2023年07月30日

ミャンマー・ダイアリーズ

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監督:ミャンマー・フィルム・コレクティブ
A film by Myanmar Film Collective
匿名のミャンマー人監督たちによる制作

東南アジアの国、ミャンマー。民主化にむけて変革が続いたこの10年、市民は自由と発展への希望を抱き始めていた。2021年2月1日、軍が再び国の支配に乗り出し、反発した民衆による大規模な抗議デモが全国各地で勃発。人々は抵抗のシンボルとして三本指を掲げて軍政に反対する声をあげるも、一人の少女の死を皮切りに軍の弾圧行為は激化し、人々の自由と平穏な暮らしは崩れていく……。

ミャンマーに軍事政権復活!のニュースに驚いてからもう2年半になります。信心深く穏やかなミャンマーの方々の話を聞くにつけ、一度訪ねてみたい国でしたがすっかり様変わりしてしまいました。古くは中国の天安門事件、香港の雨傘運動を思い起こします。そうこうしているうちにソ連とウクライナの戦争突入で、ニュースは新しいことで上書きされ、アジアの政変はあまり報道されなくなってしまいました。けれども地元の人にとっては、戦々恐々の日々は変わらず続いています。監視の目をくぐりぬけて市民が撮影した映像は、SNSで拡散されました。シームレスにつながれて生々しく当時を伝えます。
戦争も、暮らしの激変も気づかないように静かにやってきて、いきなり違う明日になってしまうことを忘れてはいけません。離れていても何かできることはないか、この作品からヒントを見つけてください、(白)


●2022年第72回ベルリン国際映画祭パノラマ部門にてドキュメンタリー賞を受賞

2022年/オランダ・ミャンマー・ノルウェー合作/カラー/DCP/70分/ミャンマー語
配給:E.x.N
© The Myanmar Film Collective
https://www.myanmar-diaries.com/#modal
★2023年8月5日(土)ポレポレ東中野ほか全国順次公開
posted by shiraishi at 22:42| Comment(0) | オランダ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ジェーンとシャルロット(原題:Jane par Charlotte)

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監督・脚本:シャルロット・ゲンズブール
撮影:アドリアン・ベルトール
出演:ジェーン・バーキン、シャルロット・ゲンズブール、ジョー・アタル

「ママのことをもっと知りたい」ジェーン・バーキンとセルジュ・ゲンズブールの娘、シャルロットは母に向けてカメラを回し続ける。初めて作るドキュメンタリーで、力の入ったシャルロットはつい踏み込んだ質問をしてしまった。母は泣きだして撮影は続けられなくなり、2年の時が流れて行く。2人で映像を観た後、撮影を再開、素顔の母と娘の姿がフィルムに残された。

試写を観た後の7月16日、ジェーン・バーキンが自宅で亡くなったことを知りました。1964年、18歳で映画音楽を手掛けていたジョン・バリーと結婚して娘ケイトをもうけた後、離婚。1968年フランスに移り、セルジュ・ゲンズブールと出逢います。娘シャルロットが生まれました。12年間の事実婚の後別れて、1981年にジャック・ドワイヨンと結婚。1982年に娘ルー・ドワイヨンが生まれますが、後離婚。3人のパートナーとそれぞれの娘が一人ずつ、76歳で亡くなるまで自分を飾らず、素直に生きた方なのだろうと想像します。
映画の冒頭は来日したときの映像です。東日本大震災のときは、早い段階でメッセージを発表、クラウドファンディングをして来日チャリティコンサートを開催していました。17年に再来日、20年にもコンサート開催の予定でしたが、コロナ禍で中止の憂き目にあいました。中ほどで、シャルロットが父親セルジュから受け継いだ古い家に、ジェーンを案内します。自分には入る資格はないと思っていた、と遺された品々を懐かしそうに見る姿。ものには思い出がついているので捨てられない、片付けができない、というのに親近感がわいてきます。
飛行機でエルメスの社長と偶然隣席になり、片付けや整理が苦手な彼女のために使い勝手の良いバッグを作ると約束して、エルメスで生みだされたのが「バーキン」。今も大人気のバッグです。数百万円のバッグは買えませんが、素顔の彼女の映像は、映画館で観ることができます。この映像を残して逝くなんて。R.I.P.(白)


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シャルロット・ゲンズブールの母ジェーン・バーキンへの思いに溢れた映画に感無量でした。その直後に、ジェーン・バーキンさんが亡くなられたとの報。この映画を作っておいてよかったと、シャルロットさんも胸がしめつけられる思いではないでしょうか。

私がジェーン・バーキンさんのことを知ったのは、2010年のフランス映画祭の団長として来日された時のことでした。イギリス人のジェーンさんがフランス語を学ぶ人へのメッセージを問われた時の答えがとても素敵でした。
フォトセッションの時に、足元に置いたバッグを係の方が取り下げようとしたのを、カメラマンの方たちから「それは置いておいて!」と声がかかりました。エルメスのバーキンでした。私には初めて知ることばかりでしたが、飾り気のないジェーン・バーキンさんがとても素敵で、すっかりファンになったのでした。
ジェーンさんの発言をぜひ下記レポートでお読みください。(咲)

フランンス映画祭2010 オープニングイベントレポート
http://www.cinemajournal.net/special/2010/fffj2010b/index.html

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ユニフランス代表 ハッチョンドさん(左)とジェーン・バーキン団長(右) 足元の鞄に注目!
撮影:景山咲子

2021年/フランス/カラー/シネスコ/92分
配給:リアリーライクフィルムズ
(C)2021 NOLITA CINEMA – DEADLY VALENTINE PUBLISHING / ReallyLikeFilms
https://www.reallylikefilms.com/janeandcharlotte
★2023年8月4日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 20:28| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

インスペクション ここで生きる   原題:The Inspection

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(C)2022 Oorah Productions LLC.All Rights Reserved.

監督・脚本:エレガンス・ブラットン
出演:ジェレミー・ポープ、ガブリエル・ユニオン、ラウル・カスティーヨ、マコール・ロンバルディ、アーロン・ドミンゲス、ボキーム・ウッドバイン

イラク戦争長期化の兆しが見え始めた2005年のアメリカ。フレンチは16歳の時にゲイであることから母に追い出され、10年間ホームレス生活を送っていた。生きるために海兵隊への入隊を決意し、出生証明書を貰いに10年ぶりに母を訪ねる。花束を持って現れた息子の入隊を母は猛反対する。だが、フレンチの決意は固かった。やがて3か月に及ぶ訓練が始まる。初日から教官の過酷なしごきに遭う。ある日、フレンチがゲイであることが判明し、教官からのしごきはさらに激しくなる。軍隊では、ジェンダーや信仰に対する理解などないのだ。仲間たちからも陰湿な嫌がらせを受けるようになるが、フレンチはめげずに理不尽な差別や偏見に立ち向かっていく。彼の信念は、徐々に周囲の意識を変えていく・・・

エレガンス・ブラットン監督自身の経験に基づく物語。クィアであり黒人であることから受けた様々な辛い体験。そんな中で、自分を奮い立たせ、周りの意識まで変えることの大変さ。意思の強さで世の中を変えていくことが出来るのを本作は教えてくれます。
海兵隊採用試験で優秀な成績だった監督が、最初に採用担当者から提示されたのは、諜報の仕事。密告者は嫌だと断り、次に従軍記者を薦められるも、自己主張が強いので向いていないと断り、次に言われたのが、映像記録の仕事。それが結局、フィルムメーカーとしてのキャリアの始まりでした。その才能を見出したのが、革新的な作品を次々と送り出してきた映画会社A24。
ゲイであることをなかなか受け入れてくれなかったお母さまは映画製作中に亡くなられたとのこと。完成した本作をお母さまがご覧になれば、いかに監督がお母さまを愛していたかを知ることができたのにと残念です。(咲)


2022年/アメリカ/カラー/シネマスコープ/5.1ch/95分/R15+
日本語字幕:松浦美奈
配給:ハピネットファントム・スタジオ
公式サイト:http://happinet-phantom.com/inspection/
★2023年8月4日(金)TOHO シネマズ シャンテ、新宿武蔵野館ほか全国公開



posted by sakiko at 16:16| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

風のゆくえ

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©映画「風のゆくえ」製作委員会

監督・脚本:石井慎吾
出演:嶺豪一 斎藤千晃 豊満亮 小林由來 武田真悟 仙洞田志織 神野陽子 米元信太郎 針ヶ谷功明

「あなたの笑顔が大好きでした」と女性が語りかけるスマホ場面を見つめる真司。つき合っていた茉耶に、唐突に別れを告げてしまったのだ。嫌いになった訳じゃない。幼い時に親兄弟と別れ養護施設で育った真司には、一人のほうが楽なだけなのだ。別れ話の二日後、二人は以前から予約していた台北への旅に出る。二人での最後の旅行を楽しもうとする真司だったが・・・

別れようと言われ、台北旅行をキャンセルしようという茉耶に、絶対楽しいから行こうという真司。なんと、無神経な男! ずっと孤独だった真司を、初めて好きになってくれた女性なのに、振った上に一緒に旅行に行こうなんて。 茉耶は、まだ未練があって、「3年後、お互い何も変わってなかったら結婚しよ」と言います。さて、その結果は?
今、一緒にいるのがしんどいだけなら、同棲(半同棲?)生活を解消して、時々会えばいいだけなのにと思ってしまいます。
この作品、石井慎吾監督自身の経験をもとに脚本を書き起こしたもの。一人の青年が自己肯定感の低さから 別れを選び妄想に囚われていた自分を振り切り立ち上がっていく物語。人との繋がりを大事にすること、そして、自分のことも肯定して生きていくことの大切さを感じさせてくれます。
さて、お別れ記念の台北旅行、それはそれで楽しかったのかなと。台北への旅も監督の実体験だそうです。(咲)


2022 年/日本/カラー/ DCP/ビスタ/74 分
配給:ムービー・アクト・プロジェクト
公式サイト:https://mikata-ent.com/movie/1573/
★2023 年 8 月 5 日 ( 土 ) より新宿 K ’ s cinema ほか全国順次公開

posted by sakiko at 13:07| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年07月29日

邯鄲の夢 三重芝居と四人の役者

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監督・脚本:三天屋多嘉雄(みそらやたかお)
舞台監修:沢竜二
撮影:川越康平
出演:須賀貴匡(沢田冴之介)、松林慎司(三津葉銀次)、三天屋多嘉雄(万家徳治朗)、沢竜二(沢田座長)

脚本家の沢田冴之介は仕事に行き詰まり、意に沿わない直しを強いられて鬱積した日々を過ごしていた。
冴之介が書きたいのはとある大衆演劇一座の後継者争いの話。座長の息子だった冴之介は、父親の後を継いで自分が座長になりたい。弟子の三津葉銀次は、実力も人気もある座員で、冴之介に対して強い嫉妬心を抱いている。冴之介は銀次を尊敬してはいたが、同時に妬ましく思っていた。
ある日、真正女澤正劇(しんしょうおんなさわしょうげき)の稽古中、銀次の刃先が冴之介の片目を突いてしまう。冴之介は役者を続けられなくなり、銀次は一座から出ざるをえなくなった。2

監督・脚本・主演の三天屋多嘉雄さんは、沢竜二さんの最後のお弟子さん。伝統芸能を絶やすまいと、家族のような劇団のつながり、師匠と弟子の愛情に、今どきの事情もからめて1本に作り上げました。映画の中では、一番よくしゃべる元気な徳治朗役です。
元となったのは「真正女澤正劇」という人情剣劇。ふだん目にする大衆演劇のようにわかりやすいかと言えば、過去と現在、夢と現実が入り組んでいます。三重芝居というそうで、これを舞台にかけたときはどうなるのでしょう?
「女澤正」とは、沢竜二さんのお母様酒井マサ子さんが、新国劇の人気役者・澤田正二郎さんからいただいた別名です。沢竜二さんは楽屋で生まれて、4歳からお母様と一緒に舞台に立っていました。87歳になられたそうですが、しゃんとして声もよく通ります。以前時代劇に出演されていたのを拝見したことがありますが、舞台での剣さばきを観たのは初めて。いつか沢一門の大衆演劇をちゃんと通しで観たいものです。(白)


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初日舞台挨拶(オフィシャル画像)

三天屋監督コメント
「この映画で少しでも前向きになれたり、ちょっとでも元気になってもらえたらいいなと思っております。もし夢が壊れたら、もし夢が消えたら、そのときはもう一度、夢を見ればいい。命はひとつでおしまいですが、夢が消えても死にません。
わたしたちのまわりには必ずどこかに夢は落っこちているものです。わたしはその夢を、明日もあさっても、これからもずっと拾い続けていきたい。そう思っています。沢先生にそう教わりました。くよくよするのは最後。ガックリするのも最後。お互いに夢を拾って生きていきましょう!」

「邯鄲の夢」(かんたんのゆめ)
中国の物語「枕中記」の中の話。悩める青年盧生(ろせい)が、趙(ちょう)の都邯鄲(かんたん)で道士 呂翁と出会い、呂翁が持っていた夢が叶うという不思議な枕を借りてうたた寝をした。その間に50余年の栄華を極めた一生の夢を見る。長い間眠ったと思っていたが、寝る前に鍋にかけたお粥がまだ煮えていないほどの短い時間であった。「一炊の夢」ともいう。人の世の栄枯盛衰はそれほど儚いものであるということ。能の「邯鄲」もこれから。

2022年/日本/カラー/130分
配給:ギグリーボックス
(C)明治産業・グッドラックスリー
https://kantannoyume-movie.com/
★2023年7月28日(金)よりTOHO シネマズ 日本橋、大阪ステーションシティシネマにて公開中

posted by shiraishi at 23:16| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年07月28日

シモーヌ フランスに最も愛された政治家(原題:Simone, le voyage du siecle)

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監督・脚本:オリビエ・ダアン
撮影:マニュエル・ダコッセ
音楽:オルヴォン・ヤコブ
出演:エルザ・ジルベルスタイン(シモーヌ・ヴェイユ)、

フランス人に最も敬愛される女性政治家シモーヌ・ヴェイユ。子どもの頃から、よく学び、よく働いて自立した女性になることが大切と考えていた。母親の教えは彼女の芯となる。進学を目の前に、家族ともどもナチスに捕まって収容所に送られてしまった。父と兄は別の収容所へと別れ、母と姉と3人で支えあうが、母は帰国前に亡くなり。生き残ったのは姉2人とシモーヌだけだった。
過酷な体験は、政治を目指した彼女の血肉となり、結婚し子どもを持った後も政界で目覚ましい活躍をする。中でもカトリック人口の多いフランスで、かつ男性議員の多い国会で、初めて妊娠中絶法の成立に成功する。女性で初めて欧州議会議長に就任、女性や弱者のために戦い続けた。

シモーヌ・ヴェイユという方をこの映画で初めて知りました。男性のヤジや怒号に一歩も引かず、筋道たてて冷静に主張する彼女のなんとカッコいいこと!
ファッションにこだわりがあったということから、本作の中でも品よく、洗練された服装(衣装デザイン:ジジ・ルパージュ)で登場します。女性たちの旗手となる実行力と、威厳もありながら親しみやすさも感じるシモーヌを演じたエルザ・ジルベルスタイン。彼女の演技力に負うところが大きいと思いますが、圧倒的な存在感。実際にこういう政治家がもっともっと出てきてほしい。(白)


シモーヌ・ヴェイユの名前を知ったのは、2022年12月2日に日本で公開されたフランス映画『あのこと』を観たときのことでした。フランスで中絶が違法だった1960年代に、壮絶な思いで秘密裏に中絶をした女性の物語でした。いったいいつフランスで中絶が合法になったのかを調べたところ、1974年のジスカール・デスタン大統領時代に保健相になったユダヤ系の女性政治家シモーヌ・ヴェイユの奔走によって、1975年に中絶が合法化されたと知りました。
この度、本作を観て、シモーヌの活躍は中絶合法化だけでなかったことがわかりました。
1979年には女性初の欧州議会議長に選出され、大半が男性である理事たちの猛反対の中で、「女性の権利委員会」を設置しています。女性だけではなく、移民やエイズ患者、刑務所の囚人など弱き者たちの人権のためにも闘ったシモーヌ。
ユダヤである為に、ナチスが台頭した時代には不幸な目にあいましたが、一家はフランス文化を愛しフランスに溶け込んだ同化ユダヤ人で、父親はフランスは私たちを裏切らないと信じていました。ナチスが、ユダヤの血が流れているというだけで、信条は無視してユダヤを抹殺しようとしたことがよくわかるエピソードでした。
過去から学び、未来に繋ぐことを目指したシモーヌ。まさに政治家の鏡です。(咲)


シモーヌ・ヴェイユ(政治家 1927年7月13日 - 2017年6月30日)という名前を1970年代に聞いたかもしれないけど覚えていない。しかし、同年代の友人は高校時代の1970年頃、友だち(男子)からシモーヌ・ヴェイユのことを聞き、彼女のことを書いた本を読んだと言っていた。意識が高かった人は当時から知っていたようだ。ちなみに、今回、シモーヌ・ヴェイユ(1909年2月3日 - 1943年8月24日)という哲学者の方もいたということも知った。しかし、私にとってはフランスの女性解放の先駆者といえばボーボワールくらいしか知らなかった。彼女はシモーヌ・ド・ボーヴォワールということで、フランスでは3人のシモーヌが活躍していたんですね。
この映画の冒頭、1974年のフランスの議会、中絶法が審議された場でシモーヌの「喜んで中絶する女性はいません。中絶が悲劇だと確信するには女性に聞けば充分です」という名演説。大多数の男性議員の反対の中「中絶法」が可決され、後に彼女の名前を冠してヴェイユ法と呼ばれるようになったと知った。
アメリカにはルース・ベイダー・ギンズバーグさんがいたように、フランスにもシモーヌ・ヴェイユという方がいたのですね。日本で言えば市川房枝さんですかね。いろいろな国で、こういう先駆的な女性たちの不屈の闘いがあって、現在の女性たちの地位があるということを忘れてはならないと思う。それでも女性たちの状況はまだ不安定。
日本では人工妊娠中絶手術は、どんな条件でも実施できるわけではありません。そして、中絶に「配偶者」同意が必要なのは、日本を含めて11か国&地域のみ。産むか産まないかを決める権利は女性の基本的人権であるという「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関するに関する健康と権利)」が、1994年の国連国際人口開発会議で提唱されているのに、いまだに女性本人が自分で判断し、決断できるようにはなっていないというのが驚き。
中絶手術の考え方は国によって違うけど、アメリカでは州によっても異なるというし、人工妊娠中絶が憲法上認められていたのに、中絶を全面禁止する州が出てきて、次期大統領選の需要な争点にもなりそうというニュースを聞くと、本当に歴史が逆行していると感じる。フランスではそういうことはないのだろうか(暁)。


2021年/フランス/カラー/シネスコ/140分
配給:アットエンタテインメント
(C)2020 - MARVELOUS PRODUCTIONS - FRANCE 2 CINEMA - FRANCE 3 CINEMA
https://simonemoviejp.com/
★2023年7月28日(金)より全国順次公開中



posted by shiraishi at 14:01| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年07月27日

コンサート・フォー・ジョージ    原題:Concert for George

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©️2018 Oops Publishing, Limited Under exclusive license to Craft Recordings

監督:デヴィッド・リーランド
製作:レイ・クーパー、オリヴィア・ハリスン、ジョン・カーメン
製作総指揮:オリヴィア・ハリスン、ブライアン・ロイランス
音楽監督:エリック・クラプトン
コンサート・オーディオ・プロデュース:ジェフ・リン
撮影監督:クリス・メンゲス
編集:クレア・ファーガソン

出演:ダニー・ハリスン、エリック・クラプトン、ポール・マッカートニー、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ、ジェフ・リン、リンゴ・スター、ジョー・ブラウン、サム・ブラウン、ジュールズ・ホランド、ビリー・プレストン、レイ・クーパー、アヌーシュカ・シャンカール、ラヴィ・シャンカール、ザ・マウンティーズ(モンティ・パイソン)

2001年11月29日、58歳で世を去ったジョージ・ハリスン。そのちょうど1年後の2002年11月29日、ジョージの音楽と人生を称えるトリビュート・コンサート「コンサート・フォー・ジョージ」が、ジョージの妻オリビアと、長年の友人であるエリック・クラプトンによって開催された。会場は、ロンドン・ロイヤル・アルバート・ホール。
音楽監督のエリック・クラプトンが中心となり、息子のダニー・ハリスン、エリックの呼びかけに応えた親しい友人たちが集まり、ジョージが遺した名曲や愛した曲を披露。
歴史的一夜を収めた映像が、ジョージ生誕80周年の今年、初めて劇場の大スクリーンに蘇る!

インド式セレモニーで始まり、インドと縁の深かったジョージを思い出さずにいられません。
しばらくして、赤地に花柄の派手なジャケットのリンゴ・スターが登場。その後、リンゴがポール・マッカートニーを呼び込みます。ビートルズ時代が懐かしい。でも、二人が離れて立っているところが、微妙。演奏される曲は、懐かしいものばかりなのに、すみません、ミュージシャンの方たちには疎くて・・・
そして、盛り上がったところで、最後にインドのシタール奏者ラヴィ・シャンカールとアヌーシュカ・シャンカール率いるインド音楽の一行が登壇。ジョージ・ハリスンを偲び、称えるコンサートの最後を飾りました。夢のような一夜を、体感させていただきました。(咲)


2003/2022年/アメリカ/約102分  
配給:カルチャヴィル
公式サイト:https://www.culture-ville.jp/concertforgeorge
★2023年7月28日(金)TOHOシネマズ シャンテほか 全国順次公開
posted by sakiko at 11:29| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年07月26日

続 戦車闘争 [戦争]を伝え続けるということ

劇場公開日:2023年8月5日(土)~18日(金)まで横浜シネマジャック&ベティで公開
7月29日(土)~8月11日(金)まで、前作『戦車闘争』もリバイバル上映されます
タイムテーブルはこちら
続戦車闘争.jpg
(C)戦車闘争の映画をつくる会/バーズフィルム/シネマエンジェル

報道人たちが見た“もう一つの戦車闘争”

公式HP https://zokusensha-tousou.com/

監督・プロデューサー:小池和洋
製作:瀧本智恵
企画協力:八木欣也 牛田直美
撮影:小山田勝治
録音:小関裕次郎 山川邦顕
整音:藤林繁
編集:清野英樹
音楽:平井千絵
ナレーション:武藤十夢
写真提供:石川文洋 松村明 大河原雅彦 初瀬昭 取違孝昭 江成常夫

戦争に加担するのはごめんだ!
そう信じた人々が戦車をとめた

ベトナム戦争末期の1972年、神奈川県相模市の米軍施設で修理し、戦地に送るため輸送されていたアメリカ軍の戦車を100日間、一般市民が止めた。その知られざる事件にスポットを当て、デモ参加者、機動隊、戦車を輸送した運送会社の社員といった当事者や専門家らの証言で構成されたドキュメンタリー『戦車闘争』(2020年)。この作品の続編が『続 戦車闘争』。
今回は新聞記者、カメラマンなど、主にマスコミ関係者から証言を集めた他、ジャーナリストの斎藤貴男や劇作家・演出家の鴻上尚史らにもインタビューを敢行。闘争の歴史的意義や背景、報道のあり方やその後の影響まで多面的にまとめている。さらに、前作製作後に発掘された秘蔵映像も多数収録し、当時の空気を再現している。

米軍の相模総合補給廠内で修理された戦車が戦地に輸送されることが明らかになり、戦車を積んだトレーラーを市民や議員が横浜・村雨橋で阻止。積載した車両は補給廠に引き返し、結果として、戦場へ送られる戦車を100日間止めた。
世界各地で戦争が絶えない現状の中、50年前(1972)にそういうことがあったということを伝えていくべきだと思う。前作では参加した人達に取材し、『続 戦車闘争』では、これを伝えたマスコミやカメラマン、ジャーナリストたちに取材している。
「戦争に加担したくない」という人々の思いは、今も変わらないと思うので、それを忘れずに伝えてほしい(暁)。


公式HP
2023年製作/日本 85分
製作会社・配給:バーズフィルム

『戦車闘争』『続 戦車闘争』連続上映
http://cineja4bestfilm.seesaa.net/article/500131428.html
posted by akemi at 13:34| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年07月22日

ルードボーイ トロージャン・レコーズの物語  原題:Rudeboy The Story of Trojan Records

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監督:ニコラス・ジャック・デイヴィス 
撮影:ジョナス・モーテンセン 
編集:クリス・デュベーン
出演:ロイ・エリス、リー・スクラッチ・ペリー、デリック・モーガン、ポーリーン・ブラック、ドン・レッツ、ケン・ブース、トゥーツ・ヒバート、ザ・パイオニアーズ、マルシア・グリフィス、バニー・リー、キング・エドワース、ダンディ・リヴィングストン、ロイド・コクソン、ネヴィル・ステイプル、デイヴ・バーカー

レゲエの誕生、そして全世界の音楽シーンに大きな影響を与えた伝説のレーベル「トロージャン・レコーズ」の栄光と転落を描いたドキュメンタリー。

1956年ジャマイカ、西キングストン地区。デューク・リードが開業した酒場トレジャー・アイルの名物は“トロージャン”と名付けられた巨大なサウンド・システム。アメリカ産のR&Bやブギのレコードのリズムにあわせ、人々が集い踊るダンスフロアと化していた。やがてリードは地元のシンガーやバンドを集め、オリジナルのレコードを吹き込む。デリック・モーガンが唄う「Lover Boy」は大ヒットを記録。その後も多くのシンガーを輩出し、ジャマイカ発のR&Bは独特の進化を遂げ、スカやロックステディ、そしてレゲエが誕生した。
一方、ジャマイカ独立を機に多くのジャマイカ人が移住したイギリスに、アジア系(インド系)ジャマイカ人の実業家リー・ゴプサルがいた。ジャマイカで誕生したレゲエに新たなビジネスのチャンスを見出し、1967年に英国初のレゲエ専門の音楽レーベル「トロージャン・レコーズ」を立ち上げる。イギリスに渡った“トロージャン”は多くのジャマイカ人に愛されただけでなく、労働者階級の白人ユースカルチャーとも共鳴。1970年4月26日ウェンブリー・スタジアムで開催されたレゲエ・フェスティバルには一万人を超える黒人と白人の若者で満席となり、レゲエは人種を超えた大きなムーブメントを巻き起こす。しかしやがてトロージャン・レコーズの事業は傾き始め、倒産の危機を迎えてしまうのである・・・。

音楽シーンに詳しくない私は、レゲエというと、ジャマイカ発祥で、そこからアメリカに渡って広がったというイメージでした。本作を観て、ジャマイカ独立後、イギリスに移住したジャマイカの人たちによって、イギリスでさらなる発展を遂げたことを知りました。
当時の映像と再現ドラマが、とても自然に組み合わされていて、再現ドラマも当時の映像が残っていたものなのかと思うほど。1950年代後半から1960年代という時代の色がとてもよく出ていて、郷愁を覚えました。(咲)



2018年/イギリス/英語/85分/カラー/DCP
日本語字幕:上條葉月
配給・宣伝:ダゲレオ出版(イメージフォーラム・フィルム・シリーズ) 
公式サイト:http://www.imageforum.co.jp/rudeboy/
★2023年7月29日(土)よりシアター・イメージフォーラム他順次公開




posted by sakiko at 21:27| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年07月21日

セフレの品格(プライド) 初恋

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監督・脚本:城定秀夫
原作:湊よりこ「セフレの品格」(双葉社 JOUR COMICS)
撮影:池田圭
音楽:林魏堂
主題歌:前野健太「ああ…」
出演:行平あい佳(森村抄子)、青柳翔(北田一樹)、片山萌美(新堂華江)、新納慎也(栗山)、川瀬陽太、こころ、伊藤克信、寺島まゆみ

森村抄子36歳、バツ2。派遣社員として働き、一人娘と暮らすシングルマザー。高校の同窓会で初恋の相手だった北田一樹と再会し、帰りにホテルに誘われる。快感に酔う抄子に、一樹の提案はデートも嫉妬もなしの「セフレ」だった。割り切れない思いの抄子だったが、同級生で友人の華江もセフレの一人と知る。さらに会社の上司の栗山にも言い寄られ、身辺あわただしくなる。

原作は連載12年。シリーズ累計430万部(紙+電子)を突破する大ヒットレディースコミックシリーズ。試写の後、探して読んでみました。絵も綺麗、ドロドロの不倫でもなく、続きが気になるストーリーでした。待望の映画化でファンが気になるのは、キャストでしょう。
行平あい佳さんは城定秀夫監督の『私の奴隷になりなさい』(2018)第2、第3章で毎熊哲也さんに調教される色っぽい人妻を演じていました。今度のヒロインは、楚々としていますが男性の言いなりにはならず、言い返すこともでき、さすがバツ2の元気がある人。一樹役の青柳翔さんは、原作より温かみあって身近にいそうなタイプ。華やかな友人華江ともセフレな彼には、それなりの理由もありました。第2弾も続けて観てね。
城定秀夫監督、官能作品から高校生向けのライトノベルまで、ジャンル問わずどんな映画も面白く撮れる方なんですねぇ。(白)


2022年/日本/カラー/99分
配給:日活
(C)2023日活
https://sfriends-pride-movie.com/
★2023年7月21日(金)
第2弾『セフレの品格(プライド) 決意』は8月4日(金)より。
2部作連続公開


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裸足になって  原題:Houria

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監督:脚本:ムニア・メドゥール
製作総指揮:トロイ・コッツァ―
撮影:レオ・ルフェーブル
出演:リナ・クードリ(フーリア)、ラシダ・ブラクニ(サブリナ)、ナディア・カシ(ハリマ)、アミラ・イルザ・ドゥアウダ(ソニア)、メイエム・ムジカネ(アメル)、ザーラ・ドゥモンディ(サナ)、サラ・グエンドゥス(ナスラ)

北アフリカのアルジェリア。内戦後の傷の癒えない世の中で、バレエダンサーを目指すフーリアは男に階段から突き落とされて大怪我をし、前のように踊れないばかりか、口がきけなくなる。将来の夢を断たれた失意の中、フーリアはリハビリ施設でろう者の女性たちに出会った。手話で自由に会話する彼女たちに「ダンスを教えて」と請われ、今の自分ができることに気がつく。これまでとは違う、心のままに身体を動かす喜びを知り、一緒にダンスを作り出していく。

2019年製作の『パピチャ 未来へのランウェイ』リナ・クードリのムニア・メドゥール監督が、再びリナ・クードリを主演に送り出した新作です。舞台は内戦の傷がいまだ疼いているアルジェリア。事故というより、元兵士による傷害事件。悪くしたら死んでいたかもしれない、と思ってしまうのですが、警察が本気で捜査しているとは思えません。内戦後の事情もあり人心も殺伐とした時代だったのでしょう。
ヒロインのフーリアは、もう一度生きる力を取り戻していきます。傷ついたアルジェリアという国が、立ち上がる姿を重ねているようです。それも、男性優位の国で自由を制限されている弱い立場の女性たちが力を合わせて。声を上げられないろう者の人たちも、自分の想いを表明し、伝えることができます。
製作総指揮のトロイ・コッツァ―は『コーダ あいのうた』で、耳の聞こえない父親・フランク役を演じ、ろう者の俳優として初めてアカデミー助演男優賞を受賞しました。手話がもう一つの言語として、認識され、広まっていきますように。(白)


2022年/フランス・アルジェリア合作/カラー/シネスコ/99分
配給:ギャガ
https://gaga.ne.jp/hadashi0721/
★2023年7月21日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 23:39| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『少年』(1983)デジタルリマスター版 日本劇場初公開

『少年』 原題:小畢的故事/英語タイトル:Growing Up
台湾巨匠傑作選2023 にて上映
2023年7月22日(土) ~ 9月8日(金) 新宿K’s cinemaほか順次開催!

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©1983 Central Motion Picture Corporation & Evergreen Film Company / ©2023 Taiwan Film and Audiovisual Institute

2023年の“台湾巨匠傑作選”は、「台湾映画新発見!」というテーマで、台湾ニューシネマのルーツとエンターテインメント映画の系譜を紐解く。その中でも台湾ニューシネマの原点といわれる『少年』は注目作。

『少年』は、朱天文(チュー・ティエンウェン)原作・脚本、侯孝賢(ホウ・シャオシェン)の製作。監督は、侯孝賢監督の盟友であり、撮影で侯孝賢監督を支えた陳坤厚(チェン・クンホウ)。原作は、新聞に掲載された朱天文の短編小説「小畢的故事(シャオビーの物語)」。これはふたりの出会いとなった作品で、これ以降、侯監督全作品の脚本は朱天文が担当することになり、多くの作品を生み出してゆく。
日本での劇場公開は初。

監督・撮影:陳坤厚(チェン・クンホウ)
原作・脚本:朱天文(チュー・ティエンウェン)
脚本:侯孝賢(ホウ・シャオシェン)、丁亞民(ディン・ヤーミン)、許淑真(シュー・シューチェン)
エグゼクティブプロデューサー:明驥(ミン・チー)
プロデューサー:侯孝賢(ホウ・シャオシェン)、徐国良(シュー・クオリャン)
編集:廖慶松(リャオ・チンソン)
音楽:李宗盛(ジョナサン・リー)
キャスト
母 シウイン(秀英)… 張純芳(チャン・チュンファン)
父 ビー・ターシュン(畢大順)… 崔福生(ツイ・フーシェン)
アジャ(畢楚嘉=ビー・チュージャ/小畢=シャオビー)… 顔正国(イェン・チェンクオ/幼年)、鄭傳文(ジョン・ジュアンウェン/小学生)、鈕承澤(ニウ・チェンザー/中学生)、庹宗華(トゥオ・ツォンホア/成年)

少年シャオビーの成長を、同級生でもある隣家の少女の目線で描いた作品で、当時の子供たちの姿を活き活きと描いている。『風櫃の少年』『童年往事 時の流れ』に連なる作品。

1960年代の台湾北部の川沿いのまち淡水。未婚の母シウインは、5歳の息子アジャ(小畢=シャオビー)/畢楚嘉(ビー・チュージャ)の将来のため、年の離れた外省人の公務員のビー・ターシュンと見合い結婚する。ターシュンはアジャを温かく見守り、実の息子のように可愛がる。やがてアジャの弟が生まれ、弟が二人に。中学に上がったアジャは悪友たちとともに問題を起こしてばかりの日々に。どんなにひどい悪さをしても、ターシュンはアジャのことをかばってくれたが、ある日、不注意から弟の命を危険にさらし、さらに追い打ちをかけるように喧嘩騒ぎを起こし、とうとうターシュンを怒らせてしまった。シウインにとってターシュンとの結婚は、アジャに良い教育を受けさせるためのものだった。しかし、ターシュンに対してアジャが放った言葉は、結婚当初からの変わることのないターシュンの優しさに恩義を感じていたシウインをひどく傷つけ、やがてシウインは自ら命を絶ってしまう。
最愛の妻を亡くし悲しみに暮れるターシュンは、息子たちを連れて淡水を去った。やがてアジャはターシュンの反対を押し切って空軍学校へ進む。シウインがターシュンに告げたただひとつの結婚の条件は、アジャを大学に進学させることだったので、ターシュンは妻との約束を守りたかったが、アジャにとっては自堕落な自分と決別し人生をやり直すと決めた道だった。
数年後、小学校の同窓会が開かれ、懐かしい顔ぶれのなかに誇らしげに空軍の制服を着たアジャの姿があった。

『少年』は、封切り後瞬く間に大ヒットとなり、さらにこの年の金馬奨では先に紹介した最優秀脚本賞をはじめ、最優秀監督賞、最優秀編集賞を受賞し、台湾ニューシネマの夜明けを代表する記念碑的な作品となった。

陳坤厚(チェン・クンホウ)監督紹介 HPより
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©1983 Central Motion Picture Corporation & Evergreen Film Company / ©2023 Taiwan Film and Audiovisual Institute

1939年台中生まれ。1962年に中央電影公司に入社後、叔父である名カメラマンのライ・チェンイン(賴成英)の助手として撮影を学び、以後、当時健康写実路線映画の代表監督リー・シン(李行)作品の撮影を担当し、1977年には『生きている限り僕は負けない(汪洋中的一條船)』で第15回金馬奨最優秀撮影賞を受賞。同じくリー・シン監督のスタッフだったホウ・シャオシェン(侯孝賢)と1979年より一緒に映画製作を始め、アイドルを起用した青春恋愛映画を立て続けに発表し、大ヒットとなる。その後1982年にホウ・シャオシェン、シュー・シューチェン(許淑真)とともに映画製作会社「萬年青」を設立、気鋭の作家チュー・ティエンウェン(朱天文)の短編小説『小畢的故事』をチェンがメガホンを執り映画化した。大ヒットとなった自身の長編5作目『少年』は第20回金馬奨で最優秀劇映画賞、最優秀監督賞、最優秀脚色賞を受賞し、台湾ニューシネマの幕開けを告げる作品のひとつとなった。その後1983年には『坊やの人形』の撮影を担当し、その後『冬冬の夏休み』までホウ・シャオシェンとの共作が続く。1985年からは独自の道を歩み始め、台湾ニューシネマを代表する監督のひとりとして『最想念的季節』(85)『流浪少年路』(86)『桂花小路(桂花巷)』(87)などを発表。

1983年/94分/台湾/カラー  
★第20回金馬奨最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀脚本賞受賞

トークショー 
【日時】7/23(日) 10:00の回『少年』上映後
【登壇者】樋口裕子さん(翻訳家)

『台湾巨匠傑作選2023』公式HP https://taiwan-kyosho2023.com/
posted by akemi at 20:51| Comment(0) | 台湾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

プレジデント   原題:President

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2021 © Final Cut for Real, Louverture Films & Sant & Usant


監督:カミラ・ニールセン  

1980年の独立以来、37年間にわたりジンバブエ共和国の政権を支配していたムガベ大統領がクーデターにより失脚。後継者として同国第3代大統領に就任した与党、ジンバブエ・アフリカ民族同盟愛国戦線(ZANU-PF党)の代表ムナンガグワは翌2018年に行われる大統領選において「平和で信用できる公正な選挙を行う」と口では公言する。
対する野党、民主変革運動(MDC連合)はモーガン・ツァンギライ党首のもと選挙に備えるが、大統領選の4ヶ月前にツァンギライ党首が癌で死去。MDC連合の新党首として若きカリスマ、40歳の弁護士ネルソン・チャミサが任命される。チャミサは、リチウム、プラチナ、金、ダイヤモンドなど60種類もの鉱物資源があるにもかかわらず、国民は貧困に喘いでいるジンバブエの国を変えようと動く。
変わらぬ支配を目論む与党と、長年の腐敗に疲弊し、国内政治体制の変革を求める民衆に後押しされる野党。多くの国内外のマスコミや国民が注目するなか、国の未来を決める投票が始まるが……。

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協議なしに投票用紙が印刷され、緊急会議を求める記者会見でのチャミサ
2021 © Final Cut for Real, Louverture Films & Sant & Usant

大統領選挙に出馬予定だった野党党首が選挙4か月前に急逝。新党首に選ばれた40歳のネルソン・チャミサが、ぐいぐい民衆を惹きつけていき、こんな指導者が我が国にもほしい!と思いました。
選挙で票の数がなかなか発表されず、アメリカの大統領選挙を思い出しました。「票を盗まれた」「不正があった」と騒動になるところが、民主主義国家であるはずのアメリカも、新興国ジンバブエも同じなのが面白いです。遠いジンバブエの話に留まらず、私たちに身近な問題を描いた映画だと思いました。
デンマーク出身の女性監督カミラ・ニールセンが、ジンバブエに長年住んでいるデンマーク人の作家兼ジャーナリストのピーター・ティゲセンとの縁で、前作『Democrats(民主主義者)』(2014年)を製作。本作がジンバブエでの2作目。ジンバブエ3部作の最後はジンバブエの女性たちに焦点をあてるとのこと。楽しみです。(咲)


1980年の独立以来、37年の長きにわたり、ジンバブエ共和国を支配していたムガベ大統領がクーデターにより失脚。その後、後継者として同国第3代大統領に就任した与党、ジンバブエ・アフリカ民族同盟愛国戦線(ZANU-PF党)の代表ムナンガグワに。豊な資源からの利益は国民に分配されることなく、相変わらず一部の人たちが支配することが続いていたのでしょう。南アフリカに避難民として出る人も多数だったようです。
今回の選挙も、結局茶番なのでしょうか。「平和で信用できる公正な選挙」はいつの日、訪れるでしょう。
ネルソン・チャミサさんという人を追ったドキュメンタリーでしたが、こういう人が出てきて少しづつ変わって行ったらいいなと思いました。でもまだまだ、その日は遠そうです(暁)。


カミラ・ニールソン監督.jpg
カミラ・ニールセン監督にお話を伺いました。 
http://cineja-film-report.seesaa.net/article/500113528.html

2021年/デンマーク・ノルウェー・アメリカ・イギリス合作/115分
配給:NEGA
公式サイト:https://president-jp.net/
★2023年7月28日(金)より池袋シネマ・ロサ、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開



posted by sakiko at 20:25| Comment(0) | アフリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

台湾巨匠傑作選2023

~台湾映画新発見!エンターテインメント映画の系譜~

幻の『少年』原題:小畢的故事 日本劇場初公開!
(原作・脚本:朱天文、製作:侯孝賢、監督:陳坤厚)
2023年7月22日(土) ~ 9月8日(金)新宿K’s cinemaほか順次開催
新宿K’s cinemaのスケジュールはこちら

台湾巨匠傑作選2023メインビジュアル_R_R.jpg
©2023 Taiwan Film and Audiovisual Institute


2023年の“台湾巨匠傑作選”は「台湾映画新発見!」と題して、台湾ニューシネマのルーツとエンターテインメント映画の系譜を紐解く。
台湾ニューシネマの原点である『少年』、世界のアクション映画に影響を与えた胡金銓(キン・フー)映画、話題の台湾ホラー、ファンの多い台湾青春映画、定評のあるドキュメンタリーを特集。
『少年』は、朱天文(チュー・ティエンウェン)原作・脚本、侯孝賢(ホウ・シャオシェン)の製作。監督は侯孝賢監督の盟友でもあり、青春恋愛映画の撮影を担当した陳坤厚(チェン・クンホウ)。原作は、新聞に掲載された朱天文の短編小説「小畢的故事(シャオビーの物語)」。この作品以降、侯孝賢監督の全作品の脚本は朱天文が担当することになる。ふたりの運命の出会いとなった記念碑的な作品。
*『少年』原題:小畢的故事/英語タイトル:Growing Up
http://cinejour2019ikoufilm.seesaa.net/article/500104962.html

ワイヤーアクションを映画に取り入れ、驚異の映像を作り出した胡金銓(キン・フー)監督の『大輪廻』『空山霊雨』も映画祭以外での上映は初。代表作『俠女』『残酷ドラゴン 血斗竜門の宿』『山中傳奇』も同時上映されてキン・フー監督の世界楽しめる。
『アーカイブ・タイム』は、その『空山霊雨』のデジタルリマスター修復版制作の過程を追ったドキュメンタリー映画。キン・フー監督の2作『大輪廻』『空山霊雨』、そして『少年』もデジタルリマスター版が作成されて公開が実現。台湾では台湾ニューシネマ初期作品の多くがデジタル化されている。

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『山中傳奇』[デジタル修復・完全全長版]
© 1979 First Distributors (HK) Ltd. All Rights Reserved. 2016 officially restored by Taiwan Film Institute.


他に「台湾ホラー」と呼ばれる『哭悲 THE SADNESS』『紅い服の少女/第1章・第2章』『返校 言葉が消えた日』。侯孝賢監督の『童年往時 時の流れ』『風櫃の少年』、陳玉勲(チェン・ユィシュン)監督の3部作『熱帯魚』『ラブ ゴーゴー』『1秒先の彼女』、蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)監督の『青春神話』。そして、私の大好きな『親愛なる君へ』『擬音 A FOLEY ARTIST』も上映される。また、黄インイク監督の西表島に生きた台湾人女性のドキュメンタリー『緑の牢獄』も上映される。

上映全27作品 公式サイト
●台湾ニューシネマはここからはじまった 侯孝賢と脚本家・朱天文の初タッグ作品
少年 ※劇場初公開

●世界が注目するキン・フー(胡金銓)アクション
空山霊雨 ※劇場初公開
大輪廻 ※劇場初公開
残酷ドラゴン 血斗竜門の宿
侠女
山中傳奇

●特別企画--映画「少年」「空山霊雨」と一緒に観て欲しい~映画人たちの仕事
アーカイブ・タイム ※劇場初公開
HHH:侯孝賢
あの頃、この時
擬音 A FOLEY ARTIST

●必見の台湾青春ストーリー
風が踊る
風櫃の少年
童年往事 時の流れ
青春神話
熱帯魚 ※最終上映
ラブ ゴーゴー ※最終上映
運命のマッチアップ
親愛なる君へ
1秒先の彼女
アメリカから来た少女

●話題の台湾ホラー
紅い服の少女 第一章 神隠し 
紅い服の少女 第二章 真実
返校 言葉が消えた日
哭悲 THE SADNESS

●珠玉の台湾ドキュメンタリー
日常対話
私たちの青春、台湾
緑の牢獄

配給:オリオフィルムズ
配給協力:トラヴィス
共催:国家電影及視聴文化中心
宣伝:大福

*参照
シネマジャーナルHP 特別記事

『熱帯魚』陳玉勲監督インタビュー
http://www.cinemajournal.net/bn/40/nettaigyo.html

『ラブ ゴーゴー』陳玉勲監督インタビュー
http://cineja-film-report.seesaa.net/article/468765261.html

『緑の牢獄』
黄インイク(黃胤毓/ホァン・インユー)監督インタビュー
http://cineja-film-report.seesaa.net/article/480829168.html

まとめ(暁)
posted by akemi at 11:54| Comment(0) | 台湾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年07月16日

世界のはしっこ、ちいさな教室 原題:Etre Prof

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(C)Winds - France 2 Cinema - Daisy G. Nichols Productions LLC - Chapka - Vendome Production

監督:エミリー・テロン
ナレーション:カリン・ヴィアール
出演:サンドリーヌ・ゾンゴ(ブルキナファソの先生)、スヴェトラーナ・ヴァシレヴァ(シベリアの先生)、タスリマ・アクテル(バングラデシュの先生)

『世界の果ての通学路』(2012年)の製作チームが、今度は「世界の果ての先生」を追ったドキュメンタリー。 

西アフリカ ブルキナファソ
サンドリーヌ・ゾンゴは、首都で夫と二人の娘と暮らしている。識字率の低い国の未来のためにと教員資格を取る。新任教員は、6年間の任期で国の各地の小学校に送られる。サンドリーヌの任地は、首都から遠く離れたまともなインフラもない村。家族と離れて赴任した彼女の最初の仕事は、教室作り・・・

バングラデシュ 北部スナムガンジ地方
タスリマ・アクテルは、結婚を勧める親を説得して高校を卒業し、人道支援団体が主催する学校で教えている。洪水の多い地方で、ボートが教室だ。ある母親が、結婚させるので学校をやめさせるという。なんとか卒業させてほしいと説得する・・・

ロシア連邦 サハ共和国
スヴェトラーナ・ヴァシレヴァは、トナカイのソリに教材や机を載せて、広大なタイガで遊牧生活を送るエヴェンギ族のキャンプを回り、子どもたちに教えている。自身が6歳の時に寄宿学校に入学し、トナカイの牧夫である両親と伝統的な生活を送れなかったことを後悔していて、子どもたちには遊牧の伝統を守ってほしいと願っている・・・


国は違っても、教育の大切さを身に染みて感じている女性たちが、子どもたちにはちゃんとした教育を受けさせたいと奮闘している姿が眩しいです。
アフガニスタンでは、今、女子には教育は必要ないという政策がとられています。
世界には、難民となってまともな教育を受けられない子どもたちも大勢います。
一方で、日本では不登校の子どもたちも数多くいます。教育を受けられることの幸せを感じて、学校に通ってほしいと願うばかりです。(咲)


世界のはしっこに教育を届けようと頑張っている彼女たちの姿に、自分は何をやっているんだと思う。冷房の効いた室内でこの映画を観ながら、我ながら不甲斐ない。世界にはまだまだこういう教育現場で活動を続けている人たちがいる。決して裕福ではないけど、私のできることを探さなくてはと思う(暁)。

2021年/フランス/フランス語・ロシア語・ベンガル語/83分/5.1ch/ビスタ
配給:アルバトロス・フィルム
公式サイト:https://hashikko-movie.com/
★2023年7月21日(金) ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国公開.



posted by sakiko at 19:26| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

古の王子と3つの花   原題:Le pharaon, le sauvage et la maitresse roses

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(C)2022 Nord-Ouest Films-StudioO - Les Productions du Ch'timi - Musee du Louvre - Artemis

監督・脚本:ミッシェル・オスロ(『キリクと魔女』『ディリリとパリの時間旅行』
声の出演:オスカー・ルサージュクレール・ ドゥ・ラリュドゥカン(コメディー・フランセーズ) アイッサ・マイガ

エジプトからフランス・オーヴェルニュ、そしてトルコへ。古代・中世・18世紀のうっとりするような至福の旅。

第1話 ファラオ
クシュ王国の王子はナサルサとの結婚を認めてもらうため、エジプト遠征の旅に出て、神々に祈り祝福されながら戦わずして国々を降伏させ、上下エジプトを統一、最初の黒人ファラオとなり、無事ナサルサと結ばれる。

第2話 美しき野生児
中世フランスの酷薄な城主に追いやられた王子は、地下牢の囚人を逃がした罪で森に追放されるが、数年後美しき野生児として城主に立ち向かい、お金持ちから富を盗み貧しい人々に分け与え囚人の娘と結ばれる

第3話 バラの王女と揚げ菓子の王子
モロッコ王宮を追われた王子はバラの王女の国へと逃げ込み、雇われたお店の揚げ菓子を通じて国から出た事がない王女と出合い、2人は秘密の部屋で密会し、宮殿を抜け出し自分たちで生きていくことを決意する。

古代エジプトを象徴し、永遠の命を示すと言われる“蓮”。
フランス、オーベルニュ地方に自生し昔から薬として用いられてきた“ゲンチアナ”。
世界を代表する産地の一つで美しさと甘い香りで人々を魅了するトルコの“バラ”。
3つの花が、それぞれの王子の物語を彩ります。美しい絵に、うっとりしますが、幸せを掴むまでの道筋は決して安易なものではありません。 いばらの道だからこそ、得られるものも大きい・・・という教訓でしょうか。(咲)


2022年/フランス・ベルギー/カラー/1.89:1/5.1ch/83分
日本語字幕:橋本裕充
配給:チャイルド・フィルム
後援:フランス大使館、アンスティチュ・フランセ
公式サイト:https://child-film.com/inishie/
★2023年7月21日(金)より、YEBISU GARDEN CINEMA、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開




posted by sakiko at 18:36| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ナチスに仕掛けたチェスゲーム  原題:Schachnovelle

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© 2021 WALKER+WORM FILM, DOR FILM, STUDIOCANAL FILM, ARD DEGETO, BAYERISCHER RUNDFUNK

監督:フィリップ・シュテルツェル(『ゲーテの恋~君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」~』)
原案:シュテファン・ツヴァイク(「チェスの話」)
出演:オリヴァー・マスッチ アルブレヒト・シュッへ ビルギット・ミニヒマイアー

ロッテルダム港を出発し、アメリカへと向かう豪華客船。ヨーゼフ・パルトークは久しぶりに再会した妻と船に乗り込む。目も虚ろですっかりやつれ果てたヨーゼフを、妻は「すべて元通りになるわ」と慰める。かつてウィーンで公証人を務めていたヨーゼフは、1938年、ヒトラー率いるドイツがオーストリアを併合した日にナチスに連行され、彼が管理する貴族の預金番号を教えろと迫られた。それを拒絶したため、ヨーゼフはホテルに監禁され、ようやく解放されたのだ。
船内ではチェスの大会が開かれ、世界王者が船の乗客全員と戦っていた。ヨーゼフは、負けが確定していた男にアドバイスし、引き分けまで持ち込む。その男は船のオーナーだった。ヨーゼフはオーナーから王者との一騎打ちを依頼され引き受けるが、実は、駒に触れるのは初めてだった。チェスに強いのには悲しい理由があった。監禁中、書物を所望するも叶わず、やっとの思いで手にしたのがチェスのルールブックだった。白熱の試合とともに衝撃の真実が明かされる・・・

原作はオーストリアの作家、シュテファン・ツヴァイクの「チェスの話」。ザルツブルクでユダヤ人実業家の裕福な家庭で育ったツヴァイクは、1933年にヒトラーがドイツの首相に就任し、オーストリアにも反ユダヤ主義が広まったことから、1934年イギリスへ亡命。その後、ブラジルとアメリカを転々とし、1942年にブラジルのペトロポリスで本作を書いた直後に妻と共に自殺しています。

ナチスがオーストリアに侵攻する直前のウィーンの街の様子を描いた場面が圧巻。
ヨーゼフと妻アンナの乗る車が、道路を埋め尽くしたドイツ支持者の市民たちに阻まれます。友人から危機が迫っていることを告げられても楽観視していたヨーゼフは、ようやく事態を案じて、妻を先に駅に逃がします。自身は事務所に戻って重要書類を焼却。その直後、ナチスに捕まってしまいます。
平穏に暮らしていると、それが何かの事情で崩されることは予期しないものです。今、世界では、外国勢力の侵攻や、国内の政変などで、これまでの暮らしをかき乱される人たちが後を絶ちません。住み慣れた地を離れなければならないのは、ほんとにつらいことです。本作を観ていて、そんなことに思いが至りました。
それにしても、チェスの手をルールブックをつぶさに読んで覚えるとは、すごい記憶力! (咲)


2021年/ドイツ/ドイツ語/112分/カラー/5.1ch/シネマスコープ
字幕翻訳:川岸史
配給:キノフィルムズ 
公式サイト:https://royalgame-movie.jp/
★2023年7月21日(金)より、シネマート新宿ほか全国公開



posted by sakiko at 18:13| Comment(0) | ドイツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年07月15日

ウムイ 芸能の村

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監督:ダニエル・ロペス
撮影:小橋川和弘
音楽:ドゥニ・フォンタナローサ
出演:比嘉優、仲原瑠季、金城平枝、島袋拓也、仲本克成、仲本あい、宮城小寿江、宮城豊子、前田心誠

沖縄本島宜野座村(ぎのざそん)。
人々を守り、悪霊を払う獅子が村を見守っている。パンデミックの渦中にあるこの村で、伝統芸能を守ろうとする様々な世代の人に出会う。
伝統芸能を愛することも、伝統芸能が消える悲しみも、全てを分かち合い、守るために奮闘する彼らの姿を目の当たりにするだろう。

沖縄に移住して20年のスペイン系スイス人の監督によるドキュメンタリー。
琉球芸能が生活の中に息づき、伝統芸能を守りながら生活する人々の姿を追い、伝統芸能を担い、伝え、継承し、守っていく人々の姿を様々描く。「ウムイ」とは、沖縄の言葉で「思い」を意味するという。
有名な「谷茶前節」(タンチャメーブシ)。この踊りを教わるのは保育園の生徒たち。とても可愛らしい保育園児の「タンチャメー」は心が弾む。海辺で舞を踊る人。芸能にはかかせない楽器を弾いたり、笛を吹いたり、作ったりする人の姿も映しだされる。最後、ガジュマルの樹の下で、ミンサー織の模様が入った服を着た二人が躍っていた舞は何だったのだろう。もうちょっと知りたい。
悪霊を払うという獅子が村を回る姿がところどころに出てくるが、最後に獅子作りの様子と、獅子の中に入っていた人の正体が明かされ納得。獅子を作る様子が興味深かった(暁)。

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初日トーク中のダニエル・ロペス監督

ちょっとユーモラスな表情の獅子が村の中をゆったりと見回り、いろいろな芸能に導いてくれる構成が面白いです。父親の形見になった獅子を丁寧に操るのは島袋拓也さん。最初と最後には祈りを捧げて仕舞います。この映画には伝統の舞や音曲を伝える人、教わる人、さらに磨きをかける人たちが登場します。それぞれに胸に抱く「ウムイ」は、ポロリとこぼれたように控えめです。
子どもたちが楽しそうで、歌も踊りも小さなときから身体にしみ込んでいるのねと感じます。野球少年の前田心誠(まえだしせい)君も頼もしく、この芸能は時代につれて変わることはあっても、無くならないのではないでしょうか。
エイサーは力強く、カチャーシーは楽しく賑やかで、三線が鳴ると踊りだしたくなる人たち。訪れたみんなが魅了されるのは、あけっぴろげで懐の深いところかも。歴史の重さや今の憂いも受け止める沖縄。旅行で訪ねて楽しむだけの私は、申し訳ない気持ちがどこかにあります。
昨年沖縄に行ったのに、宜野座村は高速バスで通過しただけでした。次に機会があったら、本島の中ほどのここにも途中下車してみたいです。(白)


沖縄は神の島。屋根の上のシーサーが村を見守る中、着ぐるみの獅子がのどかに村の中を歩いている姿が、なんとも微笑ましいです。練り歩くのでなく、のらりくらりという感じ。
島袋拓也さんがお父さんの遺志を継いで、宜野座村の伝統芸能を伝えていこうとする姿が素敵です。
保育園では、子どもたちに伝統舞踊に興味を持ってもらおうと熱心に教えている保育士さんたちがいます。こういう努力があって、伝統は伝わっていくのだと思いました。
三線や笛の後継者がいないというのが心配です。
三線の手ほどきを受けている子どもたちの中から、これからも引き続き練習して、担い手になってくれる人が出てくるのを願うばかりです。笛は竹から作るところから始めないといけないのがさらに大変そうです。
固有の文化を守り、受け継ぐことの大切さを、大人は子どもに伝えないといけないですね。(咲)


●初日ゲストトーク書き起こしはこちら

2022年/日本/カラー/75分
配給:ムーリンプロダクション
(C)VIVA RYUKU
https://umui-cinema.com/
★2023年7月日15日(土)ロードショー
posted by shiraishi at 14:13| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年07月14日

わたしたちの国立西洋美術館 奇跡のコレクションの舞台裏

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製作・監督・撮影・録音・編集:大墻敦
録音・照明:折笠慶輔
録音:梶浦竜司
カラーグレーディング:堀井威久麿
音楽:西田幸士郎
演奏:閑喜弦介(クラシックギター)、多久潤一朗(アルトフルート)

2016年、ル・コルビュジエ建築の世界遺産に登録、東アジア最高峰の西洋美術の殿堂「国立西洋美術館」。
2020年10月、前庭を創建当時の姿に整備するため、休館となった。この間に大墻敦監督のカメラが入り、美術館の舞台裏を撮影が始まった。1年半にわたって密着取材、これまで見ることができなかった「あれやこれや」にフォーカスしたドキュメンタリーが完成した。

上野に行く用と言えば、美術館と博物館。おとなしく展示を拝見していて、その内部は知ることもなく数十年。海外の美術館のドキュメンタリーを観るたび、日本のも観たい、できないかなぁと待っていました。大墻監督、ありがとうございます!
あの有名な彫刻の台座の中はこんなだったのか!名画はこんな風にしまわれていたのね!美術品を購入するための会議!?などなど。目からうろこが何枚落ちたことでしょう。中でも美術館の学芸員さんたちが西洋美術への愛を語るところは、「推し活」と近いものがあります。親近感湧きました!
前庭の彫刻たちがぐるぐる巻きされて、クレーンで釣り上げられるシーンは、思わず口を開けて見てしまいました。休館中には修復だけでなく、開館へ向けての準備の傍ら、作業も山積みです。予算と人手の少ない中、やりくりするお仕事ドラマとしても観られます。「わたしたちの」とついたタイトルに、「国立」をあらためて認識した次第。(白)


JR上野駅公園口を降りて、上野の森のあちこちに行く時には、国立西洋美術館の前庭を横切っていくのが楽しみでした。植込みの中にロダンの彫刻「考える人」や「カレーの市民」の佇む姿がとても好きでした。
上野駅公園口の改札の位置が鶯谷寄りにずれて、改札の前に大きな広場ができて、以前のように信号を待つことなく公園に行けるようになりました。改札を出てまっすぐに行った右手が国立西洋美術館。修復が終わり、やっと前庭を抜けられると思ったら、植込みがすっかりなくなっていてちょっとがっかりしました。この映画を観て、植込みのない前庭がル・コルビュジエの構想だったと知りました。コンクリートの前庭の下は美術館の展示室。しっかりとした防水を施したものなのです。思えば、植木に水やりはご法度だったのですね。
企画展が混んでいる時でも、常設展はのんびり観ることができます。木曜・金曜は夜8時まで開館。ぜひ一度修復された国立西洋美術館にいらしてみてください。もちろん、その前に、この映画をご覧になって予習を!(咲)



国立西洋美術館公式サイト https://www.nmwa.go.jp/jp/

2023年/日本/カラー/105分
配給・宣伝:マジックアワー
©︎大墻敦
https://www.seibi-movie.com/
★2023年7月15日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開

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ヴァチカンのエクソシスト(原題:The Pope's Exorcist)

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監督:ジュリアス・エイヴァリー
原作:ガブリエーレ・アモルト
脚本:マイケル・ペトローニ エバン・スピリオトポウロス
撮影:カリッド・モタセブ
音楽:ジェド・カーゼル
出演:ラッセル・クロウ(ガブリエーレ・アモルト神父)、トマース・エスキベル神父(ダニエル・ゾバット)、アレックス・エッソー(ジュリア)、フランコ・ネロ(教皇)

1987年7月――サン・セバスチャン修道院。
アモルト神父はローマ教皇から直接依頼を受け、憑依されたある少年の《悪魔祓い》(エクソシズム)に向かう――。変わり果てた姿。絶対に知りえないアモルト自身の過去を話す少年を見て、これは病気ではなく“悪魔”の仕業だと確信。若き相棒のトマース神父とともに本格的な調査に乗り出したアモルトは、ある古い記録に辿り着く。中世ヨーロッパでカトリック教会が異端者の摘発と処罰のために行っていた宗教裁判。その修道院の地下に眠る邪悪な魂――。
全てが一つに繋がった時、ヴァチカンの命運を握る、凄惨なエクソシズムが始まる――

ガブリエーレ・アモルト神父(1925年 ‐2016年 )は、カトリック教会の総本山ヴァチカンのローマ教皇に仕え、生涯で<数万回の悪魔祓い>を行った実在のチーフ・エクソシスト…だそうです。本作はその自伝を元にしたホラー・サスペンス作品。ラッセル・クロウの迫力あるポスターに、これは魔除けになるかもしれないと思ってしまいました。
発端は、古い屋敷に母とエイミーとヘンリーが引っ越してきたこと。ほこりだらけの屋敷は、元は修道院で強力な悪魔が封じられていたというしろもの。悪魔の標的になったのは、いたいけな子ども。このヘンリーを演じたのはイギリスでモデルと俳優をしているPeter DeSouza-Feighoney。このピーターくん(2011年生まれ)、ラッセル・クロウに嚙みつかんばかりの熱演です。憑依される人たちは、そのメイクにさぞ時間がかかっただろう出来栄えです。美術もおどろおどろしくて『エクソシスト』好きな人には嬉しいシーンも用意されています。悪魔には何でもお見通しなので、神父との攻防にちょっと笑えたりしました。(白)


2023年/アメリカ、イギリス、スペイン合作/カラー/シネスコ/103分
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
https://www.vatican-exorcist.jp/
★2023年7月14日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 11:08| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年07月09日

丸木位里・丸木俊 沖縄戦の図 全14部

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©2023 佐喜眞美術館 ルミエール・プラス

監督:撮影:河邑厚徳
ナレーション:ジョン・カビラ
朗読:山根基世
出演:新垣成世 平仲稚菜 島袋由美子 平良修 平良悦美 真喜志好一 佐喜眞道夫 山城博明 吉川嘉勝 丸木ひさ子 岡村幸宣 知花昌一 山内徳信 金城実 本橋成一 石川文洋

絵の中で 戦死者はかたりつづける
藝術は 記憶を未来へ手渡していく


ノーベル平和賞候補になり、朝日賞や埼玉県民栄誉賞などを受賞した水墨画で風景画家の丸木位里(1901‐1995)と人間画家の丸木俊(1912‐2000)夫妻。二人は、「原爆の図」「南京大虐殺」「アウシュビッツ」と40年に渡り、戦後一貫して戦争の地獄図絵を描いてきた。

1945年の沖縄戦の写真は、アメリカ側が撮影した写真しか存在していない。二人は「日本人側から見た記憶を残しておかなければいけない」と、1982年から1987年に沖縄戦を取材し、「沖縄戦の図」14部(「久米島の虐殺1、2」「暁の実弾射撃」「亀甲墓」「喜屋武岬」「ひめゆりの塔」「沖縄戦―自然壕」「集団自決」「沖縄戦の図」「ガマ」「沖縄戦―きやん岬」「チビチリガマ」「シムクガマ」「残波大獅子」)を制作した。今までは二人で進めてきた共同制作だが、沖縄に来て、体験者の証言を聞き、生々しく残る戦地を歩き、村人も参加する開かれたものになっていった。完成した「沖縄戦の図」は、平和を願い描いた二人の作品群の中でも、余すことなく戦争の悪を描き、日本軍の愚かさを伝えてその記憶を未来へ継承しようとする怒り溢れる作品となった。

本ドキュメンタリーは、個々の絵についての説明や批評はあった「沖縄戦の図」全14部を全て紹介する初めての試みである。二人が最晩年、6年かけて取り組んだ「沖縄戦の図」の制作の軌跡を辿ることで、「反戦反核の画家」と一言では語り切れない、二人の命に対する眼差しを丁寧に紹介していく。

同時に、二人が証言を聞いた人々にインタビューすることで、二人が「戦争悪が凝縮している」と驚いた、家族同士が手をかけた集団自決など、「空爆」や「空襲」とは全く違う様相を見せた「地上戦」である沖縄戦の色々な側面を見せる。存命の直接戦争を語れる体験者が数少なくなっている中、貴重な映像資料となっている。
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©2023 佐喜眞美術館 ルミエール・プラス

「沖縄戦の図」全作品は、米軍から「美術館建設のためなら」と先祖の土地が返還された特別な土地に建てられた佐喜眞美術館に収められている。「命こそ宝」という概念コンセプトが来場者に伝わる空間とするための工夫も紹介されている。

また、なかなか戦争体験を語ろうとしない人が多い中、沖縄戦については沖縄民謡の歌詞としても残っている。若い沖縄民謡唄者の新垣成世と同級生で平和ガイドでもある平仲稚菜が「沖縄戦の図」などから戦争について学び、民謡でも戦争体験を継承していく姿も織り込まれている。

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沖縄戦の図の前で唄う新垣成世
©2023 佐喜眞美術館 ルミエール・プラス


リンダ・ホーグランド監督の「『ANPO』安保をアートで語る」(2010)という作品で、普天間基地を俯瞰できるというこの佐喜眞美術館のことを知り、いつか行ってみたいと思っていたのですが、ここに丸木位里・俊さんの「沖縄戦の図」というのがあるのは知りませんでした。あるいはこの作品でもこの絵のことを言及していたのに覚えていなかったのか…。この『丸木位里・丸木俊 沖縄戦の図 全14部』を観て、やはりこの佐喜眞美術館に行ってみたいと思いました。
この作品で「沖縄戦の図」は6年かけて書いたということを知り、二人の共同作業の様子も見ることができました。モデルになった人も含め、たくさんの沖縄の人の協力でできたということや、二人の音声もいっぱい出て来て、この絵に対する思いが伝わってきました。久米島の虐殺のこともこの作品で知りました。そしてなによりも、丸木伊里さんと俊さんの絵のために、この美術館を作った佐喜眞道夫さんの話に感動しました。
石川文洋さん、本橋成一さん、知花昌一さん、金城実さんなどは、沖縄を描いたドキュメンタリーには欠かせない人たちですが、さらに若い民謡歌手の新垣成世さんと平和ガイドの平仲稚菜さんの二人を登場させるというかたちで、「沖縄戦の継承」という課題にも踏み込んでいたのが良かったと思います。1987年の「沖縄国体日の丸焼却事件」当事者の知花昌一さんの「日の丸国旗が好きだった」という話にもびっくりしました。それがあってのあの事件だったのだなと思いました。
丸木位里さん、俊さん夫妻の絵というと、「原爆の図」、「アウシュビッツ」、「南京大虐殺」などの絵が有名ですが、東松山にある丸木美術館に30年くらい前に行った時に見たのは「原爆の図」だったと思います。
実は、お二人の描く絵は不気味で怖いから直視したくはないのですが、でも、この現実を直視するため、怖くてもちゃんと見なくてはと思います。
佐喜眞美術館には、沖縄の学生だけでなく、本州からの修学旅行などで訪れる学生もるようです。この絵を見て、沖縄戦のことを思う若い人たが増えたら、この「沖縄戦の図」の意味は大きいと思います(暁)。


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『丸木位里 丸木俊 沖縄戦の図 全14部』河邑厚徳監督インタビュー



☆佐喜眞美術館 
映画公開に合わせ、沖縄戦の図14作品を一挙公開中 
2023年5月26日(金)〜2024年1月29日(月)

*14作品すべてが展示されるのは2年ぶりです。
https://sakima.jp/


2023年 /日本/カラー/16:9/ステレオ/88分 
配給宣伝:海燕社、アルミード
資料提供:沖縄県公文書館、ひめゆり平和祈念資料館、久米島博物館、読谷村教育委員会、原爆の図 丸木美術館、琉球新報社
映像提供:NHK 1984 年「日曜美術館 戦世の画譜」、シグロ/パラブラ 1983 年「水俣の図 物語」1987 年「ゆんたんざ 沖縄」
公式サイト:https://okinawasennozu.com/
公式ツイッター: @OKNWsen14movie
★2023年7月15日(土)〜7月28日(金)ポレポレ東中野
8月1日(火)〜8月6日(日)東京都写真美術館ホールほか全国順次公開



posted by sakiko at 18:29| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

サントメール ある被告  原題:Saint Omer 

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© SRAB FILMS – ARTE FRANCE CINÉMA – 2022  

監督:アリス・ディオップ
出演:カイジ・カガメ、ガスラジー・マランダ、ロバート・カンタレラ

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傍聴する女性作家ラマ(カイジ・カガメ)
© SRAB FILMS – ARTE FRANCE CINÉMA – 2022

セネガル系フランス人の若き女性作家ラマ。次の本のリサーチのため、フランス北部の町サントメールに赴き、ある裁判を傍聴する。被告は、生後15ヶ月の娘の殺人罪に問われた女性ロランス・コリー。セネガルで生まれ、フランスに留学し、完璧な美しいフランス語を話す。「娘を海辺に置き去りにしたのは、人生をシンプルにするため」と語り、さらに、「叔母から呪術をかけられた」と主張する。娘の父親は30歳以上も年の離れた白人男性リュック・デュモンテ。ロランスは、彼が自分を誰にも紹介せず、自分と子供を否定したと批難する。一方、デュモンテは「年寄りとの関係を恥じていると思って紹介しなかった」という。二人の主張は食い違う。
この日は閉廷になり、傍聴席にいたもう一人の黒人女性がラマに話しかけてきた。ロランスの母親だった。その後、ラマはロランスの母から「妊娠何か月?」と聞かれる。ラマは、一緒に暮らす彼にも、まだ妊娠したことを告げていなかった・・・

裁判官に「なぜ娘を殺した?」と問われ、「Je ne sais pas.(ジュヌセパ わかりません)」と、表情も変えずに答えるロランス。逆に、「理由を裁判で教えてほしい」といいます。
ロランスが自分のことを語る中で、小さい時から、母親からウォロフ語(セネガルの彼女たちの民族の言葉)で話すことを禁じられ、フランス語もセネガル訛りでないフランス語を心がけるように躾けられたとありました。そうしたことが、人間形成に何か影響があったのかも知れないと感じさせられました。
一方、裁判を傍聴していたラマは、「私は母親になれるの?」という思いにかられます。

本作は、セネガル系フランス人女性であるアリス・ディオップ監督が、2016年に傍聴した裁判をもとにしたもの。監督自身、混血児の母親で、当時、傍聴しにいくことを誰にもいえなかったとのこと。けれども、これは映画になるのではとプロデューサーたちには話したそうです。
実際の裁判記録をセリフに使用するという斬新な演出。撮影は、実際の法廷のひとつ隣の部屋に法廷のセットを作って撮影。緊張感溢れる裁判の場で、それぞれの立場の人の思いが細やかに描かれています。 かつてフランスの植民地であったセネガルの人々の立ち位置も考えさせられる作品でした。(咲)


◆アリス・ディオップ監督来日! 3 days トークイベント日程
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7/14(fri.)18:30〜 Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下
『サントメール ある被告』アフタートーク
ゲスト:小野正嗣(作家) 進行:矢田部吉彦(元東京国際映画祭プログラミング・ディレクター)

7/15(sat.)17:00〜 東京日仏学院 エスパス・イマージュ
『私たち』アフタートーク

7/16(sun.)18:30〜 Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下
『サントメール ある被告』アフタートーク
進行:矢田部吉彦(元東京国際映画祭プログラミング・ディレクター)


ヴェネチア映画祭銀獅子賞(審査員大賞)&新人監督賞
2023年度アカデミー賞®国際長編映画部門 フランス代表


2022年/フランス/フランス語/123分/カラー/G
字幕:岩辺いずみ、字幕監修:金塚彩乃
配給:トランスフォーマー
公式サイト:https://www.transformer.co.jp/m/saintomer/
★2023年7月14日(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国順次公開
posted by sakiko at 18:04| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年07月08日

星くずの片隅で   原題:窄路微塵  英題:The Narrow Road

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(C)mm2 Studios Hong Kong


監督:ラム・サム(林森)(『少年たちの時代革命』共同監督)
脚本:フィアン・チョン(鍾柱鋒)
音楽:ウォン・ヒンヤン(黃衍仁)
出演:ルイス・チョン(張繼聰)、アンジェラ・ユン(袁澧林) (『宵闇真珠』)、パトラ・アウ(區嘉雯)、トン・オンナー(董安娜)

2020年、コロナ禍でシャッターが降り静まり返った香港。清掃会社「ピーターパンクリーニング」を営んでいる中年で独身のザク(ルイス・チョン)は、品薄で高騰する洗剤に頭を悩ませながら、消毒作業に追われる日々を送っている。時折、リウマチを患う母(パトラ・アウ)の様子を見に行くが、悪態をつき口は達者だ。
人手が必要になりアルバイト募集のチラシを貼りだしたところ、派手な格好の若い女性キャンディ(アンジェラ・ユン)がやってくる。未経験の上に、幼い娘ジュー(トン・オンナー)を一人で育てているという。ザクは、家賃滞納で追い出されたキャンディ母娘に、寝場所を提供する。そんなキャンディだったが、慣れない清掃の仕事を頑張ってこなし始める。だが、ある日キャンディがジューのために子供用のマスクを客の家から盗んでしまい、ザクは大事な顧客を失ってしまう。ザクはキャンディを解雇するが、幼い娘を抱えるキャンディを見かねて再雇用する。心を入れ替え仕事に打ち込んでいくキャンディに、ザクは心惹かれていく。そんな折、ザクの母が急死してしまう。葬儀中は休業するというザクに、任せてほしいとキャンディは葬儀にザクを送り出す。娘を連れ、ひとりで仕事に張り切るキャンディ。しかしジューがうっかりこぼしてしまった洗剤をきっかけに、会社は窮地に追いやられることになる・・・

コロナ禍ならではの物語と思ったら、脚本の構想は2018年に始めたものとのこと。当初から主人公の仕事は現代社会に欠かせない清掃業に設定していたそうです。コロナが蔓延し、清掃の仕事はなくてはならない大事な仕事でありながら、さらに嫌がられ、担い手が不足するようになったのではないでしょうか。感染の危険があっても、請け負うしかない人たちの悲哀を思いました。ただただ感謝です。
人と人が接するのも難しいコロナ禍の中で、行き場のない若い母娘を気遣うザクの優しさにほろりとさせられました。コロナ禍の世界の各地で、こうした人と人との心の触れ合いがあったに違いないとも思わせてくれました。(咲)


香港に最後に行ったのはいつだったろう。2017年かな。もう5年も行っていない。2020年にはコロナで行けなくなってしまった。それに中国の締め付けで香港の自由はどうなっていくのか、そんな香港で暮らす庶民の物語。林森監督の前作『少年たちの時代革命』は、民主化運動の中でもがく若者、市民たちのことを画いた作品だったが、この作品もまた、香港の街の片隅で生きている庶民の物語。自身、ただでさえ苦しい清掃業の中、仕事をなくし、幼い娘を抱えた若い女性をやとうことになったザク。問題が次から次へと出てくるが、突き放さずに見守る。いかにも香港らしい人情物語だけど、こういう時期に、この映画が日本で公開されることが嬉しい。もう少ししたら、また香港に行って、この映画に出てくるような街角を訪ねてみたい(暁)。

第18回大阪アジアン映画祭コンペティション部門出品作品

2022年/香港/カラー/DCP/5.1ch/115分
配給:Cinema Drifters、大福、ポレポレ東中野
公式サイト:https://hoshi-kata.com/
★2023年7月14日(金)より TOHO シネマズ シャンテ、 ポレポレ東中野他全国順次公開



posted by sakiko at 20:27| Comment(0) | 香港 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ランガスタラム   英題:Rangasthalam

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©Mythri Movie Makers

監督・脚本:スクマール
撮影:R.ラトナヴェール (『ロボット』) 
音楽:デーヴィ・シュリー・プラサード(『ミルチ』) 
編集:ナヴィーン・ヌーリ
製作会社:マイトリ・ムーヴィー・メイカース
出演:ラーム・チャラン(『RRR』)、サマンタ(『マッキー』)、プラカーシュ・ラージ(『ザ・デュオ』)ほか

1980年代、インド南東部アーンドラ・プラデーシュ州中部、ゴーダーヴァリ川沿岸の田園地帯、ランガスタラム村。チッティ・バーブは、エンジンポンプで田畑に水を送り込む自称「サウンド・エンジニア」。難聴だけど、さほど気にせず楽しく暮らしている。ある日、気のいいチッティは、村人に頼まれ草むらで毒蛇を追っているときに、若い娘ラーマラクシュミが水浴びしているのに遭遇し、一目惚れする。
一方、村は高カーストの地主ブーパティが、「プレジデント(村長)」として君臨し、農民の共同組合銀行を私物化し高利貸しで私腹を肥やしている。
チッティの兄クマール・バーブが出稼ぎ先のドバイから帰省し、村人への不当な取り立てのからくりの解明に取り込む。そんな中、ラーマラクシュミが借金のためにプレジデントの手下に侮辱されるのを目の当たりにしたチッティは、思わず手下を殴ってしまい、逮捕される。兄クマールは、プレジデントが牛耳る村の有様に心を痛め、州会議員ダクシナ・ムールティの力添えで、村長選挙に立候補して村の生活を改善していこうと思い立つが…。

『RRR』で警官ラーマを演じたラーム・チャランが、本作では、ルンギー(一枚布の腰巻)姿で、田舎者の気のいい兄ちゃん。難聴で聞こえなかったことも聞こえた振りをして、あとから助手のマハーシュに確認して笑わせてくれます。恋も難聴のためにちぐはぐな対応になってしまうのですが、とにかく実直な男なのです。
それに対して、ジャガパティ・バーブ演じる村に君臨するプレジデントの凄みは、半端ないです。いかにも高カーストらしい気品も見せてくれます。
チッティが恋するラーマラクシュミは、母を亡くし、のんだくれの父に代わって気丈に働く農家の娘。演じたサマンタは、『マッキー』では都会的な美女でした。

冒頭、自転車で行くチッティの坂道の先の方で、車がダンプトラックに跳ね飛ばされ、乗っていた「先生」が外に放り出されて病院に運ばれます。「死なないで」と必死に見守るチッティ。 この「先生」は誰なのか?  ぜひ最後まで物語を見守ってください。(咲)


2018年/インド/テルグ語/174分
字幕:加藤 豊  
配給:SPACEBOX
公式サイト:https://spaceboxjapan.jp/rangasthalam/
★2023年7月14日(金)より新宿ピカデリー  ヒューマントラストシネマ渋谷 シネ・リーブル池袋 ほか 全国公開




posted by sakiko at 18:11| Comment(0) | インド | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

大いなる自由(原題:Große Freiheit /英題:Great Freedom)

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監督・脚本:セバスティアン・マイゼ
共同脚本:トーマス・ライダー
撮影監督:クリステル・フルニエ(『水の中のつぼみ』『トムボーイ』『ガールフッド』)
編集:ジョアナ・スクリンツィ
音楽:ニルス・ペッター・モルヴェル、ペーター・ブロッツマン
出演:フランツ・ロゴフスキ(『希望の灯り』『未来を乗り換えた男』)
ゲオルク・フリードリヒ、アントン・フォン・ルケ、トーマス・プレンほか

第二次世界大戦後のドイツ。男性の同性愛を禁じた刑法175条の下、ハンスは自身の性的指向を理由に繰り返し投獄される。同房の服役囚ヴィクトールは彼を嫌悪し遠ざけようとするが、腕に彫られた番号から、ハンスがナチスの強制収容所から直接刑務所に送られたことを知る。己を曲げず何度も懲罰房に入れられる「頑固者」ハンスと、長期の服役によって刑務所内での振る舞いを熟知しているヴィクトール。反発から始まった二人の関係は、長い年月を経て互いを尊重する絆へと変わっていく 。

20余年にもわたって愛する自由を求め続けたハンスの物語。ナチスが各地に作った収容所には政治犯、ユダヤ人、ロマ、障碍者、さらに同性愛者も送られていました。この2時間足らずの中に終戦後、保守派が同性愛嫌悪を助長した60年代、社会が変化していき175条が撤廃される90年代の社会が刑務所を通して描かれます。刑務所から出られず過酷な日々を送るハンスですが、ヴィクトールとの交流が親しいものになっていくことで、観客も少しホッとします。
「憲法は国民を縛るものではなく、権力を持つ人=為政者を縛るもの」と聞いたのは「憲法くん」でした。理不尽な法律がまかり通っているとき、それで誰が得をするのか考えなくては。差別の意識は社会にも個人にも根強く浸透しているように思います。まずは自分の内側を覗いてみましょう。覗いてみます。(白)


ドイツ刑法175条(1871~1994)は1871年に制定され、ナチスが台頭してから厳罰化、戦後もそのまま東西ドイツで引き継がれていたのだそうです。西ドイツでは1969年に21歳以上の男性同性愛は非犯罪化され、1994年にようやく撤廃された。約120年間に14万もの人が処罰されたといわれる。
※刑法175条は男性のみを対象としており、女性同性愛はその存在さえ否定されたことから違法と明記されていなかった。


旧東ドイツの刑務所跡で撮影された本作。同性愛者というだけで投獄された人たちの無念な思いがずっしり伝わってきました。1958年には、東ドイツで刑法改正により175条が事実上無効になり、映画の中で、「東ドイツに逃げよう。収監されない」という言葉が出てきます。東から西に逃げたい人の多かった時代にです。
映画のラスト、Marcel Mouloudjiの歌う「L'Amour, l'Amour, l'Amour」が、のびのびと響き、自由に愛せる喜びを感じさせてくれました。
一方で、今でもチェチェン共和国やイランなど、同性愛が罪とされる国があることに、理不尽な思いが募りました。(咲)



2021年カンヌ国際映画祭ある視点部⾨審査員賞受賞
2022年アカデミー賞国際⻑編映画賞オーストリア代表作品。

2021年/オーストリア、ドイツ/116分/1:1.85/カラー/R15+
配給:Bunkamura Subsidized by German Films
©2021FreibeuterFilm•Rohfilm Productions
https://greatfreedom.jp/
2023年7月7日(金)よりBunkamuraル・シネマ渋谷宮下ほか全国順次公開

posted by shiraishi at 17:50| Comment(0) | オーストリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年07月07日

釜石ラーメン物語

2023年7月8日より、新宿K's cinemaほか全国順次公開!

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Ⓒ「釜石ラーメン物語」製作委員会

監督・脚本:今関あきよし
脚本:いしかわ彰
プロデューサー:伊藤直克
出演
姉 正実:井桁弘恵
妹 仲良:池田朱那
父 剛志:利重剛

山と海に挟まれた岩手県釜石市。昭和の最盛期には10万人以上が暮らしていたが、今はその三分の一に落ち込んでいる。明治・昭和・平成と何度も災害を経験しながら支え合って生きてきた。昭和の面影が色濃く残る街並みを舞台に、街の人々の人情を織り交ぜた家族の再生の物語が完成した。
東日本大震災で行方不明になった母・正恵が始めたラーメン屋「小川(こがわ)食堂」。父・剛志(利重剛)が店を継ぎ、仲良(池田朱那)は病気がちな剛志を助けて厨房に立っていた。正恵のような味は出せないけど、それでも町の人々は、ここを拠り所として食べに来ていた。そんな父と妹が営むらラーメン屋に、3年前に家を飛び出して音信不通だった長女・正実(井桁弘恵)が突然帰ってきた。戻って早々、ラーメンを作っている妹に「おめえなんかにお母ちゃんの味は出せねえ!」と言う。文句ばかり言う姉に妹は反発。姉妹の衝突が続いたある日、父が倒れ入院することに。病院には常連さんたちがお見舞いに来てくれて、お店の存続を願う。そこで正実は「小川食堂」が町の人たちにとってとても大切な場所になっていることに気づく。
二人で母の味に迫るべく、最高の一杯を目指し、奮闘が始まる!
姉と妹は、衝突しつつ、お互いを思いやり、店を続けていくのでしょう。

東日本大震災後の釜石。ラーメン屋を始めた母は行方不明のまま。父と娘でラーメン屋を営んでいるという設定だけで、ぜひ観たいと思った。母の味にはなかなか近づけられないし、母が店を切り盛りしていた時のようには人が来ないけど、それでも、周りの人達は自分たちの拠り所のように考えて、いつも来てくれる。店を続けてほしいと願っている。姉が帰ってきて、3年もいなかったのに「母の味にはたどりつけない」などと言っているけど、いなかったのに勝手なものです。でも、妹への思いもあり、今後は3人で店を続けていくのかというところで終わり。
もう少し地域の人たちの拠り所というところがでていたら、もっと良かったのにと思いました(暁)。

公式HP http://kamaishi-ramen.jp/
2022年製作/85分/G/日本
配給:ムービー・アクト・プロジェクト


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2023年07月02日

遠いところ

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監督:工藤将亮
脚本:工藤将亮、鈴木茉美
主題歌:唾奇(つばき)「Thanks」
出演:花瀬琴音(アオイ)、石田夢実(海音)、佐久間祥明(マサヤ)、長谷川月起

沖縄県・コザ。
17歳のアオイは、夫のマサヤと幼い息子の健吾と3人で暮らし。おばあに健吾を預け、生活のため友達の海音(ミオ)と朝までキャバクラで働くアオイだったが、 建築現場で働いていた夫のマサヤは不満を漏らし仕事を辞め、アオイの収入だけの生活は益々苦しくなっていく。マサヤは新たな仕事を探そうともせず、いつしかアオイへ暴力を振るうようになっていた。
そんな中、キャバクラにガサ入れがあり、未成年のアオイは店で働けなくなる。悪いことは重なり、マサヤが僅かな貯金を持ち出し、姿を消してしまう。仕方なく義母の由紀恵の家で暮らし始め、昼間の仕事を探すアオイだったがうまくいかない。さらにマサヤが暴力事件を起こし逮捕され、被害者への多額の示談金が必要になる。切羽詰まったアオイは、キャバクラの店長からの仕事の誘いを受ける―

日本の若年層の貧困を描いたドキュメンタリーのように見えました。17歳で母親になったということは、高校を卒業していないのね。職業も限られてしまいます。マサヤがもっとちゃんとしていたら、と詮ないことを考えます。沖縄には仕事が少ない、あっても日本で一番低賃金です。時給のランキングを見るといつもしんがりにある名が沖縄。東京は一番高いですが、代わりに他のものが高くて生活費がかかります。近隣の助けもないに等しいです。それを思うと、おばぁや母に頼れるのを知っているから、マサヤも高をくくっているのかもしれません。それにしてもマサヤ、夫や父の自覚がなさすぎます。
若いうちの結婚や出産もほかの都道府県に比べて多い沖縄、これはアオイ一人の問題ではなく、たくさんのアオイがいるのでしょう。健吾の母親でいたいアオイを支える手がもっとあれば、と思わずにいられません。撮影より早く沖縄に入って暮らしたという若い俳優さんたちのリアル、それを引き出したスタッフさんたち、その熱意にこたえて、最後まで観てください。一人遊びをする健吾くんが可愛くて、おばぁならずとも何とかしてあげたい~。(白)

☆第23回東京フィルメックスのコンペティション部門 観客賞受賞

2022年/日本/カラー/128分
配給:ラビットハウス
(C)2022「遠いところ」フィルムパートナーズ
http://afarshore.jp/
★2023年7月7日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 18:50| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする