監督:松永大司
原作:高山真
脚本:松永大司 狗飼恭子
撮影:池田直矢
音楽:世武裕子
出演:鈴木亮平(斉藤浩輔)、宮沢氷魚(中村龍太)、中村優子(斉藤しず子役)、 和田庵(中学時代の浩輔)、ドリアン・ロロブリジーダ(浩輔の友人)、 柄本明(斉藤義夫)、阿川佐和子(中村妙子)
ファッション誌の編集者をしている浩輔は14歳で母を亡くした。田舎町で自分がゲイであることを隠して育ち、上京してからは自由に生きることができた。不摂生な身体を絞ろうとパーソナルトレーナーを頼むと、やってきたのが中村龍太だった。身体の弱い母親を長く支え、仕事を掛け持ちして働く龍太を見て、彼を応援したくなる浩輔。龍太も浩輔を信頼し、2人は互いにかけがえのない相手となっていく。浩輔は亡くなった自分の母への想いを龍太の母に重ね、3人で仲睦まじい時間を過ごす。しかしドライブを約束した日、龍太の母から電話がある。
松永大司監督の最新作。高山真さんの原作を自宅で読みました。正解。電車の中で読んだりしたら涙で困っていたはずです。高山真さんはこの本を残して、2020年10月に癌で亡くなられてしまいました。この作品を観たらどんなにか喜ばれたでしょう。
鈴木亮平さん、宮沢氷魚さん二人とも素晴らしくカッコよく、氷魚さん天使のようです。田舎に戻るときの浩輔はハイブランドの服を鎧のようにまとっています。龍太に出会ってからそんな力みを捨てて、龍太の喜ぶことを選ぶようになるのがもう誠実。二人の幸せそのものの笑顔が尊い。
このいい男たち二人に慕われる阿川佐和子さん、愛情深く料理上手な母、妙子さんに自然体でなりきっています。松永監督はワンシーン、ワンカットの長回しを好んで使うので、カットがかかるまで演技が続きます。その間ずっと亮平さん氷魚さんを相手に会話を続けた阿川さん、尊敬です。松永監督が心を砕いたとおり、美しくて優しい映画です。浩輔の愛がエゴだったのか、そうでなかったのか、始まりとラストに出るタイトルへの感覚がきっと変わるはず。(白)
2023年/日本/カラー/シネスコ/120分/R15+
配給:東京テアトル
(C)2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会
https://egoist-movie.com/
https://twitter.com/egoist_movie
★2023年2月10日(金)テアトル新宿ロードショー
2023年02月04日
銀平町シネマブルース
監督:城定秀夫
脚本:いまおかしんじ
撮影:渡邊雅紀
音楽:黒田卓也
出演:小出恵介(近藤猛)、吹越満(梶原啓司)、宇野正平(佐藤伸夫)、藤原さくら(足立エリカ)、日高七海(大崎美久)、中島歩(渡辺健介)、黒田卓也(白川はじめ)、木口健太(那須ヒロシ)、小野莉奈(谷内由里子)、平井亜門(高杉良太郎)、守屋文雄(監督)、関町知弘(木村章)、小鷹狩八(川本守)、さとうほなみ(二ノ宮一果)、谷田ラナ(二ノ宮ハル)、加治将樹(桑名洋平)、片岡礼子(高杉弥生)、藤田朋子(桐谷陽子)、浅田美代子(黒田新子)、渡辺裕之(谷口章雄)
ふらふらと銀平町にたどり着いた近藤猛。元映画監督だったが、今は妻子にも去られて仕事もない。借金のあてもなくなり公園で寝泊りする始末。映画好きの路上生活者・佐藤との出会いをきっかけに、銀平スカラ座の梶原支配人と知り合う。支配人は近藤の窮状を見てアルバイトに雇ってくれた、寝るところと仕事ができて近藤はようやくひといきつく。スカラ座の同僚や常連客は、運営状態の良くない映画館を心配している。彼らと日々過ごすうち、近藤はこれまで逃げ続けてきた自分と向き合い始めるようになった。
元監督の近藤は尾羽打ち枯らし、貧困ビジネスに食い物にされそうになったりします。浅田美代子さんがそこの代表、なんだかミスマッチでおかしいのは、いまだミヨちゃんのイメージが残っているからかも。
スカラ座で巡り合った面々は親身に心配してくれて、近藤は少しずつ変わります。彼らの共通項は、もちろん映画が好きなこと。映画の楽しさを知って、俳優になろうと思った、スタッフを目指した、映画館に勤めた…そちらには行かなかったけれど、大切な思い出のしみ込んだ場所だ、という方々は多いことでしょう。
ロケ場所となったのは、埼玉県川越市にある老舗の川越スカラ座。イベントも多く、現役営業中です。出演者もいっぱいです。資料にあるだけ書きました。スタッフさんごめんなさい。「監督:城定秀夫&脚本:いまおかしんじ」の作品です。期待を裏切りません。公式HPに寄せられた全国のミニシアター代表・支配人の言葉にうんうんとうなずいてしまいました。(白)
2022年/日本/カラー/99分
配給:SPOTTED PRODUCTIONS
(C)2022「銀平町シネマブルース」製作委員会
https://g-scalaza.com/
★2023年2月日(金)ロードショー
Sin Clock
監督・脚本:牧賢治
撮影:四方田俊則、田中彰哉
音楽:尾嶋優
出演:窪塚洋介(高木シンジ)、坂口涼太郎(番場ダイゴ)、葵揚(坂口キョウ)、橋本マナミ(ユカ)、田丸麻紀(サチコ)、Jin Dogg(ヤス)、長田庄平(成田)、般若(ヒットマン)、藤井誠士(チバ)、風太郎(世良)、蛍雪次朗(大谷)
中年の高木シンジの人生はどん底にあった。前の会社を理不尽にもクビになり、妻は三行半をたたきつけて子どもと出て行った。ようやく決まったタクシードライバーの仕事では客に蔑ろにされ、うっぷんをぶつけられる日々。ある日たまたま乗車した大物政治家の漏らした言葉から、数十億円の価値ある幻の名画があることを知った。「3」という数字に共通項を持つドライバー仲間、坂口と高木に話すと、坂口が強奪計画を持ち掛ける。坂口は元自衛官の賭博狂、裏社会にもつてがある。数学教師だった高木はサヴァン症候群で、見たものすべてを記憶する能力があった。ある晩実行に移す3人。一発逆転をかけた強奪計画は完璧なはずだった…。
窪塚洋介さん18年ぶりの主演作。いろいろな映画で見た記憶があるのに、18年ぶりとは?と探したら『同じ月を見ている』(2005)がその主演した前作でしょうか。そのスチール写真は学生服姿。今回はやさぐれた中年タクシードライバー。息子の窪塚愛流くんが俳優デビューしましたし、長い時間が経ちました。窪塚さんが長い指で煙草を持ったスチールが素敵です。独特の雰囲気も細い体型も変わりません。
牧賢治監督は長編第一作。完成した脚本を窪塚さんの事務所に送って出演を快諾されたそうですが、いろいろな人間を巻き込んでいくオリジナルストーリー、登場人物が個性的です。
番場役の坂口涼太郎さんは『ちはやふる』での木梨くんが強烈な印象を残しました。今回の作品では、実生活とシンクロした部分があるそうです。神戸で震災にあって失職したお父さんが”タクシードライバーの仕事で自分を育ててくれた”こと。坂口さん自身も絵画やひまわりが好きなことだとか。葵揚(あおいよう)さんは朝ドラ「舞い上がれ!」でも活躍中です。長身で大きな目が迫力。3人3様の活躍と、想像を超えた怒涛のラストをお楽しみに。(白)
2023年/日本/カラー/94分
配給:アスミック・エース
(C)2022映画「Sin Clock」製作委員会
https://sinclock.asmik-ace.co.jp/
★2023年2月10日(金)ロードショー