2022年10月02日

『僕が愛したすべての君へ』『君を愛したひとりの僕へ』

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『僕が愛したすべての君へ』
監督︓松本 淳
原作︓⼄野四⽅字「僕が愛したすべての君へ」(ハヤカワ⽂庫刊)
アニメーション制作:BAKKEN RECORD
キャスト︓宮沢氷⿂(高崎暦)、橋本 愛/蒔⽥彩珠 他

高崎暦(こよみ)は7歳のとき両親が離婚して、母親の実家で祖父母と暮らしている。
ある日、クラスメイトの瀧川和音(たきがわ かずね)に声をかけられた。彼女は85番目の並行世界から移動してきたといい、その世界では自分は暦の恋人なのだと告げる。
2022年/日本/カラー/102分

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『君を愛したひとりの僕へ』
監督︓カサヰケンイチ
原作︓⼄野四⽅字「君を愛したひとりの僕へ」(ハヤカワ⽂庫刊)
アニメーション制作︓トムス・エンタテインメント
キャスト︓宮沢氷⿂(日高暦)、蒔⽥彩珠/橋本 愛 他

日高暦は両親が離婚して父と暮らしている。父の勤務先で栞という少女と出逢った。暦と栞は次第に親しくなり、栞は大人になったら暦と結婚したいと思っていたが、ある日それが叶わないと思いこむ。悲しむ栞に暦は今と違う並行世界へ二人で移動しようと提案する・・・。

『僕が愛したすべての君へ』と『君を愛したひとりの僕へ』は同じ登場人物が別の”並行世界”に住んでいます。暦の両親が離婚して、母と住む世界。もう一つは父と住む世界。ほんの少しずつ違う世界が無数に存在し、移動することができる近未来の設定です。 父と母のどちらと住むか、大きな選択をした暦のその後の人生が変わっていきます。映画を観る観客も、どちらの映画を先に観るかで、鑑賞後の印象が大きく変わるでしょう。どっちを先にしますか?

理屈がよくわからないまま見終えてしまって疑問が・・・。移動した先にいるはずの「自分」と今の自分は入れ替わるの?「ドラえもん」ののび太くんのように、自分と出逢わないようにすればいいの?あれれ?また観なくては。(白)


2022年/日本/カラー/98分
配給︓東映
©2022 「僕愛」「君愛」製作委員会
https://bokuaikimiai.jp/#modal
予告編はこちら
★2022年10月7日(金)より2作同日公開

posted by shiraishi at 19:30| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

アメリカから来た少女   原題:美國女孩 英題:American Girl

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©Splash Pictures Inc., Media Asia Film Production Ltd., JVR Music International Ltd., G.H.Y. Culture & Media (Singapore).


監督・脚本:ロアン・フォンイー(阮鳳儀) 
製作総指揮:トム・リン(『百日告別』『夕霧花園』)
撮影:ヨルゴス・バルサミス
出演:カリーナ・ラム(林嘉欣)、カイザー・チュアン(荘凱勲)、ケイトリン・ファン(方郁婷)、オードリー・リン(林品彤)

2003年の冬。アメリカから台湾に帰郷した13歳の少女と家族の物語

母と妹とロサンゼルスで暮らしていた13歳のファンイー。母が乳がんに罹り、父が一人で暮らしていた台北に戻り、家族4人で暮らすことになった。台北の名門中学校に入るが、校則で長い髪は切らなければならなかった。英語は得意だが、中国語は苦手のファンイーは、皆から陰で「アメリカン・ガール」と呼ばれ、なかなか学校に馴染めない。ある日、教師からスピーチコンテストへの参加を勧められ、母への正直な想いを綴る。ところが、コンテストの前日に妹がSARS感染の疑いで家族全員が隔離されてしまう・・・。

<ロアン・フォンイー監督のコメント>
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©Splash Pictures Inc., Media Asia Film Production Ltd., JVR Music International Ltd., G.H.Y. Culture & Media (Singapore).

 『アメリカから来た少女』は、私の少女時代である2003年の重要なエピソードに基づいた半自伝的な物語です。私が7歳の時、母は私と妹を連れてアメリカに渡りました。父は仕事のために台湾に残りました。私たちがアメリカでの生活を始めてやっと5年が過ぎた頃の2003年、母の乳がんが発覚し、私たちは台湾に戻りました。私は、母親がいなくなることをいつも恐れながら、少女時代を過ごしていました。それなのに、私は、心の底にある母を失うことへの恐怖を10代の怒りの感情で紛らわせ、母が亡くなったときに自分が受けるであろう心の傷が軽くなるようにと、母を自分の最大の敵として位置付けたのです。本作品では、台湾に戻った10代の少女の葛藤の物語として、彼女の家族のポスト・アメリカン・ドリームがどのように崩壊したか、そして彼女らがそれにどう折り合いをつけたのかにも触れています。
『アメリカから来た少女』は、人は成長することでどれほど傷つくのか、家庭というものがいかに移り変わるのか、そして、傷ついた2人の人間が人生の中でいかに互いを傷つけ合い、癒し合うのかを描いています。



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©Splash Pictures Inc., Media Asia Film Production Ltd., JVR Music International Ltd., G.H.Y. Culture & Media (Singapore).


1990年生まれのロアン・フォンイー監督の自身の経験に基づく半自伝的物語。
小学生から中学生にかけてアメリカで過ごし、母国語のはずの中国語よりも英語の方が楽なファンイー。友達とも別れなければならず、台北の家ではネットも繋がらなくて、母が病気にならなければとうらめしいのです。一方で、乳がんで母が死んでしまうかもしれないという恐怖もあります。そんな複雑な少女の思いを、ケイトリン・ファンが見事に演じています。演技経験はなかったものの、バイリンガルの少女を探すオーディションで抜擢され、金馬奨と台北映画祭で最優秀新人賞を受賞しています。
母親役のカリーナ・ラムも、病を抱え、我が子を置いて先立つであろうことへの思いを繊細に演じています。カリーナ・ラムには、『男人四十』が、2002年のアジアフォーカス・福岡映画祭で上映された折にお会いしていますが、可憐な少女という雰囲気でした。その彼女が、お母さん役! (実生活でも、お母さんですね) しっとりとした素敵な大人の女性になりました。
娘たちにアメリカで教育を受けさせるため、一人台北に残ってあくせく働く父親を演じたのは、台湾の映画やドラマで活躍する実力派のカイザー・チュアン。「僕は家族のATMか」と、一家を支える父親の悲哀をたっぷり感じさせてくれました。(咲)


SARSが猛威を振るう2003年、アメリカから台湾に帰国した13歳の少女と家族の物語。母が乳癌にかかり治療のため、台北で一人暮らしている夫の元へ帰国。しかし、幼い頃に渡米した娘のファンイーは中国語も不得意で、台北の暮らしにも馴染めず、親友のいるアメリカに戻りたいと考え不満タラタラ。馬が大好きでアメリカでの生活を謳歌していた娘にとって、母国での生活は異文化との遭遇でストレスだらけ。その怒りを母にぶつける。数年ぶりに再会した父親とも上手くいかず、久しぶりに家族が揃ったのに不満をぶつけ合い傷つけあう。妹は意外と台湾になじんでいたのにSARSにかかってしまう。この家族に次々といろいろな出来事が起こり、家族のストレスもマックスに。
台湾での学校生活は、強圧的な先生も描かれるが、母との確執に対して、弁論大会で自分の気持ちを語るように言ってくれる先生もいて、母との関係を見直してゆく。仕事にかかりきりの父も家族の理解者であろうとする姿が描かれ、この家族の行く末に少し希望が見える。辛い治療に穏やかではいられない母親を演じていたのはカリーナ・ラム。苦悩する母親役を演じていて、少女のようだったカリーナもそういう年齢になってきたかと感慨深い(暁)。


2021年・第58回金馬奨 5部門受賞!
(最優秀新人監督賞、最優秀新人俳優賞、最優秀撮影賞、観客賞、国際批評家連盟賞)
2021年・第34回東京国際映画祭「アジアの未来」部門出品作品

2021年/台湾/北京語・英語/101分/ビスタサイズ(1.85:1)/5.1ch
配給:A PEOPLE CINEMA
公式サイト:https://apeople.world/amerika_shojo/
★2022月10月8日(土)より、ユーロスペースほか全国順次公開




posted by sakiko at 18:02| Comment(0) | 台湾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

声/姿なき犯罪者 原題:보이스(ボイス)

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監督:キム・ソン&キム・ゴク(『ホワイト:呪いのメロディー』2011年)
出演:ピョン・ヨハン(『茲山魚譜 チャサンオボ』、『太陽は動かない』)、キム・ムヨル(『悪人伝』)、キム・ヒウォン(『鬼手』)、パク・ミョンフン(『ただ悪より救いたまえ』)、イ・ジュヨン(『サムジ ンカンパニー1995』)

釜山。ソジュン(ピョン・ヨハン)はワケあって刑事をやめ、建設現場で働いているが、正式に現場監督の内示も受け順調な日々だ。現場で作業員の落下事故が起こるが、なぜか携帯が通じない。その頃、ソジュンの妻は、建設現場で死亡事故が起こり、責任者の夫が逮捕され、示談金を払えば有罪にならないと言われる。夫に電話するも通じず、7000万ウォンを振り込む。建設現場の同僚たちの家族も同様に電話を受け、言われるままに金を振り込んだ。振り込め詐欺だと判明するが、会社自体が30憶ウォンの詐欺被害にあっていた。
ソジュンは、振り込め詐欺犯罪を担当する刑事イ・ギュホ(キム・ヒウォン)に早期解決を迫るが、元締めが中国にいてなかなか動けないといわれる。妻や同僚が失ったお金を取り戻すべく、ソジュンは自ら中国・瀋陽にある詐欺団のアジトに潜入する・・・

冒頭、スピード感に溢れる展開。詐欺にかかるのも、きっとこんな風にあっという間なのだと思いました。ピョン・ヨハンが、騙された悔しさから詐欺団に立ち向かう姿は、痛々しいながらカッコいいです。危ないアクションシーンもすべて自身でこなしたのだとか。
キム・ムヨル演じる振り込め詐欺本拠地の企画室総責任者クァクは、極悪非道ぶりが半端ないです。
監督のキム・ソンとキム・ゴクは双子の兄弟。実際にあった振り込め詐欺の事例を映画に落とし込んで、リアルを追求しています。
入手した個人情報に合わせた巧妙な台本を作り、電話のかけ子たちに配り、短期決戦で一斉に電話をかけ、振り込ませるという見事な手口。200人以上が制服を着て、一斉に電話をかける姿は、まるでコールセンター。始業時には訓示もあって、まさに企業そのもの。
日本でも組織的な詐欺グループの犯罪が後を絶ちませんが、韓国も同じ。「声」だけで、自分の大事な貯金を振り込んでしまうなんて信じられないと思っていても、引っかかる危険は誰しもにあるものと思います。映画の中で、キム・ヒウォン演じる刑事が、「不審な電話には出ず、お金の話が出たら切ること。何より、被害者は自分を責めがちですが、犯人が悪質なのです」という言葉を胸に刻みたいと思いました。(咲)


大がかりな詐欺に口があきっぱなし。犯罪は日々巧妙になっていて、騙しのプロに庶民は勝てません。それでも詐欺対策用に留守電にする。知らない番号の電話に出ないなど自分のできる工夫が必要ですね。
映画の中で、あれだけお金が集まっても本当に儲けているのは一握り。末端には借金に縛られて、しかたなく犯罪に加担してしまった人もいます。詐欺って人の弱点をつくんですね。誰か天誅を!
キム・ムヨルはドラマ「未成年裁判」では、情のある検事役でした。今回の凄まじい悪役っぷりにびっくり、演技の幅広げましたね。ソジュンに助けられたカンチル(イ・ジュヨン)がいいところで活躍します。彼女の髪型、「梨泰院クラス」(2020年)のイソちゃんと同じですね。流行りだったんでしょうか。(白)


2021/韓国/韓国語/109 分/シネスコ/5.1ch/カラー
提供:ツイン、Hulu
配給:ツイン
公式サイト:https://koe-voice.jp/
★2022年10月7日(金)より新宿武蔵野館他にて全国順次ロードショー

posted by sakiko at 16:58| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『七人樂隊』(原題:七人樂隊/英題:Septet:The Story of Hong Kong)

10月7日(金)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開
劇場情報
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©2021 Media Asia Film Production Limited All Rights Reserved


香港ニューウェーブを担った監督7人が、50年代から未来まで、香港の各時代の“美しい瞬間”を全編35mmフィルムで撮った7つの物語

監督:洪金寶(サモ・ハン)/許鞍華(アン・ホイ)/譚家明(パトリック・タム)/袁和平(ユエン・ウーピン)/杜琪峯(ジョニー・トー)/林嶺東(リンゴ・ラム)/徐克(ツイ・ハーク)
プロデューサー:杜琪峯/朱淑儀(エレイン・チュー)
出演:洪天明(ティミー・ハン)/呉鎭宇(フランシス・ン)/余香凝(ジェニファー・ユー)/元華(ユン・ワー)/伍詠詩(ン・ウィンシー)/任達華(サイモン・ヤム)/張達明(チョン・タッミン)/林雪(ラム・シュ)

『七人樂隊』はジョニー・トー監督プロデュースで、長らく香港映画界を牽引してきた七人の監督が集結。1950年代から未来まで、10年ごとに年代がを分け担当した短編7本から成るオムニバス映画。それぞれ個性あふれる作品で活躍してきた7人の監督たちが自身の特別なノスタルジーをこめ映像化した物語は、デジタルが主流の現代に、あえて35mmフィルムで撮影を行い、過ぎ去りし“フィルムの時代”への敬意を表している。

第73回カンヌ国際映画祭カンヌセレクション2020で上映された本作は、ジョニー・トー監督プロデュースの元、七人の監督が集い、担当する年代をくじで選び製作された。
貧しかった50年代、必死にカンフーの稽古に励んだ幼い自分と仲間の姿、自伝的エピソードを描したサモ・ハン監督の「稽古」。サモ・ハンの息子洪天明がカンフーの先生役を演じている。
教育に生涯を捧げる校長先生(呉鎭宇)と、家族のような日々を過ごした学校の先生たち。そして女性教師の淡い憧れを描いたアン・ホイ監督の「校長先生」。
移住を控えた恋人たちの別れをスタイリッシュな映像で描いたパトリック・タム監督の「別れの夜」
移住する孫と香港に残るおじいさんの、話がかみ合わないながらも温かな交流を描くユエン・ウーピン監督「回帰」。孫娘を愛する祖父役を元華が演じている。
香港特有の喫茶店“茶餐廳”を舞台に、庶民が株価に右往左往する姿を描くジョニー・トー監督の「ぼろ儲け」。お約束の林雪(林雪)が出演。
イギリスから久しぶりに帰って来た主人公が、香港の変わり様に翻弄されるリンゴ・ラム監督「道に迷う」。任達華が道に迷う。
精神科の治療風景を描き、たたみかける台詞が魅力のツイ・ハ―ク監督「深い会話」、かみ合わない論争を続ける張達明のとぼけた演技。徐克と許鞍華もカメオ出演。

2020年の東京フィルメックスで上映され観客賞を受賞した作品。
杜琪峯監督の呼びかけで集まった、香港映画ニューウエイブ全盛期に登場し活躍した同世代の7人の映画監督たちが、それぞれの持ち味を生かし、1950年代から近未来までの歴史をたどりつつ香港の人々を描いたオムニバス映画。林嶺東監督にとっては本作が遺作になった。こちらの7人の楽隊は、変わりゆく時代に寄り添う香港愛に満ちたSeptet(七重奏)を奏でた。
洪金寶の「練功」は、『七小福』を思わせるカンフー訓練風景を描く。訓練をサボったらみつかってしまい、さらに厳しくしごかれる。子供達のお茶目な姿に思わずにっこり。でもすごいカンフー技を見せてくれた。許鞍華の「校長」はノスタルジック感あふれる、彼女らしい情感にあふれた作品だった。呉鎭宇を校長先生役に持ってくるなんてユニーク。彼のこんな姿、これまで観たことがない! 袁和平の「回帰」は1997年の香港返還前後の話で、香港に残ったカンフー好き爺さんとカナダへ渡った孫娘との交流を描いていたけど、好々爺的な元華の姿が‌微笑ましかった。杜琪峯の「ぼろ儲け(遍地黄金)」は『奪命金』を彷彿とさせるような一攫千金を狙って金儲けに励む香港人が出てくる。株の売買で、間違って食堂メニューの番号を頼んだら、値上がりするという行き違いの妙が描かれた杜琪峯らしい作品。林嶺東の「道に迷う(迷路)」の最後には「香港より良い所はたくさんあるが、故郷に対する愛は香港にしかない」と出てくる。徐克の「深い会話(深度対話)」は、近未来の精神病院が舞台。医者と患者が入り乱れ、最後はどちらがどちらかわからなくなるような混乱を描いた。これも徐克ならではの作品で、香港映画にハマった人にとっては出演陣の口角泡を飛ばす会話が爆笑もの。しかし、今の香港の状況を考えると、かつての香港を取り戻せないかもしれないと思い、香港の未来を思うと絶望感もある。この『七人楽隊』が、変わりつつある香港へのレクイエムにならないことを祈りたい(暁)。


長年の香港映画ファンにとって、感慨深く、愛おしくてたまらない映画。
7人の監督が、与えられた年代を舞台に描いた物語は、それぞれがその監督らしいテイストで、出演者も違うのに、見終わって、1950年代から近未来に至る香港の市井の人々を描いた一つの絵巻物のように感じました。
香港返還を見据えて国外に移住する人と香港に残る人との別れ、空港が町中の啓徳にあった頃のビルの真上を飛んでいく飛行機、一つのカード(オクトパス)で交通機関だけでなく様々なものが決済できるようになるのを予想する人、中環(セントラル)のスターフェリー乗り場が移動した跡にできた大きな観覧車・・・ ちょっとしたことから感じる、香港の変遷に胸がいっぱいになりました。
そして、フラさま(呉鎭宇=フランシス・ン)が落ち着いた校長先生を演じ、サイモン・ヤム(任達華)が海外から里帰りし、昔馴染みの建物が見つからなくて戸惑う中年男を演じるという、彼らがぎらぎらしていた頃を思うと、時が流れたことをずっしり感じました。
これからの香港がどうなるのだろうとの思いもよぎりますが、香港が香港らしく歩んできた時代を映し出した情感たっぷりの映画に乾杯です。(咲)



公式サイトはこちら
2021年/香港/広東語/111分/ビスタ/5.1ch/
日本語字幕:鈴木真理子
配給:武蔵野エンタテインメント

メイキング動画「和やかな楽章」

アン・ホイ監督 インタビュー映像&メッセージ【You tube】
posted by akemi at 05:59| Comment(0) | 香港 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

裸のムラ

10月8日(土)より、[東京]ポレポレ東中野、[石川]シネモンドほか全国公開
劇場情報

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(C)石川テレビ放送

政治家、公務員、有権者、マスメディア。みんなそれぞれ一生懸命。
だけど、やっぱりズレている?!

監督:五百旗頭幸男(いおきべ ゆきお)
撮影:和田光弘 編集:西田豊和 音楽:岩本圭介
音楽プロデューサー:矢﨑裕行 プロデューサー:米澤利彦

『はりぼて』で富山市議会の不正を丸裸にした五百旗頭幸男監督。富山チューリップテレビを辞し、新天地の石川テレビで制作した2本のドキュメンタリー番組「裸のムラ」と「日本国男村」をもとに、<北陸の保守王国>石川県から日本の縮図を描く。その一方で、私たちが暮らす社会に根強く残る家父長制(パターナリズム)や男性中心社会の姿をユーモアを込めて描きだす。

現職最長となる7期27年目の 谷本正憲石川県知事(75)は、コロナ禍に「無症状の方は石川県にお越しいただければ」と失言。「4人以下での会食」を呼びかけたのに、自身は90人以上で会食。永すぎた権力集中が周りを見えなくし、為政者は傍若無人になっていく。そんな長期県政もついに終焉を迎えた。新知事に立候補したのは、谷本の選対本部長を務めていた衆議院議員 馳浩。馳新知事が掲げたスローガン「新時代」は、馳が衆議院に初当選した時と同じだった。ムラの男たちが熱演する栄枯盛衰の権力移譲劇。ここ一番で登場するのは、ご存知森喜朗元内閣総理大臣。
一方でキャメラは市井の生活者へも向けられる。同調圧力の強い社会で暮らすムスリム一家、車で移動しながら生活や仕事をする一家の姿から、理想や自由をめぐる葛藤と矛盾が浮かび上がってくる。

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(C)石川テレビ放送


五百旗頭幸男監督は、前作同様、今回も「議会」と市民生活をテーマにした作品を映画化。前回は富山県、今回は石川県。それにしても石川県の谷本知事は7期27年も知事を務めていたというのにびっくり。地方ではそんなに長い間知事を務めている人がいるのだということを知った。それにしても27年もと思って調べてみたら、歴代最長県知事在任日数トップはなんと谷本知事の前の石川県知事中西陽一氏の8期でした。1963年から1994年まで、なんと30年9ヵ月にわたって石川県知事を務めたようです。石川県というところは、そういうところだったのかと改めて思いました。まだ議会を見渡しても、議員や周りの人たちを見ると男の人ばかり。女性は議長の水を用意する人しか出てこなかった。ことほど左様に議会に女性はいない。これは石川県だけでなく、都内のリベラルと思われる市町村でも、女性はまだまだ少ない。「議会に女性を」という活動は市川房枝さんの時代もあったのに、なかなか増えないのは議員活動はかなり自分の生活を犠牲にしないとやれないということが大きいと思う。それでも、都道府県知事や市町村知事に女性がというのは増えてはきている。
でも、この石川県や富山県など、地方の議会の男性一色というのはなんだかなあと思いつつ、この中に入っていきたいくにはかなり勇気がいると思う。将来どのくらい女性が増えていくだろう(暁)。


本作について予備知識なく見始めたら、モスクが出てきて、おっ!と俄然興味を惹かれました。モスクの管理をしている松井誠志さんは、ボランティア活動のために行ったインドネシアで出会ったヒクマさんと結婚するためイスラームに改宗した方。就職の面接でムスリムであることを話すとどこも採用してくれなかったこと、石川県で初めてのモスクを建てることになったとき周囲から反対されたこと、公安調査庁から「内部スパイ」として情報提供を求められたことなど、日本社会における「偏見」を見せつけられました。並行して語られる石川県知事を7期務めた谷本正憲氏を取り巻く様は、権力にしがみつく男社会の極み。政治が多様性に対応できないことも感じざるをえませんでした。
一方、ヒクマさんは、金沢大学留学生支援地域アドバイザー、金沢市町会言語サポーターなどを務め、21年には「いしかわ女性のチャレンジ賞」を受賞するなど大活躍。それでも、「今の日本社会、国籍を変えても顔で判断されて外国人」と、帰化はしないと語ります。国籍など関係なく、自分の居場所で出来る限りのことをしているヒクマさん、素敵です。(咲)



公式HP
製作:石川テレビ放送 配給:東風
2022年|日本|118分|ドキュメンタリー|

参考記事 シネマジャーナル 特別記事
『はりぼて』五百旗頭幸男監督、砂沢智史監督インタビュー
posted by akemi at 04:00| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする