2022年12月10日

浦安魚市場のこと

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監督・撮影・録音・編集・製作:歌川達人
音楽:POSA(すぎやまたくや&紫藤佑弥)
出演:浦安魚市場のみなさま

魚屋の活きのよい掛け声。貝を剥き続ける年老いた女性。年末のお客たちとお店の賑わい。古くから漁師町だった浦安には魚市場があった。工場汚染水の影響で漁業権を放棄し埋立地となった浦安にとって、魚市場が漁村だった町のシンボルでもある。そんな魚市場には、昼は町の魚屋、夜はロックバンド「漁港」のボーカルとして活動する森田釣竿がいた。時代の流れと共に変わっていく魚の流通と消費の形。脈々とつながってきた暮らしを謳歌する浦安の人々。しかし、その瞬間は、緩やかに、そして突然訪れる.......。

カンボジアのドキュメンタリーを発表してきた歌川達人監督が、浦安魚市場の近くに移り住んで、市場の内外を撮影し続けました。初の長編作品です。
「鮮魚 泉銀」三代目店主、森田釣竿さんはユニークな人で「魚食え、コノヤロー!」と叫ぶロッカーでもあります。「鮮魚 池八」池田廣子さんもきっぷと愛嬌の人、どのお店の人たちもお客さんとのやりとりを楽しみ、仕事を愛してやまないのが伝わってきます。
カメラは閉鎖までの日々を活写し、ついにやってきた最後の日を迎える店主と名残を惜しむお客さんたちを、やさしく見つめます。まだ開いているうちに一度は行って買い物したかったなぁと思いつつ、自分の近所に残っている魚屋さん八百屋さんに通おうとしみじみ思いました。(白)


2022年/日本/カラー/DCP/98分/
配給:Song River Production
urayasu-ichiba.com
★2022年12月17日(土)渋谷シアター・イメージフォーラムほかにて全国順次公開

posted by shiraishi at 19:45| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

そばかす

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監督:玉田真也
企画・原作・脚本:アサダアツシ
主題歌:三浦透子「風になれ」
作詞・作曲:塩塚モエカ(⽺⽂学)
音楽・録音・音響効果:松野泉
出演:三浦透子(蘇畑佳純)、前田敦子(世永真帆)、伊藤万理華(篠原睦美)、伊島空(木暮翔)、前原滉(八代剛志)、前原瑞樹、浅野千鶴、北村拓海(天藤光)、田島令子(祖母 宮子)、坂井真紀(母 菜摘)、三宅弘城(父 純一)

蘇畑佳純(そばたかすみ)30歳。海辺の地方都市でコールセンターに勤め、家族と暮らしている。妹の睦美は結婚して出産を控えているが、母は佳純が恋人もなく、結婚もしそうにないのが気にかかる。けれども佳純は昔から恋愛感情がわかず、性的対象として人を見ることもない。思い余った母は、佳純に内緒でお見合いをセッティングする。佳純は怒って帰ろうとするが、相手の男性・木暮翔も恋愛に興味がないと打ち明ける。思いがけず話が合って、何度も会ううちに小暮は佳純に恋愛感情を抱くようになる。小暮に迫られた佳純は拒否したため、そこで関係は終わってしまった。
そんなとき、中学の同級生だった世永真帆(よながまほ)に再会する。AV女優として活躍してきた真帆は地元に帰ってきていたのだった。屈託なく明るい真帆と過ごした佳純は、一緒に住んだら楽しいだろうと想像する。

第 94 回アカデミー賞で国際⻑編映画賞を受賞した映画『ドライブ・マイ・カー』(21/濱⼝⻯介監督)ヒロインを演じた三浦透子さん、第 45 回⽇本アカデミー賞新⼈俳優賞などを受賞しました。こちらの映画では、周りの「普通」と違う自分を「これが私だから」と認める佳純を演じています。三浦さんはいつも「演じている」感じがしないんですけどね。
苦情を受け付けるコールセンターから保育所に転職した佳純は、子供たちのおませ具合に驚いてしまいます。情報過多ないまどきのお子様だから?いや、自分を振り返っても子供は大人の想像より先を行っていたかも。あなどるなかれ。この子たちの前で佳純がやってみたことの本当の反応が知りたいです。
映画の中には「多様性」という言葉を使う人も登場しますが、言葉だけで、それを受け入れてるとは思えません。佳純のありのままを受け入れる人もちゃんといます。佳純と真逆のような性格の真帆は、中学のときと同じように今度も真帆の背中を押してくれました。三浦透子さん、前田敦子さん説得力ある好演。
誰かに恋愛感情を持てないと駄目でしょうか?そんなことはないし、人っていくつかに分けられるものでもありません。「みんなちがって、みんないい」という金子みすゞさんの詩を思い出しました。メ~テレ開局60周年記念作品。(白)


2022年/日本/カラー/104分
配給:ラビットハウス
(C)2022「そばかす」製作委員会
https://notheroinemovies.com/sobakasu/
★2022年12月16日(金)新宿武蔵野館ほか全国公開

posted by shiraishi at 17:16| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

終末の探偵

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監督:井川広太郎
脚本:中野太 木田紀生
撮影監督:今井哲郎
アクション監督:園村健介
出演:北村有起哉(連城新次郎)、松角洋平(阿見恭一)、武イリヤ(ガルシア・ミチコ)、青木柚(佐藤翔)、高石あかり(石岡凛)、水石亜飛夢(小倉幹彦)古山憲太郎/ チェン・ショウコウ、川瀬陽太(笠原組長)、高川裕也( 辻原正義)、麿 赤兒(町内会長 安井茂雄)

連城新次郎は新宿に流れ着いた開店休業中の私立探偵。酒癖が悪く、ギャンブルと喧嘩に明け暮れている草臥れた中年男だ。顔なじみのヤクザの幹部・阿見から放火事件の調査を押し付けられる。阿見の笠原組と敵対する中国系マフィアのバレットが絡んでいるらしい。
同じころ日本生まれのフィリピン人のミチコから、急に姿を消したクルド人の友人を探してほしいと頼まれる。いつしか新次郎は、笠原組とバレットの抗争に巻き込まれていく。

北村有起哉さん演じる新次郎は、ヘビースモーカーでタバコが手放せません。今に肺と肝臓をやられそうです。ほどほどに。事務所もなく、喫茶店を根城にしているので町内に顔見知り多数。多国籍の人の集まる街で、両親が強制送還されて一人残されたミチコの生い立ちや、日本で暮らすことで出会う壁も語られます。「入管に行かなくてはならないのに、いなくなるなんて」というミチコの言葉に、これまで色々見てきた入管と不法滞在に関わる映画が浮かんできました。
情にもろく、金にならない人助けをしてしまう新次郎は、金属バットや鉄パイプで殴られたり、さんざん。アウトローですが、悪人ではありません。今もどこかにいてほしいキャラです。
新次郎と懇意の町内会長が高校生にかけた「人を簡単に線引きしちゃいけない」という言葉が沁みます。そうそう、新次郎の口癖は「もういいよ」でした。体を張った痛そうな攻防は園村健介アクション監督が手がけています。(白)


2022年製作/80分/G/日本
配給:マグネタイズ
(C)2022「終末の探偵」製作委員会
http://syumatsu-tantei.com/
★2022年12月16日(金)全国公開
posted by shiraishi at 15:35| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ケイコ 目を澄ませて

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監督:三宅唱
原案:小笠原恵子「負けないで!」(創出版)
脚本:三宅唱 酒井雅秋
撮影:月永雄太
出演:岸井ゆきの(小河ケイコ)、三浦友和(会長)、 三浦誠己 (林誠)、 松浦慎一郎(松本進太郎)、 佐藤緋美(小河聖司)、 中島ひろ子(小河喜代実)、仙道敦子(会長の妻)

嘘がつけず愛想笑いが苦手なケイコは、生まれつきの聴覚障害で、両耳とも聞こえない。再開発が進む下町の一角にある小さなボクシングジムで日々鍛錬を重ねる彼女は、ハンデを抱えながらプロボクサーとしてリングに立ち続ける。母からは「いつまで続けるつもりなの?」と心配され、言葉にできない想いが心の中に溜まっていく。「一度、お休みしたいです」と書き留めた会長宛ての手紙を出せずにいたある日、ジムが閉鎖されることを知り、ケイコの心が動き出す――。

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聴覚障害の小笠原恵子さんが、プロボクサーとしてリングに立った自伝をもとに映画化された作品です。セコンドやレフリーの声が聞こえなくても大丈夫かな、と考えてしまいますが、ケイコは耳を補う「いい目」を持っていました。
岸井ゆきのさんが愛くるしい笑顔を封印、ボクシングに打ち込むケイコを全身全霊で演じています。ボクシングのトレーニングを始めたのはクラインクインの3か月前から。実際にボクシングトレーナーでもある松浦慎一郎さんは、数々のボクシング映画に出演、撮影前の指導にもあたっています。映画の中でのミット打ちのシーンでは、二人のスピードがどんどん上がっていくのに目が丸くなります。それが自然の流れの中でできたもので、それまでのトレーニングの成果が表れたものだった、そうです。ゆきのさんすごい!
手話も学びながらの日々はケイコとゆきのさんを一体化させ、新しいゆきのさんが育ったようです。
三宅唱監督が16ミリフィルムに焼き付けた、ケイコのまっすぐな生き方、周りの人々の想いに触れてください。(白)


2022年/日本/カラー/ビスタ/99分
配給:ハピネットファントム・スタジオ
(C)2022 映画「ケイコ 目を澄ませて」製作委員会/COMME DES CINEMAS
https://happinet-phantom.com/keiko-movie/
Twitter:@movie_keiko
★2022年12月16日(金)テアトル新宿ほか全国公開

★☆3ヵ月の特訓の賜物!岸井ゆきのの左ストレートが冴える!
本編シーンから抜き焼きした16mmの“生コマフィルム”を数量限定で入場者にプレゼント!

配布期間:12月16日(金)~
配布劇場:テアトル新宿、ヒューマントラストシネマ有楽町、ユーロスペース、池袋シネマ・ロサ、立川シネマシティ
     センチュリーシネマ、シネ・リーブル梅田
※数量限定、無くなり次第終了

posted by shiraishi at 14:44| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする