2023年09月24日
BAD LANDS バッド・ランズ
監督:脚本:原田眞人
原作:黒川博行「勁草」(徳間文庫刊)
撮影:北信康
音楽:土屋玲子
出演:安藤サクラ(橋岡煉梨/ネリ)、山田涼介(矢代穣/ジョー)、生瀬勝久(高城政司)、宇崎竜童(曼荼羅/上松)、吉原光夫(佐竹刑事)、江口のりこ(日野班長)、サリngROCK(林田)、天童よしみ(新井ママ)、大場康正(教授/宇佐美)、淵上泰史(胡屋賢人)
ネリは名簿屋の高城に雇われて、特殊詐欺の受け子を束ねている。ネリを姉と慕ってくるのはサイコパスのジョー。血はつながっていないが、姉弟ではあり「腐れ縁」と思っている。社会の底辺にいる彼らの稼業は、持っているヤツから少しばかりかすめ取らせてもらうだけと割り切る。一番危ない綱渡りをする受け子たちにもっと報酬を分けたいネリだが、高城は吸い上げる上がまだまだいるんだという。
安藤サクラさんの出演作はいつも期待して観ていますが、これまで残念~と思ったことがありません。人生をやり直すテレビドラマ「ブラッシュアップライフ」も面白くて、終わるのが名残惜しかった~。家庭も持ち、子育てもしながらの俳優業、外野からは、無理をしたり力んだりしているようには見えません。どう配分しているんでしょ。
この作品では、詐欺を生業としている犯罪者役なのですが、難局にぶつかってオタオタするでもなく乗り越えるのを楽しんでいるように見えます。この肝っ玉の太さ、度胸の良さに加え、決して仲間を見捨てないとジョーは信じています。安藤サクラ&山田涼介二人の初タッグがとても温かく、また切なさを醸し出します。原作は男性が主人公ですが、サクラさんがヒロインだからこそプラスになったことは多いです。しかも切れ味鋭いアクションも非情な眼も見せます!
緻密に計算された詐欺のやり方を見ると、これでは騙されるのも無理はないと思えてしまいます。何もない私のような人は安心していいんでしょうか??
2時間あまりの長尺ですが、話はスピーディで芸達者な人が揃い、あれあれというまに引き込まれていました。(白)
2023年/日本/カラー/シネスコ/143分/5.1ch
配給:東映、ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
(C)2023「BAD LANDS」製作委員会
https://bad-lands-movie.jp/
★2023年9月29日(金)より公開
ジャンポール・ゴルチエのファッション狂騒劇(原題:Jean Paul Gaultier: Freak and Chic)
監督・撮影:ヤン・レノレ
出演:ジャンポール・ゴルチエ、マドンナ、カトリーヌ・ドヌーブ、ロッシ・デ・パルマ、マリオン・コティヤール、ボグダノフ兄弟、アントワーヌ・ドゥ・コーヌほか
奇想天外でファンタスティックなデザインで有名なクチュリエ(男性デザイナー)、ジャンポール・ゴルチェ。彼の半生をミュージカル仕立てに、しかも自身のコレクションも同時に披露していく「ファッション・フリーク・ショー」。
その舞台裏に密着したのがこのドキュメンタリー。制作の進行と一緒に、これまでのゴルチェの足跡も明かされる。お絵描きが好きだった子供の頃、愛するおばあちゃん、恋人フランシス、巡り合った懐かしい人々が思い出とともに駆け巡る。
豪華絢爛な舞台の裏側を見せてもらえるのはいつも楽しみです。こちらでは、ゴルチェのデザインを元に、ベテランスタッフが経験と工夫を凝らして作り上げる衣装、キャストや音楽の選定、リハーサルを繰り返すたびに修正が加えられていく様子が見られます。ゴルチェ自身はいつもニコニコして、自分の好みをごり押しするのでなくスタッフと意見の交換をしてより良いものにする努力を惜しみません。
高いヒールの靴で踊るダンサーの足元がいつも気になっていましたが、今回体格の良いテディベア役のダンサーが怪我をしました。靴がぱっくりと割れています。いっそのこと裸足ではダメなんでしょうかね。
マドンナの奇抜な衣装はゴルチェによるものでした。舞台映えするので、多くのコンサートで使われているようです。今年春には東京でもこの「ファッション・フリーク・ショー」があったんですね。
ヒューマントラストシネマ渋谷にてゴルチエに関連する作品の中から『バッド・エデュケーション』と『マルジェラが語る“マルタン・マルジェラ”』の2作の特集上映が決定しました。合わせてご覧ください。(白)
2018年/フランス/カラー/シネスコ/96分
配給:キノフィルムズ
(C)CANAL+ / CAPA 2018
https://gaultier-movie.jp/
★2023年9月29日(金)ロードショー
ハント 原題:헌트 英題:HUNT
監督・脚本:イ・ジョンジェ
出演:イ・ジョンジェ、チョン・ウソン、チョン・ヘジン、ホ・ソンテ、コ・ユンジョン、キム・ジョンス、チョン・マンシク
1983年、ワシントンDC。米韓首脳会議のため訪米した全斗煥大統領の警護にあたる安全企画部(旧 KCIA)の海外次長パク・ピョンホ(イ・ジョンジェ)と国内次長キム・ジョンド(チョン・ウソン)。CIAがテロの動きを察知、銃撃戦の末、犯人グループを射殺。暗殺事件は未然に防がれた。パク次長とキム次長は、組織内に入り込んだ北のスパイ“トンニム”を探し出す任務を命じられ、それぞれ捜査をはじめる。二重スパイを見つけなければ自分たちが疑われるかもしれない緊迫した状況で、二人は巨大な陰謀に巻き込まれていく・・・
イ・ジョンジェ主演の『純愛譜』(2000年)と『Interview インタビュー』(2000年)を同じ日に同じ劇場で続けて観て、ほんとに同じ人?とびっくりしたら、その前に観ていた『イルマーレ』もイ・ジョンジェだったと知り、演技派イ・ジョンジェにすっかりぞっこんになりました。その彼がついに初監督! しかも大親友でありビジネスパートナーであり隣人のチョン・ウソンとのW主演! チョン・ウソンは、初主演の『KUMIHO 千年愛』以来の大ファン♪ 七変化のイ・ジョンジェと違って、どんな役でも、あくまでチョン・ウソン。その大好きな二人が共演した『太陽はない』を韓国文化院で観ることが出来た時の嬉しかったこと! そして、『ハント』は、その『太陽はない』の共演から、なんと20年以上の時を経ての共演なのです。もう期待以上の映画でした。
派手なアクションシーンや、緊張感溢れる場面がテンポよく展開しますが、監督イ・ジョンジェが伝えたかったのは、誤ったイデオロギーや、フェイクニュースに翻弄されないでほしいという思い。「イカゲーム シーズン2」の撮影で忙しい中、来日して、記者会見と舞台挨拶に登壇したのも、本作を作った意図を直接日本の観客に伝えたかったからと語っていたのが頼もしかったです。 その時の様子は、下記でご覧ください。(咲)
映画『ハント』 イ・ジョンジェ監督記者会見
http://cineja-film-report.seesaa.net/article/500612546.html

映画『ハント』ジャパンプレミア イ・ジョンジェ 初監督作品への思いを日本のファンに語る
http://cineja-film-report.seesaa.net/article/500612114.html
facebookアルバム イ・ジョンジェ初監督作品『ハント』記者会見&ジャパンプレミア
https://www.facebook.com/media/set/?set=a.791557082971879&type=3
2022年/韓国/DCP5.1ch/シネマスコープ/韓国語・英語・日本語/125分/PG12
字幕翻訳:福留友子・字幕監修:秋月望
配給:クロックワークス
公式サイト:https://klockworx.com/huntmoviejp
★2023年9月29日(金) 新宿バルト9ほか全国ロードショー
ヒッチコックの映画術 原題: My Name Is Alfred Hitchcock
監督:マーク・カズンズ
“サスペンス映画の神様”アルフレッド・ヒッチコック。1899年8月13日ロンドン郊外に生まれ、厳格なカトリックの家庭で育った。1915年、ヘンリー電信ケーブル会社に入社し、広告部門で製図工からデザイナーとなる。1920年にイズリントン撮影所へ入所後、サイレント映画の字幕制作を手掛けるようになり、やがて脚本や助監督を担当。ヒットメイカーとして君臨。イギリス映画界初のトーキー映画となった『恐喝(ゆすり)』(29)を監督する。イギリス映画界からハリウッドへ渡ってからも、監督作の『レベッカ』(40)が第13回アカデミー賞で作品賞を受賞するなど、輝かしいフィルモグラフィを積み上げてきた。50年代に全盛期を迎え、1957年からは「ヒッチコック劇場」でテレビの世界にも進出。
サイレント映画からトーキー映画、モノクロ映画からカラー映画への移行、映画の画面比率がスタンダードサイズから大型してゆく変遷や、テレビの台頭による映画産業の斜陽化。さらには映画が3D化する時代にも遭遇するなど、ヒッチコックの映画人生は映画の歴史と共に歩んできた。1979年にはイギリス王室からナイト<サー>の爵位を受けた。1980年にハリウッドで亡くなる。
未完成に終わった幻の監督デビュー作「Number 13」(1922)の監督デビューから100年。ヒッチコック作品は今なお映画を愛する者たちを魅了し続けている。本作は「本人」が自身の監督作の裏側を紐解くスタイルで、その“面白さの秘密”を解き明かしていく。
10代の頃に、テレビで放映されていた「ヒッチコック劇場」を毎週楽しみに観ていて、それがまさしくこの映画のように、ヒッチコック自らがナビゲートする形。最初と最後に必ず出てきて語るので、大柄で特徴のある姿は目に焼き付きました。30分の短い番組でしたが、毎回、謎解きの後に、諭すように人生訓を語るのが面白かったものです。もっとも、当時は日本語吹き替えでヒッチコック本人の声ではありませんでしたが。
映画の冒頭で、「脚本&ナレーション:アルフレッド・ヒッチコック」と出てきます。どんな風に、本人の声を紡いだのかしら?と思ったら、最後に種明かし。物真似名人の俳優アリステア・マクゴーワンがヒッチコックの声を担当されたとのこと。すっかり騙されました。
本作では、これまであまり観たことのなかったイギリス時代の作品から、『ダイヤルMを廻せ!』『裏窓』『めまい』『鳥』などお馴染みのハリウッド時代の作品まで、数多くの名作を垣間見ながら、ヒッチコックの遊び心に富んだ映画作りの秘密を知ることが出来ました。(咲)
2022年/イギリス/英語/120分/カラー/1:1.78/5.1ch
字幕翻訳: 小森亜貴子
配給: シンカ
公式サイト:https://synca.jp/hitchcock
★2023年9月29日(金)新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMA、角川シネマ有楽町ほか全国公開
【本作で引用されるヒッチコック作品】
※年代順、(未)=日本劇場未公開(特集上映等は除く)、(TV)=TV映画
<イギリス時代 サイレント作品>
『快楽の園』(1925)The Pleasure Garden
『下宿人』(1927)The Lodger
『ダウンヒル』(1927)Downhill
『リング』(1927)The Ring
『農夫の妻』(1928)The Farmer’s Wife
『シャンパーニュ』(1928)Champagne
『マンクスマン』(1929)The Manxman
<イギリス時代 トーキー作品>
『恐喝(ゆすり)』(1929)Blackmail
『ジュノーと孔雀』(1930)Juno And The Paycock (未)
『殺人!』(1930)Murder! (未)
『リッチ・アンド・ストレンジ』(1931)Rich And Strange (未)
『第十七番』(1932)Number 17 (未)
『ウィンナー・ワルツ』(1934)Waltzes From Vienna (未)
『暗殺者の家』(1934)The Man Who Knew Too Much
『三十九夜』(1935)39 Steps
『サボタージュ』(1936)Sabotage
『第3逃亡者』(1937)Young And Innocent
『バルカン超特急』(1938)The Lady Vanishes
『巌窟の野獣』(1939)Jamaica Inn
<アメリカ時代>
『レベッカ』(1940)Rebecca
『海外特派員』(1940)Foreign Correspondent
『スミス夫妻』(1941)Mr. And Mrs. Smith
『断崖』(1941)Suspicion
『逃走迷路』(1942)Saboteur
『疑惑の影』(1943)Shadow Of A Doubt
『救命艇』(1944)Lifeboat
『白い恐怖』(1945)Spellbound
『汚名』(1946)Notorious
『パラダイン夫人の恋』(1947)Paradine Case
『ロープ』(1948)Rope
『山羊座のもとに』(1949)Under Capricorn
『舞台恐怖症』(1950)Stage Fright
『見知らぬ乗客』(1951)Strangers On A Train
『私は告白する』(1953)I Confess
『ダイヤルMを廻せ!』(1954)Dial M For Murder
『裏窓』(1954)Rear Window
『泥棒成金』(1955)To Catch A Thief
『ハリーの災難』(1955)Trouble With Harry
『知りすぎていた男』(1956)The Man Who Knew Too Much
『間違えられた男』(1957)The Wrong Man
『めまい』(1958)Vertigo
『北北西に進路を取れ』(1959)North By Northwest
『サイコ』(1960)Psycho
『鳥』(1963)The Birds
『マーニー』(1964)Marnie
『引き裂かれたカーテン』(1966)Torn Curtain
『トパーズ』(1969)Topaz
『フレンジー』(1972)Frenzy
『ファミリー・プロット』(1976)Family Plot
<一部監督作品>
「Memory of the Camps」(1945)(TV)