2023年11月10日(金)全国ロードショー
上映情報
P.A. WORKS「お仕事シリーズ」オリジナル長編アニメーション最新作
原作:KOMA復活を願う会
監督:吉原正行
脚本:木澤行人、中本宗応
キャラクター原案:高田友美
キャラクターデザイン・総作画監督:川面恒介
音楽:加藤達也
出演
駒田琉生:早見沙織
高橋光太郎:小野賢章
河端朋子:内田真礼
安元広志:細谷佳正
東海林努:辻親八
斉藤裕介:鈴村健一
駒田滉:堀内賢雄
駒田澪緒:井上喜久子
駒田圭:中村悠一
蒸留所の再起に奮闘する若き女社長が家族の絆をつなぐ“幻のウイスキー”復活を目指す!
『花咲くいろは』『SHIROBAKO』『サクラクエスト』『白い砂のアクアトープ』。「働くこと」をテーマに日々奮闘するキャラクターを描いてきたP.A.WORKSによる”お仕事シリーズ”のオリジナル長編アニメーション最新作は、世界でも注目されるようになった日本ウイスキーの蒸留所が舞台。
先代社長の父が亡くなり、実家の「駒田蒸留所」を継いだ若き女性社長駒田琉生(こまだるい)が、経営難の蒸留所の立て直しを社員とともに行う姿、父と決別し出て行ってしまった兄との関係修復、災害の影響で製造できなくなった「家族の絆」とも呼べる幻のウイスキー「独楽」の復活を目指す。蒸留所の再起に奮闘する駒田琉生と、夢もやる気もなかった新米編集者高橋光太郎の奮闘物語。
アニメはほとんど観ない私だけど、2週間くらい前、六本木で試写を観たあと、タイトルに惹かれ、TOHOシネマズ六本木で偶然観たのがこの作品。NHKの朝ドラ「マッサン」を見た後、北海道余市にあるニッカウイスキーの蒸留所を訪ねたことがあり、ウイスキーがどのような工程を経てできてくるのかということに興味があった。この映画では、かつて父が社長だった時代にあった幻のウイスキー「KOMA(コマ)」(独楽)を復活させることに関連して、いろいろ物語が進むのだけど、父と兄との決別からの離散や家族の復活、お酒を飲めない母だけど、その母の思いが「独楽」の復活に大きな力になっていったりと、とてもすてきな物語になっていた。もうひとりの主人公光太郎の、最初頼りない姿から、ウイスキーのことを知っていくにつれ、人生の進む方向をみつける姿に力強さを感じた。
光太郎が取材に通うようになった駒田蒸留所だけど、描かれた景色や道路標識から、舞台は信州の御代田町なのかと思い、信州が第二の故郷である私はそれにも興味を持った。そんなところに蒸留所があるのなら行ってみたいと思い、どこなんだろうと調べてみた。
信州でウイスキーと言えば「マルス信州蒸溜所」というのがあり、マルスウイスキーは何度か買ったこともある。ここがモデルなのかなと思ったけど、駒(こま)は駒でも、マルス信州蒸溜所は、長野県の中央アルプス「木曽駒ヶ岳」の麓だった。そして調べていたら、ここ数年で野沢温泉蒸留所や、小諸蒸留所というのができていた。それを知って、このところワイナリーめぐりが続いていたけど、ウイスキーの蒸留所にも行ってみたいと思った。
この映画の駒田蒸留所は架空の設定だったけど、モデルになったのは富山県砺波市にある若鶴酒造の三郎丸蒸留所とのこと。「三郎丸蒸留所」代表兼マスターブレンダー、ジャパニーズウイスキーボトラーズ「T&T TOYAMA」創業者の稲垣貴彦さんがウイスキーの設定監修を務めているのだそう。また、この映画の中に出てくる幻のウイスキーとして登場する「KOMA(コマ)」の再現に挑戦しているようです。
まだ映画公開は続いているので、興味を持った方はぜひ観に行ってみてください(暁)。
*劇場アニメ「駒田蒸留所へようこそ」 幻のウイスキー「KOMA」復活プロジェクト
https://camp-fire.jp/projects/view/651044
公式サイト https://gaga.ne.jp/welcome-komada/
2023年製作/91分/G/日本
アニメーション制作:P.A.WORKS
製作:DMM.com
配給:ギャガ
2023年12月10日
きっと、それは愛じゃない 原題:What's Love Got to Do with It?
監督: シェカール・カプール
脚本:ジェミマ・カーン
出演: リリー・ジェームズ、シャザド・ラティフ、シャバナ・アズミ、エマ・トンプソン、サジャル・アリー
ロンドンでドキュメンタリー監督として活躍するゾーイ。実家の隣のパキスタン人の一家の次男の結婚パーティに招かれる。長男で医師のカズとは幼馴染。久しぶりに会ったカズから、「僕も結婚する」と明かされる。それも親が選ぶ相手と見合いすると聞かされ驚く。
翌日、プロデューサーから新作の企画が暗すぎると却下されたゾーイは、咄嗟に「見合い結婚するパキスタン男性を追う」と提案。ゴーサインが出る。
親の知り合いの紹介で、パキスタンのラホールに住む22歳のマイムーナとオンライン見合し婚約。ゾーイはラホールでの結婚式を撮影する為、カズについていく。
ラホールで初めて実際に会ったカズとマイムーナに、「愛は生まれると思う?」とインタビューするゾーイ。実は、カズはゾーイの初恋の人。ダメ男ばかりに出会っては別れを繰り返してきたゾーイは、複雑な思い。いよいよ3日間にわたる結婚式が始まる・・・
日本でも、かつてはお見合い結婚が一般的な時代がありましたが、私の知人のパキスタンの方も、この映画のように親の決めた相手と顔も知らないまま結婚式に臨み、5人の子に恵まれ、とても幸せと言ってます。
一方で、この映画の冒頭、臨家の次男の結婚式で、肌を出した服装で踊る女性たちに、お祖母さんが「恥を知れ」と顔をしかめる場面があります。カズの結婚相手マイムーナも、独身最後のパーティでお酒を飲んで踊るという、はじけぶり。パキスタンの女の子たちも、決しておとなしくしていないことを描いていて痛快。 脚本を書いたジェミマ・カーンはイギリス出身ですが、20歳の時にパキスタン人(前首相のイムラン・カーン氏)と結婚し、ラホールとイスラマバードで10年間過ごした経験があって、パキスタン女性への応援歌のようにも思えました。しっとりとしたラホールの町の風情も味わえて、ラホール出身のシェカール・カプールや、ジェミマ・カーンのパキスタン愛もたっぷり感じました。なにより、ヌスラット・ファテ・アリー・ハーンと、ラハット・ファテ・アリー・ハーンの演奏によるカウワーリー(イスラーム神秘主義音楽)が聴けたのは、私にとってサプライズでした。
さて、ゾーイの初恋の行方は? どうぞ映画をご覧ください。(咲)
2022年/イギリス/英語・ウルドゥー語/109分/カラー/スコープ/5.1ch
字幕翻訳:チオキ真理
提供: 木下グループ 配給: キノフィルムズ
公式サイト:https://wl-movie.jp/
★2023年12月15日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、恵比寿ガーデンシネマほか全国公開
枯れ葉 原題:KUOLLEET LEHDET 英語題:FALLEN LEAVES
監督・脚本:アキ・カウリスマキ
撮影:ティモ・サルミネン
出演:アルマ・ポウスティ(『TOVE/トーベ』)、ユッシ・ヴァタネン(『アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場』)、ヤンネ・フーティアイネン、ヌップ・コイヴ
ヘルシンキの街の片隅で孤独を抱えながら生きる女と男。
アンサは理不尽な理由で仕事を失い、ホラッパは酒に溺れながらもどうにか工事現場で働いている。ある夜、二人はカラオケバーで出会い、惹かれ合う。男から、電話したいと言われ、紙に電話番号を書いて渡すも、お互いの名前は名乗らないまま。ホラッパは電話番号を書いた紙をなくしてしまう。そんなこととは知らず、電話を待つアンサ・・・
アキ・カウリスマキ監督自ら、労働者3部作(『パラダイスの夕暮れ』『真夜中の虹』『マッチ工場の少女』)に連なる“第4作目”と位置付ける作品。
仕事にも愛にも恵まれない中年の二人が、寄り添って生きたいと願う気持ちが切ないです。そんな二人が一緒に観に行く映画が、ジム・ジャームッシュ監督の『デッド・ドント・ダイ』。デートにふさわしいかどうか別にして、アキ・カウリスマキ監督のジム・ジャームッシュへの思いを感じます。
映画の中で、ロシアによるウクライナ侵攻のニュースがしばしば流れ、ロシアと国境を接しているフィンランドにとって、決して他人事ではないこととして人々は受け止めているのではと思います。
公式サイトに掲載されている監督メッセージが、いかにもアキ・カウリスマキらしいです。
「取るに足らないバイオレンス映画を作っては自分の評価を怪しくしてきた私ですが、無意味でバカげた犯罪である戦争の全てに嫌気がさして、ついに人類に未来をもたらすかもしれないテーマ、すなわち愛を求める心、連帯、希望、そして他人や自然といった全ての生きるものと死んだものへの敬意、そんなことを物語として描くことにしました。それこそが語るに足るものだという前提で」(一部引用)
これまでのアキ・カウリスマキ監督作品同様、ちょっとした仕草や、会話の間の取り方にも、そこはかとない可笑しみを感じます。
2017年、『希望のかなた』のプロモーション中に監督引退宣言をされたアキ・カウリスマキですが、そんな宣言は忘れたかのように復帰したのも彼らしくて嬉しいです。 最後に流れる「枯れ葉」の懐かしいメロディーにグッときました。(咲)
◎受賞歴
第76回カンヌ国際映画祭審査員賞
2023年国際批評家連盟賞年間グランプリ
第59回シカゴ国際映画祭最優秀監督賞
第40回ミュンヘン映画祭バイエルン2&SZ観客賞
第20回シネフェスト・ミシュコルツ国際映画祭Zukor Adolf賞(グランプリ)
2023年/フィンランド・ドイツ/81分/1.85:1/ドルビー・デジタル5.1ch/DCP/フィンランド語
配給:ユーロスペース 提供:ユーロスペース、キングレコード
公式サイト:https://kareha-movie.com/
★2023年12月15日(金)よりユーロスペースほか全国ロードショー