2023年11月12日
1%の風景
監督・撮影・編集:吉田夕日
撮影:伊藤加菜子
音楽:高田明枝
出演:渡辺愛(つむぎ助産所)、神谷整子(みづき助産院)
母でもある吉田夕日監督が、助産師の渡辺愛さん、神谷整子さんと出産した4人の妊婦さんの日々を撮影。今ほぼ99%が病院を選び、助産師さんさんの助けを借りて、助産所や自宅で出産する人は1%。あまり知られていない助産所はどういうところなのか、助産師さんはどんな指導をしているのか、カメラは細かに映し出す。
少子化の日本で、子どもの数は一家に一人を切ってしまいました。兄弟姉妹のいない一人っ子が増えています。赤ちゃんは病院からくるもの、と思う子どもたちもいます。親元で産んで産前産後実家で過ごす人もいますが、そうでないときに頼りになるのは、産科の医師や助産師さんです。映画ではベテラン助産師の渡辺さん、神谷さんのきめ細やかなケアやアドバイスにホッとする妊婦さんの気持ちがわかります。「待つのが好き」という助産師さんのことばが嬉しいです。
私の母の時代は助産師さんの介添えで自宅出産。20数年後、私は病院の産科での出産でした。孫たちも病院の産科で生まれましたが、違うのは父親の立ち合いができたことです。どんなに時代が進んでも、命をつないでいくことの不思議と重みは変わりません。産声を上げた小さな赤ちゃんを抱くお母さんは、それまでの苦痛が消えて晴れやかな笑顔です。出産とそれに続く子育てに、手厚い支援をと願わずにいられません。(白)
今や、出産に際して助産婦さんに依頼するのは1%未満とのことで、助産院も少なくなりました。そんな助産婦さんの仕事を紹介したのがこの作品。妊婦さんに対してきめ細かに対処していたのが印象的でした。なによりも、出産に対して不安がある妊婦さんを安心させるというのは助産婦さんならではと思いました(暁)。
2022年/日本/カラー/シネスコ/106分
配給:リガード
(C)2023 SUNSET FILMS
https://josan-movie.com/#modal
★2023年11月11日(金)ロードショー
花腐し
監督:荒井晴彦
原作:松浦寿輝「花腐し」講談社文庫
脚本:荒井晴彦、中野太
撮影:川上皓市、新家子美穂
出演:綾野剛(栩谷修一)、柄本佑(伊関貴久)、さとうほなみ(桐岡祥子)、吉岡睦雄(桑山篤)、川瀬陽太(寺本龍彦)、MINAMO(リンリン)、Nia(ハン・ユジョン)、マキタスポーツ(金昌勇)、山崎ハコ(韓国スナックのママ)、赤座美代子(小倉多喜子)、奥田瑛二(沢井誠二)
ピンク映画の監督、栩谷修一(くたに)。業界は斜陽の一途をたどりもう5年も映画を撮れていない。梅雨のある日、アパートの立ち退き交渉を頼まれた。たった一人居座っていたのは井関という男。人懐こい伊関と何度か会ううち昔つきあった女性の話になる。
井関は20代のころシナリオを書いていて、女性は女優志望。映画への夢を持っていた二人はしばらく一緒に暮らしたが、夢を実現できないまま別れてしまった。栩谷も30代のころ愛した女性を思い出す。
原作は松浦寿輝氏。2000年に発表された同名の芥川賞受賞作です。タイトルは「はなくたし」と読みます。万葉集の相聞歌「春されば 卯の花腐(くた)し 我が越えし 妹(いも)が垣間は 荒れにけるかも(詠み人知らず)」からとられています。
三人の過去と現在が交互に映し出されます。美しいモノクロ映像だったり、カラーだったりしますが、どちらでも雨がよく降ります。水もしたたるいい男が二人、女が一人。
さとうほなみさんは「ゲスの極み乙女」というバンドのドラマー。女優さんとしてしか知りませんでした。テレビ朝日のドラマ「六本木クラス」での印象が強く、映画でもきっぱりと男前な役が似合う気がしました。映画に舞台にと活躍中でこれからも注目していきます。(白)
2023年/日本/カラー/シネスコ/137分
配給:東映ビデオ
(C)2023「花腐し」製作委員会
https://hanakutashi.com/
★2023年11月10日(金)ロードショー