2023年04月30日

それでも私は生きていく   原題:Un beau Matin  英題:One Fine Morning

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監督・脚本:ミア・ハンセン=ラブ
出演:レア・セドゥ、パスカル・グレゴリー、メルヴィル・プポー、ニコール・ガルシア、カミーユ・ルバン・マルタン

サンドラ(レア・セドゥ)は、5年前に夫を亡くし、通訳の仕事をしながら8歳の娘リン(カミーユ・ルバン・マルタン)を育てている。忙しい合間を縫って、ひとり暮らしをしている年老いた父ゲオルグ(パスカル・グレゴリー)の様子をみにいく。かつて哲学の教師をしていた父だが、目が見えにくくなり、記憶もあやふやになっていて、施設に入れることを考えないといけない状況だ。気持ちが折れそうになっていた矢先、リンを迎えに行った学校で、亡き夫の友人クレマン(メルヴィル・プポー)と再会する。息子がリンと同じ学校なのだ。ある日、宇宙科学者であるクレマンの研究室を訪ね、思わずキスしてしまう・・・

『未来よ こんにちは』(16)で、第66回ベルリン国際映画祭 銀熊(監督)賞を受賞したフランスのミア・ハンセン=ラブ監督の8作目。第75回カンヌ国際映画祭でヨーロッパ・シネマ・レーベルを受賞しています。
監督自身の父親を介護した経験をもとに描いた物語。父をなんとかしなければいけないという大変な矢先に、旧友と再会し、恋に落ちてしまいます。でも、相手にはうまくいってないとはいえ妻がいて、彼もサンドラが好きなのに、妻子に悪いと思って別れてしまうのです。父のことで落ち込んでいるのに、さらに気が滅入るサンドラの気持ちを思うといたたまれません。
かたや、父は20年前に離婚しているのですが、レイラという愛人がいて、ワケあって一緒に暮らしていないのですが、レイラが来ると元気になります。(どんな時にも恋に生きるのが、やっぱりおフランスだなぁ~!)
ちなみにレイラを演じたフェイリア・ドゥリバ(Fejria Deliba)は、アルジェリア系のフランス人。『D'une pierre deux coups』(2016年)という監督作もあります。

父を施設に入れたあと、家の整理をしていて、父が書いていた自伝の原稿が見つかります。そのタイトルが「ある晴れた朝」。この映画の原題はそこからもきているのでしょう。
それにしても、哲学の教師をしていた父親の家に本がいっぱいあることや、自伝を書いていたことなど、去年8月に99歳で亡くなった私の父のことを思い出さずにはいられませんでした。腰が痛いと言っていて、そろそろ施設を探さないといけないとおぼろげに思っていた矢先に自宅で亡くなったので、そういう意味では手間がかかりませんでした。私の父も研究者だったので、本がたくさん! ほぼ書き上げた自伝も遺されていて、本と自伝をどうするかが、もっぱらの悩みなのです。残念ながら色恋とは無縁なのが、この映画と違うところ! (咲)


2022年/フランス/ 112分/カラー/ビスタ/5.1ch/
日本語字幕:手束紀子
配給:アンプラグド
公式サイト:https://unpfilm.com/soredemo/
★2023年5月5日(金・祝)より新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開



posted by sakiko at 20:38| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

帰れない山    原題:Le Otto Montagne

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© 2022 WILDSIDE S.R.L. – RUFUS BV – MENUETTO BV –PYRAMIDE PRODUCTIONS SAS – VISION DISTRIBUTION S.P.A.


監督・脚本:フェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲン(『ビューティフル・ボーイ』)&シャルロッテ・ファンデルメールシュ
原作:「帰れない山」著:パオロ・コニェッティ 翻訳:関口英子(新潮クレスト・ブックス)
撮影:ルーベン・インペンス(『TITANE/チタン』)
出演:ルカ・マリネッリ(『マーティン・エデン』)、アレッサンドロ・ボルギ(『ザ・プレイス 運命の交差点』)、フィリッポ・ティーミ(『愛の勝利を ムッソリーニを愛した女』)、エレナ・リエッティ(『3つの鍵』)

1984年、北イタリア、モンテ・ローザ山麓のグラーノ村。もうすぐ12歳になる少年ピエトロは、ひと夏を両親がこの村で借りた家で過ごした。トリノの工場でエンジニアをしている父ジョヴァンニが来た折に、3010mの山に初めて一緒に登る。村に住むたったひとりの子どもであるブルーノと出会う。同い年とわかり、すっかり仲良くなり一緒に野山を駆け巡る。翌年、ブルーノも誘って父と氷河に行く。夏を村で過ごすことが数年続き、父がブルーノを支援してトリノで学校に行かせようと提案したところ、出稼ぎに行っていたブルーノの父が彼も出稼ぎに連れていってしまう。思春期を迎え、何かと父に反抗するピエトロ。夏に父から山登りに誘われても行かなくなる。せめて大学は卒業しろという父の言葉も聞かず、親とは疎遠になる。小説家になることを夢見ながらレストランで働く31歳のピエトロのもとに、父が急逝したとの知らせが届く。ピエトロは15年ぶりに村を訪れブルーノと再会する。父が山に家を建ててほしいとブルーノに頼んでいたことを聞かされる。ピエトロが村に行かなくなった後も、父はブルーノと一緒によく山に登っていたことも知る・・・

ピエトロは自分が遠ざけていた父と、ブルーノが親しくしていたと知り、取り返しのつかないことをしてしまったことに気づきます。時間を取り戻そうとするかのように、父の願った山の家をブルーノと二人で完成させます。ブルーノが酪農家として村に腰を据えて仕事をしていることにも刺激を受け、ピエトロは自分の道を探すべくネパールに旅立ちます。
ネパールで、ブルーノは「8つの山」の話を聞かされます。世界の中心には最も高い山、須弥山(スメール山、しゅみせん)があって、その周りは海と8つの山に囲まれていて、8つの山すべてに登った者と、須弥山に登った者、どちらがより多くのことを学んだかという古代インドの世界観。村に帰って、ブルーノにその話をすると、ブルーノは自分は須弥山に登った者だといいます。ピエトロは、いつまでも周りを彷徨うタイプかもしれません。
モンテ・ローザ山もヒマラヤも、どちらも心が洗われるような素晴らしい景観。ピエトロの父ジョヴァンニのように山に心の安寧を感じる人が多いのもわかるような気がします。(眺めるのは好きですが、登るのは苦手な私!)

監督のフェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲンとシャルロッテ・ファンデルメールシュは、共にベルギー生まれのご夫婦。原作に惚れ込み、映画化するのにあたり、まず、イタリア語を学ぶことから始めたそうです。
描かれているテーマは、両親とのこと、生い立ちの違う人と友情をはぐくむこと、血の繋がっていない人と親子のような関係を築くこと、さらに過疎が進む村での問題など、普遍的なもの。観る人、それぞれの経験から、共感する場面も違ってくることと思います。
いろいろなことを考えさせてくれましたが、自分のやりたいことを見つけて、一日一日を大切に過ごしたいと思わせてくれた映画でした。(咲)


都会から来た少年ピエトロと牛飼いのブルーノの物語。二人の友情や、父と子の関係を素晴らしいモンテローザの山々の景色の中で描く。
この山々に惹かれ、その山里に家を借りたお父さんの気持ちわかります。私も北アルプス後立山連峰の眺めに惹かれ、1980年代に大町市と白馬村で北アルプスの山々を眺めながら、延べ5年、働きながら暮らしました。鹿島槍という山の写真を撮るという大義名分で行ったのですが、おかげで山の上での写真展を開くことができました。そして、今年4月に引っ越ししたのですが、片付けをしていたら、その頃撮った写真が山ほど出てきました。自分で焼いた白黒プリントですが、素晴らしい景色の数々に、この頃はこういうところに行っていろいろな写真が撮れたんだなと、我ながらよくやったという気持ちになりました。心臓手術をして、もう山には登れなくなってしまった私ですが、この映画の主人公たちの山での生活を観て、熱心に山に通っていたころの自分を思いだし、自分の可能性ということを考えました。
「自分がやりたいと思ったことは、体力が必要なことなら、体力があるうちにやっておく」。若い頃のように動けなくなってしまった今、この映画を観て、主人公たちのように、いろいろ挑戦していた頃の自分を思い出しました。
この作品は、チャレンジすることの素晴らしさ、友情など、いろいろなことを考えさせてくれました。35年以上たった今も、大町や白馬で出会った人たちとの交流は続いています。ずっと山小屋の支配人として働いていた友人からの年賀状に「定年退職しました」と書いてあり、月日を感じました。この映画でも二人の友情の長い月日が描かれていました。そして何かがきっかけで、思わず人生が変わっていくことも描かれていました(暁)。


第75回カンヌ国際映画祭 審査員賞受賞
第67回バリャドリッド国際映画祭 最優秀撮影賞、ブロゴス・デ・オロ賞受賞

2022年/イタリア・ベルギー・フランス/イタリア語/147分/1.33:1
日本語字幕:関口英子
配給:セテラ・インターナショナル
公式サイトhttp://www.cetera.co.jp/theeightmountains/
★2023 年5月5日(金)新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座、シネ・リーブル池袋ほか全国公開




posted by sakiko at 19:28| Comment(0) | イタリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

浜田省吾「A PLACE IN THE SUN at 渚園 Summer of 1988」

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監督:板屋宏幸
プロデューサー:岩熊信彦
出演:浜田省吾

全国の映画館が35年前の
浜田省吾ライブ会場へタイムトリップ
110分の青春時代がよみがえる
BACK TO 1988!
『路地裏の少年』『MONEY』
『僕と彼女と週末に』『ラストダンス』、
そして『明日なき世代』『J.BOY』and more!!
1988年8月20日、静岡県浜名湖畔「渚園」で行われた
浜田省吾にとって 三度目の野外ライブ
「A PLACE IN THE SUN」。
5万5千人を動員したライブを記録した
膨大なオリジナルネガフィルムを
4Kデジタルリマスターと5.1chサラウンドミックスで
高臨場感を再現したライブ映像。
35年前の記録映像にも関わらず、
まるで当時のライブ会場の空気感を感じさせる
スペシャルなコンテンツに、世代を越えて21世紀の今、
感動をともにする。

35年前の浜田省吾さんに会えますよ~。「渚園」は静岡県浜名湖畔、野外コンサートに集ったのは約5万5千人。倉庫に眠っていた16ミリフィルムが蘇り、最新の技術も加わって臨場感たっぷりです。この全国ツアーの最中、89年1月に昭和から平成に変わったのでした。当時参加したファンもまだ生まれていなかった人も、特等席でお楽しみください。
耳になじんだ曲の数々が懐かしい…聞き込んだファンは、映画公式サイトでの「渚園検定」にチャレンジするのはいかがでしょう?
最近の浜田さんが気になるときは、浜田さんの公式サイト(こちら)へ。昨年1月の武道館コンサートの1曲が公開されています。(白)


●チケットは3000円の特別料金。
ムビチケ前売り券は全国のファミマにて5月4日(木)23:59まで、2700円です。

2023年/日本/カラー/シネスコ/110分
配給:ライブ・ビューイング・ジャパン
(C)2023 Road & Sky
https://www.sh-nagisaen1988.jp/
★2023年5月5日(金・祝)から5月25日(木)まで全国の映画館にて限定公開
posted by shiraishi at 00:15| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ハマのドン

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監督:松原文枝
プロデューサー:江口英明、雪竹弘一
ナレーション:リリー・フランキー
出演:藤木幸夫

カジノ誘致でゆれた横浜市。2019年8月、“ハマのドン”こと藤木幸夫氏が横浜港をめぐるカジノ阻止に向けて立ち上がった。御年91歳。地元政財界に顔が効き、歴代総理経験者や自民党幹部との人脈、田岡一雄・山口組三代目組長ともつながりがあり、隠然たる政治力を持つとされる保守の重鎮だ。

カジノが含まれる「IR(統合型リゾート施設)」には利権が大きく絡んできます。娯楽とはいえカジノはギャンブル依存症を生み出し、はては家族や人生をも破綻させる恐れがあります。「私は自民党員ですが反対です」と藤木氏。父からハマの港湾事業を受け継ぎ、現在は横浜港ハーバーリゾート協会会長。市民は「この街を守ろう」と、住民投票を求める署名を法定数の3倍も集めました。しかし、市議会では否決。次に両者が手を結んで臨んだのが、横浜市長選でした。ニュースでご存じのとおり「IR反対」を掲げた山中候補の支援に力を注ぎます。国策であっても、こうやって覆すことができるんだ、と力づけられました。(白)

「港で博打はやらせない!」と力強く語る藤木さん。
横浜大空襲を生き延び、戦後、日雇いの港湾労働者たちの間で博打が当たり前だった時代を知る藤木さんだからこその言葉。
戦後、町にたむろする少年たちを集めて野球チーム「レディアンツ」を結成した繋がりも、市民運動の土台になっています。また、立ち上げた「横浜エフエム」では、消費者金融のCMは流さないという徹底ぶり。

本作の中で興味深かったのが、ニューヨーク在住で、米国で25か所のカジノルームの設計や内装などを手掛けけてきた建築デザイナーの村尾武洋さんの話。IR誘致反対を表明した藤木さんの会見をYouTubeで見て、「藤木会長に一言伝えたい」と連絡されたのです。
レストランに繋がる導線を考え、外に行かせない工夫を凝らした設計、シャンデリアに隠したカメラで監視し、勝ち続けている客に声をかけるタイミングを計る仕組みなど、カジノ側が儲かるようになっていることを強調されました。

冒頭と最後に、IR誘致予定地だった山下埠頭が空から映し出されます。ベイブリッジや、山下公園、みなとみらい・・・ IRなどなくても魅力的な横浜です。
市民の力で、IR誘致反対の市長が誕生したことは、これからの日本の政治を市民が動かすことができることを証明してくれました。(咲)




2023年/日本/カラー/DCP/100分
配給:太秦
(C)テレビ朝日
http://hama-don.jp/
★2023年5月5日(金)新宿ピカデリーほか全国順次ロードショー
posted by shiraishi at 00:05| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年04月23日

独裁者たちのとき(原題:Skazka、英題:Fairytale)

劇場公開 2023年4月22日 ユーロスペース他 上映情報 

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黄泉の国からヒトラー、スターリン、チャーチル、ムッソリーニが蘇る!

監督・脚本:アレクサンドル・ソクーロフ
出演:アドルフ・ヒトラー、ヨシフ・スターリン、ウィンストン・チャーチル、ベニート・ムッソリーニ ※全て本人(アーカイヴ映像)

2022年/ベルギー・ロシア/78分/日本版字幕:松岡葉子
ジョージア語・イタリア語・フランス語・ドイツ語・ロシア語・英語
ウェブデザイン:竹内健太郎/資料作成協力:松岡葉子/梶山祐治

『エルミタージュ幻想』『太陽』などで知られるロシアの鬼才アレクサンドル・ソクーロフが、冥界を舞台に神の審判を受けるため天国の門を目指してさまよう独裁者たちの姿を描く。アーカイヴ映像を利用し、全編本人が出演!
これはソクーロフによる悪夢かおとぎ話か。過去の独裁者の姿、言動を通じて、現代の世界に警鐘をならしている?

深い霞におおわれた灰色の廃墟の中で、ヒトラー、スターリン、チャーチル、ムッソリーニなど第二次世界大戦時に世界を支配していた独裁者たちがうごめいている。煉獄の晩餐が始まると、お互いの悪行を嘲笑、揶揄し、己に陶酔。冥界を舞台に、神の審判を受けるため20世紀の独裁者たちが天国の門を目指しさまよう。その姿が、時には滑稽にシュールに、現代をも示し、人類の未来を予感させる。
歴史上まったくあり得ない、親しげに語り合い、笑い合い、罵り合う独裁者たちの姿は、気の遠くなるような量のアーカイヴ素材から選びだされたもので構築されている。すべて実際の映像が使われ、独裁者たちが語る言葉は、それぞれ過去の手記や実際の発言の引用から作られた。完成まで6年の歳月を要したという本作は、ソクーロフの近現代史への挑戦である。
登場するヒトラー、スターリン、チャーチル、ムッソリーニらの映像は、過去のアーカイブ映像をデジタルテクノロジーでよみがえらせ、4人が話すドイツ語、イタリア語、ジョージア語、英語は、現代の俳優が語っている。
ロシアによるウクライナ侵攻の年(2022)に完成した本作は、カンヌ国際映画祭でのお披露目が数時間前に中止になり、ロカルノ国際映画祭コンペ部門に出品された。

風変りな映像とストーリー。全編本人たちの映像というのがすごい! よく探し出してきたなと思う。映像は実物でも口から出るセリフは創造したもの。意味があるのかないのかわからないこともつぶやく。筋書きとか筋の通ったものとかはない。20世紀の歴史を左右した4人を冥界から引っ張り出してきて、語らせたかったのでしょうが、もう少し、現代に対して突っ込んだセリフが欲しかったかな。
キリストやナポレオンまで登場しますが、こちらはもちろん作った映像。彼にとって第二次世界大戦は過去ではなく、また冷戦終結という転機もない。独裁者の季節がずっと続いている世界なのでしょう(暁)。

宣伝・お問合せ:スリーピン 原田/
各地域配給:ミカタ・エンタテインメント 大森/
提供・配給:パンドラ
 
posted by akemi at 21:27| Comment(0) | ロシア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

不思議の国の数学者  原題:이상한 나라의 수학자  英題:In Our Prime

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(C)2022 showbox and JOYRABBIT INC. ALL RIGHTS RESERVED.

監督:パク・ドンフン
出演:チェ・ミンシク、キム・ドンフィ、パク・ビョンウン、パク・ヘジュン、チョ・ユンソ

秀才の集まる名門私立高校に、母子家庭の特別枠で入学したハン・ジウ(キム・ドンフィ)。200日ちょっと経って、数学はもう3年生の分まで終了。経済的に塾にも通えず、ついていけなくて挫折しそうな時、ひょんなことから夜間警備員のハクソン(チェ・ミンシク)から数学の手ほどきをしてもらうことになる。授業料代わりにイチゴ牛乳を差し入れることと、数学以外の質問をしないことが条件だ。ジウに関心のある女生徒ボラム(チョ・ユンソ)が、ハクソンのもとで数学を学んでいるのを嗅ぎつけて合流する。ボラムも親が離婚していて特例枠だが、母親は裕福だ。
数学の教師グノ(パク・ビョンウン)は、成績の悪いジウに普通校への転校を迫るが、ジウは入学を喜んでいる母の手前、転校はしたくない。いよいよ、成績を決めるピタゴラスアワードの日が近づく・・・

脱北者で「人民軍」のあだ名で呼ばれているハクソンは、実は天才数学者。北で自分の数学の知識が武器に利用されるのが嫌で、妻を亡くしたあと脱北してきて、身分を隠して警備員としてひっそりと暮らしているのです。とっつきの悪かったハクソンと、ジウやボラムが次第に心を通わせていきます。ピアノが弾けるボラムに伴奏を頼んで、円周率の数字に音を当てた「π(パイ)ソング」を奏でる場面が素敵です。
ドラマ「夫婦の世界」で若い女性と浮気し妻を捨てたイ・テオ役を演じたパク・ヘジュンが、本作では脱北者支援本部の支部長で、ハクソンの正体を知っていて、優しく気遣う役どころ。
数学の教師グノは、正しい答えこそが重要だと考えるのですが、天才数学者ハクソンは、考える過程が大事だと説きます。数学が得意になるために必要なのは「勇気」だとも。問題が解けなくても、また明日挑戦すればいいという次第。これは人生にもいえることですね。チェ・ミンシクが味のある演技で、天才数学者リ・ハクソンを際立たせています。(咲)


2022年/韓国/117分/シネマスコープ/DCP5.1ch
日本語字幕:朴澤蓉子
配給:クロックワークス
公式サイト:https://klockworx-asia.com/fushigi/
★2023年04月28日(金) よりシネマート新宿、池袋シネマ・ロサほかにて全国公開





posted by sakiko at 18:19| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

アダマン号に乗って(原題:Sur l’Adamant)

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監督・脚本・撮影:ニコラ・フィリベール
ナレーション:内田也哉子

セーヌ川に浮かぶ木造船アダマン号に、通ってくる人たちがいる。アダマンは精神疾患のある人々を無料で迎え入れるデイケアセンター。ここでは歌ったり、楽器を演奏したり、絵を描いたり、創造的な活動をして社会とつながりを持つ手助けをする。無理強いはしない。一人ひとりが語る過去や抱えているトラウマは、あたりまえだけれどみんな違う。

年齢も病歴もさまざまな人たちが、アダマン号にきて自分の想いのたけを職員へ打ち明けています。フィリベール監督は長く通ってすっかりなじんでいるのか、カメラや監督を気にしていません。
冒頭で歌っていた男性は、投薬で心の平衡を保っていると話しています。カフェで珈琲を入れる人もいれば、売り上げの計算をし、数字の合わない原因を探す人もいます。自分の状態や苦しさをきちんと言葉にでき、行動には意味があること、不安で傷つきやすいと理解してほしいと静かに話す男性も。ここでは禁止されたり、否定されたりしないので落ち着いて安心しています。こういう場所がどこにでもあるといいよね。どの人にも。(白)

●2023年・第73回ベルリン国際映画祭コンペティション部門 金熊賞受賞

2023年/フランス、日本合作/カラー/109分
配給:ロングライド
(C) TS Productions, France 3 Cinema, Longride – 2022
https://longride.jp/adaman/index.html
★2023年4月28日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国公開

posted by shiraishi at 14:56| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

セールスガールの考現学(原題:Khudaldagch ohin /英原題 THE SALES GIRL)

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監督・脚本・プロデューサー:ジャンチブドルジ・センゲドルジ
撮影:オトゴンダワー・ジグジドスレン
音楽:ドゥルグーン・バヤスガラン
出演:バヤルツェツェグ・バヤルジャルガル(サロール)、エンフトール・オィドブジャムツ(カティア)、ドゥルグーン・バヤスガラン、マグノリアン

モンゴル大で原子威力工学を学んでいるサロールは、親に言われるままに進路を決めた。将来の展望も夢もないが、絵を描くことだけは続けている。地味で目立たない女子大生だったが、怪我をした顔見知りの学生にバイトの代理を頼まれる。「秘密を守ってくれそうだから」と紹介された仕事は、セックスショップの店員だった。親には適当ないいわけをし、毎日バイトに通い、売り上げをオーナーのカティアに届ける。サロールを気に入ったカティアは、食事やドライブに連れ出し、サロールの不安に思っていたことまで取り除いてくれた。

奥手な女子大生が、リッチで自由奔放な女性経営者と友情を結び、成長していくストーリー。ちょっと気難しく見えたカティアは、酸いも甘いもかみ分けた大人でした。対極にあるような二人が世代も超えて、心を開いていく様子は観ていてほほえましく、サロールは良いメンターを得ました。女優としても息長く活躍してきたエンフトール・オィドブジャムツが貫禄たっぷりに演じています。
監督は女性かと思えば、そうではなく男性でした。センゲドルジ・ジャンチブドルジ監督は内向的だった少年時代を反映させているそうです。
サロール役のバヤルツェツェグ・バヤルジャルガルはこれが映画初出演、オーディションで初の主役を射止めました。ノーメイクで手入れをしていない髪の毛、野暮ったいファッションのサロールが、カティアに目を開かされて、だんだんとあか抜けていきます。実際は綺麗な女優さんなので、野暮ったくするのが大変だったようです。(白)


冒頭、バナナの皮がポイと捨てられて、あ~誰かが滑る・・・と思っていたら、案の定、若い女性が滑って怪我をして松葉杖をつく羽目に。その彼女が、クラスメイトのサロールに「高給なうえ楽な仕事」とバイトの代わりを頼むのです。それがアダルトグッズ・ショップという次第。商品知識もないまま、勝手なことをいう客の相手をするサロール。口数も少なくて地味なサロールが、元バレリーナだったという店主のカティアから刺激を受けるうちにどんどん輝いていきます。
存在感あるカティアを演じたエンフトール・オィドブジャムツは、モンゴルで有名な俳優で現在ドイツ在住。30年ぶりの映画出演です。
モンゴルというと大草原のイメージですが、都会で暮らす人々の姿を垣間見ることができるのも本作の魅力。最後にまたバナナが登場して笑わせてくれます。(咲)



2021年/モンゴル/カラー/シネスコ/123分
配給:ザジフィルムズ
(C)2021 Sengedorj Tushee, Nomadia Pictures
http://www.zaziefilms.com/salesgirl/
★2023年4月28日(金)新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー

posted by shiraishi at 14:33| Comment(0) | モンゴル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

私、オルガ・ヘプナロヴァー  原題:Já, Olga Hepnarová 

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監督・脚本: トマーシュ・ヴァインレプ、ペトル・カズダ  
原作:「Ja, Olga Hepnarová」ロマン・ツィーレク 
撮影:アダム・スィコラ
編集:ヴォイチェフ・フリッチ  
美術:アレクサンドル・コザーク 
衣装:アネタ・グルニャーコヴァー
出演者: ミハリナ・オルシャニスカ、マリカ・ソポスカー、クラーラ・メリーシコヴァー、マルチン・ペフラート、マルタ・マズレク

チェコスロバキア最後の女性死刑囚オルガ 
彼女はなぜ無差別大量殺人を犯したのか?


広い邸宅。ベッドに横たわるオルガ。起こしにきた母に「学校に行きたくない」と不機嫌そうにいう。自分の殻に閉じこもり、本を読み日記をつけて過ごす日々。
オルガは精神安定剤を過剰摂取し自殺を図り、精神科の病院に入れられる。同性同士で戯れる姿や未成年者の喫煙に直面する。孤立するオルガは集団リンチを受ける。退院後、母から「誕生日祝いに何がいい?」と聞かれ、「家を出たい」と願う。森の中の小屋で暮らし、トラック運転手として働き始める。職場で出会った美しいイトカと親密な仲になるが、彼女には別の恋人がいて破局を迎える。自暴自棄になり精神的にも不安定になったオルガは、医師である母に相談するが、処方箋を渡されるだけ。酒場でミラという母親を殺してムショにいたという中年男に声をかけられる。彼といるとなぜか心が安らぐオルガ。それでもオルガの内なる怒りは収まらない。「資料として手紙を書く」と前置きして、オルガは自身の生い立ちと、人間関係を築けないこと、自分を虐待した人々に報復することなどを書き綴る・・・

1973 年 7 月 10 日、チェコスロヴァキアの首都プラハで、路面電車を待つ群衆の中にトラックで突っ込み、8 人を死亡させ、12 人を負傷させるという重罪を犯したオルガ・ヘプナロヴァーの実話に基づく映画。犯行前、22 歳のオルガは新聞社に犯行声明文を送っています。人々から受けた虐待に対する復讐として、自殺では報復にならないので、社会に罰を与えると宣言。死刑判決が出た時にも、死刑を受け入れ控訴しません。
銀行員の父と歯科医の母という裕福な家に生まれたオルガが、なぜここまで思い詰めるほど、疎外感を抱えたのでしょう・・・ 両親はそこまで我が子に無関心だったのでしょうか・・・ 1975 年 3 月 12 日にオルガはチェコスロバキア最後の女性死刑囚として絞首刑に処されています。死刑を待つ間、誰も面接に来なかったとありました。そこまで彼女を見捨てた家族って??? と呆然です。モノクロームの美しい映像に空しさがさらに募ります。(咲)


2016年/チェコ・ポーランド・スロバキア・フランス/チェコ語/105分/B&W/5.1ch/1:1.85
日本語字幕:上條葉月  字幕監修:ペトル・ホリー
提供:クレプスキュール フィルム  シネマ サクセション 
配給:クレプスキュール フィルム
公式サイト:http://olga.crepuscule-films.com/
★2023年4月29日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか順次公開
posted by sakiko at 13:52| Comment(0) | チェコ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年04月22日

せかいのおきく

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監督・脚本:阪本順治
企画・プロデューサー・美術:原田満生
撮影:笠松則通
音楽:安川午朗
出演:黒木華(松村きく)、寛一郎(中次)、池松壮亮(矢亮)、眞木蔵人(孝順)、佐藤浩市(松村源兵衛)、石橋蓮司(孫七)

江戸時代末期。下肥汲みの矢亮(やすけ)と中次(ちゅうじ)は江戸の長屋を回り、川船で契約した農家へ運ぶ。厠のひさしで雨宿りをして、長屋に住むおきくと一緒になった。おきくは浪人の父親と二人暮らし、寺子屋で子どもたちに読み書きを教えている。大雨の後、流れ込んだ水で厠があふれてしまい、矢亮と中次はてんてこまい。普段臭い、汚いと蔑まれている汚穢屋(おわいや)の青年たちだが、いなくては困るのだ。
ある日、おきくの父源兵衛が何者かに討たれ、おきくも喉を切られる。命は取りとめたが、声を失ってしまった。

社会の底辺で生きる人々の暮らしを阪本順治監督が活写。白黒なのは汚穢屋(おわいや)さんの話だから?と勘ぐってしまうほど、汚水や貧乏長屋がアップになろうが画面は美しいです。鎖国を続けていた江戸時代、輸出入なしで自分たちの食べ物をなんとかしなければなりませんでした。農耕民族は田畑からより多く収穫するため、人糞を肥料にしてとってもエコな循環型社会を作っていたのです。この映画の始まりもそんなところから。
以前外国のドキュメンタリー『ウンチク うんこが地球を救う』がありました。今や水洗トイレが普及した日本では、目の前からなくなればその後どうなっているのか、想像もしないでしょう。貴重な資源を無駄にしないことをまた考えたほうがいいようです。
声を失うおきくを演じる黒木華さん、貧しくとも真摯に生きる寛一郎さん、池松壮亮さんが光っていた作品。(白)


2023年/日本/モノクロ/シネスコ/89分
配給:東京テアトル、U-NEXT、リトルモア
(C)2023 FANTASIA
http://sekainookiku.jp/
★2023年4月28日(金)ロードショー

posted by shiraishi at 21:15| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年04月16日

グレート・グリーン・ウォール  原題:The Great Green Wall

great green wall poster.jpg
© GREAT GREEN WALL, LTD

監督・脚本:ジャレッド・P・スコット
製作総指揮:フェルナンド・メイレレス(『シティ・オブ・ゴッド』) 他
出演:インナ・モジャ、ディディエ・アワディ、ソンゴイ・ブルース、ワジェ他

アフリカに緑を!
マリ出身の女優で歌手のインナ・モジャが気候変動の最前線を旅して、音楽で人々をつなぐドキュメンタリー。


2007年にアフリカ連合(AU)が主導して開始した「グレート・グリーン・ウォール(緑の長城)」プロジェクト。
アフリカの西セネガルから東端のジブチまで、気候変動で沙漠化が加速する8,000kmにわたる地域の壮大な植林計画。完成すれば、人々に生活の糧をもたらすアフリカン・ドリーム。
西アフリカのマリ出身で、パリを拠点に活躍するインナ・モジャがアフリカ横断の旅へ。セネガルからエチオピアまでの道中、セネガルのヒップホップの創始者ディディエ・アワディ、マリのブルース・バンドのソンゴイ・ブルースや、ナイジェリアのワジェなどと楽曲を制作し、各地でライブを重ねる。
「紛争で危険にさらされるのは常に女性」と、特に女性支援に情熱を燃やす。紛争孤児の少女たちと出会い、現実の過酷さに衝撃を受けつつも、「夢は叶えることができる」と、歌で皆を鼓舞していく・・・

地中海をいく溢れるほど人が乗った船が映し出されます。貧困から抜け出そうと、アフリカからヨーロッパに密入国しようとする人たち。命を落とす人も後を絶ちません。
アフリカが緑で豊かになれば、逃げだす必要もありません。このプロジェクトの達成目標は、2030年。命を救うためには、そんなに待てません。
その思いにかられて、アフリカを西から東へと精力的に啓蒙活動をするインナ・モジャの姿が眩しいです。
「夢は叶えることができる。“アフリカの時代”が来ると私は言うけど笑わないで」とインナ・モジャが歌に乗せて語る言葉を皆が信じて努力すれば、沙漠が緑で溢れる日も必ず来るでしょう。これ以上、気候変動が加速しないで!と願うばかりです。(咲)


2019年/イギリス/92分/ドキュメンタリー
配給:ユナイテッドピープル
公開サイト:https://unitedpeople.jp/africa/
★2022年4月22日(土)シアター・イメージフォーラム他全国順次ロードショー!
posted by sakiko at 12:11| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年04月15日

プーチンより愛を込めて(原題:Putin's Witnesses)

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監督・脚本・撮影:ビタリー・マンスキー
出演:ウラジーミル・プーチン、ミハイル・ゴルバチョフ、ボリス・エリツィン、トニー・ブレア、アナトリー・チュベイス、ベロニカ・ジリナ、ライサ・ゴルバチョフ、ミハイル・カシヤノフ 、ミハイル・レシン、ドミトリー・メドヴェージェフ、グレブ・パブロフスキー、クセーニャ・ポナマロワ 、ウラジスラフ・スルコフ

1999年12月31日、ロシア連邦初代大統領ボリス・エリツィンが辞任した。彼は自身の後継者としてウラジーミル・プーチンを指名、3ヶ月後に行われる大統領選挙までの間、ロシアの新しい憲法、国旗は若き指導者に引き継がれた。プーチン大統領候補の選挙用PR動画の撮影を依頼されたヴィタリー・マンスキー監督は、大統領選挙への出馬表明をせず、公約を発表しないまま、名目は違えど“選挙運動”を展開するプーチンの姿を記録していく。
ロシア各地へ足を運び、諸問題の解決、第一次チェチェン紛争の"英雄"たちへの慰問や恩師との再会を"演出"したプーチンのPRチームは、国民が抱く彼のイメージを「強硬」から「親身」へと変化させる。マンスキー監督は、オフィシャルカメラマンながら、ソ連時代の旗や国歌が使用されていることに不安を覚え、プーチンに直接斬り込んでいく。1999年と2000年の大晦日、2000年3月26日の開票日当日の、エリツィン元大統領の自宅での貴重映像を辿ることで、プーチンの本当の姿が炙り出されていく。

冒頭はマンスキー監督と家族のやりとり、プーチンが大統領になることへの危惧もこぼしていて、思わず「これ大丈夫なの」と思ってしまいます。大丈夫じゃないので、今はロシアを出ています。
24年前の若々しいプーチン大統領が観られて、現在とずいぶん違うのに驚きます。長いことトップにいることで、外側も内側も川津のでしょう。教え子が大出世して、自分に会いにくると知った先生が舞い上がる様子がほほえましいです。これは彼のイメージ戦略におおいに役だったようです。当選に歓喜するチームだった人々は、今や一人を残してそばにはいません。
バトンを渡したはずのプーチン大統領から電話がくるだろうと、エリツィン元大統領が電話機から離れずに待っているシーンがあります。胸中を去来するのはなんだったのか、憮然とした表情と、後につぶやく一言が忘れられません。
(白)


「ソビエト帝国の崩壊は、20世紀最大の地政学的悲劇」と称したプーチン。ロシアの国歌を、ソ連時代の国歌に歌詞は変えてはいるものの復活させ、「国民の大半がソ連時代を懐かしく思っている」と豪語。プーチンに密着して撮影していたマンスキー監督の映像の数々から、プーチンの本質が見えてきます。
元は、大統領候補としてのプーチンの選挙用PRに撮ったものだったはずなのに、「エリツィンが幸せだった時代の象徴になりそう」とつぶやく女性の姿もちゃんと捉えています。
1回の選挙で決まったものの、モスクワでプーチンが獲得したのは44%。エリツィンが20名の中から後継者に選んだプーチン。歴史に「もし」はありませんが、違う選択をしていたら、今の世界はどうだっただろうと思わざるをえません。辞任し、後継者を決め「重圧から解放された」と、家族に囲まれ笑みを浮かべるエリツィンでしたが、その後の後継者の動きに去就する思いも監督はしっかり伝えてくれます。 そして、未だにロシアを支配するプーチンに対する監督の思いも。「自分はただの証人と甘く見た代償を払った」という言葉が重く突き刺さります。 (咲)



2018年製作/ラトビア・スイス・チェコ・ロシア・ドイツ・フランス合作/カラー/102分
配給:NEGA
(C)Vertov, GoldenEggProduction, Hypermarket Film-ZDF/Arte, RTS/SRG, Czech Television2018
https://fromputinwithlove.jp/
★2023年4月21日(金)アップリンク吉祥寺、池袋シネマ・ロサ他全国順次公開
posted by shiraishi at 01:08| Comment(0) | ラトビア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年04月14日

高速道路家族 (原題:Highway Family)

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監督・脚本:イ・サンムン
美術:ソン・ソイル
出演:チョン・イル(ギウ)、ラ・ミラン(ヨンソン)、キム・スルギ(ジスク)、ペク・ヒョンジン(ドファン)

ギウと妻ジスク、子どもたちは、高速道路のサービスエリアを転々としテントを張って寝ている。ギウは毎日、サービスエリアにいる人に声をかけては事情を並べ立て、いくばくかのお金を借りている。彼らとは再び遭遇することがないからだ。ところが、以前借りたことのある女性ヨンソンにまた声をかけてしまった。ヨンソンは警察に届け出、あちこちで詐欺を働いたギウは逮捕された。
残された身重のジスクと幼い子ども2人を見かねたヨンソンは、自分の家に連れ帰って面倒をみることにした。

最初はほのぼのした家族ドラマかと思えば、なんと父親が寸借詐欺で日銭をかせぎ、子どもたちまで協力していました。ラ・ミラン演じるヨンソンは、中古家具を扱うやり手の女性経営者。口数の少ない夫は、妻が3人もの世話をするのに最初は反対しますが、決して薄情なわけではありません。子どもたちもだんだん懐いていきます。
ギウ一家がホームレスになったのには、わけがありました。気の毒に思ったヨンソン夫婦との人情ドラマに進む…だけではなく、意外な展開を見せていきます。ギウと家族の”新パラサイトファミリー”かと思えばまた一転。
チョン・イルの出演作が思い浮かばなかったのは、長くテレビドラマで活躍、映画には7年ぶりだったからのようです。初めからラストまでの表情の変化を観ていてください。このラストには観客の意見が分かれたそうです。これはハッピーエンドなのか、どうなのか?
新鋭イ・サンムン監督のオリジナル・ストーリー、これが初の長編作品。今後に注目。(白)


逮捕されたギウの妻子を中古家具店の一室に住まわせた女店主のヨンソンは、貫禄たっぷりだけど心優しい人物。夫との会話から、子どもを亡くした過去があるようでしたが詳しくは語られません。夫はヨンソンに頭があがらないのですが、雇用しているツェテンが大家から部屋代の値上げを言い渡されたから、給料をあげてやってほしいと頼む、これまた心優しい男。ツェテンは、名前から想像つく通りチベットの人。ギウの幼い息子に、「ツェテンは永遠の命の意味だよ」と、輪廻のことをわかりやすく語っていました。
ヨンソンを演じたラ・ミランさんは、ほんとに芸達者で、彼女が出ているとドラマでも映画でも観てみたいと思わせてくれる方。チョン・イル主演のドラマ「ポッサム ~愛と運命を盗んだ男~」で、盗まれる未亡人の一人として特別出演していて、大いに笑わせてくれました。
それにしても、高速道路のサービスエリアを一家で転々とするなんて! ホームレスになってしまう事情はいろいろあっても、子どもを巻き添えにしてしまうのは可哀そうです。でも、世の中にはいるのでしょうねぇ・・・(咲)
 


2022年製作/128分/G/韓国
配給:AMGエンタテインメント
(C)2022 Seollem film, kt alpha Co., Ltd. All Rights Reserved.
https://kousokudouro-kazoku.jp/
★2023年4月21日(金)シネマート新宿、アップリンク吉祥寺、池袋シネマ・ロサ他全国順次公開
posted by shiraishi at 20:23| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年04月09日

聖地には蜘蛛が巣を張る  原題:Ankabut-e moqaddas  英題:Holy Spider 

seichini kumoga.jpg
©Profile Pictures / One Two Films

監督:アリ・アッバシ(『ボーダー 二つの世界』
出演:メフディ・バジェスタニ、ザーラ・アミール・エブラヒミ

2001年、イランの聖地マシュハド。
濃い化粧をほどこし、寝ている幼い娘に声をかけ夜の街に出ていく娼婦。金持ちの家で一仕事した後、バイクの男に誘われる。金を持っているのを確認し男の家にあがるが、「汚れた女は排除する」と殺されてしまう。町の灯りを見晴らす丘に女を埋める男。
街では、この半年の間に娼婦たちが同じ手口で何人も殺され、街の人々は殺人鬼を「スパイダー・キラー」と呼んで恐れているが、捕まっていない。
テヘランに住む女性ジャーナリストのラヒミは、この娼婦連続殺人事件を追うため、故郷でもあるマシュハドに向かう。警察の捜査責任者や、聖職者の判事のもとを訪ねるが、確かな情報は得られない。それどころか、ラヒミがかつてセクハラ被害にあって職を追われた過去を指摘される。
ラヒミを案内してくれている地元紙の記者のもとに、一人殺すたびに「犯罪人じゃない。腐敗に対する聖戦だ」と殺人鬼から電話がかかってくるという。新聞に記事を書いてほしいらしい。
ある夜、ラヒミはサンドウィッチ屋でトイレを貸してほしいという娼婦らしい若い女性に「怪しい男を知らない?」と声をかける。「皆、怪しい」と答えるソグラと名乗る女性。
警察から、また一人殺されたと遺体発見現場に案内される。被害者はソグラだった。ついにラヒミは自ら娼婦の振りをして殺人鬼に接触を図る・・・

本作は、現在、デンマークを拠点に活動するアリ・アッバシ監督が、2000年~2001年にイランの聖地マシュハドで16人の娼婦を殺害し、“スパイダー・キラー”と呼ばれたサイード・ハナイの実話をもとに描いた物語。当時学生だったアリ・アッバシ監督はイランにいて、16人も殺した男になかなか判決が下らず、それどころか一部の市民や保守派メディアがサイードを英雄として称え始め、汚れた女たちを排除するという宗教的な務めを果たしただけだと擁護したことを知り、いつか映画にしたいと決意。本事件を扱ったマジアール・バハリの2002年のドキュメンタリーに出てきた女性ジャーナリストに着想を得て、架空のラヒミという女性記者が事件を追う形で描いたことで、連続殺人事件を取り巻く社会も見ることのできる作品になっています。
時折映し出されるサイードは、信心深い家族思いの男。一方で、イラン・イラク戦争の前線で殉死出来なかった負い目を感じていて、神に生かされた使命として汚れた娼婦を殺すのです。判決の下ったサイードに退役軍人の会が、裏で何とかすると言ったのもあり得る話だと思いました。
けれども、娼婦としてしか生きていけない弱者こそ社会が救うべきで、本作の中で、アッバシ監督は、ラヒミが訪ねた聖職者である判事に「困窮しなければ、体を売ることもない。政府が市民を守るべきだ」と語らせています。
このような内容も盛り込まれているにも関わらず、イランでの撮影許可は下りず、ヨルダンのアンマンで撮影されています。(友人のイラン人から、「ちゃんとイランに見える」とお墨付き)

ラヒミを演じたザーラ・アミール・エブラヒミは、本作でカンヌ国際映画祭女優賞を受賞。
彼女自身、第三者による私的なセックステープ流出によりスキャンダルの被害者となり、2008年、国民的女優として成功を収めていたイランからフランスへの亡命を余儀なくされています。
ラヒミのような女性はイランでは特別ではなく、知的で打たれ強く、様々な分野で活躍する女性が数多くいることも知っていただければと思います。革命後、1990年頃には大学に占める女性の割合は、理科系の学科でも6~8割に達し、大卒の女性が圧倒的に増えているのです。アフマディーネジャードが大統領の時に、大学の定員を男女公平に半々にするべきだと提言しましたが却下されています。
ヘジャーブ(髪の毛や身体の線を隠すこと)を強制されていて、女性蔑視が根強いと思われる一面もありますが、家庭では何より母親が尊敬されるイラン社会です。

ところで、マシュハドには、革命前の1978年5月に一度だけ行ったことがあります。町に着いて、バスの前に男性、後ろに女性と分かれて乗っているのを見て、さすが聖地はテヘランとは違うと思ったものです。(革命後は、テヘランでも大型バスは男女別になりました)
借りたチャードルを被って入ったシーア派8代目イマーム・レザー廟では、棺の周りを皆、涙を流しながらお詣りしていて、私も神聖な気持ちになったものです。一神教のイスラームですが、イランでは各地にシーア派の祖であるアリーの血を引いた子孫の廟があって参詣する人が多く、聖者崇拝が根強いことを感じます。
イマーム・レザー廟のあるマシュハドは、イラン国内で最大の聖地で、革命後、政府は特に力を入れて街を整備。イマーム・レザー廟の周辺に密集していた店舗や家を一掃し、廟を中心に広がった街は上から見ると蜘蛛の巣にも見えるようです。サイードが殺害した女性を埋めた丘から見える街の全景にどうぞご注目を! (とはいえ、あれはどこで撮ったのでしょう?) (咲)



2022年/デンマーク・ドイツ・スウェーデン・フランス/ペルシャ語/シネスコ/5.1chデジタル/118分
字幕翻訳:石田泰子
配給:ギャガ
デンマーク王国大使館後援
公式サイト:https://gaga.ne.jp/seichikumo/
★2023年4月14日(金)新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷、TOHOシネマズシャンテ他全国順次公開




posted by sakiko at 15:56| Comment(0) | デンマーク | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

マネーボーイズ(原題:金錢男孩 Moneyboys)

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監督・脚本:C.B. Yi(シービー・イー)
出演:クー・チェンドン(フェイ)、クロエ・マーヤン(ルールーほか)、リン・ジェーシー(シャオライ)、バイ・ウーハン(ロン)、ザック・ルー

田舎から都会に出てきて、恋人シャオライと暮らしているフェイ。親に仕送りするために男娼の仕事をしている。親はお金は受け取るものの、同性愛者の息子を一族の恥、として認めない。ある日フェイが顧客から暴行を受けてもどってきた。激高したシャオレはその男を探して仕返しをするが、男のt手下たちに袋叩きに遭ってしまう。警察に捕まるのを恐れたフェイは逃げ出し、シャオレイの元には帰らなかった。
5年後、男娼を続けて羽振り良いフェイのもとに、自分もフェイと同じ仕事をする、と幼馴染のロンが転がり込んできた。そしてフェイは偶然シャオレイと再会する。

C.B. Yi監督は中国からオーストリアに移住し、ウイーン・フィルム・アカデミーでミヒャエル・ハネケに師事しました。これが初長編です。ゲイカップルの切ない愛情と、社会での立ち位置、人間関係の葛藤を描いています。
フェイがアパートの5階の部屋から出ていく場面は長回しで、足を引きながら階段を降り、明るい外に出ていって初めてタイトルが出てきます。そして5年後、別の街で別の人との部屋。スコープ画面に必要なものを入れても、うるさくならない画面構成が美しいです。
主演のクー・チェンドンはギデンス・コー監督の『あの頃、君を追いかけた』(2011)の高校生役の印象が残っています。ボールペンで背中をつつかれていましたっけ。はや32歳になりました。
同い年のリン・ジェーシーの俳優デビューは遅く、台湾のテレビドラマ「悪との距離」(2019)「お仕事です!~The Arc of Life~」(2021)で人気が出ました。この2本は日本でも配信で見ることができます。『3人の夫』(2018)で驚かせたクロエ・マーヤンがこの作品では3人の女性を演じています。どの人か当ててね。(白)


2021年/オーストリア、フランス、台湾、ベルギー合作/カラー/シネスコ/120分
配給:ハーク
(C) KGP Filmproduktion, Zorba, ARTE France Cinéma,Flash Forward Entertainment, La Compagnier Cinematographique&Panache Productions 2021
https://hark3.com/archives/1872
★2023年4月14日(金)より全国順次公開

posted by shiraishi at 03:14| Comment(0) | オーストリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

search #サーチ2(原題:Missing)

search2.jpg

監督・脚本:ウィル・メリック、ニック・ジョンソン
撮影:スティーブン・ホールラン
出演:ストーム・リード(ジューン)、ヨアキム・デ・アルメイダ(ハビ)、ケン・レオン(ケヴィン)、エミー・ランデッカー(ヘザー)、ダニエル・ヘニー(パーク捜査官)、ニア・ロング(母グレース)、ティム・グリフィン(父ジェームス)、

母グレースが恋人とコロンビアに出かけた。父を亡くして以来、何かと過保護な母が留守になって、遊びたいさかりの女子高生ジューンは大喜び。しかし、こまめに連絡してきた母のメッセージがぷっつりと途絶えてしまった。使い慣れたSNSや検索サイトで母を探し回るが、手掛かりも行方もつかめない。コロンビアの代行サービス人や警察にも捜索を依頼する。母はどこへ行ってしまったのか。

seaech サーチ』の第2弾。シリーズとあるので、これからも続く予定なのか?失踪した娘を父親が探す前作は大ヒット、その監督だったアニーシュ・チャガンティは、今回は原案・製作です。今回は娘が母親を探します。デジタル世代の娘ジューンがツールを駆使して、消えてしまった母の痕跡を追っていきます。少し前までは、プロのハッカーがしていたことだったのに、いまや普通の女子高生が!時代は驚くほど進んでいます。
PCと携帯で外とつながり、自分の足で走り回らなくとも、しだいに明らかになっていく真相。前作に負けず劣らずスリリングです。
ジューン役のストーム・リードは『ワイルド・ロード』出演し、重要な少女役でした。まだ19歳、これからも活躍していくのでしょう。(白)


2022年/アメリカ/カラー/111分
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
https://www.search-movie.jp/
★2023年4月14日(金)ロードショー

posted by shiraishi at 03:05| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

幻滅(原題:Illusions perdues)

genmetu.jpg

監督・脚本:グザヴィエ・ジャノリ
原作:オノレ・ド・バルザック
脚色・台詞:グザヴィエ・ジャノリ、ジャック・フィエスキ
撮影:クリストフ・ボーカルヌ – AFC SBC
美術:リトン・デュピール=クレモン – ADC
衣装:ピエール=ジャン・ラロック - AFCCA
出演:バンジャマン・ヴォワザン(リュシアン)、セシル・ド・フランス(ルイーズ)、ヴァンサン・ラコスト(ルストー)、グザヴィエ・ドラン(ナタン)、サロメ・ドゥワルス(コラリー)、ジェラール・ドパルデュー、ジャンヌ・バリバー、ジャン=フランソワ・ステヴナン

19世紀前半のフランス。宮廷貴族が復活し、自由と享楽的な生活を謳歌していた。田舎に住む青年リュシアンは、文学を愛しいつか自分の詩集を出すことを夢みていた。貴族の人妻ルイーズは愛のない結婚をし、心の空白を埋めるように若いリュシアンを愛した。駆け落ち同然で2人はパリに向かう。憧れのパリに有頂天になるリュシアンは、あまりにも世間知らずで笑いものになってしまう。新聞記者のルストーの後押しで、記事を書く仕事にありついた。

文才を生かす道を見つけたリュシアンですが、貴族への憧憬も手放せません。母方の名前を名乗ることにこだわり、金銭感覚もなく破滅の道をたどってしまいます。若気の至りと言ってしまいたいところですが、人生は短く一度限り。上り詰めたかに見えても、そこは空洞でした。
愛情から彼を甘やかしてしまったルイーズとコラリー。引きずり込んだだけで正しく導けなかったルストーには、嫉妬心もあったでしょう。唯一、彼に友情を示したナタンをリュシアンは大切にできませんでした。グザヴィエ・ドラン良い役回りです。
バルザック原作のメディアの裏側を見せるものですが、その駆け引きや金儲け第一主義がずっと昔のこととは思えません。衣装と舞台(衣装さん美術さん素晴らしい!)を変えたなら、現代劇にもなります。タイトルの「幻滅」は誰が誰に?誰が何に?
視点を変えたら違う景色が見えるはず。(白)


2021年/フランス/カラー/シネスコ/149分
配給:ハーク
(C)2021 CURIOSA FILMS - GAUMONT - FRANCE 3 CINEMA - GABRIEL INC. - UMEDIA
https://www.hark3.com/genmetsu/
★2023年4月14日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 02:56| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年04月02日

ザ・ホエール   原題:The Whale

whale.jpg
(C)2022 Palouse Rights LLC. All Rights Reserved.

監督:ダーレン・アロノフスキー(『ブラック・スワン』『レスラー』
原案・脚本:サミュエル・D・ハンター
出演:ブレンダン・フレイザー、セイディー・シンク、ホン・チャウ、タイ・シンプキンス、サマンサ・モートン

恋人アランを亡くし、引きこもって過食を繰り返し272キロの巨体を抱えるチャーリーの1週間の物語

月曜日 大学のオンライン講座で生計を立てているチャーリー。歩行器なしでは動けない。
飛び込みで訪ねてきたニューライフ教会の若い宣教師トーマスの助けを得て、亡きアランの妹で看護師のリズを呼ぶ。頑なに入院を拒むチャーリーの体調管理をする頼りになる存在だ。

火曜日 余命わずかと悟ったチャーリーは、離婚以来疎遠だった17歳の娘エリーを呼ぶ。自分を捨てた父に憎悪剥き出しのエリー。関係修復したいチャーリーは、エリーがこの家に通ってエッセイを書くことと引き換えに、全財産12万ドルを与える約束をする。

水曜日 ニューライフの宣教師トーマスが、チャーリーを救済したいと再び訪ねてくる。リズはニューライフの宣教師だった兄アランが教会から理不尽な仕打ちを受けて非業の死を遂げたことから恨んでいた。

木曜日 リズがエリーの母親で、チャーリーの元妻メアリーを連れてくる・・・

木曜日のその後と、金曜日に何が起こったのかは、どうぞ劇場で!
冒頭、大学のオンライン授業で、生徒たちの顔は全員画面に映っているのに、講師の顔だけが映っていません。
「白鯨」をテーマに、文の書き方について丁寧に講義する講師。これが、チャーリー。カメラが壊れていると言って、画面に顔出ししていないのです。理由がわかった時には、思わずのけぞります。いえ、チャーリー本人も椅子から崩れ落ちる巨体。
チャーリーを演じたブレンダン・フレイザーは、毎日メーキャップに4時間かけ、45キロのファットスーツを着用して40日間の撮影に臨んだとのこと。まさに苦行。
チャーリーを助けるという使命感を持って張り切るニューライフ教会の宣教師トーマスが、逆にチャーリーの影響を受けていく姿も面白いです。
それにしてもコロナ禍ですっかり定着したオンライン講座やミーティング。私も顔出ししたくないので、チャーリーの気持ち、よ~くわかります。(咲)



<第95回アカデミー賞>
主演男優賞(ブレンダン・フレイザー)受賞
メイクアップ&ヘアスタイリング賞受賞


配給:キノフィルムズ
2022年/アメリカ/英語/117分/カラー/5.1ch/スタンダード
字幕翻訳:松浦美奈
配給:キノフィルムズ
公式サイト:https://whale-movie.jp/
★2023年4月7日(金)、TOHOシネマズ シャンテほか全国公開




posted by sakiko at 20:49| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

この小さな手

konotiisanate.jpg

監督:中田博之
原作:郷田マモラ/吉田浩 「この小さな」
脚本:守口悠介
撮影:根岸憲一
音楽:Rhythm & Note
出演:武田航平(和真)、佐藤恋和(ひな)、安藤聖(小百合)、寺脇康文、松下由樹、津田寛治、柚希礼音

イラストレーターの和真には妻の小百合と3歳の娘のひながいる。家事や子育てをほとんど妻任せにしてきた和真が居酒屋で眠り込んだ夜、小百合は交通事故に遭って入院してしまった。一人で眠っていた娘のひなが目覚めても誰もいない。警察に保護されて、施設に入ることになってしまった。小百合の意識は戻らず、和真はひなの世話ができないとみなされ、連れ帰ることはできなかった。

父親の自覚が足りない和真、妻がいないと子どもの世話もできず、家事も滞ってしまいます。これはそういう目に遭わないだけで、似たような男性はたくさんいるのではないでしょうか?逆に夫がいないと、家計を支えるのに四苦八苦する女性も。
無事に家族そろっているのは、当たり前でなく「有難い」ことなのだ、と再認識します。
和真は一時荒れてしまいますが、周囲の助けもあってちゃんと「ひなの父親」になろうと努力を始めます。3年間いかに関わらないできたか、と痛切に反省した和真はちょっとずつちょっとずつ、ひなに近づいていきます。小さな手をつなげるでしょうか。
分業に慣れてしまわないで、いつでもヘルプに入れるって大事。お互いが理解できて、楽なはずです。和真になったつもりで、自分だったらと考えましょう。(白)


2022年/日本/カラー/90分
配給:フルモテルモ
(C)映画「この小さな手」製作委員会
https://holdyourhand-movie.com/
★2023年4月8日(土)ユーロスペースほか全国順次公開
posted by shiraishi at 20:35| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

パリタクシー 原題:Une belle course

paristaxi.jpg
(C)2022 - UNE HIRONDELLE PRODUCTIONS, PATHE FILMS, ARTÉMIS PRODUCTIONS, TF1 FILMS PRODUCTION

監督・脚本:クリスチャン・カリオン(『戦場のアリア』)
出演:リーヌ・ルノー、ダニー・ブーン

パリのタクシー運転手シャルル。川向こうに高層ビルやエッフェル塔が見える。「川沿いは避けろ」という客に、「こっちは道のプロ」と譲らない。嫌な客を降ろしたところに、オペレーターから配車の指示が入る。ある老婦人をパリの反対側の老人施設まで送るという依頼。乗り込んできたマドレーヌと名乗るマダム。「半年前に階段から落ちて介護施設に入ることになったの。いくつに見える?」と聞かれ、「80位?」と答えると、「お上手ね。92歳よ。戦前、ヴァンセンヌで生まれたの。ちょっと寄ってくださる?」と頼まれる。遠回りだというシャルルに、「初キスは16歳。相手はアメリカ軍人のマット」と身の上話を始めるマドレーヌ。運転手に年を聞く。「46歳、名はシャルル」とやっと笑顔を見せるシャルルに、「一つの笑顔で1歳若返ると父から教えられた」とマドレーヌ。その父が、1943年10月7にナチスに銃殺されたことが壁に記されている。「父の死を知った数日後、米軍のマットと知り合い3か月一緒に過ごしたの。人生で一番幸せな日々だった。二度と会うことはなかったけど、知らない間に素敵な贈り物を貰っていたの。3500グラム、50cm。私たちの息子マチュー」
こうして、マドレーヌは自分の歩んだ人生を次々にシャルルに語り、ゆかりの場所に寄り道をしていく・・・

今は一人暮らしの老婦人マドレーヌが、かつての思い出の場所を辿るロマンチックな物語かと思いきや、そんな軟な話ではありませんでした。私生児を連れての結婚。1950年代のフランスでは、何をするにも夫の許可が必要で、大変な思いをしたことが語られます。仕事をするにも、銀行口座を開くにも夫の許可がいる時代だったことを知りました。
マドレーヌの身の上話を聞くうちに、シャルルもだんだん打ち解けてきて、自分のことも語り始めます。これがまた引き込まれる話なのです。そしてマドレーヌとシャルルの人生が素敵に交わる結末に、清々しい思いになりました。
クリスチャン・カリオン監督には、『戦場のアリア』が2006年のフランス映画祭で上映された折に、(白)さんと一緒にインタビューしています。(シネマジャーナル67号に掲載)とても温和な方でした。
国民的シャンソン歌手リーヌ・ルノーとフランスを代表する大人気コメディアンのダニー・ブーンを起用して描いた本作。パリの町を彷徨いながら、人生とは?と考えさせてくれる素敵な1作です。(咲)



2022年/フランス語/91分/スコープ/カラー/5.1ch
日本語字幕:星加久実
配給:松竹
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/paristaxi/
★2023年4月7日(金) 新宿ピカデリー、角川シネマ有楽町ほか全国順次公開

posted by sakiko at 20:32| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ガール・ピクチャー(原題:Tytot tytot tytot)

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監督:アッリ・ハーパサロ
脚本:イロナ・アハティ、ダニエラ・ハクリネン
出演:アーム・ミロノフ(ミンミ)、エレオノーラ・カウハネン(ロンコ)、リンネア・レイノ(エマ)

ミンミとロンコは同じ学校に通う親友、放課後はスムージーやさんで一緒にアルバイトをしている。なんでもうちあけられる2人は、今日もおしゃべりに花を咲かせている。男性と一緒にいても何も感じないロンコは、自分がほかの人と違うのではと悩んでいる。理想の相手を探してパーティに参加した2人は、フィギュアスケーターのエマと出会った。

アッリ・ハーパサロ監督と2人の脚本家イロナ・アハティ、ダニエラ・ハクリネンは自分たちの少女時代を振り返りながら、この3人の少女たちに訪れる3度の金曜日をストーリーにしました。感受性の強い年頃の3人があれこれ悩み、失敗もしながらちょっとずつ前進します。”Tytot tytot tytot”=”girl.girl,girl"女の子をしかりつけるときに使う言葉。監督はこれをいい意味で使いたかったそうです。応援のエールかな。行け行け女の子!(白)

窓の外に湖が見える部屋、限定版のムーミン・マグ(使い方がユニーク!)など、フィンランドらしいアイテムが出てくる中で描かれる17~18歳の日常生活。その年頃の少女たちの恋や将来への悩みは世界共通でしょう。なんでも打ち明けることのできるミンミとロンコの仲を羨ましく思いました。
フィギュアスケーターのエマは、世界選手権参加を目指していて、プレッシャーに押しつぶされそうです。友達の誕生日パーティに行けないというエマに「息抜きも必要よ」と言うママ、素敵です。エマはスムージーやさんでロンコと知り合うことで、ちょっと羽目を外すことを覚えます。無駄な時間を過ごすことも、心の余裕に繋がるのですね。何より、心の通じ合える友と過ごす時間は大切!
それにしても、スムージーの名前が面白いです。「ライムの情熱」や「緑は最高」は想像がつくとして、「呼吸」「あなたは完璧」って、どんな味? (咲)


2022年・第38回サンダンス映画祭ワールドシネマドラマ部門で観客賞を受賞

2022年/フィンランド/カラー/シネスコ/100分
日本語字幕:松永昌子
配給:アンプラグド
(C)2022 Citizen Jane Productions, all rights reserved
https://unpfilm.com/girlpicture/
★2023年4月7日(金)新宿シネマカリテ、YRBISU GARDEN CINEMAほか全国順次ロードショー




posted by shiraishi at 19:36| Comment(0) | フィンランド | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

仕掛人・藤枝梅安2

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監督:河毛俊作
原作:池波正太郎
脚本:大森寿美男
撮影:南野保彦
衣装デザイン:宮本まさ江
音楽:川井憲次
出演:豊川悦司(藤枝梅安)、片岡愛之助(彦次郎)、おもん(菅野美穂)、小野了(与助)、高畑淳子(おせき)、小林薫(津山悦堂)
椎名桔平(峯山又十郎/井坂惣市)、佐藤浩市(井上半十郎)、一ノ瀬颯(いちのせはやて)

梅安と彦次郎が墓参りのため京に向かう途中、彦次郎が旅姿の武士を見とがめ血相を変える。その男は彦次郎の妻子を死に追いやった非道な仇だった。初めて仔細を聞いた梅安は、彦次郎の想いを理解するものの、その武士と彦次郎のいう男が同じとは思えない。同じ旅籠に泊まり探ってみると、松平甲斐守の家臣・峯山又十郎という男だった。梅安の恩人である津山悦堂ともつながりがある又十郎は、彦次郎の憎む男とは別人と確信する。
元締“蔓”の白子屋菊右衛門と再会した梅安は、仕掛を引き受ける。一方、すれ違った梅安に驚く浪人・井上半十郎もまた昔梅安と因縁があるのだった。

仕掛人・藤枝梅安』の続編。1のラストにちらりと登場した武士の正体と、仇と憎む彦次郎との関わりが明らかになります。
椎名桔平さんのこういう役を初めて観ました。実直な武士役はもちろんお似合い、浪人役では笑いながら悪行をなします。いやはやすごく怖い。梅安の使う鍼は見つかりにくいためなのはもちろん、死ぬときは一瞬。
”極悪人”には天誅を!と思いますが、最期を迎える悪人に池波さんがかけた温情のような気がします。池波さんの著作は数多あります。この時代劇シリーズ、ぜひ続いてほしいものです。(白)


2023年/日本/シネスコ/119分/G
配給:イオンエンターテイメント
(C)「仕掛人・藤枝梅安」時代劇パートナーズ42社
https://baian-movie.com/
★2023年4月7日(金)ロードショー

posted by shiraishi at 15:19| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

イントゥ・ザ・ネイチャー 自然が教えてくれること(原題:Into America's Wild)

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監督:グレッグ・マクギリブレイ
脚本:スティーブン・ジャドソン
ナレーション:モーガン・フリーマン、日本版:野口聡一
出演:ジョン・ヘリントン、アリエル・トウェト、ジェニファー・ファー・デイビス

人類が北米大陸に足を踏み入れてからおよそ2万年。アラスカの原野、オレゴンの緑豊かな海岸線、古代渓谷、アパラチアン・トレイルなど、そこには大自然という名の美しい宝物が広がっています。本作は、3人の水先案内人と共に、劇場にいながら、アメリカの知られざる自然の絶景ポイント28か所を体験し学べるドキュメンタリー映画。

水先案内人の3人は、ジョン・ヘリントンはネイティブアメリカン初の宇宙飛行士、アリエル・トウェトはアラスカ出身のパイロットでテレビパーソナリティ、ジェニファー・ファー・デイビスは全米初記録を樹立した長距離ハイカー。IMAXの美しい映像でアメリカの知られざる自然をめぐってください。自分も行ってみたくなりますが、ともあれ40分ひたってみると、気分がゆったりします。
日本版ナレーションを担ったのは、宇宙飛行士の野口聡一さん。宇宙から見た地球がどんなに美しかったかと語ります。あの青い星に自分たちが住んでいるのだと思うと、大切にしたい気持ちがわきます。目に見えない国境をめぐっていまだ争いを続けている国のトップたちみんなが、あの宇宙空間から見える地球に想いを馳せたなら、もっと大きな視座を持てるでしょうに。想像力がないから争うのか…(白)


激しく波打つ海、流れる雲、険しい雪山、満天の星・・・ 次々に展開する大自然に心が洗われるよう! 大都市に暮らす人間に自然は不可欠。子どもたちに自然を味わってもらうための旅。愛を交わす鳥たちの姿も。子どもたちは自然の営みの大切さを学んでいきます。「私が親切にすれば、相手は笑顔になってくる」という言葉も心に響きました。大自然が私たちを育んでくれることをあらためて思いました。大自然の中で、人間はちっぽけな存在。自然に逆らわず、お互いを敬いながら暮らしていきたいものですね。(咲)

2020年/アメリカ/カラー/シネスコ/40分/IMAX
配給:さらい
(C)MMXX VisitTheUSA.com
https://intothenature.jp/
★2023年4月7日(金)グランドシネマサンシャイン池袋ほかロードショー
posted by shiraishi at 15:15| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ノートルダム 炎の大聖堂(原題:Notre-Dame brule)

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監督:ジャン=ジャック・アノー
脚本:ジャン=ジャック・アノー、トマ・ビデガン
撮影:ジャン=マリー・ドルージェ
出演:サミュエル・ラバルト
ジャン=ポール・ボルデ
ミカエル・シリニアン
ジェレミー・ラウールト

2019年4月15日、ミサが行われていたころノートルダム大聖堂で大規模火災が発生。最初は古い警報機の誤作動だと、それに慣れた職員は取り合わない。しかし炎は大聖堂の高所から少しずつ燃え広がっていた。立ち上る煙が外からも見えるようになり、多くの情報が寄せられる。出動した消防車は込み合った道路や、大聖堂の狭く入り組んだ通路によって阻まれ、火元になかなかたどり着けない。聖職者が「ぜめてこれだけは持ち出して」と懇願する「いばらの冠」など、かけがえのないキリストの聖なる遺物を救うために、勇敢な消防士たちは決死の覚悟で突入する。

ニュースで大きく報じられた大聖堂の火災を、本物かと見まがうような迫力の映像で見せます。映画が主に描くのは、あの大火災の中、命がけで消火活動にあたった消防士たち。適切な判断と指示をどう出すのか、小さな模型で人はどう動き、それを追うカメラの位置も考えます。主要場面では燃え落ちてしまう大きな実物大のセットなど、職人技が詰め込まれた歴史的な建造物が再現されました。当時の資料や映像をどれほど精査したことか。
火事の熱で溶解し、屋根から地面や消防士のヘルメットに滴り落ちるのは尖塔や屋根に使われていた何百トンもの鉛。微粒子の鉛は黄色い煙となって空へ上り、後に降ってきてパリを汚染したそうです。それが気がかり。
ジャン=ジャック・アノー監督が長くこだわり続けているIMAXカメラで撮影されている映像からは、炎の熱まで伝わってきそうです。ぜひ大きな画面でご覧ください。(白)


2021年/フランス、イタリア/カラー/ビスタ/4K/110分
配給:TAR CHANNEL MOVIES
(C)2022 PATHE FILMS - TF1 FILMS PRODUCTION - WILDSIDE - REPERAGE - VENDOME PRODUCTION
https://notredame-movie.com/
★2023年4月7日(金)IMAXロードショー
posted by shiraishi at 14:40| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

最高の花婿ファイナル   原題:Qu'est-ce qu'on a TOUS fait au bon Dieu?

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(C)2021 LES FILMS DU PREMIER - LES FILMS DU 24 - TF1 FILMS PRODUCTION


監督:フィリップ・ドゥ・ショーヴロン『最高の花婿』『最高の花婿アンコール』
脚本:フィリップ・ドゥ・ショーヴロン、ギィ・ローラン
出演:
クロード・ヴェルヌイユ(パパ):クリスチャン・クラヴィエ
マリー・ヴァエルヌイユ(ママ):シャンタル・ロビー
ラシッド・ベナセム(長女の夫 アラブ人 ムスリム):メディ・サドゥアン
ダヴィド・ヴェニシュ(次女の夫 ユダヤ人):アリ・アビタン
シャオ・リン(三女の夫 中国人):フレデリック・チョウ
シャルル・コフィ(四女の夫 コートジボワール出身 クリスチャン):ヌーム・ディアワラ
イザベル・ヴェルヌイユ(長女):フレデリック・ベル
オディル・ヴェルヌイユ(次女):アリス・ダヴィ
セゴレーヌ・ヴェルヌイユ(三女):エミリー・カーン
ロール・ヴェルヌイユ(四女):エロディー・フォンタン
アンドレ・コフィ(四女の婿シャルルのパパ):パスカル・ンゾンジ
マドレーヌ・コフィ(シャルルのママ):サリマタ・カマテ

異文化の背景を持つ婿たちが、それぞれの事情で、故国に嫁を連れて帰ろうとしたのを、なんとか食い止め、一安心したクロードとマリー夫妻。クロードは売れない本の執筆に勤しんでいる。だが、婿たちから、やれ安息日だ、絵の個展だ、芝居の初日だと声がかかり、なかなか落ち着いて執筆できない。そんな折、個性的な絵を描く三女セゴレーヌの個展が開かれて、ドイツ人の富豪で著名なアートの収集家ヘルムートがセゴレーヌの作品に興味を持って接触してくる。夫のシャオはヘルムートの積極的なアプローチに心穏やかでない。クロードは、そんな様子を見て離婚第 1 号になるかもと内心ほくそ笑む。大富豪でハンサムなヘルムートと再婚してくれればという次第。しかしヘルムートの目的はセゴレーヌではなかった・・・。
そんな中、もうすぐ結婚40年のエメラルド婚を迎えるクロードとマリー夫妻をお祝いしようと娘たちはサプライズパーティーを計画して婿たちに話を持ちかける。それは婿たちの両親もみんな呼び寄せて親戚一同が集まって二人を祝おうというものだった。果たしてイスラエル、アルジェリア、中国、コートジボワールから集結した両親たちが無事一緒にパーティーを楽しめるのだろうか?

オレンジ一つとっても、「イスラエル産のオレンジは美味しい」といえば、「アルジェリア産も美味しい」「食べに行きたいけど入国拒否される」といった具合で、国際情勢が反映される出自の違う婿たち。ちょっと口喧嘩になると「国連軍を呼ばなきゃ」と冗談も出ます。
それでも、宗教や民族の違う婿たちのお蔭で、肌の色も違う大きな親戚の輪が広がるのは素敵なこと。映画の最後に流れる曲の「私たちは似ている。同じ血が流れている」という歌詞が示しているように、外見は違っても、人間の本質は同じだと、本作はしっかり教えてくれます。ドタバタ度は、さらに増しましたが、年をとっても恋に無縁でないことも描いていて、ほっこり♪ (咲)

2022 年/フランス/仏語/音声:5.1ch/スクリーンサイズ:Vista 1998 x 1080(1:1.85)/98 分
日本語字幕:横井和子
配給:セテラ・インターナショナル
公式サイト:http://www.cetera.co.jp/hanamukofinal/
★2023年4月8日(土)より新宿K'scinemaほか全国順次公開
posted by sakiko at 06:34| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする