2023年11月26日

Maelstrom マエルストロム

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監督・撮影・編集・ナレーション:山岡瑞子
撮影:本田 広大 平野 浩一 高橋 朋
音楽:オシダアヤ

2002年6月のはじめ、NYにある美術大学を卒業し、あと一年間プラクティカル・トレーニングビザで滞在予定だった留学生が、アパートの契約金を下ろしに銀行に向かう途中、事故が起きた。こんな事故は日常に見聞きする、よくあること。殺人事件に巻き込まれなくて良かった。でも、その留学生は、その家族は帰国後、どうなったのだろうか。突然、それまでの日常を失い、それまでの時間が存在しない場に戻った時、何がその人らしさを繋ぎ止めるのか−−−。事故の当事者になった“私”は、大混乱の中、変わってしまった日常の記録を始めた。事故前の自分と繋がり直し、探している場所に辿り着けることを祈りながら−−−。

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山岡瑞子監督(オフィシャル画像)


留学した美大を卒業し、洋々と広がる前途に夢や不安を抱いていた時に遭遇してしまった交通事故。目が覚めたときの混乱はいかほどだったでしょう。淡々としたナレーションを耳にしながら映像を観続け、そのショックや現状を受け入れ、進むまでの毎日を思いました。
会見で山岡監督がおっしゃったように、事故は本当に身近にあります。それが一瞬にして人生を変えてしまうことも。大きな転換を体験した山岡監督のこれまでの日々が、編集するたびに蘇ったはず。5年かかったというのも無理のないことです。
事故に遭った方や家族がその後どんな風に暮らしていったのか、つぶさに見せていただきました。山岡監督はアートや家族の支えをよりどころにして、現在に至ります。

自分でも、大きなトラックとぶつかりそうになって、ひやりとしたことがあります。大きな事故にはならないで済んだものの、ほんの数秒違っていたら、今はありません。数年後自宅前で後ろから来た車のサイドミラーが接触して前に飛んだこともあります。立ち上がれずにいたら、接触した車から運転していた人が降りて来て、近所の人も近づいて声をかけてくれました。念のため外科に行きましたが打撲だけで済みました。しばらくの間、車が接近してくると身体が固まりました。自転車に乗っていて、人とぶつかったことも。自分が加害者になることだってあります。以来、自転車はやめて歩いています。(白)


私は定年退職するまでの約15年、障害者の人たちが作った、障害者、高齢者のためのリハビリ機器を販売する会社で働いていた。カタログの制作部門で働いていたが、そのカタログは商品の紹介だけではなく、この会社を立ち上げた社長の思いから、障害者福祉や介護保険制度などにも言及し、障害者の権利や利用の仕方なども紹介していた。
「障害者差別解消法」が平成25年(2013)6月に制定されたが、この法律の実現には「障害者差別禁止法を実現する全国ネットワーク」の働きかけがあった。社長はこのJDA(Japanese with Disabilities Act、「障害のある日本人のための法律」の略)を実現するための全国ネットワークを立ち上げ、介護保険の問題にとどまらず、障害者が一人の国民として当たり前の人生、生活を確保できる社会をつくることを目標に運動していた。
そんなこともあり、この会社では障害者も多数働いていた。障害があるからといって何もできないということはないと、自分に残された能力を使って働いていた。そのような会社だったので、障害者であろうと介護が必要な人であろうと「なんでもやってあげるのではなく、残っている能力をできるだけ生かし、できないことを援助する」という考え方が基本だった。
そして、私は現在障害者1級である。10年前、心臓弁膜症の手術をしたことで障害者になった。それ以来、私も「やれることは自分でやる」を忘れずに行動している。自分が障害者になるなんて考えてもいなかったけど、それはある日突然に降りかかった。

そして、山岡瑞子監督の作品。山岡監督は交通事故で大きな障害を負い下半身不随になった。突然、変わってしまった生活、ぞして人生。自身が巻き込まれ体験したmaelstrom(大渦巻き)、その日常生活を記録し、それを自身の作品としてまとめた。
車いすで行動しながら、その車いすの高さの視点で回りの景色を映し出していたのが新鮮だった。膝の上にカメラを載せて、その高さから見える世界は、これまで見たことのない、アングルからの映像である。
そして、交通事故の前に目指していたアートの世界にも挑戦していこうという思いを語る。この作品をきっかけに、新たな出会いもあるでしょう。それが新たな作品を作ることにつながるかもしれません。とにかく新たな一歩を踏み出しました。自信をもってください(暁)。

☆記者会見オフィシャルレポートはこちらです。

2022年/日本/カラー/HD/79分
配給・宣伝協力:ムービー・アクト・プロジェクト
公式Twitter @MizzyFilms
公式Facebook https://www.facebook.com/maelstormfilm
山岡瑞子HP https://mizuko-yamaoka.amebaownd.com
★2023年12月2日(土)~8日(金)横浜シネマリンにてロードショー

【トークイベント】13:50回上映後
★12/2(土) 矢田部吉彦さん(前東京国際映画祭ディレクター)
★12/3(日) 早川千絵さん(映画監督)
★12/4(月) 深田晃司さん(映画監督)
★12/5(火) 高橋慎一さん(映画監督)
★12/6(水)伊勢真一さん(映画監督)
★12/7(木) 諏訪敦彦さん(映画監督)
★12/8(金) 倉石信乃さん(明治大学教授・写真史)

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隣人X -疑惑の彼女-

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監督・脚本・編集:熊澤尚人
原作:パリュスあや子「隣人X」(講談社文庫)
音楽:成田 旬
主題歌:chilldspot「キラーワード」
出演:上野樹里(柏木良子)、林遣都(笹憲太郎)、ファン・ペイチャ(リン・イレン)、野村周平(仁村拓真)、川瀬陽太(内田瑛太)、嶋田久作(小池編集長)、原日出子(柏木麻美)、バカリズム(月村祐一 )、酒向芳(柏木紀彦)

ある日、日本政府は故郷の惑星から追われた難民Xの受け入れを発表した。人間の姿で日常に紛れ込んだXがどこで暮らしているのか、誰も知らない。彼らの目的は何なのか?何の情報もないため、疑心暗鬼にかられた人々は誰がXなのか、つきとめようとする。
週刊東部の編集部では調査会社にX疑惑のある人間を探させ、記者たちに二人ずつ割り振って証拠を見つけろとハッパをかける。契約社員の笹は台湾からの留学生リンと、コンビニと宝くじ売り場のWワークをしている柏木良子を監視することになった。この記事をものにしないと契約を切られてしまう笹は、スクープのため良子へ近づいていく。二人は少しずつ距離を縮め、やがて笹は良子に好意を持つが、Xかもしれないという疑惑をぬぐい切れない。

とっても久しぶりの上野樹里さん、7年ぶりの映画主演だそうです(いつのまにか結婚されていました)。10代から見ているのに、林遣都さんも家族を背負い無精ひげも似合う年代になりました。そのお二人が初共演、熊澤監督と上野さんとは『虹の女神 Rainbow Song』以来17年ぶり、林さんとは『ダイブ!!』以来15年ぶりのタッグです。
この作品では、Xは誰なのか、未知のものにどう対処していくのか、二転三転するストーリーを追いかけるうちに明らかになります。初めてのもの、わからないものに出会ったらどうしますか?興味を持って知ろうとするでしょうか?恐怖心が勝って逃げ出したり、ないものとしたりするかもしれません。恐怖が蔓延すると、往々にして対象の排除に向かいがち、前例がいっぱいありそうです。この3年ほど、世界中が新型ウイルスのコロナに翻弄されました。この物語での混乱ぶりもそれによく似ています。
(白)


2023年/日本/カラー/シネスコ/120分
配給:ハピネットファントム・スタジオ
(C)2023 映画「隣人X 疑惑の彼女」製作委員会 (C)パリュスあや子/講談社
公式サイト:https://happinet-phantom.com/rinjinX/
公式X:@rinjin_x
★2023年12月1日(金)新宿ピカデリー 他全国ロードショー

posted by shiraishi at 14:47| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ショータイム!(原題:Les Folies fermieres)

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監督・脚本:ジャン=ピエール・アメリス
撮影:ヴィルジニー・サン=マルタン
音楽:カンタン・サージャック
出演:アルバン・イワノフ(ダヴィッド)、サブリナ・ウアザニ(ボニー)、ベランジェール・クリエフ(レティシア)、ギイ・マルシャン(レオ)、ミシェル・ベルニエ(ミレーユ)

フランスの中南部、カンタル地方。経営危機に陥っている農場主のダヴィッドは地方裁判所の判事の元へ“出頭”する。祖父の代から続いた農場を差し押さえられないよう猶予をもらうつもりだ。なんとかあと2か月の猶予をもらえたが、何の打開策も浮かばない。傷心のまま歩くダヴィッドの目にキャバレーのネオンサインが飛び込んでくる。
初めて観るダンサーのパフォーマンスにくぎ付けになったダヴィッドは、自分の農場でこれと同じことができないかとひらめく。恐る恐るキャバレーに出向いてみると、ボニーがボスと喧嘩して出てくるところだった。この僥倖に遭遇して、普段は口下手なダビッドは勇気を振り絞って声をかける。思いがけないスカウトにボニーは警戒するが、誘いに乗ってみる。何しろクビになったばかりでほかに行く当てがなかった。

あれあれというようなストーリーですが、実際にあったことです。アメリス監督は2018年1月に主人公のモデルとなったダヴィッド・コーメット氏の記事を見つけ、その奇抜なアイディアに興味をひかれ、映画を作ろうと思ったそうです。酪農家や農場主の苦難は実際多く、自殺に追い込まれる人も出ていました。起死回生の勝負に出たダヴィッドは、ショウを盛り上げるパフォーマーを捜し歩きます。ボニーはコーチで演出家となり、寄せ集めのスタッフを特訓します。劇中でボニーが空中での布を使ったダンスを披露していて、これが目玉ですが、ほかの出し物も楽しいです。ここでのキャストたちの獅子奮迅ぶりが見ものです。
本当にショウは出来上がるのか?納屋のキャバレーにお客が来るのか?疑問や心配で頭がぐるぐるするダヴィッドの母と同じ心持ちで見守ってしまいました。二転三転する状況にちりばめられた笑いと人情をお楽しみください。(白)


2022年/フランス/カラー/シネスコ/109分
配給:彩プロ
(C)2021 - ESCAZAL FILMS - TF1 STUDIO - APOLLO FILMS DISTRIBUTION - FRANCE 3 CINEMA - AUVERGNE-RHONE-ALPES CINEMA
https://countrycabaret.ayapro.ne.jp/
★2023年12月1日(金)ロードショー

posted by shiraishi at 14:20| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

メンゲレと私   原題:A Boy's Life

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(C)2023 BLACKBOX FILM & MEDIENPRODUKTION GMBH

監督:クリスティアン・クレーネス、フロリアン・ヴァイゲンザマー

『ゲッベルスと私』 (2018年公開)、『ユダヤ人の私』 (2021年公開)に続く「ホロコースト証言シリーズ」3部作の最終作。

リトアニア出身のユダヤ人、ダニエル・ハノッホ(1932年生まれ)。9歳の時、カウナス郊外のゲットーに送られ、その後、12歳でアウシュヴィッツ強制収容所に連行された。多くの子供が到着後にガス室で殺されたが、金髪の美少年だったダニエルは、ヨーゼフ・メンゲレ医師の「選別」により奇跡的に生き延びた。非人道的な人体実験を繰り返したメンゲルは、神のように崇められ、すべての者の生存権は彼の手にあり、“死の天使”の異名を持っていた。だた、ダニエルが見た真の地獄は終戦末期に連合軍の攻勢から逃れるため強制的に連れていかれた「死の行進」であった。暴力、伝染病、カニバリズム・・・少年は人類史の最暗部を目撃する。

取材当時91歳のダニエルが、子供時代に味わった地獄を語る合間に、様々なアーカイブ映像が流れます。ロシアの風刺アニメーション『シネマ・サーカス』、ソ連のプロパガンダ映画『モスクワ攻防戦』、1961年にアイヒマンに見せたアウシュヴィッツ強制収容所でカートので死体やガス室に送られた人々の所持品を運ぶ姿、米兵を洗脳し国民を団結させるための映像等々・・・ 人はいかに映像で騙されてしまうのかを教えられます。起こった事実が後世の人の目に触れるという利点もありますが。
ホロコーストで犠牲となったユダヤ人の子供たちは約150万人。そのうち、アウシュヴィッツ強制収容所に連行されたユダヤ人の子供は推定21万6千人で、45年1月にソ連軍が収容所を解放した際、生存していた子供たちは、わずか451人。
奇跡的に生き延びたダニエルは、1945年5月にアメリカ軍によって解放され、兄のウリとイタリアで再会し、兄弟はその後パレスチナに入国しています。
映画の最後に、ダニエルは、「イスラエルでラヘルと出会い、幸せな家庭を築いた。“素晴らしき甘い人生”だ」と語ります。皮肉にも聞こえますが、生き抜いたお蔭で手に入れた人生には違いありません。
ダニエルの発言の中で気になったことがありました。
リトアニアがソ連に占領されたとき、ソ連の人たちも軍人も優しかったけれど、その後、ドイツに占領された時、町にドイツ人が来る前にリトアニア人がユダヤ人を殺したのだそうです。また、ホロコーストから解放された後に行ったオーストリアでも、オーストリア人はユダヤ人に冷たかったけれど、イタリアでは優しく迎えてくれたという発言がありました。
前作『ユダヤ人の私』の折に、「オーストリアの反ユダヤ主義はドイツ人が持ち込んだものではなく、オーストリアで何世紀にもわたって培われ、カトリック教会がそれを後押しした」と知りました。リトアニアの反ユダヤ主義はどこから生まれたものなのでしょう・・・

ヨーロッパ各地で嫌われ、ホロコーストを生き抜いた人たちが戦後作った国イスラエル。
暮らしていたパレスチナ人を追い出す形で国を作り、さらにまた、ガザ地区に閉じ込めたパレスチナ人を、ハマスがテロリストだからという理由をつけて攻撃する暴挙。
ホロコーストの加害者は別にいるのに、これでは弱い者いじめ。
お互いを認め合って共存できる世界は、どうして実現しないのでしょう・・・(咲)


ユダヤ人の大虐殺を描いた映画はこれまでも数多くあった。それでも、この大虐殺を生き抜いた人たちが生きている間にいろいろな証言を記録しておいてほしい。そして、その体験したことが二度とおこらないように公開していってほしい。ま、過去の過ちを繰り返さないということを学ばない人が多いから、今も戦争が続いているのだろうから、効果のほどはなんともいえないが…。
非人道的な人体実験を繰り返したメンゲレは死の決定権をもっていた。そんな中、ダニエル・ハノッホさんはメンゲレに気にいられ奇跡的に生き延びた。ダニエルさんが語ったリトアニアでの当時の話は貴重である。
彼が語ったことで印象に残っているのは下記の証言。
・「リトアニア人がユダヤ人を殺し、ドイツ人は見ていた」
ナチスがユダヤ人の大虐殺を行ったと言われているが、各国で、その国の人たちがユダヤ人に対しておこなってきたことはあまり問われていない。
・「人間を死に追いやるラインを見ていた」
生き延びた人たちは、こういう立場だった人が多いので、負い目をもっていることが多いのでしょう。
・「番号が私の名前。アイデンティティを無くした」
「番号が私の名前」というのはこれまでも何人もの証言者たちから出ているが、この言葉を聞いていたから、今、日本で進んでいるマイナンバー制度に対して番号で管理される社会への疑問がある。だからマイナンバーカードは作っていない。
・「解放されて食料も探したが、文房具(鉛筆と紙)を探した。」
鉛筆と紙を求めたのは、自分の体験を忘れないうちに記録するためだったのでしょう。ダニエルさん、あちこち連れまわされたのに、その地名などをちゃんと覚えていて証言していたのは、記憶が確かなうちに記録しておいたからかもしれないと思いました(暁)。


2021年/オーストリア/96分/モノクロ
日本語字幕:吉川美奈子
配給:サニーフィルム
後援:オーストリア大使館、オーストリア文化フォーラム東京、イスラエル大使館
公式サイト:https://www.sunny-film.com/shogen-series
★2023年12月3日(日)東京都写真美術館ホール
12月6日(水)大阪・第七芸術劇場、12月9日(土)沖縄・桜坂劇場にて公開



東京都写真美術館ホール
『メンゲレと私』
上映期間:2023年12月3日(日)~12月15日(金)
休映日:2023年12月4日(月)、11日(月)、13日(水)

『ゲッベルスと私』 ※12月9日(土)、10(日)のみ上映 12;30~

『ユダヤ人の私』 ※12月9日(土)、10(日)のみ上映 14:50

・参考資料 シネマジャーナルHP 特別記事
『北のともしび ノイエンガンメ強制収容所とブレンフーザー・ダムの子どもたち』
東志津監督インタビュー
posted by sakiko at 14:19| Comment(0) | オーストリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ポッド・ジェネレーション(原題:The Pod Generation)

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監督・脚本:ソフィー・バーセス
撮影:アンドリー・パレーク
編集:ロン・パテイン
音楽:エフゲニー・ガルペリン&サーシャ・ガルペリン
出演:エミリア・クラーク(レイチェル)、キウェテル・イジョフォー(アルヴィー)、ロザリー・クレイグ(リンダ)

近未来のニューヨーク。AI(人口知能)が発達し、日常生活が劇的に変わっている時代。レイチェルはハイテク企業に勤務、有能な彼女は出産のために最新テクノロジーを使うことを考える。希望者が多いために早めに《ポッド妊娠》を予約した。受精卵を卵型のポッドで育て、女性に妊娠出産の負担がないようにできる装置だ。植物学者で何事も自然のままを好む夫アルヴィーには言えないままだったが。
そしてある日「空き」ができたと連絡が入る。レイチェルはアルヴィーにやっと打ち明けるが、案の定大反対される。しかしセラピーを一緒に受けたり、ポッドの大企業ペガサス社に出かけたりするうち、折れてくれた。受精の瞬間をスクリーンで観た二人は、ポッドで育つわが子に心奪われていく。

主演のエミリア・クラークが制作にもあたっています。女性が担ってきた妊娠・出産を身体から離して実行できる世界、そう遠くないのかもしれません。人間とAI、自然と人工、生命が生まれることなど、いろいろ考える種の多い作品でした、
レイチェルが働く会社では、個人個人がデスクに向かい、足元は動くベルト(お散歩マシーン)です。デスクには目玉型のアシスタントとコンピュータ、レイチェルは画面を見つめてキーボードを操作しています。帰りには自然を満喫できるスペース(なぜか螺旋階段を上る)に立ち寄って人工の自然の中でリラックスします。ほんとの自然は限られた場所に残されているだけのようです。
効率を重んじる世界で、夫アルヴィーは非効率でも本物の自然を体感することを、学生に伝えようと心を砕きます。ポッド妊娠に反対していた彼が、胎児のシルエットを見てから俄然育児に熱心になるのが、ほほえましいです。二人がポッドで育成中にあちこち持って歩くので、「落としたら大変、もっと安全におけるところはないの」とまさに老婆心を起こしました。
*AIのカウンセラーが大きな目玉なので、いくら周りが花々で飾られていようが、向き合うのは遠慮したいです。信頼できそうな風貌の人間型がいいのに、なぜAIが目玉型なのか監督に聞いてみたいものです。アシスタントの形で「ゲゲゲの鬼太郎」ファン?と思っちゃいました。(白)


2022年/ルギー・フランス・イギリス合作/カラー/シネスコ/110分
配給:パルコ
(C)2023 YZE – SCOPE PICTURES – POD GENERATION
https://pod-generation.jp/
★2023年12月1日(金)ロードショー

posted by shiraishi at 13:50| Comment(0) | ベルギー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

スイッチ 人生最高の贈り物(原題:Switch 스위치)

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監督:マ・デユン
出演:クォン・サンウ(パク・ガン)、オ・ジョンセ(チョ・ユン)、イ・ミンジョン(スヒョン)、パク・ソイ(ロヒ)、キム・ジュン(ロハ)

トップスター俳優のパク・ガンは出演オファーが絶えず、主演映画も大ヒット。若手女優と一夜限りの情事を楽しみスキャンダルにも物おじしない、セレブなシングルライフを満喫する彼だが、実はクリスマスイブの予定は年末の授賞式だけ。イブの夜、唯一の友でマネージャーのチョ・ユンと飲んでタクシーに乗り込んだ。運転手に「もし人生を選び直せるならどうするか?」と奇妙な事を尋ねられた。
翌朝、見慣れぬ家で目が覚めた。ここはどこ?パパ~とやってきた子どもたちに驚くと、ママは元恋人だったスヒョン!ガンが成功するために彼女とは別れたはず。なぜ?があふれ出してくるが二日酔いの頭が回らない。自分は落ち目の劇団俳優で、スヒョンと結婚しこの双子の父らしい。そしてマネージャーだったチョ・ユンが実力派俳優になっていた!入れ替わってしまったのか!?

タイムスリップものと同じくらい入れ替わりものも面白いですよね。こちらご期待を。すっかりベテラン俳優になった元祖モムチャン(肉体美)のクォン・サンウ。若いころに多かったアクション映画ばかりでなく、ロマンス、ファミリー、バディものとなんでもできるスターになりました。この作品では、成功して何もかも手にしたトップスターの前半と、思いがけずスイッチ(入れ替わり)して裏方のマネージャーになった後半、二つの役をオ・ジョンセと共に演じています。
お互いに知っているようでよく知らなかった相手を、入れ替わったことでよ~く知ることになります。そして自分が何かを得たかわりに失ったもの、上を目指しているうちに捨ててきたものに気づいていきます。その微妙な変化にご注目を。奥さんのスヒョンと可愛い子どもたちとの家庭はいったいどうなるの~?!(白)


誰しも、人生を振り返って、あの時、別の選択をしていたら、今どんな暮らしをしているのだろう・・・と思うことがあると思います。この映画のように、別の人生を覗いてみることが出来たなら? 人生、やり直しがきかないのが残念です。タクシー運転手が、寂しいクリスマスイブを過ごしているパク・ガンにくれた人生を考え直しさせてくれる素敵なプレゼント。 タクシー運転手を演じているユ・ジェミョン、よくお顔をみるベテラン俳優。憂いを感じさせてくれる運転手自身の人生も気になります。 
パク・ガンと入れ替わり、トップスターになっているチョ・ユンを演じたオ・ジョンセは、現在アジアドラマティックチャンネルで放映中のドラマ「アンクル ~僕の最高のおじさん~」で主役を務めていて、どこかで見た顔と思っていたのですが、今回調べてみたらずいぶん前から脇役で活躍していた芸達者な方でした。 
パク・ガンとチョ・ユンの会話の中で、「いい作品があるが、イ・ビョンホンが狙ってる」とありました。パク・ガンの初恋の人スヒョンを演じたイ・ミンジョンがイ・ビョンホンの奥様なのを意識した台詞?と思わず笑ってしまいました。
クリスマスに大事な人と一緒に観るのにお薦めの映画です。(咲)



2023年/韓国/カラー/ビスタ/112分
配給:ツイン
© 2023 LOTTE ENTERTAINMENT & HIVE MEDIA CORP. All Rights Reserved.
Twitter: @movietwin2
公式サイト:sangwoo-movie.com
★2023年12月1日(金)シネマート新宿、心斎橋ほか全国順次ロードショー
posted by shiraishi at 13:45| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

バッド・デイ・ドライブ(原題:Retribution)

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監督:ニムロッド・アーントル
脚本:クリストファー・サルマンプール
出演:リーアム・ニーソン(マット・ターナー)、ノーマ・ドゥメズウェニ、リリー・アスペル、ジャック・チャンピオン、エンベス・デイヴィッツ。マシュー・モディーン

ベルリンのある朝。金融関係のビジネスマンのマットは仕事人間。それでも子どもたちを学校に送り届けるために車のドアを開けた。子どもたちと乗り込んで走り始めたとたん、携帯に着信がある。知らない男の声が「車に爆弾をしかけた。降りると作動する。これから指示に従わないと爆破する」と告げられる。驚いて座席の下を確認すると爆破装置のようなものが見えた。犯人は何者で、何が狙いなのかわからないままマットは車を止めることなく走り続ける。マットの様子に子どもたちもおびえ、犯人はマットに確認させるかのように、同僚の乗った車を予告のうえ、爆破した。

子ども2人と爆弾をのせたまま、ベルリンの街を走り続けるマット。愛がは事件とリアルタイムで進行します。リーアム・ニーソンは子どもを守って戦う父親役が多かった気がしますが、今回は車から降りられずなかなかアクションを起こせません。
その上、妻が離婚の相談に出かけていることを知らされます。
オリジナル脚本はアルベルト・マリーニ。2015年のスペイン映画『暴走車 ランナウェイ・カー』をリメイクしています。ほかにドイツ版『タイムリミット 見知らぬ影』、韓国版『ハード・ヒット 発信制限』がありますが、特にサスペンスものはストーリーがわかると面白さが減ってしまうので、極力情報を入れずに観るのをおすすめします。私は韓国版を観ていますので、ドキドキするより同じところや違うところを探したり比べたりをしていました。それもまた一つの楽しみ方ではあります。(白)


2023年/イギリス・アメリカ・フランス合作/カラー/91分G
配給:キノフィルムズ
(C)2022 STUDIOCANAL SAS - TF1 FILMS PRODUCTION SAS, ALL RIGHTS RESERVED.
https://bdd-movie.jp/
★2023年12月1日(金)絶・対・着席
posted by shiraishi at 13:27| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

父は憶えている   原題:Esimde  英題:This is What I Remember

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(C)Kyrgyzfilm, Oy Art, Bitters End, Volya Films, Mandra Films

監督・脚本:アクタン・アリム・クバト
出演:アクタン・アリム・クバト、ミルラン・アブディカリコフ、タアライカン・アバゾヴァ

キルギスの村。クバトは、ロシアに出稼ぎに行き20年間行方不明になっていた父ザールクを見つけて連れ帰る。父はロシアにいる間に記憶を失っていた。母ウムスナイは夫が亡くなったと思って、村の有力者の男と再婚している。同級生たちが歓迎の宴を開くが、クバトはその座につかず掃除ばかりしている。クバトは父を村のあちこちに連れていくが、記憶は戻らない・・・

同級生たちは、自分たちのことを忘れてるのを寂しく思いながらも、クバトのお蔭で村が綺麗になっていいな等と話していて、思わず笑ってしまいます。それでも皆、妻が再婚していることを心配しています。
ウムスナイの再婚相手ジャイチは離婚に応じる気は全くありません。モスクの導師に相談にいくと、夫が「タラーク(離婚)」を3回言わないと離婚は成立しないと言われます。悩むウムスナイに、モスクの管理人のナジムバイは、「自分の心のままにした方がいい」と優しく声をかけます。
アクタン・アリム・クバト監督は、以前の作品でも、イスラームの教義を厳しく守る人たちを登場させていて、地域の伝統を守りながら信仰心を持つ人との対比を描いています。

2022年の東京国際映画祭で『This Is What I Remember(英題)』のタイトルで上映された折のQ&Aで、クバト監督は、「私の経験したイスラームは、地元の伝統に結び付いていました。現代のイスラームは暴力的になって、伝統と食い違うことが多いように感じます。伝統を大事にしたい人たちは、イスラームを信じているのですが、心の一部には、伝統的なテングクの気持ちが残っています。私自身、信仰に反対ではなくて、アラビア風のイスラームには抵抗を感じています。その考えを主人公の一人である女性を通じて表そうと思いました」と語っています。
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東京国際映画祭 キルギス『This Is What I Remember(英題)』アクタン・アリム・クバト監督Q&A報告 (咲)

イスラームでは、女性からも離婚するkhulu'(フルウ、本作の字幕ではクル)という方法がありますが、妻側が夫から貰っている婚資相当額を返還する必要があるとのこと。ウムスナイが何度か「私からクルするしかない」と口にしています。
ザールクが、林の木の幹に一生懸命白いペンキを塗っているのですが、この林はウムスナイと若い頃によく一緒に歩いていたところ。二人はまた仲良くこの林を歩くことができるのでしょうか・・・ (咲)


クバトはロシアに出稼ぎに行ったまま23年も行方不明になっていた父ザールクをみつけて連れ帰たものの、父はロシアにいる間に記憶を失ない自分のこともわからない。ザールクの妻ウムスナイは夫が亡くなったと思って村の有力者と再婚してしまっている。クバトは父を村のあちこちに連れていくが記憶は戻らない。どこの国でも起こりうる事を描いているが、妻の混乱と迷い、決断が一番印象に思った。イスラム圏では妻からの離婚申し出が認められないのかと思っていたけど、この映画では妻からも可能ということも描かれていた。それはやはりキルギスだから?
でも、道師はウムスナイが相談に行った時、彼女に対して、女性からも離婚を言い出せるとは言っていない。門番?の方がそれを伝える。
最後、ザールクとウムスナイがよく歩いていたというところに、ウムスナイの歌が流れ、一瞬、顔を向けるザールク。
監督自身がザールクを演じ、息子役は監督の実の息子だという。クバト監督は一言も言葉を発しないけど、ゴミをひろい歩いたりして、とぼけた演技が見もの(暁)。


2022年/キルギス・日本・オランダ・フランス/カラー/1:1.85/105分/キルギス語・アラビア語・英語
配給:ビターズ・エンド
公式サイト:https://www.bitters.co.jp/oboeteiru/
★2023年12月1日(金)より、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
posted by sakiko at 13:02| Comment(0) | キルギス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする