2022年09月25日

1950 鋼の第7中隊 原題:长津湖 英題:The Battle at Lake Changjin

劇場公開2022年9月30日TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
劇場情報
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朝鮮戦争における長津湖での中国軍とアメリカ軍の戦いを中国側から描く

製作費270億円をかけ、映画スタッフ1.2万人、エキストラ7万人、450社に及ぶVFXスタジオが参加するなど、壮大なスケールで描かれる戦争スペクタクル『1950 鋼の第7中隊』。朝鮮半島の主権をめぐって韓国と北朝鮮が争った「朝鮮戦争」だが、戦ったのは朝鮮人だけではなかった。
朝鮮民主主義人民共和国の側には中国が援軍し、韓国側はアメリカ軍中心の「国連軍」がついた。この映画は、その中で、アメリカ軍中心の「国連軍」と中国軍が直接戦った「長津湖の戦い」を描いた。1950年11月27日に勃発した、現在の朝鮮民主主義人民共和国の咸鏡南道長津郡長津湖周辺で行われた戦闘の一つ。仁川から朝鮮半島に上陸し、38度線を越えて中朝国境に迫っていた「アメリカ」に危機感を持った中国は人民志願軍を派遣した。中国軍と「アメリカ軍」が初めて激突した戦闘で、朝鮮戦争の中でも最も熾烈な戦いとして知られている。極寒の過酷な環境のもと、激しい戦いを続け、「アメリカ軍」を38度線まで退け、戦況を逆転へと導いたターニングポイントとなった戦いを描いた。

『黄色い大地』『さらば、わが愛/覇王別姫』のチェン・カイコー監督、『北京オペラブルース』『セブンソード』のツイ・ハーク監督、『ツインズ・エフェクト』『ブラッド・ウェポン』のダンテ・ラム監督、中国、香港を代表する3人の監督を起用し、『黒砲事件』のホアン・チェンシン監督がプロデュースした戦争大作。朝鮮戦争の歴史に詳しいチェン・カイコー監督が史実に基づく全体的なストーリー部分を手掛け、歴史観や豊富な知識をもとに、登場人物の表現描写において手腕を発揮。ツイ・ハーク監督は得意とする特撮技術や独自の美学を表現した。戦闘シーンはアクション分野が得意なダンテ・ラム監督が見事に再現。3人の得意分野を合わせることで、兵士の感情表現と、迫真のリアリズム溢れる作品になった。

スタッフ・キャスト
監督:陳凱歌(チェン・カイコー)、徐克(ツイ・ハーク)、林超賢(ダンテ・ラム)
製作:黄建新(ホアン・チェンシン)
出演
呉 京(ウー・ジン) 伍千里役 
易 烊千璽(イー・ヤンチェンシー) 伍万里
段 奕宏(ドアン・イーホン) 談子為
朱 亜文(チュー・ヤーウェン) 梅生
張 涵予(チャン・ハンユー) 宋時輪
胡軍(フー・ジュン)雷睢生
韓東君(エルビス・ハン)平河
黄軒(ホアン・シュアン)毛岸英

零下41度の極寒の山中 “鋼の第7中隊”として知られる兵士たちが繰り広げた長津湖の戦いを映画化

国民党との「国共内戦」が終結し、1949年に中華人民共和国ができたばかり。やっと戦いが終わり、地元に戻った人民志願軍・第9兵団 第7中隊長の伍千里(ウー・ジン)は、戦死した兄の百里の遺灰を持って帰る。軍の手当で彼は両親に家を建てることを約束した。しかし、落ち着くまもなく中国が朝鮮戦争に参戦し、軍に呼び戻される。弟の万里(イー・ヤンチェンシー)は一緒に行きたいと言うが、両親の面倒を見るようにと千里は伝えた。
千里が戻った第7中隊は、前線に無線機を届けるように指示を受け、朝鮮に向かう列車に乗ろうとしたところで万里の姿を見つけた。帰るように説得したが、弟の揺るがぬ意志を目の当たりにし入隊を許可した。列車は移動中に爆撃され、第7中隊は徒歩での移動を余儀なくされる。途中、米軍機と遭遇し兵士たちは遺体をよそおうが容赦なく銃撃されたり、いろいろな困難を乗り越え、無線機を前線の総司令部に届けた。しかし充分な休息を取る間もなく前線に出発。
しかし無線機の発信から、米軍の探知機が総司令部の場所を特定し、戦闘機で基地を爆撃に到来。防空壕に避難した中国軍だったが、司令室にある地図を取りに戻った兵士が爆撃を受ける。その人物は彭徳懐将軍の秘書として劉という偽名で従軍していた毛沢東の息子、毛岸英だった。
一方「長津湖」に向かった第7中隊は、十分な食料や防寒具もなく、過酷な氷点下での行軍を続け、やっと「長津湖」にたどり着き、11月27日の夕刻、長津湖を陣地とする米第31歩兵連隊掃討作戦が開始され、中国人民志願軍と米軍による「長津湖の戦い」の火蓋が切って落とされた。

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厳しい戦いの中で生死を共にする兵士たちには、中国で活躍する俳優陣が参加している。第7連隊の精神的支柱である連隊長の伍千里を演じるのは『戦狼 ウルフ・オブ・ウォー』(2017)のウー・ジン。弟、伍万里に扮するのは『少年の君』(2019)のイー・ヤンチェンシー。退役間近の砲兵小隊長の雷睢生にフー・ジュン。そのほか『迫り来る嵐』のドアン・イーホン、『マンハント』のチャン・ハンユー、『空海 -KU-KAI- 美しき王妃の謎』のホアン・シュアンなども出演している。

朝鮮戦争を描いた映画は、日本では主に韓国が作ったものを観る場合が多かったが、そこにはほとんど中国軍のことは出てこなかった気がする。北朝鮮作も観たことはあるが、そこにも中国軍のことはほとんど出てこなかったと思う。そういう意味では、朝鮮戦争に中国軍も参戦していたということを知る機会になるかもしれない。私自身は、中国側から朝鮮戦争を描いた映画は、これまで現中映(現代中国映画上映会)で上映された作品などで観たことがあるけど、日本で一般公開される作品が出てきたことは興味深い。
これまで観てきた、中国が描いた朝鮮戦争の映画に比べればプロパガンダ色は少し控えめな感じだが、やはり香港の監督二人が参加しているというのもあるかもしれない。でもこのご時勢で観れば中国の宣伝映画ではあるかな。
それにしても朝鮮人や韓国人は一人も出てこなくて、中国兵とアメリカ兵だけというのは、なんだか不自然な気がする。中国軍と北朝鮮の兵とが一緒に行動するとか、アメリカ軍の中に韓国兵はいなかったのだろうかと思った。それでも、朝鮮戦争そのものの記憶が薄れている現在、中国側からの朝鮮戦争を描いた作品を観れば、また違う見方もできると思う。
毛沢東の息子、毛岸英が朝鮮戦争で亡くなったということも出てきました。私はそのことは知ってはいたけど、毛沢東には3人の息子がいたというのをこの作品で知りました。長男は亡くなっていて、三男は病弱、次男の岸英が朝鮮戦争に行ったのですね。
この紹介文を書くのにネットでいろいろ検索していたら、やはり中国映画で朝鮮戦争を描いた『バトル・オブ・ザ・リバー 金剛川決戦』(原題:金剛川)という作品が今年(2022)1月に日本で上映されていたことを知った。「のむコレ'21」(2021年10月22日~/東京・シネマート新宿、大阪・シネマート心斎橋)上映作品となっていたけど、全然知らなかった。残念。朝鮮戦争末期の1953年、燕山部と呼ばれる師団が金城の前線に赴き、主力部隊を援護するよう命じられる。金城に向かう道はただひとつ、金剛川に掛かる橋を渡らなければならないが、米軍の爆撃機が橋を壊してしまう。というような内容で、これも中国でヒットしたらしいが、この作品も、この『長津湖』も韓国では、上映の妨害にあったという(暁)。


公式HP https://1950-movie.com/
2021年製作/175分/R15+/中国
原題:長津湖 The Battle at Lake Changjin
配給:ツイン
posted by akemi at 21:13| Comment(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

響け! 情熱のムリダンガム  原題:Sarvam Thaala Mayam  英題:Madras Beats

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(C)Mindscreen Cinemas

原作・監督:ラージーヴ・メーナン
音楽監督:A.R.ラフマーン
出演: G.V.プラカーシュ・クマール(主人公:ピーター・ジョンソン役)
アパルナー・バーラムラリ(ヒロイン・サラ役)
ネドゥムディ・ヴェーヌ(師匠 ヴェンブ・アイヤル役)
ヴィニート(主人公につらくあたる兄弟子・マニ役)

インド・タミルナードゥ州都チェンナイ。大学生のピーターは、映画スター・ヴィジャイの大ファン。映画初日には、試験も適当に答えを書いて映画館に駆け付け、ドラムを敲いてファンクラブを盛り立てる。そんなある日、南インド伝統音楽(カルナータカ音楽)で演奏される打楽器・ムリダンガム職人の父から、演奏会の会場にムリダンガムを届けるよう頼まれる。そこで、巨匠ヴェンブ・アイヤルの演奏を目の当たりにしたピーターは、自分もムリダンガム奏者になりたいという思いにかられる。だが、動物の皮を扱うムリダンガム職人の家の身分はダリット(不可触民)。アイヤル師の弟子にしてもらおうと直訴しにいくが、一番弟子のマニは身分を理由に追い払おうとする。アイヤル師は、ピーターの素質を見抜き弟子にする。修行に励むピーターに、マニがさらにつらく当たるのを見て、アイヤル師はマニを追い出してしまう。マニはテレビの音楽番組のMCを務める妹の伝手で審査員になる。その番組に出演したピーターはマニとひと悶着起こし、警察沙汰になり、とうとうアイヤル師に破門されてしまう・・・

カーストの壁は厚く、いまだに動物の皮を扱うムリダンガム職人で演奏者になった人はいないのだそうです。ピーターは、その壁を破れるのか・・・
ピーターを演じたG・V・プラカーシュ・クマールは、作曲家でありピアニスト。左右の手の動きが異なるのはムリダンガムも同じ。一年間かけて特訓したそうです。そして、彼は、なんと音楽の神様ともいえるA・R・ラフマーンの甥! A・R・ラフマーンは、本作で音楽監督を務めていますが、ラージーヴ・メーナン監督とは30年来の友人。本作に出て来るカルナータカ音楽は、伝統的な本物で、A・R・ラフマーンは、ピーターの感情を伝える部分などの音楽を担当しています。
映画スターの推し活をしていた大学生が、伝統音楽に目覚め、様々な障害に立ち向かう物語に心躍らされました。


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この映画に惚れて、日本で公開したいと配給会社テンドラルを立ち上げてしまったのが、南インド料理「なんどり」さんの奥さま稲垣紀子さん。(写真左。お隣は、いつも美味しい南インド料理をつくっている旦那さま。8月17日の試写の折に)

公式サイトに、この映画の推しポイントがたくさん掲げられています。

とにかく酔狂なインド料理店が日本上映権を買っちゃったインド映画が何なのかご興味のある方に!

なんといっても、これが一番の推しポイントでしょう!
ぜひ劇場に駆け付けてください♪ (咲)



◆2018年東京国際映画祭で『世界はリズムで満ちている』のタイトルで上映された折の公式レポート
「A・R・ラフマーンさんとは30年来のお付き合いで親友です」10/30(火):Q&A『世界はリズムで満ちている』
https://2018.tiff-jp.net/news/ja/?p=51044

大きな変革を遂げる主人公を描きたかった」10/28(日):Q&A『世界はリズムで満ちている』
https://2018.tiff-jp.net/news/ja/?p=50979

◆映画祭報告に掲載したこちらの記事もどうぞ!
『響け!情熱のムリダンガム』(2018年TIFF上映時タイトル『世界はリズムで満ちている』) 茨城・あまや座でトーク付き上映(4/16・4/17)
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/486377461.html


2018年/132分/インド/
配給:テンドラル(南インド料理店なんどり)
公式サイト:https://thendral.co.jp/mridangam-movie/
★2022年10月1日(土)、東京 シアター・イメージフォーラム他、全国順次公開
posted by sakiko at 19:51| Comment(0) | インド | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

プリンセス・ダイアナ  原題:The Princess

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監督:エド・パーキンズ(Netflix『本当の僕を教えて』)
製作:サイモン・チン、ジョナサン・チン(アカデミー賞®2度受賞『シュガーマン 奇跡に愛された男』『マン・オン・ワイヤー』)

ダイアナ元皇太子妃 非業の死から25年
駆け抜けた激動の人生をアーカイブ映像で振り返る

1961年7月1日、オールドソープ子爵(後に伯爵)の令嬢としてノーフォーク州サンドリンガムで生まれ、ダイアナ・フランセス・スペンサーと名付けられる。
1981年2月24日、チャールズ皇太子との婚約発表。7月29日、ロンドンのセントポール大聖堂にて挙式。
1982年6月21日、第一子ウィリアム王子出産。
1984年9月15日、第二子ヘンリー王子出産。のちにこの頃から夫婦間の気持ちの上での関係は終わっていたと語る。
1986年5月、チャールズ皇太子と共に初来日。
1992年12月、チャールズ、ダイアナ両者が別居に合意。
1994年6月 チャールズ、カミラ夫人との関係を認める。
1996年8月28日、離婚成立。親権は両者平等に持つ。
離婚後も王室の一員として、「Diana, Princess of Wales」と呼ばれる。
ケンジントン宮殿に住み続け、事務所もそこに置き、王室の公務はほとんど無くなるが、様々な慈善活動を行う。
1997年8月31日午前0時35~40分頃、パリで交通事故にあい重傷を負い、病院に運ばれるも死亡。同乗していた恋人ドディ・アルファイドと運転手は即死。
9月6日、ウェストミンスター寺院で葬儀。


映画は、1997年8月31日深夜、オテル・リッツ・パリの前に群がるパパラッチを映し出して始まります。
チャールズ皇太子との婚約が噂される頃から、常にマスコミに追い掛け回されたダイアナ。お伽話のお姫様のような結婚式に世界の誰もが魅了されました。そして、チャールズの不倫の恋を知ったのを機に破綻していく結婚生活。その後、献身的に慈善活動を行う中で新たな出会いのあったダイアナを、マスコミは執拗に追いかけ続けました。その結果が、パパラッチを交わす為にスピードを出し過ぎ激突事故。
恋人ドディがエジプト人の大富豪の息子で、彼と結婚させまいとした陰謀説も出ましたが、真相は不明。ダイアナは、1996年、パキスタン系イギリス人の心臓外科医ハスナット・カーンと出会い恋人関係にありましたが、本作では触れられず。本命はハスナットだったのではという説も。
イスラーム文化圏贔屓の私は、エジプト系やパキスタン系の男性に惹かれたダイアナに親近感を持っていたのですが、映画の中で、関係の冷え切ったチャールズ皇太子と共に公式訪問したインドで、ダイアナがタージ・マハルに癒されたという場面があって、なるほどと! あと、今回、初めて知って驚いたのは、恋人ドディに婚約者がいたという事実でした。
リアルタイムでダイアナの人生を知っていた私にとっては、ほとんどの出来事が「懐かしい」ものでしたが、若い世代の方たちにとっては、この映画は、ダイアナの激動の人生を知る良い機会になると思います。  当時はなかったSNSの功罪を考える機会にもなるのではないでしょうか。

それにしても、あの衝撃的なダイアナの事故死から25年!
ついこの間のように思い出します。
葬儀の日は、ずっとBBCをつけて見守りました。棺の後ろを歩くウィリアム王子とヘンリー王子の姿が痛々しかったのですが、先日のエリザベス女王の葬儀の時にも、二人が棺の後ろを歩く姿に、25年前の二人が重なりました。二人にとっても、つらい記憶を思い出したときだったのではと思います。 
歴史に「もし」はありませんが、ダイアナが別の男性と結婚していたなら、パパラッチに追いかけられることもなく、平穏で幸せな人生をおくったかもしれないと思ってしまいました。
パーキンズ監督は、あえてナレーションやテロップによる解説を加えることなく、膨大な素材の中から厳選して、ダイアナの人生を綴っているのですが、そこからは、メディアの功罪を強く感じさせられます。SNSで誰しもが情報を拡散できる時代となった今、それはメディアだけの問題でないことも考えさせられました。(咲)



2022年/イギリス/109分/英語/カラー/ビスタ/5.1ch
日本語字幕:佐藤恵子/字幕監修:多賀幹子
後援:ブリティッシュ・カウンシル 読売新聞社
配給:STAR CHANNEL MOVIES
公式サイト:https://diana-movie.com/
★2022年9月30日(金)TOHOシネマズシャンテ、Bunkamuraル・シネマほか全国ロードショー



posted by sakiko at 19:44| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ダウントン・アビー 新たなる時代へ(原題:Downton Abbey: A New Era)

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監督:サイモン・カーティス
脚本・原作・製作:ジュリアン・フェロウズ
撮影:アンドリュー・ダン
音楽:ジョン・ラン
プロダクションデザイン:ドナル・ウッズ
衣裳:アナ・メアリー・スコット・ロビンズ
出演:ヒュー・ボネヴィル(ロバート・クローリー)、ジム・カーター(チャールズ・カーソン)、ミシェル・ドッカリー(メアリー・タルボット)、エリザベス・マクガヴァン(コーラ・クローリー)、マギー・スミス(バイオレット・クローリー)、イメルダ・スタウントン(モード・バッグショー)、ペネロープ・ウィルトン(イザベル・グレイ)

1928年、英国北東部ダウントン。広大な領地を治めるグランサム伯爵ロバートらは喜びの日を迎えていた。亡き三女シビルの夫トムが、モード・バグショーの娘と結婚したのだ。華やかな宴とは裏腹に、屋敷は傷みが目立ち、長女メアリーが莫大な修繕費の工面に悩んでいたところへ、映画会社から新作を屋敷で撮影したいというオファーが。謝礼は高額だ。父の反対を押し切ってメアリーは撮影を許可し、使用人たちは胸をときめかせる。
一方、ロバートは母バイオレットが、モンミライユ侯爵から南仏にある別荘を贈られたという知らせに驚く。その寛大すぎる申し出に疑問を持ち、妻コーラ、次女イーディス夫妻、トム夫妻、引退したはずの老執事カーソンとリヴィエラへと向かう。果たして海辺の別荘に隠された秘密は、一族の存続を揺るがすことになるのか―!?

大ヒットしたイギリスのTVシリーズ「ダウントン・アビー」劇場版の第2弾。劇場版の前作は1927年に国王夫妻がダウントン・アビーを訪問するという一大イベントが中心です。監督は代わって『黄金のアデーレ 名画の帰還』のサイモン・カーティス。連続ドラマをぎゅっと濃縮した映画版は、屋敷内部の調度品や住人たちの華麗な衣裳などを大きな画面で観ることができます。時代を映したドレスやヘアスタイルにも多くのスタッフが関わっています。エンドロールに登場する人数の多さに驚きます。素晴らしい画面を一時停止してよくよく見たい気持ちになるのも、これだけの人たちの努力の結晶だからでしょう。
書ききれないほどたくさんのキャストはほぼ続投。新しく増えたのは映画撮影に関わる人々、監督役のヒュー・ダンシー、女優役のローラ・ハドックら、ナタリー・バイ、ジョナサン・ザッカイほか南仏の別荘の持ち主たち。
映画撮影がちょうどサイレントからトーキーに移る時代で、その撮影方法の違いが細かに見て取れます。台詞が入っていなくても良かったサイレント時代、台詞回しにも演技力が必要になったトーキー。悩む女優を励ますのが、ダウントンの使用人たちでした。南仏の別荘での顛末は、謹厳なバイオレットの青春時代を知らせてくれましたし、ダウントン・アビーの人たちそれぞれの秘めた気持ちも上手に出して、幸せな方向に持っていってくれる脚本に感謝。劇場を出るとき、ああ良かったと思いたいですもん。(白)


2022年/イギリス、フランス合作/カラー/シネスコ/125分
配給:東宝東和
(C)2021 FOCUS FEATURES LLC. ALL RIGHTS RESERVED.(C) 2022 FOCUS FEATURES LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
https://downton-abbey-movie.jp/
https://www.facebook.com/DowntonAbbeyMovie.JP/
https://twitter.com/DowntonAbbey_JP
こちらでドラマを10分でおさらい!
★2022年9月30日(金)ロードショー

posted by shiraishi at 18:11| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ドライビング・バニー(原題:The Justice of Bunny King)

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監督:ゲイソン・サヴァット
出演:エシー・デイヴィス(バニー・キング)、トーマシン・マッケンジー(トーニャ)

バニー・キングは40歳。車の行きかう道路わきに立ち、渋滞した車の洗車をして日銭を稼いでいる。わけあって最愛の娘は里親預かりとなり、面会も自由にできない。再婚した妹の家に居候しているが、娘の誕生日までには仕事を見つけて自分の家を借り、1日も早く娘と暮らしたい。良い仕事も部屋もなかなか手に入らず、焦る毎日だ。妹の再婚相手の男が、年頃になった姪のトーニャに手を出そうとしているのを目にしたバニーは止めに入る。男は言い訳したうえ、逆切れしてバニーは家を追い出されてしまった。家から出たいというトーニャを救い出し、次の策を考える。しかし、頼みの支援局もお決まりの台詞を並べるばかり。ついにバニーは背水の陣をしく…??!!

バニーは長い間辛酸をなめてきたにもかかわらず、逞しく生きてきました。バニーは過酷な状況にある女性たちを一人にまとめたものかもしれません。彼女は結構ちゃっかりしていて、思わず苦笑してしまうシーンも多いです。
最後のやり方は無茶な気もしますが、それまでにあまりに理不尽な扱いが続いて不満がたまりにたまったのでしょう。自分だったら何ができるかと考えると、行動を起こすより、我慢して胃が痛くなるのが落ちかな。無謀でも、バニーの母親としての愛情と、奮闘ぶりにエールを送りたくなります。支援局の職員がバニーと話すうちに、少しずつ変わっていくのが一筋の希望です。たとえ上意下達のお役所でも、現場にいる人の理解が進むと頼りにしてくる人には嬉しいはずです。
ゲイソン・サヴァット監督は初めてきくお名前です。プロフィールを見たらニュージーランド在住の中国人とありました。これが初長編ですが、次にどんな作品を送り出すのかとても楽しみです。(白)


バニーは、がさつで、身なりも気にせず、好き放題言ってる感じがして、どうにも好きになれないタイプと思ってしまったのですが、我が子と自由に面会もできない理由がだんだんわかってきて、こうなってしまったのも仕方ないなと!
収監されていたので、仕事や部屋探しにも苦労するのですが、支援局が面接用の服を無償で提供してくれるところを紹介してくれます。水色のスーツに身を包んだバニーは、デートに誘われるほど素敵です。
妹の再婚相手に追い出され、住む場所に困っている時に助けてくれたのは、路上で洗車をしている仲間の青年。大家族で、ベッドを明け渡さなければならない男の子はべそをかいてます。この一家、マオリのようで、食事の前の独特の儀式が興味深かったです。言葉も違いました。字幕がなかったです・・・(咲)


●トライベッカ映画祭審査員特別賞

2021年/ニュージーランド/カラー/100分
原題:The Justice of Bunny King
配給:アルバトロス・フィルム
(C)2020 Bunny Productions Ltd
https://bunny-king.com/
★2022年9月30日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほか全国公開
posted by shiraishi at 16:07| Comment(0) | ニュージーランド | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

マイ・ブロークン・マリコ

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監督:タナダユキ
原作:平庫ワカ
脚本:向井康介、タナダユキ
撮影:高木風太
音楽:加藤久貴
主題歌:The ピーズ
出演:永野芽郁(シイノトモヨ)、奈緒(イカガワマリコ)、窪田正孝(マキオ)、尾美としのり(マリコの父)、吉田羊(タムラキョウコ)

ブラック企業に勤め、鬱屈した日々を送る OL・シイノトモヨは、テレビのニュースでダチのイカガワマリコが亡くなったことを知る。マンションから飛び降りたと報じられている。なんであたしに何も言わずに、とマリコの死が信じられないシイノだが、小学生時代から父親に虐待を受け、彼氏から暴力をふるわれていたことは知っている。知っていながらマリコを助け出すことはできなかった。今、逝ってしまったマリコのために何かできることはないか、シイノは考える。「今度こそあたしが助ける」と、鞄に出刃包丁を隠し持ってマリコの実家を訪ねた。だって実家にはいたくないはずだから。

つい先日終了したTBSドラマ「ユニコーンに乗って」で起業した若きCEO役だった永野芽郁さん、ここではちょっとガラの悪いOL役です。ブラック企業でクサクサしていたら、タバコも吸いたくなるし、つっけんどんな態度にもなるでしょう。ところがたった一人の「ダチ」のマリコがマンションから飛び降りた!と知ってスイッチが入ります。少々アクションもありますが、『地獄の花園』の直子に比べたら、なんてことありません。マリコ役の奈緒さんは、これに限らずどこか遠くを見ているような役柄がよく似合います。不倫女子も薄幸の花魁もやれるし次は何?という楽しみがある女優さん。実際に永野芽郁さんと奈緒さんは仲が良いそうで、この結びつきにも反映されているのかも。
窪田正孝さん演じるマキオは痛みを知っているからこその優しさがあって、これも適役。虐待する父親が、子役時代から見ている尾美としのりさんとは。タムラキョウコ役の吉田羊さん、いい女過ぎてこんな男にはもったいない、けれども変えてくれそうな予感もします。原作はどこまで描かれているんだろう?なんだか気になります。(白)


2021年/日本/カラー/85分
配給:ハピネットファントム・スタジオ、KADOKAWA
(C)2022映画「マイ・ブロークン・マリコ」製作委員会
https://happinet-phantom.com/mariko/
★2022年9月30日(金)ロードショー

posted by shiraishi at 16:02| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

四畳半タイムマシンブルース

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監督:夏目真悟
原作:森見登美彦(角川文庫/KADOKAWA刊)
脚本/原案:上田誠
音楽:大島ミチル
主題歌:ASIAN KUNG-FU GENERATION
アニメーション制作:サイエンスSARU
出演:浅沼晋太郎(私)、坂本真綾(明石さん)、吉野裕行(小津)、中井和哉(樋口師匠)、諏訪部順一(城ヶ崎先輩)、甲斐田裕子(羽貫さん)、佐藤せつじ(相島先輩)。本田力(田村くん)

8月12日、いつものように暑い日。「私」は下鴨幽水荘で唯一のクーラーのリモコンを水没させてしまった。突如出現したタイムマシンで、壊れる前のリモコンを取りに昨日に戻ることを思いつく。しかし悪友たちは勝手に過去を改変し、私は宇宙消滅の危機を予感してあわてふためく。密かに思いを寄せている明石さんとの恋の行方も変わってしまうのか?

テレビアニメで人気を博した森見登美彦さん原作「四畳半神話大系」とヨーロッパ企画の「サマータイムマシンブルース」がコラボしました。『夜は短し歩けよ乙女』(2017/湯浅政明監督)のサイエンスSARU制作のアニメーション。
あれやこれやが繋がって、なんだか懐かしい登場人物たちが暑すぎる京都の夏を右往左往します。同じ大学生とは思えない曲者ぞろいの住人たち、1台しかないクーラーの恩恵を所有者が独り占め・・・はできません。それがここの当たり前。ものすごく不安な形態のタイムマシン、乗るかやめるかあなた次第。無駄に入り組んでいる1日のすったもんだをお楽しみいただけたら、幽水荘はいつでもあなたのお越しを歓迎するはずです。(白)


2022年/日本/カラー/92分
配給:KADOKAWA、アスミック・エース
(C)2022 森見登美彦・上田誠・KADOKAWA/「四畳半タイムマシンブルース」製作委員会
https://yojohan-timemachine.asmik-ace.co.jp/

★2022年9月30日(金)3週間限定全国ロードショー
ディズニープラス9月14日(水)より独占先行配信


posted by shiraishi at 15:27| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする