2023年12月26日

無理しない ケガしない 明日も仕事!新根室プロレス物語

無理しない ケガしない 明日も仕事!.jpg

監督:湊寛
取材・編集:堀威
撮影:芦崎秀樹・目黒悦男
音楽:阿南亮子
ナレーション:柴田平美(北海道文化放送アナウンサー)
語り:安田顕
出演:サムソン宮本、オッサンタイガー、TOMOYA、MCマーシー、ねね様、アンドレザ・ジャイアントパンダ 他

”新根室プロレス”は、市内でおもちゃ屋を営むサムソン宮本が2006年に立ち上げた。宮本のプロレス愛と地元愛がさく裂して、100万円のリングも購入。メンバーを集めて神社のお祭りなどで興行をうち、地元の人々を楽しませてきた。集まったメンバーも宮本と同じプロレス好き、本業のかたわらトレーニングに励んだ。サムソンは一人人地にリングネームをつけ、覆面や衣装を考案「無理しない ケガしない 明日も仕事!」をモットーに、個性的なメンバーはイケてなかった過去など蹴り飛ばし、光り輝いていった。
しかし、地元に愛され人気者になっていった2019年9月、宮本は治療不可能な難病に侵されたことを発表、涙の解散宣言をした。

世のプロレス好きのお父さん、お兄さん、いや私のおばあちゃんも好きだったなと思い出しました。エンターテイメントと知りつつ、テレビの前で熱く応援していた人は多いですよね。そんなプロレス愛の塊のようなサムソン宮本さんと仲間たちを映像に残したのは、北海道文化放送(uhb)です。初めはニュース映像として取材したのが、テレビ版ドキュメンタリーとなり、数々の賞を受賞。このたびそれをもとに映画化されました。
宮本さんの娘さんがなんとも恥ずかし気でしたが、まさに命がけの引退試合に臨んだお父さんには力いっぱいの声援を送ります。リング上ではコミカルなパフォーマンスが続いているのですが、私も涙と鼻水をふきふき見守りました。こんな風に映像に残ってよかったですね、サムソン宮本さん、新根室プロレスの皆様。(白)


プロレスやボクシングなどの格闘技自体は好きじゃないのに、格闘技を描いた映画には、結構惹かれます。筆頭は、『反則王』(2000年)。ソン・ガンホ演じる銀行員が、なんでもありの覆面プロレスラーとして活躍する物語。ほんと、笑いました。『あゝ、荒野』では、ボクシングに挑む菅田将暉とヤン・イクチュンを息を殺して見守りました。劇映画より、さらに心に沁みるのが格闘技に挑む人を描いたドキュメンタリー。『ジョーのあした 辰吉丈一郎との20年』や『オリ・マキの人生で最も幸せな日』などを思い出します。一つのことに打ち込む姿に胸を打たれます。
本作も、大好きなプロレスで、皆を楽しませたいという宮本さんはじめ根室の皆さんの姿が素敵でした。残念ながら宮本さんはこの世を去ってしまいましたが、プロレスの楽しさが忘れられない人たちのこと、若いメガネのプリンスTOMOYAさんを中心に、きっとこれからも新根室プロレス、いえ、真根室プロレスとして皆を楽しませてくれるでしょう!(咲)



2024年/日本/カラー/DCP/79分
配給:太秦
(C)北海道文化放送
http://new-nemuro-pro-wrestling-movie.com/
★2024年1月2日(火)ポレポレ東中野
★2024年1月6日(土)シアターキノほか全国順次公開



posted by shiraishi at 23:34| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ブルーバック あの海を見ていた(原題:Blueback)

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監督・脚本:ロバート・コノリー(『渇きと偽り』
原作・脚本協力:ティム・ウィントン「ブルーバック」(さ・え・ら書房刊)
出演:ミア・ワシコウスカ(アビー)、アリエル・ドノヒュー(アビー/幼少期)、イルサ・フォグ(アビー役/青年期)、ラダ・ミッチェル(ドラ)、リズ・アレクサンダー(ドラ役/晩年期)、ペドレア・ジャクソン(ブリッグス役/青年期)、クラレンス・ライアン(ブリッグス)、エリック・トムソン(コステロ)、エリック・バナ(マッカ)

海洋生物学者のアビーは、母のドラが脳卒中で倒れたと知らせを受け、急遽故郷のオーストラリアに戻った。美しいターコイズブルーの海は昔のままだが、開発の波が少しずつ押し寄せていた。アビーは口がきけなくなった母の世話をしながら、少女時代を思い起こす。
ドラは若いころから熱心な環境活動家で、アビーは母から海のすばらしさを学び、今の道を選んだのだった。8歳の誕生日に初めて潜った入江で、大きな青い魚に出会い、”ブルーバック”と名前をつけた。。

ロケ地は西オーストラリア州のブレマー・ベイ(Bremer Bay)。ブレマー川の河口にあり、州都のパースから車で5時間半。オルカ(シャチ)、シードラゴン(タツノオトシゴ)の観察ツアーで有名なのだとか。この映画にもザトウクジラの群れが出てきました。
あの人懐こい青い魚はベラ科の「ウエスタン・ブルーグローバー」。長命な個体は70年も生きるそうです。雌雄同体が一般的で、オス1匹、メス1,2匹と幼魚たちが暮らし、オスが群れからいなくなると、メスの1匹がオスに変化するとか。なんと面白い生態なんでしょう。
美しい海を観ていて、基地のために埋め立てられる沖縄の海が浮かびました。戦争で痛めつけられた後、土地を米軍に明け渡さなければならなかった沖縄の人たちを思いました。(白)


耳石とよばれる魚の耳の骨は平衡感覚をつかさどる組織で、樹木の年輪のように1年に1本の輪紋が刻まれるそうです。巨大な青い魚の“ブルーバック”は、耳石の輪紋から約70年生きられることがわかっているとのこと。乱獲してしまっては、長生きの魚も絶えてしまいます。
本作は、美しい海と生態系を守ろうと日々活動する母親を見て育った少女が海洋生物学者となり、母と故郷を思う物語。海洋保護区となった故郷の美しい湾は、母の努力がなければとっくに開発が進んでいたかもしれません。
97年に出版されたティム・ウィントンの原作小説に魅了されたロバート・コノリー監督が、映画化の夢を叶えて作り上げました。コノリー監督が2020年に製作し、オーストラリア映画史上、大ヒットを記録した『渇きと偽り』は、干ばつの続くオーストラリアの大地を舞台にしたサスペンスフルな一作でした。本作は母と娘の情も描いた環境保護を考えさせられる心温まる物語です。(咲)

2022年/オーストラリア/カラー/スコープ/102分
配給:エスパース・サロウ
(C)2022 ARENAMEDIA PTY LTD, SCREENWEST (AUSTRALIA) LTD AND SCREEN AUSTRALIA
https://blueback.espace-sarou.com/
★2023年12月29日(金)シネスイッチ銀座ロードショー
posted by shiraishi at 20:06| Comment(0) | オーストラリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

僕が宇宙に行った理由

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監督・撮影:平野陽三
出演:前澤友作、アレクサンダー・ミシュルキン、平野陽三、小木曽詢、山崎直子

少年時代にハレー彗星を見て以来の夢「宇宙旅行」を実現させた前澤友作氏。ネット通販の2015年にプロジェクトが始動、カメラは前澤氏に密着して撮影開始。実に7年をかけて2021年12月にソユーズに乗船。一人の民間人が過酷な訓練を経て、宇宙へ飛び立ち国際宇宙ステーション(ISS)に12日間滞在、無事に帰還するまでを記録した貴重なドキュメンタリー。大人になっても夢を見続け、挑戦を恐れない前澤さん、彼を支える友人や家族たち。国が主導した宇宙への旅とは、一味も二味もちがう感動がここにある。

宇宙へ向かうドキュメンタリー映画やドラマはいくつも観てきましたが、民間人が実際に行けるんだ!とまず驚きました。お金を出して豪華客船にただ座って楽しめばいい、というものではありません。宇宙飛行士は同乗するけれども、乗客の前澤さんも平野カメラマンも宇宙旅行に耐えられるかどうかのテストに始まり、NASAやカザフスタンで厳しい訓練を受けます。高速回転したり、大きな圧力を受けたり、様々な機器の扱いなどのプロの宇宙飛行士と同じスキルを身につけます。心身ともに健康でなければ宇宙へは行けません。それをクリアして初めて観られる景色を、劇場で一緒に観ることができます。
圧倒的な映像に、今地球で頻発している戦争や、国や地域や家庭、自分自身の中での様々な問題が雲散霧消していきます。残ったのが本当に大切なこと。世の為政者をみな宇宙に送り出せたなら、もっと広い視野を持てて争いが減るのではと夢見てしまいます。その前にトレーニング段階で失格か。
ZOZOを創業した前澤氏は長者番付に載る資産家です。自分で稼いだお金を宇宙旅行に使い、次は12人で月旅行を計画しているそうです。それも実現させるんでしょうね。
夢を見ること、それを実現するために何ができるか、しなければならないことに挑戦しよう、と前澤さん。実際に体験した人のことばと映像に勝るものはありません。高校生以下の鑑賞料金は500円!!(白)


夢を持てば叶うというけれど、宇宙に行きたいという夢は、並大抵の努力で叶うものではありません。でも、叶えてしまったのですから、すごい! 宇宙に飛び立つ前に、通常なら6か月は必要な訓練も、3か月でこなしました。前澤さんの精神力に感服です。それにちゃんとついていった平野監督や、控えの方もすごいです。前澤さんのご両親は、息子がこんなことを成し遂げるとはと驚きながらも、静かに見守っていらして、とても素敵でした。
前澤さんたちが行った先は、世界各地の人たちが集う国際宇宙ステーション(ISS)。宇宙から見える地球は青くて、国境もありません。かつて前澤さんが立ち上げた会社が株式上場した時に、仲間5人でNO WARになる衣装で鐘を鳴らしました。その時の写真をパズルにして、無重力の宇宙で組み立てました。国際宇宙ステーションで働く人たちは、ぞれぞれの国の税金で来ているから、「NO WAR」という言葉を発するのも実は簡単ではないことを知りました。自分のお金で行った前澤さんだからこそ出来たこと。それなのに、宇宙から帰って2か月後、ロシアがウクライナに侵攻。ロシアには宇宙飛行でお世話になっただけに複雑な思いなのではないでしょうか・・・ いつか「NO WAR」の思いが叶うことを、私も願うばかりです。(咲)



2023年/日本/カラー/DCP/89分
配給:ナカチカピクチャーズ
(c)2023「僕が宇宙に行った理由」製作委員会
https://whyspace-movie.jp/#modal
https://twitter.com/whyspace_movie
★2023年12月29日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開

posted by shiraishi at 19:46| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする