2023年09月24日

BAD LANDS バッド・ランズ

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監督:脚本:原田眞人
原作:黒川博行「勁草」(徳間文庫刊)
撮影:北信康
音楽:土屋玲子
出演:安藤サクラ(橋岡煉梨/ネリ)、山田涼介(矢代穣/ジョー)、生瀬勝久(高城政司)、宇崎竜童(曼荼羅/上松)、吉原光夫(佐竹刑事)、江口のりこ(日野班長)、サリngROCK(林田)、天童よしみ(新井ママ)、大場康正(教授/宇佐美)、淵上泰史(胡屋賢人)

ネリは名簿屋の高城に雇われて、特殊詐欺の受け子を束ねている。ネリを姉と慕ってくるのはサイコパスのジョー。血はつながっていないが、姉弟ではあり「腐れ縁」と思っている。社会の底辺にいる彼らの稼業は、持っているヤツから少しばかりかすめ取らせてもらうだけと割り切る。一番危ない綱渡りをする受け子たちにもっと報酬を分けたいネリだが、高城は吸い上げる上がまだまだいるんだという。

安藤サクラさんの出演作はいつも期待して観ていますが、これまで残念~と思ったことがありません。人生をやり直すテレビドラマ「ブラッシュアップライフ」も面白くて、終わるのが名残惜しかった~。家庭も持ち、子育てもしながらの俳優業、外野からは、無理をしたり力んだりしているようには見えません。どう配分しているんでしょ。
この作品では、詐欺を生業としている犯罪者役なのですが、難局にぶつかってオタオタするでもなく乗り越えるのを楽しんでいるように見えます。この肝っ玉の太さ、度胸の良さに加え、決して仲間を見捨てないとジョーは信じています。安藤サクラ&山田涼介二人の初タッグがとても温かく、また切なさを醸し出します。原作は男性が主人公ですが、サクラさんがヒロインだからこそプラスになったことは多いです。しかも切れ味鋭いアクションも非情な眼も見せます!
緻密に計算された詐欺のやり方を見ると、これでは騙されるのも無理はないと思えてしまいます。何もない私のような人は安心していいんでしょうか??
2時間あまりの長尺ですが、話はスピーディで芸達者な人が揃い、あれあれというまに引き込まれていました。(白)


2023年/日本/カラー/シネスコ/143分/5.1ch
配給:東映、ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
(C)2023「BAD LANDS」製作委員会
https://bad-lands-movie.jp/
★2023年9月29日(金)より公開
posted by shiraishi at 14:25| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ジャンポール・ゴルチエのファッション狂騒劇(原題:Jean Paul Gaultier: Freak and Chic)

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監督・撮影:ヤン・レノレ
出演:ジャンポール・ゴルチエ、マドンナ、カトリーヌ・ドヌーブ、ロッシ・デ・パルマ、マリオン・コティヤール、ボグダノフ兄弟、アントワーヌ・ドゥ・コーヌほか

奇想天外でファンタスティックなデザインで有名なクチュリエ(男性デザイナー)、ジャンポール・ゴルチェ。彼の半生をミュージカル仕立てに、しかも自身のコレクションも同時に披露していく「ファッション・フリーク・ショー」。
その舞台裏に密着したのがこのドキュメンタリー。制作の進行と一緒に、これまでのゴルチェの足跡も明かされる。お絵描きが好きだった子供の頃、愛するおばあちゃん、恋人フランシス、巡り合った懐かしい人々が思い出とともに駆け巡る。

豪華絢爛な舞台の裏側を見せてもらえるのはいつも楽しみです。こちらでは、ゴルチェのデザインを元に、ベテランスタッフが経験と工夫を凝らして作り上げる衣装、キャストや音楽の選定、リハーサルを繰り返すたびに修正が加えられていく様子が見られます。ゴルチェ自身はいつもニコニコして、自分の好みをごり押しするのでなくスタッフと意見の交換をしてより良いものにする努力を惜しみません。
高いヒールの靴で踊るダンサーの足元がいつも気になっていましたが、今回体格の良いテディベア役のダンサーが怪我をしました。靴がぱっくりと割れています。いっそのこと裸足ではダメなんでしょうかね。
マドンナの奇抜な衣装はゴルチェによるものでした。舞台映えするので、多くのコンサートで使われているようです。今年春には東京でもこの「ファッション・フリーク・ショー」があったんですね。

ヒューマントラストシネマ渋谷にてゴルチエに関連する作品の中から『バッド・エデュケーション』と『マルジェラが語る“マルタン・マルジェラ”』の2作の特集上映が決定しました。合わせてご覧ください。(白)


2018年/フランス/カラー/シネスコ/96分
配給:キノフィルムズ
(C)CANAL+ / CAPA 2018
https://gaultier-movie.jp/
★2023年9月29日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 13:00| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ハント  原題:헌트  英題:HUNT

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© 2022 MEGABOXJOONGANG PLUS M, ARTIST STUDIO & SANAI PICTURES ALL RIGHTS RESERVED.

監督・脚本:イ・ジョンジェ
出演:イ・ジョンジェ、チョン・ウソン、チョン・ヘジン、ホ・ソンテ、コ・ユンジョン、キム・ジョンス、チョン・マンシク

1983年、ワシントンDC。米韓首脳会議のため訪米した全斗煥大統領の警護にあたる安全企画部(旧 KCIA)の海外次長パク・ピョンホ(イ・ジョンジェ)と国内次長キム・ジョンド(チョン・ウソン)。CIAがテロの動きを察知、銃撃戦の末、犯人グループを射殺。暗殺事件は未然に防がれた。パク次長とキム次長は、組織内に入り込んだ北のスパイ“トンニム”を探し出す任務を命じられ、それぞれ捜査をはじめる。二重スパイを見つけなければ自分たちが疑われるかもしれない緊迫した状況で、二人は巨大な陰謀に巻き込まれていく・・・

イ・ジョンジェ主演の『純愛譜』(2000年)と『Interview インタビュー』(2000年)を同じ日に同じ劇場で続けて観て、ほんとに同じ人?とびっくりしたら、その前に観ていた『イルマーレ』もイ・ジョンジェだったと知り、演技派イ・ジョンジェにすっかりぞっこんになりました。その彼がついに初監督! しかも大親友でありビジネスパートナーであり隣人のチョン・ウソンとのW主演! チョン・ウソンは、初主演の『KUMIHO 千年愛』以来の大ファン♪ 七変化のイ・ジョンジェと違って、どんな役でも、あくまでチョン・ウソン。その大好きな二人が共演した『太陽はない』を韓国文化院で観ることが出来た時の嬉しかったこと! そして、『ハント』は、その『太陽はない』の共演から、なんと20年以上の時を経ての共演なのです。もう期待以上の映画でした。
派手なアクションシーンや、緊張感溢れる場面がテンポよく展開しますが、監督イ・ジョンジェが伝えたかったのは、誤ったイデオロギーや、フェイクニュースに翻弄されないでほしいという思い。「イカゲーム シーズン2」の撮影で忙しい中、来日して、記者会見と舞台挨拶に登壇したのも、本作を作った意図を直接日本の観客に伝えたかったからと語っていたのが頼もしかったです。 その時の様子は、下記でご覧ください。(咲)


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映画『ハント』 イ・ジョンジェ監督記者会見
http://cineja-film-report.seesaa.net/article/500612546.html

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映画『ハント』ジャパンプレミア  イ・ジョンジェ 初監督作品への思いを日本のファンに語る
http://cineja-film-report.seesaa.net/article/500612114.html

facebookアルバム イ・ジョンジェ初監督作品『ハント』記者会見&ジャパンプレミア
https://www.facebook.com/media/set/?set=a.791557082971879&type=3

2022年/韓国/DCP5.1ch/シネマスコープ/韓国語・英語・日本語/125分/PG12
字幕翻訳:福留友子・字幕監修:秋月望
配給:クロックワークス
公式サイト:https://klockworx.com/huntmoviejp
★2023年9月29日(金) 新宿バルト9ほか全国ロードショー

posted by sakiko at 02:18| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ヒッチコックの映画術   原題: My Name Is Alfred Hitchcock 

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(c)Hitchcock Ltd 2022
 
監督:マーク・カズンズ

“サスペンス映画の神様”アルフレッド・ヒッチコック。1899年8月13日ロンドン郊外に生まれ、厳格なカトリックの家庭で育った。1915年、ヘンリー電信ケーブル会社に入社し、広告部門で製図工からデザイナーとなる。1920年にイズリントン撮影所へ入所後、サイレント映画の字幕制作を手掛けるようになり、やがて脚本や助監督を担当。ヒットメイカーとして君臨。イギリス映画界初のトーキー映画となった『恐喝(ゆすり)』(29)を監督する。イギリス映画界からハリウッドへ渡ってからも、監督作の『レベッカ』(40)が第13回アカデミー賞で作品賞を受賞するなど、輝かしいフィルモグラフィを積み上げてきた。50年代に全盛期を迎え、1957年からは「ヒッチコック劇場」でテレビの世界にも進出。
サイレント映画からトーキー映画、モノクロ映画からカラー映画への移行、映画の画面比率がスタンダードサイズから大型してゆく変遷や、テレビの台頭による映画産業の斜陽化。さらには映画が3D化する時代にも遭遇するなど、ヒッチコックの映画人生は映画の歴史と共に歩んできた。1979年にはイギリス王室からナイト<サー>の爵位を受けた。1980年にハリウッドで亡くなる。
未完成に終わった幻の監督デビュー作「Number 13」(1922)の監督デビューから100年。ヒッチコック作品は今なお映画を愛する者たちを魅了し続けている。本作は「本人」が自身の監督作の裏側を紐解くスタイルで、その“面白さの秘密”を解き明かしていく。

10代の頃に、テレビで放映されていた「ヒッチコック劇場」を毎週楽しみに観ていて、それがまさしくこの映画のように、ヒッチコック自らがナビゲートする形。最初と最後に必ず出てきて語るので、大柄で特徴のある姿は目に焼き付きました。30分の短い番組でしたが、毎回、謎解きの後に、諭すように人生訓を語るのが面白かったものです。もっとも、当時は日本語吹き替えでヒッチコック本人の声ではありませんでしたが。
映画の冒頭で、「脚本&ナレーション:アルフレッド・ヒッチコック」と出てきます。どんな風に、本人の声を紡いだのかしら?と思ったら、最後に種明かし。物真似名人の俳優アリステア・マクゴーワンがヒッチコックの声を担当されたとのこと。すっかり騙されました。
本作では、これまであまり観たことのなかったイギリス時代の作品から、『ダイヤルMを廻せ!』『裏窓』『めまい』『鳥』などお馴染みのハリウッド時代の作品まで、数多くの名作を垣間見ながら、ヒッチコックの遊び心に富んだ映画作りの秘密を知ることが出来ました。(咲)


2022年/イギリス/英語/120分/カラー/1:1.78/5.1ch
字幕翻訳: 小森亜貴子
配給: シンカ
公式サイト:https://synca.jp/hitchcock
★2023年9月29日(金)新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMA、角川シネマ有楽町ほか全国公開



【本作で引用されるヒッチコック作品】
※年代順、(未)=日本劇場未公開(特集上映等は除く)、(TV)=TV映画

<イギリス時代 サイレント作品>
『快楽の園』(1925)The Pleasure Garden
『下宿人』(1927)The Lodger
『ダウンヒル』(1927)Downhill
『リング』(1927)The Ring
『農夫の妻』(1928)The Farmer’s Wife
『シャンパーニュ』(1928)Champagne
『マンクスマン』(1929)The Manxman

<イギリス時代 トーキー作品>
『恐喝(ゆすり)』(1929)Blackmail
『ジュノーと孔雀』(1930)Juno And The Paycock (未)
『殺人!』(1930)Murder! (未)
『リッチ・アンド・ストレンジ』(1931)Rich And Strange (未)
『第十七番』(1932)Number 17 (未)
『ウィンナー・ワルツ』(1934)Waltzes From Vienna (未)
『暗殺者の家』(1934)The Man Who Knew Too Much
『三十九夜』(1935)39 Steps
『サボタージュ』(1936)Sabotage
『第3逃亡者』(1937)Young And Innocent
『バルカン超特急』(1938)The Lady Vanishes
『巌窟の野獣』(1939)Jamaica Inn

<アメリカ時代>
『レベッカ』(1940)Rebecca
『海外特派員』(1940)Foreign Correspondent
『スミス夫妻』(1941)Mr. And Mrs. Smith
『断崖』(1941)Suspicion
『逃走迷路』(1942)Saboteur
『疑惑の影』(1943)Shadow Of A Doubt
『救命艇』(1944)Lifeboat
『白い恐怖』(1945)Spellbound
『汚名』(1946)Notorious
『パラダイン夫人の恋』(1947)Paradine Case
『ロープ』(1948)Rope
『山羊座のもとに』(1949)Under Capricorn
『舞台恐怖症』(1950)Stage Fright
『見知らぬ乗客』(1951)Strangers On A Train
『私は告白する』(1953)I Confess
『ダイヤルMを廻せ!』(1954)Dial M For Murder
『裏窓』(1954)Rear Window
『泥棒成金』(1955)To Catch A Thief
『ハリーの災難』(1955)Trouble With Harry
『知りすぎていた男』(1956)The Man Who Knew Too Much
『間違えられた男』(1957)The Wrong Man
『めまい』(1958)Vertigo
『北北西に進路を取れ』(1959)North By Northwest
『サイコ』(1960)Psycho
『鳥』(1963)The Birds
『マーニー』(1964)Marnie
『引き裂かれたカーテン』(1966)Torn Curtain
『トパーズ』(1969)Topaz
『フレンジー』(1972)Frenzy
『ファミリー・プロット』(1976)Family Plot

<一部監督作品>
「Memory of the Camps」(1945)(TV)
posted by sakiko at 00:33| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年09月18日

草原に抱かれて 原題「臍帯(Qi dai)」(へその緒の意)英題:Cord of Life

9月23日(土)より新宿K's cinemaにてロードショー、全国順次公開
他の上映情報
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広大な内モンゴルの草原を認知症の母と旅するミュージシャンの息子

監督・脚本:喬思雪(チャオ・スーシュエ)
エグゼクティブ・プロデューサー:曹郁(ツァオ・ユー)/姚晨(ヤオ・チェン)
撮影監督:曹郁(ツァオ・ユー) 
編集:チャン・イーファン 音響:フー・カン
美術:ジャオ・ズーラン メイクアップ&衣装:リー・ジョウ 
音楽:ウルナ/イデル/ウヌル
出演:母役:バドマ アルス役:イデル

内モンゴルの都会に暮らす電子ミュージシャンのアルス。馬頭琴でラップを歌う。ある日、ライブの最中に兄の家で暮らす母から電話が来た。ライブのあとで返信したが反応がない。心配になったアルスは兄夫婦の元を訪ねる。アルツハイマーを患う母は、集合住宅の狭い部屋に閉じ込められていた。アルスのことも認識できない。母は「家に帰りたい」という。
見かねたアルスは母を引き取り、母が望む故郷に連れ帰り、昔、家族で住んでいた家でふたり暮らしを始める。湖のほとりのとても景色の良いところで、母の心は癒されると思っていたけど、ここでも母は「家に帰りたい」と言い、次第に母の病状は悪化、徘徊を繰り返すようになってしまう。ついにアルスは母が遠くに行かないよう、しかたなく長い紐で母と自分の体を結ぶ。あたかもふたりが「へその緒」で繋がったかのようになった。原題の「臍帯」はへその緒の意味。
まるで少女に戻ったかのようになっていく母。ふたりは母の<思い出の木>を探す旅に出る。壮大な草原で伝統的なゲルでの移動の生活のなか、母は徐々に解放されていく。しかし、母の最期の時が近づいてくる。

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昨年(2022)の東京国際映画祭で観た作品の中で、一番印象に残った作品。内モンゴルでの高齢者事情にびっくりした。日本と同じように都会と地方ではやはり事情は違う。息子役を演じたイデルは実際にもミュージシャンで、この映画の音楽も担当している。馬頭琴でラップをやっていたのが面白かった。母の<思い出の木>を探す広大な草原を巡るロードムービーでもある。
内モンゴル出身でフランスで映画を学んだ女性監督チャオ・スーシュエのデビュー作。「母親役以外はすべて、内モンゴルの現地で普段生活されている方たちが出てくれたので、そこで非常にリアルな内モンゴルでの生活というのを、うまく描くことができたと思います」と語っていた。(暁)


「家に帰りたい」という母を連れて、草原で暮らした家に行くも、そこも母の帰りたかった家ではなくて、伝統的な組み立て式の「ゲル」こそが母にとっては帰りたかった家。モンゴルの人たちにとっては、それこそが家なのですね。
馬頭琴などの伝統楽器に合わせて、伝統的な衣装で楽しそうに皆で踊る場面に、後世にも民族の文化を大事に伝えてほしいと思いました。(咲)



公式HP http://www.pan-dora.co.jp/sougen/
2022年|中国|モンゴル語|96分|カラー 
配給:パンドラ

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チャオ・スーシュエ監督、リウ・フイプロデューサー
去年(2022)の東京国際映画祭での『へその緒(臍帯)』上映後のトーク
posted by akemi at 02:06| Comment(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年09月17日

コンフィデンシャル 国際共助捜査   原題:공조2: 인터내셔날  英題:CONFIDENTIAL ASSIGNMENT 2: INTERNATIONAL

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(C)2022 CJ ENM CO., LTD., JK FILM ALL RIGHTS RESERVED


監督:イ・ソクフン(『ヒマラヤ ~地上8、000メートルの絆~』
出演:ヒョンビン(『レイトオータム』「愛の不時着」)、ユ・ヘジン(『タクシー運転手~約束は海を越えて~』)、イム・ユナ(少女時代)(『手紙と線路と小さな奇跡』)、ダニエル・ヘニー(「春のワルツ」)、チン・ソンギュ(『エクストリーム・ジョブ』

韓国に降り立った、北朝鮮のエリート特殊捜査員リム・チョルリョン。彼の任務は、北から逃亡した国際犯罪組織のリーダーと消えた10億ドルを追うこと。北から「国際共助捜査」の要請があり、捜査の失敗により左遷されていた南の破天荒なベテラン刑事カン・ジンテは、現場復帰をかけ相棒に志願する。実は2人は2度目のタッグで、チョルリョンに恋するジンテの義妹ミニョンは、彼との再会を心待ちにしていた。互いの真の目的や機密情報を隠しながらも、リーダーの隠れ家に踏み込んだ時、FBI捜査官のジャックが現れる。激しい争いの果てにチームを組み直した3者・3国の前に、驚愕の黒幕が立ちはだかる・・・

冒頭、ニューヨークで繰り広げられるカーチェイスに銃撃戦。北朝鮮から逃亡した国際犯罪組織のリーダーを連れ帰るべく北朝鮮から来たヒョンビン演じる刑事リム・チョルリョンと、アメリカを飛び立つまではFBIの管轄だとぴったりと寄り添うダニエル・ヘニー演じるFBI捜査官ジャック。ドラマ「私の名前はキム・サムスン」(2005年)で共演した二人の登場に、最初からワクワクしました。
ソウルに着き、今度は、『コンフィデンシャル/共助』(2017年)でタッグを組んだユ・ヘジン演じる南の庶民派刑事の登場! 本作でも大いに笑わせてくれました。
ジンテの義妹ミニョンは、前作でチョルリョンに惚れて、彼との再会に念入りにお化粧をして迎えて胸躍らせるのですが、続いて現れたFBI捜査官ジャックの美男子ぶりにときめいてしまいます。どちらも捨てがたいイケメン♪ 動揺するミニョンをキュートに演じたユナちゃん、2022 第58回 大鐘賞映画祭 女優助演賞を受賞しました。
ヒョンビンは、激しいアクションシーンの9割を自身でこなしたそうで、さすが海兵隊に志願して所属した頑強さを感じます。「私の名前はキム・サムスン」の時には、まだ少年のあどけなさもあったヒョンビンが、すっかり渋い大人の男になりました。ダニエル・ヘニーは、歳を感じさせない甘い雰囲気。ユナちゃんが二人のどちらにもドキドキしてしまうのがわかります。
さて、10億円と共に消えた国際犯罪組織のリーダー。黒幕は誰なのか? 北、南、FBIの3人の共助の行方をハラハラしながら見守りました。(咲)


2022年/韓国/カラー/シネスコ/5.1ch デジタル/129分
字幕翻訳:根本理恵
配給:ギャガ 
公式サイト:https://gaga.ne.jp/confidential/
★2023年9月22日(金)TOHOシネマズ 日比谷他全国公開


posted by sakiko at 20:05| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ジャン=リュック・ゴダール 反逆の映画作家(シネアスト) 原題:Godard seul le cinéma 英題:Godard Cinema 

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©10.7 productions/ARTE France/INA – 2022

監督:シリル・ルティ 
出演:マーシャ・メリル、ティエリー・ジュス、アラン・ベルガラ、マリナ・ヴラディ、ロマン・グーピル、ダヴィッド・ファルー、ジュリー・デルピー、ダニエル・コーン=ベンディット、ジェラール・マルタン、ナタリー・バイ、ハンナ・シグラ、ドミニク・パイーニ 

2022年9月13日、スイスで91年の生涯を閉じたジャン=リュック・ゴダール監督。1930年12月3日パリ生まれ。1950年代末から60年代のフランス映画界で革新的な映画運動、「ヌーヴェル・ヴァーグ」を先導し、常に独自のスタイルを開拓・探究しながら最前線を駆け抜けたシネマの巨人にして鬼才。自ら選択した安楽死だと伝えられた衝撃の死から1年。いま改めて振り返る20 世紀映画界の伝説であり永遠の反逆児、ジャン=リュック・ゴダールの人生とは?その伝説の陰に隠された、一人の「人間」としてのゴダールの知られざる素顔に迫るドキュメンタリー。

『勝手にしやがれ』(60)で長編デビュー。「映画の革命」と呼ばれ、世界の映画界に衝撃を与える。60年代はアンナ・カリーナとの蜜月から生まれた『女は女である』(61)、『女と男のいる舗道』(62)、『はなればなれに』(64)など、「カリーナ時代」と呼ばれる作品群を発表。65年にはヌーヴェル・ヴァーグの最高傑作と評される『気狂いピエロ』、67年に『中国女』を製作するが、五月革命以降は『ウイークエンド』(67)を最後に商業映画との決別を表明し、『ワン・プラス・ワン』(68)、『東風』(70)など作風はより前衛的で政治色の強いものになる。77年にスイス、レマン湖畔のロールに拠点を移し、『勝手に逃げろ/人生』(80)で商業映画に復帰。『パッション』(82)、『右側に気をつけろ』(87)をはじめとする劇映画のほかに実験的なビデオ作品も数多く製作した。その後は『ゴダールの映画史』(88-98)の製作に没頭。21世紀に入っても、『アワーミュージック』(04)、『ゴダール・ソシアリスム』(10)、3D映画『さらば、愛の言葉よ』(14)、『イメージの本』(18)などを発表。

あまりにも有名なゴダール。いくつかの映画のタイトルは知っているものの、あらためてフィルモグラフィーを見てみると、おそらく1本も観ていないことに気がつきました。食わず嫌いで、あえて観ようとしなかったのだと思うのですが、お恥ずかしい。
本作で、ゴダールを知る様々な人が語るのを聞いて、いかに彼が映画を芸術として高めようとしたかを感じました。さらにゴダール本人が語る場面もあり、「反逆児」「鬼才」のイメージはさらに強まりました。
2番目の妻であるアンナ・カリーナが、パリのパレスチナ専門の書店で働いていた政治活動家だと知り興味津々。彼女の影響を大きく受けた作品をぜひ観たいと思いました。(咲)



2022年/フランス/フランス語/105分/カラー・モノクロ/1.78 : 1/5.1ch 
字幕:齋藤敦子
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ 
配給:ミモザフィルムズ
公式サイト:http://mimosafilms.com/godard/
★2023年9月22日(金)より新宿シネマカリテ、シネスイッチ銀座、ユーロスペース、アップリンク吉祥寺ほか全国ロードショー




posted by sakiko at 18:13| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ブリング・ミンヨー・バック! 英題「BRING MIN’YO BACK!」

2023年9.15(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開

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(C)Yuji Moriwaki All rights reserved


今年のフジロックに出演し話題のラテン×民謡バンド・民謡クルセーダース!
音響特化上映×ライブ×盆踊り=「踊り上映」開催!!


プロデューサー・ディレクター・撮影・編集:森脇由二
出演:民謡クルセイダーズ、Frente Cumbiero、ピーター・バラカン、 久保田麻琴、岸野雄一、大石始、元ちとせ、俚謡山脈、東京キューバンボーイズ、コデランニー

民謡クルセイダーズは、東京西部の米軍横田基地の街、福生市を拠点に活動するバンドで、福生在住のギタリスト田中克海と民謡歌手フレディ塚本の二人を中心に2011年に結成。日本各地の民謡にラテンやアフロビートをミックスして独自のアレンジを加えた音楽を演奏している。2017年にファースト・アルバム「Echoes of Japan」をリリース。ピーター・バラカン、ライ・クーダーにも絶賛され、人気フェス出演も果たした。
2019年にはワールドツアーを行い、コロンビア、ヨーロッパ各国、オーストラリア、ニュージーランドを回った。本作の撮影は2017年から始まり、2019年のワールドツアーにも同行。彼らが民謡を再構築して現代のオーディエンスに「民謡を取り戻す」過程に5年間密着したドキュメンタリー
コロンビアでは現地のバンド Frente cumbieroとセッションし、民謡のさらなるアップデートを模索する。また、元ちとせや久保田麻琴などの著名なミュージシャンや、ピーター・バラカンや岸野雄一などの評論家へのインタビューを通して、「民謡とは何か」を探っていく。

民謡は、今や一般的にはほとんど歌われず、TV番組で民謡歌手が歌っていたり、民謡教室で習っている人がいるとような感じで、コアな歌い手とファンがいるというイメージだったけど、このドキュメンタリーに出てきた民謡の数々、全部知っていた。日本人であれば、たとえ生では聴いてなくても、TVや盆踊り、祭りの場で知らず知らずのうちに耳に入り、頭に叩き込まれているなあと思った。
ボーカルフレディ塚本の伸びやかな歌声は素晴らしく、民謡クルセイダーズで使われているラテン音楽で使われるような楽器(ギター、管楽器、ボンゴなど)との組み合わせは絶妙なリズムを生み出し自然に踊りが出てくる。三味線ではなく、およそ民謡とは結び付かない楽器とのコラボがとても新鮮で、民謡をこんなにも自由自在に解釈し、歌っていることに快感さえ感じる(暁)。


公式HP
https://www.bringminyoback.com/
2022年/日本/90分 /16:9/カラー/ステレオ)
配給:ALFAZBET
posted by akemi at 15:37| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル トラヴェリン・バンド  原題:Travelin’ Band Creedence Clearwater Revival at The Royal Albert Hall

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© 2022 Concord Music Group, Inc.


たった4年の活動期間でアメリカン・ロックの歴史を変えた名バンドが頂点を極めるまでの軌跡を映像と音楽で辿ったドキュメンタリー。

1959年にハイスクールの友人だったジョン・フォガティ(ギター、ヴォーカル)スチュ・クック(ベース)ダグ・クリフォード(ドラムス)にジョンの兄トム・フォガティ(ギター)が合流してザ・ブルー・ヴェルヴェッツを結成。何度かバンド名を変更した後、1967年にクリーデンス・クリアウォーター・リバイバル(CCR)として再スタート。「プラウド・メアリー」「ボーン・オン・ザ・バイヨー」「トラヴェリン・バンド」「バッド・ムーン・ライジング」「グリーン・リヴァー」「雨を見たかい」など、数々のロックの名曲を生み出し、1960年代後半アメリカを代表するバンドのひとつとなり、“愛と平和の祭典”ウッドストック・フェスティバルにも出演した。
本国アメリカを制覇し、1970年1月、初のヨーロッパ・ツアーに赴く。オランダ、ドイツでの公演を経て行われたのが4月14日・15日、ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで行われたライヴ。
当時世界で一番人気のあったザ・ビートルズを打倒するという意気込みでイギリスに乗り込むが、なんとライヴ数日前にポール・マッカートニーがザ・ビートルズを脱退! ザ・ビートルズの解散により、CCRは名実共に世界のトップ・バンドとなったのだ。
ビートルズ解散4日後の1970年4月14日にロイヤル・アルバート・ホールで行われたライヴは撮影・レコーディングされたが、作品として発表されることなくずっとロンドンの倉庫にひっそりと保管されてきた。半世紀の年月を経て、遂に本作で公開されることになった。
こうして、世界のトップ・バンドになったCCRだったが、楽曲のほとんどを作曲し、サックスからピアノまで自分で演奏するジョンの才能に注目が集まりすぎたためにメンバー間の軋轢が生じ、71年1月にバンドのマネージャーも兼任していたトムが脱退。同年の「雨を見たかい」はビルボード8位となったが、72年10月にバンドは解散した。

60年代半ばから後半にかけての中高生時代、ラジオで洋楽を聴きながら勉強していた私。
聴いて心地よかったのは、ビートルズ、ビージーズ、モンキーズ、サイモン&ガーファンクル、ギルバート・オサリバン、エルヴィス・プレスリー そしてブラザーズ・フォアやPPMなどのフォーク。
ローリング・ストーンズ、レッド・ツェッペリン、スティーヴィー・ワンダーなどは苦手。クィーンが出てきた頃には、ラジオも聴かず、洋楽も聴かなくなってました。
そんな私にとって、CCRは、かろうじてリアルタイムで聴いたバンド。CCRなどと略さず、早口言葉のように「クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル」と言っていたものです。でも、当時はどんなメンバーなのか、どこの出身なのかなど、何も知りませんでした。
本作で、CCRの結成に至る経緯や、メンバーの素顔を知ることができ、懐かしい「Proud Mary」「I Put a Spell on You」などの曲を聴くこともできました。何より圧巻は、ロイヤル・アルバート・ホールでのライヴ。思いのほか、合間のトークは少なくて、最後の曲が終わって、15分ものスタンディング・オヴェーションと拍手が続いたのに、再度舞台に登場することはありませんでした。アンコールは行わないというバンドのポリシーだそうですが、ちょっと寂しい気がしました。それが粋という彼らなりのスタンスなのでしょうか・・・ (咲)



★CDアルバム(発売中)
『ライヴ・アット・ロイヤル・アルバート・ホール』
ユニバーサルミュージック UCCO-45005
https://www.universal-music.co.jp/ccr/


2022年/86分/アメリカ/字幕(歌詞全訳):林かんな 
配給:オンリー・ハーツ 
公式サイト: http://ccr.onlyhearts.co.jp
★2023年9月22日(金)角川シネマ有楽町・ヒューマントラストシネマ渋谷他にて全国順次公開


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ロスト・キング 500年越しの運命(原題:The Lost King)

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監督:スティーヴン・フリアーズ
原作:フィリッパ・ラングレー、マイケル・ジョーンズ
脚本:ジェフ・ポープ、スティーヴ・クーガン
音楽:アレクサンドル・デスプラ
出演:サリー・ホーキンス(フィリッパ・ラングレー)、スティーヴ・クーガン(ジョン・ラングレー)、ハリー・ロイド(リチャード3世/ピート)、マーク・アディ(リチャード・バックリー)

フィリッパ・ラングレー45歳、夫と別居し息子二人と暮らしている。長年勤めた職場では、上司に理不尽な評価を受けて落ち込んでも生活のためにやめるわけにはいかない。家庭も仕事もうまくいかず、苦悩の日々を過ごしていたがある日転機が訪れる。息子の付き添いで舞台「リチャード三世」を観劇したことで、これまでのリチャード三世への印象が大きく変わった。
歴史書を読み漁り、講演会に出かけ、ファンの集いにも顔を出した。没後のプロバガンダやシェイクスピアの史劇により、甥たちを殺した冷酷非情な王として悪名が史実となってしまったのではないか?自分が周囲の人々に正しく理解されていないように・・・。
フィリッパは夫が呆れるほどリチャード三世に没頭し、いまだ見つかっていない遺骨を探そうと思い立つ。

宣伝のキャッチは「推し活」です。思わず、そうそうと思ってしまいました。故人だろうが、王様だろうが、気になる人は気になります。フィリッパの灰色だった毎日に光が差して、先へ行く道を照らしたのに違いありません。これが、事実を元にした話だというのに驚きます。きっとニュースになったはずですが、全く記憶にありません。
フィリッパの視線の先には舞台で観たリチャード三世が幻影となって現れ、言葉まで交わします。自問自答ですが、「一人推し活」の彼女にはおおいに慰めと力になったはず。表情や足取りが変わっていきます。
フィリッパの探索を冷笑していた学者や大学が、いざ遺骨が見つかると態度を変えるのが噴飯ものですが、主婦と大学の研究者ではこんなことになるものなんですね…。遺骨が見つかり、王として葬儀が行われ、国民に追悼されたことで良かったというべきでしょうね。サリー・ホーキンスは『しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』『シェイプ・オブ・ウォーター』以来見損ねていましたが、不思議な話でも「そんなこともあるかも、あってほしい」と納得させる力があります。(白)


2022年/イギリス/カラー/ビスタ/108分
配給:カルチュア・パブリッシャーズ
(C)PATHE PRODUCTIONS LIMITED AND BRITISH BROADCASTING CORPORATION 2022 ALL RIGHTS RESERVED.
https://culture-pub.jp/lostking/
★2023年9月22日(金)TOHOシネマズシャンほか全国ロードショー
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バーナデット ママは行方不明(原題:Where'd You Go, Bernadette)

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(C)2019 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All rights reserved.

監督・脚本:リチャード・リンクレイター
撮影:シェーン・ケリー
音楽:グレアム・レイノルズ
出演:ケイト・ブランシェット(バーナデット・フォックス)、ビリー・クラダップ(エルジー)、クリステン・ウィグ(オードリー)、エマ・ネルソン(ビー)

シアトルに暮らす主婦のバーナデット。夫のエルジーは一流IT企業に勤め、娘のビーとは親友のような関係で、幸せな毎日を送っているように見えた。だが、バーナデットは極度の人間嫌いで、隣人やママ友たちとうまく付き合えない。かつて天才建築家としてもてはやされたが、夢を諦めた過去があった。
日に日に息苦しさが募る中、ある事件をきっかけに、この退屈な世界に生きることに限界を感じたバーナデットは、忽然と姿を消す。

彼女が向かった先は早めにわかります。家族で行く予定のところだったのですから。それまでなんだかんだと行かない理由をつけていたバーナデットが、なぜそこに行ったのか?
ちょっと周りから浮いてしまう彼女を、ガラドリエル様、じゃなくってケイト・ブランシェットが演じます。そりゃ浮くよね、という存在感ありあり。なんだかもったいないようなキャスティングです。天才肌の仕事人間が、主婦に収まったことでおさめきれないモヤモヤが噴出してしまい、さてどうなるといったホームコメディ。(白)


2019年/アメリカ/カラー/シネスコ/108分
配給:ロングライド
https://longride.jp/bernadette/
★2023年9月22日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 14:02| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!(原題:Teenage Mutant Ninja Turtles: Mutant Mayhem)

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監督:ジェフ・ロウ
製作:セス・ローゲン、エヴァン・ゴールドバーグ、ジェームズ・ウィーバー(『ネイバーズ』)
脚本:セス・ローゲン、エヴァン・ゴールドバーグ、ジェフ・ロウ、ダン・ヘルナンデス、 ベンジー・サミット
音楽:トレント・レズナー、アッティカス・ロス
声の出演:シャモン・ブラウン・Jr(ミケランジェロ)、ニコラス・カントゥ(レオナルド)、ブレイディ・ヌーン(ラファエロ)、マイカ・アビー(ドナテロ)、ジャッキー・チェン(スプリンター)、アヨ・エデビリ(エイプリル・オニール)

ニューヨークの地下には、タートルズたちが住んでいる。緑のドロドロの中を這いまわっていた赤ん坊のとき、ネズミのスプリンターが見つけ、今まで育てられた。ドロドロはミュータンジェンという特別な薬品で、触れたものをミュータントにする。4匹のタートルズもスプリンターもミュータントになって、高い能力を持っている。彼らは人間という危険な存在に知られないように暮らしてきた。
見た目はともかく、心は普通のティーンエイジャー。こっそり覗く人間世界は、スプリンターがいうように危険には思えない。街のみんなに愛され受け入れられるにはどうしたらいい?唯一の人間の友人、女子高生のエイプリルに相談しニューヨークを悩ませる”謎の犯罪組織”をやっつけることにしたが…。

ミュータントを作り出したのは家族が欲しかった科学者でした。研究室が悪の組織に襲われて、ミュータンジェンは零れてしまいました。生まれたての赤ちゃんタートルズの可愛いこと。ミュータント化したスペンサーはタートルズたちを守り育て、拳法を伝授します。彼らが大きくなっても、心配のあまり人間と関わるのを禁じました。ダメと言われるとやってみたい年頃のタートルズは、人間と仲良くしたくてたまりません。芸術家と同じ名前のミケランジェロ、レオナルド、ラファエロ、ドナテロたちの会話の中身は、専ら人間界で人気のカルチャーの話。アニメや漫画のこと、はては「BTSに会いたい」と言って「Butter」まで歌います。
筆の動きまで見えるような粗目のタッチのアニメーション、イマドキの曲に乗せてのスピーディな動きについていくには吹き替え版がお勧めです。異形のタートルズを拒否しないエイプリルに出会えたのは幸運でしたが、はたして人間界へ仲間入りできるのでしょうか?
そして大挙してやってくるスーパーフライと手下たちとの闘いは?(白)


2023年/アメリカ/カラー/シネスコ/110分
配給:東和ピクチャーズ
(C)2023 PARAMOUNT PICTURES.TEENAGE MUTANT NINJA TURTLES IS A TRADEMARK OF VIACOM INTERNATIONAL INC.
https://turtles-movie.jp/
★2023年9月22日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 13:54| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ファッション・リイマジン(原題:Fashion Reimagined)

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監督:ベッキー・ハトナー
撮影:ダニエル・ゴッツ
出演:エイミー・パウニー、クロエ・マークス、ペドロ・オテギ

2017年4月、英国ファッション協議会とVOGUEによって、その年の英国最優秀新人デザイナーに選ばれたエイミー・パウニーは、賞金の10万ポンドで《Mother of Pearl》をサステナブル(将来にわたって持続可能)なブランドへと変えることを決意する。
当時ファッション業界は大量消費の真っ只中で、サステナビリティはニッチなトピックだった。
原材料から製造過程まで、すべてにおいてサステナブルなコレクションは、「No Frills(飾りは要らない)」と名づけられる。コレクションの発表は、2018年9月のロンドン・ファッション・ウィーク。準備期間はわずか18ヶ月!一からの原料探しが始まった。

世界の有名デザイナーの映画は数々あれど、個性や斬新なアイディア、生み出す苦労などが注目されてきました。この作品に登場するエイミー・パウニーのように、「地球の限りある資源を大切に地球にも身体にも優しいファッション」というのは初めてです。それもすでに供給されている素材でなく、人任せにせずに自分自身が探し出すとは!!
ウールなら羊の生産者を探し、製品となるまで全ての過程を把握していくのは、長い長い道のりです。これまでのように、たくさん作って売って、捨てて、また購入してもらうというのでなく、長く大事に使ってゴミにしない。「毎年、千億もの服が作られ、その5分の3が購入した年に捨てられる」なんて知りませんでした。自分はゆったり目が好きなのと、体型がほとんど変わっていないのとで、何十年も着ている服があります。超サステナブル!(白)


2022年/イギリス/カラー/ビスタ/100分
配給:フラッグ
(C)2022 Fashion Reimagined Ltd
https://www.flag-pictures.co.jp/fashion-reimagine/
★2023年9月22日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー
posted by shiraishi at 13:34| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ジョン・ウィック コンセクエンス(原題:John Wick: Chapter 4)

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監督・制作:チャド・スタエルスキ
脚本:シェイ・ハッテン、マイケル・フィンチ
撮影:ダン・ローストセン
音楽:タイラー・ベイツ
出演:キアヌ・リーブス(ジョン・ウィック)、ドニー・イェン(ケイン)、ビル・スカルスガルド(グラモン侯爵)、ローレンス・フィッシュバーン(バワリー・キング)、真田広之(コウジ・シマヅ)、シャミア・アンダーソン(トラッカー)、ランス・レディック(シャロン)、リナ・サワヤマ(アキラ)、スコット・アドキンス(キーラ)、イアン・マクシェーン(ウィンストン)

伝説の殺し屋ジョン・ウィックは裏社会の掟を破り、苛烈な粛清から生き延びたが自由になったわけではない。
組織内での権力を得た若き高官グラモンは、聖域としてジョンを守ってきたニューヨークのコンチネンタルホテルを爆破した。ジョンの旧友でもあった盲目の達人ケインに暗殺命令を出す。全ての殺し屋がジョン・ウィック狩りに乗り出した。ジョンが頼ったのは、旧友のシマヅが支配人である大阪のコンチネンタルホテル。シマヅは長年の友人を匿うが、ほどなく主席の使者がここも聖域ではなくなったと告げにきた

ジョン・ウィックが現れる冒頭は砂漠のシーン、後に聖域だったニューヨークのコンチネンタルホテルへ移り、大きな転換が!舞台を移りながら、ジョン・ウィックは追手と戦い続けて行きます。制裁は容赦ないと知っているジョン、旧友を訪ねたらみな殺されるとわかっているはずなのですが。シマヅ支配人の娘アキラ役のリナ・サワヤマさん、この作品で初めて観ましたが、日本生まれ、ロンドン育ち。シンガーソングライターとして活躍、この作品が長編映画デビュー。
ジョン・ウィック第1作からずっと観ていますが、大ヒットして次々とアクションも舞台装置も派手に大がかりになっています。還暦目前(1964年生まれ)のキアヌ、ちょっと動きが遅く見えてしまうのは、今回の相手がドニー(1963年生まれ)なので仕方のないところ。盲目の設定でハンデをつけているものの相変わらずのキレキレです。アクションと美しい撮影に先の気になるストーリーに身って、いつのまにか3時間近く。”コンセクエンス Consequences”の意味は報復。(白)


2022年/日本/カラー/シネスコ/169分
配給:ポニーキャニオン
(R), TM & (C)2023 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.
http://johnwick.jp/
★2023年8月日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 13:29| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

PIGGY ピギー(原題:CERDITA)

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監督・脚本:カルロタ・ペレダ
出演:ラウラ・ガラン
カルメン・マチ
リチャード・ホームズ
ピラール・カストロ

スペインの田舎町。肉屋の娘で ティーンエイジャーのサラは、豊満な体型からクラスメイトに「Piggy(子ブタ)」と呼ばれ執拗にイジメられていた。幼馴染までそちらに組みしていて、家族にも言えない。一人で閉じこもっていたが、あまりに暑いのでこっそりプールへ出かけていく。見知らぬ男がプールから出てきて、そこへいじめグループが通りかかった。さんざん囃し立てからかったうえ、サラの着替えと携帯の入ったリュックを持ち去ってしまった。
家までビキニ姿で帰らねばならず、人目を避けて脇道に入ったサラはイジメクループが男に拉致されるのを目撃する。

スペイン発のリベンジホラー。元は短編作品だったのが、映画祭などで好評を博し長編に作り直したもの。主演のラウラ・ガランは舞台俳優で、ティーンではありませんが、コンプレックスで閉じこもるボッチ女子高生を演じて、ゴヤ賞で最優秀新人女優賞を受賞しました。
ところ変わってもイジメのやり方は万国共通のようです。本人は毎日傷つけられ、恐怖で縮こまるしかないのに、イジメる方は笑っていて「ただの遊び、ふざけただけ」と言うだけ。家族に打ち明ける勇気もなかなか出ません。長編になったことでリベンジが叶うや否や?(白)


2022年/スペイン/カラー/シネスコ/99分
配給:シノニム、エクストリーム
https://piggy-movie.com/
★2023年9月22日(金)ロードショー
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2023年09月10日

熊は、いない  原題:Khers Nist,  英題:No Bears

no bears.jpg
(C)2022_JP Production_all rights reserved

監督・脚本・製作:ジャファル・パナヒ
撮影:アミン・ジャファリ
編集:アミル・エトミナーン
出演:ジャファル・パナヒ、ナセル・ハシェミ、ヴァヒド・モバセリ、バクティアール・パンジェイ、ミナ・カヴァニ・ナルジェス・デララム、レザ・ヘイダリ

トルコの街角。カフェから出てきた女に、男が「パスポートが準備できた。3日以内に出国しないと無効になる」という。「自分は後から行くので一人で行ってほしい」と言われ、女は「一緒に行きたい」と揉める。
ここで、「カット!」の声がかかる。映画の撮影だった。
トルコ国境に近いイランの村から、ジャファル・パナヒ監督がリモートでトルコにいる撮影隊に指示を出しているのだ。電波状況が悪くて、時々、途絶えてしまう。
一方、パナヒ監督は、村人にカメラを渡して、その日行われるという婚約式の儀式の様子を撮ってもらう。この村では、女の子が生まれると、結婚する相手を決めてから臍の緒を切るという。ある女性が婚約者でない男と密会しているのをパナヒ監督が写真に撮ったのではないかが問題になり、村の騒動に監督は巻き込まれていく・・・

パナヒ監督の作品はいくつか観ていますが、どこがフィクション?これはドキュメンタリーなの?と境目がわかりません。わからなくても丸ごと見ていれば、監督の見ているもの、言いたいことがわかってくるのかもと思ったりもしますが。監督の難しい立場上、言えること、言えないことがあり、相手に嘘もつかなければなりません。う~ん、藪の中にいるようです。あまりつつくと蛇でなく、熊が飛び出すかも??イランに詳しい(咲)さんに解釈をお願いすることにします。
この作品では映画内の映画と、村のおきてのため不自由な「恋人たち」にフォーカスしています。幼いときからの許嫁も略奪婚も映画でしか観たことはありませんが、理不尽この上ありません。日本もその昔、親のいうとおり結婚するのが定めでしたが。もめたり争ったりしているのは男性ばかり。決まりを作るのも男性で、女性は従うだけ?
男女の格差もすぐには無理でしょうが、少しずつ縮まりますように。映画を作り発表する自由をパナヒ監督が持てますように。せめて書いておきます。(白)


冒頭、トルコの町でイラン人の男女が10年も待機して欧州のどこかに密出国しようとしている話が展開し、カメラが段々引いて、パソコンの画面に収まります。その前に座るパナヒ監督が映し出されたとたん、あ~またパナヒ監督にやられた!と感服しました。
当局から、20年間映画を作ることも、イランから出国することも禁じられているパナヒ監督。それを逆手に取って、国境近くで映画を撮るという快挙。村はずれの国境までは、たった2キロ。ネット事情が悪いからと高台の国境付近に行くパナヒ。気が付けば国境を踏んでいます。眼下には、ロケ地のトルコの町の灯りが広がっています。村の人たちから、何もこんな辺鄙でネットも繋がらないところに来なくてもいいのにと言われるのですが、少しでもロケ地に近いところにいたいのが人情でしょう。トルコのロケ地にいる助監督は、簡単に国境を越えて、撮ったラッシュを届けがてら、パナヒ監督の安否確認。イラン出国を禁じられた監督が国境近くに居座っていて、逮捕されたら大変と心配しているのです。
一方で、滞在中の村は、女の子の赤ちゃんは許嫁を決めてから臍の緒を切るという風習があって、村の人たちはほぼすべてが親戚という状態。パナヒ監督が、婚約者でない男女の写真を撮った撮ってないを問題にされ、撮ってないなら宣誓所で皆の前で神に宣誓しろと言われます。
宣誓所に向かおうとしたパナヒ監督が、「その道は熊が出る」と引き留められ、お茶をふるまわれます。その男から、「村では水や土地を巡って争いが絶えない。先生は嘘でもいいから神に誓ってくれればいい」と助言されます。宣誓するときに、「村のしきたりには戸惑いも感じる」と前置きするパナヒ監督。それは村に対してだけのことではないでしょう。
この宣誓の場面で、もう一つ注目したのは言語のこと。この村の人たちの多くはトルコ系のアゼリー語を普段使っているらしく、ペルシア語だとわかりにくい人もいて、パナヒ監督は宣誓をアゼリー語でと依頼されます。パナヒ監督は、母親としかアゼリー語は使わず、兄弟とはペルシア語。アゼリー語だと自分が述べたいことの正しい単語が見つからないこともあると断ります。イランでは、ペルシア語が母語でない両親から生まれても、育った環境や受けた教育で自分にとって表現するのに楽な言語が両親と違うことはままあること。
さて、『熊は、いない』というタイトルには、脅しになんか乗らないぞ!という監督の気概を感じます。本作の完成後、逮捕され収監され、その間、ハンストもしたパナヒ監督ですが、その後釈放され、ご夫婦で外国にも旅に出られました。様々な圧力にもめげず、これからもキレのいい映画を作り続けてくださることを願うばかりです。(咲)



◆日本での公開に当たって、突如、ジャファル・パナヒ監督よりメッセージが到着!(9/15)
http://youtu.be/mb0S1ULB6mc


第79回ヴェネチア国際映画祭 審査員特別賞受賞
第23回東京フィルメックス オープニング作品 『ノー・ベアーズ(英題)』のタイトルで上映

2022年/イラン/ペルシア語・アゼリー語・トルコ語/107分/カラー/ビスタ/5.1ch
日本語字幕:大西公子/字幕監修:ショーレ・ゴルパリアン
配給:アンプラグド
公式サイト:http://unpfilm.com/nobears/
★2023年9月15日(金)より 新宿武蔵野館ほか全国順次公開



posted by sakiko at 18:46| Comment(0) | イラン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

私の大嫌いな弟へ 原題:Frère et sœur  英語題:Brother and Sister

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©︎ 2022 Why Not Productions - Arte France Cinéma


監督:アルノー・デプレシャン(『そして僕は恋をする』『クリスマス・ストーリー』)
出演:マリオン・コティヤール(『エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜』『アネット』)、メルヴィル・プポー(『わたしはロランス』『それでも私は生きていく』)、ゴルシフテ・ファラハニ(『パターソン』)、パトリック・ティムシット(『歓楽通り』)

姉アリスは有名な舞台女優、弟ルイは詩人。アリスは演出家の夫との間に一人息子がいる。ルイは人里離れた山中で妻フォニアと暮らしている。二人は憎みあい、もう長い間顔も合わせていない。ずっと売れてなかった弟に栄光が訪れた時からだったかもしれない。そんな二人が両親の突然の事故によって会わなければならなくなる。二人がお互いを受け入れる日は来るのだろうか・・・

原題『Frère et sœur』は、単純に、弟と姉。同じ両親のもと、姉と弟として生まれ、小さいときには一緒に仲良く育ったのに、それぞれの道を歩み、何が原因かわからないけれど疎遠になってしまった・・・ 両親が亡くなり、久しぶりに顔を合わせた二人の、どこかぎこちない思い。ラスト、姉アリスが吹っ切れたように、飛んでいった場所に驚かされました。(とてもエキゾチックな国です。ぜひ劇場でご確認を!)
私にとっては、弟ルイのユダヤ人の妻役としてイラン出身のゴルシフテ・ファラハニが登場したのが、なにより嬉しかったのですが、デプレシャン監督は、フランス人の家族だけの話に閉じ込めないために、ゴルシフテのほかにも、ルーマニアのコスミナ・ストラタンを、アリスに憧れる女優の卵として起用しています。また、ルイの親友であるユダヤ人のズウィ役であるパトリック・ティムシットは、実際アルジェリア系ユダヤ人。美しいシナゴーグでのズウィとルイの場面が印象に残りました。(咲)



2022年/フランス/110分/シネマスコープ/5.1ch
字幕:磯尚太郎、字幕監修:松岡葉子
配給:ムヴィオラ
公式サイト:https://moviola.jp/brother_sister
★2023年9月15日(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国順次ロードショー


★アルノー・デプレシャン監督来日&各地で新作登壇イベント★

■東京 Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下
➀9月15日(金) 19:00の回 上映後
登壇者:アルノー・デプレシャン監督、大九明子さん(映画監督)
進行:金原由佳さん(映画ジャーナリスト)

②9月16日(土) 19:00の回 上映後
登壇者:アルノー・デプレシャン監督
*ご来場の皆様からの質問を承る予定です。
詳細:https://www.bunkamura.co.jp/topics/cinema/7778.html

■愛知 伏見ミリオン座
日時:9/18(月祝)10:45の回 上映後
詳細:https://eiga.starcat.co.jp/

■大阪 シネリーブル梅田
日時:9/18(月祝)14:00の回 上映後
詳細:https://ttcg.jp/cinelibre_umeda/

■京都 京都シネマ
日時:9/20(水)19:00の回 上映後
詳細:https://www.kyotocinema.jp/



■アルノー・デプレシャン監督レトロスペクティブ開催情報■

第5回映画批評月間 フランス映画の現在をめぐって スペシャルエディション アルノー・デプレシャンとともに
期間:9/8(金)〜9/29(金)
会場:東京日仏学院 エスパス・イマージュ
公式HP:https://www.institutfrancais.jp/tokyo/agenda/cinema20230908/


第45回ぴあフィルムフェスティバル アルノー・デプレシャン監督特集
期間:9/16(土)〜9/22(金)
会場:国立映画アーカイブ
公式HP:https://pff.jp/45th/lineup/arnaud-desplechin.html
posted by sakiko at 18:25| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

マルセル・マルソー 沈黙のアート  原題:L'art du Silence 英題:The Art of Silence

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監督:マウリッツィウス・スタークル・ドルクス

パントマイムの神様マルセル・マルソーの知られざる事実
ボロボロのシルクハットと赤いバラ、白塗りメイクで世界に知られる道化師“ビップ”(BIP)。言葉をひと言も発せず、身ぶりと表情だけですべてを表現するマルソーの舞台。
それは、第二次世界大戦中、レジスタンスに身を投じ、ユダヤ人孤児300人余をスイスに逃がしたことに端を発している。危険な状況下で声を発さないコミュニケーション方法は、戦後独自の芸術表現に昇華されたのだ。
ユダヤ人精肉店に生まれ、アウシュヴィッツで父を殺されたマルセル・マルソー。
マルセルと共にレジスタンスに参加した従弟、彼の遺志を継ぐ家族、ろうの世界的パントマイマー、クリストフ・シュタークルら、マルソーを知る人物が登場し、彼の魅力を語る。

マルセル・マルソーのことを知ったのは、2021年8月27日に日本公開された劇映画『沈黙のレジスタンス ユダヤ孤児を救った芸術家』を通じてのことでした。
フランスでもユダヤ人迫害が激化し、ユダヤ人であるマルセルはフランス風にマルソーと名乗り、ユダヤ人孤児を助けたのです。戦後は、世界各地でパントマイム・パフォーマンスを披露したマルセルですが、どんな思いでいたのでしょう・・・

マルセルの娘さんが語っていた中で印象に残ったことがあります。
「ペルシアのシャーに会いに行くというので、ペルシアの猫(フランス語で猫はChatシャ)かと思ったら、王様(シャー)だったという場面。パフレヴィー2世が映り、その後、王制反対の人たちの姿。マルセルは、反体制派の支援もしたとありました。調べてみたら、マルセルは、1978年にテヘランのthe Roudaki Hall(革命後The Vahdat Hallに名前を変えています)で公演していることがわかりました。、私が1978年5月に初めてイランを訪れた時に、そのルーダキーホールの近くで食事したことがあり、ちょっと縁を感じた次第です。(咲)


2022年/スイス=ドイツ/独語・英語・仏語/カラー&モノクロ/81分
日本版字幕:松岡葉子
後援:一般社団法人日本パントマイム協会
配給:パンドラ
公式サイト:http://www.pan-dora.co.jp/marceau/
★2023年9月16日(土)シアター・イメージフォーラムにて公開



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燃えあがる女性記者たち 原題:Writing With Fire

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(C)BLACK TICKET FILMS. ALL RIGHTS RESERVED


監督、編集、製作:リントゥ・トーマス&スシュミト・ゴーシュ

山形国際ドキュメンタリー映画祭2021年のアジア千波万波部門で、『燃え上がる記者たち』のタイトルで上映され、市民賞を受賞した作品。

2002年にウッタル・プラデーシュ州チトラクート地区にて、カースト外の不可触民である「ダリト」の女性たちによって週刊の地方新聞として創刊された「カバル・ラハリヤ」(ニュースの波)。
2016年、独自のビデオチャンネルを立ち上げ、デジタル配信へと移行する。
主要メディアが扱わない事件も取り上げ、スマホを駆使して取材に奮闘する女性記者たちの姿を追う。

女性ばかりで取材して作っているなんて、シネジャと共通するところがあるわぁと親近感を持って見ていました。が、大きく違うのは「いのちがけ」なところ。特に誰もしなかったことに踏み出した「初めの一歩」にはどんなに勇気をふりしぼったことか。国も違えば社会背景も違うので比べられませんが、志の高さに感嘆、あの熱意に共感します。彼女たちを応援したくなりました。
丁寧に取材し、発信していくことで少しずつ社会が変わり、あとに続く若い人が現れます。キラキラした目で「先輩たちのようになりたい」という後輩たち。若くないけれど、私もそうなりたい。(白)


山形国際ドキュメンタリー映画祭2021年 『燃え上がる記者たち』(インド)Q&A
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/500697660.html

2021年/インド/ドキュメンタリー/ヒンディー語/DCP/93分
日本語字幕:福永 詩乃
配給:きろくびと
公式サイト:https://writingwithfire.jp/
★2023年9月16日(土)より渋谷ユーロ・スペースほか全国順次公開.




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ダンサー イン Paris(原題:En corps)

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監督:セドリック・クラピッシュ
脚本:セドリック・クラピッシュ サンティアゴ・アミゴレーナ
撮影:アレクシ・カビルシーヌ
音楽:ホフェッシュ・シェクター
出演:マリオン・バルボー(エリーズ)、ホフェッシュ・シェクター(本人)、ドゥニ・ポダリデス(エリーズの父)、ミュリエル・ロバン(ジョジアーヌ)、ピオ・マルマイ(ロイック)、フランソワ・シヴィル(ヤン)

パリ・オペラ座で踊るエリーズは、エトワールになることを目標にしている。だが、夢の実現を目前にしながら、公演中に恋人の裏切りを目にしてジャンプの着地に失敗、足首を痛めてしまった。医師からこれまでのようには踊れなくなると告げられたエリーズは、新しい生き方を探さなくてはならない。バレエ一筋できた自分は他に何ができるだろうか。
早くにバレエをやめ、女優を目指しているサブリナに誘われ、ブリュターニュへと旅立った。才能あるアーティストが集まるレジデンスで、料理係のアシスタントを始める。そこでオーナーのジョジアーヌ、ホフェッシュ・シェクター率いるカンパニーの面々に出会った。コンテンポラリーダンスが生まれていくのを目撃し、心が動く。練習に誘われたエリーズはクラシックバレエとはまた違う、自分を解放する創造的なダンスに新たな喜びを見出していく。

エリーズを演じるマリオン・バルボーは実際にパリ・オペラ座の団員。クラシック作品だけではなく、オペラとバレエを一体化させた新しい試みにも参加しているそうです。ロイック役のピオ・マルロイは『おかえり、ブルゴーニュへ』で、マッサージでエリーズを癒すヤンのフランソワ・シヴィルは『パリのどこかで、あなたと』で、それぞれクラビッシュ監督とタッグ。クラビッシュ監督作品には、どれもあれこれ問題をかかえた人々が登場しますが、そのストーリーの進み方や解決の方法がいつも優しいのです。背景となるフランスの風景も行ってのんびりしたくなるようなところばかり。
フランス映画祭で監督に取材したことがありますが、ミニコミの私たちにもほんとに丁寧に接してくださって、お人柄が作品に出るのだなぁと思いましたっけ。(白)


2022年/フランス、ベルギー/カラー/シネスコ/118分
配給:アルバトロス・フィルム、セテラ・インターナショナル
(C)2022 / CE QUI ME MEUT MOTION PICTURE STUDIOCANAL FRANCE 2 CINEMA Photo : EMMANUELLE JACOBSON ROQUES
https://www.dancerinparis.com/
★2023年9月15日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 05:34| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

グランツーリスモ(原題:GRAN TURISMO)

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監督:ニール・ブロムカンプ
脚本:ザック・ベイリン、ジェイソン・ホール
撮影:ジャック・ジューフレ
出演:デヴィッド・ハーバー(ジャック・ソルター)、オーランド・ブルーム(ダニー・ムーア)、アーチー・マデクウィ(ヤン・マーデンボロー) 平岳大

“グランツーリスモ”は本物そっくりのレーシング体験のできる世界的大ヒットゲーム。ヤンはこのゲームに夢中で、本物のレーシングドライバーになりたいと夢見ている。父は本物とゲームは違うとあきれ、堅実な仕事をしろと言う。
実際にゲームプレイヤーたちをプロレーサーとして育成する動きがある。プレイヤーたちの可能性を信じるダニー・ムーアによって“GTアカデミー”が設立されていた。ヤンはゲームで好タイムを出し、“GTアカデミー”の予選会に参加することができた。各地から集まったプレイヤーたちは厳しい選抜をクリアし、ヤンを含め高い能力を持つ者だけが残った。
指導にあたるのは、ダニー・ムーアが見込んだ元レーサーのジャック・ソルター。リセットなどできず、事故れば死ぬか大けがの世界を骨身にしみて知っているジャックは、ゲーマーなど通用するわけがないと思っている。ヤンたちはリアルなレースの過酷さを体験していく。

このドライビングシミュレーターゲームは、日本で1997年にPlayStation®用ソフトとして誕生し、全世界でシリーズ累計9,000万本以上※を売り上げ大ヒット中です。運転席に座り、動きや振動を体感できます(見ただけでやったことはないですが)。実話を元にした作品というのに驚きますよね。夢に挑戦して叶えて行く様子を見ると、ひとごとでもなんだか嬉しくなります。
車の仕組みにも整備にも興味があり、熱心なヤンは頭角を現していきます。成功へとまっすぐ進むわけではないのが、また面白いところ。胸躍らせたり、落ち込んだり、車の加速や事故に身体がぎゅっと縮んだりします。名前の順はデヴィッド・ハーバー、オーランド・ブルームら先輩の後ですが、ヤン役のアーチー・マデクウィは、応援したくなる一途さがありました。
日本映画でもゲームプレイヤーがレーシングドライバーになる作品があります。昨年公開の野村周平主演『ALIVEHOON アライブフーン』(2022/下山天監督)こちらもわくわくします。どうぞ。(白)


2023年/アメリカ、日本/カラー/シネスコ/134分
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

https://www.gt-movie.jp/
★2023年9月15日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 05:31| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

キリング・オブ・ケネス・チェンバレン(原題:The Killing of Kenneth Chamberlain)

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監督・脚本・プロデューサー:デヴィッド・ミデル
製作総指揮:モーガン・フリーマン
出演:フランキー・フェイソン(ケネス・チェンバレン)、エンリコ・ナターレ(ロッシ)、アニカ・ノニ・ローズ(キャンディス・ウェイド)※声のみ出演

2011年11月19日午前5時22分。双極性障害(躁うつ病)を患う黒人の元海兵隊員ケネス・チェンバレンは医療用通報装置を誤作動してしまった。すぐに担当者から連絡があり、間違いで大丈夫だと告げたが、まもなく規定通りに警官が到着した。ケネスは緊急事態ではなく誤作動であると伝えたにも関わらず、警官は確認のためドアを開けてくれと繰り返す。ケネスは家のドアを開けるのを頑強に拒み、警官は不信感を抱いて問い詰め始めた。若い白人警官が差別的な言葉で罵倒し始め、ケネスは恐怖にかられていく。警官到着から90分後の午前7時、ケネスはドアを壊して入ってきた警官に撃たれ、死亡した。

モーガン・フリーマンが『インビクタス』のプロデューサー<ロリ・マクレアリー>とタッグを組み、製作総指揮を担った作品。早朝のできごとで、アパートの住人も離れて住むケネスの姪も集まってきて警官を制止するのに、拒否されていらだつ警官たちはなんとしてもドアを開けようとします。断固としてドアを開けないケネスには、以前にイヤな思いをしたという理由があったようですが、きちんと説明されません。3人の警官のうち、一人はベテラン、一人は若く怒りっぽく危なっかしい感じです。もう一人は元教師で、制止しても経験が浅さから取り合ってもらえません。
犯罪者を検挙するのが警官の仕事とはいえ、憶測だけで病人相手にこの執拗さはなんなんでしょう。悪いほうへ悪いほうへとそれていってしまう展開を、観客は固唾をのんで見守るしかありません。実話を元にしているというのに、ぞわっとします。始まりから最後までリアルタイムで進行するサスペンスに心臓がバクバクしました。二度とこんなことが起きませんように。(白)


2019年/アメリカ/カラー/シネスコ/83分
配給:AMGエンタテインメント
(C)2020 KC Productions, LLC. All Rights Reserved
http://kokc-movie.jp/
★2023年9月15日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 05:28| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

沈黙の自叙伝   原題:Autobiography

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(C)2022. Kawan Kawan Media, In Vivo Films, Pōtocol, Staron Film, Cinematografica, NiKo Film


監督:マクバル・ムバラク
出演:ケビン・アルディロワ、アースウェンディ・ベニング・サワラ、スワラ・ユスフ・マハルディカ、ルクマン・サルディ

インドネシアの田舎町。18歳の青年ラキブは、刑務所に入っている父に代わって、大邸宅の管理をしている。主の元将軍プルナが突然帰ってくる。プルナは地元の首長選挙に立候補し、ラキブは選挙運動を手伝うことになる。プルナの忠実なアシスタントとして働くラキブ。いつしかプルナはラキブに対して親身に接し、父親代わりの存在になっていく・・・

軍事独裁体制下を思わせる張り詰めた緊張感がありますが、実は、設定は2017年。
1990年に生まれたマクバル・ムバラク監督。軍事独裁政権下で公務員として働く父の、国家に対する忠誠心を見て育ち、「忠誠を尽くすことが人を立派にすることだ」と思っていたが、大人になるにつれ疑問がわいてきたという。父のように接してくるプルナをラキブは受け入れることができるのか・・・ ねっとりとしたインドネシアの田舎町の空気管の中で繰り広げられる物語にぞくぞく。
自叙伝とは、抑圧されてきたインドネシア社会の歴史。権利を持つ者と、権利を奪われている者。父なる独裁者に忠誠心を持つ者と、持てない者・・・ いつ立場が変わるかもしれない危うい社会で、人はどう立ち回ればいいのか・・・ (咲)


東京フィルメックス『自叙伝』アクバル・ムバラク監督Q&A
https://filmex.jp/2022/news/daily-news/11-01autobiography_qa

沈黙の自叙伝 アクバル・ムバラク監督_R.jpg
アクバル・ムバラク監督(東京フィルメックス2022にて)撮影:宮崎暁美


ヴェネチア映画祭オリゾンティ部門で上映。国際映画批評家連盟賞受賞。
第 23 回東京フィルメックス コンペティション部門最優秀作品賞(上映時タイトル『自叙伝』)

2022年/インドネシア、ポーランド、ドイツ、シンガポール、フランス、フィリピン、カタール/インドネシア語/115分
配給:ムーリンプロダクション
公式サイト:https://jijoden-film.com/
★2023年9月16日(土)より東京 シアター・イメージフォーラムを皮切りに全国順次公開



posted by sakiko at 01:50| Comment(0) | インドネシア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年09月09日

“敵”の子どもたち   原題:Children of the Enemy

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監督・脚本:ゴルキ・グラセル・ミューラー
プロデューサー:クリストフ・ヘネル、エリカ・マルムグレン

娘がISIS(イスラム国)メンバーと結婚し7人の子を遺し亡くなった。
スウェーデンのミュージシャン、パトリシオ・ガルヴェスは、シリアにいる孫7人を救うため命がけの旅に出た・・・

パトリシオ・ガルヴェスの娘、アマンダは元妻と共にイスラム教徒に改宗。スウェーデンで最も悪名高いISISメンバーと結婚し、2014年にカリフ国家建設に加わるためシリアに密航してしまう。帰国の説得は上手くいかなかった。
2019年、ISIS掃討作戦で夫婦共に殺され、1歳から8歳の7人の幼い子どもたちが遺された。「せめて孫は救いたい」と、パトリシオは危険を顧みず孫の救出を決意する。
救助団体からの連絡で孫がシリア北東部のアルホル難民キャンプにいることが判明。スーツケースにおもちゃや靴を詰め込みシリアとの国境近くのイラクの都市へと向かう。
SNSでは「敵の子どもたちを連れて帰るな」など大量の批判があった。スウェーデン当局も解放に前向きでない中、パトリシオは孫を救い出すため自らシリア入りする。

娘アマンダや、その母である元妻がどういう動機や経緯でイスラムに改宗したのかは描かれていないのですが、ヨーロッパの各国で、改宗してISISに参加した人たちが数多くいます。ISISが掃討され、シリアに取り残された欧州出身者やその子どもたちの多くが行き場を失っていると聞きます。
「産めよ増やせよ」で7人の子を産んだアマンダ。幼い子たちがスマホでクルアーンを聴いたり、「アッラーアクバル」と叫んだりしていて、やめさせたいと思う一方、「娘が愛した神を尊重してほしい」とつぶやくパトリシオの姿に涙が出ました。
祖父母に養育権はなく、孫たちは身元を隠して、普通のスウェーデンの子どもとして養父母のもとで育てられているとのこと。子どもには罪はないけれど、いつか両親のことをあばかれて非難されるようなことがないことを願うばかりです。(咲)


2021年/スウェーデン・デンマーク・カタール/ドキュメンタリー/97分
配給:ユナイテッドピープル
公式サイト https://unitedpeople.jp/coe/
★2023年9月16日(土)シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー


posted by sakiko at 14:02| Comment(0) | スウェーデン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年09月08日

鉛筆と銃 長倉洋海の眸(め)

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©2023 アフガニスタン山の学校支援の会 ルミエール・プラス

監督・撮影:河邑厚徳
出演:長倉洋海
ナレーション:山根基世

好きだという思いが伝われば、英雄も子供も笑顔で心を開いてくれる

鋭いカメラアイで世界を見つめ、愛をこめて人間を写してきた写真家・長倉洋海。
被写体との運命的な出会い、そして捉えた決定的瞬間。
長倉洋海自身が語る、彼の辿ってきた人生。


大学で探検部に属していた長倉洋海は、ベトナム戦争の報道写真に憧れ報道カメラマンを目指し通信社に入社したが、既にベトナム戦争は終結。思うような機会に恵まれず、1980年、3年で退社しフリーに。
南アフリカのローデシアを皮切りに、ソマリア、レバノン、アフガニスタン等を巡り、1年後に帰国。歴史を動かすような1枚は撮れなかった。
1982年、紛争中の中南米エルサルバドルで当時3歳の少女・ヘスースと出会い、その後、何度も通う。撮られる人と撮る人の人生が交差するという長倉独自のスタイルが確立する。

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©2023 アフガニスタン山の学校支援の会 ルミエール・プラス

1983年、侵攻したソ連軍に抵抗するアフガニスタンの若き司令官マスードの存在を知り、彼を通して戦争を描きたいと決意し会いに行く。100日間イスラム戦士(ムジャヒディン)と共に行動し、二人は強い信頼関係をつくりあげていく。

2001年9月9日、マスードはアメリカ同時多発テロの2日前にイスラム過激派により暗殺される。マスードの1周忌に初めてパンシール渓谷の山の学校を訪れた長倉は、マスードが資材を提供して作った小さな学校を村の人たちが守り続けていると聞き、心を動かされる。長倉は、マスードの教育への想いを受け継ぎたいとNGO「アフガニスタン山の学校支援の会」を設立して支援を決意。机や椅子、パソコンなどを提供する。
数年前に拠点を母の暮らす故郷・釧路に移したが、今もアフガニスタン山の学校の子供たちの成長を見守り続けている・・・

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©2023 アフガニスタン山の学校支援の会 ルミエール・プラス









『鉛筆と銃 長倉洋海の眸(め)』 320.jpg
『鉛筆と銃 長倉洋海の眸(め)』 河邑厚徳監督インタビュー
http://cineja-film-report.seesaa.net/article/500684865.html


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『鉛筆と銃 長倉洋海の眸(め)』  長倉洋海さんインタビュー
http://cineja-film-report.seesaa.net/article/500696810.html



2023年/日本/90分
製作・著作:アフガニスタン山の学校支援の会、ルミエール・プラス
配給宣伝:アルミード
公式サイト:https://enpitsutojyuu.com/
★2023年9月12日(火)〜9月24日(日)東京都写真美術館ホールほかにて公開


東京都写真美術館ホール <トークイベント ゲスト一覧>
9/13(水)18:50〜の回 稲垣えみ子(元新聞記者)
9/14(木)18:50〜の回 大竹英洋(写真家)
9/15(金)18:50〜の回 南研子(熱帯森林保護団体)
9/16(土)15:30〜の回 梯久美子(ノンフィクション作家)
9/18(月・祝)15:30〜の回 柳田邦男(ノンフィクション作家)
9/20(水)18:50〜の回 角幡唯介(探検家・作家)
9/21(木)18:50〜の回 山根基世(アナウンサー)
9/22(金)18:50〜の回 石川梵(写真家・映画監督)
9/23(土・祝)18:00〜の回 飯沢耕太郎(写真評論家)




posted by sakiko at 01:09| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年09月03日

6月0日 アイヒマンが処刑された日    原題:JUNE ZERO

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(C)THE OVEN FILM PRODUCTION LIMITED PARTERNSHIP


監督:ジェイク・パルトロウ
脚本:トム・ショヴァル、ジェイク・パルトロウ
出演:ノアム・オヴァディア、 ツァヒ・グラッド 、ヨアブ・レビ、トム・ハジ、アミ・スモラチク、ジョイ・リーガー

第二次世界大戦下、ユダヤ人を強制収容所に送り込み抹殺する計画立案者だったナチス・ドイツのアドルフ・アイヒマン。戦争捕虜収容所から脱走しアルゼンチンに潜伏していたが、1960年にイスラエル秘密諜報機関(モサド)によりイスラエルに極秘連行された。裁判の末、61年12月に死刑判決が下り、翌年5月31日から6月1日の真夜中《イスラエル国家が死刑を行使する唯一の時間》の“6月0日”、絞首刑に処された。遺体は火葬され、遺灰はイスラエル海域外に撒かれた。
実は、人口の9割がユダヤ教徒とイスラム教徒であるイスラエルでは律法により火葬が禁止されており、火葬設備が存在しない。では、誰が、どうやってアイヒマンの遺体を火葬したのか? 本作は、遺体処理の極秘プロジェクトに巻き込まれた人々の物語。

リビアから一家で移民してきたダヴィッド少年。父に連れられて町はずれの鉄工所へ向かう。ゼブコ社長が炉の中に入って掃除ができる小柄な少年を探していたのだ。折しも、ゼブコの戦友で刑務官のハイムが、アウシュビッツで使われたトプフ商会の小型焼却炉の設計図片手に、極秘プロジェクトを持ち込んでくる。燃やすのはアイヒマンだという・・・

火葬を禁止された国で、火葬に処したという話にゾクゾク。そして、イスラエル国家が1948年に建国されてから、10年ちょっと過ぎた時代の状況に興味津々でした。
ダヴィッドの家族は、1年前にリビアから移民してきたユダヤ人。父親はアラビア語で息子たちに話しかけていて、ヘブライ語はたどたどしく、ダヴィッドが手助けしています。父親は戦争中、リビアでナチスの収容所に入れられています。
ダヴィッドがゼブコ社長に連れられてイエメン人の工場に行きますが、イスラエル建国後にイエメンから移民してきた人たちでしょう。
アイヒマンの看守は、モロッコ出身のユダヤ人。「ホロコーストを経験している東欧系のユダヤ人は、感情的になるからナチスの警備には当たらせない。中東と北アフリカ出身ならOK」と語っています。
イスラエル建国後、各地のユダヤ人が移民しましたが、その中には、「イスラエルはいいところだ」と先に移民した人から誘われて来たものの、中東・北アフリカ出身のユダヤ人は、ヨーロッパ系のユダヤ人から下に見られる傾向があって、騙されたと感じた人も多いようです。(北朝鮮への帰国事業に似ている??)
アイヒマンの髪を整えにきた床屋は、イスラエル中央部の町クファル・サバ生まれのトルコ人。3世代目なので、オスマン帝国時代から住むトルコ人。
アイヒマンの犯罪を立証するチームに参加していたポーランド出身のミハは、アイヒマンの裁判後、初めて自身が暮らしていたゲットーを訪れます。ゲットーツアーのトライアルで、参加者たちに聖書を燃やすことが仕事だったと苦し気に語ります。一方で、自分たちの苦しみを忘れないことを強制してほしくないという思いもよぎるのです。
アイヒマンの処刑を通じて、様々な立場の人たちの思いを考えさせられました。(咲)


2022年/イスラエル・アメリカ/ヘブライ語/105分/ヨーロピアン・ビスタ/カラー
日本語字幕:齋藤敦子
配給:東京テアトル
宣伝:ロングライド
公式サイト:http://rokugatsuzeronichi.com/
★2023年9月8日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国公開

posted by sakiko at 11:34| Comment(0) | イスラエル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年09月01日

ヒンターラント(原題:Hinterland)

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監督・脚本:ステファン・ルツォヴォツキー「ヒトラーの贋札」
撮影:ベネディクト・ノイエンフェルス
出演:ムラタン・ムスル(ペーター・ペルク)、リヴ・リサ・フリース(テレーザ・ケルナー博士)、マックス・フォン・デル・グローベン(パウル・セヴェリン)、マルク・リンパッハ(ヴィクトア・レンナー)、マルガレーテ・ティーゼル(管理人)

第一次世界大戦が終結、ロシアの捕虜収容所から帰還したオーストリアの兵士たち。ドナウ川をさかのぼり、故郷のウィーンを目指している。力尽きた者は川に捨てられた。たどり着いた故郷は敗戦のため荒廃、皇帝は国外へ逃亡し、共和国となっていた。元刑事のペーター・ペルク中尉は、帰る家も家族も失った戦友に自分の住所を渡す。戻った家は空で、長い留守の間妻は生活に追われ、田舎へ移っていた。
拷問の跡がある死体が発見された。ペーターのメモを持っていたため、警察が容疑者として連行する。その後も痛めつけられた死体が次々と見つかり、帰還兵だったことが共通していた。敏腕刑事だったペーターは捜査に協力することになる。それは自分の心の闇と向き合うことでもあった。

まるでダークファンタジーのような画面は、全編ブルーバックで撮影したのだそうです。背景が何もないところで俳優は演技をし、後で描き込まれた背景と合成するわけですね。陰惨な物語なのに、どのシーンも絵画的で美しいのです。冒頭、死にゆく若い兵士を仲間が取り囲む場面は一人一人の表情が光に浮かび上がり、レンブラントの名画”夜警”のようでした。
皇帝や国のために戦い、ロシアに抑留されて戻ったペーターは、アカと呼ばれて蔑まれます。戦友たちは帰る家がありません。消息不明の兄を探し続けるセヴェリン警部、死体を検分するテレーザ・ケルナー博士は「戦争が終わり、共和制になってから女性でも医師の仕事ができるようになった」といいます。様々な立場の人々たちの人にスポットが当たっていくにつれ、不可解な殺人事件の真相解明も進んでいきます。
「Hinterland」とは「後背地」。港湾や都市などの背後にある土地のことをいうのだそうです。この映画でのヒンターラント(後背地)とは何を指していたのでしょうか?宿題。(白)


舞台は、1918年に第一次世界大戦が終結して、2年程経った1920年頃のウィーン。
地獄のような抑留生活を耐え抜いて帰ってきた故郷は変わり果てていました。
1270年以来この地を支配してきたハプスブルク家。戦争前には、オーストリア、ハンガリー、チェコ、スロバキア、スロベニア、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ウクライナの一部、ポーランドの一部を領土とする巨大な帝国となっていました。フランツ・ヨーゼフも約70年間皇帝として君臨していました。帝国が崩壊し共和国になりましたが、国土はほぼ今のオーストリアだけと大幅に縮小。超大国の威信を持って戦地に赴いた人たちにとって、生きて帰ったものの複雑な思いがあったことと思います。
東から逃げてきたユダヤ人が「イスラエル再建を」のビラを撒いていて、「彼らを養うために戦ったのか」とののしる声も聞こえ、ロマノフ王朝が崩壊しソ連となった影響も垣間見られます。
それでも、戦前から変わらないウィーンも映画に映し出されています。
『第三の男』で有名な観覧車のあるプラーター公園、白と赤の路面電車(1897年より電化車両)、シュテファン大聖堂とその脇にある大鐘プンマリン・・・
このプンマリンは、1683年にオスマン帝国軍が敗退した時に残していった大砲などの武器を溶かして鋳造したもの。トルコ人の両親のもとにウィーンで生まれた名優ムラタン・ムスルが主役ペーターとして、この大鐘のそばで殺人鬼を追い詰めるのですから、なんとも面白い!
ウィーンのカフェ文化も、オスマン帝国軍が敗退時に置いていったコーヒー豆を使って、取り残されたトルコ人がカフェを開業したのが始まりといわれています。
ジャズの生演奏を聴きながら女医のテレーザとカフェでくつろぐペーター。「戦前は、ワルツとオペレッタだけだった」と語っています。趣向は変わってもカフェ文化は健在。
それにしても、今も世界の各地で領土を巡って続く戦争・・・ 権力者の思惑で犠牲になるのは、戦争などには加担したくない庶民。むなしいです。(咲)



2021年/オーストリア、ルクセンブルク/カラー/シネスコ/99分
配給:クロックワークス
(C)FreibeuterFilm / Amour Fou Luxembourg 2021
https://klockworx-v.com/hinterland/
★2023年9月8日(金)ロードショー

posted by shiraishi at 00:00| Comment(0) | オーストリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする