2023年10月08日

春画先生

syungasensei.jpg

原作・監督・脚本:塩田明彦
製作:中西一雄 小林敏之 小西啓介
プロデューサー:小室直子
共同プロデューサー:関口周平
ラインプロデューサー:松田広子
出演:内野聖陽(芳賀一郎)、北香那(春野弓子)、柄本佑(辻村俊介)、白川和子(本郷絹代)、安達祐実(藤村一葉)

退屈な日々を過ごしていた春野弓子は、変わり者と評判の芳賀一郎の家に通うことになった。芳賀は最愛の妻に先立たれ、世捨て人のように暮らしていたが知る人ぞ知る「春画」研究者だった。弓子は代々芳賀家で働くお手伝いの絹代に指導されつつ、芳賀の研究に興味を持っていく。
江戸人の性愛をおおらかに描いた「春画」を目にしたのは初めてだったが、芳賀の解説を聞くうちその面白さ、奥深さに目覚めていった。知識を吸収する弓子はいつしか芳賀の空いた心の穴を埋め、弓子は芳賀に恋心を抱くようになった。

内野聖陽さんはテレビドラマ「きのう何食べた?」でそれまでの男っぽいイメージを覆しました。本作では支えだった妻を失って、意気消沈している研究者役です。生き生きするのは、偏愛する春画の話をするときだけ。弓子が愛弟子となっていくのがこの上なく嬉しい人です。師弟で相思相愛になるのか、というところに登場するのが、亡き妻の姉・一葉。演じる安達祐実さんがこの上なく妖艶で、いやまあびっくり。別の作品で花魁姿も観ていましたが、お人形のような愛らしさが勝っていて、今回の大人の色気ではなかった記憶があります。
あまり身なりも構わないような芳賀先生、出入りする編集者・辻村役の柄本佑さんもなんだかやたら色っぽく見えるのは、みんな春画の醸し出す空気に洗われたのでしょうか。一葉の刺激もプラスに転じ、大人の女性として成長していく弓子をご覧ください。偏愛する人々がだんだん愛しくなっても、恥ずかしくありません。自分も仲間入りすればいいんです。
ドキュメンタリー『春画と日本人』(2019)を以前ご紹介しましたが、商業映画としては初めて無修正の浮世絵春画がスクリーンに登場します。ご留意のほど。(白)


2023年/日本/カラー/ビスタ/5.1ch/114 分 <R15+>
配給・宣伝:ハピネットファントム・スタジオ
Ⓒ2023「春画先生」製作委員会
https://happinet-phantom.com/shunga-movie
★2023年10月13日(金)全国ロードショー
posted by shiraishi at 15:03| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

tuki.jpg

監督・脚本:石井裕也
原作:辺見庸「月」角川文庫
企画・プロデューサー:河村光庸
撮影:鎌苅洋一
音楽:岩代太郎
出演:宮沢りえ(堂島洋子)、磯村勇斗(さとくん)、オダギリジョー(昌平)、二階堂ふみ(陽子)

堂島洋子は有名だったこともあるが、今は書けなくなって久しい作家。それでも夫の昌平が「師匠」と呼ぶのは変わらない。
洋子は生活費のため、森の奥にある重度障がい者施設で働くことになった。何くれとなく世話をやいてくれる同僚の陽子は作家志望、さとくんは絵の好きな青年で、紙芝居を作っては患者たちに見せている。
施設には「きーちゃん」と呼ばれる女性患者は、どんな刺激にもなんの反応もない。暗い部屋で一人ただ寝かされていた。生年月日が自分と同じことに気づいた洋子は、彼女が気になって親身に世話をする。施設では仕事に慣れ、飽いてしまった職員が患者へ暴力をふるったり、ひどい扱いをしたりするのを目にした。上司に相談するも対処してくれない。そんな状況をさとくんだけが真剣に怒っている。

重度障がい者施設の患者というと、あの衝撃だった2016年の事件を思い出します。原作者の辺見庸氏は事件後「書かねばならなかった」小説として完成させました。映画となった本作は施設内部だけでなく、施設に関わっていく洋子を外に配して、観客により近しいものにしています。登場人物の抱えてきたものが次第に明らかになるにつれ、観客は誰かに共感していきます。
洋子がさとくんに詰問される場面は、私たちが問われているようで絶句してしまいました。森の奥にある施設は孤立し、外の人間は関わらずに暮らしています。そこにあってもないと同じ。「見ぬこと(もの)清し」でいいの? ナチスの浄化思想をひどい、おかしいということはできても、じゃあ自分に優性思想がないとはいいきれません。みんなどこか不足したり、過ぎていたりして、それが当たり前なのに。
石井監督の脚本や演出によくこたえた俳優陣に拍手。昨年の撮影直前に亡くなられた河村光庸プロデューサーは、どんな感想を持たれたでしょう。(白)


2023年/日本/カラー/シネスコ/144分
配給:スターサンズ
(C)2023「月」製作委員会
https://www.tsuki-cinema.com/
★2023年10月13日(金)ロードショーたれ
posted by shiraishi at 14:32| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

宇宙探索編集部  原題:宇宙探索編輯部 英語題:Journey to the West

2023年10月13日(金)より
新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷、アップリンク吉祥寺他全国順次公開

UCHU_本ポスター_R_R.jpg


人に何を言われようと宇宙人の存在を信じて進み続ける爆笑と奇想天外ロードムービー!

監督・共同脚本:孔大山(コン・ダーシャン)
撮影監督:マティアス・デルヴォー
エグゼクティブ・プロデューサー:
王紅衛(ワン・ホンウェイ)、郭帆(グオ・ファン)
プロデューサー:龔格爾(ゴン・ゴーアル)
主題歌:蘇運瑩(スー・ユンイン)
字幕:磯尚太郎 字幕協力:大阪大学外国語学部 古川裕

出演:楊皓宇(ヤン・ハオユー)、艾麗婭(アイ・リーヤー)、王一通(ワン・イートン)、蒋奇明(ジャン・チーミン)、盛晨晨(ション・チェンチェン)

舞台は中国。主人公は廃刊寸前のUFO雑誌「宇宙探索」の編集長。

30年前の宇宙ブームは去り、かつて人気があったUFO雑誌「宇宙探索」は廃刊の危機に陥り細々と発行を続けている。光熱費の支払いすらおぼつかない。それでも、編集長のタンは地球外生命体の謎を追い続けてきた。
ある日、四川省の鳥焼窩村に空から正体不明の光が降ってきて、宇宙人の仕業と思われる不思議な現象が起きたという情報を掴み、編集部の仲間たちを連れて調査の旅に出る。
一行は鳥焼窩村で奇妙な言動を繰り返す青年スンと出会う。宇宙人からの指示に従いあるミッションを完遂しないといけないというスンに従い、さらに西へと向かう一行。そこで彼らを待ち受けていたのは、予想と人智をはるかに超えた出来事。人から何を言われようと、バカにされようと、夢を信じて進む宇宙探索編集部。その馬鹿馬鹿しくも、奇想天外な行動が爆笑を呼ぶ、宇宙人探しのロードムービー。

監督のコン・ダーシャンは北京電影学院の監督科出身。この作品は卒業制作でありながら、2021年の平遥映画祭の最優秀作品賞、審査員栄誉賞、映画ファン栄誉賞をトリプル受賞。2022年の大阪アジアン映画祭でも上映された。2019年に中国で大ヒットした『流転の地球』のグォ・ファン監督がエグゼクティブ・プロデューサーを務めたことも話題になった。英題の「Journey to the West」は「西遊記」の英題とのこと。

2021年製作/118分/G/中国
配給:ムヴィオラ  
公式サイト:https://moviola.jp/uchutansaku/
posted by akemi at 05:04| Comment(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする