9月3日(土)より、ポレポレ東中野ほか全国順次ロードショー 劇場情報
監督:佐藤広一(『世界一と言われた映画館』『丸八やたら漬 Komian』)
プロデューサー:髙橋卓也(『よみがえりのレシピ』『無音の叫び声』)
撮影:佐藤広一 須貝孝
録音・整音:半田和巳 比留川純夫
音楽:小関佳宏
ナレーション:今井美樹
唄:朝倉さや
出演者
片桐 いさ(山形市出羽地区七浦で紅花栽培60年。素手による手摘みを続けている)
長瀬 正美・長瀬 ひろこ(米・野菜・紅花等を息子夫婦と家族4人で営む。23年前から地元小学校で食育学習の手伝いをしている)
新田 克比古・新田 翠(80年より天然染料研究の第一人者吉岡常雄氏に師事。83年「新田」にて紅花染と草木染に着手)
青木 正明(天然色工房 tezomeya 店主。古代染色研究家である前田雨城氏の作品に感銘を受け、古代染色研究のため独立)
大山 るり子(紅花染め・紅花料理インストラクター)
中西 喜久(梅古庵 烏梅職人9代目 国選定保存技術『烏梅製造』保持者)
中西 謙介(梅古庵 烏梅職人10代目)
室町時代に中近東からシルクロードを経て日本に伝わってきた紅花。悠久の旅の末、山形の地にたどりつき、今もその花を育てる人たちがいます。皇室や公家などに珍重され、庶民には手の届かなかった時代もあった。第二次世界大戦中は国によって栽培を禁止され、戦後は安価な化学染料の台頭で、継承の危機に瀕していた。しかし、山形の農村の片隅で密かに守り継がれていたことによって、今では世界的な農業遺産として注目され始めている。手間暇惜しまず栽培され、育てられた紅花からは、極くわずかな紅色しかとれない。それなのに、紅花はなぜ愛され続けているのか。
はるか昔、長い旅をして辿り着いた紅花の物語。人々がなぜ紅色に魅了され、あの美しい紅色の虜になるのか。紅花を守り、その歴史を紡ぎ続ける方々の紅色にかける姿がそれを教えてくれる。伝統に引き継がれた美しい紅に秘められた物語。
利便性から遠く離れた紅花文化を、栽培から染めに至るまで、慈しみながら守り継ぐ人々の姿を4年の歳月をかけて記録した紅花を巡る長編ドキュメンタリー。
ナレーションは『おもひでぽろぽろ』でタエ子役の声を担当した歌手・女優の今井美樹。監督は『世界一と言われた映画館』『丸八やたら漬 Komian』など、山形を舞台にした作品を発表している佐藤広一。プロデューサーは髙橋卓也。1989年の立ち上げから関わった山形国際ドキュメンタリー映画祭では2007年から事務局長。18年から理事兼プロジェクト・マネージャーを務める。これまでに『よみがえりのレシピ』『無音の叫び声』『世界一と言われた映画館』『丸八 やたら漬 』などをプロデュース。
『おもひでぽろぽろ』
https://www.ghibli.jp/works/omoide/
紅花から作られる紅色の鮮やかさ。製作過程の様々な調整で、紅色と言っても、いろいろな色ができる。でもやはり、一番濃い紅色がなんといっても好き。そんな紅色を作るための紅花栽培。紅花にはトゲがあるというのを知った。映画冒頭で、素手で紅花を採取する片桐 いささんが出てくる。紅花栽培60年のベテラン。トゲがあるのに素手で花びらを採取する技術は長年の経験からでしょう。それにしても紅花というのに、ほとんどが黄色の成分で、紅色の成分は1%というのに驚いた。昔の人は、よく、そのたった1%の紅色をみつけたと思う。そして、紅花の栽培から、紅花団子(せんべい?)をつくり、それを元に鳥梅(うばい)を使って紅色を発色させるという技術も映し出される。鳥梅は、もう1軒の梅農家しか作っていないという。そこを、紅花農家、染に携わる人たちが訪ねる。さらに紅花は料理にも使われている。この料理食べてみたい。どこに行ったら食べられるのだろう。山形で食べたいけど、ドキュメンタリー映画祭の時期には食べられるのだろうか。それに冒頭に出てきた紅花の書かれた緞帳。すごい迫力だった。映画祭の時に使われる会場かと思ったら、山形駅の反対側にある県民ホールのようだった。見てみたいけど、機会はないかな。あるいは来年はそこで映画祭のオープニングとかやらないかな。霞町公園にある美術館にも屏風絵があると出ていたけど、ここは映画祭会場でいつも行っていた所。来年の映画祭の時にぜひ、その屏風絵を見てみたい。あるいは、知らずに今までも見ていたのかもしれない。この作品では、紅花から染まで、いろいろな過程に関わる人たちがたくさん登場し、この伝統の紅色が守られてきた様子が描かれる。
佐藤広一監督の『丸八 やたら漬 Komian』もとても興味深い作品で、両作品は去年(2021)の山形国際ドキュメンタリー映画祭でオンライン上映があった。『丸八 やたら漬 Komian』も公開してほしい作品。シネマジャーナル105号にて、スタッフ二人が『丸八 やたら漬 Komian』を紹介しています(暁)。
企画・製作 映画「紅花の守人」製作委員会
配給:株式会社UTNエンタテインメント
2022年/日本/85分/カラー/DCP/16:9
公式HP: https://beni-moribito.com/ Twitter:@beni_moribito
『紅花の守人 いのちを染める』佐藤広一監督インタビューはこちら
2022年08月28日
オルガの翼 原題:OLGA
監督:エリ・グラップ
出演:アナスタシア・ブジャシキナ/サブリナ・ルフツォワ
2013年、ユーロマイダン革命直前のキーウ。15歳のオルガは体操欧州選手権での入賞を目指して、友人のサーシャと共にトレーニングに励む体操選手。ある日、トレーニング後、母の運転する車で家に向かう途中、突然激しく追突される。ジャーナリストの母イローナはヤヌコーヴィチ政権の汚職を追及していて、何者かに狙われたらしい。身の危険を案じた母の勧めで、オルガは亡き父の故郷スイスで、現地のナショナル・チームで欧州選手権を目指すことにする。フランス語とドイツ語が基本のチーム内で、オルガはうまくコミュニケーションが取れない。
ウクライナではユーロマイダン革命が激しさを増していき、オルガはタブレットやスマホで、抗議する群衆に警察の特殊部隊が武力行使に出ている映像を目にする。オンラインで話す友人サーシャの背後から「マイダンに栄光あれ」「ウクライナに自由を!」と叫ぶ群衆の声が聞こえてくる。革命に一緒に加わりたかったとオルガ。
欧州選手権が近づき、オルガはウクライナかスイス、いずれかの市民権を選ぶ決断を迫られる。結局、スイスのナショナルチームとして選手権に参加する。オルガはウクライナチームのサーシャと再会する。一方、ロシア選手団に移籍したかつてのコーチであるワシーリーとは、気まずい再会だった。
オルガは、好成績でメダルを獲得し、さらにオリンピックを目指すが、故郷の状況はさらに悪化。オンラインで話した母の顔は傷だらけ。母の元に帰るというが駄目だといわれる。はたしてオルガの下した決断は・・・
本作で描かれている背景は、2013年11月に首都キーウにある独立広場(ユーロマイダン)に市民が集まり出したことをきっかけに、2014年2月に親ロシア派のヤヌコーヴィチ大統領を追放した【ユーロマイダン革命】。
ウクライナのバイオリン奏者からユーロマイダン革命の話を聞いたグラップ監督が、深く心を動かされ、製作に着手。2016年の脚本執筆から5年をかけて完成させました。本作では、実際にデモ参加者がスマホで撮影した映像が使われています。
ウクライナの親EU運動は政権交代を実現させますが、そのことが2014年のロシアによるクリミア併合、そして、2022年3月のウクライナ本格侵攻へと繋がったことに、今さらながら気づかされます。
私にとって、広場を埋め尽くした【ユーロマイダン革命】が印象に残ったのは、ウクライナで広場をマイダンと呼ぶのだと知ったからでした。
ペルシア語で広場は「メイダーン」なのですが、もともとはアラビア語のマイダーンから来ていて、ウクライナや南ロシアでも、アラビア語起源でマイダーンというそうなのです。
アラブの春で、エジプトのタハリール広場(Maydan at Tahrir)を埋め尽くした民衆のことも思い出しました。
オルガが故国のために自分も広場に駆けつけたかったという思いが胸にしみました。ウクライナに早く平和が訪れますように・・・ (咲)
◆ユーロスペースにて 公開記念 豪華トークイベント開催
9月3日(土) エリ・グラップ監督(スイスよりオンラインで参加)
9月4日(日) 矢田部吉彦さん(前東京国際映画祭ディレクター)
9月10日(土)沼野恭子さん(東京外国語大学教授・ロシア文学)
9月11日(日)梶山祐治さん(本作字幕監修、ロシア・中央アジア映画研究者)
9月18日(日)廣瀬陽子さん(慶應義塾大学 総合政策学部 教授)
2021年/フランス=スイス=ウクライナ/ウクライナ語・ロシア語・仏語・独語・伊語・英語/カラー/90分
配給:パンドラ
公式サイトhttp://www.pan-dora.co.jp/olganotsubasa/
★2022年9月3日(土)渋谷ユーロスペースほか全国順次公開
ギャング・カルテット 世紀の怪盗アンサンブル(原題:Se upp for Jonssonligan)
監督:トーマス・アルフレッドソン
脚本:トーマス・アルフレッドソン、ヘンリック・ドーシン
出演:ヘンリック・ドーシン(シッカン)、ヘダ・スターンステット(ドリス)、ダーヴィド・スンディン(ハリィ)、アンダース・ヨハンソン(ラグナル・ヴァンヘデン)
シッカンはスウェーデンでは超有名な金庫破り。ハリィとドリス、ラグナル、3人の仲間たちと計画を練り、奇想天外なやり方でお宝を手に入れる。今日も今日とて倉庫に保管されている大量のコインを盗み出していた。華麗に去る予定がシッカン一人が現場に残されてしまった。刑期を終えて出所する彼を仲間が迎えに来た。刑務所の図書館に入り浸り、次のターゲットを定めていたシッカンはさっそく仲間たちに計画を打ち明ける。しかし、3人はそれぞれ足を洗うと宣言、みんなで住んでいた住処を出て行った。シッカンはまたもや一人残ってしまった。
一方、ストックホルムの北方民族博物館でフィンランド王の王冠が見つかった。スウェーデンのグローヴバル企業のこの王冠を手に入れ、フィンランド貴族の末裔を引き込み、王政を復活させようと誘う。そのためには、王冠に埋め込む伝説の石「カレリアのハート」を見つけ出す必要があった。その石こそがシッカンのターゲットだったのだが、彼はまだ知らなかった・・・。
イェンソン一味の映画がスウェーデンに登場したのは40年前。シリーズ作品となり、多くの人がこれを見て育ったのだそうです。日本でいえば「ルパン3世」のごとく愛され、いつまでも人気のある作品のようです。トーマス・アルフレッドソン監督は『ぼくのエリ 200歳の少女』(2010)『裏切りのサーカス』(2012)を手がけました。本作は全く違ったコメディ作品で、リメイクになりますが、オリジナルの良いところを受け継ぎ、新しいティストも加えました。
犯罪集団ながら誰も傷つけず、欲深な人間を揶揄、素直に共感できます。俳優さんはどの人も馴染みはありませんが、リーダーのシッカン、ハリィとラグナルは凸凹コンビ、3人の男性の誰よりしっかりして見えるのがハリィの奥さんのドリス。ドラえもんの仲間のしずかちゃんと思ってください。峰不二子のように最後に横取りしたりはしません。大人も子どもも一緒に楽しめる作品です。(白)
2019年/スウェーデン/カラー/ビスタ/122分
配給:キノフィルムズ
(C)FLX FEATURE AB. ALL RIGHTS RESERVED
https://movie.kinocinema.jp/works/thejonssongang
★2022年9月2日(金)kino cinéma立川髙島屋S.C.館ほか全国順次公開
さかなのこ
監督:沖田修一
原作:「さかなクンの一魚一会 まいにち夢中な人生!」さかなクン著/講談社
脚本:前田司郎、沖田修一
撮影:佐々木靖之
音楽:パスカルズ
主題歌:「夢のはなし」CHAI
出演:のん(ミー坊)、柳楽優弥(ヒヨ)、夏帆(モモコ)、磯村勇斗(総長)、岡山天音(籾山)、三宅弘城(ジロウ)、井川遥(ミチコ)、さかなクン(ギョギョおじさん)、西村 瑞季(ミー坊・幼少期)
お魚が大好きな小学生・ミー坊は、寝ても覚めてもお魚のことばかり。他の子供と少し違うことを心配する父親とは対照的に、信じて応援し続ける母親に背中を押されながらミー坊はのびのびと大きくなった。高校生になり相変わらずお魚に夢中のミー坊は、まるで何かの主人公のようにいつの間にかみんなの中心にいたが、卒業後は、お魚の仕事をしたくてもなかなかうまくいかず悩んでいた…。そんな時もお魚への「好き」を貫き続けるミー坊は、たくさんの出会いと優しさに導かれ、ミー坊だけの道へ飛び込んでゆくーー。
好きなことをずっと追い続けたミー坊は紆余曲折ありながら、大人になっても好きなことを仕事にして元気で楽しく生きています。めでたしめでたし。
その裏には家族の応援があり、中でもお母さんが一番の理解者で居続けてくれたことが大きいです。花開いてお母さんも安心したでしょう。のんさんがさかなクンになると知って、?でしたが、好きなことに純粋な気持ちで向かっているところが似ていて、性別など無関係に観ていられました。沖田監督と脚本・前田司郎さんは『横道世之介』(2013)以来のタッグ。
さかなクンを知ったのは1993年のこと。テレビ東京系のバラエティ番組「TVチャンピオン」の「第3回全国魚通選手権」に詰襟の学生服姿で大人の魚通にまじって出演していました。知識は抜群でしたが問題によっては経験不足からか大人に勝てず準優勝でした。その後再挑戦して5連勝。そのころから今と変わらないキャラクターでした。さかなクンはずっとさかなクン。いつも元気でいてください。サックスを演奏する姿も素敵。(白)
2022年/日本/カラー/シネスコ/139分
配給:東京テアトル
(C)2022「さかなのこ」製作委員会
https://sakananoko.jp/
★2022年9月1日(木)ロードショー