2023年10月29日
トンソン荘事件の記録 原題:マルイビデオ 마루이 비디오 英題:Marui Video
監督:ユン・ジョンヒョン
出演:ソ・ヒョヌ、チョ・ミンギョン
1992年、釜山の旅館「トンソン荘」で殺人事件が起きた。旅館のアルバイトの男が恋人を連れ込み、隠しカメラで部屋の様子を撮影。しかし、男はその部屋で恋人を殺害してしまう。逮捕された男は、心神耗弱による無罪を主張したが、判決は無期懲役。そして、仮釈放の1年前に自ら命を絶った。その殺害の一部始終が収められたビデオは、その残虐性から当局によって封印された。しかし、検事の間で話題になったのは、殺害の様子ではなく部屋の鏡に映っていたものだった。それは、男でも恋人でもなく、そこにいるはずのない何かの姿。取材班は、その真相を突き止めるべく調査を開始。その様子を記録映画として撮影するが―。
原題の「マルイビデオ」とは、韓国国内で起きた事件映像のうち、残虐度が高くて外部に流出してはいけない映像のこと。 ぞくっとさせられたのは、そのマルイビデオに映っている殺害現場よりも、現場の旅館に向かうときの映像。トンソン荘のある峨嵋洞は、釜山の山肌にびっしりと家が密集した地区。朝鮮戦争の時に避難してきた人たちが住み着いたところで、日本統治時代は墓地だったところ。トンソン荘に向かって上がっていく階段には、墓石が使われているのです。避難民は、そうしたところにしか住めなかったのだと胸が痛みました。
あと、韓国らしくて興味深かったのが、犯人が自殺した家で祈祷師の女性が儀式を行った場面。そこで明かされるその家で暮らしていた人たちのこと。家の主である男性がベトナム戦争に従軍し、帰国後に心を病んでいたことにも、韓国のたどった歴史を感じました。(咲)
2023年/韓国/韓国語/87分/シネスコ/5.1ch
字幕:福留友子
提供:ニューセレクト 配給:アルバトロス・フィルム
公式サイト:https://tonsonsou.com/
★2023年10月27日(金)より、シネマート新宿・心斎橋ほか全国公開
2023年10月28日
愛にイナズマ
監督・脚本:石井裕也
撮影:鍋島淳裕
音楽:渡邊崇
出演:松岡茉優(折村花子)、窪田正孝(舘正夫)、佐藤浩市(折村)、池松壮亮(折村誠一)、若葉竜也(折村雄二)、仲野太賀(落合)、趣里(携帯ショップの女)、高良健吾(ホテル社長)、MEGUMI(原)、三浦貴大(荒川)、鶴見辰吾(佐々木智夫/声)、北村有起哉(配送会社の社長)、中野英雄(鬼頭三郎)、益岡徹(則夫)
折村花子26歳。夢だった映画監督デビューがせまって気合十分だった。ところが、オリジナルの脚本がプロデューサーとベテラン助監督の荒川にどんどん変更されてゆく。おまけに花子をなめきった荒川にセクハラをうけそうになる。結局花子は降ろされ、渾身の脚本も横取りされてしまった。どん底の花子に知り合ったばかりの正夫が問う。「あきらめるんですか?」。「負けませんよ、私は!」花子は反撃に打って出ることを決意。音信不通だった父と二人の兄に10年ぶりに再会する。
石井裕也監督のオリジナル脚本。配役もぴったりです。監督の人脈が見えそうな豪華俳優陣がちょっとした役にもはまっています。
夢だった映画業界の中に入った途端、足をすくわれる花子に同情を禁じえません。石井監督が配したのは、独特な感性の正夫、窪田正孝さんが守護天使のように花子を力づけます。「どうしようもない家族」と見きっていた父と兄たちに再会してみると、子どもだった花子には知りえない事情がありました。イナズマが轟くときに真実への扉が開き、花子の物語は新しい展開を見せて行きます。笑ったり泣いたり、感情を揺さぶられますのでご注意ください。
10月に公開されたもう1本の石井監督の『月』とは全く違うタイプの作品なので、両方ご覧になっていただきたいです。「1500万円」という金額もキーワード、アレとコレが同じ価値なのか~?と思いますよ。
英語のタイトルは”Masked Hearts”意味は「マスクで覆われた心」と石井裕也監督。コロナ禍を経験したからこそできた映画、とのことです。(白)
石井監督と松岡さんのワンショット
2023年/日本/カラー/140分
配給:東京テアトル
(C)2023「愛にイナズマ」製作委員会
https://ainiinazuma.jp/
★2023年10月27日(金)全国ロードショー
2023年10月21日
私はモーリーン・カーニー 正義を殺すのは誰?(原題:LA SYNDICALISTE、THE SITTING DUCK)
監督:ジャン=ポール・サロメ
原作:キャロリーヌ・ミシェル=アギーレ
脚本:ファデット・ドゥルアール、 ジャン=ポール・サロメ
撮影:ジュリアン・イルシュ
音楽:ブリュノ・クーレ
出演:イザベル・ユペール(モーリーン・カーニー)、グレゴリー・ガドゥボワ(ジル・ユーゴ)、フランソワ=グザヴィエ・ドゥメゾン(ジャン・ピエール)、ピエール・ドゥラドンシャン(ブレモン曹長)、アレクサンドラ・マリア・ララ(ジュリー)、ジル・コーエン(弁護士)、マリナ・フォイス(アンヌ・ロヴェルジョン)、イヴァン・アタル(リュック・ウルセル)
モーリーン・カーニーはフランスの世界最大の原子力発電会社で、労働組合連盟代表をつとめている。女性のCEOアンヌと協力し、理不尽なことを糾弾してきた。中国との技術移転契約を知り、そのリスクの大きさを憂えて内部告発者となった。会社の未来と従業員の雇用を守るためだったが、ある日数人の男たちに自宅で襲われる。家政婦によって発見され警察の捜査が始まるが、事件は次第に捻じ曲げられ自作自演だとまで言われてしまう。心身ともに傷つき疲弊したモーリーンは、耐えきれず自白に追い込まれる。
大企業の闇を暴く部分を背景に、耐えがたい暴力にさらされながら屈服しなかった女性の闘いを描いた作品です。イザベル・ユペールはこれまでも芯の強い、個性的な女性をよく演じてきました。本作のモーリーンもそれに連なるものですが、この事件はフィクションでなく本当にあった話だというのにぞっとします。権力とお金を得た者は決して手放さず、敵と見なせば容赦なく攻撃・排除するんですね。
モーリーン・カーニーは被害者から犯罪者にされ、さんざん貶められますが、家族や友人たちに支えられて戦い続けました。ついに6年後無罪を勝ち取りました。彼女が諦めることなく戦って、得たのは「被害者であるという事実に立ち戻れた」こと。確かにいた実行犯、指示したはずの黒幕は今も明らかになっていません。(白)
●第79回ヴェネチア国際映画祭 労働・環境人材育成財団賞受賞。
2022年/フランス、ドイツ合作/カラー/シネスコ/121分
配給:オンリー・ハーツ
(C)2022 le Bureau Films-Heimatfilm GmbH + CO KG-France 2 Cinema
http://mk.onlyhearts.co.jp/
★2023年10月20日(金)Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下他にて順次公開
北極百貨店のコンシェルジュさん
監督:板津匡覧(いたづ よしみ)
原作:西村ツチカ『北極百貨店のコンシェルジュさん』
(小学館「ビッグコミックススペシャル」刊)
脚本:大島里美
撮影:田中宏侍
キャラクターデザイン・作画監督:森田千誉
音楽:tofubeats
主題歌:「Gift」Myuk(Sony Music Labels Inc.)
声の出演:川井田夏海、大塚剛央、飛田展男、潘めぐみ、藤原夏海、吉富英治、福山 潤、中村悠一
北極百貨店は品揃えとお客様への行き届いたサービスが売りの素敵な百貨店。ただ、店員は人間ですがお客様はすべて動物という、ちょっと変わった百貨店。中には「絶滅種」=“V.I.P.(ベリー・インポータント・アニマル)”と呼ばれる一癖も二癖もあるお客様もいらっしゃいます。初めて配属された新米コンシェルジェの秋乃には、毎日が学びの連続。厳しいフロアマネージャーの東堂や先輩たちの見守りと指導のもと、笑顔でお客様のご要望にこたえ、楽しくお買い物ができるよう奮闘しています。
奇想天外なシチュエーションのお仕事コミックが原作です。画像で見たところ、背景はスクリーントーンでなく、たぶん手で細かく描かれたものです。人間の表情や動きはわりあいシンプルな描線です(こちらで試し読みができます)。
そんな原作の雰囲気をこわさず、丁寧にアニメーション化したのは板津匡覧(いたづ よしみ)監督。人間といろいろな動物が混在している百貨店の内部を描くのにご苦労されたのではないでしょうか。
新米の秋乃は、初めは失敗も多いですがお客様と接するうちに、気配り上手になっていきます。買い物の相談も千差万別。どうやって解決していくのかが見どころです。動物の世界にも詳しくなること請け合い。
こういう世界では人間はどこへ買い物に行くのかしらとか、描かれない百貨店以外での暮らしはどうなってるのかしらと、頭の中で妄想がぐるぐるしました。それもまた楽し。(白)
2022年/日本/カラー/70分
配給:アニプレックス
(C)2023西村ツチカ/小学館/「北極百貨店のコンシェルジュさん」製作委員会
https://hokkyoku-dept.com/
★2023年10月20日(金)ロードショー
ふまじめ通信
監督・脚本:まつむらしんご
ヴィジュアルディレクター:柴崎まどか
音楽:かなふぁん
主題歌:kiss the gambler
出演:宇乃うめの(クニちゃん)、植田紗々(ヤっちゃん)、7A(ミンミン)、西本まりん(コウダ先生)、濱正悟(イトー)、みやなおこ(テルコ)、枝元萌(ナナコ)、三宅朱莉(タケダ)、中丸新将(フジオさん)、渡部直也(ジュンさん)、本谷紗己(タクシー運転手 マナツ)、そわんわん(乗客)
クニちゃんこと小山田久仁子は、都会で教職についていたがまじめすぎるあまりにストレスで心身を病んでしまう。退職して親友のヤッちゃんに誘われて和歌山に移住した。ヤッちゃんの叔父さんの空き家に管理人として住み、当面はのんびり暮らすつもりだ。クニちゃんのお医者さんの「もっと、うまく、ふまじめに生きなさい」という言葉が忘れられない。ありあまる時間の中、「ふまじめ通信」という音声番組をつくってみた。ふまじめなエピソードをぼそぼそとつぶやいている。誰か聞いてくれるのだろうか。
クニちゃんはおかっぱで、前髪は物差しで計ったかのように切りそろえています。これは一見してまじめな人なんだなという印象。お部屋も隅っこまできちんと掃除するに違いない。なにごともあいまいで、てきとーな私とは真逆です。
クニちゃんや周りの人たちの小さなできごとは、まつむらしんご監督が体験したり、聞いたりしたことだそうです。いくつもあるエピソードをそれが似合う出演者に手渡して表現してもらいましたって感じでしょうか。
お医者さんの言う通り、ふまじめに生きようとしているクニちゃんのストーリーは、友達の別れ話が入ったりしますが、どこから読んでもほっこりしたり、ちょっと笑えたりするゆる~いエッセイのようです。益田ミリさんのコミック「すーちゃん」が思い浮かびました。
ファンブック「ふまじめ通信」はちょっと小ぶりなサイズで、中身いっぱ~い詰まっています。シナリオ採録ありますよ。劇場にて販売中。(白)
2023年/日本/カラー/88分
配給:シネメディア
(C)ふまじめ通信
https://fumajime.jp/
★2023年10月20日(金)池袋シネマ・ロサ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開
2023年10月20日
キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン(原題:Killers of the Flower Moon)
監督:マーティン・スコセッシ
原作:「花殺し月の殺人 インディアン連続怪死事件とFBIの誕生」デイヴィッド・グラン(ハヤカワ文庫NF)
脚本:エリック・ロス、マーティン・スコセッシ
出演:レオナルド・ディカプリオ(アーネスト・バークハート)、ロバート・デ・ニーロ(ウィリアム・ヘイル/キング)、ジェシー・プレモンス(トム・ホワイト)、リリー・グラッドストーン(モーリー・カイル)、
軍隊から退役したアーネストは、叔父のウィリアム・ヘイルを頼ってオクラホマへやってきた。そこは先住民族のオセージ族の土地で、油田が見つかったことで、生活が一変し最も裕福な先住民になった。彼らが持つ原油の権利を狙う白人たちが集まり、賑やかな街の裏では不可解な事件が起き始めていた。街の名士の叔父は農場を経営し、”キング”と呼ばれている。運転手の仕事を得たアーネストは、オセージ族の美しい娘、モーリーと親しくなり結婚する。
好きなものは「金と女」というアーネストを演じるレオナルド・ディカプリオが、見違えるほど面変わりしています。かつての美少年はどこに??
眉間に深いしわ、への字口のアーネストは。力のある叔父に唯々諾々と従うだけのダメ男です。その叔父役のロバート・デ・ニーロが終始笑顔で、自分は決して手を出さず口先だけで人を操つるキングを演じて怖い怖い。アーネストの妻のモーリーは聡明な女性に見えますが、腹黒さに気づかなかったのでしょうか。長いという原作を読んでみたいです(ただいまAmazonのベストセラー第1位)。
原油をめぐっての先住民と白人の争いは、これまで映画で観たことはなかった気がします。この物語は史実を元にしているそうで、アメリカではあまり知られたくないことなのかもしれません。原作は捜査官トム・ホワイトが陰惨な事件をひもといていく形で、映画は原油をめぐる争いだけでなく、アーネストとモーリーの夫婦にもフォーカスしています。狡猾なキングに抗えないまま巻き込まれていくアーネストが、お金に汚いバカな男だけれど哀切。二人の俳優の演技合戦をご覧ください。欲にまみれた人間たちを描き切った脚本と俳優の力に、3時間余りという長さを感じませんでした。(白)
2023年/アメリカ/カラー/シネスコ/110分
配給:東和ピクチャーズ
画像提供 Apple
https://kotfm-movie.jp/
★2023年10月20日(金)ロードショー
2023年10月19日
毒舌弁護人〜正義への戦い〜 原題:毒舌大狀 英題:A Guilty Conscience
(C)2022 Edko Films Limited, Irresistible Beta Limited, the Government of the Hong Kong Special Administrative Region. All Rights Reserved.
監督/脚本:呉煒倫(ジャック・ン)
撮影監督 : アンソニー・プン
製作:ビル・コン、アイヴィ・ホー
出演:黄子華(ダヨ・ウォン、ウォン・ジーワー) 、謝君豪(ツェ・クワンホー) 、王丹妮(ルイーズ・ウォン)、廖子妤(フィッシュ・リュウ)、王敏徳(マイケル・ウォン)、栢天男(アダム・パック)、楊偲泳(レンシ・ヨン)、何啟華(ホ・カイ・ワ)
ラム・リョンソイ(ダヨ・ウォン)は治安判事として50代になるまで些細な事件の処理に追われる日々を送ってきたが、新しい上司の気分を害して、職を失ってしまう。そんなラムに、友人が法廷弁護士として復活することを勧めてくれる。弁護士としてはじめて手掛けたのは母子家庭で娘が亡くなり、母親が虐待による過失致死で起訴された事件。ラムは、若い女性法廷弁護士のフォン・カークワンと組み、法廷に立つ。一見、複雑に見えない事件だった。母親ツァン・キッイ(ルイーズ・ウォン)は、娘が重傷を負った夜、愛人であるチュン・キンイ医師(アダム・パック)も現場にいたと供述。ラムはチュン・キンイに母親が無実である証言をするよう求めていたが、証言台に立った彼は異なる証言をし、ツァン・キッイは禁錮17年の刑に処せられてしまう。
2年後、ラムは法廷弁護士を辞め、公共の不正行為を専門とする法律事務所を運営している。何をしていても、ツァン・キッイの裁判での失敗が頭を離れない。そんなある日、ツァン・キッイが不利になる証言をしたチュン・キンイが「ツァン・キッイは真の犯人ではない」という遺書をのこして自殺してしまう。ラムとフォンは、ツァン・キッイの再審請求をする・・・
チュン・キンイの妻、チュン・ニンワー(フィッシュ・リウ)は、香港の経済界を牛耳る名門一族出身。チュン・キンイが証言を翻したのも、一族の権威や利益を守るためだったようです。
若いけれど利発な女性法廷弁護士フォン・カークワン(レンシ・ヨン)が、ラムに証言書面を取っておけと言っていたにもかかわらず、ラムは取ってなかったのです。証言書面があれば、証言を変えられた場合に弁護側も守られるという次第。その失敗を心に引きずったラムが、再審裁判の最後に奮う熱弁が心に残ります。
古くからの香港映画ファンとしては、チュン家の顧問弁護士役で登場した王敏德(マイケル・ウォン)の悪役ぶりに目を見張りました。 『狼たちの絆(縦横四海)』(1991)、 『キラーウルフ 白髪魔女伝(白髪魔女傅)』 (1993)、『月夜の願い(新難兄難弟)』(1993)などでの爽やかなマイケル・ウォンを懐かしく思い出しながら、流れた年月を感じた次第です。 『毒舌弁護人〜正義への戦い〜』は、あの頃の香港映画とは違うタイプの、新しい今時の香港映画といえそうです。2023年の旧正月に公開され、香港映画史上初の1億香港ドルを突破し、歴代興収第1位(※2023年9月1日)に輝いています。(咲)
2023年/香港/カラー/シネスコ/133分/5.1ch
日本語字幕:鈴木真理子
配給:楽天 配給協力:シネメディア
宣伝協力:活弁シネマ倶楽部
公式サイト:https://r10.to/HP_DokuzetsuRmovie
★2023年10月20日(金)よりシネマート新宿ほか全国順次ロードショー
2023年10月15日
シェアの法則
監督:久万真路
脚本:岩瀬顕子
撮影:大塚亮
出演:小野武彦(春山秀夫)、宮崎美子(春山喜代子)、貫地谷しほり(高柳美穂)、浅香航大(春山隆志)、鷲尾真知子(岩井富子)、岩瀬顕子(松岡加奈子)、大塚ヒロタ(小池一男)、小山萌子(ワン・チン)、岩本晟夢(玉田幸平)、山口森広、上原奈美、内浦純一、久保耐吉
春山秀夫と喜代子夫妻は自宅を改装してシェアハウスを始めた。妻の喜代子は世話好きで、個性的な住人たちに母親のように慕われている。事故をきっかけに入院することになり、管理人の全ての仕事が秀夫の肩にかかってきた。いきなり家賃の値上げを言い出して、住民のひんしゅくをかってしまう。気難しい秀夫は息子・隆志の生き方を認めることもできずにいるが、キャバクラ勤めの美穂のトラブルや、中国の家族のために働くワンの事情を知っていくうちに、少しずつ変わっていく。
ほとんどのストーリーがシェアハウスの中で進む群像劇です。演劇みたいと思っていたら、もとは劇団青年座で上演した同名の舞台劇でした。岩瀬顕子さんが映画版でも脚本を担当し、率直なもの言いのキャリアウーマン松岡加奈子を演じています。
小野武彦さんは多くのテレビ、映画でお顔を拝見しますが、これが俳優人生初の主役だそうです。ザ・昭和の男の妻役はデビュー作で共演したという宮﨑美子さん、頑固な夫を立てつつ、自分のしたいことはちゃんとやっている賢い妻です。住人ひとりひとりが何らかの問題を抱えていますが、それとなく支え、応援しています。
シェアハウスは、それぞれが独立した部屋のアパートよりもゆるやかな形の住まいです。個室、トイレ・風呂・リビング共同、食事は各自だったりそうでなかったり。一人で住むより経費も抑えられます。孤立せず関わりすぎず、これからこういう形が増えていくのかもしれません。(白)
2023年/日本/カラー/シネスコ/107分
配給:GACHINKO Film(ガチンコ・フィルム)
宣伝協力:マジックアワー
(C)2022 ジャパンコンシェルジュ
http://www.share-hosoku.com/
★2023年10月14日(土)新宿K’s cinema ほか全国順次ロードショー
※劇団青年座『シェアの法則』第244回公演2023年3/6~12/23全国巡演中.第255回公演2024年3/29~31公演予定
うかうかと終焉
監督・脚本:大田雄史
原作:「うかうかと終焉」第23回日本劇作家協会新人戯曲賞受賞
撮影:春木康輔
音楽:上田壮一
出演:西岡星汰(西島伸太郎)、渡辺佑太朗(美濃部軍平)、松本妃代(児玉香奈枝)、三浦獠太(前野中吉)、乃中瑞生(渡辺美月)、中山翔貴(村井均)、中村無何有(引越屋スタッフ)、中川可菜(スミ子)、大休寺一磨(坂田 )、コウメ太夫(酒屋店主)、後藤剛範(魚屋店員)、森下能幸(解体業者B)、池谷のぶえ(解体業者A)、前野朋哉(清水ショウタ)、草村礼子(清水テイ)、平泉成(鈴木)
西島伸太郎は空き地マニアで、見つけると写真を撮りたくなる。スマホの画像を確認してある空き地に目が留まった。
5年前、学生だった自分を思い出す。古い学生寮は5日後に取り壊しが決まって、残っていた者たちが毎日退寮していく。今日は美月のお別れ麻雀大会だった。一番年上の10回生美濃部を中心に、仲が良い5人。伸太郎、児玉香奈枝、前野中吉、渡辺美月たちは、これまでの学生生活、寮でのできごとを思い出しては話し、卒業後のことなどを考えながら残り少ない寮生活を送っていた。
大田雄史監督と出口明氏が共同執筆した戯曲が原作。舞台を京大白川寮に変えて書き直し、取り壊しが決まった寮での最後の5日間を描いています(白川寮は映画と違って今も存在)。短い中でよくまとまっていて、寮生でなくとも自分の学生生活を思い出してちょっと甘酸っぱいような感覚になります。最後だからと言って、特に劇的な展開はなく、解体業者が下見がてら退寮を促しにくるくらいなもの。『鴨川ホルモー』みたいなことは起きません。
もう取り壊しなのに電球がつかなくて、ほかの部屋から、こっそり失敬してくる場面があります。そうと知らないちょっと天然な寮生の村井均くんが電気屋さんに買いに行って、「今の電球って高いんですね!」というセリフがありました。
白熱電球じゃないんです。さて、いくらでしょう。私も知らなかったので笑ってしまいました。(白)
2022年/日本/カラー/87分
(C)「うかうかと終焉」製作委員会
https://ukauka-movie.com/
★2023年10月13日(金)テアトル新宿ほか全国順次公開
鯨の骨
監督:大江崇允
脚本:大江崇允、菊池開人
撮影:米倉伸
音楽:渡邊琢磨
出演:落合モトキ(間宮)、あの(明日香)、横田真悠(凛)、大西礼芳(由香里)、宇野祥平(しんさん)
結婚間近だった恋人に去られてしまった間宮は、不眠症で仕事にも身が入らない。そんな姿を見かねた同僚からマッチングアプリを勧められた。唯一返信をくれた女性と喫茶店で待ち合わせをする。「なんで返信してくれたの?」と尋ねると「初めての人に似ていたから」と言われた。コートを脱ぐと女子高の制服を着ていて一瞬うろたえる間宮。何気ない風でシャワーをあびて戻ると、彼女は大量に薬を飲んで間宮のベッドで倒れていた。慌てた間宮は死体を車に押し込み、山中に埋めようとする。穴を掘って気が付けば死体は消えていた。
「行方不明の女子高生」ニュースを探すが、何もヒットしない。そのうちARアプリの中で、死んだ女子高生と瓜二つの少女”明日香”を発見する。彼女は何者なのか?本当に存在するのか?
現実とバーチャルの隙間に落ち込んでしまったサラリーマン、実体のないものに群がる人々。間宮が明日香を探してはまり込むアプリ”ミミ”とは、ARが進化して自分がいた痕跡をあちこちに残せる、という設定です。明日香ファンたちが、痕跡探しを楽しんでいる場面が出てきます。熱狂的な明日香ファンに宇野祥平さん。しょっちゅう宇野さんの出演作を観ている気がするんですが、公務員も教祖様もあぶないオジサンも、記憶喪失の釜炊きさんも自然に存在しています。
『スター・ウォーズ』(1977/日本公開は翌年)でホログラムの映像のレイア姫を観たときは、そう遠くない未来にこうなるのかなと思いましたが、本当に実現するかもしれません。スマホのゲームにもAR入っていますしね。
落合モトキさんは1990年生まれで、テレビ番組の子役からのベテラン、この作品ではほぼ出ずっぱりで、現実とバーチャルの明日香に翻弄される間宮を演じています。あのさんはこの作品で初めて観ましたが、舞台挨拶などではあのちゃん節全開な感じです。主題歌はあのさん作詞作曲・歌唱。(白)
2023年/日本/カラー/88分
配給:カルチュア・パブリッシャーズ
(C)2023 Kyrie Film Band
https://www.culture-pub.jp/kujiranohone/
★2023年10月13日(金)ロードショー
キリエのうた
監督・原作・脚本:岩井俊二
音楽:小林武史
主題歌:Kyrie「キリエ・憐れみの讃歌」
出演:アイナ・ジ・エンド(キリエ)、松村北斗(塩見夏彦)、黒木華(寺石風美)、広瀬すず(一条逸子/真緒里)、村上虹郎(風琴)、松浦祐也(新平)
路上ミュージシャンのキリエは、歌うことでしか声が出せない。文字を書いてコミュニケーションをはかっている。
学生のころからの知り合い、真緒里はすっかり変わってキリエの前に現れ、「イッコって呼んで」という。今何をしているのか、自分のことは話さずキリエのマネージャーをかって出た。夏彦は突然消えてしまった婚約者を今も探し続けている。教師の風美(フミ)は傷ついた人に寄り添いたいと思う。
舞台は石巻、大阪、帯広、東京と、仙台出身の岩井監督とゆかりのある土地が選ばれています。13年間というスパンの中でのキリエの物語。演じたアイナ・ジ・エンドさんは6月に解散した人気グループ”Bish”のボーカル。歌声に魅了された監督に望まれてこれが映画初出演&主役。映画の中でもたくさんの歌を聞かせてくれています。ちょっとかすれ気味の独特の声で、耳に残ります。
原作は文春文庫より発刊。表紙は映画のポスターと同じです。キリエの周りに登場する人々のドラマも少しずつ語られます。そのときどきをつなぐのは「キリエのうた」。
地震と津波の描写も入っていますので、ご注意ください。(白)
2023年/日本/カラー/シネスコ/178分
配給:東映
(C)2023 Kyrie Film Band
https://kyrie-movie.com/
★2023年10月13日(金)ロードショー
シック・オブ・マイセルフ(原題:Sick of Myself)
監督・脚本・編集:クリストファー・ボルグリ
撮影:ベンジャミン・ローブ
出演:クリスティン・クヤトゥ・ソープ(シグネ)、アイリク・サーテル(トーマス)
シグネとトーマスはオスロで同棲中。長年の恋人同士でライバルでもあった。トーマスはよくシグネに手伝わせて、これと思ったものを盗み出す。高価なワインをまんまとせしめて友人たちに自慢しているのを、シグネは冷ややかに見ていた。そうやって手に入れた家具を組み合わせたものが、現代アートとして注目され、家に取材陣がやってくる。雑誌に載ったトーマスの写真にシグネは強烈に焦りと嫉妬を感じていた。世間の注目をあびるために、シグネは違法と知ってある薬物を人づてに注文する。
「最凶の承認欲求モンスター誕生」「暴走する自己愛に嫌悪と共鳴が止まない”セルフラブ”メディケーション・ホラー」がポスターの惹句です。これでもう全部言っちゃってます。
きっかけが彼氏のトーマスが自分より注目されたから、というのですから始まりがもう。トーマスも変。自由だけど、知らんけど。
なんでそうなるの?まさかそこまで!と私など思ってしまうのですが、それは人生も黄昏時のおばちゃんだからで、今人生の真ん中をすごしている人には、程度の差こそあれ”共感”できるのかもしれません。綺麗になりたくて整形するのとは違って、ただただ人の目を引き、同情されたいがために、変わっていくシグネを警鐘としてくださいね。そっちへいかないこと。
新鋭クリストファー・ボルグリ監督はこれが2本目の長編。1作目は日本公開されていません。ほとんどホラーと言ってよさそうな作品ですが、画面が美しいのでベンジャミン・ローブ(撮影)の他の作品は?とググったら『アフター・ヤン』(2021)のカメラマンさんでした。(白)
2022年/ノルウェー・スウェーデン・デンマーク・フランス/カラー/シネスコ/97分
配給:クロックワークス
(C) Oslo Pictures / Garagefilm / Film I Vast 2022
https://klockworx-v.com/sickofmyself/
★2023年10月13日(金)ロードショー
オペレーション・フォーチュン(原題:Operation Fortune: Ruse de guerre)
監督・脚本・制作:ガイ・リッチー
出演:ジェイソン・ステイサム(オーソン・フォーチュン)、オーブリー・プラザ(サラ)、ジョシュ・ハートネット(フランチェスコ)、ケイリー・エルウィズ(ネイサン)、バグジー・マローン(JJ)、エディ・マーサン(ナイトン)、ヒュー・グラント(グレッグ)
英国諜報局M16から敏腕エージェントのオーソン・フォーチュンに新たなミッションが下された。それは100億ドルで闇取引されるという危険なブツ”ハンドル”を追跡のうえ回収すること。いつものようにその詳細は明らかではない。フォーチュンが即席チームに招いたのは、M16のコーディネイターのネイサン、毒舌だが天才ハッカーのサラ、新米スナイパーのJJ。ターゲットの武器商人に近づくために、ハリウッドスターのフランチェスコも無理やりに巻き込んだ。世界中をまたにかけての”ハンドル”捜索が始まった。
舞台はロンドン、モロッコ、マドリード、ロサンゼルス、カンヌ…。観光旅行をしているヒマはありませんが、ロケ地をうまく使って一瞬たりとも飽きさせません。さすがガイ・リッチー監督、タッグ5作目のジェイソン・ステイサムの見せどころ、生かしどころをよく熟知しています。歴代の英国諜報員と並べて、ジェイソン・ステイサムはちょっと違う感じがしていたのですが、だんだん敏腕スパイのフォーチュンに見えてきました。
彼にこき使われる仲間も一癖も二癖もあって、いろいろな見せ場も用意されています。若き貴公子のようだったヒュー・グラントがまたもや「怪演」。しかも似合っています。こうやってどんな役もできるからこそ俳優なんですね。
予算も膨大でしょうに、ちゃんと製作費が集まるのがすごい。今回プレセントキャンペーンや、旧作のリバイバル上映企画もあります。(白)
2023年/イギリス、アメリカ合作/カラー/スコープサイズ/114分
配給:キノフィルムズ
MOTION PICTURE ARTWORK (C)2021 EROS STX GLOBAL CORPORATION.ALL RIGHTS RESERVED.
https://operation-fortune.jp/
https://twitter.com/opf_jp
★2023年10月13日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
【X(旧Twitter)プレゼントキャンペーン概要】
■応募期間:9月27日(水)正午〜10月18日(水)23:59 ■場所:プレチケTwitter(@Filmarks_ticket)https://twitter.com/Filmarks_ticket
■応募条件:プレチケ(@Filmarks_ticket)アカウントをフォロー、キャンペーン投稿をリポスト(RT)
※当選者の方にはプレチケ公式アカウントよりDMにてご連絡いたします。
■プレゼント内容:『オペレーション・フォーチュン』ジェイソン・ステイサム等身大スタンディ 1名様
■『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』リバイバル上映
詳細についてはこちら
・https://filmaga.filmarks.com/articles/266226/
・Filmarks作品情報URL:https://filmarks.com/movies/10004
・作品予告編:https://youtu.be/e9WrfqXVUtM
<作品情報>
『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』
監督・脚本:ガイ・リッチー
出演:ニック・モラン、ジェイソン・フレミング、デクスター・フレッチャー、ジェイソン・ステイサム
1998年/イギリス/108分
ガイ・リッチーの名を世界に広めたクライム・アクション。
アアルト(原題:AALTO)
監督:ヴィルピ・スータリ(Virpi Suutari)
制作:2020年 配給:ドマ 宣伝:VALERIA
後援:フィンランド大使館、フィンランドセンター、公益社団法人日本建築家協会 協力:アルテック、イッタラ
アルヴァ・アアルト(1898-1976年)はフィンランドを代表する建築家・デザイナー。今年は生誕125周年にあたる。今も残る優れたデザインの家具や名建築の数々を送り出した。
ヴィルピ・スータリ監督は子どものころアアルトが設計した図書館で過ごし、彼の建築やデザインの虜になったという。監督は、仕事のパートナーであり、最初の妻であったアイノに注目する。アイノがアアルトとやりとりした手紙から見えてくる二人の歴史、友人や関係者たちのコメントを集めてドキュメンタリーを制作した。
アアルトの名前は、この作品で初めて知りました。出回っている安価な商品ももとのデザインはこの方のものだったか~!
そして妻のアイノも優れたデザイナーであったと知りました。妻と母の役割とデザイナーの仕事とさぞ忙しかったはずなのに、有能な方だったんですね。最も有名なのが水の波紋からインスパイアされたという”ボルゲブリック・グラス”シリーズ。これは見たことがありました!正しい名前や製作者を知らない、特別に凝ったものでなくシンプルで使い勝手のよさそうな家具や日用品。目に留まったデザインの多くがフィンランドで生まれたものでした。
フィンランドのイッタラという小さな村のガラス工場から、機能的で美しく、誰もが入手して生活の中で使える製品が次々と送り出されました。アアルト夫妻、カイ・フランクのデザインによるものです。映画の中には仕事場だけでなく、アアルトがデザインした住宅も紹介されています。居心地の良さそうな明るい空間です。
惜しくもアイノは病を得て50代半ばで亡くなってしまいます。アアルトは入社してきたエリッサと再婚し、エリッサもアイノと同じようにアアルトを支え続けました。素晴らしい業績の陰には聡明な伴侶がいたわけです。こちらももっと注目して。(白)
2020年/フィンランド/カラー/103分
配給:ドマ
宣伝:VALERIAC
(C)Aalto Family (C)FI 2020-Euphoria Film
https://aaltofilm.com/
★2023年10月13日(金)より全国ロードショー
2023年10月14日
極限境界線 救出までの18日間 原題:交渉 교섭 英題:The Point Men
監督:イム・スルレ
出演:ファン・ジョンミン、ヒョンビン、カン・ギヨン
アフガニスタンの山岳地帯の土獏をバスで行く韓国人23名が、タリバンに拉致される。彼らの要求は駐屯中の韓国軍の撤退と、刑務所に収監されているタリバン戦士23名の釈放。人質殺害までのタイムリミットは24時間。韓国政府は直ちに外交官のチョン・ジェホ(ファン・ジョンミン)を派遣、ジェホはアフガニスタン外務省にタリバン戦士の釈放を要請するが拒絶される。国家情報院も動き出し、パキスタンで暗躍していた工作員パク・デシク(ヒョンビン)が、実質アフガニスタンの問題を解決する「部族長会議(ジルガ)」と交渉することになる。デシクが通訳のカシム(カン・ギヨン)を連れ、部族長に挨拶していると、ジェホが現れ無理矢理合流する。ジェホは、イラクでの拉致事件の際に人質一人を殺されてしまったデシクを信用してなかったのだ。不本意ながら手を組んだ二人の命をかけた交渉の結末は?
2007年に起きたタリバンによる韓国人23人拉致事件の実話に基づき、イム・スルレ監督がリアルにこだわって製作。とはいえ、アフガニスタンでの撮影は困難で、監督がロケ地に選んだのはヨルダン。アフガニスタンには残念ながら行きそびれているので、どれほど似ているのかは想像するしかないのですが、『アラビアのロレンス』の撮影地として有名なヨルダンのワディラムには行ったことがあるので、さすがにワディラムとわかる瞬間が一度だけありました。それ以外の部分は、それなりにアフガニスタンだと感じさせてくれる出来栄え。タリバンの話すパシュトー語にもこだわっています。イスラームが大事にするおもてなしの様子も描いています。
拉致された韓国人はクリスチャンで、アフガニスタンへは布教の為に行ったとのこと。イスラーム教徒が大半を占める国に、布教はちょっと無理があるのではと驚きます。布教と知られては解放が難しくなるので、ボランティアで訪れたことにして交渉しているのに、布教にきたクリスチャンだと報道されてしまいます。
熱血漢溢れるファン・ジョンミンと、冷静沈着なヒョンビン。タイプの違う二人の交渉術をはらはらしながら見守りました。(咲)
実際に起こったタリバンによる拉致事件から着想を得て作られた作品とのこと。外交官と秘密工作員。迫るタイムリミット、身代金狙いの詐欺師、国民より国家ファーストの政府、進まない解放交渉。「部族長会議」で交渉することになり、「韓国政府の代表」を自負するチョンとアウトローなパク、対立する2人は不本意ながら手を組むことに。
人質救出の交渉役として派遣された厳格な外交官チョン・ジェホには、『ワイキキ・ブラザース』『国際市場で逢いましょう』『哭声/コクソン』のファン・ジョンミン。トラウマを抱え、人命を救うためには手段を選ばない工作員パク・デシクには、「愛の不時着」のヒットで空前のブームを巻き起こしたヒョンビン。ことごとく反目するが、人として最も大切にしていることが同じだと気づき、友情と絆を深めていく。
監督は韓国の女性監督の草分けである『ワイキキ・ブラザース』『私たちの生涯最高の瞬間』『リトル・フォレスト 春夏秋冬』のイム・スルレ。約2か月に及ぶヨルダンでの撮影を敢行。22年前の『ワイキキ・ブラザース』(2001)で新人のファン・ジョンミンを採用している。今や韓国を代表するような2大俳優を使い、手に汗握る壮大な作品を作ってしまうなんてすごい!
シネマジャーナルではイム・スルレ監督には過去2回インタビューしています。去年3月に21年前の作品『ワイキキ・ブラザース』がJAIHOで配信されることになりオンラインインタビューした時、この新作について語っていましたが、「すでに撮り終わっているけど、コロナ禍で劇場公開が難しくて、公開できるのを待っているところ」と語っていました。今年(2023)3月に公開され、NO1ヒットになったようです(暁)。
●シネマジャーナルHP イム・スルレ監督インタビュー記事
『ワイキキ・ブラザース』韓国公開から21年
JAIHO配信にあたり、イム・スルレ監督に思いを聞く
2022年03月11日
http://cineja-film-report.seesaa.net/article/485954856.html
真!韓国映画祭『飛べ、ペンギン』ム・スルレ監督インタビュー
2010年 2月27日
http://www.cinemajournal.net/special/2010/penguin2/index.html
2023年/韓国/109分/カラー/シネスコ/5.1chデジタル
字幕翻訳:根本理恵
配給:ギャガ
公式サイト:https://gaga.ne.jp/thepointmen/
★2023年10月20日(金) よりTOHOシネマズ日比谷他にて全国順次ロードショー
2023年10月08日
春画先生
原作・監督・脚本:塩田明彦
製作:中西一雄 小林敏之 小西啓介
プロデューサー:小室直子
共同プロデューサー:関口周平
ラインプロデューサー:松田広子
出演:内野聖陽(芳賀一郎)、北香那(春野弓子)、柄本佑(辻村俊介)、白川和子(本郷絹代)、安達祐実(藤村一葉)
退屈な日々を過ごしていた春野弓子は、変わり者と評判の芳賀一郎の家に通うことになった。芳賀は最愛の妻に先立たれ、世捨て人のように暮らしていたが知る人ぞ知る「春画」研究者だった。弓子は代々芳賀家で働くお手伝いの絹代に指導されつつ、芳賀の研究に興味を持っていく。
江戸人の性愛をおおらかに描いた「春画」を目にしたのは初めてだったが、芳賀の解説を聞くうちその面白さ、奥深さに目覚めていった。知識を吸収する弓子はいつしか芳賀の空いた心の穴を埋め、弓子は芳賀に恋心を抱くようになった。
内野聖陽さんはテレビドラマ「きのう何食べた?」でそれまでの男っぽいイメージを覆しました。本作では支えだった妻を失って、意気消沈している研究者役です。生き生きするのは、偏愛する春画の話をするときだけ。弓子が愛弟子となっていくのがこの上なく嬉しい人です。師弟で相思相愛になるのか、というところに登場するのが、亡き妻の姉・一葉。演じる安達祐実さんがこの上なく妖艶で、いやまあびっくり。別の作品で花魁姿も観ていましたが、お人形のような愛らしさが勝っていて、今回の大人の色気ではなかった記憶があります。
あまり身なりも構わないような芳賀先生、出入りする編集者・辻村役の柄本佑さんもなんだかやたら色っぽく見えるのは、みんな春画の醸し出す空気に洗われたのでしょうか。一葉の刺激もプラスに転じ、大人の女性として成長していく弓子をご覧ください。偏愛する人々がだんだん愛しくなっても、恥ずかしくありません。自分も仲間入りすればいいんです。
ドキュメンタリー『春画と日本人』(2019)を以前ご紹介しましたが、商業映画としては初めて無修正の浮世絵春画がスクリーンに登場します。ご留意のほど。(白)
2023年/日本/カラー/ビスタ/5.1ch/114 分 <R15+>
配給・宣伝:ハピネットファントム・スタジオ
Ⓒ2023「春画先生」製作委員会
https://happinet-phantom.com/shunga-movie
★2023年10月13日(金)全国ロードショー
月
監督・脚本:石井裕也
原作:辺見庸「月」角川文庫
企画・プロデューサー:河村光庸
撮影:鎌苅洋一
音楽:岩代太郎
出演:宮沢りえ(堂島洋子)、磯村勇斗(さとくん)、オダギリジョー(昌平)、二階堂ふみ(陽子)
堂島洋子は有名だったこともあるが、今は書けなくなって久しい作家。それでも夫の昌平が「師匠」と呼ぶのは変わらない。
洋子は生活費のため、森の奥にある重度障がい者施設で働くことになった。何くれとなく世話をやいてくれる同僚の陽子は作家志望、さとくんは絵の好きな青年で、紙芝居を作っては患者たちに見せている。
施設には「きーちゃん」と呼ばれる女性患者は、どんな刺激にもなんの反応もない。暗い部屋で一人ただ寝かされていた。生年月日が自分と同じことに気づいた洋子は、彼女が気になって親身に世話をする。施設では仕事に慣れ、飽いてしまった職員が患者へ暴力をふるったり、ひどい扱いをしたりするのを目にした。上司に相談するも対処してくれない。そんな状況をさとくんだけが真剣に怒っている。
重度障がい者施設の患者というと、あの衝撃だった2016年の事件を思い出します。原作者の辺見庸氏は事件後「書かねばならなかった」小説として完成させました。映画となった本作は施設内部だけでなく、施設に関わっていく洋子を外に配して、観客により近しいものにしています。登場人物の抱えてきたものが次第に明らかになるにつれ、観客は誰かに共感していきます。
洋子がさとくんに詰問される場面は、私たちが問われているようで絶句してしまいました。森の奥にある施設は孤立し、外の人間は関わらずに暮らしています。そこにあってもないと同じ。「見ぬこと(もの)清し」でいいの? ナチスの浄化思想をひどい、おかしいということはできても、じゃあ自分に優性思想がないとはいいきれません。みんなどこか不足したり、過ぎていたりして、それが当たり前なのに。
石井監督の脚本や演出によくこたえた俳優陣に拍手。昨年の撮影直前に亡くなられた河村光庸プロデューサーは、どんな感想を持たれたでしょう。(白)
2023年/日本/カラー/シネスコ/144分
配給:スターサンズ
(C)2023「月」製作委員会
https://www.tsuki-cinema.com/
★2023年10月13日(金)ロードショーたれ
宇宙探索編集部 原題:宇宙探索編輯部 英語題:Journey to the West
2023年10月13日(金)より
新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷、アップリンク吉祥寺他全国順次公開
人に何を言われようと宇宙人の存在を信じて進み続ける爆笑と奇想天外ロードムービー!
監督・共同脚本:孔大山(コン・ダーシャン)
撮影監督:マティアス・デルヴォー
エグゼクティブ・プロデューサー:
王紅衛(ワン・ホンウェイ)、郭帆(グオ・ファン)
プロデューサー:龔格爾(ゴン・ゴーアル)
主題歌:蘇運瑩(スー・ユンイン)
字幕:磯尚太郎 字幕協力:大阪大学外国語学部 古川裕
出演:楊皓宇(ヤン・ハオユー)、艾麗婭(アイ・リーヤー)、王一通(ワン・イートン)、蒋奇明(ジャン・チーミン)、盛晨晨(ション・チェンチェン)
舞台は中国。主人公は廃刊寸前のUFO雑誌「宇宙探索」の編集長。
30年前の宇宙ブームは去り、かつて人気があったUFO雑誌「宇宙探索」は廃刊の危機に陥り細々と発行を続けている。光熱費の支払いすらおぼつかない。それでも、編集長のタンは地球外生命体の謎を追い続けてきた。
ある日、四川省の鳥焼窩村に空から正体不明の光が降ってきて、宇宙人の仕業と思われる不思議な現象が起きたという情報を掴み、編集部の仲間たちを連れて調査の旅に出る。
一行は鳥焼窩村で奇妙な言動を繰り返す青年スンと出会う。宇宙人からの指示に従いあるミッションを完遂しないといけないというスンに従い、さらに西へと向かう一行。そこで彼らを待ち受けていたのは、予想と人智をはるかに超えた出来事。人から何を言われようと、バカにされようと、夢を信じて進む宇宙探索編集部。その馬鹿馬鹿しくも、奇想天外な行動が爆笑を呼ぶ、宇宙人探しのロードムービー。
監督のコン・ダーシャンは北京電影学院の監督科出身。この作品は卒業制作でありながら、2021年の平遥映画祭の最優秀作品賞、審査員栄誉賞、映画ファン栄誉賞をトリプル受賞。2022年の大阪アジアン映画祭でも上映された。2019年に中国で大ヒットした『流転の地球』のグォ・ファン監督がエグゼクティブ・プロデューサーを務めたことも話題になった。英題の「Journey to the West」は「西遊記」の英題とのこと。
2021年製作/118分/G/中国
配給:ムヴィオラ
公式サイト:https://moviola.jp/uchutansaku/
新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷、アップリンク吉祥寺他全国順次公開
人に何を言われようと宇宙人の存在を信じて進み続ける爆笑と奇想天外ロードムービー!
監督・共同脚本:孔大山(コン・ダーシャン)
撮影監督:マティアス・デルヴォー
エグゼクティブ・プロデューサー:
王紅衛(ワン・ホンウェイ)、郭帆(グオ・ファン)
プロデューサー:龔格爾(ゴン・ゴーアル)
主題歌:蘇運瑩(スー・ユンイン)
字幕:磯尚太郎 字幕協力:大阪大学外国語学部 古川裕
出演:楊皓宇(ヤン・ハオユー)、艾麗婭(アイ・リーヤー)、王一通(ワン・イートン)、蒋奇明(ジャン・チーミン)、盛晨晨(ション・チェンチェン)
舞台は中国。主人公は廃刊寸前のUFO雑誌「宇宙探索」の編集長。
30年前の宇宙ブームは去り、かつて人気があったUFO雑誌「宇宙探索」は廃刊の危機に陥り細々と発行を続けている。光熱費の支払いすらおぼつかない。それでも、編集長のタンは地球外生命体の謎を追い続けてきた。
ある日、四川省の鳥焼窩村に空から正体不明の光が降ってきて、宇宙人の仕業と思われる不思議な現象が起きたという情報を掴み、編集部の仲間たちを連れて調査の旅に出る。
一行は鳥焼窩村で奇妙な言動を繰り返す青年スンと出会う。宇宙人からの指示に従いあるミッションを完遂しないといけないというスンに従い、さらに西へと向かう一行。そこで彼らを待ち受けていたのは、予想と人智をはるかに超えた出来事。人から何を言われようと、バカにされようと、夢を信じて進む宇宙探索編集部。その馬鹿馬鹿しくも、奇想天外な行動が爆笑を呼ぶ、宇宙人探しのロードムービー。
監督のコン・ダーシャンは北京電影学院の監督科出身。この作品は卒業制作でありながら、2021年の平遥映画祭の最優秀作品賞、審査員栄誉賞、映画ファン栄誉賞をトリプル受賞。2022年の大阪アジアン映画祭でも上映された。2019年に中国で大ヒットした『流転の地球』のグォ・ファン監督がエグゼクティブ・プロデューサーを務めたことも話題になった。英題の「Journey to the West」は「西遊記」の英題とのこと。
2021年製作/118分/G/中国
配給:ムヴィオラ
公式サイト:https://moviola.jp/uchutansaku/
2023年10月05日
ヨーロッパ新世紀 原題:R.M.N
監督:脚本:クリスティアン・ムンジウ
出演:マリン・グリゴーレ、エディット・スターテ、マクリーナ・バルラデアヌ 他
ルーマニア、山に囲まれたトランシルヴァニア地方の村。主要産業だった鉱山が閉鎖され、経済的に落ち込んでいる。
クリスマス直前の冬、出稼ぎ先のドイツの食肉工場で暴力沙汰を起こしたマティアスが村に帰ってくる。疎遠だった妻アナは突然帰ってきた夫に冷たい目を向ける。幼い息子のルディは、最近、森で恐ろしい何かを目撃し、口がきけなくなっていた。
マティアスは元恋人のシーラに心の安らぎを求める。シーラはパン工場の責任者を務めていて、EUからの補助金を得るために広告を出すも、働き手はより良い収入を求めて西ヨーロッパに出稼ぎに行っていて、シーラは人材派遣業者を通じてスリランカ人3人を雇う。ところが、アジア系の彼らを異端視した村人たちが、「彼らの作るパンは汚くて食べられない」などとSNSで流し、やがて騒動は収拾がつかなくなり、村長、神父、警察、報道関係者の立ち合いのもと、文化センターで緊急集会が催されることになる・・・
ルーマニア人とハンガリー人、少数のドイツ人やロマの人々が暮らす多民族の村。それぞれ民族の言葉を話していますが、お互い理解しあえています。ムンジウ監督は、字幕製作にあたり、それぞれの色を違えることを色まで指定してきたとのこと。あえて字幕をつけなかったところも、監督の指示。
ルーマニアの片田舎の物語ですが、まるで世界の縮図のよう。
偏見や無理解が諍いに至ります。言葉は通じなくても、お互いを敬う気持ちがあれば、争うまでにはならないはずです。
原題のR.M.Nは、Rezonanta Magnetica Nuclearaの略で、英語では、NMR(Nuclear magnetic resonance)で核磁気共鳴という意味。脳を検査するもので、表面下にあるものをスキャンする方法とのこと。人が生きるために共感する本能??
『4ヶ月、3週と2日』でカンヌ国際映画祭パルムドールを受賞したクリスティアン・ムンジウ監督の作品。なかなか意味深なタイトルです。(咲)
第75回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品作品
2022年/ルーマニア・フランス・ベルギー/カラー/シネスコ/127分/5.1ch
日本語字幕:関美冬
宣伝:テレザ、竹田美智留 後援:在日ルーマニア大使館
配給:活弁シネマ倶楽部/インターフィルム
公式サイト:https://rmn.lespros.co.jp/
★2023年10月14日(土)よりユーロスペース他全国順次公開
アンダーカレント
監督:今泉力哉
出演:真木よう子、井浦新、リリー・フランキー、永山瑛太、江口のりこ
音楽:細野晴臣
父が亡くなり、家業の銭湯・月の湯を、かなえは夫・悟と共に切り盛りしてきた。突然、悟が失踪し、しばらく休業していた月の湯をなんとか再開する。そんな折、堀という男が「働きたい」とやって来る。住み込みで働き始めた堀と、不思議な共同生活が始まる。
一方、友人・菅野に紹介された探偵・山崎に3か月の約束で悟の行方を探してもらうことにする。かなえは、夫の知られざる事実を次々と知ることになる・・・
原作は、2005年に発行されるや「まるで1本の映画のようだ!」と、国内外から熱狂的な支持を得た豊田徹也の伝説の漫画。
リリー・フランキー演じる探偵、カラオケに呼び出したかと思うと、次は遊園地。確かに、カラオケも観覧車も密室で、人にあまり聞かれたくない話をするにはうってつけ。この山崎という探偵、大いに笑わせてくれますが、ある意味、真実も。約束の3か月が経って、「日本では年間8万5千人が失踪し、ほとんど見つからない」と、かなえに告げます。それ、最初に言ってほしかったかも。でも、結末は???
ふっと、これまでの生活をすべて捨てたくなることって、ありそうです。
突然、銭湯で働きたいとやってきた堀という男も、なにか因縁の過去がありそうで、井浦新さん、上手いなぁ~と思いました。
アンダーカレントとは、
1、 下層の水流、底流。
2.(表面の思想や感情と矛盾する)暗流
と、冒頭に掲げられます。
人は皆、多かれ少なかれ、本心を人に見せないで生きているのかもしれません。そんなことを考えさせられた物語でした。(咲)
2023年/日本/143分
配給:KADOKAWA
公式サイト:https://undercurrent-movie.com/
★2023年10月6日(金)全国公開
2023年10月03日
栗の森のものがたり 原題:Zgodbe iz kostanjevih gozdov 英題:Stories from the Chestnut Woods
監督:グレゴル・ボジッチ
脚本:グレゴル・ボジッチ、マリーナ・グムジ
撮影:フェラン・パラデス
編集:グレゴル・ボジッチ、ベンジャミン・ミルゲ、ジュゼッペ・レオネッティ
音楽:ヘクラ・マグヌスドッティル、ヤン・ヴィソツキー
出演:マッシモ・デ・フランコヴィッチ、イヴァナ・ロスチ、ジュジ・メルリ、トミ・ヤネジッチ
時は1950年代。かつては安息の地と呼ばれ、美しい栗の森に囲まれた、イタリアとユーゴスラビア(現:スロヴェニア)の国境地帯にある小さな村。第二次世界大戦終結後、長引く貧困と政情不安から多くの人々が故郷を去ることを余儀なくされた。
老大工のマリオは、家を出たきり連絡のない一人息子宛の手紙に思いを綴っては投函することなく引き出しにしまう。老いた妻は、逝く前に息子に会いたいと嘆く。
栗売りのマルタは、戦争から戻ってこない夫からの手紙と数枚の写真を唯一の手掛かりに、現在住んでいるであろうオーストラリアに旅立つ決意をする。そんなある日、マルタとマリオは出逢い、互いの身の上を語りあう。そしてマリオはマルタにある提案を持ち掛ける…。
戦後、何年も経ってベルギーから帰ってきた男が、村で語り継がれた老いた大工と美しい娘の話を語るという物語。東方3賢者の亡霊も出てきて、どこまでが現実で、どこからがファンタジーなのか境界線がわからない不思議な映画でした。
1988年にユーゴスラビアからイタリアに抜ける旅をしたことがあって、ほんとうに風光明媚なところ。その後、内戦が起きてユーゴスラビアがいくつもの国に分裂するなどと思いもよりませんでしたが、第二次大戦後に、人々が故郷を捨てざるをえなかったような状況があったとは知りませんでした。
大工マリオは、「一度死んじまえば万々歳。食事も水も必要ない。税金や侮辱とも無縁」と語ります。なんと現実的な死生観でしょう! そのマリオが栗の木から彫りだす棺の美しいこと! 余韻の残る心に沁みる物語です。(咲)
★本作が長編デビューとなるスロヴェニア出身の新鋭グレゴル・ボジッチ。2019年のトロント国際映画祭でプレミア上映されるや大喝采を浴び、スロヴェニア国際映画祭では最優秀作品賞、監督賞、男優賞、撮影賞、観客賞など11部門を独占。2020年に開催されたなら国際映画祭では、コンペ作品の中で「最も美しい」と評され審査員特別賞に輝きました。
2019年/スロヴェニア・イタリア/イタリア語・スロヴェニア語/カラー/82分/ビスタ
日本語字幕:佐藤まな 字幕協力:なら国際映画祭
提供:クレプスキュール フィルム、シネマ サクセション
配給:クレプスキュール フィルム
公式サイト:http://chestnut.crepuscule-films.com/
★2023 年 10 月 7 日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
2023年10月02日
フラッシュオーバー 炎の消防隊 原題:驚天救援 英題:Flashover
© 2023 ALL RIGHTS RESERVED BY UNIVERSE ENTERTAINMENT LIMITED /ASIA PACIFIC CHINA (BEIJING) FILM CO., LTD.
監督:オキサイド・パン 彭順(『the EYE 【アイ】』『リサイクル—死界—』『ゴースト・ハウス』『バンコック・デンジャラス』『インフェルノ 大火災脱出』『冷血のレクイエム 極限探偵B+』)
出演:ドゥー・ジアン杜江(『フライト・キャプテン 高度1万メートル、奇跡の実話』)、ワン・チエンユエン 王千源(『誘拐捜査』)、トン・リーヤー 佟麗婭(『タイガー・マウンテン 雪原の死闘』)、ハン・シュエ 韓雪(「イップ・マン」)、ユー・ハミオン俞灝明(「月に咲く花の如く」)、エルヴィス・ハン 韓東君(『1950 鋼の第7中隊』)、ワン・ゴー 王戈(『カイジ 動物世界』)
江東省灌城市で、マグニチュード3.1の地震が発生。トンネル付近で危険物を積んだタンクローリーが衝突事故を起こすが、ジャオ消防署長らの活躍で事態は収束する。後日、天宜化学工場で化学物質が爆発。周囲の工業団地へも引火し、一帯の住居や公共施設を巻き込んだ前代未聞の大規模爆発事故となる。ジャオや通信員のハンらが現場に急行するが、建物は崩壊し要救助者は多数、まさに阿鼻叫喚の様相を呈していた。ジャオの婚約者ジャンは、半壊した学校に子供たちと閉じ込められ、煙が充満する中、なんとか屋上に避難するが、そこには想像を絶する惨状が広がっていた・・・
「フラッシュオーバー」とは、局所的な火災が短時間にして全域に拡大する現象の総称。
本作は、架空の灌城市を舞台に、消防署のジャオ署長のもと、消防署員たちが日々厳しい訓練を重ね、大事故に立ち向かう姿を描いたもの。
殉職する署員もいて、ジャオ署長の婚約者ジャンは、結婚をためらい転職してほしいとまで言います。誰かが担わなければいけない大事な仕事。命がけで日々挑んでくださっている方たちがいることを忘れてはならないと思いました。
それにしても、最近の中国映画は潤沢な製作費を使った大掛かりな作品が多いですね。昨年6月に日本で公開された『クラウディ・マウンテン』を思い出しました。次々に災難に襲われるのも同様でした。家族のことも描いて、涙を誘うのも! 中国で大ヒットする条件なのでしょうか・・・ (咲)
2023年/中国/中国語/115分/シネスコ/5.1ch
字幕:神部明世
提供:ニューセレクト
配給:アルバトロス・フィルム
公式サイト:https://flashover-movie.com/
★2023年10月6日(金)より、シネマート新宿・シネマート心斎橋ほか全国ロードショー
2023年10月01日
イコライザー THE FINAL 原題:THE EQUALIZER 3
監督:アントワーン・フークア(『トレーニング デイ』『エンド・オブ・ホワイトハウス』『マグニフィセント・セブン』『イコライザー』シリーズ)
脚本:リチャード・ウェンク(『イコライザー』シリーズ)
出演:デンゼル・ワシントン(『トレーニング デイ』『フライト』『デンジャラス・ラン』)、ダコタ・ファニング(『アイ・アム・サム』『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』)、デヴィッド・デンマン
元CIAトップエージェントのロバート・マッコール。19秒で世の悪を完全抹消する闇の[仕事]請負人(通称:イコライザー)として名を馳せた彼も、シチリアでの事件で負傷し、肉体的にも精神的にも限界を感じる。アマルフィ海岸沿いの静かな田舎町に辿り着いた彼は、地元の人たちから優しく受け入れられ、ここを安住の地と心に誓う。しかし、街の人たちが次々と凄惨な事件に遭うのを見て、マッコールは再び[仕事]を再開する。やがて事態はイタリア全土を巻き込む爆破テロ事件へと拡大してゆく・・・
これまでのイコライザーシリーズは観ていないのですが、すんなり話についていくことができました。シチリア、ナポリ、そしてアマルフィという風光明媚な街を舞台に繰り広げられる物語。イタリア語の響きも心地よく、聖母マリア像を担いで町を静かに回る祭りが映画のラストを盛り上げてくれました。(咲)
これまでのイコライザーシリーズでは、街で目だたない仕事をしながら「必殺仕事人」のように、警察や司法の及ばない復讐仕事をしていましたが、今回は最初からアクションモード全開。しかもバイオレンスともいうべき闘いの連続。はたして正義ならここまでやっていいのか?という思いも。理不尽な弱いものいじめに対して、人はどこまで仕返ししていいのか、できるのか。他に方法はないのか。様々なことを考えました。監督は、1998年、チョウ・ユンファ主演のアクション『リプレイスメント・キラー』で監督デビューしたアントワーン・フークア。デンゼル・ワシントンと組むのは5作目とのこと(暁)。
☆9月1日(金)に全米公開され、<3日間で3,450万ドル(約50億円)>を記録。
<全米初登場1位>の大ヒットスタート!
これは、近年のレイバー・デー(労働の日)週末において、マーベルシリーズ『シャン・チー/テン・リングスのデンゼル』(2021)に次ぐ、歴代2位の好成績。シリーズ最終章にして新たな記録を打ち立てました。
2023年/アメリカ/109分
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
公式サイト:https://www.equalizer.jp/
★2023年10 月 6 日(金)全国の映画館で公開!
リバイバル69~伝説のロックフェス~(原題:Revival69: The Concert That Rocked the World)
監督:ロン・チャップマン
出演:ジョン・ブラウワー、シェップ・ゴードン、ロビー・クリーガー、ジョン・レノン、オノ・ヨーコほか
1969年9月13日(土)、カナダ トロント大学構内にあるヴァーシティ・スタジアムで音楽フェスティバルが開催された。その構想、準備から始まり、紆余曲折の末開催にこぎつけるまでの舞台裏が明かされる。企画・運営したのは弱冠23歳のケン・ウォーカーと22歳のジョン・ブラウワーだ。フォークソング全盛のときに、ロックン・ロールのレジェンドたちに人気の若手、シカゴやドアーズを加えたこれまでにないフェス「トロント・ロックンロール・リバイバル」!観客は数万人を予定。大評判になるはずが、チケットが売れない。出資者たちが手を引いていくのをなんとか止めなければ!これまでの人脈を駆使して、導かれたアイディアは「ジョン・レノンを呼ぼう!」。なぜならジョン・レノンはチャック・ベリーやリトル・リチャードのファンだから。
残された1時間弱のドキュメンタリー映像に、当時の関係者のインタビューを加えてドキュメンタリーが完成した。
ドタバタの舞台裏はもう綱渡りの連続、当事者の心中を思って胃が痛くなりそうでした。
トロントをめがけて続々と集まってくる新旧ロックファンたち。大観衆を前にした、大御所たちのステージは圧巻です。全盛期からしばらく経っていますが、かつてのライバルたちとの共演で本気度が伝わってきます。懐かしいヒット曲をたくさん聞けました。この人が歌っていたのか!と嬉しい映像です。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985)で、消滅の危険を脱したマーティがギターをかき鳴らし歌っていたのがチャック・ベリーの曲です。
まだ無名のロッカーだったアリス・クーパーほか、バックバンドを担った若いミュージシャンたちの映像が残っています。舞台の上のスターたちも会場もほんとに楽しそうですが、運営側はジョン・レノンの到着を今か今かと冷や汗かきつつ待っています。
鳴り物入りの登場とよくいいますが、この場面も必見。ビートルズの面々と離れてヨーコと穏やかに暮らしていたジョンは、このときまだ28歳。長髪と伸ばした髭でずいぶんと大人と思っていましたが、ヨーコを守り守られる繊細な青年でした。緊張している彼を初めて観ました。
ロック青年たちには超貴重な映像満載、お見逃しなく。(白)
「カナダのウッドストック」とも呼ばれているロック・フェスだそうです。
チケットが売れず、開催直前にジョン・レノンに参加のOKを貰うも、当日の朝、気分が悪いから花を贈って!とは、ジョン・レノンも自分の存在意義を認識していない?? そのジョン・レノンをベッドから飛び起きさせた人物とは?(どうぞ劇場でご確認を!)
このところ60年代の音楽シーンを扱った映画が多くて、中でも大好きだったビートルズ関連は、当時の様々な裏側を知ることができて面白いです。
ジョン・レノン 音楽で世界を変えた男の真実
コンサート・フォー・ジョージ
ミーティング・ザ・ビートルズ・イン・インド
クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル トラヴェリン・バンド
戦地で多くの人が死んでいるのに、「ベトナム戦争反対!」とは舞台で言えない時代で、それでもオノ・ヨーコが断末魔のような叫びで平和を訴え、引いた人も多かったとか。
このロックフェスを懐かしく思い出す黒人の女性が、観客はほとんどが白人で、逆に怖かったと語っていました。60年代末のカナダは、そんな状況だったのですね。
いろんな意味で、とても興味深い映画でした。(咲)
2022年/カナダ、フランス/カラー/97分
配給:STAR CHANNEL MOVIES
(C)ROCK N' ROLL DOCUMENTARY PRODUCTIONS INC., TORONTO RNR REVIVAL PRODUCTIONS INC., CAPA PRESSE (LES FILMS A CINQ) 2022
https://revival69-movie.com/
★2023年10月6日(金)ロードショー
白鍵と黒鍵の間に
監督:冨永昌敬
原作:「白鍵と黒鍵の間に -ジャズピアニスト・エレジー銀座編」南博著
脚本:冨永昌敬監督、高橋知由
撮影:三村和弘
音楽:魚返明未
出演:池松壮亮(南、博)、仲里依紗(千香子)、森田剛(あいつ)、高橋和也(三木)、クリスタル・ケイ(リサ)、松尾貴史(熊野)、松丸契(K助)、川瀬陽太(曽根)、杉山ひこひこ(門松)、中山来未(Y子)、佐野史郎(宅見)、洞口依子(母親)
昭和63年、年の瀬の銀座。キャバレーの酔客を前にピアノを弾く博は、ふらりと入って来た客に『ゴッドファーザー』のテー曲をリクエストされた。その曲だけはダメと同僚に注意されるが、なぜかわからない。実は銀座界隈を牛耳る熊野会長だけがリクエストしていい曲、しかも演奏するのは、会長お気に入りのピアニストの南だけという暗黙の了解があった。
原作者の南博氏がモデルの主人公を、ジャズピアニストの夢を追っている若い"博"と、すでに夢など見失ってしまったベテランの”南”の二人に分けて登場させています。原作では一人の人物、生きる時間も違う二人を池松壮亮さんが演じ分けているのが見どころ。ピアノも猛特訓されたそうです。ご期待あれ。
夜の仕事にどっぷりつかった三木を演じるのは高橋和也さん。『新聞記者』での苦悩する役が記憶に残っています。刑務所から出て来たばかりの男に森田剛さん。有村架純さんと共演した『前科者』が浮かびます。本作では禁断の曲をリクエストして、博の行く道に影響を与えてしまいます。高橋和也さん、森田剛さんともアイドルだった若い時から観ていますが、今哀愁も自然ににじみ出る年代になりました。
ところどころで、サックスを吹く男性が登場して”耳”がひきつけられます。この人は誰?と思ったら松丸契(まつまるけい)さんというプロのサックス奏者の方でした。クリスタル・ケイさんの歌もたっぷり聞けます。
背景の昭和63年は昭和天皇が病床にあり、毎日ニュースで報告されて、この年の瀬は特別でした(年明けた1月7日に崩御。昭和64年は7日間でした)。そんなことなど思い出しながら、拝見した作品。(白)
2023年/日本/カラー/シネスコ/94分
配給:東京テアトル
(C)2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.
https://hakkentokokken.com/
★2023年10月6日(金)ロードショー
シアター・キャンプ(原題:Theater Camp)
監督:ニック・リーバーマン&モリー・ゴードン
脚本:ノア・ガルヴィン, モリー・ゴードン, ニック・リーバーマン, ベン・プラット
音楽:
出演:モリー・ゴードン(『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』)
ベン・プラット(『ディア・エヴァン・ハンセン』『ピッチ・パーフェクト』)
ノア・ガルヴィン(『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』)ほか
アディロンド・アクトは人気の演劇スクール。しかし開校を目前にして校長が倒れて、こん睡状態に陥ってしまった。急遽ピンチヒッターにやってきた息子は、スクールが経営危機に陥っていることを初めて知った。
そんな中でも、毎年舞台に立つのを夢見るこどもたちがキャンプに集まってきた。歌や演技の指導をするのは変わり者の教師たち。3週間のャンプの終わりには、みんなで作ったとびきり楽しいミュージカルをお披露目することになっている。校長不在の隙をついて商売敵も接近してきた。果たしてミュージカルは無事完成するのか?
サンダンス映画祭 とサウス・バイ・サウスウエストが熱狂した、子どもたちのミュージカルができるまでを追う作品。
出だしで指導役がいきなり歌い始め、子どもたちも歌で応えるのにあっけにとられます。あ、そういう形式なのね、とわかると後は「どこで何を歌うのだろう」と楽しみになってきます。指導にあたるレベッカとエイモスも実はこのスクールの出身。このスクールの教師たちは古株も新人も変人ばかりですが、舞台にかける情熱は誰にも負けません。ミュージカルに親しみのある人もない人も、どこまでが演出かわからないほど自然な子どもたちと教師のやりとりを楽しめます。(白)
2022年/アメリカ/カラー/シネスコ/95分
配給:ディズニー
(C)2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.
https://www.searchlightpictures.jp/movies/theatercamp
https://twitter.com/SearchlightJPN
予告編 https://www.youtube.com/watch?v=fYsGP9RV2Bk
★2023年月日(金)ロードショー
オクス駅お化け(原題:The Ghost Station)
監督:チョン・ヨンギ
脚本:高橋洋、イ・ソヨン
脚本協力:白石晃士
出演:キム・ボラ(ナヨン)、キム・ジェヒョン(ウウォン)、シン・ソユル(オヒ)
ウェブニュース記者のナヨンは、駆け出しでまだこれといった結果を出せていない。アクセス数を稼ぐために、ボーイフレンドのウウォンを助手にオクス駅で起きた人身事故の取材を始めた。きっかけとなった事故のほかに、線路内に子どもがいたなど、いくつもの目撃談が出てくる。ナヨンとウウォンが調べていくと、次々と奇妙な事件が起こり、怪死が続く。
ポスターだけでも怖いので、どうしようと思いながら試写に参戦。韓国のホラー作品では、急に挿入される音に飛び上がりそうになるので、構えつつ観ました。お試しに公式サイトの予告編をご覧ください。
主な舞台になるオクス駅は実際にある駅で、おどろおどろしいシーンのあった廃駅も現存するそうです。映画のようなことがあったわけではないのですが、ホラー好きな人が探検したくなるような雰囲気です。私は映画だけで夢に出てきそうです。(白)
2022年/韓国/カラー/シネスコ/80分
配給:松竹ODS事業室
(C)2023, MYSTERY PICTURES & ZOA FILMS, ALL RIGHTS RESERVED
https://obake-movie.com/
https://twitter.com/obake_movie
★2023年10月6日(金)ロードショー
旅するローマ教皇 原題:In Viaggio
脚本・監督:ジャンフランコ・ロージ(『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』『海は燃えている~イタリア最南端の小さな島~』『国境の夜想曲』)
第266代ローマ教皇フランシスコ
本名:ホルヘ・マリオ・ベルゴリオ
1936年12月17日、イタリアからの移民の子として、アルゼンチンのブエノスアイレスで生まれる。
教皇フランシスコは 9年で37回 旅に出た。
53か国を歴訪し 重要な問題について発言した。
連帯と尊厳 貧困と難民を語り 戦争を非難した。
本作は2013年のイタリア、ランペドゥーサ島から始まり、2022年の新型コロナウイルスのパンデミック下のマルタの訪問で終わる。難民問題、紛争に苦しむ中東やアフリカ、アメリカでは平和について語り、世界で唯一の被爆国である日本では黙とうを捧げる。森林火災、台風など自然災害を受けた土地を訪れ環境問題を語り、イスラム教や正教会の指導者と会見し融和を訴える。カトリック教会で起きた性的虐待については謝罪する・・・。
ローマ教皇と共に世界各地を巡り、様々な問題を知る83分。
印象深い言葉や場面がいくつもあります。イスラエルを訪れた時には、上空から見える分離壁と入植地に圧倒され、パレスチナ側で高く立ちはだかる分離壁に手を置き祈る姿にじ~んとさせられました。アルメニアで、1915年に起きたアルメニア人虐殺について語ったことから、トルコのエルドアン大統領との間に気まずい沈黙の時が流れます。
2019年のアラブ首長国連邦訪問は、ローマ教皇として初めてのイスラーム発祥の地であるアラビア半島入り。2021年のイラクでは、シーア派最高権威シスタニ師を訪問しますが、ここでも沈黙の時。こうした他宗教との対話を積極的にはかる姿を、他者とは融和をはかろうとしない人たちに見てほしいものです。(咲)
世界中を旅するローマ教皇を通して、世界で今何が起きているのかを知り、旅を通して見えてくる世界の痛み、未来への希望。「戦争は狂気です 貪欲と非寛容 そして権力欲は戦争を決断させる動機になります。戦争は貧困しか生みません。兵器は死そのものです。共に未来を築かなければ私たちに未来はないのです。夢を見続けましょう」と語る教皇。フランシスコ教皇の言葉は現在の世界情勢を映し出し、私たちの心を揺さぶる(暁)。
第79回ヴェネチア国際映画祭 アウト・オブ・コンペティション部門 正式出品
2 0 2 2 年/イタリア/カラー/ 1 :1 . 8 5/5.1 c h /8 3 分/イタリア語、スペイン語、英語
日本語字幕:鈴木昭裕
資料監修:土肥秀行
カトリック中央協議会 広報推薦
配給:ビターズ・エンド
公式サイト:https://www.bitters.co.jp/tabisuru/
★2023年10月6日(金)よりBunkamuraル・シネマ渋谷宮下、新宿武蔵野館ほかで全国ロードショー