2023年12月02日

香港怪奇物語 歪んだ三つの空間(原題:失衡凶間 Tales from the Occult)

honkon.jpg

「暗い隙間」
監督:ホイ・イップサン
出演:チェリー・ガン(ヤウガー)、ン・ウィンシー(アリス)

女子中学生のヤウガーは、親友のアリスと別れて帰る道で猫に出会う。後を追っていくと暗い隙間に入ってしまった。のぞき込んでぞっとする。人間の形のものが倒れていて、ヤウガーは見開かれた”眼”を見てしまう。男性の遺体だった。
数年後、シンガーになったヤウガーは、不倫相手の音楽プロデューサーと過ごすために新居に引っ越した。直後からあの”眼”が自分を見ている気がしてならない。

「デッドモール」
監督:フルーツ・チャン
出演:ジェリー・ラム(ヨン・ワイ)、シシリア・ソー(ガルーダ)

ヨン・ワイはライブで投資情報を配信している人気ライバー。新装オープンした「リードモール」で、配信中にガスマスクをつけている女性を目にした。このモールは、14年前大火災で、多くの死傷者を出した「ラッキーモール」の跡地に建設されたため、幽霊が出るという噂がある。巷の噂の真相を暴く女性ライバーのガルーダは、その怪奇現象の調査にやって来た。

「アパート」
監督:フォン・チーチャン
出演:リッチー・レン(ホー)、ソフィー・ン(アチー)

ネット小説家のアチーは、アパートの1階で幽霊に遭遇する。全身ずぶ濡れで顔面蒼白、溺死した人間に違いない。ほかの階に住む住人たちも目撃していた。住人と交わろうとしない謎の男、ホーが怪しいと意見が一致する。伝説のヤクザで何人も殺していると専らの噂なのだ。思い切って訪ねていくと、ホーも幽霊退治の仲間に入るという。しかし、一人、二人と命を落としていく。

香港の気鋭の監督3人が競作したオムニバスホラー。ホイ・イップサン監督が書いていた脚本から生まれた短編3本です。映像業界で長く活躍してきたホイ監督ですが、劇場公開作品の監督はこれが初だそうです。
「暗い隙間」でヤウガーが頼りにしていた叔父さんは、ローレンス・チェン。長くテレビ番組の司会をしていたので「香港の久米宏」と勝手に呼んでいたのを思い出します。
「デッドモール」のフルーツ・チャン監督は”香港返還三部作『メイド・イン・ホンコン』(1997)『花火降る夏』(1998)『リトル・チュン』(1999)で知られています。近年はプロデューサー業でも活躍。本作主演のジェリー・ラムが2002年11月イベントで来日したときの記事がシネジャのウェブにあります。みんな若々しいです。
「アパート」で住人ホー役のリッチー・レンは台湾の歌手・俳優。『星願 あなたにもういちど』(1999)では、想いを伝えるために現生に蘇ったオニオン役の好演で泣かせました。その後ジョニー・トー監督映画の常連になってからは強面な役も多くなり、すっかりベテランの風格です。こちらに日中カラオケ大会のゲストで来日したときの記事あり。2006年には単独でコンサートも開いています。とってもフレンドリーでチャーミングな人でした。
冬にホラーなのはちょっと残念ですが、香港ホラーも健在ですという3本。(白)


2021年/香港/カラー/シネスコ/112分
配給:武蔵野エンタテイメント株式会社
(C)2021 Media Asia Film Production Limited, Movie Addict Productions Limited All Rights Reserved
https://hk-kaiki-movie.musashino-k.jp/
X:@hk_kaiki_movie
メイキング映像はこちら

★2023年12月1日(金)よりシネマカリテにて公開中。他全国順次ロードショー

posted by shiraishi at 22:37| Comment(0) | 香港 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ヤジと民主主義 劇場拡大版

yaji.jpg
(C)HBC/TBS

制作・編集・監督 山崎裕侍 
語り:落合恵子 
取材:長沢祐 
プロデューサー:山岡英二 磯田雄大 鈴木和彦
撮影:大内孝哉 谷内翔哉 村田峰史
編集:四倉悠策
MA:西岡俊明
音楽:織田龍光

2019年7月15日、札幌駅前。安倍首相(当時)の演説中に、「安倍やめろ!」のヤジが飛んだ。声をあげた男性を、すぐさま数名の警察官が取り囲んだ。その場から連れ去られる男性。その様子を遠くから見ていた若い女性も、「増税反対」の声をあげた。彼女も、すぐに警察官に囲まれ引きずられるように移動させられた。女性が現場を離れた後も、女性警官二人がしつこくつきまとった。
街宣の場所から排除された2人は、原告として警察側を訴える。1審は勝訴したが高裁では判断が分かれ、双方が上告し裁判は続いている。
本作は、北海道放送報道部道警ヤジ排除問題取材班が追求し続ける4年間に渡る記録。そして、彼らはこの問題を追い続けている。

声をあげたとたん、数名の警察官に取り囲まれる様子に、街宣を聴く民衆の中に、どれだけの制服・私服の警察官がいるのかと怖くなりました。それでいて、奈良での安倍首相襲撃は防げなかった警察。
高齢の女性3人が、「老後の生活費 2000万円 貯金できません」のプラカードを胸元に掲げるのですが、すぐに注意されてしまいます。一方、自民党支持のプラカードが配られ、最前線にいる人たちが掲げているというダブルスタンダード。
政権に声をあげた人に対して、どういう法的根拠があって警察が排除しようとするのかを考えさせてくれるドキュメンタリー。何かしらの行動を起こさないと、政治が変わらないことも教えてくれます。(咲)


2023年/日本/100分/ステレオ/16:9  
製作:HBC北海道放送 
配給:KADOKAWA
宣伝:KICCORIT
公式サイト:https://yajimin.jp/
★2023年12月9日(土)より、ポレポレ東中野、シアターキノほか全国公開



posted by sakiko at 20:59| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする