2022年08月21日

異動辞令は音楽隊!

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監督・原案・脚本:内田英治
撮影:伊藤麻樹
音楽:小林洋平
主題歌:「Choral A」Official髭男dism
出演:阿部寛(成瀬司)、清野菜名(来島春子)、磯村勇斗(坂本翔太)、高杉真宙(北村裕司)、板橋駿谷、モトーラ世里奈、見上愛、岡部たかし、渋川清彦、酒向芳、六平直政、光石研、倍賞美津子

犯罪捜査一筋の刑事、成瀬司55歳。昔ながらの捜査方法を変えず上層部に苦い顔をされ、同僚や部下には陰で鬼軍曹と呼ばれている。世間ではアポ電強盗事件が多発している。警察官を名乗って現金のありかを聞いた後、宅配業者になりすまして鍵を開けさせて襲う手口だ。主犯に心当たりのある成瀬は、捜査会議を蹴って部下の坂本を連れ、令状もなしに家に入ってチンピラを締め上げる。
成瀬は突然音楽隊への異動を命じられた。ハラスメント対策室に成瀬の所業についての投書があり、上層部は扱いにくい成瀬を体よく追い出した形だ。刑事畑しか歩まず、音楽のおの字も関わりのなかった成瀬は不満たらたらで異動する。音楽隊は個性的なはぐれ者の集まりで、成瀬はドラムを担当することになった。刑事気質が抜けない成瀬は、浮くばかり。ある日捜査本部に駆け込むが、きっぱりと拒否される。我に返って音楽隊の練習に打ち込み、少しずつ仲間として認められるようになった。しかし、音楽隊の存続は危ぶまれ、新たな事件も起こった。

内田監督は警察音楽隊のフラッシュモブ映像を見て、いたく感激。このストーリーの種になったようです。刑事と音楽という二つを盛り込んだ脚本が完成するまで2年。
音楽隊メンバーが決まると、監督は「演奏の吹替はなし」とまず宣言したそうな。そこから苦難の、いや努力の日々が始まります。主演の阿部さんはドラムを初めて触りました。ゴム製の練習パッドをスティックで叩くところから始めて、ドラムセットへ。いくつになっても新しいことができるのだという見本のようです。
トランペットの清野さん、サックスの高杉さん、チューバの板橋さんの仕上がり具合は、映像でソロパートがアップになっていることからもよくわかるでしょう。カメラは伊藤麻樹さん、ダイナミックな動きに目を見張ります。さまざまにアレンジされたメインの「IN THE MOOD」をはじめ、数々の楽曲や劇伴が映画を盛り上げます。スーツを着こなすカッコいい阿部寛さんでなく、ダサさ満開で怒りっぽい成瀬がどう変わっていくのか?社会の事件と、これぞというキャストたちが生きるストーリー、音楽とのアンサンブルをお楽しみください。私は優しい笑顔の指揮者役・酒向芳さんが新鮮でした。(白)


さすが、阿部寛さん! 室内で大勢集まっての捜査会議など無駄と捜査に飛び出す熱血ぶりから、警察音楽隊に異動させられて、最初は不服だったのが、ドラムが叩けるようになると、コンサートのチケットにリズミカルにスタンプを押すという軽妙な姿まで、大きな振り幅を見せてくれました。
倍賞美津子さん演じる、成瀬のお母さんは、夫が亡くなったことも、息子が2年前に離婚したことも忘れています。小花模様の可愛い服を着ていたりして、天真爛漫ぶりが素敵です。認知症の親にどう向き合うかも考えさせてくれます。
また、警察音楽隊の隊員で交通課勤務の清野菜々さん演じる来島春子は、仕事も音楽も育児も両立させたいけれど、なかなかうまくいかないという、今の日本社会で多くの女性たちが抱える問題をあぶりだしています。
そして本作で大きな軸となっている、アポ電強盗にまんまと引っかかってしまうお年寄りが絶えない問題。アポ電強盗防止の一助になるといいなと思いました。(咲)



2022年/日本/カラー/シネスコ/119分
配給:ギャガ
(C)2022「異動辞令は音楽隊!」製作委員会
https://gaga.ne.jp/ongakutai/
★2022年8月26日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 23:19| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

スワンソング(原題:Swan Song)

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監督:脚本:トッド・スティーブンス
撮影:ジャクソン・ワーナー・ルイス
音楽:クリス・スティーブンス
ヘアメイク:リディア・カネ
出演:ウド・キアー(パトリック・ピッツェンバーガー)、ジェニファー・クーリッジ(ディー・ディー)、リンダ・エヴァンス(リタ)

パトリック・ピッツェンバーガーは、かつてヘアメイクドレッサーとして活躍していた。自分の美容院を持ち、「ミスター・パット」と呼ばれ、街の有名人だった。ゲイとして生きてきた彼は、最愛のパートナーであるデビッドを早くにエイズで亡くし、今は老人ホームでひっそりと暮らしている。日課といえば紙ナプキンを折ることだけ。
そんなパットのもとに、思いがけない訪問客があった。顧客で親友でもあったリタが亡くなり、弁護士から「パットに最後のメイクを施してほしい」という遺言を伝えられる。仲たがいをしたままだったパットは断ってしまうが、一人になると過去の思い出があふれてくる。パットはホームを抜け出し、長らく遠ざかっていた街をめざして歩き出す。

ミスター・パットはトッド・スティーブンス監督が17歳のころサンダスキーのゲイクラブで出逢った実在の人物。2012年に亡くなっています。演じたウド・キアーとはほぼ同年代。エンドロールにご本人の写真が出てきます。ウィスキーのグラスで顔が少し隠れていますが美形です。
老人ホームを出たパットはヒッチハイクをし、デビッドの墓を訪ね、化粧品店を探し回ります。灰色のスウェットの上下で出てきたパットは、どこかに立ち寄るたびに、アイテムが増えていきます。10本の指に思い出の指輪。ピンクの帽子、アイスグリーン色のスーツ、スカーフにソフト帽。お金がなくて店のものを失敬するかと思えば、「釣りはとっといて」と鷹揚なところもあり。たった一度来店したお客をちゃんと思い出せるのに、しょっちゅう弱気になっては、お酒の力で元気を出すミスター・パット、チャーミングで憎めません。
パットを励ますように流れる楽曲がよくて、この「OST」(Original Sound Trackの略)があったらまとめて聞きたい。
”スワンソング”とは、アーティストの生前最後の作品・曲・演奏のことを指すそうです。なぜなら白鳥は死の間際、最も美しい声で歌うという伝説があるから。パットの最後の歌は届きましたか?(白)


2021年/アメリカ/カラー/ビスタ/105分
配給:カルチュア ・ パブリッシャーズ
(C)2021 Swan Song Film LLC
https://www.reallylikefilms.com/applause
★2022年8月26日(金)シネスイッチ銀座、シネマート新宿、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開

posted by shiraishi at 23:08| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

でくの空

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©2022 チョコレートボックス合同会社

脚本・監督・編集:島春迦
出演:林家たい平、結城美栄子、熊谷真実、林家ペー、池田愛、遠山陽一、桐原三枝、原きよ、林家さく平、泉水美和子、村田綾、加藤亮佑

埼玉・寄居町で電気工事店を営む周介(林家たい平)。長年コンビを組んでいた従業員が工事中に事故死したのは自分のせいだと悔やみ、なかなか立ち上がれない。店をたたみ、父・啓吉(林家ぺー)の元に身を寄せる。罪滅ぼしのつもりで、亡くなった従業員の母・冴月(結城美栄子)のところに足繁く通うが、冴月は心を開いてくれない。周介は、姉の活美(熊谷真実)が営むよろず代行屋「木偶の棒」で働き始めるが、得意の電気工事だけは引き受けない・・・

自責の念にかられ落ち込む周介。一方、息子を亡くした冴月は、49日の法要に周介を入れようとしません。よろず代行で、夫を亡くして1年になる女性と会う周介。「目の前にいなくても、夫を感じる」と聞かされます。身近な人を亡くしてしまった者の、それぞれの思いが、ずっしり突き刺さりました。
「笑点」の大喜利メンバーとして、いつも笑わせてくれるたい平さんが、笑顔を封印。後半で得意の歌を披露していますが、神妙な顔のままラストを迎えます。
撮影は昨春、秩父市観光大使を務めるたい平さんゆかりの寄居町と秩父市で行われ、満開間近の桜も綺麗です。
本作は、7月29日に開業した「ユナイテッド・シネマ ウニクス秩父」のオープニング作品として先行上映。秩父では「秩父革新舘」が1993年に閉館して以来、29年ぶりの映画館復活とのことです。(咲)


笑顔も見せず作業着姿の生真面目な周介、寄席の着物姿のたい平さんと同一人物とは思えませんでした。美大卒で絵がお上手なのは知っていましたが、もう一つ才能が花開いたかも?
結城美栄子さんはお若いころはよくテレビドラマで、明るく元気な役柄を拝見していました。結城さんは陶芸家としてご活躍なので、劇中の陶芸作品はご自身のでしょう。俳優さんとしては久しぶりです。
一人息子を急に失ったら、怒りの矛先が近くに向かうのも無理ありません。理不尽と知りながら頑なな冴月が痛ましいです。(白)


2022 年/日本/カラー/16:9/5.1ch/90 分
英字幕 : 川島めぐみ / スティーブ・キャシディ
配給:アルミード
協賛:寄居町観光協会 林家たい平後援会 社会福祉法人フラワーヴィラ 料亭・園
福島ハウジング株式会社 サンコー食品株式会社 清水園 フグレン東京
車両協力:本田技研工業株式会社・埼玉製作所
後援: 寄居町 寄居町商工会 寄居町観光協会 ヨリイフィルムコミッション
製作:チョコレートボックス合同会社
公式サイト:https://dekunosora.jimdofree.com/
★2022年8月26日よりアップリンク吉祥寺ほか全国にて公開
☆7 月 29 日(金)よりユナイテッド・シネマ ウニクス秩父にて先行公開



posted by sakiko at 19:06| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

グリーンバレット

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監督・脚本・編集:阪元裕吾
撮影:今宮健太 関将史
アクション監督:坂口茉琴
主題歌:「エンドロール」東京初期衝動(チェリーヴァージン・レコード)
出演:和泉芳怜(山田ふみか)、山岡雅弥(今井美香)、天野きき(神里はるか)、辻󠄀優衣(東雲唯)、大島璃乃(鹿目梨紗)、内藤花恋(沖田響)、伊能昌幸(国岡昌幸)、板尾創路(浜辺悠仁)

山田ふみか、今井美香、神里はるか、東雲唯、鹿目梨紗、沖田響の6人は、プロの殺し屋を目指している。京都最強の殺し屋・国岡がインストラクターを務める訓練合宿に参加することになった。合宿所には怪しげなオーナーや頼りない助手、映像を残したい国岡ファンが待ち構えていた。それぞれに個性的すぎる6人は初っ端からもめてしまい、たいてのことには動じない国岡のコントロールもきかない。
悪いことにアクシデントが配信され、凶暴な殺し屋集団”フォックスハンター”が合宿所を襲ってくる。訓練途中の研修生と国岡は無事生き残れるのか。

『最強殺し屋伝説国岡 完全版』の続編?スピンオフ?最強の殺し屋国岡が殺し屋希望の6人の女子を育てるインストラクター。先に流れる面接風景を見ていると、そのうちの一人でさえ持て余しそうな気がします。それなのに6人とは! 全員がミスマガジンの受賞者で、可愛い笑顔の女子ばかり。ロケもさぞ賑やかだったことでしょう。
「ゆるいけど強い」が持ち味の阪元監督監督作品、それぞれ訳ありの女子たちが、訓練の効果があったのかどうか?後半突如展開する怒涛のアクションをお楽しみに。デート映画にしたら彼氏が逃げだしそうです。(白)


2022年/日本/カラー/105分/R15+
配給:ラビットハウス
(C)2022「グリーンバレット」製作委員会
https://greenbullet.jp/
★2022年8月26日(金)ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次ロードショー
posted by shiraishi at 09:14| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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監督:山口龍大朗
脚本:敦賀零
撮影:神戸千木
出演:吉村界人(健一)、田中美里(彩子)、津田寛治(拓郎)、冨手麻妙(石川)

千葉の九十九里浜。健一は実家のサーフショップで働いていたが不慮の事故で死んでしまった。自分の身体をつくづく見下ろし、自分が幽霊になったことに気がついた。実家に帰ると、数年前に死んだはずの父・拓郎がいた。明るく挨拶する父だったが、健一と同じ幽霊で、見えなかったけれどいつもいたらしい。母・彩子には、幽霊になった健一も父親も見えていることもわかった!?

吉村界人さん、この頃出ずっぱりのような感あり。サーファーカットの金髪にピンクのシャツとパンツ(少し薄いピンク)がよく似合っています。こんなに早く事故死したのでは、思い残すことが多すぎるはず。誰にも伝えられないのが普通ですが、この作品の母には幽霊が見えます。健一はめんどくさいなと思いつつ、母や父と話ができました。並んでタバコも吸えました。高校の同級生が泣いてくれました。そんなことができるなら、自分は誰に会いたいだろうと、観終わって考えてしまいました。寂しがり屋の母ちゃんとぶっきらぼうな息子との会話は、おかしくてあったかくてせつないです。(白)


2022年/日本/カラー/39分
配給:SAIGATE
(C)映画「人」制作チーム
https://eigahito.com/
★2022年8月26日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 09:11| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

Zola ゾラ(原題:Zola)

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監督:ジャニクザ・ブラヴォー
脚本:ジャニクザ・ブラヴォー ジェレミー・O・ハリス
撮影:アリ・ウェグナー
編集:ジョイ・マクミロン
音楽:ミカ・レヴィ
出演:テイラー・ペイジ(ゾラ)、ライリー・キーオ(ステファニ)、ニコラス・ブラウン(デレク)、コールマン・ドミンゴ(X)、アリエル・アリスタ(ショーン)

ウェイトレス兼ストリッパーのゾラはレストランで働いていたところ、客としてやってきたステファニと「ダンサー」という共通点があることで意気投合し、連絡先を交換する。
すると翌日、ステファニが彼氏のデレクと「ダンスで大金を稼ぐ旅に出よう」と迎えにくる。急なことで迷うが、大金という言葉に誘われて出稼ぎの旅に加わることにした。運転はレストランでステファニと一緒だったX。ソラはこれが48時間の悪夢の始まりだとは思ってもみなかった……。

2015年、アザイア“ゾラ”キングが自らの実体験をTwitterに投稿し、大きな話題となったスリリングな<148のツイート>をスタジオA24が映画化しました。それに基づいて作られたほぼ実話です。初めはノリノリだった旅が次第に不穏な空気に包まれ、ゾラはヤバイと感じ始めます。ゾラが冒頭で言うように「スリリング」な長い話。
全米では1500スクリーンで公開されスマッシュヒットを記録。サンダンス映画祭でも大喝采を浴び、“ストリッパー・サーガ”と呼ばれ、若者を中心に熱狂的なファンを生み出しました。
ライリー・キーオはエルヴィス・プレスリーの孫、女優業と並行して制作会社を設立、監督デビュー作『WAR PONY』がカンヌ映画祭ある視点部門で新人監督賞を受賞しています。青い綺麗な眼がエルヴィス似かな。この映画ではかなりぶっ飛んだ若いストリッパー役。R18+なのでご注意。(白)


2021年/アメリカ/カラー/ビスタ/86分/R18+
配給:トランスフォーマー
(C)2021 Bird of Paradise. All Rights Reserved
https://transformer.co.jp/m/zola/
★2022年8月26日(金)新宿ピカデリー、渋谷ホワイトシネクイントほか全国ロードショー

posted by shiraishi at 09:09| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする