2023年01月19日

シャドウプレイ【完全版】 原題:風中有朶雨做的雲 & 夢の裏側

2023年1月20日(金)よりK's cinema、池袋シネマ・ロサ、アップリンク吉祥寺他 全国順次公開 劇場案内

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©DREAM FACTORY, Travis Wei


監督:婁燁(ロウ・イエ)
脚本:梅峰(メイ・フォン)、邱玉洁(チウ・ユージエ)、馬英力(マー・インリー)
撮影:ジェイク・ポロック
録音:富康(フー・カン)
オリジナル音楽:ヨハン・ヨハンソン、ヨナス・コルストロプ 
編集:朱琳(チュウ・リン)
美術:鍾誠(ジョン・チョン)
衣装:邁琳琳(マイ・リンリン)
ヘアメイク:折妍(ジョー・イエン)
ライン・プロデューサー:徐楽(シュー・ラー)
プロデューサー:耐安(ナイ・アン)、婁燁(ロウ・イエ)、易佳(イー・ジア)
エグゼクティブ・プロデューサー:張家魯(チャン・ジアルー)、婁燁(ロウ・イエ)
日本語字幕:樋口裕子

出演
井柏然(ジン・ボーラン):楊家棟(ヤン・ジャートン)役
宋佳(ソン・ジア):林慧(リン・ホイ)役
秦昊(チン・ハオ):姜紫成(ジャン・ツーチョン)役
馬思純(マー・スーチュン):唐小諾(ヌオ)役
張頌文(チャン・ソンウェン):唐奕傑(タン・イージエ)役 
陳妍希(ミシェル・チェン):連阿雲(リエン・アユン)役
陳冠希(エディソン・チャン):林辰峰/老A(アレックス)役 

『シャドウプレイ【完全版】』は、中国“第6世代”ロウ・イエ監督の10作目の監督作品。第6世代の映画作家たちは芸術性の高さと個人主義的な視点が特徴。伝統文化や慣習を重んじてきた第5世代以前とは作風も違う。ロウ・イエ監督は、一貫して愛と孤独に揺れる現代中国人を映画の中に描き続けてきた。
第20回東京フィルメックス(2019)で上映された北京市映画関係部署の審査済みバージョンより5分長い、検閲によりカットを余儀なくされた部分を復活させた129分の『シャドウプレイ【完全版】』というタイトルで公開される。

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第20回東京フィルメックスでの婁燁監督(撮影:宮崎暁美)


中国の30年、そして香港、台湾を舞台に加えて描くネオノワール・サスペンス

広州市の都市再開発で取り残された一画の洗(シエン)村というビジネス街に囲まれた“都会の村”で、2010年に実際に起きた暴動をヒントに、80年代の改革開放、90年代の社会主義市場経済推進、2000年代のバブルの時代、人々の欲望渦巻く現代までの30年間という時代に翻弄される7人の登場人物を、中国、香港、台湾を舞台に描く。

ストーリー
2006年、広州市内の河川敷で死体が発見される。
7年後の2013年4月14日。広州市開発区域の“都会の村で、立ち退きの賠償に不満を抱く住民たちによる騒乱が起きる。市当局の責任者であるタンが現場を訪れ住民たちの説得に奔走。しかし、タンはビルの5階から転落し死亡。この開発事業を一手に握っていたのは、ジャン・ツーチョン率いる紫金(ツージン)不動産。この殺人事件を担当する若手刑事のヤン・ジャートンは、タンとジャン、そしてタンの妻・リン・ホイと、タンとリンの娘ヌオの関係を洗い出す。
タンとジャンとリンの3人は24年前の1989年に出会っていた。当時リンはジャンと付き合っていたが、ジャンが既婚者だと知りタンと結婚した。官僚の父親を持つタンは出世の道を約束されていた。
台湾に渡ったジャンはリエン・アユンと知り合い、企業家として成功。2000年にアユンと共に広州に戻り、紫金不動産を創業。紫金不動産は成功しアユンは最高財務責任者の座に就いた。だが2006年にアユンは失踪。そして役人であるタンとのコネでジャンは開発事業を獲得し、タンは開発区の担当主任に昇格した。
2006年当時刑事だったヤンの父親はアユンの失踪事件を調べている最中に交通事故にあい、現在は介護施設に入居している。父は河川敷で発見された死体のDNA鑑定を求めたにもかかわらず、放置され資料も消えてしまったことを知ったヤンは、アユン失踪とタン殺害の両事件にジャンが関わっているのではないかと疑う。
その過程で思わぬ罠を仕掛けられ、免職に追い込まれたヤンは香港に渡り、かつて父と一緒にアユン失踪事件を調べていた探偵のアレックスを訪ね、調査に協力してくれるよう頼む。アレックスからDNA鑑定結果が発見されてジャンのアユン殺害容疑が濃厚になったと知らせを受け、広州に戻った。誤解が解け警察に復帰したヤンは、アユンとタンの殺人事件を解決。と思いきや、そうではなかった。真実をもとめさらに捜査する。

撮影当初のタイトルは『地獄恋人』だったが、完成段階で『一場遊戯、一場夢』(一夜のゲーム、一夜の夢)に。これは劇中とエンドロールで流れる香港出身で台湾活躍する歌手王傑(ワン・チエ)のヒット曲のタイトル。改革開放の初期に流行した。その英題が「The Shadow Play」。しかし、この中国語タイトルが検閲で使用不可になり、同じく改革開放初期の台湾の流行歌である『風中有朵雨做的雲』(雨は雲となり風に漂う)を最終タイトルに。

一場遊戯、一場夢 王傑(ワン・チエ) 
https://www.youtube.com/watch?v=B2S1EngkjQk

風中有朵雨做的雲 孟庭葦(モン・ティンウェイ)
https://www.youtube.com/watch?v=huHJE5ZXQ5Y

2016年にクランクインし2017年春に完成した本作は、北京市の映画関係部署の審査に入ったが、その後約2年、繰り返し修正を迫られ、中国本土での公開日まであとわずか7日というところまで作業は続いたという。2019年4月4日に中国本土で公開されると、3日間で約6.5億円の興行収入を記録し大ヒット。また、中国公開前の、2018年11月に開催された第55回台湾金馬奨で、監督賞、撮影賞、音響賞、アクション設計賞の4部門でノミネートを果たし、2019年2月の第69回ベルリン国際映画祭パノラマ部門で上映された。

『シャドウプレイ【完全版】』公式HP 
英題:The Shadow Play
2019 年/中国/129 分/北京語・広東語・台湾語/DCP/1.85:1/
配給・宣伝:アップリンク

『夢の裏側』 原題:夢的背後
Behind the Dream: A Documentary on the Shadow Play

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©DREAM FACTORY, Travis Wei


監督:馬英力(マー・インリー)

『シャドウプレイ』製作の舞台裏を準備から公開に至るまで追った『夢の裏側』も同時に上映される。メイク、衣装、撮影の状況、カラーリングのことなど、多岐に渡って撮っている。そして、本作が完成してから2年もの期間を経なくては公開できなかった検閲の過程もドキュメントされている。自分の思いを語るロウ・イエ監督。様々な壁を乗り越えて、2019年4月公開にいたるまでの苦労と工夫が描かれる。監督は、ロウ・イエ監督の妻であり本作共同脚本家でもある馬英力(マー・インリー)。

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第20回東京フィルメックスでの馬英力監督(撮影:宮崎暁美)


2018年製作/94分/G/中国

広州で起きた汚職事件をヒントに、都市開発をめぐる殺人事件の真相を追うという複雑な構造。ドキュメンタリータッチで描かれ、粗くて暗い映像ゆえに、時に目を凝らさないと何が写っているのかわからないこともあった。
婁燁監督は、これまでも中国のその時代の姿と、人間の欲望や絶望など感情を混沌とした人間関係に反映した映像で描いてきたと思うが、この作品はさらに複雑な人間関係gあ描かれ、時代を行ったり来たり、中国、香港、台湾も行ったり来たりで、これは1回では複雑すぎて理解ができずだった。基本的な人間関係がわからないと、事件の進展、内容の理解も難しかしい。なので2019年の東京フィルメックスで観たのにすっかり話を忘れていて、最初から見直し。2度目でやっと人間関係が把握できた。
1989年から続く、中国の時代の変遷とともに、台湾、香港との関係も描いている。現在では、もっと変わっているから、次作ではまたそれを取り入れてくるのかもしれない。改革開放の30年の間の中国の変化の中に物語を組み込み、中国と中国人の姿をあぶりだす。
映画題名を『一場遊戯、一場夢』(一夜のゲーム、一夜の夢)にしたかったけど検閲を通らず、この王傑(ワン・チエ)の有名な曲の英題「シャドウプレイ」を英題にしたと婁燁監督は語っていてびっくり。じつは私は王傑のファンで彼のCDを10枚以上持っている。この曲が途中に流れ、最後のタイトルロールにも王傑自身の哀愁のある歌声が聴け嬉しかった。この曲はよく聴いていたけどサビの部分の意味を知らなかった。この作品の字幕で知り、そうだったのかとびっくり(笑)。「喔 為什麼道別離 又說什麼在一起」(別れようといいながら、なぜ一緒にいるの)(暁)。


posted by akemi at 05:50| Comment(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする