2023年10月21日

私はモーリーン・カーニー 正義を殺すのは誰?(原題:LA SYNDICALISTE、THE SITTING DUCK)

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監督:ジャン=ポール・サロメ
原作:キャロリーヌ・ミシェル=アギーレ
脚本:ファデット・ドゥルアール、 ジャン=ポール・サロメ
撮影:ジュリアン・イルシュ
音楽:ブリュノ・クーレ
出演:イザベル・ユペール(モーリーン・カーニー)、グレゴリー・ガドゥボワ(ジル・ユーゴ)、フランソワ=グザヴィエ・ドゥメゾン(ジャン・ピエール)、ピエール・ドゥラドンシャン(ブレモン曹長)、アレクサンドラ・マリア・ララ(ジュリー)、ジル・コーエン(弁護士)、マリナ・フォイス(アンヌ・ロヴェルジョン)、イヴァン・アタル(リュック・ウルセル)

モーリーン・カーニーはフランスの世界最大の原子力発電会社で、労働組合連盟代表をつとめている。女性のCEOアンヌと協力し、理不尽なことを糾弾してきた。中国との技術移転契約を知り、そのリスクの大きさを憂えて内部告発者となった。会社の未来と従業員の雇用を守るためだったが、ある日数人の男たちに自宅で襲われる。家政婦によって発見され警察の捜査が始まるが、事件は次第に捻じ曲げられ自作自演だとまで言われてしまう。心身ともに傷つき疲弊したモーリーンは、耐えきれず自白に追い込まれる。

大企業の闇を暴く部分を背景に、耐えがたい暴力にさらされながら屈服しなかった女性の闘いを描いた作品です。イザベル・ユペールはこれまでも芯の強い、個性的な女性をよく演じてきました。本作のモーリーンもそれに連なるものですが、この事件はフィクションでなく本当にあった話だというのにぞっとします。権力とお金を得た者は決して手放さず、敵と見なせば容赦なく攻撃・排除するんですね。
モーリーン・カーニーは被害者から犯罪者にされ、さんざん貶められますが、家族や友人たちに支えられて戦い続けました。ついに6年後無罪を勝ち取りました。彼女が諦めることなく戦って、得たのは「被害者であるという事実に立ち戻れた」こと。確かにいた実行犯、指示したはずの黒幕は今も明らかになっていません。(白)


●第79回ヴェネチア国際映画祭 労働・環境人材育成財団賞受賞。

2022年/フランス、ドイツ合作/カラー/シネスコ/121分
配給:オンリー・ハーツ
(C)2022 le Bureau Films-Heimatfilm GmbH + CO KG-France 2 Cinema
http://mk.onlyhearts.co.jp/
★2023年10月20日(金)Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下他にて順次公開

posted by shiraishi at 02:57| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

北極百貨店のコンシェルジュさん

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監督:板津匡覧(いたづ よしみ)
原作:西村ツチカ『北極百貨店のコンシェルジュさん』
(小学館「ビッグコミックススペシャル」刊)
脚本:大島里美
撮影:田中宏侍
キャラクターデザイン・作画監督:森田千誉
音楽:tofubeats
主題歌:「Gift」Myuk(Sony Music Labels Inc.)
声の出演:川井田夏海、大塚剛央、飛田展男、潘めぐみ、藤原夏海、吉富英治、福山 潤、中村悠一

北極百貨店は品揃えとお客様への行き届いたサービスが売りの素敵な百貨店。ただ、店員は人間ですがお客様はすべて動物という、ちょっと変わった百貨店。中には「絶滅種」=“V.I.P.(ベリー・インポータント・アニマル)”と呼ばれる一癖も二癖もあるお客様もいらっしゃいます。初めて配属された新米コンシェルジェの秋乃には、毎日が学びの連続。厳しいフロアマネージャーの東堂や先輩たちの見守りと指導のもと、笑顔でお客様のご要望にこたえ、楽しくお買い物ができるよう奮闘しています。

奇想天外なシチュエーションのお仕事コミックが原作です。画像で見たところ、背景はスクリーントーンでなく、たぶん手で細かく描かれたものです。人間の表情や動きはわりあいシンプルな描線です(こちらで試し読みができます)。
そんな原作の雰囲気をこわさず、丁寧にアニメーション化したのは板津匡覧(いたづ よしみ)監督。人間といろいろな動物が混在している百貨店の内部を描くのにご苦労されたのではないでしょうか。
新米の秋乃は、初めは失敗も多いですがお客様と接するうちに、気配り上手になっていきます。買い物の相談も千差万別。どうやって解決していくのかが見どころです。動物の世界にも詳しくなること請け合い。
こういう世界では人間はどこへ買い物に行くのかしらとか、描かれない百貨店以外での暮らしはどうなってるのかしらと、頭の中で妄想がぐるぐるしました。それもまた楽し。(白)


2022年/日本/カラー/70分
配給:アニプレックス
(C)2023西村ツチカ/小学館/「北極百貨店のコンシェルジュさん」製作委員会
https://hokkyoku-dept.com/
★2023年10月20日(金)ロードショー

posted by shiraishi at 02:49| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ふまじめ通信

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監督・脚本:まつむらしんご
ヴィジュアルディレクター:柴崎まどか
音楽:かなふぁん
主題歌:kiss the gambler
出演:宇乃うめの(クニちゃん)、植田紗々(ヤっちゃん)、7A(ミンミン)、西本まりん(コウダ先生)、濱正悟(イトー)、みやなおこ(テルコ)、枝元萌(ナナコ)、三宅朱莉(タケダ)、中丸新将(フジオさん)、渡部直也(ジュンさん)、本谷紗己(タクシー運転手 マナツ)、そわんわん(乗客)

クニちゃんこと小山田久仁子は、都会で教職についていたがまじめすぎるあまりにストレスで心身を病んでしまう。退職して親友のヤッちゃんに誘われて和歌山に移住した。ヤッちゃんの叔父さんの空き家に管理人として住み、当面はのんびり暮らすつもりだ。クニちゃんのお医者さんの「もっと、うまく、ふまじめに生きなさい」という言葉が忘れられない。ありあまる時間の中、「ふまじめ通信」という音声番組をつくってみた。ふまじめなエピソードをぼそぼそとつぶやいている。誰か聞いてくれるのだろうか。

クニちゃんはおかっぱで、前髪は物差しで計ったかのように切りそろえています。これは一見してまじめな人なんだなという印象。お部屋も隅っこまできちんと掃除するに違いない。なにごともあいまいで、てきとーな私とは真逆です。
クニちゃんや周りの人たちの小さなできごとは、まつむらしんご監督が体験したり、聞いたりしたことだそうです。いくつもあるエピソードをそれが似合う出演者に手渡して表現してもらいましたって感じでしょうか。
お医者さんの言う通り、ふまじめに生きようとしているクニちゃんのストーリーは、友達の別れ話が入ったりしますが、どこから読んでもほっこりしたり、ちょっと笑えたりするゆる~いエッセイのようです。益田ミリさんのコミック「すーちゃん」が思い浮かびました。
ファンブック「ふまじめ通信」はちょっと小ぶりなサイズで、中身いっぱ~い詰まっています。シナリオ採録ありますよ。劇場にて販売中。(白)


2023年/日本/カラー/88分
配給:シネメディア
(C)ふまじめ通信
https://fumajime.jp/
★2023年10月20日(金)池袋シネマ・ロサ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開
posted by shiraishi at 02:40| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする