』『アイ,トーニャ史上最大のスキャンダル』)
原作:ベン・メズリック
脚本:ローレン・シューカー・ブラム&レベッカ・アンジェロ
出演:ポール・ダノ(キース・ギル)、ピート・デヴィッドソン(ケビン・ギル)、ヴィンセント・ドノフリオ(スティーヴ・コーエン)、アメリカ・フェレ―ラ(ジェニー)、ニック・オファーマン(ケン・グリフィン)、アンソニー・ラモス(マルコス)、セバスチャン・スタン(ブラッド・テネフ)、シャイリーン・ウッドリー(キャロライン・ギル)、セス・ローゲン(ケイブ・プロトキン)

2020年。キース・ギルは”ローリング・キティ”と言うニックネームで動画を配信している会社員。全財産の5万ドルを、一推しのゲームソフト販売会社「ゲームストップ社」につぎ込み、ネット掲示板でこの株の価値を訴えていた。投資家たちは倒産寸前のぼろ株と見なし、一部の富豪たちが、空売りを重ねてもっと儲けようと企んでいる。
閉塞感で押しつぶされそうなコロナ禍中、キースの主張に乗った個人投資家たちはゲームストップ株を買い始めた。少額でも大勢が集まれば、空気は変わる。21年初めにゲームストップ株は大暴騰した!!

アメリカ・ウォール街に激震が走った本当にあった金融騒動を、娯楽作品に仕上げています。巨額の資産があるところに、さらに金が集まっていく…のに歯がみしていた庶民たちが一矢も二矢も報います。株に無縁の人にもわかりやすく作られていました。監督の息子さんがゲームストップ社の株を早くから持っていて、監督がすぐそばでこの顛末を見ていたそうです。
株価の上下に一喜一憂するキースや掲示板の仲間たちの姿が登場します。株は余裕資金で、と聞きます。なけなしの貯金を株に替える人もいます。神経のすり減る様は、不労所得と軽々しく言えません。ポール・ダノが気のいいキース役、しっかり者の妻をシャイリーン・ウッドリー。セス・ローゲンが株を操って儲け続けてきた富豪役。
持ちすぎた人は少し手放して身軽になってはどうでしょう。お金は天下の回りもの、私たち庶民がささやかな夢を見ても罰は当たりませんよね、神様仏様。(白)


2023年/アメリカ/カラー/シネスコ/105分/
配給:キノフィルムズ
(C) 2023, BBP Antisocial, LLC. All rights reserved.
https://dumbmoney.jp/
★2024年2月2日(金)TOHOシネマズ日比谷他全国ロードショー

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沖縄狂想曲

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©2024シンクアンドウィル 青空映画舎

監督:太田隆文
語り:斉藤とも子 久場寿幸
声の出演:水津亜子 嵯峨崇司 酒井康行
出演:
宮本弘美 下地輝明 上原美智子 山城正輝 宮城弘 佐喜眞道夫 池上智海
知花昌一 永山博美 松田栄 長浜美枝子 恩河幸彦 津波竜斗 菊上元明 栩野幸知 宮島真一 岸本健 橋本美千代 大城定夫 大城貴代子 金城実 高山朝光 石原昌家 比嘉幹郎 比屋根照夫 前泊博盛 松田恵子 井上あすか 山内和将 遠藤晃治
瑞慶覧長敏 屋良朝博 リリー 瑞慶覧長風 川満卓郎 / 山本太郎 鳩山由紀夫

沖縄で起こる数々の問題。辺野古基地-問題。国際大学ヘリコプター墜落事故。
オスプレー騒音、墜落問題。古くはコザ蜂起(暴動)、由美子ちゃん事件等。多くの日本人、それら県民の苦悩を知る機会は少ない。
そんな沖縄問題を取材、有識者による徹底解説。元大手新聞-論説委員、沖縄の著名大学教諭、元市長、元県庁の幹部らが、大手マスコミが伝えない現実を徹底して解説。
さらに沖縄県知事だった大田昌秀の挑戦。元内閣総理大臣・鳩山由紀夫が「最低でも県外」と発言した真意を激白。れいわ新選組・山本太郎の驚きの国会質問も紹介する。
原発問題を描いた『朝日のあたる家』の太田隆文監督が『ドキュメンタリー沖縄戦』『乙女たちの沖縄戦』に続いて、沖縄と日本の現実に切り込んだ問題作。

*太田隆文監督プロフィール*
1961年、和歌山県生まれ。62歳。
ロサンゼルスの南カリフォルニア大学(USC)に留学。帰国後、テレビドラマ、ビデオ映画を演出。
2003年、大林宣彦監督の映画『理由』でメイキングを担当。以後、大林監督を師事。
2006年、故郷・和歌山を舞台にした映画『ストロベリーフィールズ』を脚本、監督。
その後、地方を舞台にした青春映画を発表。『青い青い空』(2010)、『向日葵の丘1983年夏』(2015)、
『明日にかける橋1989年の想い出』(2019)の脚本、監督を担当。

2013年、原発事故を題材とした『朝日のあたる家』では山本太郎が出演し大ヒット。
以降、社会派ドキュメンタリー『ドキュメンタリー沖縄戦 知られざる悲しみの記憶』(2020)、
『乙女たちの沖縄戦 白梅学徒の記録』(2022)を発表。ほとんどの監督作品は海外の映画祭で上映され、高い評価を受けている。




◆2/3(土)初日舞台挨拶
K's cinema  10時からの上映後
【登壇者】 鳩山由紀夫元内閣総理大臣、太田隆文監督

2024年/日本/115分
配給 渋谷プロダクション
公式サイト:https://okinawakyosokyoku.com/
★2024年2月3日(土)~K`s cinema他にて全国順次公開


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2024年01月27日

映画 ギヴン 柊mix

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監督:橋本能理子
原作:キヅナツキ
脚本:綾奈ゆにこ
音楽:未知瑠
主題歌:センチミリメンタル「スーパーウルトラ I LOVE YOU」
(EPICレコードジャパン)
声の出演:矢野奨吾(佐藤真冬)、内田雄馬(上ノ山立夏)、中澤まさとも(中山春樹)、江口拓也(梶 秋彦 )、今井文也(鹿島 柊)、坂 泰斗(八木玄純)

ーこれは淋しかったこどもたちが大人になる途中の話ー
高校生の上ノ山立夏は、バンド「ギヴン」を中山春樹、梶 秋彦と組んでいる。佐藤真冬の歌声に衝撃を受けた立夏は、真冬をボーカルとして誘った。真冬加入後の初のライブは成功し、立夏は真冬は付き合い始める。「ギヴン」はフェス出場をかけたコンテストで惜しくもライブ審査に落ちるも活動は継続した。
真冬の幼馴染み・鹿島 柊と八木玄純のバンド「syh〈シー〉」は「ギヴン」が落ちたコンテストに受かり、デビューが決まっていた。柊は、「syh」に不在のギターのサポートとして立夏に注目し、「お前とやってみたいことがあるんだ」ともちかける……。

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公開記念舞台挨拶

バンドものは自分が演奏できなくても、一緒に練習し、コンテストに挑戦し、と観ているだけでもなんだか達成感があります。同じシチュエーションでガールズバンドに変えたなら、感じが変わるでしょうか?やはり男性ファンが多く集まるのでしょうね。原作コミックは1~9巻まで発売中。
私など観客ターゲットの外の年代ですが、ボーイズバンドの面々はみなイケメン、見えるもの聞こえるものも素敵となったら出かけずにはいられません。温詞(あつし)さんによるソロプロジェクト、”センチミリメンタル”が書きおろした主題歌「スーパーウルトラ I LOVE YOU」にもきゅんきゅんしてください。(白)


2022年/日本/カラー/シネスコ/70分
配給:アニプレックス
(C)キヅナツキ・新書館/ギヴン製作委員会
https://given-anime.com/
★2024年1月27日(土)よりロードショー

posted by shiraishi at 00:37| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

白日青春 生きてこそ(原題:白日青春 The Sunny Side of the Street)

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監督・脚本:ラウ・コックルイ(劉國瑞)
プロデューサー:ソイ・チェン(鄭保瑞)
撮影:リョン・ミンカイ
出演:アンソニー・ウォン(チャン・バクヤッ 陳白日)、サハル・ザマン(ハッサン/香港名:モク・チンチョン 莫青春)、エンディ・チョウ(チャン・ホン)、キランジート・ギル(ファティマ)、インダージート・シン(アフメド)

香港のタクシー運転手、チャン・バクヤッは急に知らされた息子の結婚式に間に合うよう急いでいた。70年代に本土から香港に密入国したバクヤッは、妻を亡くし息子とうまくいっていない。交通事故を起こしてしまったバクヤッは、相手方のパキスタン難民のアフメドが死亡したことを知った。彼は10年前から難民申請をして、家族3人でのカナダ移住を待ち望んでいた。母親と残された10歳のハッサンは生活のために、難民のギャンググループに加わってしまう。

いつも不機嫌で誰にでも当たり散らすバクヤッを香港の名優アンソニー・ウォン。粗暴で自分勝手ですが、心底悪い人間ではありません。心深くに悲しみを隠した不器用すぎる人を演じてさすがです。
難民の少年ハッサンを、パキスタン出身で香港在住のサハル・ザマン。アンソニー・ウォンを相手に、少しもひるまずに演じています。この作品が映画デビューとは驚きました!父親を亡くした少年と、ちゃんとした父親になりたいのに、なれずにあがいている男、どちらにも幸あれと願います。
日本より様々な国の人が集まっている香港でも、難民の人たちはこんなに不自由なのだと知って愕然としました。移住の希望がかなえられるまで、正業にもつけません。どうやって食べていけというのでしょう。(白)


息子との葛藤を抱える偏屈なタクシー運転手(陳白日)チャン・バクヤッを演じた黄秋生。バクヤッ自身も大陸から泳いで越境し香港にたどりついた不法入国者なのに、同じようにパキスタンから香港にやってきた難民アフメドにつらくあたる。挙句のはてに事故死までさせてしまう。それなのに相手が不法難民ということで罪を逃れた。とことん自分勝手で無責任な人物だが、アフメドの妻と10歳の息子ハッサンはよけい不利な立場になってしまい、さすがのバクヤッも彼らに手をさしのべる。香港での難民の厳しい状況に、二組の父と息子の関係性を絡めて描いている。
『白日青春』というタイトルは最初わからなかったけど、二人の名前だったということを映画を観た後に知った。学校の授業の中でこの「白日と青春」の二つの言葉が出てくる「苔」(袁枚)という詩が出てくる。この詩の中に監督の思いが込められているような気がする。
白日不到処
青春恰自来
苔花如米小
也学牡丹開
日の当たらないところにも
生命力あふれる春は訪れる
米粒のように小さな苔の花も
高貴な牡丹を学んで咲く

マレーシア出身のコックルイ監督は「この映画は父の愛を渇望する息子と、息子を理解しようともがく父親の物語。自分の移民としての経験や思いを注ぎ込んだ」と語っている。

プロデューサーの任硯聰(ピーター・ヤム)さんの名前に見覚えがあると思ったら、2017年の山形国際ドキュメンタリー映画祭で『乱世備忘 ― 僕らの雨傘運動』の陳梓桓(チャン・ジーウン)監督にインタビューした時に同席していました。インタビューの後も、香港のことで話が弾みましたし、映画祭の打ち上げの時にもお会いしました。その後、やはり陳梓桓監督の『Blue Island 憂鬱之島』もプロデュースしています。秋生ちゃんにインタビューする機会がありましたが、3人のプロデューサーのうち、主にピーターとやり取りしていたと語っていました(暁)。



●P1210146_R 320.jpg
 アンソニー・ウォン(黄秋生) インタビュー


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アンソニー・ウォン(黄秋生) 初日舞台挨拶

Facebookアルバム
『白日青春-生きてこそ-』アンソニー・ウォン インタビュー&初日舞台挨拶


●ラウ・コックルイ(劉國瑞)
台湾の第59回金馬賞 最優秀新人監督賞、最優秀オリジナル脚本賞を受賞
●アンソニー・ウォン(黃秋生)
台湾の第59回金馬賞 最優秀主演男優賞を受賞
●サハル・ザマン(林諾/ Sahal Zaman)
第41回香港電影金像奨 最優秀新人俳優賞を受賞

2022年/香港/カラー/シネスコ/111分
配給:武蔵野エンタテインメント
PETRA Films Pte Ltd (C)2022
https://hs-ikite-movie.musashino-k.jp/

★2024年1月26日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 00:36| Comment(0) | 香港 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年01月24日

Here 原題:Here

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©︎ Quetzalcoatl

脚本・監督:バス・ドゥヴォス
撮影監督:グリム・ヴァンデケルクホフ
音楽:ブレヒト・アミール
キャスト
シュテファン(主人公のルーマニア人移民労働者):シュテファン・ゴタ
シュシュ(主人公の植物学者):リヨ・ゴン
セドリック(レストランのマネージャー):セドリック・ルヴエゾ
ミハイ(整備工場のボス):テオドール・コルバン
サーディア(共有庭園の婦人):サーディア・ベンタイブ
アンカ(シュテファンの姉):アリーナ・コンスタンティン
シュファン(シュシュの叔母):シュファン・ワン

ブリュッセルに住む建設労働者のシュテファン。4週間の夏季休業を言い渡され、アパートを引き払い故郷のルーマニアに帰国するか悩んでいる。姉や友人たちにお別れの贈り物として冷蔵庫の残り物で作ったスープを配ってまわる。出発の準備が整ったシュテファンは、ある日、森を散歩中に以前レストランで出会った女性のシュシュと再会。そこで初めて彼女が苔類の研究者であること知る̶。森を歩きながら、シュシュは多様な苔のこと教えてくれる。これまで知らなった世界。シュテファンは静かにシュシュの話に惹かれていく・・・

苔にそんなにたくさん種類があるんだ~と、私もシュテファンと一緒に驚きました。
雇用主の都合で、長期休暇やクビになってしまう、立場の弱い移民労働者の悲哀を思いました。
苔の研究をしているシュシュは、中国系ベルギー人という設定。演じたリヨ・ゴンは、ブリュッセルの著名な国立映画・演劇学校INSAS(The Institut national supérieur des arts du spectacle et des techniques de diffusion)で映画編集の学士号を取得。ふだんは映画の編集者としていて活躍していて、『Here』で初めて長編映画の主演を務めています。公開にあわせて来日されます。地道な研究者を演じたリヨ・ゴンさんに、ぜひ会いに劇場にいらしてください。(咲)


★公開記念トークイベント開催!
登壇者:バス・ドゥヴォス監督、『Here』主演 リヨ・ゴンさん
①2月2日(金)『Here』18:55の回
 上映後トーク・Q&A/終了後におふたりによるサイン会実施
②2月3日(土)『Here』18:55の回
 上映後トーク・Q&A/終了後におふたりによるサイン会実施
③2月6日(火)『Here』18:55の回
 上映後トーク・Q&A
※2月6日(火)はサイン会の開催はありません。


第73回ベルリン国際映画祭エンカウンターズ部門最優秀作品賞 & 国際映画批評家連盟賞 (FIPRESCI賞)

2023年/ベルギー/オランダ語・フランス語・ルーマニア語・中国語/83分/DCP(16mm撮影)/スタンダード
日本語字幕:手束紀子
配給:サニーフィルム
公式サイト:https://www.sunny-film.com/here
★2024年2月2日(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国ロードショー

posted by sakiko at 15:33| Comment(0) | ベルギー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ゴースト・トロピック    原題:Ghost Tropic

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(C)Quetzalcoatl, 10.80 films, Minds Meet production

脚本・監督:バス・ドゥヴォス
撮影監督:グリム・ヴァンデケルクホフ
音楽:ブレヒト・アミール
キャスト:
主人公の掃除婦・ハディージャ:サーディア・ベンタイブ
コンビニの女性店員:マイケ・ネーヴィレ
警備員:シュテファン・ゴタ  *『Here』で主人公のシュテファンを演じている
救急隊員:セドリック・ルヴエゾ
近隣の男性:ウィリー・トマ
娘:ノーラ・ダリ

ブリュッセルで掃除婦として働くハディージャ。一日の仕事を終え、最終電車で家路につくが、寝過ごして終点まで行ってしまう。娘に電話するも連絡がつかない。バスもなく、もう歩いて帰るしかない。途中のショッピングモールで、警備員に頼み込んで中に入れてもらいATMでお金をおろそうとするが残高がほとんどない。ひたすら歩いていく途中で、倒れこんでいるホームレスの男性を見かけ、通報して保護してもらう。閉店間際のコンビニで紅茶を飲む。店員の女性が車で送ってくれることになる・・・

寒い冬のブリュッセルの一夜の物語。
スカーフをきちっり被って髪の毛を隠しているハディージャは、北アフリカのどこかの国から移民してきた敬虔なムスリマ。倒れているホームレスを見過ごすことができません。彼が可愛がっていたと思われる犬も一緒の保護してほしいと頼むのですが、断られ、このままでは凍死してしまうと心配します。
かつて家政婦をしていた家の台所で料理をしている青年を見かけ、不法侵入者だとわかりつつ、警察が咎めようとするのを止めます。
移民してきたベルギーで、つらい思いもしてきたと思うのに、弱者に気遣いできるのは、イスラームのいたわりの精神がハディージャに根付いているからだと思います。
多様な人たちが暮らすベルギー。ハディージャの職場では、休憩時間に肌の色の違う人たちが談笑している光景が出てきます。ハディージャが帰り道に出会う人々も多種多様。バス・ドゥヴォス監督が日々みている人たちの姿が、この映画にも反映されていることを感じました。(咲)


第72回カンヌ国際映画祭監督週間正式出品

2019年/ベルギー/フランス語/84分/DCP(16mm撮影)/スタンダード
日本語字幕:手束紀子
配給:サニーフィルム
公式サイト:https://www.sunny-film.com/ghosttropic
★2024年2月2日(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国ロードショー



posted by sakiko at 15:13| Comment(0) | ベルギー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ベルギーのバス・ドゥヴォス監督 最新2作品『ゴースト・トロピック』『Here』日本公開!

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©︎ Quetzalcoatl
©︎ Quetzalcoatl, 10.80 films, Minds Meet production

カンヌ、ベルリンで連続受賞した現代のヨーロッパ映画シーンで最も重要な若手作家の一人ベルギーの映画監督バス・ドゥヴォス。ブリュッセルの移民社会を背景に描いた最新2作品が同時に日本公開されます。

◆第72回カンヌ国際映画祭監督週間正式出品
『ゴースト・トロピック』
終電で寝過ごした掃除婦ハディージャ。移民ムスリマの寒い冬のブリュッセルの一夜の物語。
http://cinejour2019ikoufilm.seesaa.net/article/502159836.html

◆第73回ベルリン国際映画祭エンカウンターズ部門最優秀作品賞&国際映画批評家連盟賞(FIPRESCI賞) ダブル受賞
『Here』
ルーマニア出身の建設労働者シュテファンは、中国系ベルギー女性で植物学者のシュシュと出会い、多様な苔の世界を知る。
http://cinejour2019ikoufilm.seesaa.net/article/502160092.html


配給:サニーフィルム
公式サイト:https://www.sunny-film.com/basdevos
★2024年2月2日(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国ロードショー


バス・ドゥヴォス(Bas Devos)監督
1983年生まれ。ベルギー・ズーアーセル出身。
長編第1作『Violet』が2014年ベルリン国際映画祭ジェネレーション部門で審査員大賞を受賞。続く長編第2作『Hellhole』も2019年の同映画祭パノラマ部門に選出されると、カンヌ国際映画祭監督週間では長編3作目『ゴースト・トロピック』が正式出品となる。最新作『Here』は2023年のベルリン国際映画祭エンカウンターズ部門の最優秀作品賞と国際映画批評家連盟賞(FIPRESCI賞)の2冠に輝く。

*多様な国 ベルギー*
「ブリュッセルは異なる国から移住してきた多くの人々でひしめきあい、それぞれがここをホームとして暮らそうとしている。ブリュッセルをさらに特異な都市にしているのは言語であり、ここではそれぞれが異なる言語を母語としているため、会話の始めにお互いの母語を確認する事が多々ある。そのような街で私たちは何を頼りに他者と繋がれば良いのか常に考えている」
※2019年のカンヌ国際映画祭監督週間に『ゴースト・トロピック』を出品した際、映画祭のオフィシャルインタビューから引用。

ベルギーは、1830年にネーデルラント連邦王国から独立し王国となったが、宗教観の違いなどもあり連邦制度となり、全国の中央政府と、ブリュッセル首都圏、フランダース、ワロンの3つの地域政府に別れ、各地域で異なる言語を公用語としてきた。
バス・ドゥヴォス監督はフランダース出身で、母語はオランダ語系のフラマン語で、映画もフランダースのファンドから助成されているが、映画はブリュッセルを舞台にしていて、主にフランス語が使用されている。(ブリュッセル首都圏はフランス語とドイツ語、ワロン地域はフランス語が公用語とされる)

小国でありながら各地域で公用語が異なる上に、ベルギーは1920年代から諸外国から移民を積極的に受け入れてきた歴史がある。初期の移民は主に鉄鋼業や鉱業の人材として東ヨーロッパから連れてこられた。その後、1950年頃、日本の高度成長期と同時期に、ベルギーもまた戦後の復興と経済成長期が重なり、労働力を必要として、スペイン、トルコ、モロッコという国々から多くの移民を受け入れた。
1990年代になると、移民の増加に世界情勢も影響し始めた。1989年のベルリンの壁崩壊後、東側諸国がEUに加盟し、より良い暮らしを求めた多くの人々がベルギーを目指した。
『Here』のシュテファンはルーマニア人である。90年代か ら2000年代は、中東地域の内戦や国際紛争も多発し、アフガニスタン、イラク、シリアからの難民もEUの本拠地であるブリュッセルに押し寄せた。今では、ベルギーの総人口の12%以上が外国籍で、移民背景を持つベルギー国籍の20%を足すと、30%以上が異なる文化背景を持った人々となる。
(プレス資料より引用)

posted by sakiko at 14:54| Comment(0) | ベルギー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年01月21日

その鼓動に耳をあてよ

2024年1月27日(土)より東京・ポレポレ東中野ほか全国順次公開
劇場情報
『その鼓動に耳をあてよ』チラシ表面_R_R.jpg
(C)東海テレビ放送


監督:足立拓朗
プロデューサー:阿武野勝彦 圡方宏史
音楽:和田貴史 音楽プロデューサー:岡田こずえ 
撮影:村田敦崇 
音声:栗栖睦巳 TK:清水雅子 
音響効果:宿野祐 編集:髙見順

救命救急の砦で、いま何が起こっているのか?
迫真のドキュメント


名古屋港から北3km地点にある名古屋掖済会(えきさいかい)病院。そのER(救命救急センター)は救急車の受け入れ台数が愛知県内随一の年間1万台。365日24時間、さまざまな患者が運び込まれてくる。耳の中に虫がいると泣き叫ぶ子ども、脚に釘が刺さった大工職人、自死を図った人等々。「断らない救急」がモットーで、身寄りのないお年寄りから生活困窮者まで誰でも受け入れてきた。医師は「救急で何でも診るの“何でも”には、社会的な問題も含まれる」という。しかし、そう思っても新型コロナウイルスのパンデミックで、救急車はフル回転。連日過去最多の患者数を更新。他の病院に断られた患者がここに押し寄せ、ベッドがみるみる埋まってしまった。
救命救急センターを通した医療事情から社会の縮図を見ることができる。

窮地に立たされたERの姿を映し出すのは東海テレビのクルー。監督は本作が映画初挑戦の足立拓朗。プロデュースを手がけたのは『ヤクザと憲法』『さよならテレビ』などの阿武野勝彦と圡方宏史。
ERの仕事を「究極の社会奉仕」と捉え、地域医療に取り組み全力を尽くす医師たちの姿を映し出す。一方で、外科や内科のように大学病院に支えられた医局制度がない救急科を志望する医師は少ないことが語られる。
掖済会病院の「掖済」は、わきに手を添えて、人を導き助けるということだそう。この作品が、これからの医療に救急がどうあるべきなのか考えるキッカケとなればと足立拓朗監督は語る。


公式HP https://tokaidoc.com/kodo/
2023年 日本 95分
製作・配給:東海テレビ放送 配給協力:東風

劇場イベント情報
【ポレポレ東中野】
◇1月27日(土) 11:30の回終了後
北川喜己医師、蜂矢康二医師、櫻木佑医師(名古屋掖済会病院、本作出演)
足立拓朗監督、阿武野勝彦プロデューサー、圡方宏史プロデューサーによる舞台挨拶

◇1月27日(土) 15:50の回終了後
足立拓朗監督、阿武野勝彦プロデューサー、圡方宏史プロデューサーによる舞台挨拶

【大阪 第七藝術劇場】
◇2月3日(土) 12:20の回上映
足立拓朗監督・圡方宏史プロデューサーによる舞台挨拶

【神戸 元町映画館】
◇2月3日(土) 16:10の回上映後
足立拓朗監督・圡方宏史プロデューサーによる舞台挨拶

特集上映情報
【『その鼓動に耳をあてよ』公開記念
圡方宏史監督作品特集上映@ポレポレ東中野】

2/3(土)15:50~『ホームレス理事長』
2/4(日)15:50~『ヤクザと憲法』+上映後:圡方監督トーク
2/5(月)15:20~『さよならテレビ』
2/6(火)15:20〜『ホームレス理事長』
2/7(水)15:20〜『さよならテレビ』
2/8(木)15:20〜『ヤクザと憲法』
2/9(金)15:20〜『さよならテレビ』
posted by akemi at 21:14| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ザ・ガーディアン/守護者  原題:保護者 보호자 英題:A Man of Reason

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© 2022 ACEMAKER MOVIEWORKS & STUDIO TAKE CO., LTD. All Rights Reserved.

監督:チョン・ウソン
脚本:チョン・へシン、チョン・ウソン
撮影:コ・ラクソン
音楽:キム・テソン
出演:チョン・ウソン、キム・ナムギル、パク・ソンウン、キム・ジュンハン、パク・ユナ

チョン・ウソン 初監督作品!

殺人の罪で10年の懲役を終え出所の日を迎えたスヒョク(チョン・ウソン)。今も忘れられずにいる恋人ミンソ(イ・エリヤ)の元を訪れ、何も言えずに目の前から消えたことを詫びる。バレエ教室に連れていかれたスヒョクは、ミンソから「あなたの娘、インビ」と教えられる。所属していた犯罪組織と縁を切り、平凡な父親であろうとするスヒョクだったが、スヒョクの背信を感じたボス(パク・ソンウン)は、自分の右腕であるソンジュン (キム・ジュナン) に彼の監視を指示する。スヒョクが疎ましいソンジュンは、「洗濯機」と呼ばれるウジン(キム・ナムギル) とチナ (パク・ユナ)の男女二人組にスヒョクを消すよう依頼する。恋人ミンソを殺し、娘を人質に取り、スヒョクをおびき出すウジンたち。かけがいのない最愛の娘を守るため、スヒョクは立ち上がる・・・

盟友イ・ジョンジェに続いて、チョン・ウソンも遂に監督デビュー! これはもう期待せずにいられませんでした。本音をいうと、これが撮りたかったのか・・・ですが、ウジンやソンジュンがあの手この手で追っても追っても死なないスヒョクに、最後は感服といったところでしょうか。
キム・ナムギルが、いかれて、はじけた殺し屋を楽しそうに演じていて、チョン・ウソン監督のもとで、絶大の信頼と愛をもって臨んだことを感じました。ほかの出演者たちも同様! チョン・ウソンの演出を真剣に楽しんだ撮影現場が目に浮かびます。とにかく初監督おめでとうございます! イ・ジョンジェの感想をお聞きしたいです・・・(咲)


2022 年/韓国/韓国語/シネスコ/5.1ch/98 分
字幕翻訳:福留友子
配給:クロックワークス
公式サイト:https://klockworx-asia.com/gardian/
★2024年1月26日(金) 新宿バルト9 ほか 全国ロードショー
posted by sakiko at 20:31| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

カムイのうた 英題 SONGS of KAMUI

2024年1月26日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、MOVIX昭島他全国上映 
他の上映情報
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(C)シネボイス

監督・脚本:菅原浩志
プロデューサー:作間清子
撮影:上野彰吾
美術:長寿恵
編集:時任 賢三
音楽:佐橋俊彦
主題歌:島田歌穂
アイヌ語・文化監修:藤村久和
出演
北里テル:吉田美月喜
一三四:望月歩
イヌイェマツ:島田歌穂
兼田静:清水美砂
兼田教授:加藤雅也

口承されてきたアイヌの抒情詩「ユーカラ」を文字化した女性がいた

全てに神(カムイ)が宿ると信じ、北海道の厳しくも豊かな自然の中で暮らしてきたアイヌの人たち。その生活や文化は和人が入って来た事で奪われてしまった。生活の糧である狩猟やサケ漁が禁止され、住んでいた土地を奪われ、アイヌ語も禁止された差別と迫害の歴史。この映画は、口承で伝えられてきたアイヌ民族の叙事詩ユーカラを文字化し、日本語訳した「アイヌ神謡集」を完成させた知里幸恵さん(1903年生まれ)の実話を元に描いている。
主人公テルは成績優秀で、女学校への進学を希望するが、アイヌというだけで不合格。その後、1917年(大正6年)、アイヌとして初めて女子職業学校に入学。しかし、土人と呼ばれ理不尽な差別やいじめを受ける。
彼女は幼い時からユーカラを聴いて育った。ある日、東京からアイヌ語研究の第一人者である兼田教授が、テルの叔母イヌイェマツが謡うユーカラを聴きにやってきて、叔母のユーカラを熱心に聴きながら「アイヌ民族であることを誇りに思ってください」と言った。和人に蔑まれ暮らしてきたテルは、教授の言葉に強く心を打たれ、やがて教授の強い勧めでユーカラを文字で残すようになる。そしてアイヌの言葉を日本語に翻訳。出来栄えの素晴らしさから、教授のいる東京で本格的にユーカラの翻訳をすることになり、それが「アイヌ神謡集」につながった。しかし、彼女は東京で病気になり、1922年(大正11年)19歳の若さで亡くなった。
この作品の中ではムックリ(口琴)の演奏や、イヌイェマツ役の島田歌穂さんによるユーカラの歌唱も聴くことができる。また、日本の先住民族の文化を伝えるだけでなく、いじめや差別のない社会という監督の願いも込められている。

アイヌの苦難の歴史を知っているつもりでした。でも、こんなにも激しい差別があったとは思っていませんでした。
50年以上前の中学校の頃、アイヌのことを知り、アイヌ民族に伝わる抒情詩「ユーカラ」のことも知りましたが、その時からずっとユーカラのことやアイヌの文化に興味を持ってきました。でも、この映画の主人公のモデルになった知里幸恵さんのことは知らず、この映画で知りました。口承で伝承されてきたユーカラを文字化し、和訳した女性がいたということ。そしてたった19歳で亡くなってしまったこと。彼女が長生きしていたら、もっとたくさんのユーカラが翻訳できたでしょうね。すごく残念です。ぜひ、たくさんの人が、知里幸恵さんという方がいたということを知る機会になればと思います。北海道の四季折々の雄大な自然も見どころ。自然と共存したアイヌの歴史に思いを馳せることができます(暁)。


公式HP https://kamuinouta.jp/
2023年製作/126分/PG12/日本
配給:トリプルアップ
製作協力:写真文化首都「写真の町」北海道東川町

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(C)シネボイス


『カムイのうた』動画 
https://www.youtube.com/playlist?list=PL0r-GH27V76MEojLk4FkG1l1gda6h5Rwu

舞台挨拶日程
・ユナイテッド・シネマ豊橋18
日時:1月26日(金)16:20~18:55
上映:16:20~18:35
舞台挨拶:18:35~18:55
登壇者(予定):菅原浩志
〒441-8061
愛知県豊橋市藤沢町141 ホリデイ・スクエア アミューズメントビル 内
チケット購入サイト:https://www.unitedcinemas.jp/toyohashi/daily.php?date=2024-01-26#calendarScroll

・ヒューマントラストシネマ渋谷
日時:1月27日(土)12:30~15:10
上映:12:30~14:45
舞台挨拶:14:45~15:10
登壇者(予定):吉田美月喜、島田歌穂、菅原浩志、菊地伸
〒150-0002
東京都渋谷区渋谷 1-23-16 ココチビル 8F
チケット購入サイト:https://ttcg.jp/human_shibuya

・京都シネマ
日時:1月28日(日)9:50~12:20
上映:9:50~12:00
舞台挨拶:12:00~12:20
登壇者(予定):菅原浩志、佐藤文泰(東川町副町長)
〒600-8411
京都府京都市下京区水銀屋町620 COCON KARASUMA3F
チケット購入サイト:https://www.kyotocinema.jp/

・第七藝術劇場
日時:1月28日(日)14:45~17:20
上映:14:45~17:00
舞台挨拶:17:00~17:20
登壇者(予定):菅原浩志、佐藤文泰(東川町副町長)
〒532-0024
大阪市淀川区十三本町1-7-27 サンポードシティ6F
チケット購入サイト:https://nanageitheater7.sboticket.net/

*シネマジャーナルHP
『カムイのうた』劇場公開前のトークイベント! レポート
2023年9月2日(土)東京ビックサイトにて

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左から菅原浩志監督、吉田美月喜さん、島田歌穂さん、木原仁美・知里幸恵記念館館長
 撮影 宮崎暁美
posted by akemi at 18:29| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ノスタルジア 4K修復版  原題:NOSTALGHIA

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©1983 RAI-Radiotelevisione Italiana. LICENSED BY RAI COM S.p.A.-Roma-Italy, All Right Reserved.

監督・脚本:アンドレイ・タルコフスキー
脚本:トニ一ノ・グエッラ
撮影監督:ジュゼッペ・ランチ
出演:
アンドレイ・ゴルチャコフ:オレーグ・ヤンコフスキー
ドメニコ:エルランド・ヨセフソン
エウジュニア:ドミツィアナ・ジョルダーノ
ゴルチャコフの妻:パトリツィア・テレーノ
髪に夕オルを巻いた女:ラウラ・デ・マルキ
ドメニコの妻:デリア・ボッカルド
清掃人:ミレーナ・ヴコティッチ

イタリア中部トスカーナ地方、霧に包まれた森。モスクワから来た詩人アンドレイ・ゴルチャコフと通訳の女性エウジェニアを乗せた車が着く。アンドレイは、18 世紀にイタリアを放浪したロシアの音楽家パヴェル・サスノフスキーの足跡を辿っている。農奴制が敷かれた故国に戻り自死したサスノフスキーを追う旅。その旅も終りに近づき、アンドレイは病に冒されていた。
古都シエナ南東の村。エウジェニアはピエロ・デラ・フランチェスカが描いた「マドンナ・デル・パルト」(出産の聖母)を見に行こうと誘うが、アンドレイは同行しない。ひとりで教会に入るエウジェニア。燭の炎がまばゆい光を放つ聖母像に祈りを捧げる女たち。聖母像の胸からたくさんの鳥が飛び立つ。
シエナの聖カタリナも訪れたという古の温泉地バーニョ・ヴィニョーニ。エウジェニアがアルセーニイ・タルコフスキーの詩集をイタリア語訳で読んでいると、アンドレイが「詩は翻択不可能。やめておけ」と言う。トルストイもプーシキンもロシア理解の為に訳は必要という彼女に、国境をなくせばいいと答えるアンドレイ。
温泉地で人々に狂信者と噂されるドメニコという男。世界の終末が訪れたと信じ、家族で 7 年間もあばら家に閉じこもり、聖カタリナと言葉を交わしたと触れ回っている。シェパード犬をつれて散歩している彼の姿に、強く心を打たれたアンドレイがたどたどしいイタリア語で話しかけると、ドメニコは自分が果たせなかった願いを託す。蝋燭の火を消さずに広場を往復することができたなら、世界は救われると言う・・・

54年の短い生涯で8作品の劇映画を世に送り出し、今なお多くの映画人や芸術家に影響を与え続ける、旧ソ連映画界の巨匠アンドレイ・タルコフスキー。
1962年に長編1作目『僕の村は戦場だった』を監督、ヴェネチア国際映画祭でサン・マルコ金獅子賞等を受賞。1967年にロシアの伝説的な画家を描いた『アンドレイ・ルブリョフ』を完成させるが、歴史解釈をめぐってソ連当局の激しい批判を受け、5年間の上映禁止を言い渡される。一方で同作品は1969年のカンヌ国際映画祭で国際映画批評家連盟賞を受賞。その後も『惑星ソラリス』(72)、『鏡』(75)、『ストーカー』(79)で世界的な評価を確立するが、ソ連国内の厳しい検閲は続き、ソ連を出国。長編6作目となる『ノスタルジア』は、初めてソ連国外のイタリアで3年半かけて製作された。1983年カンヌ国際映画祭で「この映画の創造に対する特別大賞」「国際映画批評家連盟賞」「エキュメニック審査員賞」の3冠に輝いた。
今回公開される『ノスタルジア 4K修復版』は、2022年に撮影監督ジュゼッペ・ランチ監修のもと、ローマのチネテカ・ナチオナーレの協力で4K修復が行われたもの。ボローニャ復元映画祭2022でワールドプレミアされた。

詩情溢れる映像に秘められた燃えたぎるような思い。カラーで撮られたイタリアでのサスノフスキーを追うアンドレイの旅には、故国を離れたタルコフスキーの思いが重なります。
セピア色の単色で撮られているのは、ロシアの故郷でしょうか。女性、子ども、犬、馬・・・。ラストには、イタリアの大きな遺跡の中に佇む故郷の小さな家・・・ さらに帰れない地への切ない気持ちが迫ってきました。母の思い出に捧ぐとありました。涙。
あと、アンドレイが、「イタリア人は靴を持ちすぎる。この靴は、10年履いている!」と叫ぶ場面があって、タルコフスキーがイタリアで暮らして感じた実感の一つなのだろうと、思わずクスッとしてしまいました。 (咲)


1983 年/イタリア=ソ連合作/ビスタ/カラー/126 分
日本語字幕:橋本克己
配給:ザジフィルムズ
公式サイト:http://www.zaziefilms.com/nostalghia4k/
★2024年1月26日(金)よりBunkamura ル・シネマ 渋谷宮下ほか全国順次ロードショー!



posted by sakiko at 15:42| Comment(0) | イタリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

哀れなるものたち(原題:Poor Things)

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監督:ヨルゴス・ランティモス
原作:アラスター・グレイ「哀れなるものたち」(早川書房刊)
脚本:トニー・マクナマラ
撮影:ロビー・ライアン
音楽:イェルスキン・フェンドリックス
出演:エマ・ストーン(ベラ・バクスター)、マーク・ラファロ(ダンカン・ウェダバーン)、ウィレム・デフォー(ゴッドウィン・バクスター)、ラミー・ユセフ(マックス)

身投げをした若い女性は、天才外科医のゴッドウィン・バクスター博士によって蘇った。博士は自分の娘ベラとして溺愛、助手のマックスに記録を命じる。家から出てはいけないと言われていたが、急速に知識を吸収したベラは、外の世界に出ることを渇望する。博士が招いたダンカン・ウェダバーン弁護士と共に、大陸横断の冒険旅行に出る。放蕩もののダンカンは、無垢なベラを愛人として扱うが、ベラの旺盛な好奇心はダンカンに縛られなかった。船の中で人々と知り合い、本を読み、停泊した先では貧困を目にして社会への扉を開いていく。

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ヨルゴス・ランティモス監督は『女王陛下のお気に入り』(2018)以来の再びのタッグ。黒髪に濃い眉、ひたとこちらを見つめるベラのポスターは、真実を見たいという迫力を感じます。大人の身体に子どもの心を持ったベラは、初めこそ博士やダンカンに守られていますが、自分の心が成長していくにしたがい自由と自我に目覚めていきます。
奇妙な動物たちをはじめ、ヴィクトリア朝時代の街や豪華客船などの美術、ベラが着こなすカラフルで突飛なデザインのドレスやパンツなどに目を奪われます。新しい知識に触れ、世界がひろがっていくたび純粋に喜ぶベラ。これを始まりから演じるエマ・ストーンがすごい! 摩訶不思議な世界で女性が成長していくお話。それはそれはもう小気味いいほどです。
バクスター博士は、つぎはぎでフランケンシュタインのような容貌です。思い出すのは、小説「フランケンシュタイン」を20歳前に書いた、メアリー・シェリー。彼女の実父の名前はゴドウィン、博士と同じです。実母のメアリ・ウルストンクラフトは、フェミニズムの先駆者。女性の権利や男女の同権、教育の平等について提唱した女性であったそうです。
原作のアラスター・グレイはそのあたりを下敷きにして書いたのでしょうか。原作も読んでみたいです。(白)


●第80回ベネチア国際映画祭コンペティション部門 金獅子賞受賞
●第81回ゴールデングローブ賞 ミュージカル・コメディ部門 作品賞、主演女優賞(エマ・ストーン)受賞

2023年/アメリカ/カラー/シネスコ/142分/R18+
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
©2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.
https://www.searchlightpictures.jp/movies/poorthings
★2024年1月26日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 15:11| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

カラフルな魔女 角野栄子の物語が生まれる暮らし

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監督:宮川麻里奈
撮影:高野大樹
音楽:藤倉大
語り:宮崎あおい
出演:角野栄子

「魔女の宅急便」原作者の角野栄子さんに4年間密着したドキュメンタリー。NHKのEテレで10回にわたって放送された番組の映像を元に、追加撮影を加えて再編集されたものです。
角野さんの鎌倉の自宅での毎日の暮らし、トレードマークのカラフルなファッション、こだわりの眼鏡や洋服選びのコツがわかります。
34歳で作家デビュー以後、2018年に国際アンデルセン大賞を受賞。日本人として3人目の快挙です(そのときの映像もちゃんと入っています)。
角野さんが5歳のときお母さんは病気で亡くなられました。お父さんは残された角野さんと弟さんに昔話を聞かせてくれたそうです。本が大好きな少女に育ち、大学で英米文学を専攻。24歳で夫君とブラジルのサンパウロに移住し、そこでたくさんの人々と知り合います。ことに、同じアパートに住むルイジンニョ少年との出逢いが、作家の原点となりました。ポルトガル語を教わっただけでなく、土地の生活になじむのに大いに助けになったようです。詳しくは著作「ルイジンニョ少年」(1970年刊行、アンデルセン大賞の受賞を機に復刻)をお読みください。このご本人も登場します。

いちご色のご自宅の仕事場や可愛いコレクションに目を奪われますが、これは、昨年11月3日に江戸川区にオープンした「魔法の文学館(江戸川区角野栄子児童文学館)」でも見ることができます。映画を楽しんだ後にぜひお訪ねください。
1月1日、角野さんは89歳のお誕生日を迎えました。今も衰えない創作力、いつまでも若々しい角野さんの魅力に誰もが「こうなりたい!」と憧れるのではないでしょうか?いつも笑顔でいられる秘密はどこにあるのでしょう?知りたい方は劇場へ~!!(白)


『魔女の宅急便』の作者として知られる角野栄子さん。角野さんに密着取材した映画が公開されるというので楽しみにしていた。この映画のタイトルのようにカラフルな家と服装、そして眼鏡のコレクションもカラフル。元気な80代後半の4年間を切り取った映像を観ていたら元気がでました。角野栄子さんのことは、『魔女の宅急便』の作家としてしか知りませんでしたが、この映画で多数の著作があることを知りました。また、1959年、24歳の時ブラジルに移民していたとありました。私も小学校高学年から高校生くらいまで、ブラジルに移住したいと考えていたので、そのことを知りびっくりしました。その時に知り合い、ポルトガル語を教えてくれた少年をテーマにした「ルイジンニョ少年、ブラジルをたずねて」というのがデビュー作とのことで、どこかでみつけて読んでみたいと思います。また娘さんの名前が「リオ」さんとのことで、角野さんはもしかしたらリオデジャネイロにいたのかな。私が唯一行ったことがあるブラジルはリオデジャネイロですが、空港、タクシー、ホテル、レストランなど、ここでは英語はほとんど通じませんでした。住むにはブラジルの公用語であるポルトガル語を知らないと大変だったと思います。私も少しポルトガル語を勉強しましたが、アルファベットのポルトガル読みと「オブリガード」という言葉しか覚えていません。この映画の中のポルトガル語も、唯一わかったのは「オブリガード」だけでした。「ありがとう」という意味です。それにしても1959年にブラジルに行っていたとは、夫と一緒とはいえ、勇敢な人だなと思いました(暁)。

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☆神楽座での試写会上映前の舞台挨拶を取材しました。こちらです。

2024年/日本/カラー/96分
製作・配給:KADOKAWA 映像提供:NHK
(C)KADOKAWA
https://movies.kadokawa.co.jp/majo_kadono/
X(旧Twitter):@majo_movieInstagram:@majo_movie
★2024年1月26日(金)ロードショー

posted by shiraishi at 13:10| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

すべて、至るところにある  英題:Everything,Everywhere

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(C)cinemadrifters

監督・プロデューサー・脚本・編集:リム・カーワイ
撮影:ヴラダン・イリチュコヴィッチ 
録音・サウンドデザイン:ボリス・スーラン 
音楽:石川潤
宣伝デザイン:阿部宏史
出演:アデラ・ソー(蘇嘉慧)、尚玄、イン・ジアン(蔣瑩)

マカオ出身のエヴァは、かつて旅先のバルカン半島で、映画監督のジェイと出会った。その後、パンデミックと戦争が世界を襲う。バルカンの友から便りを貰ったエヴァは、再びバルカンを訪れる。「ジェイがあなたに残した」とハードディスクとUSBを渡される。姿を消したジェイを探すエヴァ。ジェイがエヴァを出演させて撮った映画が『いつか、どこかで』というタイトルで完成していたことを知る。セルビア、北マケドニア、ボスニア・ヘルツェゴビナでジェイを探すうちに、エヴァはジェイの過去と秘密を知ることになる・・・

マレーシア出身のリム・カーワイ監督によるバルカン半島映画第3作目。1作目の『どこでもない、ここしかない』に出てきた浮気者のトルコ人フェデルがジェイの友人として出てきたり、アデラ・ソーが主演した2作目の映画『いつか、どこかで』が、ジェイがエヴァを主役に撮影した映画として登場したりしますが、1作目と2作目を観ていなくても、本作だけでも完結した映画として楽しめます。

『どこでもない、ここしかない』『いつか、どこかで』については、こちらで!
リム・カーワイ監督のバルカン半島映画3作目公開を前に2作品を観ました (咲)

チラシ画像の、エヴァとジェイの背景にあるのは、旧ユーゴスラビアの巨大建造物(スポメニック)。私は、1987年5月、まだユーゴスラビアだった時にベオグラードからドブロブニクに飛び、そこからアドリア海沿いにイタリアに抜ける旅をしたことがあります。絵のように美しい町がずっと続いているのですが、時折、似つかわしくない近代的な建造物が表れてびっくりしたのを思い出します。社会主義時代の遺物。
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(C)cinemadrifters
映画の最後にボスニア・ヘルツェゴビナのモスタルの町の石橋が出てきます。オスマン帝国支配下だった1566年に完成したアーチ型の美しい石橋ですが、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争の折、1993年11月にクロアチア軍によって破壊されてしまいました。実は、1987年にユーゴを旅した折、モスタルの石橋を観に行きたかったのですが、ドブロブニクから一日がかりになる為、ドブロブニク観光を優先して石橋を諦めたのです。いつかまた来られると思って。その後、川底から破壊された橋の残材を拾い集め、地元の石灰岩で補完して、創建当時の技法で再建されましたが、やはり別物。紛争を思い起こすシンボルでなく、民族融和の象徴となってほしいと願います。
映画の中で、ボスニアの男性が「僕たちは皆、ニックネームで呼び合う。本名を知らない。民族や宗教をお互い知らない」と語っている場面がありました。「ボスニアは特別な場所。混血が多い」と語る男性も。モスタルも、紛争が勃発する前は、ボスニア人、クロアチア人、セルビア人などが共生する町だったのです。戦争がいかに愚かなものか、ぜひ本作を観て感じてほしいと思います。(咲)



2023年/日本/カラー/DCP/5.1ch/88分
配給:Cinema Drifters 宣伝:大福
公式サイト:https://balkantrilogy.wixsite.com/etew
★2024年1月27日(土)よりイメージフォーラム他全国順次公開


posted by sakiko at 00:36| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年01月18日

緑の夜  原題:緑夜 英題:GREEN NIGHT

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(C)2023 DEMEI Holdings Limited (Hong Kong). All Rights Reserved

監督:ハン・シュアイ(韩帅)
出演:ファン・ビンビン(范冰冰)(『ブッダ・マウンテン ~希望と祈りの旅』)、イ・ジュヨン(「梨泰院クラス」『野球少女』『ベイビー・ブローカー』、キム・ヨンホ

韓国、仁川港国際ターミナル。保安検査場で働くジン・シャは、中国での苦難の過去から逃れ、配偶者ビザで韓国で暮らしている。ある日、中国・煙台行きのフェリーに搭乗しようとしている緑の髪の若い女性が怪しいと、靴を脱がせる。上司から、買い付けに行っている常連と聞かされる。
その日、帰りのバスに乗り遅れたジン・シャは、緑の髪の女に声をかけられ、一緒にタクシーに乗る。宿命的に出会った二人は、やがて犯罪に巻き込まれ、逃避行が始まる・・・

中国・山東省煙台市出身の女性監督ハン・シュアイが、対岸の韓国・仁川を舞台に描いた物語。
ファン・ビンビンも監督と同じく中国山東省の海辺の町・青島出身。久しぶりの映画復帰作。美人で派手なイメージのあるファン・ビンビンが、本作では陰のある控えめな女性を演じています。2ヶ月かけて韓国語のセリフを自然に話せるよう努力を重ねたそうです。また、イ・ジュヨンは中国語の発音を学んだ経験があるものの、妥協せず、何度も録音した自分のセリフを聴いていたとのこと。 言葉や文化背景の違う二人の女性の化学反応が本作の魅力です。暴力的で抑圧的な男どもを相手に、二人がどう出るかを見守りました。(咲)


2023年/香港/韓国語、中国語/カラー/92分
配給:ファインフィルムズ
公式サイト:https://midorinoyoru.com/
★2024年1月19日(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷シネクイントほか全国順次公開


posted by sakiko at 18:45| Comment(0) | 香港 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年01月14日

海街奇譚(※読み:うみまちきたん) 原題:海洋動物  英題:In Search of Echo

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©Ningbo Henbulihai Film Productions/Cinemago

脚本・監督:チャン・チー(張弛)
共同脚本:ウー・ビヨウ
撮影:ファン・イー、視覚効果:リウ・ヤオ、音楽:ジャオ・ハオハイ、美術:ポン・ボー、編集:シュー・ダドオ
出演:チュー・ホンギャン(朱洪洋)、シューアン・リン(林煊)、ソン・ソン(孙正霖)、ソン・ツェンリン、チュー・チィハオ、イン・ツィーホン

カメラを手に離島の堤防の上を歩く男チュー。彼はいなくなった妻を捜しに、彼女と出会ったこの島に来た。小学校の女教師に妻の姿を重ね、思わずシャッターを切る。
カブトガニの⾯を被った漁師たちとすれちがう。町の守護仏の頭が消えて以来、海に出た者が戻ってこなくなり、漁師たちは漁に出ていない。町⻑の息⼦シンシンが、父さん一人で仏像の頭を探しているという。
「宿ならある」と太った女に声をかけられる。ひっそりとしたホテルのカウンターには、美女の写真。5年前の8⽉5⽇にいなくなった双子の妹だという。季節はずれに島に来るのは自殺願望の学者や詩人だといわれ、『オアシス』という映画で変態殺人鬼を演じた映画俳優だと名乗るチュー。島に来たのは妻を捜すためというと、⼥主⼈はダンスホールの女将を訪ねることをチューに勧める。
ダンスホールに行き、⼥将に妻を捜しに来たと話すと、「見つからないわ」と言われる。女将も夫が5年前、漁に出たきり戻ってこないという・・・

季節はずれの、もの悲しげな島の風情に、クラゲやタコにカブトガニと、原題の「海洋動物」が不思議な彩を添える斬新な映像。時折、俳優チューが妻とのことを回想する場面が挟み込まれ、現実と夢が交錯してくらくら。
同じような女性の顔が・・・と思ったら、シューアン・リンが、⾏⽅不明の妻、⼥教師、ダンスホールの女将の三役を演じているのでした。
撮影地は、上海から船で1時間の⾈⼭浙江省の勝渓島。意外と都会から近い場所でした。チャン・チー監督ゆかりの地。
冒頭、スタイリッシュな人物写真が数枚映し出されます。主人公チューがフィルムで撮った写真という設定。映画俳優よりも、写真家としての才能がありそう! 
8月5日という日付が、何度か出てきて、その意味するところは?と想像を掻き立てられました。(咲)


2019年/中国/112分
配給・宣伝:Cinemago
公式サイト:https://umimachi-kitan.jp/
★2024年1月20日(土)、シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開




posted by sakiko at 19:40| Comment(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年01月13日

VESPER/ヴェスパー(原題:VESPER)

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監督・脚本:クリスティーナ・ブオジーテ、ブルーノ・サンペル
脚本:ブライアン・クラーク
出演:ラフィエラ・チャップマン(ヴェスパー)、エディ・マーサン(ヨナス)、リチャード・ブレイク(ダリウス)、ロージー・マキューアン(カメリア)

生態系が壊れ、資源が枯渇した未来の地球。一部の富裕層は鉄壁に囲まれた城塞都市“シタデル”に暮らしている。ほかの貧しい人々は食べるものも見つからない外の世界で暮らすしかない。13歳の少女ヴェスパーは、負傷して寝たきりになった父親と二人暮らし。食料探しが楽になるように、この世界でも育てられる食物の研究を続けていた。父親の実の兄、ヨナスは外の世界での支配者だが、冷酷で父娘の窮状など気にかけてはくれない。
ヴェスパーは森の中で倒れていた女性を助けて家に連れ帰る。いかにも高価な服装の彼女は、シタデルの権力者の娘のカメリアと名乗った。シタデルとのつながりが得られるかもしれない、とヴェスパーは期待するが・・・。

描かれたビジュアルはどんよりと灰色で、身の回りは廃墟と瓦礫ばかりです。分断された世界でヴェスパーが食物としているのは、「それは勘弁して」というたぐいのものです。みな飢餓状態で、いよいよとなると子どもたちは血を売るという手段に出ます。若い血は、シタデルで富裕層が買い上げます。その仲買で儲けているのがヨナス。植物の種もヨナスだけが持っています。
ジブリの『風の谷のナウシカ』を思い出させますが、住民が仲良く助け合っていた風の谷とは大違い。為政者の違いですね。こんな世界はいやだ~と思いながら、孤軍奮闘のヴェスパーを見守りました。未来はいつどうなるのか、誰にもわかりません。良い方にと願うばかりです、(白)


☆世界三大ファンタスティック映画祭の一つ(ほかにシッチェス、ポルト)、ブリュッセル国際映画祭で最高賞(金鴉賞)受賞

2022年/フランス・リトアニア・ベルギー合作/カラー/シネスコ/114分
配給:クロックワークス
(C)2022 Vesper - Natrix Natrix, Rumble Fish Productions, 10.80 Films, EV.L Prod
https://klockworx-v.com/vesper/
★2024年1月19日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 22:10| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ある閉ざされた雪の山荘で

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監督:飯塚健
原作:東野圭吾
脚本:加藤良太 飯塚健
撮影:山崎裕典 初野一英
主題歌:WEST.
出演:重岡大毅(久我和幸)、中条あやみ(中西貴子)、岡山天音(田所義雄)、西野七瀬(元村由梨江)、堀田真由(笠原温子)、戸塚純貴(雨宮恭介)、森川葵(麻倉雅美)、間宮祥太朗(本多雄一)

劇団に所属する役者たち、本多雄一、田所義雄、中西貴子、元村由梨江、笠原温子、雨宮恭介の6人は人里離れた山荘にやってきた。そこで待っていたのは、ほかの劇団員で面識のなかった久我和幸。7人は新作舞台の最終オーディションの招待状を受け取ってやってきた。4日間の合宿で彼らが演じるのは、「大雪で閉ざされた山荘で起きる連続殺人事件」というシナリオ。演出家の設定のみが壁に投影され、後は彼らの力だけで最後まで演じなければならない。離脱すれば主役になるチャンスは失われる。
携帯電話は一つ所に集められ、外部との接触は断たれた。密室で一人、また一人とメンバーが消えていく。これはフィクションなのか?

それぞれ主役をはれる人気の若手俳優たちが、東野圭吾氏の密室劇のために集められました。
舞台演出も手掛ける飯塚健監督のこれまでの作品は、当初からご自身のオリジナル脚本が多かったと思います。『荒川アンダーザブリッジ』(2012)から昨年5月に公開された『宇宙人のあいつ』まで観ていますが、キャストたちのアンサンブルが、ほんわかした空気を作り出していてどれも楽しい作品でした。
今回は珍しく殺人事件もおきるミステリーで、原作は30年前の作品。登場人物の思惑や過去が明かされるにつれ、誰もが怪しく見えてきます。なんの予備知識もなしに、メンバーたちと雪の山荘のミステリー劇にご参加ください。(白)


2023年/日本/カラー/シネスコ/109分
配給:ハピネットファントム・スタジオ
(C)2024映画「ある閉ざされた雪の山荘で」製作委員会 (C)東野圭吾/講談社
https://happinet-phantom.com/tozayuki/
★2024年1月12日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー

posted by shiraishi at 01:44| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年01月12日

ビヨンド・ユートピア 脱北(原題:Beyond Utopia)

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監督・編集:マドレーヌ・ギャビン
プロデューサー:ジャナ・エデルバウム、レイチェル・コーエン
撮影:キム・ヒョンソク

ロ夫妻と80代の母親、二人の幼い娘が脱北を試みて山の中をさまよっているところを助けれらた。一家の映像は韓国のキム・ソンウン牧師のもとに送られ、先に脱北していた親類と連絡がつく。北朝鮮では脱北した者の家族は監視され、いつ警察に捕まって強制収容所に送られてもおかしくない。厳しい条件下のロ一家を助け出すために、キム牧師は何カ国にも渡る脱出ルートを探る。
一方、一人韓国で暮らしているソヨン・リーは生活のため川を渡ろうとして捕まり2年収監された。家族に会えず仕事もなく、やむを得ず脱北したが10年も顔を見ていない息子チョンをこちらに呼びたい。ブローカーを信じて言われるまま送金したが、脱北直前に裏切ったブローカーの密告で息子は拘束されてしまう。

最初に10代で脱北して中国へ渡ったイ・ヒョンソさん(のちに韓国で結婚、自身の体験をつづったノンフィクションを書きます**)が登場します。初めはこの人の映画を撮ろうとしたギャビン監督ですが、韓国でキム牧師に出会ったことで、映画は別の道をたどり、亡命するロ家族の一部始終を記録することになります。
たった一人が国境を越えるだけでも大きな危険が伴うのを、いくつもの作品で観てきました。お年寄りと幼い子どももいる一家5人全員の亡命の旅は、想像を絶するものでした。キム牧師と隠れ家に落ち着くまで、見ているこちらも心配で息がつまりそうでした。
北朝鮮での生活はどんなものだったか、いろいろな言葉で明かされます。一つの国が収容所みたいなもの、一切の情報は遮断され、国は国民に改変した歴史と都合の良い情報のみを与えます。監視と密告と厳しい処罰、恐怖で人は容易に支配されます。ロ一家のお祖母ちゃんが、それに気づいていくときの表情がなんともいえません。ソヨンと息子のその後が気にかかります。(白)


脱北や、北朝鮮の収容所をテーマにした映画はかなり観ていると思う。それにしてもこの山道を80代の方が歩いて踏破したということに驚いた。そして、救出に向かったキム牧師とよく合流できたと思う。たくさんの人の協力があったからとは思うけど、観ている間ハラハラドキドキだった。4か国、12000キロの行程を経て、この家族はよく無事に韓国にたどり着けたなと思うと同時に、それがドキュメンタリー作品として形になったということにも驚いた。過酷な旅の実態が残せたのは、スマホの普及で素人でも記録を残せたからにほかならない。
北朝鮮がいかに閉鎖国家で、国民は監視され情報が支配されているか、北朝鮮の状況がこれでもかこれでもかと出てきます。確かに北朝鮮の国民はひどい状況の中にいると思います。北朝鮮のプロパガンダ映画のシーンを観ると、この独裁国家の人権はひどいとも思います。でも、この映画はアメリカのプロパガンダ映画のようにも思いました。
この脱北をした家族や、他の脱北をした人たちの話を聞くと、祖国への恐怖や憎しみと共に、郷愁や愛情、祖国にいる家族や友人を思いやる言葉が出てきて、ほっとした(暁)。


2023年サンダンス映画祭「USドキュメンタリー部門」観客賞ほか各地の映画祭での受賞多数。

2023年/アメリカ/カラー/115分
配給:トランスフォーマー
公式サイト:https://transformer.co.jp/m/beyondutopia/
★2024年1月12日(金)TOHOシネマシャンテ、シネ・リーブル池袋ほか全国順次公開
*北朝鮮を知るために監督が手掛かりとした本。
「密閉国家に生きる  私たちが愛して憎んだ北朝鮮」バーバラ・デミック/著 中央公論新社
**「7つの名前を持つ少女」 イ・ヒョンソ/著 大和書房

posted by shiraishi at 23:31| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年01月08日

弟は僕のヒーロー   原題:Mio fratello rincorre i dinosauri

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(C)COPYRIGHT 2019 PACO CINEMATOGRAFICA S.R.L. NEO ART PRODUCCIONES S.L.

監督:ステファノ・チパーニ
出演:アレッサンドロ・ガスマン、イザベラ・ラゴネーゼ、ロッシ・デ・パルマ、フランチェスコ・ゲギ、ロレンツォ・シスト、ロベルト・ノッキ、アリアンナ・ベケローニ

5歳のジャックは、両親から弟が出来ると聞いて大喜び。 姉妹二人にいつも負かされていたから、これで対等だと! 家族皆でジョーという名前(愛称)も決める。ところが生まれてきたジョーはダウン症。両親は子どもたちに弟ジョーは「特別な子」と伝える。幼いジャックは、ジョーがスーパーヒーローだと思っていたが、やがて「特別」の意味を悟り、ジャックはだんだん弟の存在を隠すようになる。高校生になり、好きな女の子もいる場で、弟について取り返しのつかない嘘をついてしまう。さらに、友人が弟のために作ってくれたYouTubeを削除し、ネオナチの仕業だと噂を広める・・・

イタリアに住む高校生のジャコモ・マッツァリオールが、2015年3月21日「世界ダウン症の日」に合わせて、ダウン症の弟ジョーを主人公に一緒に撮影した5分のショートムービー『ザ・シンプル・インタビュー』をYouTubeに公開。瞬く間にイタリア国内外で60万回を超えて再生され、大手出版社の目に留まり、ジャコモは弟との物語を執筆。本作は、2016年に出版された小説「弟は僕のヒーロー(原題:Mio fratello rincorre i dinosauri)」の待望の映画化。ジャコモは、映画の脚本に携わっています。 (ジャコモさん、イケメンです! 下記の動画をご覧ください。)
『弟は僕のヒーロー』主人公のモデル!原作&脚本家ジャコモ・マッツァリオールメッセージ動画


「弟は僕のヒーロー」
著/ジャコモ・マッツァリオール 訳/関口英子
装画:ヨシタケシンスケ
発行:小学館文庫(2023年12月6日発売)
https://www.shogakukan.co.jp/books/09407285

ジャックがついた大きな嘘には脚色もあるけれど、ほとんどが原作者ジャコモ自身の経験に基づく実話。自由奔放で時に問題を起こすジョーに煩わしくなる気持ちも正直に描いています。両親は、ジャックが嘘をついたことを「親だから許す」と言います。両親がいなくなってからのジョーが心配だというジャックに、両親は「あなたたちがいる」と信頼しています。ジャックの心配は、それよりも、ダウン症のジョーが先に死んでしまうのではということに、ほろっとさせられました。こうして家族皆がジョーを支えているのですが、医師は「妊娠中に検査してダウン症とわかれば、別の選択もできたのに」と両親に伝えています。障がいを持つ子を育てるのは大変だけど、「別の選択」をするのも勇気のいること。
本作では、家族や叔母が、ジョーを特別視しないで、いつも明るく見守っている姿に、爽やかな気持ちになりました。(咲)


2019年/イタリア、スペイン/イタリア語/102分/カラー/2.39:1/5.1ch
配給:ミモザフィルムズ
公式サイト:https://mimosafilms.com/hero/
★2024年1月12日(金)シネスイッチ銀座、新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMA、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開
posted by sakiko at 21:27| Comment(0) | イタリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年01月07日

燈火(ネオン)は消えず 原題:燈火闌珊 英題:A Light Never Goes Out

2024年1月12日(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、シネマート新宿他
全国順次公開 その他の劇場情報

燈火_チラシ表_R.jpg
©2022 A Light Never Goes Out Limited All Rights Reserved


第59回金馬奨最優秀主演女優賞(シルヴィア・チャン)
第96回米アカデミー賞国際長編映画賞香港代表作品

2022年の東京国際映画祭では『消えゆく燈火』のタイトルで上映され、中華圏映画ファンの観客の大きな話題になった作品。
台湾金馬奨で、主演のシルヴィア・チャンが『最愛』(1986年)以来36年ぶり3度目の主演女優賞に輝いた他、数々の賞を受賞。第 96 回アメリカのアカデミー賞国際長編映画賞の香港代表作品に選出された。その際、シルヴィア・チャンが語った「香港のネオンをふたたび灯しましょう!」という言葉と、香港ネオン職人たちの思いに共感し、邦題を『燈火(ネオン)は消えず』にした。

監督・脚本:曾憲寧(アナスタシア・ツァン)
製作:張艾嘉(シルヴィア・チャン
プロデユーサー:陳心遙(サヴィル・チャン)
撮影:梁銘佳(リョン・ミンカイ)
美術:莫少宗(アレックス・モク)
編集:陳序慶(ノーズ・チャン)
音楽:黃艾倫(アラン・ウォン)、翁瑋盈 (ジャネット・ユン)
出演
メイヒョン:張艾嘉(シルヴィア・チャン)
ビル:任達華 (サイモン・ヤム)
レオ:周漢寧(チャウ・ホンネン)ヘニック・チャウ
チョイホン(娘):蔡思韵(セシリア・チョイ)

香港では2010年の建築法等の改正以来、2020年までに9割ものネオンサインが姿を消したと言われる。香港独自の文化が少しづつ消えてゆく今、その灯を消すまいと奮闘する香港人の心意気と、ネオン職人たちによる映画のラストサプライズが大きな感動を呼んだ。

メイヒョン(シルヴィア・チャン)は、腕ききのネオンサイン職人だった夫のビル(サイモン・ヤム)の死後、夫のネオン制作工房の鍵をみつけた。工房に行ってみると見知らぬ青年レオ(ヘニック・チャウ)がいた。ビルの弟子だという。そしてビルがやり残した仕事があるという。最初は取り合わず、工房を閉めようとするが、レオに教わって自分もガラスでネオン細工をやってみる。そして、この技術を残すことと、夫が残した仕事とは何だったのかを調べ始める。夫がやり残したものがわかり、レオとともに最後のネオンを完成させようと決意する。香港の夜景の象徴だったネオンサインがほとんど消えた中で、CGで表現したり、職人が新たに作り直すなどしてネオンサインを再現。
妻役のシルヴィア・チャンは台湾出身、台湾・香港映画界で活躍してきた。『過ぎゆく時の中で』『妻の愛、娘の時』『レッド・バイオリン』などの作品に出演。監督作も8作あり、『妻の愛、娘の時』は、2017年台湾金馬奨監督賞を受賞している。夫役のサイモン・ヤムはモデル出身の俳優。『ワイルド・ブリット』『夜と霧(天水圍的夜與霧)』『ザ・ミッション 非情の掟』などに出演。娘役のセシリア・チョイは『返校 言葉が消えた日』で注目され、現在公開中の『香港の流れ者たち』にも出演。ヘニック・チャウは『アニタ』に出演。

私が初めて香港に行ったのは1994年。その時は、香港のメインストリートである彌敦道(ネイザンロード)にも、その他の道路にも、道にはみ出した看板(ネオンサインも含む)がずっと続いていて、その光景にびっくりした。夜になると光り輝き、きらびやかなネオンが派手さを競っていた。2階建てバスに乗り、それらの道を行くと、まるで頭にぶつかりそうになるくらいの感じだった。その後、3、4年に1回くらい行っていた。この30年のあいだに計13回香港に行っているが、この派手なネオンサインが2020年までの間に90%も無くなっていたということは、この映画を観るまで認識していなかった。2010年以降には3回くらい行っているが、道路にせり出した看板(ネオンサイン)はいつのまにかなくなっていたんですね。もっとも観光主体で行ったことはなく、コンサートや香港アカデミー賞の授賞式取材、香港映画祭などで行っているので、あまり街中を歩きまわったり、走り回ったりしてはいなかったので気がつかなかったというのもあるかもしれない。13回目、2018年に行った時、初めて観光らしきことをした。初めて銅鑼湾(コーズウェイベイ)ー 堅尼地城(ケネディタウン)間を2階建てトラム(電車)に乗って、トラム沿いの街の景色を楽しんだ。道路脇にはたくさんの店が続いていたけど、昔あった道路に飛び出た看板やネオンサインはなかった。こういうものは気にしていなければ、気がつかないものだとつくづく思った。
そういえば、1月4日に『いますぐ抱きしめたい』(1991年日本公開)のデジタルリマスター版を観に行った時に、この映画の中でいくつものネオンサインが出ていた。思えば、香港映画の中でたくさんのネオンサインを観てきた。今は映画の中でしか観ることができなくなってしまったネオンサイン。100万ドルの夜景とも言われる香港の夜景だが、象徴でありながら廃れゆくネオンサインそのものを題材にした映画はなかった。この作品は、とても良い題材であり、家族の物語だった(暁)。


曾憲寧&陳心遙トリ_R.JPG
左 サヴィル・チャンプロデユーサー 右 アナスタシア・ツァン監督
2022年第35回東京国際映画祭にて


DSCN5804補正_R.JPG
香港トラムからの景色(中環セントラルよりケネディタウン寄り?)
2018年6月
撮影:宮崎暁美


公式HP https://moviola.jp/neonwakiezu/#modal
2022年/香港映画/103分
配給:ムヴィオラ

posted by akemi at 21:03| Comment(0) | 香港 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ニューヨーク・オールド・アパートメント(原題: THE SAINT OF the Impossible)

the saint.jpg

監督:マーク・ウィルキンス
原作:アーノン・グランバーグ著「De heilige Antonio」
脚本:ラニ=レイン・フェルサム
撮影:ブラク・トゥラン
出演:アドリーノ・デキュラン(ポール)、マルセロ・デュラン(テイト)、マガリ・ソリエル(母ラファエラ)、サイモン・ケザー(エドワルド)、タラ・サラー(クリスティン)

ペルーからニューヨークにやって来た不法入国の家族。母親のラファエラはウェイトレスとして働き、女手一つで双子を育てている。ポールとテイトの兄弟も、配達のバイトで母を助けているが、語学学校にも通っていて家計は苦しい。経済的な問題だけでなく、不法滞在の3人は見つかれば強制送還されてしまう。夢見たアメリカでの生活だったが、ポールとテイトには自分たちが誰の目にも止まらない透明人間のように思えるのだった。
ある日学校にミステリアスな美女、クリスティンがやってくる。兄弟はたちまち一目ぼれ、何の希望もなかった毎日に光が差し込んできた。

不法移民の映画はいくつか観てきましたが、この作品ではペルーから。なんとそんなに遠くからアメリカを目指して?と驚きます。どんなに過酷な旅だったか、想像もできません。
兄弟が恋に落ちているころ、働きづめのラファエラは親しくなった男、エドワルドの甘言にのり、メキシコ料理のデリバリーを始めてしまいます。準備も何もめちゃくちゃで、うまく行くはずがないと素人目でもわかるほどです。お察しのとおり母子ともひどい目に遭いますが、絶望はしません。よりどころがあれば人間は強くなれると思えました。今辛い境遇にある移民の方々、戦火の中の子どもたち、希望をなくしている人々に思いをはせてください。(白)


語学学校で、先生が「戦争を経験した人は?」と尋ねる場面がありました。肌の色も様々な20名程の生徒の半数以上が手をあげました。ペルーの双子の兄弟も、クロアチアのクリスティンも、なぜ国を出てきたかは映画では語られませんが、より良い暮らしをしたいと願ってのこと。
日本に住むイランやトルコの人たちの中に、不法滞在でいつ捕まって強制送還されるかを気にしながら暮らしている方がいるのを身近に見てきました。住みたいところに住まわせてあげればいいのに・・・と思うのですが、国によって、それぞれ規制があって、思うようにはいかないのが残念です。国境のない世界を!と思います。
ポールとティトを演じたのは、ペルーの全国オーディションで選ばれた本当の双子の兄弟。大学でアドリアーノは医学、マルセロはシステム工学を専攻。LOS MORDOSというロックバンドで兄弟で活動中。本作が映画初出演。とてもピュアで、演技と思えない自然さ。母ラファエラが女性として生きようとしているのも、息子たちは応援しています。もっとも、メキシコのブリート屋の共同経営を持ちかけた男の胡散臭さはちゃんと見抜いています。母ラファエラも息子たちのことを思いながら、自分の人生を生きようとしていて素敵です。(咲)


『ニューヨーク・オールド・アパートメント』というタイトルから不法移民の話だとは思わなかった。観始めて、ペルーからニューヨークに来た人たちの話だと知った。この親子3人はどのような方法でニューヨークに来たのだろう。よりよい生活を求めての不法入国というけど、そんなにうまくいくとは思えない。それに、言語が違う国での生活というのはかなり不便だと思うけど、それでも、この親子3人やクリスティンだけでなく、苦難のはてにニューヨークにたどり着いた人たち、アメリカン・ドリームを夢見た人たちの思い、希望、未来を考えてしまった。母親は、周りの友人たちの協力でなんとか移民局に捕まらずに済んだところで映画は終わったけど、その後も心休まる間がない暮らしは続いていくのだろうと思うと、この家族が安心して暮らせる居場所をみつけられますようにと祈った。母親を演じたのは『悲しみのミルク』(09)に出演していたマガリ・ソリエル。この作品では彼女の役の設定にびっくりした(暁)。

2020年/スイス/カラー/ビスタ/98分/PG12
配給:百道浜ピクチャーズ
(C)2020 - Dschoint Ventschr Filmproduktion / SRF Schweizer Radio und Fernsehen / blue
https://m-pictures.net/noa/
★2024年1月12日(金)新宿シネマカリテほか全国公開

posted by shiraishi at 19:25| Comment(0) | スイス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

セマンティックエラー・ザ・ムービー(原題:Semantic Error: The Movie)

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監督:キム・スジョン
原作:「セマンティックエラー」J.Soori
 韓国電子書籍プラットフォームRIDIBOOKS2018年BL小説大賞
出演:パク・ジェチャン(チュ・サンウ)、パク・ソハム(チャン・ジェヨン)、キム・ノジン(リュ・ジヘ)

工学部3年生のチュ・サンウは、真面目な完璧主義者の秀才で、無駄は大嫌い。ルーティン通りの安定した毎日を過ごしている。そんな彼がグループ課題を一人で発表する羽目になり、さぼったメンバーを教授に報告した。そのために卒業を控え、留学も決まっていた先輩のチャン・ジェヒョンは卒業取り消しになってしまう。彼は学校一のイケメン・モテ男、自由奔放でスキルも高い。自分将来を邪魔したサンウはどんな奴かと、周りに出没し始める。
サンウは自業自得と取り合わないが、ジェヨンは反応を面白がってまとわりつき、整然としていたサンウの日常にエラーが生まれていく。
*セマンティックエラー(文法的には正しくとも機能しないコンピュータ構文)

韓国映画では珍しいBLものです。モデルなみの長身イケメンのジェヨンが、後輩で変わり者のサンウをからかっていくうちに、可愛い・・・と思ってしまう心の動きにきゅんっとするはず。うっとうしがっていたサンウが、ジェヨンの寝顔に思わず見とれてしまうのにもきゅんっ!見つめあう二人の身長差もいいですね。女子もからんではきますが、本命にはなりえません。眼福、眼福、お楽しみください。試写は本編 2時間57分一気見でしたが、長い感じはまったくしません。日本では、前編+後編と分けての上映。待つのも楽しみのうちです。おまけにアニメーション上映がありますよ。(白)

2022年/韓国/カラー/ビスタ/前編95分 後編106分
配給:ブシロードムーブ、トムス・エンタテインメント
(C)2022 Watcha All Rights Reserved.
https://semaera.jp/
前編 ★2024年1月12日(金)より
後編 ★2024年1月126日(金)より全国公開!

 
原作ノベルはこちら
posted by shiraishi at 18:19| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

巡る、カカオ ~神のフルーツに魅せられた日本人~

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©HEARTTREE

監督:和田 萌
出演:小方真弓、田口愛、堀淵清治、南雲主于三、土居恵規
ナレーション:堀ちえみ
エグゼクティブプロデューサー:服部 進
プロデューサー:鎌田雄介
音楽:原 摩利彦
編集:宮島亜紀
撮影:佐々木秀和 佐藤康佑
イラストレーション:RIKAKO KAGAWA

チョコレートの元「カカオ」はフルーツ!

本作は、チョコレートの原料であるカカオの歴史、栽培する農家の現状、そして、カカオの可能性に魅せられて、カカオのビジネスモデル構築に奔走する日本人の活躍を追ったドキュメンタリー。

コロンビア先住民の末裔であるカカオの起源となったアルアコ族が抱える課題を、現地に入り、共に課題解決に取り組みカカオ産業のビジネスモデル構築に奮闘するカカオハンター®小方真弓、アフリカのガーナに単身渡航し現地のカカオ産業を変えるため農家だけでなく政府にも働きかけ、革命を起こそうと奮闘している Mpraeso合同会社CEOの田口愛。カカオに魅了された二人の姿を中心に、ダンデライオン・チョコレート・ジャパン CEO 堀淵清治、株式会社 明治 ものづくり戦略本部 技術部 参与 土居恵規、カカオの新しいレシピ開発に取り組むミクソロジスト南雲主于三が出演し、各人にとっての“カカオの魅力や課題”について語る。

大好きなチョコレートの原料カカオは、てっきり豆だと思っていました。カカオは中南米を原産とする、熱帯地方で生育する常緑樹。カカオ豆と呼ばれるのは、カカオの実の中の種のこと。発酵・乾燥させたものがチョコレートになることを知りました。

冒頭に登場する海辺の集落。独特の白い帽子に白い服の男性にまずは目を惹かれました。南米コロンビアの北端シエラ・ネバダ・デ・サンタ・マルタで暮らすアルアコ族。15 世紀、スペインの侵略で8割が虐殺され、カカオの栽培地を手放し山奥に追いやられましたが、密かにカカオの文化を伝承し続け、30年ほど前に先祖の暮らしていた地に戻ってきました。
カカオハンター®小方真弓さんは、1997 年に製菓原料チョコレートメーカーに入社し6 年間商品開発や企画開発に従事。在勤中にカカオの原産地に行く機会もなく、一念発起して会社を辞めカカオ生産国を訪ねる旅に。NGO やアジア開発銀行のチョコレート復興プロジェクトに従事しながら、現在まで 15 カ国を訪ねています。その中で出会ったのがアルアコ族。現在、活動拠点をコロンビアに置いて、研究開発ディレクターとしてカカオ生産の発展に勤めているのですが、現地の人たちを思い日々働く姿が素敵です。
また、田口愛さんは、19 歳の時にガーナを初訪問し、カカオ農家の抱える課題を目の当たりにし「境界線を溶かすチョコレートを作る」と決意。2020年、Mpraeso合同会社を設立。クラウドファンディングで資金を調達し現地チョコレート工場を建設しています。ガーナでは政府がカカオ豆を全て同じ価格で買い上げる為、質より量を優先してしまうので、政府より高い価格で高品質のカカオ豆を買い上げるのだとか。
二人の若い日本女性の活躍を、和田萌監督がしっかり捉えた素敵なドキュメンタリーです。(咲)


2023/日本/カラー/89 分/ステレオ/シネスコ
製作:ハートツリー 制作:GENERATION11
協力:株式会社 明治
配給:ナカチカピクチャーズ
公式サイト https://megurucacao.jp/
★2024 年1月12日(金)よりシネスイッチ銀座ほか全国順次公開




posted by sakiko at 12:23| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

葬送のカーネーション  原題:bir tutam karanfil 英題:Cloves & Carnations

sousouno.jpg
(C)FilmCode

監督:ベキル・ビュルビュル
脚本:ビュシュラ・ビュルビュル、ベキル・ビュルビュル
出演:シャム・シェリット・ゼイダン, デミル・パルスジャン

荒涼とした冬のトルコ南東部。
太鼓の音と銃の音。小雪の舞う中、白い馬に赤いベールの花嫁が乗っている。
踊る人たち。料理が振舞われる。ラジオからは、「今朝、難民が国境を越えようとして亡くなった」というニュースが流れている。
年老いた難民の老人ムサは孫娘ハリメを連れ、亡き妻の遺体の入った質素な棺桶を引きながら国境をめざしている。故郷の地に埋葬するという約束を守るためだ。
ハリメは紛争の続く場所へ帰りたくないが、親を亡くし、仕方なく祖父と一緒に歩いている。なかなか乗せてくれる車はない。言葉の通じない地で、手助けしてくれる人もいる。トラクターやトラックに乗せてもらって、アナトリアの荒れた大地をいく・・・

2022年東京国際映画祭 アジアの未来部門で『クローブとカーネーション』のタイトルで上映された珠玉の物語。
老人ムサが孫娘ハリメと二人で亡き妻の棺を引いて、ひたすら故郷への国境を目指すのですが、アラビア語しか出来ないムサと違って、孫娘ハリメはトルコ語が出来て、肝心な話の時には通訳してくれます。演じたシャム・セリフ・ゼイダンは、2010年シリア生まれ。戦争のため2017年にトルコに移住し、ネヴシェヒル・カッパドキア地域の学校で学んでいます。本作が初の演技経験で、将来はプロの女優になることを夢見ているそうです。
老人ムサを演じたデミル・パルスジャンは、1950年イスタンブル生まれの俳優。アラブ人ではなくトルコ人ですが、しっかり難民の老人に見えます。
道中、様々な人と出会いますが、印象に残っているのはハヴァという老婆。「人生は短いの。死は別世界に行くこと」とハリメに語り、グローブの絵が描かれた箱に入ったキャンディを差し出します。「グローブは歯の痛みを和らげるのよ」の言葉に、人生の痛みも?と感じさせられました。
故国を離れざるを得ない人たちが今も絶えません。死して、せめて故郷の地で眠らせてあげたいという思いに涙。(咲)


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東京国際映画祭 『クローブとカーネーション』 Q&A報告 (咲) 
左:ベキル・ビュルビュル(監督/脚本/編集)、右:ハリル・カルダス(プロデューサー)


2022年/トルコ・ベルギー/トルコ語・アラビア語/ 16:9 / 5.1ch / カラー/103分
配給:ラビットハウス
協賛:トルコ文化観光省/トルコ国営放送局
公式サイト:https://cloves-carnations.com/
★2024年1月12日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、YEBIS GARDEN CINEMA ほか全国順次公開



posted by sakiko at 04:06| Comment(0) | トルコ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ミッション・ジョイ ~困難な時に幸せを見出す方法~  原題: Mission: Joy - Finding Happiness in Troubled Times

mission joy.jpg
(C)The Joy Film LLC

監督:ルイ・シホヨス 共同監督:ペギー・キャラハン
プロデューサー:ペギー・キャラハン、マーク・モンロー 
製作総指揮:ダーラ・K・アンダーソン 他
出演:ダライ・ラマ14世、デズモンド・ツツ 他

困難に直面した時、私たちはどのように幸せを見出すことができるのか?
本作はチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世と、南アフリカのアパルトヘイト撤廃運動の指導者の一人、デズモンド・ツツ大主教という2人のノーベル平和賞受賞者が、5 ⽇間にわたって⾏った歴史的な会談を中⼼に構成した90分のドキュメンタリー。
世界的ベストセラー「よろこびの書」に触発されて制作された本作はダラムサラのダライ・ラマ法王邸で撮影された未公開映像を中心に構成されている。信じがたいほどの困難や苦難を経験してもなお、なぜ2人は喜びと共に生き続けてこられたのか? 幸福研究で著名なソニア・リュボミアスキー博士とリチャード・デビッドソン博士を交え、科学的にも喜びを持ち生きる方法を読み解いていく。

ダライ・ラマ14世が若き日にチベットから峠を越えてインドに亡命する場⾯や、デズモンド・ツツ名誉⼤司教が南アフリカのアパルトヘイトに対して闘う姿が映し出されます。そんな様々な抑圧や困難を乗り越えたお二人の対談は笑いに満ちたものでした。
朝起きて、「ダライ・ラマと友達になるんだ」などと⾔わないでしょうとツツが言えば、朝起きて 「アフリカから来た⿐の⼤きな⿊⼈と友達になるんだ」と⾔うこともないでしょうとダライ・ラマ。お茶目で、まるでいたずらっ子のような二人。からかいあいながら豪快に笑う姿が忘れられません。苦しかったことも笑いで吹き飛ばせることを教えられたような気がします。
2023年9月18日「PEACE DAY x 国際平和映像祭 2023」における特別先行上映で拝見。(咲)


文部科学省特別選定作

2021年/アメリカ/90分/ドキュメンタリー
配給:ユナイテッドピープル
公式サイト:https://unitedpeople.jp/joy/
★2024年1月12日(金)ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて全国順次ロードショー




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2024年01月06日

シャクラ(原題:天龍八部之喬峰傳 Sakra)

『シャクラ』ポスタービジュアル.jpg

監督・製作:ドニー・イェン
原作:金庸「天龍八部」
アクション監督:谷垣健治
出演:ドニー・イェン(喬峰)、チェン・ユーチー(阿朱)、リウ・ヤースー(阿紫)、ウー・ユエ(慕容復)、カラ・ワイ(阮星竹)、チョン・シウファイ(段正淳)、グレース・ウォン(馬夫人)、ドー・ユーミン(白世鏡)、レイ・ロイ(慕容博)、チョイ・シウミン(鳩摩智)

11世紀末、宋代の中国。丐幇(かいほう)の幇主・喬峯(きょうほう)は義に厚く、腕が立ち、誰からも慕われる英雄的な存在だった。だがある日、副幇の馬大元が殺され、馬の妻・康敏(こうびん)の証言により犯人の濡れ衣を着せられてしまう。しかも漢民族ではなく、契丹人であるという出自まで明かされ、丐幇を追放されることになった。
喬峯は抗弁することなく、自らを陥れた人間を探し出し、父母に会って出生の真実をただすため旅に出る。行く手には更なる罠が仕掛けられ、途切れることのない闘いが待ち受けていた!

金庸(きんよう)が自ら創刊した香港の新聞に連載執筆した武俠小説「書剣恩仇録」(1955)から「鹿鼎記」(1972)まで15作。「天龍八部」は8番目に発表されました。原作は大理の王子段誉、丐幇の喬峯、少林寺の僧虚竹、大燕国復興を悲願とする慕容復の4人が主に活躍し、書籍は8巻。テレビドラマでは50話もありますが、この作品はドニー・イェンが大好き!な喬峯にフォーカスしています。続編ができそうな予感。
喬峯は生まれ育ちからして悲劇が始まっているのですが、言葉少なく行動で見せる英雄好漢。数多の敵をものともぜず、バッタバッタとなぎ倒し痛快この上ありません。武俠アクションに慣れない方は「ありえねぇ~~~」と思うかもしれませんが、半分仙人というかスーパーヒーローでもあるので、なんでもありなのです。そこへもってきて、われらがドニー様の美しい決めわざ!大きな画面でお楽しみください。

香港に通い始めた90年代、当地で新作映画を観てはドラマのVCD(!)を買いあさっていました。東京で香港のテレビ番組のビデオが借りられるようになって、どんなに喜んだことか!ドラマには、人気スターが出演していて中国語字幕を頼りに観続けました。漢字の国で良かったと思ったものです。(白)


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ドニー・イェンを初めて認識したのは、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 天地大乱』でした。(1993年に日本公開されていますが、その前に映画祭で観た記憶が・・・) 李連杰(リー・リンチェイ)の敵役で、役柄から悪者のイメージで顔も怖かったのですが、格闘シーンが見事で凄いなと思ったのでした。なにより足さばきが綺麗! その後、イップ・マンを演じて、いい人のイメージが定着しました。本作のドニー様も、女性への気遣いもできる素敵な人物。金庸の武俠小説の真髄をたっぷり味わえる一作です。(咲)

2023年/香港・中国合作/カラー/シネスコ/130分
配給:ツイン
(C)2023 Wishart Interactive Entertainment Co., Ltd. All Rights Reserved
https://sakramovie.com/
★2024年1月5日(金)TOHOシネマズ渋谷ほか全国ロードショー
posted by shiraishi at 00:43| Comment(0) | 香港 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする