2023年09月10日

熊は、いない  原題:Khers Nist,  英題:No Bears

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(C)2022_JP Production_all rights reserved

監督・脚本・製作:ジャファル・パナヒ
撮影:アミン・ジャファリ
編集:アミル・エトミナーン
出演:ジャファル・パナヒ、ナセル・ハシェミ、ヴァヒド・モバセリ、バクティアール・パンジェイ、ミナ・カヴァニ・ナルジェス・デララム、レザ・ヘイダリ

トルコの街角。カフェから出てきた女に、男が「パスポートが準備できた。3日以内に出国しないと無効になる」という。「自分は後から行くので一人で行ってほしい」と言われ、女は「一緒に行きたい」と揉める。
ここで、「カット!」の声がかかる。映画の撮影だった。
トルコ国境に近いイランの村から、ジャファル・パナヒ監督がリモートでトルコにいる撮影隊に指示を出しているのだ。電波状況が悪くて、時々、途絶えてしまう。
一方、パナヒ監督は、村人にカメラを渡して、その日行われるという婚約式の儀式の様子を撮ってもらう。この村では、女の子が生まれると、結婚する相手を決めてから臍の緒を切るという。ある女性が婚約者でない男と密会しているのをパナヒ監督が写真に撮ったのではないかが問題になり、村の騒動に監督は巻き込まれていく・・・

パナヒ監督の作品はいくつか観ていますが、どこがフィクション?これはドキュメンタリーなの?と境目がわかりません。わからなくても丸ごと見ていれば、監督の見ているもの、言いたいことがわかってくるのかもと思ったりもしますが。監督の難しい立場上、言えること、言えないことがあり、相手に嘘もつかなければなりません。う~ん、藪の中にいるようです。あまりつつくと蛇でなく、熊が飛び出すかも??イランに詳しい(咲)さんに解釈をお願いすることにします。
この作品では映画内の映画と、村のおきてのため不自由な「恋人たち」にフォーカスしています。幼いときからの許嫁も略奪婚も映画でしか観たことはありませんが、理不尽この上ありません。日本もその昔、親のいうとおり結婚するのが定めでしたが。もめたり争ったりしているのは男性ばかり。決まりを作るのも男性で、女性は従うだけ?
男女の格差もすぐには無理でしょうが、少しずつ縮まりますように。映画を作り発表する自由をパナヒ監督が持てますように。せめて書いておきます。(白)


冒頭、トルコの町でイラン人の男女が10年も待機して欧州のどこかに密出国しようとしている話が展開し、カメラが段々引いて、パソコンの画面に収まります。その前に座るパナヒ監督が映し出されたとたん、あ~またパナヒ監督にやられた!と感服しました。
当局から、20年間映画を作ることも、イランから出国することも禁じられているパナヒ監督。それを逆手に取って、国境近くで映画を撮るという快挙。村はずれの国境までは、たった2キロ。ネット事情が悪いからと高台の国境付近に行くパナヒ。気が付けば国境を踏んでいます。眼下には、ロケ地のトルコの町の灯りが広がっています。村の人たちから、何もこんな辺鄙でネットも繋がらないところに来なくてもいいのにと言われるのですが、少しでもロケ地に近いところにいたいのが人情でしょう。トルコのロケ地にいる助監督は、簡単に国境を越えて、撮ったラッシュを届けがてら、パナヒ監督の安否確認。イラン出国を禁じられた監督が国境近くに居座っていて、逮捕されたら大変と心配しているのです。
一方で、滞在中の村は、女の子の赤ちゃんは許嫁を決めてから臍の緒を切るという風習があって、村の人たちはほぼすべてが親戚という状態。パナヒ監督が、婚約者でない男女の写真を撮った撮ってないを問題にされ、撮ってないなら宣誓所で皆の前で神に宣誓しろと言われます。
宣誓所に向かおうとしたパナヒ監督が、「その道は熊が出る」と引き留められ、お茶をふるまわれます。その男から、「村では水や土地を巡って争いが絶えない。先生は嘘でもいいから神に誓ってくれればいい」と助言されます。宣誓するときに、「村のしきたりには戸惑いも感じる」と前置きするパナヒ監督。それは村に対してだけのことではないでしょう。
この宣誓の場面で、もう一つ注目したのは言語のこと。この村の人たちの多くはトルコ系のアゼリー語を普段使っているらしく、ペルシア語だとわかりにくい人もいて、パナヒ監督は宣誓をアゼリー語でと依頼されます。パナヒ監督は、母親としかアゼリー語は使わず、兄弟とはペルシア語。アゼリー語だと自分が述べたいことの正しい単語が見つからないこともあると断ります。イランでは、ペルシア語が母語でない両親から生まれても、育った環境や受けた教育で自分にとって表現するのに楽な言語が両親と違うことはままあること。
さて、『熊は、いない』というタイトルには、脅しになんか乗らないぞ!という監督の気概を感じます。本作の完成後、逮捕され収監され、その間、ハンストもしたパナヒ監督ですが、その後釈放され、ご夫婦で外国にも旅に出られました。様々な圧力にもめげず、これからもキレのいい映画を作り続けてくださることを願うばかりです。(咲)



◆日本での公開に当たって、突如、ジャファル・パナヒ監督よりメッセージが到着!(9/15)
http://youtu.be/mb0S1ULB6mc


第79回ヴェネチア国際映画祭 審査員特別賞受賞
第23回東京フィルメックス オープニング作品 『ノー・ベアーズ(英題)』のタイトルで上映

2022年/イラン/ペルシア語・アゼリー語・トルコ語/107分/カラー/ビスタ/5.1ch
日本語字幕:大西公子/字幕監修:ショーレ・ゴルパリアン
配給:アンプラグド
公式サイト:http://unpfilm.com/nobears/
★2023年9月15日(金)より 新宿武蔵野館ほか全国順次公開



posted by sakiko at 18:46| Comment(0) | イラン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

私の大嫌いな弟へ 原題:Frère et sœur  英語題:Brother and Sister

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©︎ 2022 Why Not Productions - Arte France Cinéma


監督:アルノー・デプレシャン(『そして僕は恋をする』『クリスマス・ストーリー』)
出演:マリオン・コティヤール(『エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜』『アネット』)、メルヴィル・プポー(『わたしはロランス』『それでも私は生きていく』)、ゴルシフテ・ファラハニ(『パターソン』)、パトリック・ティムシット(『歓楽通り』)

姉アリスは有名な舞台女優、弟ルイは詩人。アリスは演出家の夫との間に一人息子がいる。ルイは人里離れた山中で妻フォニアと暮らしている。二人は憎みあい、もう長い間顔も合わせていない。ずっと売れてなかった弟に栄光が訪れた時からだったかもしれない。そんな二人が両親の突然の事故によって会わなければならなくなる。二人がお互いを受け入れる日は来るのだろうか・・・

原題『Frère et sœur』は、単純に、弟と姉。同じ両親のもと、姉と弟として生まれ、小さいときには一緒に仲良く育ったのに、それぞれの道を歩み、何が原因かわからないけれど疎遠になってしまった・・・ 両親が亡くなり、久しぶりに顔を合わせた二人の、どこかぎこちない思い。ラスト、姉アリスが吹っ切れたように、飛んでいった場所に驚かされました。(とてもエキゾチックな国です。ぜひ劇場でご確認を!)
私にとっては、弟ルイのユダヤ人の妻役としてイラン出身のゴルシフテ・ファラハニが登場したのが、なにより嬉しかったのですが、デプレシャン監督は、フランス人の家族だけの話に閉じ込めないために、ゴルシフテのほかにも、ルーマニアのコスミナ・ストラタンを、アリスに憧れる女優の卵として起用しています。また、ルイの親友であるユダヤ人のズウィ役であるパトリック・ティムシットは、実際アルジェリア系ユダヤ人。美しいシナゴーグでのズウィとルイの場面が印象に残りました。(咲)



2022年/フランス/110分/シネマスコープ/5.1ch
字幕:磯尚太郎、字幕監修:松岡葉子
配給:ムヴィオラ
公式サイト:https://moviola.jp/brother_sister
★2023年9月15日(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国順次ロードショー


★アルノー・デプレシャン監督来日&各地で新作登壇イベント★

■東京 Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下
➀9月15日(金) 19:00の回 上映後
登壇者:アルノー・デプレシャン監督、大九明子さん(映画監督)
進行:金原由佳さん(映画ジャーナリスト)

②9月16日(土) 19:00の回 上映後
登壇者:アルノー・デプレシャン監督
*ご来場の皆様からの質問を承る予定です。
詳細:https://www.bunkamura.co.jp/topics/cinema/7778.html

■愛知 伏見ミリオン座
日時:9/18(月祝)10:45の回 上映後
詳細:https://eiga.starcat.co.jp/

■大阪 シネリーブル梅田
日時:9/18(月祝)14:00の回 上映後
詳細:https://ttcg.jp/cinelibre_umeda/

■京都 京都シネマ
日時:9/20(水)19:00の回 上映後
詳細:https://www.kyotocinema.jp/



■アルノー・デプレシャン監督レトロスペクティブ開催情報■

第5回映画批評月間 フランス映画の現在をめぐって スペシャルエディション アルノー・デプレシャンとともに
期間:9/8(金)〜9/29(金)
会場:東京日仏学院 エスパス・イマージュ
公式HP:https://www.institutfrancais.jp/tokyo/agenda/cinema20230908/


第45回ぴあフィルムフェスティバル アルノー・デプレシャン監督特集
期間:9/16(土)〜9/22(金)
会場:国立映画アーカイブ
公式HP:https://pff.jp/45th/lineup/arnaud-desplechin.html
posted by sakiko at 18:25| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

マルセル・マルソー 沈黙のアート  原題:L'art du Silence 英題:The Art of Silence

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監督:マウリッツィウス・スタークル・ドルクス

パントマイムの神様マルセル・マルソーの知られざる事実
ボロボロのシルクハットと赤いバラ、白塗りメイクで世界に知られる道化師“ビップ”(BIP)。言葉をひと言も発せず、身ぶりと表情だけですべてを表現するマルソーの舞台。
それは、第二次世界大戦中、レジスタンスに身を投じ、ユダヤ人孤児300人余をスイスに逃がしたことに端を発している。危険な状況下で声を発さないコミュニケーション方法は、戦後独自の芸術表現に昇華されたのだ。
ユダヤ人精肉店に生まれ、アウシュヴィッツで父を殺されたマルセル・マルソー。
マルセルと共にレジスタンスに参加した従弟、彼の遺志を継ぐ家族、ろうの世界的パントマイマー、クリストフ・シュタークルら、マルソーを知る人物が登場し、彼の魅力を語る。

マルセル・マルソーのことを知ったのは、2021年8月27日に日本公開された劇映画『沈黙のレジスタンス ユダヤ孤児を救った芸術家』を通じてのことでした。
フランスでもユダヤ人迫害が激化し、ユダヤ人であるマルセルはフランス風にマルソーと名乗り、ユダヤ人孤児を助けたのです。戦後は、世界各地でパントマイム・パフォーマンスを披露したマルセルですが、どんな思いでいたのでしょう・・・

マルセルの娘さんが語っていた中で印象に残ったことがあります。
「ペルシアのシャーに会いに行くというので、ペルシアの猫(フランス語で猫はChatシャ)かと思ったら、王様(シャー)だったという場面。パフレヴィー2世が映り、その後、王制反対の人たちの姿。マルセルは、反体制派の支援もしたとありました。調べてみたら、マルセルは、1978年にテヘランのthe Roudaki Hall(革命後The Vahdat Hallに名前を変えています)で公演していることがわかりました。、私が1978年5月に初めてイランを訪れた時に、そのルーダキーホールの近くで食事したことがあり、ちょっと縁を感じた次第です。(咲)


2022年/スイス=ドイツ/独語・英語・仏語/カラー&モノクロ/81分
日本版字幕:松岡葉子
後援:一般社団法人日本パントマイム協会
配給:パンドラ
公式サイト:http://www.pan-dora.co.jp/marceau/
★2023年9月16日(土)シアター・イメージフォーラムにて公開



posted by sakiko at 17:01| Comment(0) | スイス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

燃えあがる女性記者たち 原題:Writing With Fire

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(C)BLACK TICKET FILMS. ALL RIGHTS RESERVED


監督、編集、製作:リントゥ・トーマス&スシュミト・ゴーシュ

山形国際ドキュメンタリー映画祭2021年のアジア千波万波部門で、『燃え上がる記者たち』のタイトルで上映され、市民賞を受賞した作品。

2002年にウッタル・プラデーシュ州チトラクート地区にて、カースト外の不可触民である「ダリト」の女性たちによって週刊の地方新聞として創刊された「カバル・ラハリヤ」(ニュースの波)。
2016年、独自のビデオチャンネルを立ち上げ、デジタル配信へと移行する。
主要メディアが扱わない事件も取り上げ、スマホを駆使して取材に奮闘する女性記者たちの姿を追う。

女性ばかりで取材して作っているなんて、シネジャと共通するところがあるわぁと親近感を持って見ていました。が、大きく違うのは「いのちがけ」なところ。特に誰もしなかったことに踏み出した「初めの一歩」にはどんなに勇気をふりしぼったことか。国も違えば社会背景も違うので比べられませんが、志の高さに感嘆、あの熱意に共感します。彼女たちを応援したくなりました。
丁寧に取材し、発信していくことで少しずつ社会が変わり、あとに続く若い人が現れます。キラキラした目で「先輩たちのようになりたい」という後輩たち。若くないけれど、私もそうなりたい。(白)


山形国際ドキュメンタリー映画祭2021年 『燃え上がる記者たち』(インド)Q&A
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/500697660.html

2021年/インド/ドキュメンタリー/ヒンディー語/DCP/93分
日本語字幕:福永 詩乃
配給:きろくびと
公式サイト:https://writingwithfire.jp/
★2023年9月16日(土)より渋谷ユーロ・スペースほか全国順次公開.




posted by sakiko at 13:12| Comment(0) | インド | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ダンサー イン Paris(原題:En corps)

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監督:セドリック・クラピッシュ
脚本:セドリック・クラピッシュ サンティアゴ・アミゴレーナ
撮影:アレクシ・カビルシーヌ
音楽:ホフェッシュ・シェクター
出演:マリオン・バルボー(エリーズ)、ホフェッシュ・シェクター(本人)、ドゥニ・ポダリデス(エリーズの父)、ミュリエル・ロバン(ジョジアーヌ)、ピオ・マルマイ(ロイック)、フランソワ・シヴィル(ヤン)

パリ・オペラ座で踊るエリーズは、エトワールになることを目標にしている。だが、夢の実現を目前にしながら、公演中に恋人の裏切りを目にしてジャンプの着地に失敗、足首を痛めてしまった。医師からこれまでのようには踊れなくなると告げられたエリーズは、新しい生き方を探さなくてはならない。バレエ一筋できた自分は他に何ができるだろうか。
早くにバレエをやめ、女優を目指しているサブリナに誘われ、ブリュターニュへと旅立った。才能あるアーティストが集まるレジデンスで、料理係のアシスタントを始める。そこでオーナーのジョジアーヌ、ホフェッシュ・シェクター率いるカンパニーの面々に出会った。コンテンポラリーダンスが生まれていくのを目撃し、心が動く。練習に誘われたエリーズはクラシックバレエとはまた違う、自分を解放する創造的なダンスに新たな喜びを見出していく。

エリーズを演じるマリオン・バルボーは実際にパリ・オペラ座の団員。クラシック作品だけではなく、オペラとバレエを一体化させた新しい試みにも参加しているそうです。ロイック役のピオ・マルロイは『おかえり、ブルゴーニュへ』で、マッサージでエリーズを癒すヤンのフランソワ・シヴィルは『パリのどこかで、あなたと』で、それぞれクラビッシュ監督とタッグ。クラビッシュ監督作品には、どれもあれこれ問題をかかえた人々が登場しますが、そのストーリーの進み方や解決の方法がいつも優しいのです。背景となるフランスの風景も行ってのんびりしたくなるようなところばかり。
フランス映画祭で監督に取材したことがありますが、ミニコミの私たちにもほんとに丁寧に接してくださって、お人柄が作品に出るのだなぁと思いましたっけ。(白)


2022年/フランス、ベルギー/カラー/シネスコ/118分
配給:アルバトロス・フィルム、セテラ・インターナショナル
(C)2022 / CE QUI ME MEUT MOTION PICTURE STUDIOCANAL FRANCE 2 CINEMA Photo : EMMANUELLE JACOBSON ROQUES
https://www.dancerinparis.com/
★2023年9月15日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 05:34| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

グランツーリスモ(原題:GRAN TURISMO)

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監督:ニール・ブロムカンプ
脚本:ザック・ベイリン、ジェイソン・ホール
撮影:ジャック・ジューフレ
出演:デヴィッド・ハーバー(ジャック・ソルター)、オーランド・ブルーム(ダニー・ムーア)、アーチー・マデクウィ(ヤン・マーデンボロー) 平岳大

“グランツーリスモ”は本物そっくりのレーシング体験のできる世界的大ヒットゲーム。ヤンはこのゲームに夢中で、本物のレーシングドライバーになりたいと夢見ている。父は本物とゲームは違うとあきれ、堅実な仕事をしろと言う。
実際にゲームプレイヤーたちをプロレーサーとして育成する動きがある。プレイヤーたちの可能性を信じるダニー・ムーアによって“GTアカデミー”が設立されていた。ヤンはゲームで好タイムを出し、“GTアカデミー”の予選会に参加することができた。各地から集まったプレイヤーたちは厳しい選抜をクリアし、ヤンを含め高い能力を持つ者だけが残った。
指導にあたるのは、ダニー・ムーアが見込んだ元レーサーのジャック・ソルター。リセットなどできず、事故れば死ぬか大けがの世界を骨身にしみて知っているジャックは、ゲーマーなど通用するわけがないと思っている。ヤンたちはリアルなレースの過酷さを体験していく。

このドライビングシミュレーターゲームは、日本で1997年にPlayStation®用ソフトとして誕生し、全世界でシリーズ累計9,000万本以上※を売り上げ大ヒット中です。運転席に座り、動きや振動を体感できます(見ただけでやったことはないですが)。実話を元にした作品というのに驚きますよね。夢に挑戦して叶えて行く様子を見ると、ひとごとでもなんだか嬉しくなります。
車の仕組みにも整備にも興味があり、熱心なヤンは頭角を現していきます。成功へとまっすぐ進むわけではないのが、また面白いところ。胸躍らせたり、落ち込んだり、車の加速や事故に身体がぎゅっと縮んだりします。名前の順はデヴィッド・ハーバー、オーランド・ブルームら先輩の後ですが、ヤン役のアーチー・マデクウィは、応援したくなる一途さがありました。
日本映画でもゲームプレイヤーがレーシングドライバーになる作品があります。昨年公開の野村周平主演『ALIVEHOON アライブフーン』(2022/下山天監督)こちらもわくわくします。どうぞ。(白)


2023年/アメリカ、日本/カラー/シネスコ/134分
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

https://www.gt-movie.jp/
★2023年9月15日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 05:31| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

キリング・オブ・ケネス・チェンバレン(原題:The Killing of Kenneth Chamberlain)

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監督・脚本・プロデューサー:デヴィッド・ミデル
製作総指揮:モーガン・フリーマン
出演:フランキー・フェイソン(ケネス・チェンバレン)、エンリコ・ナターレ(ロッシ)、アニカ・ノニ・ローズ(キャンディス・ウェイド)※声のみ出演

2011年11月19日午前5時22分。双極性障害(躁うつ病)を患う黒人の元海兵隊員ケネス・チェンバレンは医療用通報装置を誤作動してしまった。すぐに担当者から連絡があり、間違いで大丈夫だと告げたが、まもなく規定通りに警官が到着した。ケネスは緊急事態ではなく誤作動であると伝えたにも関わらず、警官は確認のためドアを開けてくれと繰り返す。ケネスは家のドアを開けるのを頑強に拒み、警官は不信感を抱いて問い詰め始めた。若い白人警官が差別的な言葉で罵倒し始め、ケネスは恐怖にかられていく。警官到着から90分後の午前7時、ケネスはドアを壊して入ってきた警官に撃たれ、死亡した。

モーガン・フリーマンが『インビクタス』のプロデューサー<ロリ・マクレアリー>とタッグを組み、製作総指揮を担った作品。早朝のできごとで、アパートの住人も離れて住むケネスの姪も集まってきて警官を制止するのに、拒否されていらだつ警官たちはなんとしてもドアを開けようとします。断固としてドアを開けないケネスには、以前にイヤな思いをしたという理由があったようですが、きちんと説明されません。3人の警官のうち、一人はベテラン、一人は若く怒りっぽく危なっかしい感じです。もう一人は元教師で、制止しても経験が浅さから取り合ってもらえません。
犯罪者を検挙するのが警官の仕事とはいえ、憶測だけで病人相手にこの執拗さはなんなんでしょう。悪いほうへ悪いほうへとそれていってしまう展開を、観客は固唾をのんで見守るしかありません。実話を元にしているというのに、ぞわっとします。始まりから最後までリアルタイムで進行するサスペンスに心臓がバクバクしました。二度とこんなことが起きませんように。(白)


2019年/アメリカ/カラー/シネスコ/83分
配給:AMGエンタテインメント
(C)2020 KC Productions, LLC. All Rights Reserved
http://kokc-movie.jp/
★2023年9月15日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 05:28| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

沈黙の自叙伝   原題:Autobiography

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(C)2022. Kawan Kawan Media, In Vivo Films, Pōtocol, Staron Film, Cinematografica, NiKo Film


監督:マクバル・ムバラク
出演:ケビン・アルディロワ、アースウェンディ・ベニング・サワラ、スワラ・ユスフ・マハルディカ、ルクマン・サルディ

インドネシアの田舎町。18歳の青年ラキブは、刑務所に入っている父に代わって、大邸宅の管理をしている。主の元将軍プルナが突然帰ってくる。プルナは地元の首長選挙に立候補し、ラキブは選挙運動を手伝うことになる。プルナの忠実なアシスタントとして働くラキブ。いつしかプルナはラキブに対して親身に接し、父親代わりの存在になっていく・・・

軍事独裁体制下を思わせる張り詰めた緊張感がありますが、実は、設定は2017年。
1990年に生まれたマクバル・ムバラク監督。軍事独裁政権下で公務員として働く父の、国家に対する忠誠心を見て育ち、「忠誠を尽くすことが人を立派にすることだ」と思っていたが、大人になるにつれ疑問がわいてきたという。父のように接してくるプルナをラキブは受け入れることができるのか・・・ ねっとりとしたインドネシアの田舎町の空気管の中で繰り広げられる物語にぞくぞく。
自叙伝とは、抑圧されてきたインドネシア社会の歴史。権利を持つ者と、権利を奪われている者。父なる独裁者に忠誠心を持つ者と、持てない者・・・ いつ立場が変わるかもしれない危うい社会で、人はどう立ち回ればいいのか・・・ (咲)


東京フィルメックス『自叙伝』アクバル・ムバラク監督Q&A
https://filmex.jp/2022/news/daily-news/11-01autobiography_qa

沈黙の自叙伝 アクバル・ムバラク監督_R.jpg
アクバル・ムバラク監督(東京フィルメックス2022にて)撮影:宮崎暁美


ヴェネチア映画祭オリゾンティ部門で上映。国際映画批評家連盟賞受賞。
第 23 回東京フィルメックス コンペティション部門最優秀作品賞(上映時タイトル『自叙伝』)

2022年/インドネシア、ポーランド、ドイツ、シンガポール、フランス、フィリピン、カタール/インドネシア語/115分
配給:ムーリンプロダクション
公式サイト:https://jijoden-film.com/
★2023年9月16日(土)より東京 シアター・イメージフォーラムを皮切りに全国順次公開



posted by sakiko at 01:50| Comment(0) | インドネシア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする