2023年10月03日

栗の森のものがたり  原題:Zgodbe iz kostanjevih gozdov 英題:Stories from the Chestnut Woods

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© NOSOROGI - TRANSMEDIA PRODUCTION - RTV SLOVENIJA - DFFB 2019

監督:グレゴル・ボジッチ
脚本:グレゴル・ボジッチ、マリーナ・グムジ
撮影:フェラン・パラデス
編集:グレゴル・ボジッチ、ベンジャミン・ミルゲ、ジュゼッペ・レオネッティ
音楽:ヘクラ・マグヌスドッティル、ヤン・ヴィソツキー
出演:マッシモ・デ・フランコヴィッチ、イヴァナ・ロスチ、ジュジ・メルリ、トミ・ヤネジッチ

時は1950年代。かつては安息の地と呼ばれ、美しい栗の森に囲まれた、イタリアとユーゴスラビア(現:スロヴェニア)の国境地帯にある小さな村。第二次世界大戦終結後、長引く貧困と政情不安から多くの人々が故郷を去ることを余儀なくされた。
老大工のマリオは、家を出たきり連絡のない一人息子宛の手紙に思いを綴っては投函することなく引き出しにしまう。老いた妻は、逝く前に息子に会いたいと嘆く。
栗売りのマルタは、戦争から戻ってこない夫からの手紙と数枚の写真を唯一の手掛かりに、現在住んでいるであろうオーストラリアに旅立つ決意をする。そんなある日、マルタとマリオは出逢い、互いの身の上を語りあう。そしてマリオはマルタにある提案を持ち掛ける…。

戦後、何年も経ってベルギーから帰ってきた男が、村で語り継がれた老いた大工と美しい娘の話を語るという物語。東方3賢者の亡霊も出てきて、どこまでが現実で、どこからがファンタジーなのか境界線がわからない不思議な映画でした。 
1988年にユーゴスラビアからイタリアに抜ける旅をしたことがあって、ほんとうに風光明媚なところ。その後、内戦が起きてユーゴスラビアがいくつもの国に分裂するなどと思いもよりませんでしたが、第二次大戦後に、人々が故郷を捨てざるをえなかったような状況があったとは知りませんでした。
大工マリオは、「一度死んじまえば万々歳。食事も水も必要ない。税金や侮辱とも無縁」と語ります。なんと現実的な死生観でしょう! そのマリオが栗の木から彫りだす棺の美しいこと! 余韻の残る心に沁みる物語です。(咲)



★本作が長編デビューとなるスロヴェニア出身の新鋭グレゴル・ボジッチ。2019年のトロント国際映画祭でプレミア上映されるや大喝采を浴び、スロヴェニア国際映画祭では最優秀作品賞、監督賞、男優賞、撮影賞、観客賞など11部門を独占。2020年に開催されたなら国際映画祭では、コンペ作品の中で「最も美しい」と評され審査員特別賞に輝きました。

2019年/スロヴェニア・イタリア/イタリア語・スロヴェニア語/カラー/82分/ビスタ
日本語字幕:佐藤まな 字幕協力:なら国際映画祭
提供:クレプスキュール フィルム、シネマ サクセション
配給:クレプスキュール フィルム
公式サイト:http://chestnut.crepuscule-films.com/
★2023 年 10 月 7 日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
posted by sakiko at 10:00| Comment(0) | スロヴェニア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする