2022年09月14日

LAMB ラム(原題:Lamb)

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監督:バルディミール・ヨハンソン
脚本:ショーン、バルディミール・ヨハンソン
撮影:イーライ・アレンソン
音楽:ソーラリン・グドナソン
出演:ノオミ・ラパス(マリア)、ヒルミル・スナイル・グズナソン(イングヴァル)、ビョルン・フリーヌル・ハラルドソン(ペートゥル)

山間に住む羊飼いの夫婦イングヴァルとマリア。ある日、二人が羊の出産に立ち会うと、羊ではない何かが産まれてくる。
子供を亡くしていた二人は、"アダ"と名付けその存在を育てることにする。
奇跡がもたらした"アダ"との家族生活は大きな幸せをもたらすのだが、やがて彼らを破滅へと導いていく—。

凍てつくアイスランドの牧場。静かに暮らしている夫婦と羊たち。彼らを見守るような犬と猫。ある晩羊小屋へ何かが侵入してきて、やがて生まれたのは羊か何か?ファンタジーのようなスリラーのような、はたまたポスターの「子羊を抱くマリア」の聖母子の物語なのか?誰の視点で、何をポイントに観るかでまた印象が変わるでしょう。
羊は従順で、群れて生き、”子羊”は、か弱いものの代表です。マリアとイングヴァルは生まれた子を母羊からとり上げ、慈しみます。母羊は、たびたび窓の下に現れて、返してと鳴き続けます。これがなんとも切なくて、返しても育てられないでしょと言ってきかせたい思いにかられます。マリアは実力行使、羊相手だから?製作にも名をつらねているノオミ・ラパスの強い女のイメージが、年々濃くなります。
初の長編作品を送り出したバルディミール・ヨハンソン監督は子どものころの牧場の思い出を入れ込んだそうです。ワイド画面の風景は厳しくも美しいです。
第74回 カンヌ国際映画祭「ある視点部門」でPrize of Originalityを受賞。(白)



2021年/アイスランド・スウェーデン・ポーランド合作/カラー/シネスコ/106分
配給:クロックワークス
(C)2021 GO TO SHEEP, BLACK SPARK FILM &TV, MADANTS, FILM I VAST, CHIMNEY, RABBIT HOLE ALICJA GRAWON-JAKSIK, HELGI JOHANNSSON
https://klockworx-v.com/lamb/
★2022年9月23日(金・祝)ロードショー
posted by shiraishi at 01:43| Comment(0) | 北欧 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

犬も食わねどチャーリーは笑う

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監督・脚本:市井昌秀
撮影:伊集守忠
音楽:安部勇磨
主題歌:never young beach 「こころのままに」(BAYON PRODUCTION)
出演:香取慎吾(田村裕次郎)、 岸井ゆきの(田村日和)
井之脇 海(若槻広人) 中田青渚 小篠恵奈 松岡依都美 田村健太郎 森下能幸/的場浩司(店長) 眞島秀和(葛城周作)
徳永えり 峯村リエ 菊地亜美 有田あん 瑛蓮
/きたろう 浅田美代子(田村千鶴)/余貴美子(蓑山さん)

裕次郎と日和(ひより)夫婦は結婚4年。裕次郎の働くホームセンターに日和が買い物に来て出逢った。この頃は鈍感な夫に日和はイライラしっぱなし。積もった鬱憤はSNSの「旦那デスノート」に吐き出している。そこには怒れる妻たちの本音がこれでもかとばかりに書き込まれている。ホームセンターのお昼休み、同僚の蓑山さんが裕次郎と結婚間近の若槻に「見て見て」と声をかける。一番人気だというチャーリーの投稿は、なぜか裕次郎の身に覚えのあることばかり。「これって俺のこと?」…

香取慎吾さん『凪待ち』(2019)以来、久々の主演映画です。大きな香取さんと小柄なゆきのさん、いかにも頼りがいのありそうな旦那さまです。やたらうんちくを傾けるのは、結婚前なら感心できていいかも。しかし慣れ親しむと「またか」とうざいはず。おまけに最後に「いい意味で」とつくのが困ります。幸い私の周りにはいません。もしいたら「何それ、具体的にどういう意味?」と突っ込みそうです。日和はいちいち突っ込むのも疲れてしまってSNSに吐き出したのでしょう。夫が目にするなんて想像もせず。
劇中「旦那デスノート」に登場する強烈なディスリ投稿に女性なら「あるある」「そうそう」と溜飲が下がるでしょう。男性諸氏は「毎日働いている俺を!」とさぞご立腹でしょう。相手が気の毒になるご夫婦は、お幸せということで。
裕次郎と日和の本音のバトルに、脇の濃い面々がさらに拍車をかけます。日和のPNの「チャーリー」は、2人のペットのフクロウの名前です。「森の賢者」とか番人とか呼ばれていますが、このチャーリーもじっと夫婦の有様を観て、笑っているのかもしれません。(白)


2022年/日本/カラー/シネスコ/117分
配給:キノフィルムズ/木下グループ
(C)2022“犬も食わねどチャーリーは笑う”FILM PARTNERS
https://inu-charlie.jp/
★2022年9月23日(金・祝)、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショーロードショー

”犬チャリ愚痴供養キャンペーン”実施中
9月18日(日)23:59まで 詳細はこちら

https://inu-charlie.jp/campaign/
posted by shiraishi at 01:34| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

秘密の森の、その向こう(原題:Petite maman)

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監督・脚本・衣装:セリーヌ・シアマ
撮影:クレア・マトン
音楽:ジャン=バプティスト・ドゥ・ロビエ
出演:ジョセフィーヌ・サンス(ネリー)、ガブリエル・サンス(マリオン)、ニナ・ミュリス(ネリーの母)、マルゴ・アバスカル(ネリーの祖母)、ステファン・ヴァルペンヌ(ネリーの父)

大好きなお婆ちゃんが亡くなった。ネリーは両親と一緒にお婆ちゃんとママが住んでいた家にやってくる。ママが子どものころのノートもみんな残っている。ママはとても悲しそうだ。朝起きるとパパが朝食を作っていて「ママが出て行ったよ」と言う。ネリーが裏の森に出かけてみると、女の子が木の枝を運んでいた。小屋づくりを手伝ったネリーは、その子がマリアンヌという名前だと知る。ママと同じ名前。突然の雷雨に見舞われた二人はマリアンヌの家へと走る。そこはネリーのおばあちゃんの家だった。

原題が「Petite maman」とすでにネタバレしています。森で出逢ったマリアンヌは子どもの頃の母親でした。ネリーとそっくりでも不思議はありません。ネリーとマリアンヌを、双子のサンス姉妹が、時空を超えて出逢った母と娘を演じています。いつも青系の衣服がネリー、赤系がマリアンヌ。豊かで静かな森の中で遊びまわる2人の幸せそうなこと。
8歳というと小学3年生ですが、ネリーはとても大人びていて落ち着いています。泣いたり、矢継ぎ早に質問したりすることはありません。こんなに不思議なことがあったら、私なら絶対に飛んで帰って父親に話すはず。ママくらいの年のおばあちゃん、自分と同じ8歳のママ、そこに何十年後の自分が入ってもいいのかな。いやいや、この映画では理屈は不要。3世代の女性のただただやさしいまなざしが交差し、ネリーの知らなかった世界を垣間見せてくれます。若い祖母や幼い母親に会えるなんていいなぁ。細くとも確かに続いてきて、これからも続く人生を感じました。(白)


2021年/フランス/カラー/73分
配給:ギャガ GAGA★
(C) 2021 Lilies Films / France 3 Cinema
https://gaga.ne.jp/petitemaman/
★2022年9月23日(金・祝)ロードショー

posted by shiraishi at 01:30| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする