2023年02月05日

小さき麦の花  原題:隠入塵煙 英題:Return to Dust

2023年2月10日(金)YEBISU GARDEN CINEMA、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開 劇場情報 
「小さき麦の花」ポスタービジュアル_R_R.jpg
(C)2022 Qizi Films Limited, Beijing J.Q. Spring Pictures Company Limited. All Rights Reserved.

土から生まれ、土とともに生きる

監督:リー・ルイジュン
製作:チャン・ミン リー・イェン
製作総指揮:シャン・ホー
出演
ウー・レンリン:馬有鉄(マー・ヨウティエ)
ハイ・チン:貴英(ツァオ・クイイン)
ヤン・クアンルイ:チャン・ヨンフーの息子ヤン・クアンルイ
チャオ・トンピン:マー・ヨウトン

2011年、中国西北部の農村。貧しい農民有鉄(ヨウティエ=ウー・レンリン)は兄の家に同居しているが、兄の息子を結婚させるための厄介払いのため、障がいのある内気なクイイン(ハイ・チン)と見合い、結婚させられた。
互いに家族の厄介者だったふたりだが、やがて、互いを慈しみ力を合わせ、作物を育て、質素な家を作り、慎ましくも協力して日々を生きるのだが、自然の猛威や変わりゆく時代の波にさらされる…。
クイインは初めて会ったその日からヨウティエの優しさに気付いていたと話す。
ヨウティエとクイイン、それに心強いロバとの毎日の生活と暮らし。力を合わせ毎日懸命に働き、ついに自分の家をもった。だが、その幸福は長くは続かなかった…。
中国で公開されると、レビューサイトで本年度中国映画ベスト1の評価をされじわじわ広がり、公開2ヶ月経ってからTikTokが火付け役になり、若い世代を中心に興行収入トップに躍り出る大ヒットを記録し、<奇跡の映画>とまで呼ばれたという。

自分たちにのしかかってくる境遇を淡々と受け入れ、貧しくも、農作業から家を作ることまで、自分でできることを黙々と続ける有鉄。障害をもちつつも、そんな夫を手伝う貴英。ふたりの慎ましい生活が淡々と描かれる作品だけど、農村の美しい風景の中、厳しい労働と、お互いを思いやる二人の姿に癒される。そんなところが、中国の人たちにも受けたのだろう。それにしても、こういう地味な映画がヒットするというのは珍しい。そういうこともあるんですね(暁)。

オフィシャルサイト
2022年製作/133分/G/中国
配給:マジックアワー、ムヴィオラ
posted by akemi at 20:58| Comment(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

崖上のスパイ  原題:懸崖之上 英題: Cliff Walkers

2023年2月10日(金)より新宿ピカデリー他全国公開 劇場情報
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1930年代の満州を舞台に、張芸謀が初めて挑むスパイサスペンス

監督:チャン・イーモウ
脚本:チュアン・ヨンシェン チャン・イーモウ
撮影:チャオ・シャオティン
出演
チャン・イー:張憲臣(チャン・シエンチェン)
ユー・ホーフェイ:周乙(ジョウ・イー)
チン・ハイルー:王郁(ワン・ユー)
リウ・ハオツン:小蘭(シャオラン)
朱亜文(チュウ・ヤーウェン):楚良(チュー・リャン)
リー・ナイウェン
ニー・ダーホン
ユー・アイレイ

1934年冬の満州国のハルビン。ソ連で特殊訓練を受けた男女4人の共産党スパイ・チームが、極秘作戦“ウートラ計画”を実行するため現地に潜入。ウートラ計画とは、秘密施設から逃れた同胞を国外に脱出させ、日本軍の蛮行を世界に知らること。だが、仲間の裏切りで、そのミッションは共産党の天敵である特務警察に察知されてしまった。特務の執拗な追跡と罠により、ついにはリーダーの張憲臣(チャン・シエンチェン)が特務の手に落ちてしまう。残された王郁(ワン・ユー)、楚良(チュー・リャン)、小蘭(シャオラン)の3人と、彼らの協力者となった周乙(ジョウ・イー)は、八方塞がりの危機を突破し、命がけのミッションを完遂できるのか…。
*ウートラとは(ロシア語で"夜明け"の意味)

監督は、1987年『紅いコーリャン』でデビュー、ベルリン国際映画祭金獅子賞を受賞し、中国第5世代の才能として世界的な脚光を浴びた張芸謀(チャン・イーモウ)。『紅夢』『上海ルージュ』『初恋のきた道』その後も色彩(特に紅色)の魔術師と呼ばれる作品群を作りだし、高度な芸術性と娯楽性に富んだ作品群を世に送り出してきた。さらに、2008年夏季と2022年冬季の北京オリンピックで開会式、閉会式の総監督を務めるなど活躍をしてきた張芸謀監督が初めてスパイ・サスペンスに挑んだ。
雪のハルビンを舞台に、列車内の攻防、市街地での激烈なチェイス、銃撃戦など息づまる見せ場が満載のスタイリッシュな映像の数々。
スパイたちの信念と特務警察の威信をかけた騙し合いの果てにたどり着いた、崖っぷちの彼らの運命は…。中国のアカデミー賞と言われる2021年金鶏奨で監督賞、主演男優賞(チャン・イー)、撮影賞を受賞。

出演は『山河ノスタルジア』や、張芸謀監督前作の「ワン・セカンド 永遠の24フレーム」に主演のチャン・イー、『わたしは潘金蓮じゃない』のユー・ホーフェイ、『ドリアン ドリアン』のチン・ハイルー、『1950 鋼の第7中隊』のチュー・ヤーウェン、『ワン・セカンド 永遠の24フレーム』のリウ・ハオツン。

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張芸謀監督が手掛けた「スパイ・サスペンス」映画。いかにも張芸謀監督らしいスタイリッシュな映画。雪をうまく使った映像は、張芸謀監督お得意の紅色を使ったものとは違い、白黒の対比という感じで、色彩のシンプルさと、力強さ、闇の世界を表していたように思います。
工作員(スパイ)の任務に対する信念と中国特務警察の威信をかけた戦いが描かれるわけだけど、日中戦争の時代なのに、この映画には日本人は一人も出てこない。共産党の工作員と中国の特務警察とのせめぎ合い。あくまで中国人同士の戦いが描かれる。中国特務警察というのが日本の手先なのか? その辺がよくわからなかった。それはなぜなのか。それによって得られるものはなんなのか。
『ワン・セカンド 永遠の24フレーム』の時は、まだ子供だったリウ・ハオツン。やっぱりスパイとしては幼すぎるでしょ。でも、日本軍も沖縄戦の時、子供がスパイに仕立て上げられたということがあったから、ま、ありか。
最後、これまた張芸謀らしい。スパイ・アクション映画ながら、チャンとワン・ユー夫妻の人情味ある部分が描かれる(暁)。


写真クレジット:©2021 Emperor Film and Entertainment (Beijing) Limited Emperor Film Production Company Limited China Film Co., Ltd. Shanghai Film (Group) Co.,Ltd. All Rights Reserved
2021年製作/120分/PG12/中国
配給:アルバトロス・フィルム
posted by akemi at 20:11| Comment(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

コンパートメントNo.6  原題:Hytti nro 6 英題:Compartment Number 6

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(c)2021 - AAMU FILM COMPANY, ACHTUNG PANDA!, AMRION PRODUCTION, CTB FILM PRODUCTION

監督・脚本:ユホ・クオスマネン(『オリ・マキの人生で最も幸せな日』

原作:ロサ・リクソム フィンランディア文学賞受賞「Compartment No.6」
出演:セイディ・ハーラ、ユーリー・ボリソフ、ディナーラ・ドルカーロワ(『動くな、死ね、甦れ!』)、ユリア・アウグ

1990年代後半のモスクワ。フィンランドから留学中の学生ラウラ。彼女は、北の果の地にある古代のペトログリフ(岩面彫刻)を恋人と一緒に観に行く計画を立てるがドタキャンされる。一人でムルマンスク行き寝台列車6号コンパートメントに乗り込むと、向かいの寝台のすでに酔っ払ったロシア青年リョーハが話しかけてくる。ラウラがフィンランド人だと知ると、ロシア自慢された上、「この列車で売春しているのか?」と言われる。耐え切れず、サンクトペテルブルクで引き返すことも考えるが、結局、旅を続ける。粗野な同乗者リョーハとの関係は改善されるのか? そして、ラウラはペトログリフを無事観ることができるのか・・・

『オリ・マキの人生で最も幸せな日』で、ボクサーが大事な世界タイトルマッチの日に婚約指輪を買いにいってしまった話を、ほっこりと描いたユホ・クオスマネン監督の作品。
ロサ・リクソムの小説「Compartment No.6」を作家本人の承諾を得て、自由に翻案した物語。
寝台列車で同じコンパートメントで長旅をすることになった青年と、最悪な出会いだったけれど恋に発展するなどという柔な話でないことは、ラウラの回想場面で、ドタキャンした恋人が、イリーナという女性の教授だったことからも想像がつきます。それでも、ラウラが憧れる教養あるインテリとは正反対の労働者階級のリョーハと、次第に微妙に心を通わせていく過程が見て取れて、さて、その先どうなる?と思わせてくれました。
寝台列車での長旅。若い頃にはシベリア鉄道の旅に憧れたものですが、何日も列車で過ごすのは大変。しかも、同乗者が気に食わない相手だとしたら、途中で逃げ出したくても逃げられない! 
かつて、ソ連時代にモスクワに駐在していた方が、寝台列車を予約すると、名前がロシア語的には女性に思われてしまって、いつも女性と同じコンパートメントになってしまうと嘆いていらしたのを思い出しました。日本では、男女別にするなどということはしないのですが、ソ連では一応男女別を配慮していたのだと思いました。
若い頃、旅をしていて対面式の席の列車では、よく同乗した知らない方とお話したのを思い出しました。新幹線や特急列車では、隣の席の方とお話することも少なくなってしまいました。
本作では、寝台列車の食堂車も出てきて、旅心を誘われます。
北極圏にある古代のペトログリフ(岩面彫刻)にも興味津々。地球には、深い歴史があることを思いました。
列車で乗り合わせた最初の頃に、フィンランド語で「愛してる」は何と言うかと聞かれたラウラは、リョーハの態度が不愉快だったので、汚い言葉を愛してるだと教えてしまいます。これがその後どう使われるかも見どころです。(咲)


アカデミー賞(R)国際長編映画賞フィンランド代表選出
ゴールデングローブ賞ノミネート
フィンランド・アカデミー賞(ユッシ賞)7冠ほか世界中の映画賞を席巻!

2021年/フィンランド=ロシア=エストニア=ドイツ/ロシア語・フィンランド語/107分/カラー/シネスコサイズ
後援:フィンランド大使館
配給:アット エンタテインメント
公式サイト:https://comp6film.com/
★2023年2月10日(金)、新宿シネマカリテほか全国順次公開




posted by sakiko at 19:49| Comment(0) | フィンランド | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

バビロン   原題:BABYLON

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© 2022 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.

監督・脚本:デイミアン・チャゼル(『ラ・ラ・ランド』
出演:ブラッド・ピット、マーゴット・ロビー、ディエゴ・カルバ、ジーン・スマート、ジョヴァン・アデポ、リー・ジュン・リー、P・J・バーン、ルーカス・ハース、オリヴィア・ハミルトン、トビー・マグワイア、マックス・ミンゲラ、ローリー・スコーヴェル、キャサリン・ウォーターストン、フリー、ジェフ・ガーリン、エリック・ロバーツ、イーサン・サプリ―、サマラ・ウィーヴィング、オリヴィア・ワイルド

1920年代のハリウッド。毎夜、豪華な邸宅でゴージャスでクレイジーなパーティが開かれ、映画界で成功したいと思う者たちが詰めかけていた。サイレント映画の大スター、ジャック(ブラッド・ピット)は、なんといっても主役だ。ある夜、スターを夢見る新人女優ネリー(マーゴット・ロビー)は、呼ばれてもいないパーティに果敢にも忍び込み大胆な行動に出る。そんなネリーと運命的に出会った映画製作を夢見る青年マニー(ディエゴ・カルバ)は、ほのかな恋心を抱く。恐れ知らずのネリーは女優としてスター街道を駆け上がり、マニーもまた、ジャックの助手として歩みだす。やがて、サイレント映画からトーキーへと時代は移り、映画界は大きな変革を求められる。
大スターだったジャックは声が顔とイメージが合わないと言われてしまう。一方、毎晩、パーティでトランペットを吹いていた黒人のシドニー・パーマー(ジョヴァン・アデポ)は、音楽が必要になったトーキー映画に出演するようになり、やがてスターに押し上げられる・・・

バビロンといえば、バビロン捕囚で有名なメソポタミアの古代都市がまず思い浮かび、さらに、ブラピが出ていて、デイミアン・チャゼル監督の作品とあって、いそいそと試写に出かけました。
冒頭、ディエゴ・カルバ演じるマニーが、荒野の坂道を大きな象を運んでいく場面で始まり度肝を抜かれます。映画人の集まるパーティにサプライズで登場させる為の象! 狂気の沙汰です。
ブラピ演じるジャックは貫禄たっぷり。そんな彼が、トーキーの時代になって、自身の黄昏を感じる時の寂し気な表情がまたいいです。そんなブラピよりも、印象に強く残ったのが、ディエゴ・カルバ。映画を作りたいという夢を実現させていく青年を素敵に演じています。大胆な行動で主演女優の座を手に入れるネリー役のマーゴット・ロビーも光っていましたが、ハリウッドのゴシップに精通したコラムニストのエリノア・セント・ジョンを演じたジーン・スマーの存在感も忘れられません。
スポットライトを当てられるようになったトランぺッターのシドニーが、ジャズバンドのほかのメンバーに比べて色が白いと、靴墨を塗るように言われる場面がありました。スターになっても味わう屈辱・・・ 
ハリウッドが、サイレント映画からトーキーへと移り変わった時代に、どんな物語が繰り広げられたのかを垣間見ることのできる壮大な映画です。
さて、バビロンというタイトルが意味するのは? 混沌とした状態でしょうか・・・ (咲)



☆第80回ゴールデングローブ賞 作曲賞受賞(ジャスティン・ハーウィッツ)

2022年/アメリカ/189分/スコープサイズ
字幕:松浦美奈
配給:東和ピクチャーズ 
公式サイト:https://babylon-movie.jp/
★2023年2月10日(金)全国ロードショー

posted by sakiko at 19:44| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする