2023年11月08日

映画の朝ごはん

eiganoasagohan.jpg

監督・企画・撮影・編集:志子田勇
製作:由里敬三
プロデューサー:飯塚信弘
録音:百々保之
整音:松本理沙
撮影協力:芦澤明子(J.S.C)
音楽:yojikとwanda
ナレーション:小泉今日子
出演:竹山俊太朗、守田健二、福田智穂、鈴木直樹、磯見俊裕、大山晃一郎、沖田修一、黒沢 清、下田淳行、瀬々敬久、内藤剛志、野呂慎治、樋口真嗣、藤井 勇、山下敦弘

映画を作るスタッフ、キャストのほかに必要不可欠なものは?
食事だ!
映画界で知らない者はいないお弁当屋さん「ポパイ」は40年近くみんなに愛され続けている。おにぎり2個、おかず1品にたくあんのシンプルなお弁当はロケ撮影の朝ごはんの定番。早朝5時には新宿に集まるロケバスに、それぞれの注文の品を遅れず間違えずに届けなければいけない。
注文を受けて前日に仕込み、深夜のうちにごはんを焚き上げ、おにぎりと唐揚げを作り、パックに詰める。熱い缶茶と一緒に車に積み込むまで関わる人も紹介する。注文するのは制作部のスタッフ、昼、夜の分も手配することもある。采配する新旧スタッフも登場、お弁当から人間模様も、映画の裏も見えてくる。

映画は監督をはじめとしたスタッフ、俳優さんのお弁当愛あふれるお話も紹介していきます。みなさんよだれをたらさんばかりに嬉しそう、お弁当の力は大きい!コロナ禍での映画製作は長く停止となり、あおりを受けたポパイも苦境に陥りました。とつとつと語る社長さんの手はいつも働いていて、止まることはありません。
おにぎりが嫌い!という人はいるでしょうか?お米はそれだけでも美味しいし、片手で食べられて、すぐエネルギーになります。
ポパイのおにぎりは熱々のごはんをおにぎりの木枠にきゅきゅっと詰めて、具を入れて、ごはんをのせて手で押さえ、ポンっと出してきゅっとにぎって海苔を巻きます。人の手がかかっているので美味しいのでしょう。あ~食べたい。できればまだほんのりと暖かいのがいいです。伝説の弁当屋さんポパイは店頭販売もあるそうなので、今度予約してロケ弁食べてみたいです。(白)


ポパイのおにぎり弁当のドキュメンタリー映画ですが、映画の制作現場も映し出されます。そこでの主人公は竹山俊太朗さん。脚本家志望で、3年ほど演出部で助監督をしていたようですが、『サバカン SABAKAN』(2022)、『いつくしみふかき』(2020)でラインプロデューサーをされていた福田智穂さんから勧められて、制作部へ。キャストやスタッフの食事や飲み物などが用意してあるお茶場の準備は竹山さんの仕事。ずっとずっと先輩の守田健二さんにサポートされながら、慣れない仕事に勤しみます。ポパイのおにぎりの受け取りもしていました。制作の仕事をしながら監督の演出を学ぶはずが、様々な仕事が舞い込み、それどころではありません。あまり器用なタイプではなさそうですが、映画に対する愛情の大きさだけは負けないといった感じ。『いつくしみふかき』の大山晃一郎監督は「竹谷くんは自分の若い頃に似ている気がする」といい、「将来、竹山くんが作った映画が見たい」とも。私もぜひ見てみたい。そして監督インタビューをしたいので、竹山さん、頑張ってください。(堀)

2022年/日本/カラー/DCP/131分
(c)ジャンゴフィルム
https://eiganoasagohan.com/
公式 X(Twitter) @eiganoasagohan
★2023年11月10日(金)キネカ大森、シネスイッチ銀座にて上映中
posted by shiraishi at 22:50| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

蟻の王(原題:Il signore delle formiche)

arinoou.jpg

監督・脚本:ジャンニ・アメリオ
脚本:エドアルド・ペティ、フェデリコ・ファバ 
撮影:ルアン・アメリオ・ウイカイ 
美術:マルタ・マッフッチ
編集:シモーナ・パッジ
出演:ルイジ・ロ・カーショ(アルド・フライバンティ)、エリオ・ジェルマーノ(エンニオ)、レオナルド・マルテーゼ(エットレ)、サラ・セラヨッコ(グラツィエラ)

1960年代のイタリア。劇作家で詩人、蟻の研究者のアルド・フライバンティは芸術サークルを主宰している。若いエットレは博識のアルドを尊敬し、足しげく通ってきた。恋に落ちた二人はローマで同棲生活を送るが、当時同性愛は許されなかった。エットレの母親は息子をアルドから引き離し、矯正施設へ入れる。若者相手の警察に通報されたアルドは「教唆罪」で逮捕、罪を問われることになった。イタリア共産党機関紙「ウニタ」の記者エンニオは疑問を感じ、法廷を取材のため傍聴する。

「同性愛はない、したがって法律もない」とされていたムッソリーニの独裁政権時代。「教唆罪」は文字通り「そそのかして」罪を犯させるということ。
根強い偏見・差別はいとも簡単に暴力に変わります。幸せに暮らしていたエットレは、ベッドに縛り付けられ、電気ショックの「治療」を施されます。キラキラした青年だったエットレが、見る影もなく衰えた姿で証言台に立つシーンに胸打たれます。レオナルド・マルテーゼが鮮烈。『輝ける青春』(2003)を始め、名作に出演してきたルイジ・ロ・カーショがアルド。
なぜ『蟻の王』なのか、予告編にもチラッとヒントがありました。(白)


2022年/イタリア/カラー/ビスタ/140分
配給:ザジフィルムズ
© Kavac Srl / Ibc Movie/ Tender Stories/ (2022)
HP:http://www.zaziefilms.com/arinoo/
★2023年11月10日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMA、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開!
posted by shiraishi at 21:11| Comment(0) | イタリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

理想郷(原題:As bestas)

risoukyou.jpg

監督:ロドリゴ・ソロゴイェン
脚本:ロドリゴ・ソロゴイェン、イサベル・ペーニャ
撮影:アレハンドロ・デ・パブロ
出演:ドゥニ・メノーシェ(アントワーヌ)、マリナ・フォイス(オルガ)、ルイス・サエラ(シャン)、ディエゴ・アニード(ロレンソ)、マリー・コロン(マリー)

フランス人のアントワーヌとオルガ夫婦はスローライフの夢を抱いて、パリからスペイン ガルシア地方の山村に移住してきた。豊かな自然に包まれた村で羊を飼い、野菜を作りと夢は広がる。しかし住んでみると、近隣の住民たちに溶け込むのは容易ではなかった。村は貧しく、風力発電装置の設置に一縷の望みを持っている。隣家の兄弟は自分たちと違う裕福なアントワーヌたちを嫌う。仲良くなるどころか、兄弟のいやがらせは、次第にエスカレートしていく。

本当にあった事件を元にした作品。社会にある分断の見本のように、あらゆるものが揃っています。まだ来たばかりのころ、隣家の兄が歩いているアントワーヌに「車に乗れ」と声をかけます。ドアに手をかけようとすると前進し、とからかいます。ムッとするアントワーヌに「冗談だ」と笑いますが、悪意に満ちていて不穏な進路が見えるようでした。
あちら側とこちら側に分かれてしまうと互いに知りあい、理解するのが難しくなります。前半は男たちの闘い、後半は女性の闘いです。
夫役ドゥニ・メノーシェは、『ジュリアン』での怖い父親が今も目に浮かびます。妻役のマリナ・フォイスは『シャーク・ド・フランス』の警官、つい先日公開の『私はモーリン・カーニー 正義を殺すのは誰』のCEOとジャンル問わず活躍。(白)


●第35回東京国際映画祭でのタイトルは『ザ・ビースト』。
東京グランプリ、最優秀監督賞、最優秀主演男優賞の主要3部門受賞

・シネマジャーナルHP 特別記事
第35回東京国際映画祭(2022) クロージングセレモニー写真集
『ザ・ビースト』が東京グランプリ・最優秀監督賞・主演男優賞の3冠
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/494956621.html

ドゥニ・メノーシェ2019東京国際_R.jpg
ドゥニ・メノーシェさん 撮影:宮崎 暁美
第32回東京国際映画祭映画祭(2019)授賞式にて


2022年/スペイン、フランス/カラー/シネスコ/138分
配給:アンプラグド
(C)Arcadia Motion Pictures, S.L., Caballo Films, S.L., Cronos Entertainment, A.I.E,Le pacte S.A.S.
https://unpfilm.com/risokyo/
★2023年11月3日(金)ロードショー

posted by shiraishi at 21:10| Comment(0) | スペイン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする