2023年03月26日
ケアを紡いで
監督:大宮浩一
企画:鈴木ゆずな
撮影:田中圭
出演:鈴木ゆずな・翔太夫妻、友人たち
ありのままを記録してもらえれば—そう語る看護師の鈴木ゆずなさん。
27歳でステージ4の舌がんの診断を受けた彼女は、仕事を休み、治療を続けています。やりたいことをリストに書き出して、家族や友人を招いて念願の結婚披露パーティーをひらいたり、富士山に登ったり。一方でゆずなさんは日々の気づきを言葉にしていきます。
「生きにくさを感じる人は他にもたくさんいますよね」
「ネガティブな自分を抑圧せず、素直に受け入れた」
「“今、自分は辛いんだな”と否定も肯定もせずただ受け入れる」
本作は、ゆずなさんが夫の翔太さんや友人たち、そしてあらたに出会ったNPO法人「地域で共に生きるナノ」の仲間たちと時を重ね、命と向き合い、日々の暮らしを紡いでいく姿を描くドキュメンタリー映画です。
生まれてきたら、いつかは死ぬときが来ます。でも100歳の長寿が珍しくない時代、20代で癌になったゆずなさん。映像を残すことを望みました。看護師の仕事柄、知識は豊富、自分の病気と冷静に向き合っています。ゆずなさんを支えるご家族やお友達の映像もたくさんはさまれています。いつもそばにいた旦那様の翔太さん、他人の私ですがありがとうと言いたいです。
シネジャでは、頼もしいスタッフだった(梅)さんが闘病を経て亡くなりました。もう10年になりますが、ポスターの「帽子をかぶって眼鏡をかけているゆずなさん」が彼女に見えて、思い出が蘇ってきました。(白)
2022年/日本/カラー/89分
配給:東風
(C)大宮映像製作所
https://care-tsumuide.com/
★2023年4月1日(土)ロードショー
2023年03月25日
わたしの見ている世界が全て
監督:佐近圭太郎
脚本:末木はるみ、佐近圭太郎
撮影:村松良
音楽:大橋柾人
出演:森⽥想(熊野遥風)、中村映⾥⼦(熊野実和子)、中崎敏(熊野拓也)、熊野善啓(熊野啓介)、松浦祐也、川瀬陽太、カトウシンスケ、⼩林リュージュ、新⾕ゆづみ、三村和敬、堀春菜
熊野遥風は、大学進学を機に実家を飛び出し、ベンチャー企業で活躍していた。しかし、目標達成のためには手段を選ばない性格が災いし、パワハラを理由に退職に追い込まれる。復讐心に燃える遥風は、自ら事業を立ち上げて見返そうとするが、資金の工面に苦戦。母の訃報をきっかけに実家に戻った遥風は、3兄弟に実家を売って現金化することを提案する。興味のない姉と、断固反対する兄と弟。野望に燃える遥風は、家族を実家から追い出すため、「家族自立化計画」を始める―。
遥風はデキル女性ですが、自信があるあまりやり方は強引で自分のペースだけで生きています。少しだけ他の人への配慮があれば波風たたないのに、見えているのは自分の世界だけ。一人で生きる分にはそれでいいですが、巻き込まれる周りは大変。クビになったときも、わが身を振り返ることはありません。
家を出たのも家族と価値観が違いすぎたから。今は自分の起業資金のために、親の残した実家を売ろうと躍起です。兄弟をなんとかしたくともモノを片付けるようなわけにいきません。親亡き後、どこにでも起こりそうなすったもんだが描かれます。
遥風の思惑は外れるのか?家はいったいどうなるのか?
あなたは誰に親近感がわくでしょうか?
佐近(さこん)監督、前作『東京バタフライ』に続く⻑編⼆作⽬。森⽥想(こころ)さんは、本作にて、マドリード国際映画祭主演⼥優賞(外国映画部⾨)を受賞しました。(白)
2022年/日本/カラー/アメリカンビスタ/82分
配給:Tokyo New Cinema
(C)2022 Tokyo New Cinema
https://tokyonewcinema.com/works/wataseka/
★2023年3月31日(金)ロードショー
2023年03月22日
屋根の上のバイオリン弾き物語 原題:Fiddler's Journey to the Big Screen
製作・監督・編集:ダニエル・レイム
出演:ノーマン・ジュイソン、ロバート・ボイル、ジョン・ウィリアムズ、トポル
人気ミュージカル「屋根の上のバイオリン弾き」を映画として再構築したノーマン・ジュイソン監督の思いとは?
ショーレム・アレイヘムのベストセラー小説「牛乳屋テヴィエ」を基にしたミュージカル「屋根の上のバイオリン弾き」は、19世紀末のウクライナ地方に暮らすユダヤ人一家を描いた物語。テヴィエには、5人の娘がいて、政情が悪化するなかでも、それぞれに恋をする。そんな中、ついにユダヤ人の強制退去命令が出て、村人たちが村を離れる日が来る・・・
「カット!」とノーマン・ジュイソン監督が指示する1971年当時の撮影シーンで始まる本作。監督だけでなく、音楽のジョン・ウィリアムズや主人公テヴィエを演じたトポル、3人の娘役たちへのインタビューや、ロケ地を巡る困難、舞台セットや撮影に凝らした数々の工夫などを追って、『屋根の上のバイオリン弾き』の知られざる魅力を明らかにする。
ノーマン・ジュイソン監督が小学生の時に仲間外れにされていたシドニーというユダヤ人の少年と仲良くしていて、一緒にシナゴーグによく行ったそう。ラビに「両親はシナゴーグに来ないね」と言われ、「教会に通ってる」と答えたら、シナゴーグから締め出されてしまったというエピソードが紹介されました。「Jewison」という名字は、Jew(,ユダヤ人)のson(息子)なのに、ユダヤ人でないのが残念だったそうで、ユダヤ人からはユダヤ人になりたがる変人と言われたという話が可笑しかったです。結婚式は女性のラビを招いて、ユダヤ式に天蓋の下で行ったそうで、筋金入りのユダヤ好きです。
そんな ノーマン・ジュイソン監督がミュージカルを映画化する時に、舞台では不可能だった「故郷を追われたユダヤ人の歴史」を盛り込んで描こうとしたことが、本作の中で語られていました。
『屋根の上のバイオリン弾き』が日本で公開されたのは1971年12月4日。私が大学1年生の時のことです。♪サンライズ サンセット~♪の哀愁ある歌と共に、生まれた地を去らなければいけない人たちの悲哀が心に深く残りました。
中学生のころに「アンネの日記」を読んで、第二次世界大戦の時にユダヤ人がナチスドイツに迫害されたことはすでに知っていましたが、『屋根の上のバイオリン弾き』を観て、ユダヤ人を嫌ったのはドイツだけではないことに気づいたのでした。なぜヨーロッパでユダヤ人が嫌われるのかに興味を持ったのは、この映画が原点だったような気がします。
50年以上の時を経て、この映画が出来た背景を知ることができたのは、この上のない喜びでした。 願わくば、1971年の『屋根の上のバイオリン弾き』がリバイバル公開されるといいのですが、今のところ無理とのことで残念です。(咲)
(咲)さんと偶然同じ日に試写を拝見。終わってすぐに「この映画観たいよねー」と同じ感想がこぼれました。それくらい面白い舞台裏のエピソードがたくさん詰まっていました。
帰宅して調べましたら、DVDは以前に何度か発売されたようです。中古を探してみます。私は森繁久彌さんの舞台を映像で観たことがあり、今回文庫本で原作を読みました。これまで仲良く暮らしていた村に、「お上」からの厳命があり、従わねばならない役人とテヴィエとのやりとりが痛切です。娘たちが嫁いだ先のそれぞれの事情も描かれています。戦争を始めたのは、国。庶民は兵士になり、戦火に追われ、理不尽と思いつつ従わねばならないのは、昔も今も変わらず。信仰は支えになると耐える人々が悲しいです。(白)
☆公開記念トークイベント☆
アップリンク吉祥寺 いずれも14:00~の回上映終了後
4月1日(土):寺﨑秀臣さん
(ミュージカル「屋根の上のヴァイオリン弾き」演出家)
4月2日(日):渡辺えりさん(女優・演出家・劇作家)
2022年アトランタ・ジューイッシュ映画祭最優秀ドキュメンタリー映画賞
2022年ヒューストン・ジューイッシュ映画祭最優秀作品賞
2022年リバーラン国際映画祭最優秀ドキュメンタリー賞 他
2022年/米国/カラー/英語/88分/ドキュメンタリー
配給:パンドラ
公式サイト:http://www.pan-dora.co.jp/yanenoue/
★2023年3月31日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、アップリンク吉祥寺にて公開
トリとロキタ 原題:Tori et Lokita
(C)LES FILMS DU FLEUVE - ARCHIPEL 35 - SAVAGE FILM - FRANCE 2 CINEMA - VOO et Be tv - PROXIMUS - RTBF(Television belge)
監督・脚本:ジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ
出演:パブロ・シルズ、ジョエリー・ムブンドゥ、アウバン・ウカイ、ティヒメン・フーファールツ、シャルロット・デ・ブライネ、ナデージュ・エドラオゴ、マルク・ジンガ
カメルーン出身の10代の少女ロキタと、ベナン出身のまだ幼い少年トリ。ふたりはアフリカからベルギーにたどり着く途中で出会い、お互いを本当の姉弟のように思って支えあっている。すでにビザが発行されたトリの姉と偽り、ロキタはビザを取得しようとしている。だが、ビザ取得のための面接でうまく答えられずパニック障害を起こしてしまう。
トリとロキタはイタリア料理店でカラオケを歌って小銭を稼いでいるが、実はシェフのベティムが仕切るドラッグの運び屋が裏の仕事。さらに、偽造ビザと引き換えに、ロキタはベティムが提案する孤独で危険な仕事を引き受ける。姉同様のロキタと引き裂かれたトリは、なんとかロキタの居場所を探し出す・・・
世界には、様々な事情で生まれた国を出ざるを得ない人たちが後を絶ちません。トリやロキタのように、未成年なのに親兄弟とも離れて、ヨーロッパにたどり着く者も多々。どれほど孤独で不安な思いを抱えていることでしょう。そんな人たちにつけ込む密入国手配師や、闇の仕事をさせる者たち。人間の尊厳をないがしろにされながら、故国に残る家族に送金しようと過酷な仕事に耐えるロキタ。異国で知り合い本当の姉のようにロキタを慕うトリ。純粋な心を失わない二人の姿に胸がしめつけられる思いでした。
世界の皆が平穏に暮らせる時代はいつになったら来るのでしょう… (咲)
ベナンもカメルーンもアフリカの西側海沿いにある国です。どちらも海外へ人が違法に出て行くほど、経済的に恵まれません。両国はフランス語が公用語(ということはかつてフランス領だった?)で、二人はベルギーでもなんとか会話できるようです。ロキタとトリの事情は、詳しくは語られませんが、たぶんロキタとトリと似たような子どもたちが世界各国にいるのでしょう。
89分と最近では短めの作品です。その中で外国で生きることの厳しさ、助け合う二人の深い絆を十分に描いています。知られた子役でなく、無名の新人の出演にドキュメンタリーのような生々しさがありました。
ロキタを救うために、アクションヒーローばりの活躍をするトリにハラハラしました。(白)
第75回カンヌ国際映画祭 75周年記念大賞受賞
2022年/ベルギー、フランス/89分
日本語字幕:横井和子
配給:ビターズ・エンド
公式サイト:https://bitters.co.jp/tori_lokita/
★2023年3月31日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、渋谷シネクイントほか全国順次公開
シング・フォー・ミー、ライル 原題:Lyle, Lyle, Crocodile
監督:ウィル・スペック、ジョシュ・ゴードン
脚本:ウィル・デイヴィス
音楽:ベンジ・パセック、ジャスティン・ポール
原作:バーナード・ウェーバー 『ワニのライル』シリーズ
声の出演:ショーン・メンデス
出演:ハビエル・バルデム、コンスタンス・ウー、ウィンズロウ・フェグリー、スクート・マクネイリー、ブレット・ゲルマン
〈日本語吹替版キャスト〉大泉洋、石丸幹二、水樹奈々、関智一、宮岸泰成
ニューヨーク。
何をやってもうまくいかないショーマンのヘクター。ある日、古びたペットショップで、魅惑の歌声を耳にする。歌っていたのはなんとワニ! ヘクターはそのワニを買って帰り、ライルと名付けて相棒に仕立てるが、いざステージに立つとライルは委縮して歌えない。
ヘクターはライルをアパートの屋根裏部屋に残して地方に巡業に出てしまう。
長い月日が経ったある日、ジョシュという少年が家族と共にライルの潜む家に越してくる。
ジョシュもライルと同じく心に深い孤独を抱えていた。屋根裏部屋にあがってきたジョシュを前に、ライルはゆっくりと歌い始める。やがてジョシュとライルは歌を通して友情をはぐくんでいく・・・
ペットショップにいたころのライルは、小さな檻に入った子どものワニでした。飼い主のヘクターが長い間留守にしている間に大きく育って、ジョシュが引っ越してきた頃には、大人の背丈。なんといっても、見た目はグロテスクなワニなので、通報されて捕獲されてしまいそうになります。でも、歌うワニが実際にいたらと考えると、なんだか楽しくなってしまいます。
楽曲を手がけたのは、『ラ・ラ・ランド』や『グレイテスト・ショーマン』のベンジ・パセック&ジャスティン・ポール。ファンタジーの世界に誘ってくれます。 ヘクターが危険なワニを飼っていてOKな理由がまた素敵です。これはぜひ劇場で確認を!(咲)
2022年/106分/PG12/アメリカ
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
公式サイト:https://www.sing-for-me-lyle.jp/
★2023年3月24日(金)全国の映画館で公開
2023年03月21日
デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム(原題:Moonage Daydream)
監督・脚本・編集・製作:ブレット・モーゲン
音楽:トニー・ヴィスコンティ
出演:デヴィッド・ボウイ
世界的ロックスター、デビッド・ボウイのドキュメンタリー。30年にわたり保管していた未公開映像と、「スターマン」「チェンジズ」など代表曲を含む40曲で構成されている。ライブ映像、インタビューに加え、全編にわたってボウイ本人によるナレーションが観客をボウイの人生と精神の旅路に案内する。デヴィッド・ボウイとは一体何者だったのか?
デビッド・ボウイ財団が唯一公式認定したドキュメンタリー映画。
特別にデヴィッド・ボウイ贔屓ではなかったけれど、あのビジュアルに目をひかれました。山本寛斎デザインの個性的な衣装が似合うのって、どういう人なんだろうと興味がありました。派手な舞台から降りればもの静かで、僧侶になりたかったというほど内省的な人だったというのに、なんとなく納得しました。京都が好きで、たびたび訪れてはそこでの暮らしを楽しんでいた映像も覚えています。俳優としての作品『地球に落ちて来た男』(1976/ニコラス・ローグ監督)『戦場のメリークリスマス』(1983/大島渚監督)も忘れられません。
本作は時系列に並べられた伝記映画ではありませんが、ボウイ本人の声を聴きながらブレット・モーゲン監督がカラー・グレーディングにこだわった映像とサウンドをこころゆくまで楽しめるはずです。(白)
2022年/ドイツ・アメリカ/カラー/シネスコ/134分
配給:パルコ ユニバーサル映画
(C)2022 STARMAN PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
https://dbmd.jp/
Twitter&Instagram:@DBMD_JP
★2023年3月24日(金)全国公開
2023年03月18日
ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー
監督・脚本:阪元裕吾
アクション監督:園村健介
撮影:伊集守忠
音楽:松原憲
主題歌:新しい学校のリーダーズ
出演:髙石あかり(杉本ちさと)、伊澤彩織(深川まひろ)、水石亜飛夢(田坂)、中井友望(宮内茉奈)、飛永翼(須佐野)、橋野純平(赤木)、安倍乙(向井さくら)、渡辺哲(松本さん)、丞威(神村ゆうり)、濱田龍臣(神村まこと)
ちさととまひろは、今日もまた途方にくれている。殺し屋としてきっちり仕事をしていても、社会生活は全くのダメダメな二人は、お金の管理ができない。請求書が届いてもほったらかし、ほとんど行かなかったジムの会費が鬼のようにたまっていた。教習所や保険や、とお金が出て行くばかり。一方殺し屋協会のバイト兄弟ゆうりとまことも同じく途方に暮れている。正社員のちさと&まひろと違って、入ってくるお金は微々たるもの。なんとか正社員になりたい!あの二人をやっつけて、自分たちが正社員になろう!!と夢を描くのだった。
2021年に公開、ロングランした前作『ベイビーわるきゅーれ』の続編。ちさととまひろの日常はあのまま変わらず、というかグダグダのダメさ加減が「ちょっと待て!」と言いたくなるレベル。お節介なおばちゃんでなくともそう思うはず。ぢかし確実に前より絆が深まっています。そんな二人も仕事ではプロ、バイト待遇のほかの殺し屋から妬まれ、狙われるほどです。
二人を蹴落としたいゆうり役を丞威さん、『燃えよデブゴン TOKYO MISSION』に現れた長身のヤクザ島倉に目が留まりました。ドニー・イェンと東京タワーで死闘を繰り広げています。弟まこと役の濱田龍臣さんは子役から活躍、念願のウルトラマン役もかなえて今回本格アクション。園村アクション監督の指導のもと、繰り返したというアクションシーンに注目。長袖着ていますが、撮影は真夏だったそうです。(白)
★第1弾の阪元裕吾監督インタビューはこちら
今回ちさととまひろのお二人に取材の野望を抱いていたのに、果たせず残念。いつかきっと。
2023年/日本/カラー/101分
配給:渋谷プロダクション
(C)2023「ベイビーわるきゅーれ2」製作委員会
https://babywalkure.com/
★2023年3月24日(金)ロードショー
雑魚どもよ、大志を抱け!
監督・原作:足立紳
脚本:松本稔、足立紳
撮影:猪本雅三 新里勝也
音楽:海田庄吾
出演:池川侑希弥(高崎瞬)、田代輝(村瀬隆造)、白石葵一(戸梶元太・トカゲ)、
松藤史恩(星正太郎)、岩田奏(西野聡)、蒼井旬(玉島明)、坂元愛登(小林幸介)、高崎佳子(臼田あさ美)、浜野謙太(高崎作朗)、新津ちせ(高崎ワコ)、河井青葉(村瀬美奈)、永瀬正敏(村瀬真樹夫)
地方の町の平凡な小学生、瞬。両親と妹との4人家族。目下の心配ごとは教育に熱心な母が、無理やり塾に行かせようとしていること。母の乳がんも心配だけど、すぐ手術跡を見せるのはやめてほしい。
瞬の仲間は頼りがいのある隆造、いじめられっ子のトカゲ、ヤンキー姉のいる正太郎。それに将来は映画監督になりたい聡たちだ。不良中学生の指示で明たちが聡を脅しているのを見てしまった。怖くて知らないふりをしてしまった瞬はトカゲたちと溝ができてしまう。そんなとき母の癌が再発した。自分を卑怯者で弱虫と認めた瞬は、もう死に物狂いで立ち向かうしかない。
男の子たちが線路にたたずんでいるのを観ると、あのリヴァー・フェニックス主演の名作『スタンド・バイ・ミー』(1986)を思い出します。長じて作家になった主人公が少年時代を思い起こすもので、個性的な少年たちがいつまでも記憶に残りました。
こちらは足立紳監督が、相米信二監督に師事していた20年も前に書いていた脚本が元。小説「弱虫日記」を出版したのが2017年、ブラッシュアップしてようやく映画化なったものです。監督の分身のような主人公・瞬をはじめフレッシュな少年たちはオーディションで選ばれ、短い少年時代の輝きを残しました。脇の大人たちも一癖あり、ちょっと悲しくて面白い、足立監督映画の香りが濃厚です。(白)
2022年/日本/カラー/シネスコ/145分
配給:東映ビデオ
(C)2022「雑魚どもよ、大志を抱け!」製作委員会
https://zakodomoyo-movie.jp/
★2023年3月24日(金)新宿武蔵野館ほか全国順次公開
2023年03月16日
郊外の鳥たち 原題:郊区的鸟 英題:SUBURBAN BIRDS
監督・脚本:チウ・ション(仇晟)
音楽:シアオ・ホー(小河)
撮影: シュー・ランジュン(徐燃俊)
編集:ジン・ディー(金鏑)、リアオ・チンスン(廖慶松)
美術監督:ユー・ズーヤン(於子洋)
録音: ロウ・クン(娄堃)
音響デザイナー:トゥー・ドゥーチー(杜篤之)
音響編集: ウー・シューヤオ(呉書瑶)
出演:メイソン・リー(李淳)、ホアン・ルー(黄璐)、ゴン・ズーハン(龔子涵)他
都市の郊外で測量をする男たち。この辺りでは地盤沈下が進み、高層ビルが傾きはじめ、その傾斜度も測っている。測量チームの青年ハオは、廃校になった小学校に忍び込む。机の引き出しの中から、自分と同じ名前の男の子の日記を見つける。そこには、開発が進む郊外の町での、少年らしい冒険の日々が綴られていた。一方、測量チームの男たちが昼寝をしている間に、少年たちが測量の双眼鏡を持ち出す。
地盤沈下で傾き、退去命令の出た高層アパートの一室では、いなくなった保護犬を待つ女性。電気も切られ、ろうそくをつけている・・・
ガーンガーンと工事の音が鳴る中で進む物語。
現代と過去、そしてもしかしたら未来が行き来する不思議な体験。
地盤が沈下し、ビルが傾いた場所は、今の杭州の郊外。杭州は、かつて南宋王朝の都で、南宋の皇帝が街を出る時の道は、運気の通り道。そんな場所が舞台。むやみに開発して、運気に見放されたのか?
タイトルの「郊外の鳥」に絡む場面がいくつか出てきます。
廃校で読んだ少年の日記には、森で拾った鳥の卵を大事に持ち帰った話。
ホテルの一室で、男性が女性に「小さい時、よく森で鳥の巣をつついた。全身青い鳥だった」と語る場面。これが日記を書いた少年が大人になった姿でしょうか・・・ 女性が、「全身青い鳥なんていないわ」と言うのですが、どうやら「郊外の鳥」は青い鳥。
森を行く青年二人の会話の中には、「この辺りで“全身青い郊外の鳥”を見たと信用できる刑事が言っていた」とありました。青い鳥というと、チルチルミチルの幸せの青い鳥を思い浮かべますが、この青い郊外の鳥は、ちょっと違うようです。
チウ・ション監督が本作に込めた思いについては、公式サイトのインタビューをぜひお読みください。 (咲)
2018年/中国/中国語/114分/|1:1.33/ 5.1ch/DCP・Blu-ray
字幕翻訳 : 奥原智子
配給:リアリーライクフィルムズ、ムービー・アクト・プロジェクト
公式サイト:https://www.reallylikefilms.com/kogai
★2023年3月18日(土)より、シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
2023年03月12日
ハンサン 龍の出現 原題:한산 : 용의 출현 (ハンサン(閑山):龍の出現)
監督:キム・ハンミン(『神弓-KAMIYUMI-』『バトル・オーシャン 海上決戦』)
出演:パク・ヘイル(『別れる決心』)、ピョン・ヨハン(『声/姿なき犯罪者』)、アン・ソンギ(『ディヴァイン・フューリー/使者』)、ソン・ヒョンジュ、キム・ソンギュ、キム・ソンギュン、オク・テギョン(2PM)、コンミョン
日本と朝鮮、両軍の大きな分岐点となった《閑山(ハンサン)島海戦》
韓国救国の名将軍イ・スンシンはいかに戦ったか?
1592年4月。明国の征服を狙う豊臣秀吉の命で朝鮮に押し寄せた倭軍は、わずか20日で首都・漢陽(現在のソウル)を陥落させる。漢陽を奪還するべく朝鮮勤王軍5万人が光教山に集結するが、日本の武将、脇坂安治はわずか2千人で奇襲をしかけ勤王軍を壊滅させた。朝鮮軍の敗退が続く中、全羅左道水軍の将軍イ・スンシンは、何度も海戦を仕掛ける。卓越した攻撃能力と防御力を持つ「亀船」と呼ばれる特殊な戦艦は、日本兵にとって畏怖の対象となっていた。
日本軍が本陣を置く釜山浦では、最高司令官・脇坂安治が、イ・スンシンの本陣を仕留めるため、朝鮮語を解する脇坂左兵衛を間者として敵陣に送り込む。
夏、脇坂との決戦を決意したイ・スンシンの朝鮮水軍は閑山島の沖に「鶴翼の陣」を張り、海域を熟知した老将オ・ヨンダムの指示のもと、ついに両水軍は対峙する。数で勝る日本軍を撃破するため、味方にすらも秘めていたイ・スンシンの奇策とは?
私たち日本人にとって、豊臣秀吉の朝鮮出兵は負け戦だからか、歴史の授業で詳しく教えてもらった記憶がありません。本作でピョン・ヨハンが熱演した脇坂安治の名前も知りませんでしたが、韓国ではイ・スンシンの最大のライバルとして知られている武将なのだそうです。そして、イ・スンシンに至っては、ソウルの景福宮の正面に広がる大通りの真ん中の光化門広場に、ハングル文字を考案した世宗大王の像と共に、「忠武公李舜臣像」があるという誰もが知る英雄。オファーを受けたパク・ヘイル、光栄と思うと同時に、かなりの重圧を感じたことと思います。むやみに言葉を発せず、思慮深いイ・スンシンを見せてくれました。イ・スンシンが師と崇めるオ・ヨンダムを演じたアン・ソンギは、海域を熟知し落ち着いた判断の出来る老将を体現していて、さすがの存在感です。
鶴が羽を広げたように船を配置した「鶴翼の陣」で、亀が首を隠したような「亀船」が突如現れるという奇襲攻撃に目を見張りました。
本作は、キム・ハンミン監督のイ・スンシン三部作プロジェクトの『バトル・オーシャン 海上決戦』に次ぐ第二弾。50歳を目前にした頃のイ・スンシンの真のリーダーとしての姿を描いています。続く第三弾では、どんなイ・スンシンを見せてくれるのか楽しみです。(咲)
2022年/韓国/韓国語、一部日本語吹替/130分/シネスコ/5.1ch/R-15
字幕翻訳:福留友子
配給:ツイン
公式サイト:https://hansan-movie.com/
★2023年3月17日(金) シネマート新宿ほか全国順次ロードショー
2023年03月11日
コンペティション 原題:Competencia oficial
監督:ガストン・ドゥプラット、マリアノ・コーン
出演:ペネロペ・クルス、アントニオ・バンデラス、オスカル・マルティネス
製薬業界のトップで大富豪のウンベルト(ホセ・ルイス・ゴメス)は80歳の誕生日を迎え、社会貢献として後世に残るような映画を作ろうと思いつく。大枚はたいてベストセラー小説の映画化権を得て、監督に映画賞を多数受賞している女性監督(ペネロペ・クルス)を起用するが、開口一番、「原作通りには映画化しない」と言われる。兄弟の確執を描いた物語で、兄役に世界的スターのフェリックス(アントニオ・バンデラス)、弟役に老練な舞台俳優イバン(オスカル・マルティネス)を起用。さっそく台詞の読み合わせを始めるが、個性的すぎる3人はしょっちゅうぶつかってしまう。果たして、映画は無事完成するのか・・・
ペネロペ・クルスが変わり者の天才女性監督という役どころを楽しそうに演じて、はじけっぷりに笑わせられます。台本の読み合わせが始まるなり、「ブエノス ノーチェス(こんばんは)」の抑揚がそうじゃないと何度も言わせたり、「うまく泣くより真実味を出して」など、ペネロペが女優としてこれまでに接した監督を投影した場面もあるのではないでしょうか。
リハも進み、イバンが「アカデミー賞も見えてきた」というのに対し、フェリックスは「ばかげた賞。白人中心のエンタメ業界に色を添えるラテン人になれと?」と返します。そう語るのが、ハリウッドを始め国際的に活躍しカンヌ国際映画祭で主演男優賞を受賞したスペイン人俳優のアントニオ・バンデラスというのが皮肉です。老練な舞台俳優イバンを演じたオスカル・マルティネスは、『笑う故郷』でベネチア国際映画祭最優秀男優賞を受賞したアルゼンチンの大御所俳優。本作の中では、「スペインに20年もいるのに、まだアルゼンチン訛り」と指摘されるところがあって、彼のスペイン語はアルゼンチン訛りなのだと。(私には違いはわかりません・・・)
映画製作の現場もいろいろあると思いますが、案外、こんな感じかも。ハプニングがあれこれ起こるのも含めて!
それにしても、金儲けばかりで尊敬されてないと感じている大富豪が、映画製作で社会貢献という発想。 どんな映画が出来上がったのやらですが、ここで描かれてたような製作過程では、さてはてです。(咲)
2021年/スペイン・アルゼンチン/スペイン語/114分/カラー/スコープ/5.1ch/
字幕翻訳:稲田嵯裕里
配給:ショウゲート
公式サイト:https://competition-movie.jp/index.html
★2023年3月17日(金)にヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほか全国公開
妖怪の孫
監督:内山雄人
企画:河村光庸
音楽:岩代太郎
アニメーション:べんぴねこ
ナレーター:古舘寛治
“昭和の妖怪”と呼ばれた政治家・岸信介。第56、57代 内閣総理大臣を務めた。長女の洋子と安倍晋太郎の間に次男として生まれたのが安倍晋三である。2006年から1年間(第1次安倍内閣)、2012~2020年(第2次~第4次安倍内閣)内閣総理大臣として最長在任期間を記録した。その間スローガン”美しい国、日本”を掲げていた安倍元総理は、祖父岸信介を尊敬し、祖父の悲願だった自主憲法の制定に力を入れていた。
2022年7月8日、参議院議員選挙の応援演説中に銃撃を受けて死亡。彼は何者だったのか、この国に何を遺したのか、残された映像から問いかける。
菅義偉のドキュメンタリー『パンケーキを毒見する』の内山雄人監督とそのスタッフが再び、集結。安倍元総理の生いたちから始まり、政界に登場してからの映像、長かった総理在任期間中の、国会や記者会見での発言も数多く集められています。政治家の家系から生まれた総理には、庶民の生活などピンとこなかっただろうと想像します。長い長い在任中、投げかけられたたくさんの疑問には答えず、宿題ばかり残していってしまった感じがします。
河村光庸プロデューサーは、2022年6月11日、銃撃事件より早く、映画の公開も待たずに急逝しました。まだまだたくさんの映画を送り出してほしかったのに残念でなりません。(白)
2023年/日本/カラー/ドキュメンタリー/115分
配給:スターサンズ
(C)2023「妖怪の孫」製作委員会
https://youkai-mago.com/
予告編はこちら
★2023年3月17日(金)新宿ピカデリーほか全国公開
長ぐつをはいたネコと9つの命(原題:Puss in Boots: The Last Wish)
監督:ジョエル・クロフォード
脚本:ポール・フィッシャー、トミー・スワードロー
音楽:ヘイター・ペレイラ
声の出演:アントニオ・バンデラス/山本耕史(プス)、サルマ・ハエック/土屋アンナ(キティ)、フローレンス・ピュー/中川翔子(ゴルティ)、ハーヴィー・ギレン/小関裕太(ワンコ)、サムソン・ケイオ/木村昴(ベイビー・ベアー)、オリヴィア・コールマン/魏涼子(ママ・ベアー)、レイ・ウィンストン/楠見尚己(パパ・ベアー)、ワグネル・モウラ/津田健次郎(ウルフ)、ジョン・ムレイニー/成河(ジャック・ホーナー)
モフモフでカッコよくて、強くて可愛い茶トラの「長ぐつをはいたネコ」のプス。猫は生まれ変われると、今日も今日とて無茶三昧。いつしかお尋ね者の「賞金首」になっていた。しかし、すでに8度死んでいた彼は、今が9つめの最後の命となってしまったことに気がついた。うっかり死んだらはいおしまい。今度こそ「いのちだいじに」しなきゃ、とこれまで見向きもしなかった家猫になって安全安心に暮らすことにした。ところが、賞金稼ぎはほうっておいてはくれない。その代わり、「願い星」を手に入れたらなんでも願いが叶うという耳より情報!!せっかく元カノの美女猫キティとも再会したことだし、なんとしても新しい命を増やしてもらわねば!
大ヒットした『長ぐつをはいたネコ』の続編。11年後の同じ3月17日に公開です。ほんとなら老猫になっているはずのプスですが、そこは8度も生まれ変わっているわけですし、まだまだ剣さばきもアクションもキレッキレです。うるうる瞳も健在。
映像はますます美しく、敵は強力、猫に交じっていた「ワンコ」も仲間に加わりました。プスのただの猫らしい家猫生活場面は珍しいので、だるだるでも観ていてくださいね。大活躍のシーンもすぐ、やってきます。
動きが激しいので、大きい画面ですみずみまでお楽しみくださいませ。(白)
2022年/アメリカ/カラー/シネスコ/104分
配給:東宝東和、ギャガ
(C)2022 DREAMWORKS ANIMATION LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
https://gaga.ne.jp/nagagutsuneko/
★2023年3月17日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
The Son 息子 (原題:The Son)
監督・脚本・原作戯曲・製作:フロリアン・ゼレール『ファーザー』
製作総指揮:ヒュー・ジャックマン
共同脚本:クリストファー・ハンプトン
撮影:ベン・スミサード
音楽:ハンス・ジマー
出演:ヒュー・ジャックマン(ピーター)、ローラ・ダーン(ケイト)、バネッサ・カービー(ベス)、ゼン・マクグラス(ニコラス)、アンソニー・ホプキンス(ピーターの父)
弁護士として順風満帆の日々を送っていたピーターに、別れた妻ケイトから連絡があった。17歳の息子ニコラスが登校していないという。「パパと暮らしたい」と望む息子を、再婚相手のベスと赤ん坊のいる家庭に迎え入れることになった。ニコラスは新しい高校に転入したものの、やはり出かけはするが登校できず、ピーターは何度も話し合うが、話は平行線のまま。ニコラスは、自分と母を捨てたピーターと不倫の末結婚したベスに辛辣な言葉をぶつける。
フロリアン・ゼレール監督作『ファーザー』に続く「家族 3 部作」の第 2 部です。第3部も戯曲からでしょうか。今から楽しみです。内容は真実味があればあるほど、楽しくはありませんが。
脚本に惚れ込んだヒュー・ジャックマンが、出演を熱望し、制作にもあたっています。『ファーザー』で 認知症を患う父を演じて2 度目のアカデミー賞受賞の名優アンソニー・ホプキンスが、ピーターのトラウマの元になっている厳格な父親役。親子似てしまうんですね。親子3代の確執の連鎖は、断ち切れるのか、乗り越えられるのか。
新鋭ゼン・マクグラスが演じるニコラスが繊細で傷つきやすく痛々しいです。
親は生れた子どもを抱いたそのときから、すぐに親の役割を果たさねばなりません。初めてでも何でも容赦なく時間が過ぎて、親が親らしくなるより早く子どもは成長していきます。兄弟姉妹がたくさんいて、親類縁者やご近所とのかかわりも密だった昔と違い、親も子もマネしたいモデルもなければ、経験も少ないこのごろです。戸惑うこと、孤立して悩みが深くなるのも無理ありません。学校に無理して行かなくても大丈夫、それでもちゃんと生きていける、と大人が言ってあげたい。どうか同じ轍を踏まないで。(白)
両親の離婚が、いかに子の心に影響を及ぼすかを突き付けられました。
ニコラスは、学校に行かないという形で意思表示していたのが、ついにはっきりと父が母を裏切ったことについて不満をぶちまけます。父の再婚相手にも問いただします。だからといって、大人にもそれぞれの人生があります。親である以上、自分の決断が子どもにどんな影響を与えるのか考えてケアする必要はあるでしょう。
日本でも十代の自殺が増えていますが、社会がどう対応すればいいのかも考えさせられました。本作では、精神科の功罪も見せつけられました。難しいですね・・・ (咲)
2022年/イギリス・フランス合作/カラー/スコープサイズ/123分
配給:キノフィルムズ
(C)THE SON FILMS LIMITED AND CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION 2022 ALL RIGHTS RESERVED.
公式HP:https://www.theson.jp/
公式Twitter:https://twitter.com/TheSon_jp
★2023年3月17日(金)TOHO シネマズ シャンテほか 全国ロードショー
死体の人
監督:草苅勲
脚本:草苅勲、渋谷悠
撮影:勝亦祐嗣
主題歌:THEイナズマ戦隊「僕らはきっとそれだけでいい」
出演:奥野瑛太(吉田広志)、唐田えりか(加奈)、楽駆(翔太)、田村健太郎(東郷)、岩瀬亮(高橋)、烏丸せつこ(広志の母)、きたろう(広志の父)
ずっと役者を志していたのに、気づけば死体役ばかりの吉田広志。現場では名前でなく、「死体の人」と呼ばれている。演じることにこだわりがありすぎて、芝居が大きいと敬遠される。劇団にいたときの後輩俳優はテレビで活躍し、いつのまにか父親になっていた。
彼女もいない広志は、デリヘル嬢の加奈をときどき呼ぶ。ある日、加奈が忘れた妊娠検査薬を興味本位で試してみたら、なんと陽性反応が出た!まさかと思いつつ加奈に言ったら、きっぱりと否定された。
そんなおり、母が入院すると父から知らせがある。お見合い写真も見せられるが、乗り気になれない。母は深刻な病気であることを隠し、広志や父に「大丈夫、大丈夫」としか言わずにいたが、容体は日に日に悪くなっていく。
くっきりした目鼻立ちの奥野瑛太さん、軍人や反社な人の役でよく観ていました。こんなに控えめで、弱気な彼や泣き顔は初めて見たかもしれません。
広志は死体の役でも背景や死因を考えて役作りするので、周りにうざがられています。自分が主催した劇団の後輩に遭ったときは、さぞバツの悪い思いをしたはず。あちらセリフのある役、こちら物言わぬ死体…。
一人暮らしも長いようで、妊娠検査薬の陽性反応になんだか嬉しそうなのが、バカだなぁと思いつつも切ないです。もちろん間違いだったんですけどね。
両親役のきたろうさん、烏丸さんがいつもいつも息子を心配しているのにほろりとしました。「未完成映画予告編大賞 MI-CAN3.5復活祭」最優秀作品の映画化。(白)
2022年/日本/カラー/PG12/94分
配給:ラビットハウス
(C)2022オフィスクレッシェンド
https://shitainohito.com/
★2023年3月17日(金)渋谷シネクイントほか全国順次公開
2023年03月10日
赦し 原題(英語題):DECEMBER
監督・編集:アンシュル・チョウハン(『東京不穏詩』『コントラ』)
脚本:ランド・コルター
撮影:ピーター・モエン・ジェンセン
音楽:香田悠真
出演:尚玄、MEGUMI、松浦りょう、藤森慎吾、生津徹、成海花音、清水拓藏、真矢ミキ
作家の樋口克(尚玄)は、7年前に高校生だった娘をクラスメートに殺されて以来、執筆もせず酒浸りの日々だ。ある日、裁判所から懲役20年の刑に服している加害者、福田夏奈(松浦りょう)の再審決定の通知を受け取った克は、事件後に別れた妻の澄子(MEGUMI)のもとを訪ねる。澄子は、グループセラピーで出会った岡崎直樹(藤森慎吾)と再婚している。刑の軽減を阻止するために証言台に立つという克に対し、新たな人生を歩みだしている澄子は「過去に囚われたままでは駄目だと思う」と諭す。
何度か法廷に赴いた二人は、やがて夏奈が殺人に至った動機を振り絞るように明かすのを聞く。澄子は裁判から身を退くが、怒りの感情に駆られた克はある行動に出る・・・
高校生の時に同級生を殺してしまった夏奈を演じた松浦りょうさんの存在感がとにかく凄すぎて、チラシを観ただけで、どんな映画なのかと興味を惹かれました。
2011年から東京を拠点に活動しているインド出身のアンシュル・チョウハン監督。長編1作目の『東京不穏詩』は、インド人の監督作品だからと期待したのですが、実はよくワケのわからない作品でした。2作目の『コントラ』で、前作と作風が違って、おやっと思っていたのですが、本作『赦し』は、また違った趣で驚かされました。なんといっても松浦りょうさんを起用したのが、この映画を引き立たせていますが、怒りを抱えた克役の尚玄さん、娘を殺された悲しみを振り切って前を向いて生きようとしている澄子役のMEGUMIさん、そして、未成年への重刑の再審について丁寧に説明する裁判官を演じた真矢ミキさん、それぞれが自然体の演技で好感が持てました。
娘を殺され、それがもとで別れることになってしまった夫婦。再審で顔を合わすことになった二人の複雑な思いも考えさせられました。人生を狂わした夏奈を赦すことはできるのか・・・ 動機が納得できるものであったとしても、当事者にとって「赦す」ことはなかなか難しいのではないでしょうか。忘れることで赦すというしかないでしょうか・・ (咲)
★公開記念トークイベント★
3/18(土)14:10~の回上映終了後
会場:ユーロスペース
登壇(予定):アンシュル・チョウハン監督、尚玄、松浦りょう、藤森慎吾
3/18(土)16:40~の回上映終了後
会場:アップリンク吉祥寺
登壇(予定):アンシュル・チョウハン監督、尚玄、MEGUMI、松浦りょう
3/25(土)
会場:kino cinéma横浜みなとみらい
登壇(予定):アンシュル・チョウハン監督、松浦りょう
2022年/日本/日本語/カラー/2:1/5.1ch/98分
配給:彩プロ
公式サイト:https://yurushi-movie.com/
★2023年3月18日(土)よりユーロスペースほか全国順次公開
2023年03月05日
トオイと正人 英題:TOOI & MASATO
シアター・イメージフォーラム(渋谷)にて2023年3月25日(SAT) 。
全国順次ロードショー 劇場案内
写真家瀬戸正人のルーツをたどる
監督・脚本・撮影:小林紀晴
音楽:いろのみ
編集:上野一郎
撮影:尾崎聖也、今井知佑
出演:瀬戸正人、尾方聖夜
ナレーション:鶴田真由、こしみずよしき
原作:瀬戸正人『トオイと正人』(朝日新聞社1998刊)
タイで生まれ、タイ語しか喋れなかった少年トオイ
旧残留日本兵だった父と、ベトナム系タイ人の母との間に、タイで生まれた「トオイ」は、8歳の時に日本に渡り、「正人」という名になり、父の故郷福島で育った。タイ語しか話せなかったトオイだったが、日本人として生きるうち、いつの間にかタイ語を話すことができなくなっていた。
やがて写真家となった瀬戸正人は、28歳の時、バンコクへ。そして生まれ故郷のウドーンタニへ旅に出て、かつての記憶を探る。タイ、ラオス、福島でロケを敢行。「正人」のなかに眠っていた「トオイ」が、静かに目を覚ます。さらに父の記憶を追ってメコン川を渡る。
「タイで生まれ、タイで育ち、タイ語をしゃべっていた。でも何も覚えていない…」そんな瀬戸正人の「トオイ」を探す旅。メコン川と阿武隈川を遡る旅に出て、記憶をたどる。
瀬戸正人の自伝「トオイと正人」(1998年)を、写真家&作家としても活躍する小林紀晴が初監督作として映画化した。20年ほど前に手にしたときから、いつかこの物語を映画にしたいと考えていたという。
福島県出身の父・武治さんは昭和17年に出征。中国、ベトナムを経て、ラオスで終戦をむかえ、帰国の道を選ばず残留日本兵となったそうです。数年後、メコン川を渡り、タイのウドーンタニという町でベトナム人になりすまし生活を始め、やがてベトナム系タイ人の女性と結婚。「トオイ」が生まれる。そして武治は現地で写真館を始めた。手先が器用で、修正などが得意だったという。
その後、状況が変わり、葛藤の末に日本大使館にみずから残留日本兵であることを名乗り出て、日本への帰国の道を選び、「トオイ」は8歳の時に、武治の帰国にあわせて日本へ渡ったそうです。
故郷、福島県で武治は写真館を再建。20歳になった「正人」は稼業である写真館を継ぐため、東京の写真専門学校へ進学。そこで出会ったのが写真家森山大道。家業を継がずに写真家を目指すことに。写真家東松照明の写真集『太陽の鉛筆』で、南シナ海とインドシナ半島の地図が広がっているのを見て、 28歳のとき、バンコクへ、そしてウドーンタニへと旅に出たそうです。
私は、瀬戸正人さんの写真はアジアの街中を写した写真が多いなと思っていたのですが、タイ生まれというのは、この映画で知りました。そういう事情でアジアに向かっていたというのも、今回初めて知りました。同年代で、学んだ写真学校も同じだったのですが、私は夜間だし、就職してだいぶたってから写真学校に行ったので、同時期に在学はしていないですが、この映画を観て感慨深かったです。瀬戸正人さんのお父さんの波乱万丈の生涯もぜひ観てみたいと思いました(暁)。
『トオイと正人』HPはこちら
2023年/ カラー/ 63分/16:9/
製作・配給:Days Photo Film
配給協力・宣伝:プレイムタイム
企画協力:プレイスMほか
全国順次ロードショー 劇場案内
写真家瀬戸正人のルーツをたどる
監督・脚本・撮影:小林紀晴
音楽:いろのみ
編集:上野一郎
撮影:尾崎聖也、今井知佑
出演:瀬戸正人、尾方聖夜
ナレーション:鶴田真由、こしみずよしき
原作:瀬戸正人『トオイと正人』(朝日新聞社1998刊)
タイで生まれ、タイ語しか喋れなかった少年トオイ
旧残留日本兵だった父と、ベトナム系タイ人の母との間に、タイで生まれた「トオイ」は、8歳の時に日本に渡り、「正人」という名になり、父の故郷福島で育った。タイ語しか話せなかったトオイだったが、日本人として生きるうち、いつの間にかタイ語を話すことができなくなっていた。
やがて写真家となった瀬戸正人は、28歳の時、バンコクへ。そして生まれ故郷のウドーンタニへ旅に出て、かつての記憶を探る。タイ、ラオス、福島でロケを敢行。「正人」のなかに眠っていた「トオイ」が、静かに目を覚ます。さらに父の記憶を追ってメコン川を渡る。
「タイで生まれ、タイで育ち、タイ語をしゃべっていた。でも何も覚えていない…」そんな瀬戸正人の「トオイ」を探す旅。メコン川と阿武隈川を遡る旅に出て、記憶をたどる。
瀬戸正人の自伝「トオイと正人」(1998年)を、写真家&作家としても活躍する小林紀晴が初監督作として映画化した。20年ほど前に手にしたときから、いつかこの物語を映画にしたいと考えていたという。
福島県出身の父・武治さんは昭和17年に出征。中国、ベトナムを経て、ラオスで終戦をむかえ、帰国の道を選ばず残留日本兵となったそうです。数年後、メコン川を渡り、タイのウドーンタニという町でベトナム人になりすまし生活を始め、やがてベトナム系タイ人の女性と結婚。「トオイ」が生まれる。そして武治は現地で写真館を始めた。手先が器用で、修正などが得意だったという。
その後、状況が変わり、葛藤の末に日本大使館にみずから残留日本兵であることを名乗り出て、日本への帰国の道を選び、「トオイ」は8歳の時に、武治の帰国にあわせて日本へ渡ったそうです。
故郷、福島県で武治は写真館を再建。20歳になった「正人」は稼業である写真館を継ぐため、東京の写真専門学校へ進学。そこで出会ったのが写真家森山大道。家業を継がずに写真家を目指すことに。写真家東松照明の写真集『太陽の鉛筆』で、南シナ海とインドシナ半島の地図が広がっているのを見て、 28歳のとき、バンコクへ、そしてウドーンタニへと旅に出たそうです。
私は、瀬戸正人さんの写真はアジアの街中を写した写真が多いなと思っていたのですが、タイ生まれというのは、この映画で知りました。そういう事情でアジアに向かっていたというのも、今回初めて知りました。同年代で、学んだ写真学校も同じだったのですが、私は夜間だし、就職してだいぶたってから写真学校に行ったので、同時期に在学はしていないですが、この映画を観て感慨深かったです。瀬戸正人さんのお父さんの波乱万丈の生涯もぜひ観てみたいと思いました(暁)。
『トオイと正人』HPはこちら
2023年/ カラー/ 63分/16:9/
製作・配給:Days Photo Film
配給協力・宣伝:プレイムタイム
企画協力:プレイスMほか
2023年03月04日
書かれた顔4Kレストア版(原題:The Written Face)
監督・脚本:ダニエル・シュミット
撮影:レナート・ベルタ
プロデューサー:堀越謙三
出演:坂東玉三郎(5代目)、武原はん、杉村春子、大野一雄、蔦清小松朝じ、坂東彌十郎、宍戸開、永澤俊矢
未知の映画作家が次々と日本へ紹介され、ミニシアター・ブームが巻き起こった1980年代。蓮實重彦ら日本の映画人によって“発見”されたダニエル・シュミットは、退廃的な映像美で世界中に熱狂的なファンを生んだ。子供のような心を持ち、芸術への造詣が深くオペラ演出家としても知られたシュミットと、日本の文化人・映画人との深い親交から生まれた『書かれた顔』。
虚構と現実をないまぜにした幻想的な作品を得意とするシュミットは、女形という特異な存在を通して、ジェンダー、生と死、そしてフィクションとドキュメンタリーの境界線上に、虚構としての日本の伝統的女性像を浮かびあがらせる。(公式HPより)
ずっと以前にテレビで、玉三郎さんの舞台にかけるまでの準備、幕間の姿やインタビューなどを見たことがあります。素顔も綺麗な方で、舞台姿がさらに美しく妖艶なのにうっとりしました。この作品には「鷺娘」「大蛇」「積恋雪関扉」、この作品だけの「黄昏芸者情話」で、さまざまな表情を見ることができます。撮影後、亡くなられた方々のお元気な映像が残されているのも貴重です。
当時日本で最年長の「現役芸者」であった蔦清小松朝じさん(101歳)のかくしゃくとした姿に脱帽。ダニエル・シュミット監督も2006年に亡くなられました。
日本初公開は1996年3月23日。27年前になります。4Kレストア版として再上映されますので、玉三郎さん、歌舞伎、舞踊のファンの皆様はこの機会をお見逃しなく。(白)
★来場者特典のポスターはこちら
玉三郎さんが、舞台の上で演じる妖艶な姿だけでなく、白塗りして女の顔を作っていく様、芝居小屋の奈落(舞台の下)を歩く姿、女形を演じる自分について語るところなど素の姿もたっぷり見せてくれます。
玉三郎さんの踊りを際立たせる歌舞伎音楽の担い手たちの姿や、衣装を早変わりさせる裏方の人たち、そして熊本県山鹿の八千代座や、愛媛県の内子座という伝統的な芝居小屋の美しさもダニエル・シュミット監督はしっかり描き出しています。
昨年亡くなった私の父は、歌舞伎や文楽の研究者でした。私の歌舞伎初体験は、中学生の時の京都・南座の升席という贅沢なものだったのに、その後、あまり関心を持たず、願えば観る機会は得られたのに、年に1度行くかどうかでした。それでも、父に連れられて内子座に行き奈落も歩かせてもらったことは貴重な経験です。本作を観て、あらためて日本の伝統文化としての歌舞伎の素晴らしさを感じました。(咲)
1995年/日本・スイス合作/カラー/ヴィスタ/94分
配給:ユーロスペース
(C)1995 T&C FILM AG / EURO SPACE
https://kakaretakao.com/
★2023年3月11日(土)ロードショー
飯館村 べこやの母ちゃん それぞれの選択
監督・撮影:古居みずえ
編集:新⾕拓治
整⾳:Cinema Sound Works Co.(渡辺丈彦)
製作:映画「飯舘村の⺟ちゃん」制作⽀援の会
出演:中島信⼦、原⽥公⼦、⻑⾕川花⼦
第⼀章:故郷への想い |中島信⼦さん(⽐曽地区)
「うちにいるよ」ってここ(飯舘)でならすんなりと出るの。なぜか不思議だな
第⼆章:べことともに |原⽥公⼦さん(飯樋地区)
⽜飼いは⼆⼈三脚でないとできないの。お互いに同じ⽅向を向かないと
第三章: 帰村|⻑⾕川花⼦さん(前⽥地区)
じゃみんなで飯舘に帰ろうねって⾔ったの
飯館村は畜産・酪農業が盛んで、飯舘の和牛はブランド牛として有名であったそうです。村民は6180人、牛が約3000頭ほどもいたとか。
東日本大震災に襲われた2011年当時、原発から3㎞圏内はとるものもとりあえず即日避難。そして10㎞、20㎞と範囲が広がります。30㎞離れた飯舘村では、計画的非難区域に入り全村避難となったのは震災から1ヶ月も後。牧草も放射線量が高く、食べさせることも出荷することもできなくなりました。家族のように大切に育てたべこ(牛)たちを手放す苦渋の決断をせまられます。
前作『飯舘村の母ちゃんたち 土とともに』(2016)に続き、古居みずえ監督が酪農家の母ちゃんたちを映像に残しました。通算10年の母ちゃんたちの想い、こぼれてきた言葉がそこにあります。
今年は大震災から12年。亡くなられた方々の13回忌になります。どれほど時間が経とうが、あったことはなくなりません。少しずつ傷が癒えることを願うばかりです。(白)
長年、イスラエル占領地で暮らすパレスチナの女性たちを取材してきた古居みずえ監督。東⽇本⼤震災を記録しなければとの思いに駆られていた時、原発事故で放射能汚染され、故郷を追われることになった飯舘村の人たちが、故国を追われ難民として生きるパレスチナの人々の姿と重なりました。飯館村でも、理不尽な思いを抱えながら、たくましく生きる女性たちを10年の歳月にわたって丁寧に捉えています。
飯館村は、3分の1が開拓農家でした。満州引き揚げなど戦争で職を失った人や移住してきた人たちが、開拓で国にあてがわれた土地は石ころだらけで耕作に向かず、多くがべこや(牛飼い)を生業としました。
第⼀章 中島信⼦さんの父は、1930年代後半、国策として満州開拓団として送られた27万人の一人でした。軍に召集され戦後シベリアに3年間抑留。母はやっとの思いで帰国するも娘二人(信子さんの姉)は日本に着いてすぐ亡くなってしまったとのこと。父が帰国後、信子さんが生まれ、7歳の時に南相馬から飯館に移住。両親が苦労して開拓してきた地を離れることになり、信子さんは「早く戻れますように」と両親にお供えします。
その後、飯館村に帰った人、戻らない決断をした人、それぞれの思いが胸に沁みました。あの原発事故さえなければという思いは、皆、同じでしょう。想定外という言葉で片付けてほしくないし、これ以上、国策に翻弄される人たちがいないよう願うばかりです。(咲)
東日本大震災による福島第一原発事故の後、避難を余儀なくされた飯舘村の人々。村の大半は17年に避難指示が解除されたものの、事故前の人口6000人余りのうち、帰村率は3割ほどという。避難から6年もたち、新しい生活基盤を避難先で築いた村民の多くは生活環境などを考慮して村外に暮らす。役場や住宅地、学校などは除染が進んだが、7〜8割を占める山林の除染は徹底されていないという状況では、「帰っていい」と言われても躊躇せざるを得ないだろう。しかも子供たちはよけいそんな場所に帰せない。こんな状況なのに、政府は原発の再稼働、新設をしようとしている。原発事故で故郷を追われた人たち、かけがえのない生活を奪われた福島の人たちの痛みを10年たったら忘れてしまったのか。原発との共生など考えられない。また福島のような事故が起きてしまってからでは取返しがつかない(暁)。
☆古居みずえ監督のパレスチナ関連の映画と登壇したトーク
『ガーダ パレスチナの詩』(2007年)
http://www.cinemajournal.net/review/2006/index.html#ghada
『ぼくたちは見た ガザ・サムニ家の子どもたち』(2011年)
http://www.cinemajournal.net/review/2011/index.html#bokutachiwamita
東外大 パレスチナ/イスラエル映画祭―こどもと明日と未来を考える―
http://www.cinemajournal.net/special/2011/palestina-israel/index.html
★舞台挨拶開催★
ポレポレ東中野 3/11(土)3/12(日)
登壇者:古居みずえ監督、中島信子さん、長谷川花子さん(出演者)
横浜シネマリン 3/21(火祝)
登壇者:古居みずえ監督
フォーラム福島 4/1(土)12:30の回、上映後
登壇者:古居みずえ監督、中島信子さん、長谷川花子さん(出演者)
大阪・シアターセブン
劇場イベント 3/18(土)
登壇者:古居みずえ監督、岡崎まゆみさん(『40年 紅どうだん咲く村で』監督)
舞台挨拶 3/19(日)
登壇者:古居みずえ監督
2022年/日本/カラー/180分
配給協⼒・宣伝:リガード
© Mizue Furui 2022
公式サイト:https://iitate-bekoya.com/
★2023年3月11日(土)~17日(金)ポレポレ東中野にて1週間限定ロードショーほか全国順次公開
2023年03月02日
KG200 ナチス爆撃航空団 原題:WOLF HOUND
監督・原案:マイケル·B·チャイト
脚本:ティモシー·リッチー
撮影:ウェストリー・ギャスライト
プロダクションデザイン:ブランドン·F·オッテンバッハー『リアル·スティール』
編集:ヤニナ・マリア
音楽:マイケル・クラマー
サウンドデザイン:ピーター・バヴィーク
VFXスーパーバイザー:ライアン・アーバン『マトリックス レザレクションズ』『パシフィック・リム: アップライジング』
出演:ジェームズ·マズロー、トレヴァー·ドノヴァン、ジョン·ターク、マイケル·ウェイン·フォスター、ジョン·ウェルズ
1944年、ナチス占領下のフランス上空。アメリカ空軍デイビッド・ホールデン大尉らがナチス基地殲滅(せんめつ)の任務を受け飛行中、同行予定を知らされてなかった英国機を見かけ、無線で連絡するも応答がない。突如、味方と思った戦闘機の奇襲を受ける。実はドイツ軍パイロットのロス兄弟の乗る2機の戦闘機が英国機を装っていたのだ。パラシュートで無事森の中に降り立ったホールデン大尉は、ドイツ軍第200爆撃航空団(KG200)に囚われたクルーたちを救出するべく敵陣に向かう。そこで彼が見たのはナチスの恐るべき計画。それはロンドン壊滅を狙い、極秘裏に開発された新型爆弾“超兵器”だった・・・
登場する爆撃機や戦闘機はすべて本物のヴィンテージ機が使用され、空中戦シーンでも約4,000発の空砲を用い、圧倒的なリアリティを追求した空撮を敢行。米国ヴァージニア州のミリタリー・エヴィエーション・ミュージアムや、ミシガン州のヤンキー・エア・ミュージアム等の航空博物館の協力のもと、数々の貴重な飛行可能機が使用されています。
ボーイングB-17Gフライングフォートレス
フライングフォートレス(空飛ぶ要塞)のニックネームを持つ、アメリカ陸軍の四発重爆
ノースアメリカンP-51Dムスタング
航続力と高高度性能を活かして爆撃機の護衛任務などにも就いた、アメリカ陸軍の主力戦闘機。
スーパーマリン・スピットファイアMk.9
ロールスロイス・マーリン搭載のイギリスを代表する流麗なシルエットの戦闘機。
ホーカー・ハリケーンMk.12
スピットファイアともども1940年の英本土防空戦“バトル・オブ・ブリテン”での活躍が語り継がれる。
ノースアメリカンB-25Jミッチェル
1940年に初飛行したアメリカ陸軍の双発爆撃機。
メッサーシュミットBf109G
ドイツのメッサーシュミット社がバイエルン航空機製造時代に設計したドイツ空軍の主力戦闘機。
航空機(戦闘機)好きには、たまらない一作でしょう。
私にとって興味深かったのは、アメリカ空軍デイビッド・ホールデン大尉がユダヤ人というところ。ダビデの星のペンダントをしているので、ドイツ軍の将校たちに、すぐにユダヤ人とわかり、いたぶられます。第一次世界大戦の時には、ドイツ人はユダヤ人を兄弟と呼んで一緒に戦っていたこと、さらにはその頃にはユダヤ人の方が羽振りがよかったエピソードも出てきます。その恨みがユダヤ人狩りに繋がったとも思える話です。
それにしても、なぜ戦争が世界から消えないのでしょう。人が無駄死にするしかない戦争がこの世からなくなることを祈るばかりです。(咲)
2022年/アメリカ/英語/130分/カラー/スコープサイズ
日本語字幕:宇治田智子
提供:ミッドシップ、コムストック·グループ
配給:ミッドシップ 協力:コムストック・グループ 特別協力:文林堂『航空ファン』
公式サイト:http://mid-ship.co.jp/wolfhound/
★2023年3月3日(金)ヒューマントラストシネマ渋谷、シネマート新宿ほか全国順次公開