2023年10月05日

ヨーロッパ新世紀   原題:R.M.N

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©Mobra Films-Why Not Productions-FilmGate Films-Film I Vest-France 3 Cinema 2022


監督:脚本:クリスティアン・ムンジウ
出演:マリン・グリゴーレ、エディット・スターテ、マクリーナ・バルラデアヌ 他

ルーマニア、山に囲まれたトランシルヴァニア地方の村。主要産業だった鉱山が閉鎖され、経済的に落ち込んでいる。
クリスマス直前の冬、出稼ぎ先のドイツの食肉工場で暴力沙汰を起こしたマティアスが村に帰ってくる。疎遠だった妻アナは突然帰ってきた夫に冷たい目を向ける。幼い息子のルディは、最近、森で恐ろしい何かを目撃し、口がきけなくなっていた。
マティアスは元恋人のシーラに心の安らぎを求める。シーラはパン工場の責任者を務めていて、EUからの補助金を得るために広告を出すも、働き手はより良い収入を求めて西ヨーロッパに出稼ぎに行っていて、シーラは人材派遣業者を通じてスリランカ人3人を雇う。ところが、アジア系の彼らを異端視した村人たちが、「彼らの作るパンは汚くて食べられない」などとSNSで流し、やがて騒動は収拾がつかなくなり、村長、神父、警察、報道関係者の立ち合いのもと、文化センターで緊急集会が催されることになる・・・

ルーマニア人とハンガリー人、少数のドイツ人やロマの人々が暮らす多民族の村。それぞれ民族の言葉を話していますが、お互い理解しあえています。ムンジウ監督は、字幕製作にあたり、それぞれの色を違えることを色まで指定してきたとのこと。あえて字幕をつけなかったところも、監督の指示。
ルーマニアの片田舎の物語ですが、まるで世界の縮図のよう。
偏見や無理解が諍いに至ります。言葉は通じなくても、お互いを敬う気持ちがあれば、争うまでにはならないはずです。
原題のR.M.Nは、Rezonanta Magnetica Nuclearaの略で、英語では、NMR(Nuclear magnetic resonance)で核磁気共鳴という意味。脳を検査するもので、表面下にあるものをスキャンする方法とのこと。人が生きるために共感する本能??
『4ヶ月、3週と2日』でカンヌ国際映画祭パルムドールを受賞したクリスティアン・ムンジウ監督の作品。なかなか意味深なタイトルです。(咲)


第75回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品作品

2022年/ルーマニア・フランス・ベルギー/カラー/シネスコ/127分/5.1ch  
日本語字幕:関美冬  
宣伝:テレザ、竹田美智留  後援:在日ルーマニア大使館  
配給:活弁シネマ倶楽部/インターフィルム  
公式サイト:https://rmn.lespros.co.jp/
★2023年10月14日(土)よりユーロスペース他全国順次公開




posted by sakiko at 19:42| Comment(0) | ルーマニア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

アンダーカレント

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(C)豊田徹也/講談社 (C)2023「アンダーカレント」製作委員会

監督:今泉力哉
出演:真木よう子、井浦新、リリー・フランキー、永山瑛太、江口のりこ
音楽:細野晴臣

父が亡くなり、家業の銭湯・月の湯を、かなえは夫・悟と共に切り盛りしてきた。突然、悟が失踪し、しばらく休業していた月の湯をなんとか再開する。そんな折、堀という男が「働きたい」とやって来る。住み込みで働き始めた堀と、不思議な共同生活が始まる。
一方、友人・菅野に紹介された探偵・山崎に3か月の約束で悟の行方を探してもらうことにする。かなえは、夫の知られざる事実を次々と知ることになる・・・

原作は、2005年に発行されるや「まるで1本の映画のようだ!」と、国内外から熱狂的な支持を得た豊田徹也の伝説の漫画。

リリー・フランキー演じる探偵、カラオケに呼び出したかと思うと、次は遊園地。確かに、カラオケも観覧車も密室で、人にあまり聞かれたくない話をするにはうってつけ。この山崎という探偵、大いに笑わせてくれますが、ある意味、真実も。約束の3か月が経って、「日本では年間8万5千人が失踪し、ほとんど見つからない」と、かなえに告げます。それ、最初に言ってほしかったかも。でも、結末は???
ふっと、これまでの生活をすべて捨てたくなることって、ありそうです。
突然、銭湯で働きたいとやってきた堀という男も、なにか因縁の過去がありそうで、井浦新さん、上手いなぁ~と思いました。

アンダーカレントとは、
1、 下層の水流、底流。
2.(表面の思想や感情と矛盾する)暗流
と、冒頭に掲げられます。
人は皆、多かれ少なかれ、本心を人に見せないで生きているのかもしれません。そんなことを考えさせられた物語でした。(咲)


2023年/日本/143分
配給:KADOKAWA
公式サイト:https://undercurrent-movie.com/
★2023年10月6日(金)全国公開




posted by sakiko at 17:46| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする