2022年10月30日

シグナチャー 〜日本を世界の銘醸地に〜

2022年11月4日(金)より新宿武蔵野館ほか全国公開 劇場情報

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(C)2021 Kart Entertainment Co., Ltd.

日本ワインにかけた夢

監督・脚本・エグゼクティブプロデューサー:柿崎ゆうじ
プロデューサー:古谷謙一/前田茂司
音楽:西村真吾 ラインプロデューサー:善田真也 
キャスティングプロデューサー:山口正志
撮影:松本貴之 照明:佐藤俊介 録音:小林圭一 
美術:泉 人士 編集:神谷 朗 音響効果:西村洋一 
記録:西岡智子 スタイリスト:前田勇弥 助監督:長尾 楽
主題歌:辰巳真理恵「大地のしずく」(テイチクエンタテインメント)
出演
平山浩行:安蔵光弘役 メルシャン ワイン醸造家
竹島由夏:安蔵(水上)正子役〜光弘の妻・栽培醸造家 
榎木孝明:浅井昭吾(麻井宇介)役〜メルシャン顧問
辰巳琢郎:大村春夫役(丸藤葡萄酒専務)
徳重 聡 山崎裕太 篠山輝信 榎木薗郁也 堀井新太
渡辺 大 出合正幸 伊藤つかさ 
和泉元彌 田邉公一 黒沢かずこ(森三中) 板尾創路
大鶴義丹 長谷川初範 宮崎美子

シグナチャー:特別なワインに醸造責任者がサインを入れること

日本のワイン業界を世界と伍する位置に牽引した麻井宇介(浅井昭吾)の想いを受け継ぎ、「日本を世界の銘醸地」にするため奮闘する醸造家・安蔵光弘の半生を描いた作品。
1995年、ワイン造りを志す安蔵光弘は東京大学大学院(応用微生物学専攻)を卒業後、山梨県勝沼町にあるシャトーメルシャンに入社。入社してからは畑の草刈りや、醸造用の機械の洗浄など、ワインに触れる機会の無い仕事が続いていた。そういう仕事ばかりの日々に、早くワインを作りたいという思いが募る。そんな中、会社の顧問である浅井昭吾が、安蔵が暮らす寮に訪ねてきた。そして安蔵が現在している仕事が、天候や気温、湿度、菌の発酵条件など、後のワイン造りに役立つという話をし、それを聞いた安蔵は浅井の見識の高さと人柄に傾倒していく。そして「文章を書く練習や、英語、フランス語など語学の勉強をしろよ」と言って帰っていった。
浅井昭吾(麻井宇介)役の榎木孝明さん
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(C)2021 Kart Entertainment Co., Ltd.

浅井昭吾は麻井宇介というペンネームでワインに関するエッセイや本を出していて、日本のワイン造りを啓蒙する先頭に立っていた。柿崎ゆうじ監督の前作『ウスケボーイズ』は、この麻井宇介に影響を受けワイン造りに情熱を注ぐ若者たちを描いた作品だったが、今作はメルシャンの後輩である実在の人物安蔵光弘をモデルにして、彼と一緒にワイン造りに取り組む仲間たちを描いた。
仲間たちとワイン造りに携わる中で、妻となる正子とも出会い、理想のワイン造りのため試行錯誤し続ける。山梨のワイナリーから、本社部門での渉外、営業などの経験も積み、フランス・ボルドーへの赴任を経て、日本に戻ってからは1998年にワイナリーへ復帰。山梨県勝沼のワイナリーや長野県塩尻市の桔梗ヶ原にあるメルシャンワイナリーへ赴任。それまで積み重ねた経験をワイン造りに生かしてゆく。
そして桔梗ヶ原で植えていた欧州品種メルローを醸造家自ら収穫・選果するという大胆な提案をし、渋る葡萄農家の説得を経て実施。悪戦苦闘しながらも2樽の特別なメルローを仕込むことに成功した。安蔵が仕込んだこの特別なメルローのリリースが決定し、ラベルに自らシリアルナンバーを手書きする。このワインは【桔梗ヶ原メルロー シグナチャー1998】と命名され、国際的なワインの大会で賞を得た。
しかし、尊敬する浅井が病魔に襲われ余命宣告を受けてしまう。病院に見舞に行った安蔵は浅井から「君が日本のワインを背負って行ってくれよ」と託される。安蔵は浅井の想いを受け継ぎ「日本のワインを世界の銘醸地」にするため奮闘してゆく。
安蔵光弘役には、本作で映画初主演を務める平山浩行。妻となる安蔵正子役は、パリ国際映画祭にて最優秀女優賞を受賞した竹島由夏、麻井宇介役に榎木孝明、安蔵光弘の上司役に徳重 聡、山崎裕太、大鶴義丹。丸藤葡萄酒の専務(現:社長)大村春夫役に辰巳琢郎。そして長谷川初範、宮崎美子、黒沢かずこ、板尾創路、篠山輝信、堀井新太、ソムリエの田邉公一など豪華な顔ぶれが出演している。

安蔵光弘役の平山浩行さん
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(C)2021 Kart Entertainment Co., Ltd.

私は酒好きというわけではないけど、ウイスキー、ビール、ワイン、日本酒を時々飲む。でも日本酒が一番好き。旅に出ると、その地域の日本酒かワインを買ってくる。そんな程度だけど、ワインに関しては、高級なワインを飲んでないせいか、あまりおいしいという印象を持っていなかった。特に赤ワインは渋いだけでどうも好きになれない。だから私が買うのは白ワイン。何十年と日本のワインを買ってきたけど、10数年前から日本のワインも味がよくなってきたと感じる。そんな私だけどワイナリー巡りはけっこう好き。日本では7か所くらいは行っているかもしれない。海外もウルグアイのワイナリーに行ったことがある。一番最初に行ったのは北海道池田町の十勝のワイナリーで35年くらい前だった。大きなワイン城の中でワインを作っていた。その後は10年位前から行き始めた。
この映画の舞台である勝沼には10年くらい前から2,3回行っている。勝沼にあるぶどうの丘には、地下にワインカーブ(ワイン貯蔵庫)があり、約180種類のワインがある。タートヴァンと言う専用の金属製の皿のようなカップを1520円で買い、全てのワインを試飲できる。試飲後、もちろん購入も可能。こんなにたくさんのワインをこの値段で試飲できるところは、他にはないのでは。やはり多くのワイナリーがある勝沼だからこそ。
映画の冒頭に出てきた、ワイン発祥の寺と言われている大善寺にも泊まったことがある。このお寺ではワインを造っていて、お土産に買って帰った。また、勝沼にあるシャトー・メルシャンのビジターセンターでもワインをたくさん扱っているし、「ワイン資料館」が併設されていて、ワインの歴史を知ることができる。そんなわけで、最近は日本のワインに思い入れがあり、「日本ワインがんばって」という思いで、買うのはほとんど日本のワイン。ほんとは外国産のワインのほうが安いのが多いけど、やはり日本ワインにがんばってもらいたいので、応援の意味もこめて買っている。でもここに出てきた【桔梗ヶ原メルロー シグナチャー】は、高くてとても手がでないかな。
この作品の主人公安蔵光弘を演じた平山浩行さんは初主演とのこと。長いキャリアがあるようだけど、私が平山さんのことを知ったのは、2017年にTV朝日で放送された帯ドラマ「やすらぎの郷」(倉本 聰脚本)の続編、「やすらぎの刻〜道」(やすらぎのとき みち)で山に住む鉄平という炭焼きの役。渋くてかっこ良かった。フィルモグラフィを見ると、他にも見た作品はあるようだけど、印象に残ったのはこの鉄平役だった。それから気にはなっていたのだけど、その後の活躍はすばらしく、時々TVで出演しているのをみかけるようになり、この作品で主役を射止めたのが嬉しい。10月28日に公開された『天間荘の三姉妹』にも水族館の館長役で出演している。これからもどんどん主役級で頑張ってほしい(暁)。

公式HP http://www.signature-wine.jp 
製作協力:ビーテックインターナショナル エーチームアカデミー
制作プロダクション:楽映舎 
企画・製作・配給:カートエンターテイメント
宣伝プロデューサー:廿樂未果 配給協力:REGENTS
2021年/120分/シネスコ/5.1ch/日本

*参照記事 
塩尻桔梗ヶ原の五一ワインを訪ねた旅とウルグアイのワイナリーを訪ねたレポートが2020年のスタッフ日記にあります。
シネマジャーナル スタッフ日記
一升瓶に入ったワイン 「五一ワイン エコノミー」を買ってみました
http://cinemajournal.seesaa.net/article/472972369.html

*ワインイベント
「やまなしワイン×LUMINE AGRI MARCHE」
期間:2022年11月3日(木・祝)~11月7日(月)場所:新宿東口駅前広場
ワイン生産量日本一の山梨県から、65ワイナリー・約200銘柄のワインが大集合! 
今年解禁の新酒ワイン「山梨ヌーボー」や人気ワインが試飲可能!
映画「シグナチャー~日本を世界の銘醸地に~」の特別イベントも
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000097.000003279.html
posted by akemi at 21:58| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ソウル・オブ・ワイン 原題:L'ame du vin

2022/11/4(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、アップリンク吉祥寺ほか全国順次ロードショー  劇場情報

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©2019 – SCHUCH Productions – Joparige Films – 127 Wall 

「ソウル・オブ・ワイン」は大地と空と人の出会いから

監督・脚本:マリー=アンジュ・ゴルバネフスキー
撮影:フィリップ・ブレロー
出演者 公式HP

高級ワインの代名詞ともいわれるロマネ=コンティをはじめとする世界最高峰のワインを生み出すワイン愛好家の聖地、フランス・ブルゴーニュ地方。名だたる畑を守る生産者たちの貴重な舞台裏を1年に渡り密着したドキュメンタリー。
農薬や除草剤を使わず、草むしりは手作業。畑を耕すのは馬を使い、自然のままの有機農法やビオディナミ農法でワイン造りをするブルゴーニュの生産者たち。土地の所有者ではなく、次世代へとその遺産を受け継ぐ番人と語る。そして何世紀もの間、ワイン畑を守り、その技と知恵、哲学をつないできた。ワインとテロワール(土壌や生育環境)について語り、最高級のワインが生まれる貴重なプロセスを、丁寧に、冬から春、実が大きくなり、熟れ、収穫を経て、ワインができるまでを四季を通じて映し出す。
詩的で芸術的な映像を観ながら、何世紀も繰り返され、継続されてきたワインができるまでの過程をじっくり眺めると、自然の真理やワイン造りの哲学が伝わってくる。またワイン造りに欠かせないオークの樽作り工程も丁寧に描きだされる。
葡萄生産者から樽職人、ワイン生産者、醸造専門家、ソムリエなど、フランスのワイン界を代表する一流のスペシャリストたちが、その香り高く味わい深い世界の導き手となり、フランスのワイン文化の「真髄」、丹念な仕事を映し出す。

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©2019 – SCHUCH Productions – Joparige Films – 127 Wall
 
1本200万円以上すると言われている高級ワインなんて、私には縁がないし、興味もなかったけど、この作品はそれらの高級ワインの生産地ブルゴーニュを舞台に、葡萄を栽培する人、ワインを造る人、はたまたワイン樽を作る人、そしてソムリエや醸造専門家など、ワインに関わる人たちが出てきて、ワインを語る。ワインはこういう風に作られているのだという作りになっていて、とても興味深い。ワインが好きな人もワインを飲まない人にとっても、このようにしてワインが作られていくという過程が描かれ、とても興味深いドキュメンタリーだと思う。
特に葡萄を作る生産者たちの仕事が最初から最後まで描かれていたのが、とてもうれしかった。馬で畑を耕すところや、剪定、農薬や除草剤に頼らず手による除草、葡萄を手摘みする姿、葡萄の仕分けまでしっかり描かれ、そして樽作りについても最初から最後まで描かれ、樽ってこんな風にできるんだと感心した。また、フランス、ブルゴーニュ地方の四季の葡萄畑の風景と、何世代にも渡ってワイン畑を守り続ける生産者たちの知恵と技、そして畑を継続してゆく姿を通して、ワインと人間の関わり、ワイン造りの原点を幅広く紹介している。この作品で、樽からスポイトのようなものでワインを取り出して試飲する光景を見て、私もこの経験をぜひしてみたいと思った。
最後のほうでパリに店を持つ日本人のソムリエとシェフが1945年のヴィンテージワインを試飲するシーンがでてくるが、「ドキドキするとか、感動しかない」とかいう言葉を繰り返すばかりで、せっかくのワインの味覚を表現する言葉が出てこなかったのが残念だった(暁)。


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©2019 – SCHUCH Productions – Joparige Films – 127 Wall 


公式サイト  http://mimosafilms.com/wine/
2019年/フランス/フランス語/102分/カラー/1.85:1/5.1ch 
字幕:齋藤敦子 字幕監修:情野博之
協賛:株式会社ファインズ 
後援:在日フランス大使館、アンスティチュ・フランセ日本、一般社団法人日本ソムリエ協会 
配給:ミモザフィルムズ

posted by akemi at 20:32| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

鳩のごとく 蛇のごとく 斜陽

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原作:太宰治
監督:近藤明男
脚本:白坂依志夫、増村保造、近藤明男
出演:宮本茉由、安藤政信、水野真紀、奥野壮、田中健、細川直美、白須慶子、三上寛、柏原収史、萬田久子、柄本明、尾崎右宗、菅田俊、岡部尚、中谷太郎、緒方美穂、三木秀甫、岡元あつこ、栗原沙也加、今泉朋子、白石恭子、薗田正美、光藤えり、山村友乃、野崎小三郎、ジョナゴールド、春風亭昇太
主題歌:小椋佳「ラピスラズリの涙」(作詞・作曲・歌)
撮影支援協力:青森県、山梨県、五所川原市、つがる市、弘前市、甲府市、山梨市、都留市、三鷹市

敗戦後の昭和 20 年、没落貴族となった上、父を失ったかず子とその母、都貴子は生活のために本郷西片町の実家を売って西伊豆で暮らすことになった。そんな折、戦地で行方不明となっていた弟の直治が帰還するとの知らせが入ると、母は「歳の離れた資産家に嫁いだらどうか」とかず子に話す。激怒したかず子は「鳩のごとく素直に、蛇のごとく慧かれ」というイエスの言葉とともに 6 年前の出来事を想いだす。まだ学生だった直治が師匠と仰ぐ中年作家、上原二郎との出会いである。それは一夜の恋心の目覚めであった。

元々は40数年前に白坂依志夫が脚本を書き、増村保造監督がメガホンを取ることになっていたようですが、企画が立ち行かなくなり、そのままお蔵入りしていた企画を助監督で入る予定だった近藤明男監督が受け継ぎ、映画化されました。
何といっても目を引くのが主人公のかず子を演じた宮本茉由の美しさ。「第1回ミス美しい20代コンテスト」で審査員特別賞を受賞し、本作で映画デビューにして初主演。美しさの中に芯の強さを内包しているかず子にぴったりです。近藤監督は最初、もう少し経験のある人を探していたようですが、なかなか見つからず。そのうちに安藤政信、水野真紀と周りが先に固まり、そんなとき『ローマの休日』でオードリー・ヘプバーンが起用されたように、新人女優がいいのではないかと思いついたそうです。
太宰治を思い出させる中年作家役は安藤政信。このところこういった自堕落だけれど、危険な色香を放つ役どころを一手に引き受けている気がします。今後も豊川悦司、加藤雅也の路線をしっかり受け継いでいくのではないでしょうか。
その2人が愛を交わすシーンは肌を見せずに映し出されますが、激しく求めあっているのがしっかり伝わってきます。モンタージュとして合間に視点の異なる複数のカットが組み合わされますが、このカットバックは監督の狙い。そこに全裸が入るとカットバックが乱れてしまうそう。増村監督の『曽根崎心中』(1978)の梶芽衣子と宇崎竜童のラブシーンと同じ手法で、そこにベートーヴェンのピアノソナタ第8番「悲愴」が流れるのが近藤監督らしさ。じっくりと味わってご覧になってください。(堀)


2022年/日本/日本語/カラー/アメリカンビスタ/5.1ch/109分/G
配給:彩プロ
©2022 『鳩のごとく 蛇のごとく 斜陽』製作委員会
公式サイト:https://syayo.ayapro.ne.jp/
★2022年10月28日よりTOHOシネマズ甲府、シアターセントラルBe館にて先行公開、11月4日よりTOHOシネマズ日本橋ほか全国公開
posted by ほりきみき at 11:22| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする